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2025年10月21日 (火)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第十二章 海賊討伐 Ⅳ

 海賊基地近くまでたどり着いたウィンディーネ艦隊。
 海賊を一隻でも取り逃がさないように、ぐるりと基地を包囲しようとしていた。

 第六強襲艦の突入用待機室に集合した兵士。
 装甲服を着こみ、それぞれにお気に入りの白兵用の武器を携えている。
「第六突撃強襲部隊の準備完了! 白兵戦、いつでも行けます!」
 隊長らしき人物が、艦橋に連絡を入れている。
『了解! そのまま待機せよ』
 シェリー・バウマン大尉がゴードンに、そのまま伝える。
 そして全艦隊も包囲陣を完成させた。
「閣下! 総員突撃準備完了しました!」
「よし、速攻で行くぞ! 候女が人質として担ぎ出される前に救出する。
「全艦突撃開始!」
「強襲艦は直ちに基地に強行突入せよ! 他の艦は基地から出てくる艦を片っ端から撃沈させよ!」

 迎撃に出した艦隊が次々と撃ち落されるのを見つめながら消沈する海賊達。
「完全に包囲されました」
「普通ならば、投降を呼びかけるのだがな」
「こっちは海賊ですからね。国際条約とか通用しませんから……」
「全員皆殺しにしても、どこからも批判はこないってことだ」
「敵艦が突っ込んできます!」
「近づけるな! 弾幕を張れ!」
 だが、戦闘機の大編隊が襲い掛かり次々と砲台を叩いていた。
「多勢に無勢か……」
 やがて次々と強襲艦が取りつき始めた。


 戦闘機が砲塔を破壊し続けてゆく。
「よおし、砲台は全部撃ち壊したぞ!」
「アンカーを打ち込め!」
 基地に艦を固定させて、突入の足掛かりを作る。
 外壁を溶断機で切り崩して突入口を作る。
「突入せよ!」
 隊長の一声で、一斉になだれ込む。
 基地内に突入した白兵部隊。
「どっちへ行けばいいんだ?」
「情報部の奴らも、ここの見取り図は入手できなかったみたいだ」
「当たってくだけろだ!」
 密かに建設された海賊基地だけに、規模はそれほど大きくなく、行き当たりばったりでも探し当てられそうである。
 分岐路に当たれば、とにかく人の気配のする方へと向かう。
 海賊の掃討でもあるが、人質を人気のない所に監禁するはずがないからである。
 やがて歩哨の立っているところに出くわした。
 こちらに気が付いて武器を構えるが、こちらの動作の方が早かった。
 その場に崩れる歩哨。
 慎重に近づいて、のぞき窓を見ると、一人の少女が消沈した様子で、ベッドの縁に腰かけていた。
「候女だ!」
 歩哨の腰ベルトに下げられていた鍵を取って、ドアを開ける。
 怯えたような表示を浮かべる少女。
「セシル候女さまですか?」
 できるだけ優しい声で尋ねる兵士。
 少女が静かに頷くのを見て、
「エルバート侯爵さまの命を受けて、お助けに参りました」
 と傅いて、救出にきたことを告げる。
「父上の?」
「さようにございます」
 侯爵の命というのは嘘であるが、誘拐されて怯え切っている候女を慰め落ち着かせるためだった。
「さあ、参りましょう」
 候女の手を取って促す兵士。
「わかりました」
 立ち上がって兵士に着いていく候女。

 候女を前後に挟むようにして、立ちはだかる海賊を薙ぎ払いながら、元来た道を戻る兵士たち。
 その間にも、味方の砲撃による破壊は進み、至る所で火を噴いていた。
「急いでください」
 足の遅い候女を急かしながらも、何とか強襲艦に舞い戻ることができた。

「こちら第一班、候女を救出しました!」
『よし! 直ちに帰還せよ』
「了解!」
『第二班は、引き続き海賊の頭領を探して捕らえよ!』
「こちら第二班、頭領を探して捕らえます」

