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2019年2月17日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第二章 選択する時 V

 機動戦艦ミネルバ/第二章 選択する時(日曜劇場)

 V 今後のこと 「結局のところ、このまま共和国同盟がバーナード星系連邦の一州になってしまうか、 それともランドール提督が解放に成功するか。って、どっちを信じるかに掛かってい るんじゃないの」 「冷静に勢力分析する限りでは、ランドール提督には三十万隻と同数に匹敵するとい われる機動要塞があり、マック・カーサーにはいずれ再編成される旧同盟の残存艦隊 百万隻と合わせて二百万隻にのぼる艦隊がある。仮に提督が防衛に徹するとすれば、 艦隊六十万隻相当、総督軍はその半分を自国防衛に回したとして残り半数の艦隊百万 隻との戦いになる。六十万隻対百万隻、提督の力量からして十分防衛可能な勢力とい えるだろう。しかしそれでは同盟の解放をするには至らない。そこでランドール提督 が反攻するとなると、動かせない要塞は無意味であるから正味三十万隻、対する総督 軍は持てるすべての二百万隻を動員できるから、三十万隻対二百万隻との戦いとなる。 よほどの奇策でも講じない限り勝てる見込みはないな……」 「それに解放軍にとってやっかいなのは、かつての味方同士で戦わなければならない ので、士気統制面で非常に不利益ということ。総督軍にとってはランドール軍はただ の反乱軍であるから、これを討伐することには何ら不都合は生じないのにたいし、解 放を旗印にするランドール軍には、旧同盟軍は味方でありまともには戦えない」 「現状のまま維持する限りは、ランドール提督の未来はないということか」 「勝算のない戦いはしないというのがランドール提督の性分らしい。にも関わらず総 督軍に楯突く限りは、何らかの作戦を用意しているに違いない」 「過去の例をとってみれば、継続してレジスタンス活動を維持し敵を追い出して国家 の再興を謀るには、対抗する国家の援助を取り付けられるかどうかにかかっていると いえる」 「対抗する国家?」 「銀河帝国だよ」 「そうか、帝国にとっては同盟が完全に崩壊してしまえば、次ぎなる獲物が自分達で あることを身にしみて感じているはず。そこに提督の望みがあるというわけか」 「銀河帝国と何らかの軍事協定を結ぶことに成功すれば望みも出て来る」 「そういうこと。ともかく提督には時間稼ぎが必要だ。そのためにレジスタンス部隊 として第八占領機甲部隊を各主要惑星に配置したのではないかと思うんだ」 「でもさあ、もし提督が同盟を解放することに成功すれば、俺達も功労者として二階 級特進とか勲章かなんかもらえちゃったりするのかなあ」 「可能性はあるんじゃない。マック・カーサー総督の首でも取れば間違いないかな」  議論白熱する乗員達であった。  それも議論に参加しているのは、若い士官達ばかりであった。  それはもちろん、アレックス・ランドールという英雄の存在がある中で、士官学校 に学んだ連中ばかりなのだ。  そのほとんどが、アレックスに対する熱い信奉があったのである。  一方その頃、フランソワは艦長室に一人 「果たして何人残るかしら……」  いくら反乱の狼煙を挙げたとしても、着いて来るものがいなければしようがないし、 故郷に弓引くことを強制することもできない。 「先輩なら、こんな時どうなさいますか?」  物言わぬパトリシアの写真に向かって問いかけてみるフランソワであった。  ノックの音がして、リチャードが入ってくる。 「あれから三十六時間が経過しました。現在時点の退艦希望者リストです」 「こんなに……」 「妻帯者を中心に七十余名に登る士官が退艦を申し出ております」 「仕方がありませんね。妻や子供を残していくわけにはいかないでしょうから」 「はい」 「リストの全員に退艦許可を与えます。退艦用の艀を用意してください。期限の十二 時間後に出発させましょう」 「わかりました」
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2019年2月16日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第二章 III

第二章 ミスト艦隊(土曜劇場)

