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2019年5月19日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ I

第四章 新型モビルスーツを奪還せよ

                 I

 

 海上を進む機動戦艦ミネルバ。
 第一作戦室では台上に投影された航海図を囲んで士官たちが作戦を討論していた。
「しかし……、ここまで来て、バイモアール基地が陥落したことを知らせてくるとは。
何も知らずに基地に向かっていたらどうなっていたか……」
「それは無理からぬことではないでしょうか。何せ敵の只中にいるのですから、通信は
基地の所在を知らせる危険性があります。もちろん敵も通信傍受の網を広げて、我々を
必死で探し求めています」
「で……。どうなさいますか、艦長」
 一同の視線がフランソワに集まった。
 フランソワは毅然として答える。
「命令に変更はありません。情報によれば、最新型のモビルスーツを搭載していた輸送
艦が搾取されて、基地に係留されているという。最新型を回収し、予定通りに訓練生を
収容します」
「訓練生と申されましても、すでに敵軍に感化されてしまっていて、スパイとして紛れ
込むという危惧もありますが……」
「それは覚悟の上です。何しろこの艦には乗員が足りないのです。交代要員もままなら
ない状態で戦闘が長引けば、士気は減退し自我崩壊に陥るのは必至となります」
 いかに最新鋭の戦闘艦といえども、それを運用する兵員がいなければ、その戦闘力を
発揮できない。問題とするなれば、カサンドラ訓練所はモビルスーツ・パイロットの養
成機関であり、パイロット候補生に艦の運用に携わる任務をこなせるかどうかである。
それでも、猫の手も借りたい状況では、一人でも多くの兵員が欲しい。特殊な技術や知
識を必要としない部門、戦闘で負傷した将兵を運んだり介護する治療部衛生班や、艦載
機などに燃料や弾薬などを補給・運搬する整備班など。特に重要なのは、戦闘中に被爆
した際における、艦内の消火・応急修理などダメージコントロール(ダメコン)と呼ば
れる工作部応急班には、事態が急を要するだけにパイロットであろうと誰であろうと関
係なしである。とりあえずはパイロットであることは忘れてもらって、各部門に助手と
して配備させて、手取り足取り一から教え込んでいくしかないだろう。

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2019年5月18日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 II

第三章 第三皇女
                 II  連邦軍先遣隊の旗艦艦橋。 「皇女艦の包囲をほぼ完了しました」 「ようし、降伏を勧告してみろ」 「了解」  戦闘情勢は有利とみて、余裕の表情だったが……。 「未知の重力加速度を検知! ワープアウトしてくる艦隊があります」 「なんだと? 艦が密集している空間へか?」 「間違いありません。重力値からすると、およそ二百隻かと」 「ワープアウトします!」  戦闘区域のど真ん中にいきなり出現した艦隊。  二百隻の艦隊は、皇女艦に取り付いている連邦軍艦隊に対して戦闘を開始した。 「包囲網が崩されています」 「何としたことだ。一体どこの艦隊なのだ」  すさまじい攻撃だった。  まるで戦闘機のように縦横無尽に駆け回る艦隊に翻弄される連邦軍艦隊。  さらに連邦軍を震撼させる事態が迫った。 「背後より敵襲です! その数二千隻」 「敵襲だと? 帝国の援軍が到着したのか、しかも背後から」 「そんなはずはありません。本隊が救援に来れるのは、早くても三十分かかるはずで す」 「じゃあ、どこの艦隊だ? 今取り付いているこいつらにしてもだ」  と、言いかけた時、激しい震動と爆音が艦内に響き渡った。 「左舷エンジン部に被弾! 機関出力三十パーセントダウン」  パネルスクリーンには、敵艦隊の攻撃を受けて、次々と被弾・撃沈されていく味方艦 隊の模様が生々しく映し出されていた。高速で接近し攻撃し、一旦離脱して反転攻撃を 加え続けていた。 「この戦い方は……。ランドール戦法か?」  折りしも正面スクリーンに、攻撃を加えて離脱する高速巡洋艦。その舷側に赤い鳥の ような図柄の配置された艦体が映し出された。 「こ、これは! サラマンダーじゃないか」  その名前は連邦軍を震撼させる代名詞となっている。その精霊を見た艦隊は、ことご とく全滅ないし撤退の憂き目に合わされているという。 「そうか! デュプロスに向かった別働隊との連絡が途切れたのもこいつらのせいに違 いない」 「ランドールのサラマンダー艦隊は、タルシエン要塞にあるのでは? それが何故、中 立地帯を越えたこんな所で……」 「知るもんか。これ以上、被害を増やさないためにも撤退するぞ」 「撤退? 後少しで皇女を拉致できるというのにですか?」 「何を言うか! すでに皇女艦の包囲網すら突き崩されてしまっているじゃないか。逆 にこちらの方が捕虜にされかねん情勢が判らないのか。ランドールは撤退する艦隊を追 撃したケースは、これまでに一度もない。だから捲土重来のためにも、潔く撤退するの だ」 「判りました。撤退しましょう」 「戦闘中止の信号弾を上げろ! それで奴らの攻撃も止むだろう。その間に体勢を整え て撤退する」  旗艦から白色信号弾が打ち上げられた。
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2019年5月12日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第三章 狼達の挽歌 X

