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2019年9月15日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XVⅢ

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                XVⅢ 「高速推進音接近! 魚雷です」  聴音機(パッシブソナー)に耳を傾けていたソナー手が報告する。 「急速浮上! デコイ発射」  魚雷が急速接近してくる。SWSは急速浮上してこれを交わしながら、デコイ (囮魚雷)で魚雷の目標を反らしてしまおうというのだ。 「アクティブ・ソナー音が強くなってきます。敵艦接近中」  超音波を出して、その反響音から敵艦の位置を探るのがアクティブソナーである。 敵艦を補足して、頭上から爆雷を投下するのが、攻撃の手順である。  敵艦を探知するには確実であるが、逆に言えば音源を発していることから逆探知 されることを意味して、隠密を前提とする潜水艦側から使用することはまれである。 「爆雷です!」  イヤフォンを急いで外しながら、再び叫ぶソナー手。 「取り舵十度! 深度百メートル」  逃げ回るしかなかった。  水上艦対潜水艦の一対一の戦闘の場合、圧倒的に水上艦の方が優位だとされてい る。艦の速度差、探知装置の充実性、攻撃力の相違など、水中にある潜水艦は劣勢 に立たされる。よって水上艦と接触したら逃げ回るしかないのが現状である。  最上の方策が、敵の攻撃や探知の届かない深深度潜航で逃げるのが一番である。  しかしこの艦長は、反撃を企んでいるのか、浅い水域を逃げ回っていた。  一回目の爆雷攻撃を終えた水上艦は一旦離れていった。が、やがて引き返してき て攻撃を再開するだろう。 「もう一度魚雷がくるはずだ。それを交わして次の爆雷攻撃の直後に、潜望鏡深度 に急速浮上して、魚雷攻撃を敢行する。狙いはつけられないが、必ず当てられるは ずだ」  予想通りに魚雷が襲い掛かってくる。 「アンチ魚雷発射! 五十まで浮上」  迫り来る魚雷を直接破壊する迎撃魚雷である。  難なく魚雷を交わして、次の攻撃を待つ。 「さて、次にくる爆雷攻撃の後が肝心だ。艦尾魚雷発射管に魚雷を装填。発射角度 を三度で調整」  逃げ回ってはいるが、余裕綽々の艦長であった。そもそも潜砂艦として建造され た構造上、通常の潜水艦に比べて外壁に格段の相違があったのだ。その厚さだけで も二倍以上あるし、砂の中を進行する為に非常に滑りやすくできていた。仮に爆雷 が炸裂してもビクともしないし、魚雷もつるりと滑って反れてしまう確率が高い。  ソナー音が近づいてきた。 「おいでなすったぞ」  やがて水上艦からの爆雷攻撃が再開された。 「よおし。潜望鏡深度まで浮上! 魚雷発射準備」  爆雷の雨の中を上昇するSWS。  すでに水上艦はすれ違いを終えている。 「今だ! 魚雷発射!」  艦尾魚雷が発射される。  扇状に開きながら、敵艦に向かう魚雷。  そして見事に敵艦に命中した。  火柱を上げながら沈んでいく水上艦。  SWSの艦内にも、きしみ音を上げて水没していく様子が、水中を渡って響いて くる。 「撃沈です」 「よし。皆、よく耐えて頑張ってくれた。これより基地に帰還する」  乗員達の表示に明るさが戻ってくる。  久しぶりの基地帰還である。  艦内ではできなかったシャワーを浴びたり、豪勢な肉料理にかぶりついたり、そ して何より、しばしの休暇が与えられるの一番の喜びだった。  第四章 了
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2019年9月14日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証 IV

第四章 皇位継承の証