2025年9月19日 (金)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第十二章 海賊討伐 Ⅲ

 中立地帯を越えて、踏み込んではならない宙域へと立ち入るウィンディーネ艦隊。
「PーVX300より海賊基地の座標入電しました」
「よし。座標を設定しろ」
「了解。座標設定します」
「索敵機を下がらせてくれ」
「Pー300VXに連絡、後方に撤退を指示します」
 指示を受けて、ゆっくりと後方に下がる索敵機。
「そろそろ敵の索敵範囲に引っかかると思われます」
「よし、戦闘配備だ。ウィンディーネ艦隊の底力を見せつけてやれ!」
 声高らかに指令を出すゴードンの言葉に、副長も張り切って復唱する。
「了解! 全艦戦闘配備!」

「第六突撃強襲艦部隊に白兵戦を準備させろ!」
 任務は海賊を殲滅するだけでなく、候女の救出作戦をも担っている。
 ただ海賊基地を殲滅するだけではいけないのである。

 海賊基地中央コントロールルーム。
「レーダーに感あり! 接近するものがあります」
「接近だと!? まさか跡をつけられたのか?」
「艦数増大中! 二千、三千、さらに増大」
「この基地の位置がバレたというわけか?」
「迎撃を出しますか?」
「無論だ!」
 基地から迎撃の艦隊が出てくる。
「艦数五万隻を超えました!」
「こりゃ正規の艦隊のようだな。どこの艦隊は分かるか?」
「どうやら帝国の艦隊ではなさそうです」
「帝国じゃない? じゃあ、どこだ?」
「識別信号は……共和国同盟のものです!」
「ランドールか!」
 やがて前方で交戦が始まる。
「艦数七万隻!」
「交戦部隊より報告! 敵艦の中にハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式を視認とのことです」
「ハイドライド型だと!」
「旗艦と思しき艦体に、水の精霊ウィンディーネ! ウィンディーネ艦隊です!」
「馬鹿な! 情報ではオニール提督の反乱の際に、ランドールによって撃沈されたはずじゃないのか?」
「間違いありません。攻撃を仕掛けているのは、ウィンディーネ艦隊です」
「まさか修理して、出直してきたというわけじゃないだろうな」
 海賊基地には、ハイドライド型の六番艦が存在したことと、新生ウィンディーネ艦として配属された事は知れ渡っていなかったようだ。
「人質の候女がいるのを知らせて停戦させますか?」
「皆殺しのウィンディーネ艦隊だぞ! そんなもん通用するか!」
 皆殺しのウィンディーネ艦隊とは、アレックスが帝国宇宙艦隊司令長官と元帥号を授与され、アルサフリエニ方面で活躍していた時に名付けられた称号である。連邦によって暴行されて身ごもり自殺した実の妹、その復讐に煮えたぎっていた。
 しかし今は、改心して冷静さを取り戻したゴードンには、その名は似つかわしくないだろう。
 そこまでの新情報も伝わっていなかったらしい。
「とにかく相手がウィンディーネ艦隊、しかも七万隻となると勝ち目はない。逃げる準備をしろ。候女も連れてゆくのだ」
「ここは中立地帯です。何とかなりませんかね」
「それはこっちも同じだ。海賊だからな」

2025年8月 1日 (金)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第十二章 海賊討伐 Ⅱ

 中立地帯海賊基地。
 海賊艦隊が近づいてゆく。
 ゲートがゆっくりと開いてゆき、艦隊が入港してゆく。

 中央コントロールルームに、フランシス・ドレーク提督が候女を引き連れて現れる。
「お帰りやす! 提督殿」
「その提督というのは、ここでは止めてくれないか」
「ではお頭、その娘が候女さまですかい?」
「ああ、大切な人質さまだ。手荒に扱うなよ」
「へいへい」