                III  重力アシストに突入して十二分、巨大惑星の背後から赤く輝く小さな星が現れた。  カリスの衛星ミストである。  デュプロス星系において人類生存可能な星にして、カリスとカナン双方の中に存在 する唯一の衛星である。  二つの巨大惑星は周囲の星間物質を飲み込んで、三つ目の惑星どころか衛星さえも 存在しえないはずだった。  ミストは、恒星系が完成したその後に、どこからか迷い込んできた小惑星を取り込 んで衛星としたと推測されている。  実際に、巨大惑星の重力の及ばない最外縁には、いわゆるカイバーベルトと呼ばれ る小惑星群がある。そこから軌道を外れた小惑星が第二惑星カナンに引かれはじめた。 そのままでは、カナンに衝突するはずだったが、たまたま内合を終えたばかりの第一 惑星カリスによって軌道を変えられて、その衛星軌道に入った。  それがミストが衛星として成り立った要因ではないかとされている。  ミストはカリスの強大な重力によって常に同じ表面を向けている。一公転一自転と いうわけである。  その地表はカリスの重力の影響を受けて至る所で火山が噴出して地表を赤く染め上 げている。地熱を利用した豊富な発電量によって人類の生活を潤していた。 「せっかくここまで来たのに。立ち寄りもせずに素通りとはね」 「仕方ありませんよ。それより、ほら。お出迎えです」  ミストから発進したと思われる艦隊が目前に迫っていた。 「ミスト及びデュプロス星系を警護する警備艦隊です」 「警備艦隊より入電です」 「スクリーンに流して」  スクリーンの人物が警告する。 「我々は、デュプロス星系方面ミスト艦隊である。貴艦らは、我々の聖域を侵害して いる。所属と指揮官の名前を述べよ」  相手は旧共和国同盟の正規の軍隊ではないとはいえ、節度ある軍規にのっとった警 備艦隊である。  いきなり戦闘を仕掛けてくるようなことはしない。  まずは自分が名乗り、そして相手に問いただす。  それに対して襟を正してスザンナが静かに答える。 「こちらはアル・サフリエニ方面軍所属、アレックス・ランドール提督率いるサラマ ンダー艦隊です。」 「サ、サラマンダー艦隊!」  さすがにその名前を聞かされては、驚愕の表情を隠せないようだった。  スザンナが共和国同盟解放戦線としてではなく、旧共和国同盟軍の称号を名乗った のは、敵対する意思のないことを伝えたいからだった。 「我々は、デュプロスに危害を加えるつもりはありません。ただ、通過を認めてもら いたいだけです」 「これまでにも貴艦らと同じように、周辺国家の艦隊が銀河帝国へ亡命するためにこ こを通過しようとしたが、ことごとく追い返したのだ。一度でも通過を許したことが 伝われば、同様のことが立て続けに発生するだろうからだ」 「でしょうね……」  スザンナが納得したように頷く。  バーナード星系連邦に組みして総督軍に編入されるか、共和国同盟解放戦線に加担 するか、そのどちらにも賛同し得ない国家や軍隊にとって第三の選択肢が、銀河帝国 への亡命であった。  しかし帝国へ亡命するには、最寄の星系であるこのデュプロスからもかなりの道の りを要するために、補給のために立ち寄る必要があった。
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2019年2月10日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第二章 選択する時 IV

 機動戦艦ミネルバ/第二章 選択する時(日曜劇場)

                 IV  それから数時間後。  アレックスが自分の意思を発表したように、フランソワも自分の意思を艦内放送で 流すことにした。 「ミネルバの乗員に告げます。先の記者会見放送のごとく、共和国同盟はバーナード 星系連邦の手に落ち、旧同盟艦隊は解体され総督軍に再編されることが要求されてい ます。その一方で我第八占領機甲部隊メビウスは、タルシエン方面軍司令官アレック ス・ランドール提督の配下にあります。我がミネルバは提督の意志に従い、レジスタ ンス部隊の用兵としての任務を開始します。ゆえに乗員達には、故郷に弓引く結果を 招くことになります。しかし、それも同盟を解放するための犠牲として考えておいて ください。強制は致しません。意にそぐわなければミネルバから退艦することを許し ます。四十八時間待ちます。それまでに進退を決定してください」  残るも去るも本人の自由意志にまかせることにしたのである。 「あんなことをおっしゃって良かったのですか?」 「この艦に乗艦している者の多くは士官学校を繰り上げ卒業されて特別徴用されてい ます。軍人としての心構えも出来ないうちに無理矢理引っ張り出されたのです。学生 気分のままの者もいます。また家族のいる人もいるでしょう。元々全員、共和国同盟 の軍人なのです、同盟が消滅した時点で、軍人としての身分はすでに消失しているの です。軍人ではなくなったからには、祖国へ帰るのが自然であり、それを拘束する権 利は誰にもないのです」 「確かにそうですね。無理に引き止めても、士気の低下は避けられませんし、謀反も 起きるでしょう」 「レジスタンス活動をする人材は、自らの意思で残ってくれる人だけに限るべきで す」  そんなフランソワの気持ちを察してか知らずか、乗員達はそれぞれに結論を出しつ つあった。 「あなたはどうするの?」 「あたしは、艦長についていきます」 「そりゃ、あなたは艦長をお姉さまと思って慕ってるかんね」 「しかしランドール提督はともかく、うちの艦長さんは士官学校出たての新米艦長だ かんな。俺達の命を預けるには心許ない」 「そうはいうけど、提督が軍法会議にかけられそうになった時に、計略を案じて救っ たのは艦長らしいわよ。つまり今の提督があるのは艦長のおかげというわけね」 「結局、その時もそうだけど、艦長さんは同盟に弓引く定めの星の下に生まれたとい うことかな」 「俺達の任務って、解放軍にとってどんなもんなんだろうか」 「どういうこと?」 「解放が成功するもしないも、結局は宇宙空間における艦隊決戦にかかっているだろ う。惑星を守るのも攻撃するのも艦隊次第で、制宙権を確保したほうが周辺の惑星を 手中にできるということ。となると俺達のやっていることって何なんだろうかと疑心 暗鬼になる」 「そりゃおまえ、自分達つまりトランターにいるミネルバだけを考えるならそうかも 知れないけど、これが同盟の全惑星規模でレジスタンス活動が発起されてかつ綿密に 連絡を取り合えば大きな力になるってことだよ」 「例えば捕虜になって収容所に入れられたとするでしょう。すると敵軍は捕虜を監視 するのに貴重な兵士を裂かなければならないし、脱走されたりなんかしたらさらに捜 索のための警察や軍隊を出動させることにもなる」 「そうそう。戦う能力のない奴は速やかに捕虜になったほうが、自国のためになるっ てことさね」 「捕虜は消極的・受動的ではあるし国家が消滅してしまえば意味をなさないが、より 積極的・能動的な行動に出て国家を再建しようとするのがレジスタンスだな」 「敵の注意を自分達に向けさせ兵力分散させるとともに、隙あらば転覆させてしま う」
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2019年2月 9日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第二章 II