                 IV  パトリシアの前に立ち、神妙な表情で話しかける。 「ちょっとよろしいですかな?」 「何か?」 「その首飾りを見せて頂けませんか?」 「え? ……ええ、どうぞ」  パトリシアの首に掛けたまま、首飾りを手にとって念入りに調べていたが、警備 兵を呼び寄せて、 「あなた様は、この首飾りをどこで手にお入れなさりましたか?」  と、不審そうな目つきで尋ねる。 「ランドール提督から、婚約指輪の代わりに頂きました」 「婚約指輪ですか?」  今度はきびしい目つきとなり、アレックスを睨むようにしている。 「申し訳ございませんが、お二人には別室においで頂けませんか?」  警備兵が銃を構えて、抵抗できない状況であった。 「判りました。行きましょう」  承諾せざるを得ないアレックスだった。  ほとんど連行されるようにして別室へと向かう。  首飾りも詳しい調査をするとして取り上げられてしまった。  案内されたのは、元の貴賓室であった。犯罪性を疑われているようだが、帝国の 恩人で摂政から客員提督として叙された者を、無碍にもできないというところであ った。それでも警備兵の監視の下軟禁状態にあった。  しばらくして、首飾りを持って侍従長が戻ってきた。 「さてと……。改めて質問しますが、提督にはこの首飾りをどちらでお手に入れら れましたか?」  という侍従長の目つきは、連行する時の厳しいものから、穏やかな目つきに変わ っていた。 「どちらで……と言われましても、私は孤児でして、拾われた時に首に掛けられて いたそうです。親の形見として今日まで大事に持っていたものです」 「親の形見ですか……。提督のお名前はどなたが付けられたのですか」 「それも拾われた時にしていた、よだれ掛けに刺繍されていたイニシャルから取っ たものだそうです」 「よだれ掛けの刺繍ですね」 「はい、その通りです」 「なるほど、良く判りました。それでは念のために提督の血液を採取させて頂いて もよろしいですか?」 「血液検査ですね」 「はい、その通りです」 「判りました。結構ですよ」  早速、看護婦が呼ばれてきて、アレックスの血液を採取して出て行った。 「結果が判るまでの二三日、この部屋でお待ち下さいませ。それからこの首飾りは 提督の物のようですから、一応お返ししておきます。大切にしまっておいて下さ い」 「イミテーションではないのですか?」 「とんでもございません! 正真正銘の価値ある宝石です」 「これが本物?」  言葉にならないショックを覚えるアレックスだった。  これまで偽造品だと信じきっていて、親の形見だと思って大切にはしてきたが… …。まさかという気持ちであった。 「そう……。銀河帝国皇家の至宝【皇位継承の証】です」  重大な言葉を残して、侍従長は微笑みながら部屋を出て行った。
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2019年9月 8日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XVII

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                XVII  水中深く沈んでいくSWS。  やがて大きな横穴が姿を現わした。  それは地下水脈であった。  オアシスは地下水脈を通して、大海へと繋がっていたのである。 「内陸部の湖には、地下水脈で大海に通じているものがあることを知っているのは 俺達だけだ。そして実際に航行できるのもこの艦のおかげだ」 「開発設計者は、士官学校在学中だったフリード・ケースンという人物らしいです けど……。一体どんな顔してるんでしょうね。機密情報扱いで顔写真が公開されて いませんので」 「そりゃそうさ。顔写真が公開されたら、拉致・誘拐される危険性が高くなるじゃ ないか。これだけ優秀な技術者を失えば大きな損失になる」  地下水脈を流れに任せて航行するSWS。 「まもなく海中に出ます」 「海に出たら、浮力調整を塩水モードに変更」 「海中に出ました。現在、カラコルム海を航行中」 「潜望鏡深度まで浮上」 「潜望鏡深度、深度十八メートルまで浮上」 「メインバラストタンク排水」  ゆっくりと浮上をはじめるSWS。  震度計の針が回って、十八メートルを指して止まった。 「十八メートルです」  潜望鏡を上げて、海上を探査をはじめる艦長。  海上はおだやかで波一つ見えず、艦影も水平線の彼方まで見られなかった。 「浮上!」 「見張り第一班配置につけ」  海上に姿を現わすSWS。  指揮塔のハッチを開けて出てくる艦長と副長、そして見張り要員。甲板からもハ ッチを開けて乗員が出てくる。全員が大きく深呼吸して新鮮な空気を身体一杯に取 り込もうとしていた。  換気装置が働いている音が微かにしている。原子力で動いており、空気清浄器を 使って、基本的には一ヶ月は換気の必要はないのだが、やはり外界の空気は新鮮こ の上ないのである。 