最近のトラックバック

2020年7月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ

他のアカウント

2020年7月11日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第七章 反抗作戦始動 XⅢ

第七章 反抗作戦始動
XⅢ

 銀河帝国首都星アルデラン。
 アルタミラ宮殿内皇室議会議場。
 正面スクリーンには、決戦の場に従軍した報道機関が放映している番組が映し出されて
いた。
『帝国の皆様、大変長らくお待たせいたしました。これより皇太子殿下率いる遠征軍の模
様を放映再開いたします』
 実は、戦闘中は敵艦隊に情報を漏洩させるとして、アレックスは報道管制を布いていた
のである。
 総督軍との戦闘が終了したことを受けて、報道管制を解禁して再び報道番組を放映する
ことを許可されたのである。
『皇太子殿下は、アル・サフリエニ方面を守備する艦隊全軍を援軍として差し向けるとい
う、ほとんど暴挙とも言える作戦を敢行なされました。バーナード星系連邦がその隙を突
いて、タルシエンの橋を渡ってタルシエン要塞やシャイニング基地などの拠点陣地を奪還
するという危険性もあったのです。もしそうなれば侵略のための前線基地を連邦に与える
こととなり元の木阿弥(もとのもくあみ)、たとえトリスタニア共和国を解放しても、開
戦当初の勢力状況に戻るだけだけだったのです』
『報道管制を敷かれて放映の禁止を命じられていましたが、戦闘の録画だけは許されてお
りました。これより総督軍との戦闘を開戦当初より再生してご覧いただきましょう』
 銀河帝国国民に向けて、帝国軍艦隊と総督軍艦隊との決戦の模様が録画中継で放映され
はじめた。
 そして、決戦場での戦闘シーンが終了し、【首都星トランターへ、いざ出陣!】という
ところで、再び報道管制が入って放映中断となった。
 暴動鎮圧や敵艦隊迎撃に向かった防衛艦隊が引き返してきているだろう。
 こちらの情報を教えるわけにはいかないからだ。

 従軍報道陣からの録画中継を食い入るように見つめていた皇室議会議員達。
 深いため息をついて感嘆している表情が手に取るように判る。
「さすが共和国同盟の英雄と称えられる殿下殿。巧妙にして計算されつくした作戦だ」
 議員の一人が感服の言葉をもらした。
 それに賛同するように頷くものが多かった。
 さて、こうなると前回に残した議題が問題に上がってくる。

 【皇太子擁立問題は、第一皇子の総督軍との決戦を見届けてから再審議しよう】
 というものである。

 見事なまでに総督軍を破り、その軍事的才能はもはや疑いのないものとなった。
 トリスタニア共和国同盟を解放に導くことも、おそらくは実現可能な情勢となっている。
 解放に成功すれば、暫定政権を興してその首班の地位に着くことも可能であろう。
 三大強国の一つである共和国同盟を掌握し、さらに銀河帝国の皇帝となれば、その地位
は揺るぎないものとなり、銀河宇宙の平和をもたらすだろうことも……。
 結論はすでに出ていると言えた。
 しかしながら……。
「ジョージ親王殿下はすでに次代皇太子として認証されているのだ。今更ながらにしてア
レクサンダー殿下を皇帝とするのも……」
 と、相変わらず煮え切らない摂政派の議員達。
 自分でもアレクサンダー殿下を推す事には反対はしないが、ロベスピエール公爵の意向
にも逆らえないという板ばさみ。
 いわゆる中間管理職の悲哀というべきものだろう。
「しかし、アレクサンダー殿下には皇位継承権第一位という権利を有し、亡き皇后さまよ
り授けられた皇位継承の証がある。この事実は動かすことができまい。皇室典範に照らし
合わせて、先の皇室議会の決定に従ってジョージ親王殿下が即位した場合でも、そのお子
はお世継ぎとなれない一代限りの暫定的なものだ。その次の皇帝は、アレクサンダー殿下
か、そのお子様に皇位継承権が与えられる」
 悲喜交々、堂々巡りの議場に新しい風が舞い込んできた。
 突然ドアが開いて従者が一人入ってきた。
「お知らせいたします。アレクサンダー殿下率いる艦隊が首都星トランターに居残る総督
軍を打ち破ったとの報告が入りました」
「なに!」
「それは真か?」
「は、間違いございません。殿下はさらに艦隊を進め、まもなく首都星トランターを包囲
せんとする位置に展開中とのことです」

 しばしの沈黙があった。
「共和国同盟の解放は、もはや疑いのないものとなった」
 一人が重厚な響きをもった言葉を口にした。
「アレクサンダー殿下は、共和国同盟にたいして最高指導者として国政を自由に操る地位
につかれたことになる」
「その通り。現在の同盟諸国は連邦の占領下にあって無政府状態に近いから、臨時政府を
興し首長となることが可能というわけだな」
「アレクサンダー殿下が皇帝となられれば、場合によっては銀河帝国に吸収合併し、帝国
の領土を二倍に広げより強大な国家を築くことも可能になる。となれば連邦側とてもはや
手出しできなくなるだろう」
「いや逆に連邦に宣戦し、これを撃滅し銀河統一を果たすことも」
「可能だ!」
「銀河統一か……」
「それを可能にするお方は、アレクサンダー殿下をおいて他にはない」
「これで決まりましたね」
「そのようですな」
 一同にしばしの沈黙がながれた。
「しかし……ジョージ親王殿下には、いかにお話しすればいいのだ」
「ともかく最終的な結論はエリザベス皇女様にご判断を仰ぐしかないが……」