第二章 ミスト艦隊(土曜劇場)

                  II  スザンナが着々と重力アシストの手順を遂行している間、後方の参謀席で退屈そう にしているジェシカだった。 「うーん……、何と言ったらいいのかしら……」  言葉が出掛かっているのだが、うまく表現できないという表情。 「どうしたのですか?」  パトリシアが怪訝そうにたずねる。 「あなた、何とも思わないの?」 「何がですか?」 「作戦参謀が主任務とはいえ、あなたも艦隊指揮を許された戦術士官でしょうが」 「そうですけど……」 「大佐で上官であるあなたが、少佐で下位のスザンナに指揮を任せていることよ。作 戦遂行中における艦隊指揮は、より上位の者が指揮を執るのが普通じゃなくて?」 「スザンナは旗艦艦隊司令官ですよ。例え階級が下位でも、職能級が上位の者が指揮 を執る。それがこの艦隊の慣例です」 「それなのよね……。普通は大佐を当てる旗艦艦隊司令に、いくら適材適所だからと いって、少佐に新任したばかりのスザンナを当てるなんて、常軌を逸脱しているとし か言えないわね」 「そこがまた提督の人となりじゃないですか。常に将来を見越して行動しているお方 ですからね。士官学校の模擬戦闘の時からずっと……」 「ああ、敵司令官を官報公表前のはるか以前から、予想的中させてその性格からすべ てを調べ上げて、模擬戦闘に勝利したというあれね。タルシエン要塞攻略の秘策もこ の頃から練り上げていたというじゃない」 「そういうことです……」  常識的には納得できなくても、将来を見越した計算の上に判断されたのであろうア レックスの決定には、誰にも口を挟むべきだとは考えない。  後方で、そんな会話が行われている間も、スザンナの操艦は続いている。 「コース設定に変更ありません」 「よろしい。これより重力アシストに突入する。全艦、重力アシスト態勢に入れ!  秒読み開始」 「重力アシスト、突入四十五秒前。進路オールグリーン、航行に支障なし」  最終カウントダウンがはじまった。 「三十秒前……5,4,3,2,1」 「全艦、重力アシスト開始!」  号令と同時に一斉に加速をはじめる艦隊。  これまでは、カリスの衛星のミストの孫衛星軌道に入るためのコースを取っていた から、カリスの重力圏から離脱するには加速が足りなかった」 「重力アシストへの投入成功。カリス重力圏離脱コースに乗りました」 「よろしい。現在のコースを維持せよ」 「了解!」  カリス重力圏離脱コースに乗り切ったということで、オペレーター達の表情から緊 迫感が消えていた。 「まずは一安心というところかしら」  ジェシカが呟くように言った。  その言葉には、次なる課題に対する思いが含まれていた。 「そうですね。あの星が、わたし達の通過を素直に認めるかです」 「ええ……」
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2019年2月 3日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第二章 選択する時 III

 機動戦艦ミネルバ/第二章 選択する時(日曜劇場)