 通路を手縄を掛けられて、連行されてゆく候女。
 海賊が営倉の一つを開けて、
「さあ、ここに入るんだ!」
 と指示する。
 抵抗しても無駄だと悟っているので、素直に入る候女。
 鍵を掛けて、離れてゆく海賊。
 ベッドに腰かける候女。
 その候女の姿は、天井の片隅に設置された隠しカメラで映されていた。


 サセックス侯国エルバート侯爵家。
 候女が誘拐されたことが発覚して騒動になっていた。
「シルビアはまだ見つからないのか?」
 いらつく侯爵が怒鳴り散らしていた。
「見つかりません!」
 侯爵は疑心暗鬼になっていた。

 使節団がやってきて、味方になることを断った直後だった。
 もしかしたら、使節団が……?

 その時、デスクの上の端末が鳴った。
「なんだ? こんな時に」
 端末を操作すると、そこに映りだされたのは……。
「シルビア!!」
 候女のシルビアだった。
 驚愕する侯爵。
 映像が切り替わり、ゴツイ顔の男になった。
「おまえの娘は預かっている」
「何故だ! 娘を浚ったのは? 娘は大丈夫なんだろうな? 要求はなんだ?」
 続けざまに質問をあびせるが、
「今は何も言えん。いずれ連絡をする」
 それだけ言うと、映像が切れた。
「シルビア……」


 中立地帯への境界にたどり着いたウィンディーネ艦隊。
 赤色灯が点滅し、警報音が鳴り響いている。
「まもなく中立地帯に入ります」
 航海士が忠告する。
「ここから先に侵入するのは、国際条約違反になりますが」
「なあに大丈夫だ。これは救助活動だからな。誘拐されたエルバート侯爵のご息女の救出作戦である」
「了解! これより候女救出作戦による中立地帯への進入封鎖を解除します」
「警報解除します」
「Pー300VXから入電! 海賊基地と思われる基地を発見したとのことです」
「ついに見つけたか!」
「Pー300VXの現在地座標を確認!」
「よおし! 海賊基地に向けて進撃開始!」
「座標入力完了!」
「微速前進!」
 ゆっくりと中立地帯への動き出したウィンディーネ艦隊であった。


 某氏館内。
「侯爵の娘の誘拐に成功したようです」
「さすが海賊上がりのドレーク提督だな」
「早速、脅迫をはじめましょうか?」
「いや、まだ早いだろ。誘拐が起きたばかりだからな」
「そうですか……」
「それにしても、ドレーク提督は連邦軍にいたって噂は本当ですかね?」
「しっ! それは秘密事項だ。他の誰にも喋っていないだろうな?」
「は、はい。喋っていません」
「ならばよい」

2025年5月 5日 (月)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第十二章 海賊討伐 Ⅰ

 アルビエール侯国アレックスの執務室。
「ヘルハウンドから連絡が入りました。海賊船は中立地帯へと向かっているようです」
 パトリシアが報告する。
「そうか、やっと本拠地を探し当てられそうだな」
「どうしますか? 戦艦が中立地帯に立ち入るのは、国際条約違反になりますが」
「そもそも中立地帯に違法に基地を建設しているのは海賊だからな」
 としばし考え込んでいたが、
「この際、大掃除するか?」
「中立地帯でドンパチやらかすのですね」
「害悪を放っておいては、摂政派との交渉にも水を差される事態になるかもしれないからな」
「誘拐された候女救出という名分があれば、大丈夫なのではないでしょうか」
「そうかもしれないな」
「それでは、征伐には誰を向かわせますか?」
「ここはやはり、ゴードンがいいだろう」
「捲土重来(けんどちょうらい)ですね。失った信用を取り戻させようと?」
「まあな……」