 謁見の間
 皇室議会の議員達が、つい先ほどまとまった結論を報告していた。
「皇室議会では、アレクサンダー殿下がもっともふさわしいと判断したのですね」
「はい。ジョージ親王殿下には遺憾ともしがたいのですが……」
「よろしい。よくぞ申してくれた。公爵とジョージには私から説得する」
「では……」
「皇位はアレクサンダー殿下に」
「はっ。早速全国民におふれを出します」


 こうして、アレックス・ランドールすなわちアレクサンダー第一皇子の皇太子擁立が正
式に決定し、銀河帝国全土に知らし召された。


 第七章 了


ポチッとよろしく!

11

2020年7月 4日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第七章 反抗作戦始動 XⅡ

第七章 反抗作戦始動
XⅡ

 サラマンダー艦橋。
 通信士が報告する。
「敵艦隊より、降伏勧告を受諾するとの返信がありました」
「敵艦隊、全艦機関停止して戦闘中止したもよう。間違いありません」
 艦内に歓声が沸き起こる。
「勝ったんだ!」
「我々の勝利だ」
 口々に叫んで喜びを一杯に表していた。
 それも当然だろう。
 戦いの前は、艦隊数で完全に負けていた。
 それをひっくり返して勝利したのだから。
「よし。全艦戦闘中止せよ」
「全艦、戦闘中止」
 深いため息をついて、椅子に座りなおすアレックス。
「おめでとうございます」
「見事な作戦指揮でした」
 オペレーター達が立ち上がって賞賛の拍手で、アレックスを褒め称えた。
「戦艦フェニックスのガードナー提督より入電です」
「繋いでくれ」
 正面スクリーンにフランク・ガードナー少将の姿が投影された。
『おめでとう。君なら勝てると思っていたよ』
「ありがとうございます。それもこれも先輩のおかげです」
『君が銀河帝国軍を率いて総督軍との決戦に赴いたことは報道などで知っていた。遠き空
の彼方から応援するしかないと思っていたが、意外にも援軍要請の特秘暗号通信をもらっ
て驚いたよ。まさかタルシエン要塞を空っぽにすることになるのだからな』
「確かにその通りなのですが、タルシエンの橋の先のバーナード星系連邦は革命が起きた
ばかりで、要塞を空にしても攻略にはこれないだろうと判断しました」
『しかし、そうそう空にしておくわけにはいかないだろう。この後我々は、タルシエン要
塞に引き返す。共和国同盟の解放は君に任せることにする』
「任せておいてください。共和国同盟の解放は私の使命ですから」
『そうだな……。それでは短い挨拶だが、これで失礼するよ』
「お気をつけて」
『うむ』
 こうしてガードナー提督との通信が終わった。
 その後、ゴードンやカインズそしてジェシカなどの腹心達との交信が行われた。
 やがてアル・サフリエニ方面軍艦隊はタルシエン要塞へと引き返していった。
 銀河帝国軍と総督軍の決戦において、アル・サフリエニ方面軍が自陣を空にして援軍に
向かったという情報は、バーナード星系連邦側にも流れているだろうから。
 バーナード星系連邦が革命途上にあるとはいえ、一個艦隊なりをタルシエンの橋を渡っ
てやってくることは十分ありうる。
 一時も早くタルシエン要塞に戻って防御を固めねばならないことは必然のことだった。


 ここに銀河帝国軍と総督軍との決戦は幕を閉じることとなった。
 しかし休む間もなく次の戦いがはじまる。
 共和国同盟の解放が成し遂げられたのではない。
「戦後処理は第四艦隊と第五艦隊に任せて、我々はトランターへ向かう」
 投降してきた総督軍の対処に構っている暇はない。
 第四艦隊と第五艦隊は後方支援としてやってきたのだ。彼らに任せるのは利に叶ってい
る。
「総督軍の総司令のマック・カーサー提督は、自室で自害されたとの連絡がありました」
 通信士が報告する。
「そうか……。共和国解放戦線最高司令官の名で、弔意を表す電文を送っておいてくれ」
「かしこまりました」
 アレックスは一息深呼吸すると、新たなる命令を発令した。
「全艦全速前進。トランターへ向かえ!」
 熾烈なる戦いのあった宙域より離脱して、共和国同盟の解放のためにトランターへと目
指す。
 懐かしき故郷の地へと。


ポチッとよろしく!