 機動戦艦ミネルバ/第三章 狼達の挽歌
 X 撃沈  ミネルバ艦首の三連装135mm速射砲が火を噴いた。  砲口から飛び出したAPFSDS弾は、加速ブースターとも言うべき離脱装弾筒を 切り離して、後尾翼のついたペンシル状の弾丸となって敵艦を襲う。  砲口初速は2100m/s(7560km/h)とハープーンの巡航速度(970km/h)とは桁違いの 速度であり、しかも電波を出さず推進用の熱源もないために、着弾時の終速値がかな り低下していたとしても、これをミサイルで迎撃するのは至難の業である。  余談だが、かつては大砲の砲身には砲弾を回転させ安定感を与えるための旋条砲身 というもの使われていたが、最近のAPFSDS徹甲弾のように、その直径と長さの 比が大きい(L/D比が6以上)弾種は、旋動させる方が飛翔中の安定性が悪くなること が判った。そのため旋条のない滑腔砲身が使用され、弾丸の安定には翼が付くように なった。なおラインメタル対戦車榴弾なども滑腔砲身用である。  APFSDS徹甲弾はザンジバルの後部エンジンに見事着弾して炎上させた。  炸薬がないとはいえ、凄まじい運動エネルギーの放出によって、衝撃波が生じ付近 一帯をことごとく破壊する。  ザンジバル艦橋。  大きな衝撃を受けてよろめく乗員達。 「後部エンジンに被弾しました!」  オペレーターが金きり声で叫ぶ。 「エンジン出力低下! 機動レベルを確保できません!!」  火炎を上げながらゆっくりと降下するザンジバル戦艦。  艦内では、消火班や応急処理班が駈けずり回って、何とか艦を立て直そうと必至に なっている。  やがて海上に着水し、加熱したエンジンに大量の海水が流入して、水蒸気爆発を起 こして火柱が上がった。  艦橋に伝令が駆け寄ってきて報告を伝えた。 「艦長! 至る所から浸水が始まっています。艦を救える見込みはありません!」 「判っている。副長、総員を退艦させろ!」 「了解、総員を退艦させます」 「通信士。艦隊司令部に打電だ。『我、撃沈される。速やかなる救助を願う』艦の位 置も報告しろ」 「了解!」  総員退艦の指令を受けて、艦の至るところで退艦の準備が始められた。  救命ボートや救命艇が海上に降ろされて、次々と兵員が乗り込んでいく。  艦橋からそれらの様子を眺めている艦長。 「だめだ! 敵艦は、エンジンから武装、その他すべてにおいて大気圏内戦闘のため に特殊開発された特装艦だ。宇宙戦艦一隻が太刀打ちできる相手ではない」  ミネルバ艦橋。 「敵艦、海上に着水。撃沈です」  一斉に歓声が上がる。 「スチームの射出を停止。当艦はこのままカサンドラ訓練所のあるバルモアール基地 へ向かう。全速前進!」 「了解。進路バルモアール基地、全速前進します」 第三章 了
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2019年5月11日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第三章 第三皇女 I