                 III  艦橋から物資の補給状況や対空監視のために居残っているフランソワ。  そこへイルミナがやってくる。 「艦長。艦長もいらしてくださいよ」  といって、すでに水着にパーカー姿のイルミナ・クレソン准尉が強引にフランソワ の袖をつかんで引き連れていく。 「ちょっと、だめよ」 「だめだめ、艦長がこなくちゃはじまらないんだから」 「それに、水着だって持ってないし……」 「大丈夫。艦長の分もちゃんと用意して有ります。ほら」  といってイルミナは、ワンピースの水着を差し出した。 「もう……しようがないわね」 「いいじゃありませんか。行ってあげてくださいよ。艦長が動かなければ、他の隊員 も遠慮して、動けないじゃないですか。大丈夫、対空管制は自分が見ていますから」  副長が言うように艦橋には、まだ半数の隊員が残っていた。遠慮のない三回生を除 く、四回生の一部と正規隊員のほとんどである。 「そ、そうですか。では、すみません。後をよろしくお願いします」 「まかせてください」  フランソワが動いたことで、残っていた隊員のほとんどが同時に席を立ちはじめた。  シューマット群島は珊瑚礁に囲まれた温暖で風光明媚な島である。はるか昔、トラ ンターに人類の植民の手が入った時、地球環境より持ち込まれた生物が海や陸にと分 布を広げ、このシューマット群島にも海洋性気候に準じた生物系に進化して、今日の 姿を留めることとなったのである。また自然環境保護地域に指定され、一切の人工建 造物設営及び居住が禁止されている。  砂浜は天然の海浜公園と化していた。  海に入って泳いでいるもの。  島の砂浜にビーチパラソルを広げて、その日陰に涼んでいるもの。  ネットを張りビーチバレーに興じるもの。  各人それぞれが思い思いに短い休息を楽しんでいた。  突然大型ワゴンカーが砂浜に入り込んできた。 「何事……?」  一同が首を傾げている間にも、ワゴンカーは止まり、サイドボードを開いて即席出 店を広げはじめたのだ。 「へーい。らっしゃい、アイスクリームにホットドック、ジュースにコーラはいか が?」  ワゴンカーを持ち出したのは、料理長のニック・ニコルソン曹長であった。 「おお!」  わらわらと人が集まってきて、早速オーダーを開始した。  イルミナがホットドックとコーラを運んできた。 「はい。艦長、どうぞ」 「ありがとう。でも、お金はどうしたの?」 「認識章を見せたらツケで買えました」 「ツケねえ……後で私が払っておくわ。ニコルソン曹長でいいのよね」 「あ、ありがとうございます」  砂浜に腰掛けてホットドックを食べ始める二人。  イルミナが質問する。 「艦長、聞いてもいいですか」 「なにかしら」 「艦長は、どうしてこんな任務を引き受けられたのですか?」 「そうねえ。トランターが好きだから……といいたいけど、私の大好きな先輩のたっ ての直接の依頼だったから」 「知ってます、パトリシア・ウィンザー大佐でしょう」 「ランドール提督にしても、この作戦を任せられるのは私しかいないって、絶大なる 信頼を得ているからといって」 「それです。提督は本当に反攻作戦を考えておられるのですか?」 「もちろんです。だからこそ私を遣わせてレジスタンス活動をさせているのです」 「総督軍の足元を攪乱するためですね」
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2019年1月29日 (火)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第二章 I

第二章 ミスト艦隊(火曜劇場)

                I 「惑星カリスによる重力加速は順調に推移しています」  質量のあるものが存在すれば、互いの重力に引かれて接近することは、万有引力の 法則で周知の通りである。  その際における重力加速を利用して、艦隊は速度を増しつつあった。 「まもなく、重力アシスト{grabity assist}に入る。これより艦隊リモコンコード を発信する、全艦これを受信し、旗艦サラマンダーに同調せよ」  指揮官席からスザンナが指令を出している。  重力アシストによるコース変更と重力加速は、スハルト星系遭遇会戦でスザンナが 提唱し遂行した作戦である。当の本人が指揮をとっているのだから 間違いは起こさ ないだろうという将兵達の評判であった。  すでにデュプロスに進入していた艦隊にとっては、エンジンを吹かして軌道変更す るよりも、巨大惑星の重力を利用した重力アシストを行った方が、移動距離は長くは なるがほとんど燃料を使用することなくコース変更と加速ができる。 「カリスの平均軌道速度は36.37km/sです。重力アシスト加速の期待値は、相対質量 比は無視できますのでおよそ90%程度と推定され、最大32.741km/sの加速度が得られ ます」  スザンナの副官のキャロライン・シュナイダー少尉が報告する。  彼女は、スザンナが旗艦艦隊司令となると同時に副官としての辞令を受けていた。  名だたる高速戦艦サラマンダーを擁する旗艦艦隊司令の副官に選ばれたことで、親 類縁者からも一族の誇りとして期待され、本人も大いに張り切っていた。 「ちなみに過去に地球から打ち上げられた【ボイジャー2号】では、平均軌道速度13. 0697km/sの木星に対して11km/sの重力加速を得られました」 「ありがとう」 「今回は、スハルトの時と違って燃え盛る恒星じゃないし、巨大惑星のカリスによる 一回の重力ターンで済むから楽ですね」 「でも重力が桁違いだから、少しでもコースを間違えればコースに乗り切れなくなる わ」 「そうですけどね……」 「全艦、艦隊リモコンモードに入りました。重力アシスト遂行の準備完了です。全艦、 異常なし。航行に支障ありません。いつでも行けます」  ミルダの報告を受けて、全艦体勢での重力アシストに突入する。 「カリスとの相対距離は?」 「3.2光秒です」 「重力アシストを決行しましょう」  言いながらちらと後方を確認するスザンナ。  アレックスは姿を見せていない。  スザンナを信用して、重力アシストを任せきりにするようだ。 「コース設定を再確認せよ」  相手は超巨大惑星である。  桁外れの重力によって、ちょっと進路がずれただけも大きく進路から外れてしまう。  念のための再確認をするのは当然であろう。、 「コース設定を再確認します」
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2019年1月27日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第二章 選択の時 II