「やはり海は良いな。これぞ船乗りという気分がする」 「砂の海とは大違いですね」 「そうだな……。さてと任務を遂行するか」 「はい」 「トライアス発射準備。一番だ」 「トライアス一号、発射準備」 「目標。バイモアール基地。ただし併設のカサンドラ訓練所は外す」 「了解。目標、バイモアール基地、カサンドラ訓練所は外します」 「目標セットオン。一号発射管、上扉開放」 「一号発射準備完了」 「一号発射!」  ガス・蒸気射出システムによって打ち出されたミサイルは、ある程度の高度に達 したところで、自身のエンジンに点火されて目標へと向かっていく。 「発射確認。目標に向かっています。到達時間二分十五秒」  のんびりと船乗り気分に酔いしれている艦長。 「いい風だな。戦争をしていることを、つい忘れてしまいそうだ」 「ミサイル、目標に着弾しました」 「基地を完全に破壊」  その時、見張り要員が声を上げた。 「艦影発見! 十七時の方向です」  すかさず副長が、双眼鏡を覗いて答える。 「ミサイル発射を探知されたのでしょう。こちらに高速で向かってきます」 「警報!」  艦の内外に警報が鳴り響く。  外に出ていた乗員が、一斉に艦内へと戻ってゆく。 「潜航!」 「メインバラストタンクに注水」 「潜蛇下げ舵、十五度」  艦首を下に向けて、潜航を続けるSWS。 「水平!」  ゆっくりと水平に体勢を直す。 「全隔壁閉鎖! 無音潜航」  各ブロックが閉鎖され、息を潜めて身動きしない乗員達。  その表情からは、 「艦長はやる気だ」  という雰囲気がうかがえる。
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2019年9月 7日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証 III

第四章 皇位継承の証(あかし)/土曜劇場
                III  宮廷楽団の奏でる音楽の旋律が変わって、パーティーのはじまりを告げていた。  正面壇上にパーティー主催者であるウェセックス公国ロベスピエール公爵が立っ た。そばには小さな子供、嫡男であり皇太子候補のロベール王子。 「パーティーにご列席の皆様、ようこそおいで下さいました。ご存知の通りに、帝 国に対して謀反を引き起こしていましたマーガレット皇女様が逮捕され、内乱は鎮 圧されました。このパーティーは、それを祝いまして開催いたしました。と同時に、 我が息子のロベール王子が正式に皇太子として認められたことになる記念日でもあ ります」  場内に拍手が沸き起こった。  皇室議会においてロベール王子が皇太子に推されたことは事実ではあるが、皇女 の一人が意義を唱えて内乱を引き起こしたことによって、一時棚上げとされたので ある。しかし首謀者のマーガレット皇女が捕らえられたことによって、ロベール王 子擁立に反対する者がいなくなって、皇太子として正式に認知されたということで ある。  会場に、アレックスとパトリシアが遅れて入場した。 「おお! 今宵の主賓の登場でありますぞ」  と、アレックスの方に向かって、大きなジェスチャーで紹介するロベスピエール 公爵だった。 「この度の電撃作戦によって、見事マーガレット皇女様を逮捕された功労者であり ます。銀河帝国客員中将となられたアレックス・ランドール提督です」  ざわめきが起こった。 「何とお若い……」 「あの若さで中将とは」 「それにほら、あの瞳。エメラルド・アイではございませんこと」 「すると皇室ゆかりの方でいらっしゃられる?」 「でも、お見受けしたこともございませんわ」  会場に参列した貴族達に、アレックスの第一印象はおおむね良好のようであった。 「さあさあ、飲み物も食べ物もふんだんにご用意しております。どうぞ、心ゆくま でご堪能下さいませ」  アレックスのことは簡単に紹介を済ましてしまったロベスピエール公爵。  その本当の身分が共和国同盟解放戦線最高司令官であることは伏せておくつもり のようだ。パーティー主催の真の目的がロベール王子の紹介であることは明白の事 実であった。貴族達の間を回って、自慢の嫡男を紹介していた。  参列者達の間でも、それぞれに挨拶を交し合い、自分の子供の自慢話で盛り上が る。  やがてそれらが一段落となり、見知らぬ女性の存在を気にかけるようになる。 「何でしょうねえ……。提督のご同伴の女性」  パトリシアである。  中将提督と共に入場してきた場違いの雰囲気を持つ女性に注目が集まっていた。 「何か、みすぼらしいと思いませんか?」 「ドレスだって、借り物じゃございませんこと?」  蔑むような視線を投げかけ、卑屈な笑いを扇子で隠している。 「それにほら、あの首飾りです。エメラルドじゃありません?」 「あらまあ、ご存じないのかしら。エメラルドは皇家の者しか身につけてはならな いこと」 「でもどうせイミテーションでしょ」 「噂をすれば、ほら侍従長が気が付かれたようですわ」 「あらら、どうなることやら……。ほほほ」  侍従長がパトリシアに近づいていく。