第三章 第三皇女
                 I  銀河帝国領内。  今まさに、第三皇女の艦隊が連邦軍先遣隊による奇襲攻撃を受けていた。  貴賓席に腰を降ろす皇女ジュリエッタの表情は硬かった。側に仕える二人の侍女は、 ただオロオロとするばかりだった。 「何としても姫を後方へお逃がしして差し上げるのだ。艦隊でバリケードを築いて、後 方へのルートを確保するのだ」  貴族と庶民との身分の隔たり。こういう状態においてこそ、その人となりが良く判る ものだ。  庶民を人とも思わずに税金を搾り取るだけの存在と考えたり、高慢で貴族であること を鼻に掛けて、庶民を虐げるだけの者は、いざとなった時には誰も助けてはくれない。 庶民達は自分可愛さにさっさと逃げてしまうだろう。  しかし、ジュリエッタを取り巻く人々には、責任放棄する者はいなかった。命を張っ てでもジュリエッタを救うための戦いを繰り広げていた。  気分を悪くした兵士を見かけたら、やさしくいたわり休息を与えたたり、全体が暗い ムードに陥っている時には、レクレーションやパーティーを開いて、士気を高める努力 を惜しまなかった。常に兵士一人一人に対して分け隔てなく気配りを忘れなかった。  ジュリエッタは民衆を愛し、かつまた民衆からも愛されていたのである。 「わたくし一人のために、多くの兵士達が犠牲になるのは、耐え難いことです。わたく し一人が……」 「いけません! 奴らは姫を捕虜にして、自分達の都合の良い交渉を強引に推し進める 算段なのです。かつてアレクサンダー第一皇子が、海賊に襲われ行方不明となった時に も、皇子を捕虜にしていることを暗に匂わせて、十四万トンものの食糧の無償援助と、 鉱物資源五十万トンを要求してきたのです。その後、皇子は連邦軍の元にはいないこと が判明して、交渉はないものとなりましたが……」  貴賓席に深々と沈み込み、自分には何もできないのか? と苦渋の表情にゆがむジュ リエッタ皇女。そうしている間にも、数多くの戦艦と将兵達が消えてゆく。  その頃、急ぎ救出に向かっていたランドール艦隊は、やっと中立地帯を抜け出たばか りだった。 「銀河帝国領内に入りました」 「前方に火炎を認めます」  銀河帝国艦隊と連邦軍先遣隊との戦闘が繰り広げられ、まるでネオンの明滅のような 光景がスクリーンに投影されていた。 「全艦に戦闘配備だ」 「了解。全艦戦闘配備」 「うーむ……。何とかギリギリにセーフといったところか。第三皇女の旗艦は識別でき るか?」 「お待ちください」  指揮艦席の手すりに肩肘ついてスクリーンを凝視しているアレックス。 「双方の戦況分析はどうか?」 「はい。圧倒的に連邦軍側が優勢です」 「だろうな。連邦軍にはつわものが揃っているからな」 「皇女の艦を特定できました」 「奴らの目的が皇女の誘拐であるならば、旗艦を無傷で拿捕しようとするだろうが、流 れ弾が当たって撃沈ということもあり得る。私のサラマンダー艦隊は、旗艦に取り付い ている奴らを蹴散らす。スザンナは旗艦艦隊を指揮して、連邦軍の掃討をよろしく頼 む」 「判りました。旗艦艦隊は連邦軍の掃討に当たります」 「それでは行くとしますか。全艦突撃開始! 我に続け!」  アレックスの乗るヘルハウンドを先頭にして、勇猛果敢に敵艦隊の只中に突入してい くランドール艦隊。
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2019年5月 5日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第三章 狼達の挽歌 IX