11

2020年6月27日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第七章 反抗作戦始動 XI

第七章 反抗作戦始動
XI

 第三皇女艦隊旗艦インヴィンシブル。
 正面スクリーンでは、総督軍に対して攻撃を開始した第四艦隊と第五艦隊が映し出され
ていた。
 戦闘の経験のない艦隊であるが、逃げ腰の総督軍に対しては十分なくらいの戦力と言え
た。
 それを眺めていたホレーショ・ネルソン提督が意見していた。
「皇太子殿下が後退を続けていた意味が、今になって判りましたよ」
「申してみよ」
「はい」
 ネルソン提督は一息ついてから自分の考えを述べ始めた。
「殿下は、後退することによって時間を稼いで援軍の到着を待つと共に、戦闘域を後方へ
と移動させたのです。そして本来後方支援だった艦隊を戦場へと引きずり込んだのです。
戦場となれば本国の指令より、戦場の最高司令官に指揮権が委ねられます」
「その通りです」
 嬉しそうに頷くジュリエッタ皇女。
 信奉する兄の功績を、配下の武将に認められることが一番の喜びだったのである。

 第二皇女艦隊でも同様の具申が行われていた。
 トーマス・グレイブス提督が述べていた。
「戦場においては戦場の司令官が指揮を執る。帝国軍規を良く理解した上での作戦でし
た」
「共和国同盟の英雄と称えられていた才能が証明されたということです」
「誠にございます。銀河帝国の全将兵が皇太子殿下の足元に傅くことでしょう」
「殿下は銀河を統一したソートガイヤー大公の生まれ変わりと言っても間違いないでしょ
う」
 アレックスの特徴ある瞳の色、エメラルド・アイがそれを証明するであろう。
 そして類まれなる指揮能力と作戦巧者は疑いのないものとなる。
「殿下よりご命令です。総督軍の左翼へ艦載機攻撃を集中させよ」
「グレイブス!」
「御意! 総督軍の左翼へ艦載機攻撃!」
 艦橋オペレーター達は小躍り状態で全艦隊へ指令を伝達した。


 さらに三時間が経過した。
「敵艦隊より降伏勧告が打診されています」
 通信士が報告するも、マック・カーサーは無視を続けていた。
 しかしながら、総督軍は総崩れとなり、残存艦数は五十万隻にまでに減じていた。すで
に完全なる消耗戦となり、時間が経てば経つほどのっぴきならぬ状況へと陥っていく。
 それに対して包囲攻撃を続けるアレックスの艦隊にはほとんど損害を被ることはなかっ
た。
 勝算はまるでなく、逃走もかなわない状況がはっきりしている。
 総督軍は完全に戦意喪失となり、総司令官の新たなる判断を待ち続けていた。

 それは【降伏】の二文字しかなかった。

「司令官殿、そろそろご決断すべきだと思いますが」
 参謀の一人が意見具申を出した。
「決断とは何のことかね」
「もちろん降伏です。この情勢ではそれしかないでしょう」
「馬鹿を抜かすな! ここまで来て降伏などできるか!」
「では徹底抗戦なさるとおっしゃるのですね?」
「当然だ!」
「おやめください!」
「何を言うか! おめおめと生きて恥をさらすくらいなら、敵の総大将と刺し違えても相
手を倒すのみだ。それが武人の誉れというものだろう」
「何が武人の誉れですか。それはあなたの自己陶酔でしかありません。これ以上戦いたい
のなら、あなた一人で戦いなさい。もはやあなたに数百万もの将兵の命を委ねることはで
きません」
「ええい、うるさい! 反転して敵の旗艦、サラマンダーに体当たりしろ!」
 誰も沈黙して動かなかった。
「あきらめて下さい。もはや提督の命令を聞くものはおりません」
「貴様らそれでも軍人か!」
「軍人だからこそ、命を粗末にしたくないのです。お判りいただけませんか?」
「判るものか」
 もはや何を言っても無駄のようであった。
「生きて戻ったら軍法会議を覚悟しろよ」
 と叫ぶと艦橋を飛び出していった。
「提督!」
 オペレーターが後を追おうとする。
「追う必要はない! 総司令は指揮権を放棄した。よって指揮権は私が引き継ぐ」
 参謀は言い放つと、全艦に指令を出した。
「全艦戦闘中止! 機関停止して降伏の意思表示を表す」
 オペレーター達は安堵の表情を見せて命令を復唱した。
「全艦戦闘中止」
「機関停止」
 エンジンが停止して音を発生するものがなくなり、艦内を不気味なまでの静けさが覆っ
た。
「国際通信回線を開いて、敵艦隊と連絡を取れ」
「了解。国際通信回線を開きます」
 それはS.O.Sなどの非常信号や降伏する時のための通信回線である。


ポチッとよろしく!

11

2020年6月20日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第七章 反抗作戦始動 X

第七章 反抗作戦始動

 一時間後。
 中央に切り込んだ帝国軍艦隊は優勢に戦いを進めていたが、すでにすれ違いを終えて相
対位置は離脱の方向に向かっていた。
 さらに戦いを続けるには反転しなければならないが危険を伴う。
 サラマンダー艦橋。
「総督軍は正面突破を図って、中立地帯へ逃げ込もうとしているようです」
「反転攻撃しますか?」
「いや、半時計回りに全速迂回して総督軍の側面を突く」
「側面を突くと申しましても、そのためには総督軍の頭を抑えて前進を阻む必要がありま
すが?」
「その通りだよ」
「しかし応対できる艦隊がおりません」
「いるじゃないか」
「え?」
「まあ、見ていたまえ」
 含みを持たせた笑みを浮かべて答えないアレックスだった。


 ザンジバル艦橋。
「何とか正面突破に成功しました」
「よし、このまま全速前進して中立地帯へ逃げ込め」
「了解」
 ふうっ、と大きなため息をついて肩を落とすマック・カーサー提督。
「このまま行けば何とか逃げられそうです」
 とその時、警報が鳴り響いた。
「どうした?」
「前方に艦影を確認」
「なんだと?」
「帝国艦隊です。その数、六十万隻!」
「馬鹿な! そんなものがどこから……」