 海賊征伐の命はすぐさまゴードンに伝えられた。
 副官のシェリー・バウマン大尉が、頬を紅潮させて言う。
「提督の恩に応える機会を与えられましたね」
「すぐさま海賊討伐に向けて準備せよ!」
「はいっ! 海賊討伐に向けた準備を進めます」
 キリッと姿勢を正して、命令を復唱するシェリーだった。
「ヘルハウンドに連絡! 我々が到着するまで、索敵に専念させて早まった行動は取らせるな!」
 通信士も思いは同じだった。
 いや、ここにいるすべてのオペレーター達の思いも。
 ウィンディーネ艦隊が結成されて以降、指揮官たるゴードンに付き従ってきた同志だった。
「了解! ヘルハウンドどうぞ!」
『こちらヘルハウンド』
「索敵に専念し、ウィンディーネ艦隊の到着を待て!」
『ヘルハウンド了解! ウィンディーネ艦隊を待ちます』

 数時間後。
「出航準備完了しました!」
「よおし! 中立地帯へ向けて全速前進!」
「了解!」
「進路、中立地帯へ!」
「全速前進!」
 ウィンディーネ艦隊七万隻が、中立地帯に潜む海賊討伐に向けて動き出した。
 銀河帝国にしろ、共和国同盟にしろ、長年の頭痛の種を葬り去る好機がやってきたのだ。

 その頃、追撃艦隊が動き出したのも知らずに、中立地帯へと踏み込む海賊船団。
「まもなく中立地帯に入ります」
 航海長が報告する。
「警報装置を切っておけよ」
 戦艦に搭載された航路ナビには、中立地帯に近づくと警報を鳴らすシステムが組み込んである。
 結構大きな音を立てるので、煩いからと切るのがいつものことである。
 国際条約上では切ってはいけないことにはなっているのであるが海賊には無用である。
「中立地帯に入りました」
「跡をつけている奴はいないか?」
「感応ありません」
「ならば基地に帰還する」

2025年4月21日 (月)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 帝国反乱 Ⅸ

第十一章 帝国反乱

 Pー300VXからの報告を受けて、首都星サンジェルマンから遠く離れた場所で待機していた部隊が動いた。
 艦体に赤い火の精霊が描かれた高速巡航艦「ヘルハウンド」に従えられた、本家本元のサラマンダー部隊十二隻である。。
 指揮官トーマス・マイズナー少佐が頷く。
「提督の危惧した通りに、敵さんが動いたな」
「さすがですね。先見の明には感服します」
 副長のクランシス・サックス少尉が感心する。
「提督自身も誘拐された経験があるからな」
「もしかしたら、今回の誘拐犯もその時の奴では?」
「かも知れない」
「直ちに救出作戦に入ります』?」
「いや待て! 奴らがどこへ向かうかを見定めなくてはならない。アルデラーンに向かうか……」
「中立地帯の海賊基地に向かうかですね」
「そうだ。もし海賊基地に向かうならば、摂政派と海賊、というかバーナード星系連邦との繋がりも判明する」
「そういえば、海賊基地はまだ判明していないんですよね」
「ああ、中立地帯側にある惑星ミストと補給基地から通信傍受して、場所を割り出そうとしているのだが、あれから探知できるような通信記録はないそうだ」
「もしかしたら移動基地のようになっているのかも知れないのでは?」
「可能性はあるが……。ともかく跡をつけていけば、何らかの事実が判明するだろう」
「ですね」
「よおし! 尾行していることを悟られないように、微速前進で追跡する」
「了解! 微速前進」
 先行するPー300VXに案内されるように、私掠船の尾行を始めた。


 私掠船内にある一室。
 少女がベッドの縁に座り、虚ろな表情で天井を見つめている。
 拉致監禁され、どうしようもない状態を悲観している。
 少女の力では成す術もなかった。
 唯一の救いは、拘束されていないことだけだった。
「侯女はどうしておるか?」
「おとなしくしておりますよ。浚った当初は抵抗していましたが、宇宙に出た今は逆らっても無駄だと悟ったようです」
「大切な人質だ。一応大切に扱わなくてはな」
「一応ですか」
 とほくそ笑む副長。
「よし。進路を中立地帯へ向けろ!」
「久しぶりに基地に戻るのですね」
 ゆっくりと方向を変えて、中立地帯へと転進した。


