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2019年7月21日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ X

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                 X  カメラが作動して、目の前の様子が映し出された。  ジープの荷台に設置された機銃を一斉掃射している隊長が映っている。 「やるなあ。あの隊長」 「感心している場合かよ。まだ動かせないのかよ。モビルスーツがすぐそこまで迫って いるんだぞ」 「うるせえよ。まだだよ。そっちの武器の方こそ使えねえのかよ」 「今、確認してるさ。何だこりゃ?」 「どうした?」 「残弾数が0だよ。試運転中だったから、弾薬を積んでいないんだよ」 「使えねえなあ……」  目前までモビルスーツが迫っていた。  観念した時、もう一台の新型が体当たりして、モビルスーツを吹き飛ばした。 「すげえ馬力だ」 「これが新型の威力か」 「おっと、やっと動かせるぞ」 「気をつけろよ。こいつパワーがありすぎるからな」 「まかせろって」  しかし足を前に振り上げた時、バランスを崩して倒れてしまう。 「何をやってる。言ったそばからこれだ。早く体勢を立て直せ」 「判ってるよ」  その時、座席の後の方からあくびのような声がした。 「なんだ? 今の声は」 「知るかよ。おまえの後ろから聞こえたようだぞ」  アイクが振り向いて見ると、女の子が眠たそうに目をこすっていた。 「あれ? ここはどこ?」  とぼけた表情で、キョロキョロと見回していたが、 「ありゃりゃ、アイクとジャンじゃない。こんなところで何してるの?」  自分の置かれている状況に、まだ気がついていない。 「サリー。おめえこそ、何してたんだよ」 「何してたと言われても……」  サリーと呼ばれた女の子は、左手人差し指をこめかみに当て、首を傾げながら、 「グラウンド十週し終えて、モビルスーツ内に忘れ物したこと思い出して、コクピット に入ったはいいけど、そのまま寝ちゃったみたい。  と言って、ぺろりと舌を出した。 「コクピットに戻ってだと? おまえの乗っているの新型だぞ。どこをどう間違えれば、 自分の練習機と新型を間違えるんだよ」 「へえ? これ新型なの?」 「聞いてねえし……」  呆れた表情のアイクとジャン。  機器が鳴り出した。 「無線よ。出てみて」 「うるさいなあ……」  無線機のスイッチを入れると、スクリーンに現れたのは、特殊部隊のテントで首根っ こ掴まえられた、あの屈強な兵士だった。 「あー! おまえは、あん時の!」 「おまえら、そこで何をしている。ギルバートはどうした?」 「こいつに乗る予定だった奴は死んじまったぜ」 「おまえらがやったのか?」 「冗談じゃねえ。警備兵に撃たれたんだよ。そいつの代わりに乗ってやってるんだ」 「ちょっと待てよ……」  ジャンが何事かを考えていたが、思い出したように、 「死んだ奴がギルバートってことは、おっさん……ハイネか?」 「そうだ!」  憮然として答えるハイネ。
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2019年7月20日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 XI