 サラマンダー艦橋。
「銀河帝国軍、第四艦隊と第五艦隊です」
「ほら見ろ。援軍が来てくれたではないか」
 と楽しそうに言うアレックス。
 万事予定通りという表情である。
「第四艦隊と第五艦隊に連絡を取ってくれ」
 ほどなく正面スクリーンに両艦隊の司令官の姿が投影された。
『第四艦隊、フランツ・ヘーゲル准将です』
『第五艦隊、ベルナルト・メンデル准将です』
「諸君らはすでに戦場に足を踏み入れてしまった。よって銀河帝国軍規によって、両艦隊
を私の指揮下に組み入れる」
 帝国軍規には戦場にある艦隊は、戦場を指揮する司令官の采配に従うように定められて
いる。
 本国から後方支援部隊として戦闘には参加しないことを前提に進軍してきた第四艦隊と
第五艦隊ではあったが、戦闘が長引き戦場が後方に移動したことによって、予定外として
戦場に踏み込んでしまったのである。
 戦場においては、本国からの直接命令は破棄されて、戦場の指揮官の命令に従うという
わけである。
『御意!』
 と両准将は力強く応えた。
 帝国軍規には精通している将軍であるから、アレックスの命令を受け入れることには躊
躇しなかった。
「第四艦隊、及び第五艦隊に対し、宇宙艦隊司令長官として命令する。接近する総督軍に
対し攻撃を敢行せよ」
『御意!』
 再び応える両将軍。
『おまかせください』
『殿下のご期待にお応えしましょう』
 これまでのアレックスの戦いぶりを、後方からずっと見ていたはずである。
 寸部の隙を見せず、負け戦を勝勢へと導いてしまった、作戦巧者の我らが宇宙艦隊司令
長官にして皇太子殿下。
 銀河帝国の存亡を掛ける作戦に参加できることは武人の誉れとなる。
 両将軍がはりきるのは当然のことである。
 後方支援で出撃が下された時のことである。
「皇女様に対し敵艦隊との矢面に立たせて、第四・第五艦隊は安全な後方支援とはいかな
る所存か?」
 第四艦隊・第五艦隊司令官からも、なぜ自分達は後方支援なのだという意見具申が出さ
れていた。
 しかし大臣達は、戦闘経験のない艦隊を最前線に出すわけにはいかないという一点張り
で対抗した。
 両将軍は不満だったのである。
 しかしその鬱憤はここへきて晴らされることとなる。
 皇太子殿下に従い、銀河帝国を勝利に導く。
 もはや迷いはなかった。
 両将軍率いる艦隊は、接近する総督軍に対して猛攻撃を開始した。
 頭を塞いで進行を遅らせ、本隊が追いつくのを手助けする。
 そうこうするうちに、援軍が後方から追いつき、さらに全速迂回してきたアレックス率
いる本隊が側面から攻撃を開始した。
 総督軍包囲網が完成した。
 敗勢から勝勢へ、アレックスの采配を疑うものはもはや一人もいなかった。


ポチッとよろしく!

11

2020年5月30日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第七章 反抗作戦始動 Ⅶ

第七章 反抗作戦始動

 総督軍後方に新たなる艦隊の出現を見て、緊張を高めるオペレーター達。
 敵の援軍なればもはや救いようのない戦況となり、逃げ出すことも不可能となるだろう。
 しかし次なる報告に状況は一変することとなる。
「識別信号に独立遊撃艦隊第一分艦隊旗艦ウィンディーネを確認」
 それはアレックスの片腕の一人、ゴードン・オニール准将であった。
「ウィンディーネ艦隊だ! 援軍がやってきたんだ」
 小躍りするオペレーター達。
 さらに報告は続く。
「独立遊撃艦隊第二分艦隊旗艦ドリアードを確認!」
 もう一人の片腕、ガデラ・カインズ准将。
「さらに続々とやってきます」
「第十七艦隊旗艦戦艦フェニックスもいます」
 アレックスより艦隊司令官を引き継いだオーギュスト・チェスター准将。
「ヘインズ・コビック准将の第五艦隊、ジョーイ・ホスター准将の第十一艦隊」
 アレックス・ランドール配下の旧共和国同盟軍第八師団所属の精鋭艦隊が続々と登場し
つつあった。
 さらに第五師団所属、リデル・マーカー准将の第八艦隊以下、第十四艦隊、第二十一艦
隊も勢揃いした。
 アレックスの配下にあるアル・サフリエニ方面軍が勢揃いしたのである。
 バーナード星系連邦との国境に横たわる銀河渦状腕間隙にある、通行可能領域として存
在するタルシエンの橋。
 現在地からトリスタニア共和国を経て、さらに遠方にあるタルシエンを含む銀河辺境地
域を守るのがアル・サフリエニ方面軍である。
 トリスタニア陥落以降は、共和国同盟解放軍として旗揚げした総勢六十万隻に及ぶ精鋭
艦隊である。
「戦艦フェニックスより入電。フランク・ガードナー少将が出ておられます」
 アレックスの先輩であり、第五師団司令官にしてタルシエン要塞司令官である。
「繋いでくれ」
 正面スクリーンがガードナー少将の映像に切り替わった。
「やあ、少し遅れたようだが、約束通りに引き連れてきてやったぞ」
「恐れ入ります」
「さあて、早速はじめるとするか」
「お願いします」
「それでは、勝利の後にまた会おう」
 映像が途切れて再び戦場の映像に切り替わった。
 パトリシアは思い起こしていた。
 タルシエン要塞を出発する時のことである。
 発着場においてアレックスとガードナー提督が別れの挨拶を交わしていた。