 機動戦艦ミネルバ/第三章 狼達の挽歌

 IX 一撃必殺!! 「ミサイル高速接近中!」 「ヒペリオンで迎撃せよ」  フランソワが発令すると、副官のリチャード・ベンソン中尉が復唱して指令を艦内 に伝える。 「ヒペリオン、一斉掃射。ミサイルを迎撃せよ!」  次々と飛来する誘導ミサイルをヒペリオン(レールガン)が迎撃していく。 「誘導ミサイルは、ヒペリオンで十分迎撃できますね」 「現時点で、ヒペリオンに勝るCIWS(近接防御武器システム)はないでしょう。 何せ初速19.2km/s、成層圏到達速度でも13.6km/sありますから、軌道上の宇宙戦艦さ えも攻撃できる能力を持っていますからね」 「しかし炸薬がないので、船体に穴を開けることはできても撃沈させることはできま せんよ。誘導ミサイルないし戦闘機の迎撃破壊が精一杯です。砲弾に炸薬を詰められ れば良いのですが」 「それは不可能よ。あまりにも超高速で打ち出すので、炸薬なんかが詰まっていると その加速Gの衝撃だけで自爆しちゃいますから」 「でしょうね……。誘導ミサイルはヒペリオンに任せるとしても、そろそろ敵艦のプ ラズマ砲の射程内に入ります。撃ってきますよ」 「そうね……。スチームを全方位に散布してください」 「判りました」  答えて、端末を操作するリチャード。 「超高圧ジェットスチーム弁全基解放! 艦の全方位に高温水蒸気噴出・散布せよ」  艦のあちらこちらから高温の水蒸気が噴出し始めた。と同時に雲が発生してミネル バを包み隠した。  敵艦の方でも、その様子を窺っていたが、 「何だ、あれは?」 「敵艦のまわりに雲が発生した……て、感じですかね」 「馬鹿なことを言うな。あれは水蒸気だ。艦の周りに水蒸気を張り巡らしているの だ」 「どういうことでしょうかね?」 「今に、判る」  その言葉と同時に、オペレーターが報告する。 「ゴッドブラスター砲の射程内に入りました」  コッドブラスター砲は、245mm2連装高エネルギーイオンプラズマ砲のことで、ザ ンジバル級戦艦の艦首と艦尾にある格納式旋回砲塔に設置されており、大気圏内にお ける実質的な主砲と言える。 「よし、ゴッドブラスター発射準備! 目標、敵戦艦」  旋回砲塔がゆっくりと回って、ゴッドブラスター砲がミネルバを照準に捕らえた。 「ゴッドブラスター砲、照準よし。発射態勢に入りました」  砲塔からプラズマの閃光がミネルバへと一直線に走る。 「ゴッドブラスター砲のエネルギー、敵艦の到達前に消失しました」 「消失だと?」 「誘導ミサイルも、あの雲の中で自爆しているもよう。敵戦艦は無傷です」  思わず、ミネルバを注視する司令官。 「そうか……。あの水蒸気の雲がエネルギーをすべて吸収してしまったのだな」 「どうしますか?」 「ミサイルを誘導弾から通常弾に転換、引き続き撃ち続けろ。後、使えそうなのは75 mmバルカン砲だな……。気休めにしかならないだろうが、砲撃開始だ」
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2019年5月 4日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第二章 ミスト艦隊 XIV