第三章 第三皇女
                 XI  物語に戻ることにする。  インヴィンシブルの艦橋。  貴賓席に腰を降ろしているジュリエッタ皇女と、その両脇に直立不動の姿勢で立って いるネルソン提督とアレックス。  艦橋オペレーターは、アレックスの方をチラチラと訝しげに垣間見ている。 「まもなく、アルビエール候国領内に入ります」 「ここから先は、自治領を侵犯してゆくことになります」  オペレーターの報告に対して説明するネルソン提督。 「いつ、どこから攻撃を受けるか判らないということですね」 「はい、その通りです。マーガレット様の艦隊は航空母艦を主体とした艦隊編成ですの で、まずは戦闘機の大編隊が襲い掛かってきます」  ジュリエッタの質問に詳しい解説を加えるネルソン提督。 「マーガレット皇女様の旗艦は、攻撃空母アークロイヤルでしたね?」  確認を求めるアレックスにネルソン提督が答える。 「はい。舷側に皇家の紋章が配色されているので、すぐに判ります」 「ありがとう」  頷きながら正面スクリーンに敵編隊を探し求めるような表情を見せるアレックスだっ た。 「ランドール提督宛て、ヘルハウンドより入電しています」  艦内の緊迫感を一気に高める声だった。  アレックスは冷静に対応する。 「繋いでください」  正面スクリーンにポップアップ画面でヘルハウンド艦長が映し出された。 「P-300VXが敵艦隊を捉えました」 「よし。索敵を続行。マーガレット皇女の旗艦空母アークロイヤルを探せ! それとド ルフィン号をこちらに回してくれ。今からそちらへ行く」 「了解!」  艦長の映像が途切れて、元の深遠の宇宙空間が広がる映像に戻った。  アレックスはジュリエッタに向き直って、先程の交信内容を実行することを伝えた。 「これより我がサラマンダー艦隊は、マーガレット皇女様を保護するために、皇女艦隊 への突撃を敢行いたします」 「たった二百隻で大丈夫ですか?」  心配そうに尋ねるジュリエッタに微笑みながら答えるアレックスだった。 「六十万隻を相手にするのではなく、目標のアークロイヤル一隻のみですので大丈夫で すよ。ジュリエッタ様は、作戦通り援護射撃に専念してください」  ヘルハウンドに戻ったアレックスは、早速サラマンダー艦隊に進撃を命じた。 「機関出力三分の二、加速三十パーセント。マーガレット皇女艦隊に向けて進撃開始」  速度を上げてジュリエッタ艦隊を引き離すように先行してゆくサラマンダー艦隊。 「まさか、このヘルハウンドで、たて続けに戦闘をするなどとは思わなかったな」  愚痴ともとれる言葉に、艦長が笑いながら答えた。 「いいじゃありませんか。我が艦隊の乗員達も提督を指揮官に迎えて、みんな張り切っ ているのですから」  艦長に呼応するかのように、オペレーター達が立ち上がって答える。 「艦長のおっしゃるとおりです」 「かつての独立遊撃艦隊の復活です」 「提督となら地獄の果てまでもご一緒しますよ」 「おいおい。地獄はないだろう。天国にしてくれ」  笑いの渦が沸き起こった。  本来なら笑っていられる状態ではなかった。六十万隻もの大艦隊がひしめく中に飛び 込んで、皇女艦に取り付いて、白兵戦でマーガレット皇女を保護しようというのだから。 まさしく命がけの戦いで、地獄の果てまでという言葉が出たのもそのせいなのだ。  しかし、サラマンダー艦隊に集う士官達に迷いはない。提督と共になら、火中に栗を 拾いに行くこともいとわないのである。  まさしくミッドウェイ宙域会戦の再来ともいうべき作戦が開始されようとしていた。 ポチッとよろしく!
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2019年7月14日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ IX

 

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ

                 IX

 

 夕闇に暮れるバルモア基地を格納庫へと突っ走っている特殊工作部隊。
 警備兵の姿が見られないのは、ミネルバ迎撃のために海岸へと応援に借り出されてい
るせいだろう。
 格納庫の扉を開けて潜入するが、
「何者だ!」
 庫内に残っていた警備兵に発見される。
 銃撃戦が開始され、わらわらと待機所から警備兵が飛び出してくる。
 そんな中、遅れてやってきた二つの影があった。
 アイクとジャンの二人であった。監視がいなくなったのを機に、どうにかしてロープ
を解いて、後を追ってきたのであろう。
 と、目の前にシャーリー隊長が、コンテナの影に身を隠しながら、銃撃戦を繰り広げ
ている場面に遭遇した。
「やあ、こんばんは」
 気楽に声を掛けるアイク。
「お、おまえ達!」
 目を丸くしているシャーリー隊長。
「どうやって解いた?」
「いやね、こいつは縄抜けの名人でね」
「そんな事はどうでもいい。宿舎に戻って寝てろ!」
「ここまで来て、それはないでしょう。手伝いますよ」
「そうそう。あの新型モビルスーツを奪取するんですよね」
 ちょこっとコンテナの影から顔を出して、庫内に据えられているモビルスーツを見上
げるジャン。
「危ない!」
 シャーリーが首根っこ掴んで引き戻す。銃弾が顔を出していた辺りに着弾する。間一
髪のところであった。
「ひえええ! 危ないなあ」
 格納庫のシャッターがゆっくりと開き始めた。
「まずい。奴ら、モビルスーツを駆り出してきた」
 膠着状態を打破するために、モビルスーツを使って強制排除するつもりのようだ。
「ハイネ! ギルバート! モビルスーツに乗り移れ、援護する」
 そう叫ぶと、コンテナの影から飛び出して、銃を乱射しながら庫内にあったジープに
向かって一目散に駆けていく。そしてその背後に隠れる。
 その間にも、名前を呼ばれた二人がモビルスーツに乗り移ろうとしていた。
 一人は乗り込みに成功するが、一人はコクピットに乗り込む寸前に銃撃に倒れて、コ
ンクリートの床に落下した。
 恐る恐る倒れた兵士に近寄るアイクとジャン。
 兵士は虫の息だった。
 そして震える手で、持っていたディスクを二人に差し出しながら、
「こ、これを……たのむ」
 そう言い残して事切れた。
 ディスクを手渡された二人は、しばし見つめ合っていたが、
「これ起動ディスクだろ?」
「たぶんな」
 モビルスーツを見上げ、やおら登りはじめた。
 そして無事にコクピットに潜り込むのに成功する。
「へえ、うまい具合に複座だぜ」
「うん。俺の方が操縦担当だな」
「こっちは機関担当ってところだ」
「ええと、ディスクの挿入口は……。あった。ここだ」
 起動ディスクを差し入れると、計器類が一斉に点灯し、ディスクを読み込みはじめた。
次々と計器類を操作して、起動の準備を進めていく二人。
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2019年7月13日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 X