 機動戦艦ミネルバ/第二章・選択の時(日曜劇場)

 II 選択の時  補給を終えた補給艦が去っていく。  それを見送るミネルバの乗員達。 「艦長。トランターを占領した連邦軍の記者会見放送が入っています」 「拝見しましょうか。艦内放送にも流してください」 「わかりました」  パネルスクリーンにトランターを占拠した連邦軍戦略陸軍中将マック・カーサーが 映しだされていた。 『本日をもって、トリスタニア共和国同盟はバーナード星系連邦の支配下に入ったこ とを宣言する』  艦内にどよめきが広がった。 「来るべき時が来たというところですね」  記者会見放送は続いている。  一人の記者が代表質問に立った。 『共和国同盟には、出撃に間に合わなかった絶対防衛艦隊や、周辺守備艦隊を含めて、 残存艦隊がまだ三百万隻ほど残っています。これらの処遇はどうなされるおつもりで すか?』 『残存の旧共和国同盟軍は、新たに編成される総督軍に吸収統合されることになるだ ろう』 『タルシエン要塞にいるランドール提督のことはどうですか? 彼は未だに降伏の意 思表示を表さずに、アル・サフリエニ方面に艦隊を展開させて、交戦状態を続けてい ます』 『むろんランドールとて共和国同盟の一士官に過ぎない。共和国同盟が我々の軍門に 下った以上、速やかに投降して、要塞を明け渡すことを要求するつもりだ。もちろん 総督軍に合流するなら、これまで共和国同盟を守り通したその功績を評価して、十分 な報酬と地位を約束する』  マック・カーサーの記者会見放送に対する乗員達の反応はさまざまだった。 「どうなんだろうね。ランドール提督は徹底抗戦を続けるつもりなのかな」 「じゃない? だってこうやって、メビウス部隊をトランターにわざわざ派遣して、 レジスタンス活動させているんだもの」 「しかしそれって、共和国同盟の軍人同士で戦うことを意味してるんだぜ」 「要は艦長次第じゃないのか?」 「もちろん徹底抗戦に決まってるじゃない。こういう時期に転属命令を受けてやって 来たんだから、それ以外に考えられないでしょ」  各自それぞれの意見を寄せ集めて、議論真っ盛りであった。 「乗員達の間では、意見真っ二つに分かれています」  乗員達の議論を耳にした副長のリチャードがフランソワに伝えていた。 「でしょうね。誰も今後のことはどうなるか判らないし、味方同士で戦うのを避けた いと思うのは当然ですよね」  フランソワは、この地にしばらく留まることにした。  乗員達に議論の時間を与え、各自の意思を固めさせるためである。  もちろん士官学校繰上げ卒業で、未熟なまま徴用された新人達に、艦内装備や艤装 兵器などの習熟度を上げる訓練をも兼ねていた。  さらにしばらくして、マック・カーサーの宣言に答えるように、アレックス・ラン ドール提督の放送が流された。 『共和国同盟に暮らす全将兵及び軍属諸氏、そして地域住民のみなさんに伝えます。 私、アレックス・ランドールは、タルシエン要塞を拠点とする解放軍を組織して、連 邦軍に対して徹底抗戦することを意志表明します。解放の志しあるものは、タルシエ ン要塞に結集して下さい。猶予期間として四十八時間待ちます。なお以上です』  放送を聞き終えたリチャードが質問する。 「どうなんでしょう。タルシエンに結集する艦隊はあるのでしょうか?」 「期待は薄いでしょうね。解放軍に参加するということは、故郷に対して弓引くこと になる結果を招くことになるわ。つまりこのミネルバのようにね。辺境の地へわざわ ざ出向いて行くことはしないでしょう」 「ということは現有勢力だけで戦わなければならないというわけですか」 「そうなるでしょうね」
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2019年1月22日 (火)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第一章 IV

第一章 中立地帯へ(火曜劇場)