「それでは先輩、行ってきます」
 ガードナー提督に敬礼するアレックス。
「まあ、いいさ。とにかく要塞のことはまかしておけ。援軍が欲しくなったら、連絡あり
しだいどこへでも持っていってやる」
「よろしくお願いします、では」
「ふむ、気をつけてな」


 そうなのだ。
 あの時からアレックスとガードナー提督の間には密約が交わされていたのだった。
 今日のこの日のために……。
 なぜ、そのことをパトリシアにさえ隠していたのか?
 現況を熟慮して、パトリシアは気がついた。
 統合軍は銀河帝国軍との混成軍である。
 しかも本国には不穏な動きを見せる摂政派の影の黒幕であるロベスピエール公爵の存在
がある。
 そして、このサラマンダーにも皇女艦隊との連絡係として乗艦している帝国兵士もいる。
 摂政派の息がかかっていないとは言えないのだ。
 たとえ腹心のパトリシアにとても、内心を明かすことはできなかったのである。
 壁に耳あり障子に目ありである。
 どんなに優秀な作戦も、上手の手から水が漏れて敵に作戦を知られては元も子もなくな
る。
 危険を最小限にするためには、完全無欠でなければならなかったのである。


ポチッとよろしく!

11

2020年4月19日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第七章 宇宙へ(最終回)

 機動戦艦ミネルバ/第七章 宇宙へ(最終回)
IV

 ワープゲートから、次々と出現する艦艇。
「ウィンディーネを確認しました」
 オペレーターが紅潮しながら報告する。
「続いてドリアード、フェニックスと続いています」
 アレックス・ランドール配下の旧共和国同盟軍第八師団所属の精鋭艦隊が続々と登場し
つつあった。
 さらに第五師団所属、リデル・マーカー准将の第八艦隊以下、第十四艦隊、第二十一艦
隊も勢揃いした。
 アレックスの配下にあるアル・サフリエニ方面軍総勢六十万隻が勢揃いしたのである。

「ウィンディーネより入電」
「繋いでください」
 正面スクリーンに、ゴードン・オニール准将が出る。
「よお、待たせたな」
「お久しぶりです」
「つもる話は沢山あるが、アレックスが苦戦しているだろうから、先に行くよ」
「判りました。お気をつけて」
 総勢六十万隻に及ぶゴードン達の艦艇は、連邦遠征軍と交戦中のアレックス達の援軍と
して到着したのである。
 速やかに現場に向かう必要があったので、フランソワとは話し合ってる暇などなかった
のである。
「さて、我々は地上に戻りましょう」
 宇宙戦艦ではないミネルバは、援軍に参加することは不可能であるし、まだ地上での作
戦が残されている。
 偽情報だと気づいた駐留艦隊が、取ってひき返してくれば、ミネルバ一隻では太刀打ち
できない。


 海底秘密基地に戻ってきたミネルバ。
 レイチェルにワープゲート奪取作戦の報告をするフランソワ。
「お疲れ様でした。ミネルバの全員に四十八時間の休息を与えましょう」
「ありがとうございます。ですが、反攻作戦が始まったというのによろしいのですか?」
「大丈夫です。我々メビウスの新たなる作戦は、ランドール提督が連邦遠征軍を打ち負か
して、その勢いでトランターへ進撃を開始、そしてトランター降下作戦が始まってからで
す」
「それで四十八時間ですか……」
「まあ、ゆっくりと養生してください。眠れなくなる前にね」
「はい。判りました」
 フランソワは敬礼して、司令官室を後にした。
 一旦ミネルバに戻って、乗員に四十八時間の休息を取るように指示した。
 喜び勇んで、艦を降り始める乗員達。
 基地には艦内にはない多種多様の施設がある。
 食堂へ急ぐ者、レクレーション施設に向かう者、もちろん艦内の自分の部屋で寝る者も
いた。


 ミネルバを含むメビウス部隊の活躍は、まだまだこれからであるが、ひとまず物語を終
えよう。



ポチッとよろしく!