第三章 第三皇女
                  X  ここで現在の皇家についても語ってみよう。  崩御した前皇帝の子供達と兄弟についてである。  第一子は、長女のエリザベス王女。第二子は双子で、長男のアレクサンダー王子と次 女のマーガレット王女。この後アレクサンダー王子が誘拐される際に皇后は逝去された。 二人目の皇后も第三子の三女ジュリエッタ王女を産んだが、第四子と第五子は夭折し、 皇后も逝去された。そして、三人目の皇后が第六子のマリアンヌ王女を産んだ直後に、 皇帝は崩御されたのである。  一人の王子と四人の王女が誕生したわけだが、皇帝の崩御を持って王子と王女は、そ れぞれ皇子と皇女と呼び習わすのが慣例となっている。皇位継承が発生するからである。  エリザベス皇女は、ウェセックス公国ロベスピエール公と結婚。  マーガレット皇女は、皇母の祖国アルビエール候国の叔父の元に身を寄せて、内乱を 策謀している。  ジュリエッタ皇女も、皇母の祖国エセックス候国の伯父の元で、アルビエール候国や 共和国同盟に目を光らせている。  マリアンヌ皇女は、幼くて今まだ本星で遊んで暮らしている。  皇位継承の順位には、男子に優先権が与えられており、皇帝→直系尊属男子→兄弟→ 直系尊属女子という順序となっている。ただし兄弟で自治領主となっている者は、その 子供に順位を譲るのが慣例となっている。ロベール王子が、皇太子に推されたのもその 理由による。  最後に、アレクサンダー王子の行方不明となった経緯を簡単に説明しよう。  アレクサンダー王子は、アルビエール候国ハロルド侯爵の長女マチルダ候女を母とし て生まれ、双子のマーガレット王女と共にハロルド侯爵の元で育てられた。皇后が故郷 での出産と育児をすることは良くある風習である。アレクサンダー王子は典型的なエメ ラルド・アイを持っていたが、同じ瞳を持つ皇帝とハロルド侯爵の虹彩緑化遺伝子を受 け継いだものである。血縁関係にある家系同士の婚姻がゆえのエメラルド・アイと言え よう。それだけに皇家の血統を色濃く反映しているのである。  やがて皇后の出産後の静養も終わって、皇帝の待つ首都星へと戻る日がやってくる。  皇位継承権第一位を持つ王子の帰還ということもあって、厳重な警戒が敷かれて移動 が行われたが、その警戒網を破って突撃強襲艦を主体とする国籍不明の海賊艦隊が突如 として出現して、王子の乗る船ごと強奪され誘拐されてしまったのである。同時に皇后 が王子の首に掛けていたとされる【皇位継承の証】も戻らなかった。  その後、バーナード星系連邦が、アレクサンダー王子を保護していることを匂わせて、 食料一千万トンの無償援助と鉱物資源五十万トンの供給などの要求を突きつけてきたが、 いつしか立ち消えとなってしまった。海賊に偽装して船ごと誘拐したものの、何らかの 原因によって王子を手元から失ったものと考えられている。  王子誘拐に関しては、数多くの謎があった。  王子移送の日時とコースを、海賊がどうして知っていたのか?  帝国内に手引きする者がいたのかも知れないが、それは誰か?  王子が行方不明となり消息が完全に絶たれたのはどうしてか?  今なお出てこない【皇位継承の証】の行方は?  など未解決のまま二十余年が経過してしまったのである。
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2019年7月 7日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ VIII

 

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ

                VIII

 