                 IV  と、その時、通信士からの報告が入った。 『トランターのウィング大佐より、極秘暗号通信が入電しています』 「こっちへデータを回してくれ」 『データをそちらへ回します』  端末が受信状態となり、自動的に暗号解析が行われて、パスワード入力画面が表示 された。 「レイチェルからの極秘暗号通信とはね。よほどの緊急通信なのかしら」  画面をのぞき込むジェシカに、スザンナが答える。 「当然じゃないでしょうか。レイチェルさんのいる場所は、敵のただ中ですよ。総督 軍の監視網をかいくぐって通信を送るのは、へたをすれば基地の場所を悟られる結果 となり、多大な危険を伴います」 「なかなか連絡が取れないレイチェルさんからの通信だというのに、双方向通信がで きないのは寂しいですね。それにフランソワのことに気になっているんですが……」  さも残念そうな表情のパトリシアだった。 「仕方がないわよ。フランソワもちゃんとやっているって! それよりとにかく、早 く暗号を解いてよ、アレックス」  端末を叩いてパスワードを入力するアレックス。  キー入力操作を眺めていればパスワードを知ることができるのだが、ここにいるの は士官学校時代からの腹心中の腹心達ばかりである。気にする必要はなかった。 『パスワードヲ確認シマシタ! 認証バッチヲドウゾ』  アレックスは胸に刺してある戦術士官徽章を外して認証装置の上に置いた。  徽章は階級を示すと同時に、組み込まれたICチップが個人を識別して認証装置を 作動させることができる。  艦内の移動において自動ドアが開くのは、徽章から識別コードが発信されているか らである。 『アレックス・ランドール少将ト確認。映像回線ヲ開キマス』  ディスプレイにレイチェル・ウィング大佐の姿が映し出された。  一方通行の秘匿通信なので、相手からの送信を受け取るだけしかできない。 『簡潔明瞭に報告します。バーナード星系連邦の先遣隊が銀河帝国への進軍を開始し ました。その一方においてほぼ同時刻に、銀河帝国のジュリエッタ第三皇女が配下の 艦隊を引き連れて、辺境周辺地域の警備状況の視察に赴くという情報があります。お そらく先遣隊は皇女艦隊を襲撃拉致しようともくろんでいるものと推測されます。た めに、速やかなる対処が必要かと思われます。先遣隊の進撃ルートは不明、司令官に すべて一任されているもよう。第三皇女艦隊の進行ルートのデータを送信します。そ れでは、幸運を祈ります』  暗号通信が途切れた。 「うーん……、これは問題だな」  と唸って、しばし考慮中となるアレックスだった。  それはまた、言葉には出さないが『君達ならどうするかね』と質問する意思表示で もあった。  私も考えるが、君達も考えたまえ。  と、言っているのである。  もちろんそれに気づかない者はいない。  一同の討論がはじまる。  一番手はパトリシアだった。 「第三皇女が拉致されたら、これから提督がされようとしている銀河帝国との協定交 渉が暗礁に乗り上げてしまいます」 「逆に連邦側の言いなりになる可能性がでるわね」  ジェシカが言葉尻を次いで発言する。  その後は順次発言を続ける。 「奴らに先をこされないようにして、帝国皇女を保護されたらいかがでしょうか」 「それは不可能ですよ。そうするためには中立地帯を越えることになります。戦艦が 中立地帯を通行するのは、国際協定違反になります」 「そういうことね。だからこそ、デュプロス星系に滞在して、接触の機会を伺おうと していたのよ……」 「何を悠長なことをおっしゃるのですか。先遣隊は、すでに行動を起こしているので すよ」 「これは切実なる国家間の外交問題です。外交に不慣れな軍人が立ち入るようなもの ではないのです。まかり間違えば戦争に発展することもありえるのですから」  堂堂巡りであった。  皇女を救いたいが外交問題で中立地帯への進入がかなわない。  かといってこのまま手をこまねいていては連邦の思うつぼになってしまう。  後は、アレックスの決断次第であった。 「提督はどうお考えですか?」  一同が司令官の判断をあおいだ。 「そうだな……。やはり、放っておくことはできないだろう。デュプロス星系への進 攻作戦は一時延期し、中立地帯へ転進する」 「今から向かっても間に合わないのでは?」 「かも知れないが、敵艦隊の狙いが第三皇女の拉致にあるとしたら、皇女艦隊が視察 範囲の最も外縁に到達するのを待たねばならない。それ以前に侵攻すれば察知されて 引き返されて拉致に失敗することになる。いかに高速艦艇を揃えていて追撃にかかっ たとしても、帝国軍は全力を挙げ身を犠牲にしても、皇女を後方へ脱出させるだろ う」 「なるほどね。さすがは私たちの指揮官だわ。相手もすぐには中立地帯へ踏み込めな いなら、こちらにも追いつく時間が稼げるというわけですね」  ジェシカが感心して賛同する。 「おだてるんじゃない。ミルダ! レイチェルが暗号文を送信した時間を出発時間と し、敵先遣艦隊が連邦の最寄の基地を出発して銀河帝国へ向かったと想定して、その 進撃予想ルートと、我が艦隊が転進してこれを追撃するとした場合の最短ルート及び 遭遇地点と時間を計算して出してくれ」 「了解しました!」  端末を操作して航路設定を計算するミルダ。  航路に関することなら、艦隊随一の航海長。  計算はすぐに終了した。 「航路でました」 「よし! そのデータをリンダに送ってくれ。予定を変更する。スザンナ、艦隊を転 進させる」 「了解しました」  新たなる動きが発生した。  銀河帝国へ先遣隊を向かわせた連邦軍と、おそらく何も知らないであろう銀河帝国 第三皇女の一行。  皇女を拉致されないためにもと、急遽予定を変更して中立地帯へと転進したアレッ クス達解放軍。  果たして、いずれかに運命の女神は微笑みかけるのだろうか? 第一章 了
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2019年1月20日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第二章 選択する時 I