11

2020年4月18日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第七章 反抗作戦始動 I

第七章 反抗作戦始動

 その頃。
 対戦相手の総督軍艦隊も着々と銀河帝国へと進撃していた。
 旗艦ザンジバルの艦橋の指揮官席に着座する、戦略陸軍マック・カーサー大将。
 共和国同盟総督となったのを機に大将に昇進していた。
「奴は本気で百五十万隻で我々と戦うつもりなのか?」
「そのようです」
「信じられんな。狂気としか思えんが」
「ランドール提督のこと、また何がしかの奇策を用意しているのでしょう」
「奴が戦ってきたのは、せいぜい一個艦隊程度の戦術級の戦いだ。これだけの大艦隊を率
いた国家の存亡を掛けた戦略級の戦いなどできるわけがない」
「なるほど未経験ならば勝てる算段も難しいというわけですか」
「この戦いは艦隊同士の正面決戦になる。戦略級では数が勝負なのだ」
「なるほど、納得しました」
 丁度その時、給仕係が食事を運んできた。
「お食事の時間です」
 ワゴンに乗せられた料理に手をつけるカーサー提督。
 それを口に運びながら、
「また、これかね。たまには肉汁たっぷりのステーキを食いたいものだ」
 携帯食料に不満をぶつけ、苛立ちを見せている。
「贅沢言わないでくださいよ。ここは戦場なんですよ」

 バーナード星系連邦は、長期化した戦争により、慢性的な食糧不足に陥っていた。
 働き手が軍人として徴兵されているがために、農地を耕す労力が足りないからである。
 足りない食料は、銀河帝国からの輸入にたよっていたが、十分に充足できるものではな
かった。
 庶民の不満は、厳しい軍事政策によって抑制されていた。
「欲しがりません、勝つまでは」
 日頃からの教育によって、贅沢を禁じられ、いや贅沢という言葉さえ知らないのである。
 慎ましやかに生活することこそが、美徳であるとも教え込まれている。
 とは言うものの、それは一般庶民や下級士官の話である。
 将軍などの高級士官ともなると、肉汁したたるステーキが毎日食卓に上る。
 しかし戦場では贅沢もできない。
 戦艦には食料を積み込める限度というものがあり、狭い艦内では下級士官の目が常にあ
るからである。
 戦時食料配給に沿って、将軍といえども下級士官と同じ食事を余儀なくされていた。
 カーサー提督は話題を変えた。
「それよりも、本国との連絡はまだ取れないのか?」
「だめです。完全に沈黙しています」
「本国とのワープゲートも閉鎖状態です」
「やはり、クーデターが起きたというのは本当らしいな」
「そのようですね」
「我々が銀河帝国への侵攻を決行したのを見計らって、クーデター決起するとはな」
「タルシエン要塞が反乱軍に乗っ取られ、本国側のワープゲートをクーデター軍に押さえ
られては、鎮圧部隊を差し向けることも叶いません」
「連邦でも屈強の艦隊をこちら側に残していったのも、クーデターをやり易くするための
方策だったのだ」
「精鋭艦隊はメイスン提督の直属の配下ではありませんからね」
ポチッとよろしく!

11

2020年4月 5日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第七章 宇宙へ Ⅱ

 機動戦艦ミネルバ/第七章 宇宙へ



II

 総督軍中央情報局。
「トランターに接近する艦隊があります」
「なに?どこの艦隊だ」
「総督軍ではありません。おそらく反乱軍かと思われます」
「接近艦隊の数、およそ七万隻。現在L5ラグランジュ点を通過中です」
「一個艦隊か。ワープゲートなしでここまで来るには、補給艦を連れてきているな。実質
戦艦五万隻というところだな」
「いかが致しますか?」
「無論迎撃に出る。留守を預かっている者として、猫の子一匹通したとあっちゃ責任問題
になる」
「猫……ですか」
「たとえだよ。行くぞ」
 と、防衛艦隊帰艦バトラスの駐留している宇宙港へと向かう司令官だった。
「トランターが空になりますが、よろしいのですか?」
「近づいているのは、ランドールの所の艦隊である可能性大だ。だとしたら、敵艦隊の数
倍以上の数で対処しなければ勝てない。これまでの経験からな」
「なるほど……」
「迎撃は、持てる兵力のすべてを出して当たるのがセオリーだ」
 首都星の防衛の役目を担っていた駐留艦隊が、接近する艦隊への迎撃のために、トラン
ターを出航した。

 その頃、リンゼー少佐の元へ、ミネルバが宇宙に上がったとの情報が寄せられた。
「ミネルバが宇宙へ飛んだだと?大気圏専用の空中戦艦じゃなかったのか……」
「詳しい仕様は、技術部でも解読できなかったということでしょう」
「共和国同盟の艦艇だろ、そこの技術部の誰も知らなかったのか?」
「はあ、何せミネルバ級はケースン研究所のとある人物が、艦体も運用システムもたった
一人で設計したらしいので、詳細仕様は彼の頭の中ということです」
「とある人物ってなんだよ」
「極秘情報で、名前も顔も誰も知らないそうです。誘拐や暗殺のターゲットにされないよ
うにでしょうね」
「とにかくだ!我々も宇宙へ上がるぞ!」
「宇宙ステーションに上がる連絡艇しかありませんが」
「ったく、主力の艦隊は銀河帝国遠征に出撃しているし、防御艦隊は敵艦隊接近の報を受
けて、迎撃にでている。首都防衛はガラ空じゃないか。そんな時に、ミネルバが宇宙に上
がるとは」
「何か関連がありそうですね」
「大有りだろうよ。もしかしたら陽動に掛かったのかもな」
「陽動ですか、ミネルバが?」
「いや、接近しているという敵艦隊の方だよ」
「敵艦隊が陽動?」