 ヘルハウンド艦橋。
「やっこさんが、中立地帯に向かうようです」
「跡をつけられているのに気づかないか。案内してもらおうか、海賊基地まで」
「さすが、Pー300VX偵察機ですね」
「ああ、戦艦百二十隻分の予算が掛かっているからな」
「それもこれも、ランドール提督の采配というところでしょうか?」
「まあな。俺だって、戦艦隻の百二十隻の方を選んださ」
「問題は、偵察機の燃料ですね。エネルギー切れで正体を明かしてしまわなければいいのですが……遮蔽装置って結構エネルギーを消耗するのでしょう?」
「やつらが真っすぐ基地へ向かってくれる分には、十分燃料は持つはずだ」
「寄り道しないことを祈りましょう」

2025年3月30日 (日)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 反乱 Ⅷ

銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 反乱

 アルビエール侯国首都星サンジェルマン、執務室で談話するアレックスとハロルド侯爵。
「どうやら摂政派は、サセックス侯国を自陣に取り込もうと画策しているようです」
「当然でしょうね。味方は多ければ多いほどいいですから」
「こちらも交渉した方がよろしいのではないでしょうか?」
「そうなのかもしれませんが……。紛争が泥沼化した際には、仲裁役として中立を保っていて欲しいものです」
「しかし反乱を起こした側にとっては、溺れる者は藁をも掴むです」
「そうですね。取りあえずは、保険を掛けておくとしますか」

 数日後。
 サセックス侯国のエルバート侯爵の館を訪れた使節団があった。
 使節の代表は、ロベスピエール公爵の懐刀のマンソン・カーター男爵である。
 応接室で応対するエルバート侯爵。
「早い話が、味方になれということですかな」
「その通りです」
「我が国が、バーナード星系連邦に対する盾になっていることはご存じですよね」
「はい。しかし連邦は、革命直後で侵略する可能性はありません」
「それは分かっております。とはいっても、アルビエール侯国側にしても、同じことを考えておりましょう。どちらか側の肩を持つというのは、不公平というものです」

 数時間後。
 館から出てくる使節団。
「想定通りだったな」
「仕方ありませんね。やりますか?」
「無論だ。後はドレーク提督に任せよう」
 やがて乗ってきた車で帰ってゆく。

 宇宙空間に十二隻の宇宙船が停止している。
 その中心にフランシス・ドレーク提督の乗船する私掠船カリビアン号。
 かつて海賊として帝国内を荒らしまわった船である。
 久しぶりに仲間を招集して海賊団を結成したのだった。
 船橋では、今しがた通信が終わったばかりのところ。
「男爵は、説得に失敗したか……。まあ、想定内だ」
「次は我々の番ですね」
「標的は今どこにいる?」
「今の時間は、女学院にいるはずです」
「よし! 先に潜入している奴と連携して、下校するところを襲うぞ!」
「彼女は、送り迎えの車で通学しています」
「運転手は殺しても構わん。娘だけ誘拐できれば良い」

 数時間後。
 数隻の高速艇が惑星へと降下していった。

 女学院から公爵家へと向かう自動車。
 車内で本を読んでいる少女。
 その自動車の前方に出現する高速艇。
 道を塞ぐように停止する。
 何事かと車を降りてくる運転手だったが、銃撃を受けてバタリと地面に倒れてしまう。
 高速艇から数人の男達が降りてきて、自動車を取り囲む。
 怯えている少女。
「お嬢さま、お迎えに参りました」
 ドアを開けて、降車を促す男。
「おとなしくして頂ければ、危害は加えませんから」
 逆らってもしかたがないと思った少女は、言われるままに男達に着いてゆき、高速艇に乗り込む。