 機動戦艦ミネルバ/第二章 選択する時(日曜劇場)

I 補給部隊  シューマット群島に近づいたミネルバ。  潜望鏡深度で慎重に周囲を探査している副長がいる。 「二時方向の海上すれすれに艦影。どうやら味方の補給艦のようです」 「1300時、定刻通りですね。浮上しましょう。上陸準備にかかってください」 「浮上!」 「第一班、警戒体制の位置につけ」  波静かな海上に補給艦が影を落としている。その影から波飛沫を上げて、ミネルバ が浮上してくる。 「補給艦より連絡。島の南東部の入り江付近に降下するそうです」 「艦を島の入り江に入れてください」 「了解。面舵十五度」 「ハイドロジェットエンジン停止。後は慣性に任せて前進する。制動エンジン噴射準 備」  ハイドロジェットエンジンはその機能上から前進のみしか出来ないので、制動用の 補助として空中推進用の逆噴射エンジンを併用して使用する。 「制動エンジン噴射準備完了」  ゆっくりと滑るように入り江に侵入するミネルバ。 「沿岸まで五十メートル。制動開始」  断続的に逆噴射が行われて徐々に速度を落としていくミネルバ。 「面舵一杯! 左舷側に接岸する」  沿岸ではすでに降下した補給艦が荷おろしの準備を開始していた。  そのそばに着岸して停止するミネルバ。  すぐさま物資の搬入がはじめられた。搬送トラックが両艦の物資搬入口を往来して、 弾薬・食料などを移し替えていく。  ミネルバの作戦室。  補給艦の艦長ベルモンド・ロックウェル中尉が航海図を指し示しながら説明してい る。 「ここがメビウスの秘密基地のある海域です。この深海底に秘密基地への入り口があ ります」 「ずいぶん遠いわね」 「ただ基地への来訪はもうしばらく後にしていただきます」 「なぜですか?」 「このミネルバの任務が敵の陽動にあるからです」 「陽動作戦?」 「あえて敵の渦中に飛び込み、注目を集めるような行動を起こして頂きたいのです」 「それはレイチェル・ウィング大佐の指令ですか?」 「もちろんです。私は指令を伝えているだけです」 「要するに基地には近づかないで欲しいということですね」 「その通りです。基地の存在が敵に知られれば、メビウスの存続も危うくなりますの で」 「判りました。指示に従いましょう。しかし、補給は今後も受けられるのですよ ね?」 「可能な限り手配するとのことです」 「ならいいでしょう」 「私から連絡することは以上です。よろしいですか?」 「はい。ご苦労様でした」 「補給が終わるのは、三時間後です。それでは」  と敬礼して退室していった。 「艦長。補給を終えるまで三時間は要します。今のうちに補給に関わらない戦闘要員 などに休息を与えてはいかがでしょうか」  イルミナが進言した。 「ところであなたは?」  ミネルバに来て早々から戦闘状態となったために、各士官達の紹介がまだ済んでい なかった。 「あ。わたしは、艦長の副官を仰せつかっております、イルミナ・カミニオン少尉で す」 「イルミナ・カミニオン少尉ですね」 「はい。それで休息の方は?」 「そうですね。どうせ補給が終わるまでは発進できませんから。よろしい、許可しま しょう。半舷上陸を与えます。ただし、三時間だけですよ」 「やったー!」  小躍りして喜ぶ隊員達。それもそのはずで、ミネルバに乗艦しているとはいえ、そ もそもは訓練航海の最中に、戦時特別徴用法の適用を受けて、士官学校を繰り上げ卒 業して、現地徴用されて四回生は少尉に、三回生は准尉とそれぞれ任官されてしまっ たのである。士官学校生気分から抜けきれない隊員も相当数にのぼっていた。四回生 はともかく三回生はまだまだ子供なのである。  それから艦橋オペレーター達の紹介があってから、レーダー管制員を覗いて半数ず つに分かれて上陸・休養の時間が与えられた。  女子更衣室。 「ねえねえ。水着持ってる?」 「もちろんよ。こんなこともあろうかとちゃんと持ってきていました」 「ところで艦長は?」 「艦橋にいらしたわよ」 「休息しないのかしら」 「やっぱり艦長ですもの」 「それじゃあ、可哀想よ」
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2019年1月15日 (火)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第一章 III

第一章 中立地帯へ(火曜劇場)