「運よく補修に出ていた戦艦プルートが残っていました」
「よし、艦長に会おう」
 早速乗艦許可を貰ってプルートの艦橋に上がって艦長と面会するリンゼー少佐。
「艦長のマーカス・ハルバート少佐です」
「ミネルバ討伐隊のゼナフィス・リンゼー少佐です」
「で、ご用命はいかに?」
「追っているミネルバが、この宇宙へ出てきました。そこで貴官の戦艦をお借りたい」
「パルチザンの旗艦であるミネルバを討つのは総督軍の使命。となれば従うしかないです
ね。よろしい、このプルートをお貸ししましょう」
「ありがたい」
 快く戦艦の指揮を譲ったハルバート少佐は、
「ミネルバを追いましょう」
 と言った後、
「艦長をリンゼー少佐に交代する」
 艦橋要員に伝達した。
 艦長席に座るリンゼー少佐、その両脇に立つ正副艦長。リンゼーの副官は、さらに後方
の位置に控えて立っていた。
「これよりミネルバの後を追う。機関始動、微速前進」
「機関始動」
「微速前進」
 ゆっくりと宇宙ステーションを出てゆくプルート。
「L4ラグランジュのワープゲートへ向かえ」
「進路ワープゲート」
 副官が復唱する。
「なぜワープゲートですか?」
 ハルバート少佐が尋ねる。
「ミネルバの航行システムは、磁力線に浮かぶように進む船のようなものです。つまり航
行できるのは、磁力密度の高い大気圏内と惑星周辺のみで、外宇宙には出られないのです。
惑星周辺で重要施設となれば……」
「ワープゲートということですね」
「現在、反乱軍接近との情報から防衛艦隊は迎撃に出て、ワープゲートは無防備です」
「急ぎましょう。全速前進でワープゲートへ向かえ!」
ポチッとよろしく!

11

2020年4月 4日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第六章 皇室議会 V

第六章 皇室議会

 正面パネルスクリーンには、勇壮と進軍する統合軍艦隊が映し出されていた。
「しばし後を頼む」
 席を立つアレックス。
「どちらへ?」
「ティータイムだ」
 統合軍の進撃が順調に進んでいるのを見届けて、ちょっと休憩したくなったのであろう。
 第一艦橋を出てすぐの所に、自動販売機コーナーがある。
 立ち寄って販売機にIDカードを挿しいれてドリンクを購入するアレックス。
 湯気の立ち上がるカップを取り出して、そばのベンチに座って口にする。
「うん。自動販売機にしては、結構いける味だな」
 一服している間にも、艦橋要員のオペレーターが立ち寄っていくが、アレックスが任務
中なのを知っているので、軽く挨拶をするだけで話しかける者はいない。


 ドリンクを飲み終わり、やおら立ち上がって艦橋とは反対方向へと歩きはじめる。
 向かった先は、通信統制室の一角にある通信ルーム。
 その中の一室に入り、端末の前に着座して、機器を操作している。
「特秘通信回線を開いてくれ」
 端末に向かって話すと、
『IDカードヲ、ソウニュウシテクダサイ』
 と喋り、言われたとおりにIDカードを差し入れると、
『モウマクパターンヲ、ショウゴウシマス』
 レーザー光線が目に当てられて、網膜パターンのスキャンが行われた。
『アレックス・ランドールテイトクト、カクニンシマシタ。トクヒカイセンヲ、ヒラキマ
ス』
 と同時に背後の扉が自動的に閉じられ鍵が掛けられた。
 アレックスは通信相手の暗号コードを入力して短い電文を送信した。

 静かな湖から白鳥は飛び立つ

 たったそれだけであった。
 何かを指示する暗号文なのであろうが、これだけでは知らない人間には通じない。
 おそらく受け取った誰かだけが、その真意を理解することができるのであろう。
 ややあってから、
『ジュシンヲ、カクニンシマシタ。リョウカイシタ』
 という通信が二度返ってきた。
 暗号文が二箇所の相手に伝えられ確認されたことを意味していた。
 通信端末の回線を切るアレックス。
 回線を切ると自動的に扉が開く。
「よし。これでいい」
 立ち上がり、通信ルームを退室する。


 艦橋に戻ると一騒動が起きていた。
 整然と並んでいた艦隊が乱れていた。
「どうしたんだ?」
「はい。地方の委任統治領の領主が参戦したいと割り込んできたのです」
「委任統治領?」
「いわゆる周辺地域をパトロールしていた警備艦隊を引き連れてきました」
「警備艦隊ねえ……」
 警備艦隊は、各地で起こった暴動や反乱などを鎮圧するのが主な任務である。
 つまり艦隊戦の経験がまったくないということである。
 これからやろうというのは、総督軍との艦隊決戦である。
 艦隊戦闘の経験のない艦隊など役に立つどころか足手まといになるだけである。
「ここで名を売っておこうという腹積もりなのではないかと」
「おそらくな」
「どうしますか、追い返します?」
「そう無碍にもできないだろう。何か役に立つこともあるだろうさ」
「索敵にでも出しますか?」
「いや。索敵を甘く考えてはだめだ。勝利の行方を左右する重大な任務に素人を投入する
のは危険だ」
「では、後方支援部隊に協力させて、解放した惑星の戦後処理にでも当たらせますか?」
「そうだな……」
 厄介なことになったが、相手は委任統治領の領主でり、土地持ちの上級貴族である。
 今後の銀河帝国における政策にも関わる問題であり、彼らを抜きにしては将来は保証で
きない。
ポチッとよろしく!