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2019年9月 1日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XVI

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                XVI  潜砂艦の指揮塔から、砂の上に降り立つ、艦長以下の参謀達。  砂塵を巻き上げながら降下するミネルバを見上げている。  ミネルバの砲塔が旋回して潜砂艦に照準が合わせられたようだ。抵抗する気配を見せ たら、容赦なく攻撃を開始するという牽制である。  やがて降下したミネルバの昇降口が開いて、フランソワやベンソン副長が降り立ち、 歩み寄ってくる。 「どうやら向こうの艦長は女みたいですね」 「それだけじゃない。胸の徽章を見てみろ。戦術用兵士官だ」 「なるほど、旗艦という理由が納得できたみたいです」  フランソワが目の前に立った。  一斉に敬礼する潜砂艦の乗員達。  それに応えてフランソワも敬礼を返しながら、 「これはどういうことですか? ハルブライト・オーウェン中尉」  名前を言い当てられて、少し驚きの表情を見せる艦長のオーウェン中尉。  艦艇データから、艦長名などを調べ上げたようだ。 「申し訳ありませんね。こちらに記録されております艦艇データが古くて、そちらの データが載っていなかったのですよ。そちらさんは、どうやら新造戦艦のようですから ね。確認が取れない以上、連邦軍の未確認艦として、攻撃を行ったというわけです」  嘘も方便である。確かに艦艇データに記録はないのだから、言い逃れはできそうであ る。  副長は笑いを押し殺している。 「そういうわけで、そちらの艦長さんのお名前も知らないわけでして……」  言われて頷くフランソワ。まだ自分の身分を名乗っていなかった。味方に攻撃されて 興奮していたせいであろう。 「ミネルバ艦長、フランソワ・クレール上級大尉です」 「ミネルバというと、メビウス隊の旗艦となる艦でしたよね。なるほど、それで我々の 攻撃をいとも簡単に凌いでしまわれたわけだ。感心しましたよ」  その時、通信が急ぎ足でオーウェンのもとに駆け寄ってきた。フランソワに一礼して から通信文を艦長に手渡す。  その通信文を読み終えて、 「新しい任務が届けられました。取り急ぎの用なので、これで失礼します。今回の件に つきましては、そちらの方で本部に伝えておいてください」  と言い残して、踵を返して潜砂艦に戻っていった。  潜砂艦艦橋。 「潜航開始!」  ゆっくりと砂の中に潜っていく潜砂艦。 「作戦の前にオアシスによって水を補給する。微速前進」 「取り急ぎの用ではなかったのですか?」 「自分の娘ほどの若い上級士官から小言を聞かされるのは耐えられんからな。任務にか こつけてオサラバしたのさ」 「あの上級大尉さん。呆然としていましたよ」 「まあ、俺の方が世渡り上手なだけだ」 「そんなものですかね」  それから小一時間後。  オアシスの湖に浮かんでいる潜砂艦。 「水の補給完了しました」 「それでは、行くとしますか。潜航!」  湖に沈んでいく潜砂艦。というよりも潜水艦と言った方が良いだろう。  この艦は流砂の中はもちろんのこと水中へも潜れる、SWS(サンド・ウォーター・ サブマリン)と呼ばれる兼用潜航艦である。
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2019年8月31日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証 II

第四章 皇位継承の証(あかし)
