銀河戦記/鳴動編 第二部 第十一章 帝国叛乱 Ⅶ
Ⅵ
神聖銀河帝国母星アルデラーンの衛星軌道上にある宇宙ステーション。
その展望ルームに大演習観艦式用の特設会場が増設されている。
壇上に立つのは、神聖銀河帝国皇帝ロベール三世。
その両側に、ロベスピエール公爵と摂政エリザベス皇女の姿がある。
後方には、第一艦隊以下の指揮官提督が並んでいる。
彼らの目前を、各艦隊から選び抜かれた精鋭部隊が、整然と隊列を組んで進んでゆく。
二チームに分かれて両側から進軍し、すれ違った後に反転して攻撃開始という内容だった。
展望ルームの前を艦艇が通過する度に、特設スクリーン上に艦橋内の映像が流され、艦長が敬礼していく。展望ルーム後方の将軍達も敬礼している。
第一艦隊旗艦エリザベス号は、第一皇女の名を冠してはいるが、実質的にはロベスピエール公爵の息が掛かっている提督が乗艦している。
フランシス・ドレーク提督。
戦闘経験の少ない帝国軍にあって、唯一と言ってもよいくらい戦闘経験豊富な逸材だ。
彼は海賊として帝国内を荒らしまわった経歴がある。
ある時、彼の標的として狙われたのが、ロベスピエール公爵の奴隷貿易船だった。
奴隷密売買がために詳細は闇に埋もれて公表されていない。
あくまで商人たちの噂話でしかないが、彼が貿易船に勇躍飛びついたところが、敵は護衛船団を隠し持っていて、手痛い反撃を喰らって航行不能となり、彼は拘束されてしまったらしい。
公爵の前に突き出されたものの、その気っ風に惚れた公爵が自分の配下にした。
奴隷狩りの私掠船(しりゃくせん)の艦長に取り立てられ、摂政派VS皇太子派分断騒動時に第一艦隊の提督に推挙された。
艦艇のすれ違いが終わり、反転しはじめる。
態勢を立て直して、戦闘準備にかかる。
最初から向き合ってすぐさま撃ち合ってもよいのだろうが、戦意高揚と冷静沈着とを両立させるにはこの方が良いとされていた。
すれ違ううちに精神を安定させる時間を与えるのである。
公爵がロベール皇帝に耳打ちしたかと思うと、やおら右手を上げる皇帝。
その手を降ろした時が、戦闘開始の合図のようである。
振り下ろされる小さな手。
砲弾飛び交う模擬戦闘の開始だった。
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