11

2020年3月29日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第七章 宇宙へ I

 機動戦艦ミネルバ/第七章 宇宙へ

 その後も、きびしい任務をこなしていたメビウス部隊のレイチェルの元に、ランドール
提督からの反攻作戦開始の連絡が入った。

『L4ラグランジュ点にある、ワープゲートを48時間以内に奪取せよ』

 という指令だった。
「これはまた難問を押し付けてきましたね」
 副官が驚きの声を上げる。
「反攻作戦にワープゲートが必要不可欠です」
「つまりシィニング基地にあるワープゲートを利用して、アル・サフリエニから一気に艦
隊を送り込めるというわけですね」
「その通りです」
「しかし、作戦遂行には宇宙に飛べる戦艦が必要ですが」
 メビウス部隊は、パルチザンとして内地で反乱を起こすのが主目的なので、宇宙戦艦は
なかった。
「あるわよ」
 耳を疑う副官だった。
「どこにあるんですか?」
「ほれ、そこにあるじゃないの」
 とレイチェルが指差したのは、サーフェイスとの戦闘で傷ついた艦を修理に戻って来て
いたミネルバだった。
「ミネルバ……?あれは大気圏専用の空中戦艦ではなかったのですか?」
「誰がそう言ったのですか?」
「ええ、いや……」
 うろたえる副官。
「一つ講義しましょうか」
「講義……ですか?」
「そもそもミネルバは、超伝導磁気浮上航行システムによって惑星磁気圏内を飛翔するこ
とのできる戦艦です」
「そう聞いております」
「さて磁気圏とは、どこからどこまでを言いますか?」
「磁気圏ですか……。ああそうか、判りました。磁気は大気圏内だけでなく、宇宙空間ま
で広がっており、磁束密度を無視すれば永遠の彼方まで続いています。重力と同じです
ね」
「よくできました。L4ラグランジュ点までは、十分な磁力密度があるということです」
「問題があるとしたら、真空に近い宇宙空間ということですが、水中に潜航できるくらい
ですから真空に対する気密性や耐圧性も高そうですね」
 管制室の窓から覗ける、ミネルバの整備状況を見つめながら、ランドール提督からの指
令をフランソワに伝える。

 ミネルバの艦橋にいるフランソワの元に、ランドール提督からの指令がレイチェル経由
して届いていた。
「というわけで、宇宙そらへ上がります」
 とフランソワが下令すると、
「やったあ!」
 オペレーター達が、小躍りして喜んだ。
 宇宙へ上がれば、憧れのランドール提督に会えるという期待感。
 新しい戦場への転進は、惑星上での戦いと違って、艦が撃沈されれば即死が待っている
という厳しい環境ではあるが、彼らの本来の主戦場は宇宙であったはずだ。
 士官学校を卒業して、志願してランドール艦隊へ配属されるのを希望したのだから。
 それが何の行きがかりか、パルチザン組織であるメビウス部隊配属となってしまった。
「修理、完了しました。いつでも出航できます」
 恒久班からの報告を受けて、
「ミネルバは、これよりワープゲート奪取作戦の任務を遂行する。全艦出航準備に入れ」
 フランソワが出撃命令を出す。
「全艦出航準備」
「ウィンザー大佐より連絡」
「繋いでください」
 正面スクリーンにレイチェルの姿が映し出された。
「今回の任務は、反攻作戦の天王山です。心して掛かるように」
「判っております。全精力を注いで任務遂行します。では、行って参ります」
 と返答して、ビシッと踵を合わせて敬礼する。
「気をつけて行ってらっしゃい」
 レイチェルも敬礼を返して見送る。
「出航準備、完了しました」
「よろしい、潜航開始」
「潜航開始!」
「メインタンク注水」
 基地内部の外界に通ずるプールに浮かぶミネルバが、ゆっくりと沈んでゆく。
「ハイドロジェット機関始動、微速前進!」
「ハイドロジェット機関始動!」
「微速前進!ようそろ」
 進入通路を潜航して進むミネルバの前方に壁が立ちはだかる。
「基地外壁ゲートをオープンせよ」
「外壁ゲートオープン」
 開いたゲートから、ミネルバが勇壮と出てくる。
「二十分このまま潜航を続ける」
 基地を出てすぐに海上に出れば、基地の位置を特定される危険を避けるために、しばら
く潜航を続けて基地から離れるようだ。
「二十分経過しました」
「浮上してください」
「浮上!」
「メインタンクブロー」
 やがて海上に姿を現すミネルバ。
「周囲に総督軍の艦艇は見当たりません」
 ベンソン副長が報告する。
「それでは、行きましょうか、宇宙そらへ」
「行きましょう!」
 ベンソン中尉も大乗り気であった。
「浮上システム始動!」
 やがて上空へ、さらに上空へと上昇するミネルバ。
「成層圏を通過します」
「各ブロックの耐圧扉を閉鎖」
 惑星大気圏と宇宙空間との境は明確にはないが、だいたい成層圏をもって境とするのが
一般的である。
「ハイドロイオンエンジン始動!」
 水中ではハイドロジェットとして活躍したエンジンであるが、宇宙空間ではイオンエン
ジンとしての両用可能となっている。
ポチッとよろしく!

11

«銀河戦記/鳴動編 第二部 第六章 皇室議会 IV