                 II  祝賀パーティーには、皇族・貴族が数多く参加するだろうから、印象を良くし解放戦 線との交渉に道を開く好機会となるはずである。 「しかし、わたしはパーティーに着る服がありません」  パーティーともなれば、女性同伴が原則である。アレックスの同伴として参加するに はそれなりの衣装も必要である。参加者達は着飾ってくるだろうし、まさか軍服でとい うわけにもいくまい。 「それなら心配要りません」  皇女が侍女に合図を送ると、部屋の片隅の扉を開け放った。  そこはクローゼットであった。ただ広い空間に豪華なドレスがずらりと並んでいた。  すごい!  パトリシアの目が輝いていた。まるでウエディングドレスのような衣装を目の前にし て、軍人からごく普通の女性に戻っていた。 「これは貴賓室にお招き入りした方々のためにご用意しているものです。お気に入りに なられたドレスがございましたら、ご自由にお召しになされて結構です。着付けには侍 女がお手伝いします」 「本当によろしいのでしょうか?」  念押しの確認をするパトリシア。  どのドレスを取っても、パトリシアの年収をはるかに越えていそうなものばかりなの である。さすがに遠慮がちになるのも当然であろう。 「どうぞご遠慮なく」  微笑みながら促すジュリエッタ皇女。  というわけで、パトリシアがドレスを選んでいる間、ジュリエッタと相談するアレッ クスであった。 「マーガレット皇女様はどうなるのでしょうか?」 「帝国に対して反乱を引き起こしたことは重大で、死刑を持って処遇されることもあり えます。皇室議会の決定に不服を訴え、あまつさえ反乱を企てたのですから、皇室議会 の印象が非常に悪いのです。少なくとも皇家の地位と権利を剥奪されるのは避けられな いでしょう」 「皇家の家系から抹消ですか……」 「致し方のないことです」 「そうですか……」  深いため息をもらすアレックスだった。  戦勝祝賀パーティーの夜がやってきた。  宮廷には、貴族や高級軍人が婦人を伴って、次々と馳せ参じていた。  大広間にはすでに多くの参列者が集まり、宮廷楽団がつまびやかな音楽を奏でていた。  貴賓室の中にも、その音楽が届いていた。  儀礼用軍服に身を包んだアレックスは、客員中将提督として頂いた勲章を胸に飾り準 備は整っていた。しかしパトリシアの方は、そう簡単には済まない。豪華なドレスを着 込むには一人では不可能で、侍女が二人掛かりで着付けを手伝っていた。そして高級な 香水をたっぷりと振り掛けて支度は整った。 「いかがですか?」  アレックスの前に姿を現わしたパトリシアは、さながらお姫様のようであった。 「うん。きれいだよ」 「ありがとうございます」  うやうやしく頭を下げるパトリシア。ドレスを着込んだだけで、立ち居振る舞いも貴 族のように変身していた。 「しかし……、何か物足りないな」  アレックスが感じたのは、ドレスにふさわしい装飾品が全くないことであった。パー ティーに参列する女性達は、ネックレスやイヤリングなどドレスに見合った高価な装飾 品を身に纏うのが普通だった。 「宝石類がないと貧弱というか、やっぱり見映えがねえ……」  パトリシアも気になっていたらしく、紫色の箱を持ち出して言った。 「実は、これを持ってきていたんです」  蓋を開けると、深緑色の大粒エメラルドを中心にダイヤモンドを配したあの首飾りだ った。それはアレックスが婚約指輪の代わりに譲ったものだった。 「そんなイミテーションで大丈夫か?」 「ないよりはましかと思いますけど……」 「まあ、仕方がないか……。僕達にはそれが精一杯だからな」 「ええ……」  パトリシアにしてみれば、イミテーションだろうと大切な首飾りには違いなかった。 夫婦関係を約束する記念の品であったから。
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2019年8月25日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XV