 ミネルバが海上で奮戦している頃、丘の上の特殊部隊陣地では作戦決行の準備に余念
がなかった。銃器の手入れ、爆弾の信管のチェック、侵入ルートの再確認などである。
「ミネルバはどうしている?」
 隊長が見張りに確認している。
 丘の上からは海上がよく見渡せ、守備艦隊と交戦しているミネルバの模様が手に取る
ようにわかる。
「だいぶ苦戦しているようです」
「しかしたった一隻でこの基地にやってくるなんて無謀なのではないでしょうかね」
「作戦部の首脳達の考えだろう。ミネルバ一隻で何とかなるとね。何せ最新鋭の機動戦
艦らしいからね」
「下の者は命令されれば、どこへでも行く。たとえ困難な任務と判っていても服従する
しかない」
 その兵士が言ったことは、ミネルバもそうだが、こんな敵地に潜入している俺達も災
難だという含みを持っていた。
「まもなく作戦時間です」
 副隊長が時計を指差しながら注意した。
「よし。起爆装置をセットしろ」
 トーチカへ続く山腹に仕掛けた爆弾の無線信管を作動させるための起爆装置が接続さ
れる。
「作戦三十秒前です」
「カウント! 十秒前からだ」
「十秒前、九、八、……」
 起爆装置に手が掛かる。
「三、二、一」
「爆破!」
 起爆装置のスイッチが入れられる。
 するとトーチカのある山腹が大音響を立てて崩れ落ちた。
「よし! 突撃開始だ」
 特殊部隊が一斉に山肌を駆け下りてゆく。
「キースの班は訓練生を誘導しろ」
「はい」

 

 海上にあるミネルバ。
「艦長! トーチカのある山腹が爆発しました」
「トーチカのエネルギーシールド消失」
「特殊部隊が成功したようね。浮上します。アーレスのセーフティーロック解除、発射
体勢へ」
 ゆっくりと海上から浮上をはじめるミネルバ。
 海上に落とした影の中に、目標を失った数本の魚雷がさ迷っている。
「まずは右側のトーチカから叩きます。艦を右に六度回して」
 艦の真正面にしか発射できないアーレス。照準合わせは艦の方を目標に向けるしかな
い。しかし一度発射されれば山の一つや二つは粉々に粉砕してしまう威力を持っている。
「照準合いました」
「アーレス発射!」
 一筋の光輝がアーレスを発してトーチカへと向かう。実際には光の速度を持っている
レーザーなので一瞬の出来事なのであるが。
 トーチカを含む山肌が見事に吹き飛んだ。
「第二射準備。目標、左のトーチカ」
「回頭! 左三十度」
「燃料ペレット再注入」
「レーザー励起開始」
「回頭微調整、左へ三度」
 左のトーチカが砲撃してきたが、有効射程距離に入っておらず、射程を延ばすための
山なりの放物線弾道だった。弾丸スピードもかなり低下していて、CIWSで十分迎撃
が可能であった。
「アーレス発射体勢に入りました」
「発射せよ!」
 再び原子レーザーが炸裂して、二つ目のトーチカも吹き飛ばした。
「邪魔者はいなくなりました。バルモア基地へ突入します」
 ミネルバの基地への総攻撃が開始された。
「第三砲塔は地上基地を直接攻撃、第一砲塔は山肌を攻撃して山崩れを起こしてくださ
い」
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2019年7月 6日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 IX