第二章 ミスト艦隊
                XIV  ステーションをゆっくりと離れてゆくヘルハウンド。 「これより、一旦カリスの衛星軌道に入る。二度の周回を行いつつ、重力アシストの加 速を得て、最大噴射でカリスの重力圏を脱出する」  ヘルハウンドも外宇宙航行艦であるから、自力ではカリスの強大な重力を振り切るこ とは困難である。カリスをスパイラル状に加速・周回しながら、少しずつ軌道を遠ざか り、ついでに重力アシストで加速を得て、最適な位置から最大速度に上げて脱出しよう というわけである。 「噴射! 機関出力最大、加速度一杯!」  二度目の周回を終えて、頃合いよしと判断したアレックスは号令を下した。  艦体を激しい震動が襲った。 「比推力、最大に達しました」 「そのまま維持せよ」  巨大惑星カリスからゆっくりと遠ざかっていく。  やがて艦体の震動もおさまりつつあった。 「まもなく惑星カリスの重力圏を離脱します」 「よし、機関出力を三分の二に落とせ」 「機関部はエンジンに異常がないか確認せよ。ダメコン班は艦体の損傷をチェック!」  たてつづけに命令を出してから、 「ふうっ……」  と大きなため息をついて、指揮艦席に深く腰を沈めるアレックスだった。  連邦艦隊との戦闘。カリスからの脱出と息つく暇もなく働き詰めで疲労がたまってい た。 「艦長。ちょっと昼寝をしてくる。後を頼む」  席を立って自分の部屋へと向かうアレックス。 「判りました。ごゆっくりお休みください」  最高司令官たるアレックスには、定められた休息時間はない。適時自分の判断で休む ことになっている。  ミストの補給基地が見えてきた。  その周辺には、旗艦艦隊が展開している。  指揮艦席に座ったまま、サンドウィッチを頬張っているアレックス。 「サラマンダーより入電」 「繋いでくれ」  正面スクリーンにスザンナが映し出された。 「ご無事でなによりでした。全艦、補給を終えて待機中です」 「それでは、早速発進させてくれ。私はこのヘルハウンドから指揮を執る」  スザンナが疑問を投げかける。 「ヘルハウンドからと申されましても、旗艦艦隊二千隻の指揮統制は不可能ですが… …」  旗艦には搭載されている戦術コンピューターには、それぞれキャパシティーがある。 各艦からは識別信号を出しており、その信号を戦術コンピューターが受信して処理して いる。撃沈・大破や航行不能などに陥れば即座に処理される。サラマンダーの戦術コン ピューターは十万隻もの処理能力があるが、ヘルハウンドには三百隻の処理能力しかな かった。 「何を言っておるか。旗艦艦隊二千隻は、君が指揮するのだよ。大まかな作戦はこちら から指示するが、後は君の判断で自由に動かしたまえ」  スザンナの指揮能力を高く評価し、信頼に疑いを抱かないアレックスの叱咤激励の言 葉であった。一人前の司令官に育て上げるには、甘えを許さずすべてを任せきりにして、 時として渦中に放り込むといった荒療治も辞さない態度で臨む。  こうしてアレックスに鍛えられて、数多くの有能なる司令官が誕生しているのである。 それら司令官達の働きによって、アレックス率いる艦隊は、多大なる戦果を上げてその 陣容を強化していった。  「判りました。旗艦艦隊を発進させます」  毅然として表情を取り戻すスザンナ。  師弟関係にも似た厚い信頼で結ばれている二人。 「全艦微速前進。ヘルハウンドに続け」  艦隊が中立地帯に差し掛かるのは、それから間もなくのことだった。 「国際救難チャンネルに、SOSが入電しています」 「信号はどこから発せられているか?」 「中立地帯を越えた銀河帝国領からです」 「どうやら遅かったようだな。敵さんの方がひと足早く皇女艦隊に襲い掛かったよう だ」  と、しばしの思慮に入るアレックス。  艦橋オペレーター達は、その去就に注目している。 「サラマンダーに繋いでくれ」  正面スクリーンにスザンナが映し出される。 「救難信号をキャッチした」 「はい。こちらでも確認しております」 「君ならどうするかね?」 「はい。救難信号が出されている以上、救出に向かうのが船乗りの務めです」 「戦艦が中立地帯に踏み込むのは国際条約違反だぞ」 「しかしながら、国際救助活動においては、特別条項が適用されます。それになにより も、銀河帝国との交渉を進める良い機会になるのではないでしょうか」 「なるほど、それは良い考えだ。それでは行こうか。全艦に伝達! 救助活動のために 中立地帯を越えて銀河帝国へ向かう。全艦全速前進せよ」  こうしてランドール艦隊発足以来、はじめての銀河帝国領への進出が、国際救助活動 の名のもとに行われたのである。  果たして、連邦先遣隊を蹴散らして、無事に第三皇女を救い出すことができるのか?  その先にある、銀河帝国との交渉の行方もどうなるか判らない。  すべての乗員の胸の内にある不安と葛藤も推し量るすべもない。  第二章 了
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2019年4月28日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第三章 狼達の挽歌 VIII