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                 XV  上空にミネルバが到着した。 「新型モビルスーツ発見! 人影も見えます」 「大至急降下して、訓練生を救出して下さい」  航海長が警告する。 「一帯は流砂地帯が広がっています。砂の上を歩くときは、十分注意して下さい」 「流砂ですか……。砂上モービルを出して下さい。ミネルバは念のためにホバリング状 態で着陸する」  砂の上に着陸したミネルバから、救助隊を乗せた砂上モービルが繰り出して、三人の 共助に向かった。  現場に到着した救助隊は、早速三人の容態を確認して、ミネルバに無線で報告する。 「三人とも、まだ生きています」 『ただちに収容して下さい」  その場で、脱水症状を回復するための点滴が施されて、担架に乗せられて砂上モービ ルで、ミネルバへと搬送された。そして集中治療室に運ばれて、本格的な治療がはじめ られた。  様子を見にきたフランソワに、医師は現状を説明した。 「三人とも命に別状はありませんが、女の子の方は心臓がかなり弱っており、回復まで には相当の期間がかかりそうです」 「命に別状がないことは幸いです。十分な治療をしてやって下さい」  訓練生の容態を確認して一安心したフランソワは、艦橋に戻って新型モビルスーツの 回収を命じた。  ミネルバを新型の上空に移動させて、大型クレーンを使って引き上げる作業が行われ る。  燃料切れでなければ、パイロットを搭乗させれば、簡単に済むことなのであるが。  回収作業の責任者として、ナイジェル中尉とオーガス曹長が当たっていた。  二人は、この新型の搭乗予定者になっていたからだ。  ちなみにすでに回収されていたもう一機の方は、サブリナ中尉とハイネ上級曹長が搭 乗することになっている。 「新型の回収、終わりました」 「よろしい。本部に暗号打電! 『新型モビルスーツとカサンドラ訓練生の収容を完了。 次なる指令を乞う』以上だ」  作戦任務終了の後は、戦闘で消耗した燃料・弾薬の補給が予定されていたが、直前ま で補給地点は知らされていなかった。 「本部より返信。『通信文を了解。次なる補給地点として、明晩19:00にムサラハン鉱 山跡地に向かえ』以上です」 「航海長! ムサラハン鉱山跡地へ向かってください。補給予定時間は19:00です。そ の頃に丁度到着するように、多少の寄り道も構いません」  ここは敵勢力圏である。真っ直ぐ目的地に向かえば、敵に悟られて、待ち伏せされて 補給艦が襲われる可能性がある。多少遠回りしても、寄り道しながら、最終的に予定時 間に補給地へ向かうわけだ。  砂漠の上空を進むミネルバ。  その後を追うように、砂の中に潜むように動くものがあった。  それは砂の中を突き進むことのできる潜砂艦であった。  艦橋から潜望鏡が砂上に頭を出している。 「こんな砂漠を飛んでいるなんて珍しいな」 「艦艇データにありません」 「おそらく新造戦艦なのだろう。そっちの方面で検索してみろ」 「あ、ありました。旧共和国同盟所属の新造戦艦ミネルバのようです」  正面スクリーンにミネルバの艦艇データがテロップで流れ出した。 「ミネルバということは、我々のご同輩というわけか」 「はい。メビウス部隊の旗艦という位置づけになっているようです」 「旗艦か……。なんぼのものか、少し遊んでやるとするか」 「またですか? 前回も遊びすぎて、撃沈させてしまったではありませんか」 「なあに証拠さえ残さなければ大丈夫だ」 「また、そんな事言って……」 「ようし。戦闘配備だ」 「しようがないですねえ。戦闘配備! トラスター発射管、一番から八番まで発射準 備」 「一番発射用意。目標、上空を飛行する戦艦」 「目標セットオン。照準合いました」 「一番、発射!」  発射管から飛び出していくミサイル。
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2019年8月24日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証

第四章 皇位継承の証
                 I  首都星アルデランのアルタミラ宮殿。  謁見の間に居並ぶ大臣・将軍達の表情は一様に重苦しい。  マーガレット皇女が、摂政であるエリザベス皇女の裁定を受けていた。 「マーガレットよ。我が帝国の治安を乱し、テロなどの破壊行為なども誘発したことは 悪しき重罪である。事の次第は皇室議会において処遇を決定することになる。追って裁 定が下るまで、自室にて謹慎を命じる」  うやうやしく頭を下げて処分を承諾するマーガレット皇女。  そしてくるりと翻り姿勢を正して自室へと向かい始め、その後を侍女が従った。警備 兵が二人その後ろから付いてくるが、連行するというようなことはしない。