 少女を乗せた高速艇は上空へと飛び去り、待機していた私掠船に合流する。
 やがて、どこかへと消え去った。

 その私掠船の後を密かに追跡する一隻の船。
 その機影はレーダーからは確認できず、肉眼でも視認できない。
 歪曲場透過シールドで守られていた特殊索敵である。

2024年9月13日 (金)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 帝国叛乱 Ⅶ

 大演習は終わった。
 すでに展望ルームには、皇帝の姿はない。
 幼い皇帝に長時間同じ場所に立たせておくのは無理だろう。
 ぐずって泣いて周りの者を困らせたのであろう。皇帝をあやしながら侯爵とエリザベス皇女と共に帰ったと思われる。
 残っているのは将軍達だけのようである。
「大演習を終了する。これより反省会を開くので、各艦隊の指揮官及び参謀はステーション作戦会議室に集合せよ」
 本部から連絡が届く。

 数時間後作戦室に集合する面々。
 議長は、当然ロベスピエール公爵子飼いのアルバード・ギンガム大将である。
「反乱軍は、アルビエール侯国に集結している」
 摂政派においては、反乱を起こしたのは前回に続いて皇太子派ということになっている。
 前回はともかく今回はどうみても摂政派の謀反であることは確か。
 しかし国政においては、帝都を押さえている摂政派に分がある。
「帝国を放ったらかしにして、共和国同盟にばかり加担して国政を疎かにしている」
 アレクサンダー王子に、皇帝になる資格はないと吹聴しまくっていた。
 盗人にも三分の理があるということだろう。
 摂政派にとって、アレックス(アレクサンダー)が皇位継承継承権を有する王子であることまでは認めているようだが、皇太子としては認めない。


 話題は中立を保っているサセックス侯国の話しとなった。
「サセックス侯国は、今まで通り中立を保っている」
「まあ、バーナード星系連邦の侵略を阻止するためには致し方ないでしょう」
「連邦? 今はあっちも謀反が起きて分裂しているのだろ? こちらに攻め入る余裕はまだないと思うのだが」
「さすれば、サセックスをこちら側に引き込むこともできるじゃないか」
「使者を送ってみたらどうだ?」
「そうだな。手をこまねいていたら、反乱軍に先を越されてしまうぞ」
「だが、これまでの経緯をみても、エルバート侯が首を縦に振るとは思えないが?」
 頭を抱える一同だったが、
「人質を取って、言うことを聞かせるしかないだろう」
 と進言したのは、フランシス・ドレーク提督であった。
 海賊上がりのドレーク提督にとっては、人質作戦を実行するのも容易いだろう。
「ならば貴官が陣頭指揮を執ればどうだ?」
「いいですとも。ご命令なさればいつでもよろしいですぞ」
 と議長のギンガム大将を見る。
「それは良いのだが……一応公爵に伺ってからでないと結論は出せない」
 国家間の案件であるがゆえに、公爵の了解を取る必要がある。
 最高権力者であるはずの皇帝ロベール三世でも、摂政エリザベスでもない公爵の名を出すことからして、真の実力者は誰かを示していた。


「ところで、ジュビロ・カービンはどうしておるか?」
「例の同盟分断作戦を上程した奴か? 闇の帝王とか名乗っていたようだが」
「議会進行中のスクリーンに突然現れたのにはビックリしましたよね。ハッキングの能力は認めますけど」
「しかし彼の進言通りに途中までは上手く運んでましたよ」
「共和国同盟内に反乱を起こさせたのは、素晴らしい手腕でした」
「いっそ参謀に取り入れたらどうでしょうか?」
「いや、それはよした方がいい。ああいう奴は、自分の都合で簡単に裏切る」
 ということで、話題を変える一同だった。

銀河戦記/鳴動編 第十一章 帝国叛乱 Ⅵ

第十一章 帝国叛乱

 

 事件の発端は、皇室議会だった。
 今後の方針について、議論を始めようとした時だった。
 突然、武装した兵士がなだれ込んできた。
「君たちはなんだ!」
 議員の一人が乱入者に向かって叫んだ。
「黙れ! これが見えないのか?」
 と、サブマシンガンを構える兵士。
「な、何をするつもりだ!」
 だがその答えは、マシンガン掃射であった。
 シャンデリアなどの調度品が片っ端から破壊されてゆく。
 議場内の人々には危害はなかったものの、問答無用という意思表示は伝わった。
「皇室議会は、本日をもって解散する。諸君らは拘禁させてもらう」
 次々と連行されてゆく議員たち。