 機動戦艦ミネルバ/第三章 狼達の挽歌
 VIII 養成機関  カサンドラ訓練のとある教室。  訓練生達が机を並べて、教官から講義を受けていた。 「……であるから、この養成機関はこれまで通りに存続することとなった。もちろん 君達パイロット候補生達もだ。かつての共和国同盟に忠誠をつくすために集まった諸 君だが、今後は新しく再編された共和国総督軍のために尽力してほしい。さて、君達 も知っての通りだが、ランドール提督はアル・サフリエニ方面軍を解体することなく、 あまつさえ我が国に対して反旗の狼煙を揚げ周辺地域を侵略するという暴挙に出た。 ここに至っては、ランドールとその艦隊を反乱軍として、総力をあげてこれを鎮圧す るために総督軍を派遣することに決定した。また、このトランター本星においては、 ランドール配下の第八占領機甲部隊【メビウス】がパルチザンとして活動をはじめて いる。この養成機関に与えられたことは、このメビウスに対抗するために組織される 部隊の戦士を育てることだ。諸君らの健闘を期待したい。話は、以上だ。何か質問 は?」  教官が声を掛けるとすかさず手を上げる候補生達。 「我々が戦うことになる相手は、共和国同盟にその人ありと讃えられる不滅の常勝将 軍です。あのタルシエン要塞攻略も士官学校時代から数年に渡って作戦立案を緻密に 計算され尽くされての偉業達成です。このトランターが陥落するなどとは、誰しもが 考えもしなかった人々の中にあって、提督だけがこの日を予測しての【メビウス】を この地への派遣。パルチザン組織の急先鋒としての任務を果たすこととなりました。 まるで未来を予見する能力があるように思える提督に対し、果たして我々に勝算など あるのでしょうか?」 「何もランドールと戦えとは言ってはいない。彼は宇宙だからな。君達が実際に戦う のはメビウス部隊だ。指揮官が誰であろうと、ランドールにかなうほどの技量を持っ ているはずがない。心配は無用だ」  と言われて、「はい、そうですか」と納得できるものではなかった。  ランドール提督に限らずその配下の指揮官達も、並外れた才能を有している連中ば かりなのである。メビウス部隊だって、ランドール提督から厚い信頼を受けて、トラ ンター本星へ配属されてきているはずである。 「それではお伺い致しますが、共和国同盟軍には環境を破壊する禁断の兵器として封 印されていた【核融合ミサイル】があったはずですが。それは今どこに保管してあり ますか?」 「どうして……そのことを?」 「ネットに情報が流れていて、誰でも知っている公然の事実じゃないですか。核融合 ミサイルは、反政府パルチザン組織のミネルバ部隊の管轄にある。そうですよね?」  糾弾されて言葉に詰まる教官だった。 「そ、それは……」  教官が動揺するのは無理もない。  メビウス部隊の司令官は、特務科情報部所属のレイチェル・ウィングであり、その 背後にはネット界の帝王と冠されるジュビロ・カービンがいる。共和国総督軍をかく 乱するために、ありとあらゆる情報をネットに流すという情報戦を展開していたので ある。  いかに強力な政府や軍隊を作っても、それを支えているのは民衆であり、そこから 得られる税金によって成り立っていることを忘れてはならない。民衆からの信頼を得 られなければ、その屋台骨を失うこととなり、政府軍はやがて自我崩壊の危機に陥る ことになる。  反政府ゲリラなどの常套手段として、各地に大量に地雷を埋め込んだり、爆弾テロ などで多くの不特定多数の民衆を巻き添えにすることは、よくあることである。これ は、強力な軍隊を持つ政府軍と直接戦うよりは、か弱い民衆を相手にして数多くの犠 牲者を生み出すことによって、政府軍の民衆に対する信頼を失墜させることが目的だ からである。  たった一発で大都市を灰燼にし、放射能汚染で数十年以上もの長期に渡って人々を 住めなくする核融合ミサイル。そのすべてを使用すればもはやこの星は人の住めない 状態の死の惑星となるのは必至である。  その禁断の破壊兵器を、占領時の混乱に乗じてミネルバ部隊が密かに接収してしま った。  そんな情報をネットに流したのである。
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2019年4月27日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第二章 ミスト艦隊 XIII