皇女として の誇りに委ねられた一幕であった。  マーガレットが退室し、続いてアレックスに対する労いの言葉が、エリザベスより発 せられた。 「今回の任務。よくぞ無事にマーガレットを連れてこられた。感謝の言葉もないくらい である。その功績を讃えて、中将待遇で銀河帝国特別客員提督の地位を与え、この謁見 の間における列席を許し、貴下の二千隻の艦船に対して、帝国内での自由行動を認め る」  ほうっ。  という感嘆の声が、将軍達の間から沸き起こった。  貴賓室。  謁見を終えたアレックスが、応接セットに腰掛けてパトリシアと会談している。  アレックスがマーガレット保護作戦に出撃している間、パトリシアはこの部屋に留め 置かれていた。  いわゆる人質というやつで、大臣達からの要望であったと言われる。それでも世話係 として侍女が二人付けられたのは皇女の計らいらしい。 「艦隊の帝国内自由行動が認められたので、スザンナ達には軍事ステーションから、最 寄の惑星タランでの半舷休息を与えることにした」 「休暇と言っても先立つものが必要でしょう?」 「ははは、それなら心配はいらない。帝国軍から一人ひとりに【おこづかい】が支給さ れたよ。内乱を鎮圧した感謝の気持ちらしいが……。本来なら彼らが成すべき事だった からな」 「至れり尽くせりですね」 「しかし、これからが正念場だ。帝国側との交渉の席がやっと設置されたというところ だな。まだまだ先は遠いよ」 「そうですね」  事態は好転したとはいえ、解放戦線との協定に結び付けるには、多くの障害を乗り越 えなければならない。特に問題なのは、あの頭の固い大臣達である。あれほど保守的に 凝り固まった役人達を説得するのは、並大抵の苦労では済まないだろう。 「ジュリエッタ皇女様がお見えになりました」  侍女が来訪者を告げた。 「お通ししてください」  アレックスが答えると、侍女は重厚な扉を大きく開いて、ジュリエッタ皇女を迎え入 れた。 「宮殿の住み心地は、いかがですか?」 「はい。侍女の方も付けて頂いて、至れり尽くせりで感謝致しております。十二分に満 足しております」 「それは結構です。何か必要なものがございましたら、何なりと侍女にお申し付けくだ さい」 「ありがとうございます」 「ところで明晩に戦勝祝賀のパーティーが開催されることが決まりました。つきまして は提督にもぜひ参加されますよう、お誘いに参りました」 「戦勝祝賀ですか……」 「内乱が鎮圧されたことを受けて、ウェセックス公が主催されます。その功労者である ランドール提督にもお誘いがかかったのです」 「しかし、私のような門外漢が参加してよろしいのでしょうか?」 「大丈夫です。パーティーには高級軍人も招待されておりまして、客員中将に召された のですから、参加の資格はあります」 「そうですか……。判りました、慎んでお受けいたします」  断る理由はなかった。
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2019年8月18日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XIV

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                XIV  砂漠の上空を飛行しているミネルバ。  艦橋では、フランソワがカサンドラから収容した訓練生の名簿に目を通していた。 「男子二十八名、女子十四名、合わせて四十二名か……。数だけで言えば補充要員は確 保できたけど」 「心配いりませんよ。ミネルバ出航の時だって、士官学校の三回生・四回生が特別徴用 されて任務についていますけど、ちゃんとしっかりやっていますよ」  副官のイルミナ・カミニオン少尉が進言する。 「それは元々専門職だったからですよ。それぞれ機関科、砲術科、航海科という具合 ね」 「今回の補充は、全員パイロット候補生というわけですか。結構プライドの高いのが多 いですから、衛生班に回されて便所掃除なんかやらされたら、それこそ不満爆発です ね」 「トイレ掃除だって立派な仕事ですよ。ランドール提督は懲罰として、よくトイレ掃除 をやらせますけど、皆が嫌がるからではなく、本当は大切な仕事だからやらせているん だとおっしゃってました」 「へえ。そんな事もあるんですか。そういえば発令所ブロックの男子トイレは、部下に やらせないで、提督自らが掃除していると聞きました」  感心しきりのイルミナであった。