 アルタミラ宮殿でも、ひと悶着が起きていた。
「これは、どうしたことですか?」
 玉座に座っていた摂政エリザベス第一皇女が、居並ぶ大臣たちに叱咤していた。
 ロベスピエール公爵が前に出て答える。
「どうやら、ジョージ王子を皇帝に擁立する一派が立ち上がったようですな」
 あくまで自分は知らぬ存ぜぬ、一切関わっていないという表情を見せる公爵だった。
 エリザベスも承知の上ではあるが、言葉には出せなかった。
 息子と弟とを両天秤に掛けても、どちらに傾くかは自分では図ることができない。
 もはや情勢にまかせるしかなかったのだった。

 突然、宮殿入り口が騒がしくなった。
 おびただしい軍靴の音が鳴り響いている。
 謁見の間へと姿を現した軍人たちがなだれ込んで来る。
 銃を構えて、大臣達を威嚇する。
 軍人たちをかき分けて、リーダーらしき人物が入ってくる。
「我々は、ジョージ親王殿下を皇太子として擁立するものだ!」
 大臣の一人が異議を訴える。
「何を言うか! 皇太子はすでにアレクサンダー王子が……」
 そこまで言ったところで、兵士に銃床で腹部を殴られて倒れる。
 さすがにエリザベス皇女の前では、発砲流血騒ぎは起こせないようだ。

 例えジョージ親王が帝位に就いたとしても、まだ幼くて政治を執ることは不可能
であるから、摂政が立つことになる。


 後日に分かったことであるが、議員の中でも摂政派に属する者は解放されたという。
 これによって、摂政派による反乱ということが明らかとなった。

 反乱軍は、放送局、宇宙港などの公共機関、財務省などの政府機関を次々と掌握
していった。

2024年3月27日 (水)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 帝国叛乱 V

 アルビエール侯国のアレックスの元に、ウィンディーネ艦隊がタルシエン要塞を
出立したとの報告が届いた。
「そうか、配下の将兵達にも受け入れられたということだな。まずは一安心だ」
「こちらに到着するのは、五日後になるもよう」
 パトリシアが報告する。
「それにしても……」
 と、言いかけて言葉を一旦中断してから、
「なんでこうも反乱が続いて起きるのかな。連邦も共和国も、そして今度は銀河帝
国だ」
「その銀河帝国は、数百年前にも二度反乱が起きてますけどね。これで三度目にな
ります」
 二度の反乱とは、トリスタニア共和国同盟の独立戦争、その後に起きたバーナー
ド星系連邦の軍事クーデターである。
「皇太子殿下、よろしいですか?」
 アルビエール侯国の宮殿の一室に執務室を与えられたアレックスの元に、ハロル
ド侯爵が訪れた。
「摂政派率いる第一艦隊以下の艦隊が、近々軍事訓練を始めるそうです」
「ほほう。今更ですか?」
「一朝一夕で、艦隊をまとめ上げられるものではないのでしょうが。やらないより
はましということでしょうかね」
「これまで訓練などやったことはないらしいし、まともな訓練マニュアル作成でき
る士官がいるのかも怪しいですな」
「これまで、ぬるま湯に浸かっていましたからね」
「共和国同盟軍絶対防衛艦隊が、一瞬で簡単に滅んだのもそこにあるのです」
「これからどうなされますか?」
「そうですね。いつまでも分裂状態にしておくわけにもいかないでしょう。混乱に
乗じて連邦が、諜報員や破壊工作員を送り込んでくる可能性もあります」
「破壊工作ですか?」
 実際問題としても、ウィディーネ艦隊反乱の時のように、政情不安などによって
国民が疑心暗鬼になっている状態になれば、簡単に扇動されることもあるのだ。
「何にしても、ウィンディーネ艦隊が到着してからです」
「ウィンディーネ艦隊ですか……。ゴードン・オニール少将でしたよね。釈放し艦
隊をまかせて良かったのでしょうか?」
「また反乱を起こすと思いますか?」
「い、いえ。そこまでは……」
 一度でも裏切った者は、何度でも裏切りを繰り返し、敵側に寝返るということも
ある。
 侯爵が心配するのも無理からぬことであろう。
 かつてアレクサンダー王子行方不明が原因で国内分裂を生じ、皇太子即位となっ
て安寧していたら、今また反乱が起きた。
 主義主張というものはなかなか覆されにくいものなのだから。
 特にそれが銀河帝国という国家そのものならばなおさらである。