第二章 ミスト艦隊
                XIII  アレックスがフランドルに案内されながら現れた。  一斉に敬礼して出迎える艦長達。 「出港準備完了しております」 「うん。ご苦労だった」  振り返ってフランドルに別れの挨拶をするアレックス。 「おせわになりました」 「何もできませんが、せめて補給基地に立ち寄って補給を受けてください。二千隻すべ てへの補給は無理でしょうが、行って帰ってこれる程度の備蓄はあります」 「よろしいのですか?」 「なあに、これくらいの礼はさせてもらわないと、罰が当たりますよ」 「そうですか……。それではご好意に甘えさせていただきます」 「ご武運を祈っています」 「ありがとう」  握手をして別れ、アレックスはヘルハウンドに乗艦した。 「おめでとうございます。提督のご奮戦振りモニターしておりました」  艦橋に入るやいなや、女性オペレーター達の熱烈な祝福を受ける。 「そうか……」  指揮艦席に腰を降ろすアレックス。  この席に座るのは実に久しぶりのことであった。  懐かしそうに、機器を撫でている。 「ステーションより、補給基地のベクトル座標データが入電しております」 「よし、データを艦隊に送信し、先に補給しろと伝えろ」 「了解」 「提督。このベクトル座標データからすると、補給基地は中立地帯のすぐそばです」  航海長が説明した。  数字の羅列を読んだだけで、およその位置を言い当ててみせるのは、その頭の中に航 海図がまるごと入っているからだろう。 「補給基地の位置を五次元天球儀に投影してみろ」 「判りました」  五次元天球儀は、透明球状体にレーザーを照射して、その内側に航路図を投影できる ものである。ワープ中でも常に艦の位置を表示できる。敵艦隊や新築されたばかりの施 設などの更新されていないデータは表示されないので、構築物の所有者や国家は、国際 宇宙航路図協会への報告を厳重に義務付けられている。  補給基地を示す青い光点が明滅し、そのすぐそばを銀河帝国領との境界にある中立地 帯が、淡いレッドゾーンとして表示されている。 「目と鼻の先だな」 「中立地帯近辺の警備における補給を担っているのでしょう」 「だろうな……」  と頷いて、オペレーター達を見渡してから、 「出航する。機関出力五分の一、微速前進」  命令を下した。 「了解。機関出力五分の一、微速前進」  艦長が命令を復唱する。 「機関出力五分の一」 「微速前進」  各オペレーター達が復唱しながら機器を操作している。 ポチッとよろしく!
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2019年4月21日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第三章 狼達の挽歌 VII

 機動戦艦ミネルバ/第三章 狼達の挽歌
 VII カサンドラ訓練所  その頃。  モビルスーツパイロット養成機関「カサンドラ訓練所」を抱えるパルモアール基地。  基地の空港の一角に輸送艦が停泊しており、警戒のためのモビルスーツが待機して いる。  そのかたわらで明らかに新型と思われる真新しい機体、ぎこちない動きを続けるモ ビルスーツがあった。 「どうだ、調子は?」 「どうだと言われましても、この機体にインストールされているOSは、手足を動か して移動させる程度の輸送用のOSなんですよ。ちゃんとした起動用のプログラムを インストールしなければ、とても戦闘に使えませんよ」 「やはりな。輸送艦内を探しているのだが、起動用プログラムが入ったディスケット が見つからん」 「輸送艦のコンピューター内に保存してあって、そこからコピーして使用するという ことはないですか?」 「ああ、その可能性もあるだろうと思ってな、システムを調査させているところだ」 「とにかくOSがない限り、こいつはまともに使えませんよ」 「判った。今日はもういい。その機体を格納庫に収納しろ」 「了解しました」  地響きを立てながらよちよち歩きのような格好で格納庫へと移動するモビルスーツ。  さて、その輸送艦とモビルスーツは、フランソワがタルシエン要塞から遠路はるば る運んできたものだったが、トランター本星への輸送を完了したものの、「メビウ ス」に渡る前に接収されてしまっていたのであった。  基地に隣接する、カサンドラ訓練所。  次の世代を担うモビルスーツパイロット候補生達が日々の研鑚を続けていた。 「駆け足! 全速力!!」  グラウンドでは、訓練用の機体に乗り込んでの操縦訓練の真っ最中だった。  地響きを立てながら整然と隊列を組んでグラウンドの周囲を走り回っていた。 「こらあ! そこ遅れるな!!」  訓練生達の機体のそばでジープに乗り込んで後を追いかけながら、拡声器を使って 指示を出している教官。  パイロットにも各人各様、習熟度が違う。  機体を完全に乗りこなしている優秀なパイロットがいれば、今日乗り込んだばかり というような不慣れなパイロットもいる。 「すみませーん!」  黄色い可愛い女性の声が訓練機体から返ってくる。  共和国同盟では男女均等法によって、男女区別なくパイロットとして士官できる。 「まったくおまえはどうしようもなくどんくさい奴だ! これが終わったら、その足 でグラウンド十周!!」 「そ、そんなあ」
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2019年4月20日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第二章 ミスト艦隊 XII