最も発令所には男性はアレックスだけだからという 事情もあるが。  名簿に署名をしてイルミナに渡すフランソワ。 「新型モビルスーツの位置が特定しました」  通信が報告し、正面スクリーンにポップアップで、位置情報が表示された。 「ただちに急行してください」  砂漠上空の外気温は四十度を超えていた。  新型モビルスーツはともかく、乗り込んでいたという三人の訓練生が気がかりだった。 砂漠という過酷な環境で、水なしで放置されたら干からびてしまうだろう。  砂漠の真ん中。  モビルスーツによって日陰となっている地面に、力なく横たわっている三人の姿があ った。口は渇ききり唇はひび割れている。日陰の場所でも、砂漠を吹き渡る熱風が、三 人の体力を容赦なく奪っている。水分を求めてどこからともなく飛んでくる蝿が、目の 周りに集っているが、追い払う気力もないようだ。 「俺達、死ぬのかな」 「喋らないほうがいいぞ。それよりサリー、生きているか?」  アイクが心配して尋ねる。  しかし、サリーは喋る気力もないのか、微かに右手が動いただけだった。  三人の命は、風前の灯だった。  薄れる意識の中で、ある言葉が浮かんだ。 『いざという時に、一番発揮するのは、体力だということが判っただろう』  特殊工作部隊の隊長の言葉だった。 「まったくだぜ……」  小さく呟くように声を出したのを最期に、意識を失うアイクだった。
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2019年8月17日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 XV

第三章 第三皇女
                 XV  インヴィンシブルの艦載機発着場。  アークロイヤルの皇女専用艀が停船しており、その周囲を将兵が整然と取り囲んでい た。真紅のビロードの絨毯が敷かれて、ジュリエッタ皇女が出迎えていた。  やがてドアが開いて、中からマーガレット皇女が姿を現わす。その背後にはアレック スが控えている。  タラップが掛けられて、兵士達が一斉に銃を構えなおし、VIPを出迎える動作を行 った。内乱の首謀者といえども、皇女という身分を剥奪されてはいないからだ。 「お姉さま!」  ゆっくりと歩み寄るジュリエッタ皇女。 「ジュリエッタ……」  互いに手を取り合って再会を喜ぶ二人。政治の舞台では反目しあっていても、姉妹の 愛情は失われていなかった。  首都星へ向かうインヴィンシブルの貴賓室で、姉妹水入らずで歓談する二人。アレッ クスは席を外しており、別の部屋で待機をしていると思われる。 「そういうわけだったのね」  ジュリエッタは、共和国同盟の英雄との出会いを説明していた。 「噂には聞いておりましたが、あれほどの戦闘指揮を見せつけられますと……」 「何? 何が言いたいわけ?」  言い淀んでしまったジュリエッタの言葉の続きを聞きだそうとするマーガレット」 「マーガレットお姉さまも気づいていますよね?」 「エメラルド・アイでしょ……」 「その通りです。軍事的才能をもって帝国を築いたソートガイヤー大公様の面影がよぎ ってしかたがないのです」 「そうね……。もしかしたら大公様の血統を色濃く受け継いでいるのかもしれません」 「だったら……」  身を乗り出すジュリエッタ皇女。 「待ちなさいよ。結論を急ぐのは良くないことよ。わたし達はランドール提督のことを、 まだ何も知らないのよ。例えば連邦にもエメラルド・アイを持つ名将がいるとの噂もあ ることですし」 「ええと……。確かスティール・メイスン提督」 「連邦においてはメイスン提督、同盟ではランドール提督。この二人とも常勝の将軍と して名を馳せており、奇抜な作戦を考え出して艦隊を勝利に導いているとのこと」 「そして異例のスピードで昇進して将軍にまで駆け上ってきた。もしかしたら……この どちらかが、アレクサンダー皇子と言うこともありえます」 「ええ。何につけても『皇位継承の証』が出てくれば、すべて氷解するでしょう」 「そうですね……。とにもかくにも、今は身近にいるランドール提督のことを調べてみ るつもりです」 「事が事だけに、慎重に行うことね。何せ、命の恩人なのですから」 「はい」 第三章 了
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