                III  アレックスは、タルシエン要塞においての篭城戦を想定していた。  防御においては鉄壁のガードナー少将が篭城戦の布陣を敷いて総督軍との戦いを長 期戦に誘導している間に、アレックスは銀河帝国との共同戦線の協定を結び、援軍を 得て一気に反抗作戦に打って出る戦略であった。  ところが周辺国家から相次いで救援要請が出され、タルシエン要塞から艦隊を派遣 する必要が生じたのである。 「救援要請への援軍派遣をガードナー提督に意見具申したのはゴードン・オニール准 将です。ガードナー提督はその強い要望に根負けして派遣を受諾したらしいです」 「ああ……。ゴードンはじっとしていられない性格だからな。そして後のことを任せ たガードナー提督が、それを許可したのだから私が言うべきものでもないのだが……。 最大の問題は補給だよ。遠征を行うには十分な補給が必要だ。そのためにシャイニン グ基地とカラカス基地の封印を解いて補給拠点とし、それぞれに一個艦隊の守備艦隊 を配置しなければならなくなった。このことがどういう意味をなすか判るかね?」 「兵力の分散……」 「そうだ。総督軍に各個撃破の機会を与えるだけじゃないか」 「しかし、シャイニングには大型の戦艦を建造できる造船所もあります。フル稼働さ せて戦力を増強できます」 「おいおい。戦艦を建造するのに何年掛かると思うかね。一隻完成させるまでに、最 低三年は掛かるのだぞ。解放軍を支えていくだけの戦力としては期待するだけ無駄だ。 多くを持たない弱体な解放軍が勝利するには、短期決戦しかないのだ」  深い思慮の元に発言するアレックスの意見に反対できるものはいなかった。 「とはいえ……。動き出してしまったものを止めることは、もはや不可能と言わざる を得ない。事ここに至っては不本意ではあるが、解放軍として要請がある限り救助に 赴くのは致し方のないことだ。遠き空の下、解放軍の善戦を祈ろうじゃないか」 「はい!」 「さて、会議の続きをはじめようか。リンダからの報告もあったデュプロス星系につ いてだ」  航海長のミルダ・サリエル少佐が、リンダの報告を受けての補足説明をはじめた。 「デュプロス星系は、二つの超巨大惑星である【カリス】と【カナン】を従えた恒星 系で、二惑星の強大な重力によって、三つ目以上の惑星が存在できないものとなって おります」 「三つ目が存在できない? それはどうして?」  ジェシカが尋ねたが、ミルダはアレックスの方を見やりながら、 「とっても難しい理論の説明をしなければいけませんが……」  と、この場で解説するにはふさわしくないことを暗にほのめかしていた。 「あ、そうね。次の機会ということで、先を続けて……」  それに気がついて、質問を撤回するジェシカだった。  解説を続けるミルダ。 「デュプロス星系は、銀河帝国に至る最後の寄港地です。それゆえに最大級の補給基 地となり、また銀河帝国の大使館なども誘致されております。本来はサーペント共和 国の自治領内にあるのですが、軍事的外交的に重要な拠点惑星として、特別政令都市 国家としての自治権が与えられております。銀河帝国との協定により共和国同盟軍の 駐留が認められていなかったために、現時点においても連邦ないし総督軍の駐留艦隊 はいないとの情報ですが、旧共和国同盟時代から引き続き辺境警備に当たっている国 境警備艦隊がいます。まあ、実戦経験はまるでないので、いざ戦闘となっても脅威は まったくないのですが……」  その言葉尻をついて、ジェシカ・フランドルが答える。 「かつての同輩との戦いになるということね」 「はい、できれば、何とか説得して戦闘回避できれば良いのですがね」 「ランドール艦隊のこれまでの実績を考えれば、戦闘を選ぶことがどれほどの愚の骨 頂である判るはずですけどね」 「そうあって欲しいですね」  ため息にも似たつぶやきを漏らすミルダであった。  ちなみにこのミルダは、あの模擬戦闘にも参加し、ミッドウェイ宙域会戦からずっ とアレックスの乗艦の航海長を務めてきた古参メンバーの一人でもある。階級は少佐 ではあるが、艦長のリンダ同様に一般士官としてであり、戦術士官ではないので艦隊 の指揮権は有していない。戦術士官が必ず受けることになる佐官へのクラス進級に掛 かる査問試験を受けずして少佐になっている。共和国同盟のすべての星系マップ、航 海ルートを知り尽くしており、作戦を実行し宇宙を航海する艦隊にとっては必要不可 欠な人材である。  艦長のリンダにとっては、こちらの方が上官になるので、何かとやりずらい悩みと なっている。  アレックスは一同を前にして毅然と言った。 「何はともあれ、銀河帝国と交渉し協力関係を結ぶためには、そのデュプロスに滞在 して帝国に対しての使節派遣などの折衝を執り行う必要がある。デュプロスはどうし ても確保しなければならない。かつての同輩である辺境警備隊との交戦になることも 仕方なしだ」  その言葉によって、一同の考えは一致をみることとなった。
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