第二章 ミスト艦隊

                XII

 

「全艦、回頭せよ」
 オペレーターが復唱する。
 ゆっくりと回頭をはじめる連邦艦隊。
 しかし、様子がおかしかった。
 回頭の中途で失速し、その体勢のまま流されている艦が続出していた。
「どうしたというのだ?」
 司令が怒鳴り散らすが、事態が好転するはずもなかった。
 艦体はガタガタと異常震動を続けており、オペレーター達の表情は暗かった。
「機関出力、大幅なパワーダウン」
「出力をもっと上げろ!」
「機関オーバーロード。これ以上出力を上げれば爆発します」
「ええい、かまわん! 目の前にアイツがいるのに、みすみす逃してたまるものか。出
力を上げろ、もっと上げるんだ!」
 カリスの強大な重力によって引き寄せられていることが、誰の目にも明らかとなって
いた。外宇宙航行艦にとっては、方向転換をも不可能とする強大な重力である。

 

 その一方で、惑星間航行艦ながら馬力のある荷役馬のミスト艦隊は、カリスの重力を
ものともせずに、悠然と突き進んでいた。
「後方の敵艦隊が乱れています。どうやら失速しているもよう」
 オペレーターの報告を受けて頷くアレックスだった。
「こちらの思惑通りだ」
 そして総反撃ののろしを上げる。
「よし、今だ! 後方で回頭する連邦艦隊を撃て!」
 それまで前方を向いていた砲門が一斉に後方へと向き直った。徹底防戦に甘んじてい
た隊員は、鬱憤を晴らすかのように、夢中になって総攻撃に転じたのである。
 その破壊力はすさまじかった。あまつさえ失速して機動レベルを確保できない敵艦隊
は迎撃の力もなく、一方的に攻撃を受けるのみであった。
 千隻の艦隊が、百五十隻の艦隊に翻弄されていた。
 やがて別働隊も追いついてきて攻撃に参加した。
 次々と撃破されてゆく敵艦隊。無事に攻撃をかわせたとしても、カリスの強大な重力
がそれらを飲み込んでゆく。カリスに近寄りすぎて、その重力から逃れるのは競走馬の
連邦艦隊には不可能だった。
 十分後、敵艦隊は全滅した。
 千隻の艦隊に、三百隻で臨んで勝利したのである。
 艦橋に歓喜の大合唱が沸き起こった。
 ミスト艦隊司令のフランドル・キャニスターは、アレックスの作戦大成功を目の当た
りにして感心しきりの様子であった。
「これが英雄と呼ばれる男の戦い方か……。カリスの強大な重力を味方にしてしまうと
はな。交戦状態に入ったときにはすでに敵は自滅の道を突き進んでいたのだ。その情勢
を作り出してしまう作戦の妙というところだな」

 

 アレックスの乗る旗艦でも拍手の渦であった。
「おめでとうございます提督。ミストは救われました」
 と言いながら、右手を差し出す副司令。握手に応じるアレックス。
「いやいや。当然のことしただけですよ。共和国同盟軍の同士ではないですか」
「共和国同盟ですか……なるほどね」
 事実上として共和国同盟は滅んではいるが、解放戦線を呼称するアレックスたちにと
っては、今なお健在なのである。

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