2023年11月24日 (金)

銀河戦記/鳴動編 第十一章 帝国反乱 Ⅳ

 艦橋に戻ってきたゴードン。
 軍医が額の傷の手当てをしている。
「そうか……。そういうことだったのか」
 副官のシェリー・バウマン大尉からウィンディーネ Ⅱ世号の成り立ちを聞いたゴードン。
 シェリーだって、拘禁を解かれて説明を受けたばかりなのだから。
「ご指示を」
 シェリーが促した。
 すでに出航準備は完了しているので、ゴードンの指令待ちとなっていた。
 軽く息を整えてから下令する。
「出航する。微速前進!」
 すかさずシェリーが復唱する。
「出航! 微速前進せよ」
 オペレーターが応える。
「微速前進!」
 ゆっくりと船台を離れて動き出すウィンディーネ。
「要塞ゲートオープン!」
「ゲート通過中!」
「前方オールグリーンです」
 タルシエン要塞をゆっくりと離れてゆく。
 その進路を囲い込むように、ウィンディーネ艦隊の艦艇が浮かんでいた。
「入電しました」
「繋げ!」
 正面スクリーンに、ゴードン配下の将兵達が映りだされた。
「閣下! どこへどもお供します」
 敬礼しながら意思表示する。
「また、一緒にやらせてください」
「解放されると信じていました」
 ゴードンのウィンディーネ艦隊への復帰を、口々に喜んでいた。
 共和国同盟に弓引くこととなっても、ゴードンにつき従った信頼厚き部下達だった。
 ランドール戦で、愛着のある指揮艦を大破させられて、乗り換えることになった者もいるが、それはせんないこと、提督には恨みを持ってはいない。
「ディープス・ロイド大佐は? 艦隊を預かっていたと聞いているが」
「はい。大佐殿は、タルシエン要塞の駐留艦隊の副司令官に戻りました」
「そうか……」
 アレックスの意向次第では、ウィンディーネ艦隊が彼の指揮下に入る可能性もあった。
 それにしても不可解だ。
 銀河帝国アルビエール侯国へ向かうことは決まっていることなのに、ウィンディーネ艦隊を帝国へ先着させなかったのは何故か?
 ロイド大佐がいたのだからできたはずである。
 ゴードンが釈放されるのを待っていたのか?
 しばし感傷に浸るゴードンだった。
「艦隊の足並み、揃いました」
「よし! 全艦ワープ準備だ」
 ハッカーによって改竄(かいざん)されたタルシエン要塞のシステムの改修はまだ終わっていないので、ワープゲートの使用は不可能だった。よって、自力でワープするしかない。
「これより、リモコンコードを送信する。各艦は同調させよ」
 七万隻の艦隊が理路整然とワープ行動を起こすには、艦制システムに依存するしかない。
 スクリーン上に示された艦影が、赤から青へと次々と変化していく。
 すべての艦が青の表示に変わった時、
「全艦リモコンコード同調完了しました」
 オペレーターが報告する。
「全艦ワープせよ!」
 ゴードンの下令のもと、七万隻の艦隊がタルシエン要塞からワープした。

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