第三章 第三皇女
                 IX 「それでは、一つには私の配下の二百隻ほどの艦艇を、銀河帝国領内での運用を許可頂 き、マーガレット皇女様保護の先遣隊とさせて頂きます。二つ目に、ジュリエッタ皇女 様の艦隊を、私の指揮に委ねて頂きたいのです」  マーガレット皇女を保護するには、その旗艦に急襲接舷して白兵戦で乗り込むしかな い。その白兵部隊を持っているのは、ヘルハウンド以下のサラマンダー艦隊しかなかっ た。また援護射撃としてのジュリエッタ艦隊も必要とされたのである。 「よろしいでしょう。その二つとも許可いたしましょう。ジュリエッタも構いません ね?」 「はい。喜んでランドール提督の指揮に従いましょう」  こうしてアレックスの指揮下で、内乱の首謀者であるマーガレット皇女を保護すると いう作戦が発動されたのである。  連邦軍によるジュリエッタ皇女艦隊への襲撃があったばかりである。事態は急を要し ていると判断したアレックスは、インヴィンシブルでエセックス候国の軍事ステーショ ンに戻り、待機していた配下のサラマンダー艦隊と第三皇女艦隊に対して、アルビエー ル候国への進軍を命令したのである。  歴史上初の国家間を越えた混成軍が動き出した。  ここで銀河帝国の国政についておさらいしてみよう。  まず政治を語る上で忘れてならない暦の制定である。  人類が太陽系を脱出して最初の植民星としたのが、太陽系から5.9光年の距離にある バーナード星系であった。その第三惑星にはじめて植民船が着陸した日をもって、銀河 標準暦元年としたのである。  銀河の自転において、1/2880秒角自転するのに掛かる時間をもって一銀河年とした。 これは地球・太陽暦の一年にほぼ等しく、歴史上の混乱を避けるための方策である。  ○月○日という月日は特に定めていないが、各惑星都市の事情に合わせて独自に制定 するものとした。  そしてもう一つが銀河帝国暦。  ソートガイヤー大公が銀河を統一して銀河帝国樹立を宣言したその日を元年としてい る。一年は銀河標準暦に同じである。  銀河帝国の領土は、皇帝が直接支配する直轄領と、皇家御三家と呼ばれるウェセック ス公国、エセックス候国、アルビエール候国の自治領とで構成されている。  御三家は、第二次銀河大戦後に連邦や同盟との国境防衛のために、皇室の分家を辺境 地域に赴任させたのがきっかけとなって、やがてエセックス候国、アルビエール候国と いう自治領へと発展した。もちろん国境防衛であるから、艦隊の保有も当然として認め られた。また銀河渦状間隙が天然の防衛障壁となっている地域にも、念のためにとウェ セックス公国が自治領を得て、艦隊三十万隻を持って監視の網を広げている。もっとも 銀河間隙の向こう側にあるのは、三大強国には加担せずに、永世中立を訴える自由諸国 連合で、他国を侵略するほどの艦隊も持ち合わせていない。  また直轄領及び自治領内には、委任統治領というものがあって、子爵以下伯爵や男爵 などの高級貴族が任命されて統治に当たっている。ただし世襲制ではないので、統治領 を維持するために皇帝や皇家にご機嫌伺いする必要があった。さらに委任統治領には銀 河帝国への上納金が義務付けられており、民衆から徴収した税金の一定額を、銀河帝国 へ納めなければならない。  この上納金制度は時として悪政をはびこらせる要因ともなっている。民衆からの税金 から上納金を納めた残りが貴族の報酬となるので、上納金をごまかしたり規定以上に税 金を搾り取ったりして私腹を肥やす者が少なくなかった。賄賂の授受が横行し政治の腐 敗を引き起こしている委任統治領もあった。
 ※注 かつてバーナード星系には惑星が存在すると信じられていたが誤りであること が判り、現在まで惑星が存在する証拠は見出されていなかった。 ところがその後、スペインのカタルーニャ宇宙研究所などからなる国際研究チームが 2018年11月14日に再び惑星があることが確認された。しかも、地球の3.2倍以上の質量 のあるスーパー惑星であるらしい。
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2019年6月30日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ VII

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                VII  ゆっくりと降下していくミネルバ。 「まもなく海上に着水する。総員、衝撃に備えて何かに捕まれ」  座席のある艦橋オペレーターはともかく、機関部要員などは立ち仕事なので、衝撃に 吹き飛ばされて怪我をしないように、機械の出っ張りにしがみ付いていた。  やがて豪快な水しぶきを上げながら着水するミネルバ。  海面との摩擦力による急激な減速で、乗員達は前のめりになりながらも、なんとか乗 り切ったようだ。 「着水しました」  冷や汗を拭きながら報告するオペレーター。 「全隔壁閉鎖」  艦内のすべての防水隔壁が閉じられていく。  水上戦闘では、喫水線より下部の艦体に損傷を受けて浸水した時に備えて、隔壁を閉 じるのはセオリーである。 「砲術長!」 「はっ!」  呼ばれて立ち上がる砲術長。 「各砲門の戦闘指示は任せる。目標戦闘艦が射程に入り次第、攻撃開始せよ」 「了解。各砲門は自分の判断で戦闘指示を出します。目標戦艦が射程に入り次第攻撃開 始」  命令を復唱して席に戻る砲術長。  数多くの敵艦船に対して、艦長自らが攻撃指令を出していては、全体的な指令が出せ なくなる。細かな指示は、各担当部門の責任者に一任するのは当然である。  早速に戦闘指示を出し始める砲術長。 「135mm速射砲へ、APCR硬芯徹甲弾を装填!」  APCR硬芯徹甲弾とは、軽合金の外郭の中にタングステンカーバイトなどの重金属 の弾芯を使用して侵徹長(貫通力)を高めたものである。全体として比重が軽いので高 初速が得られる。着弾すると外郭の軽合金は潰れて、弾芯のみが装甲を侵徹する。  より貫徹力の強いAPFSDS弾ではなく、こちらを選んだのは連射能力がこちらの 方が高いからである。もちろん値段の関係もあるが……。 「APCR弾、装填完了しました」  やがて速射砲台から応答があって直ぐだった。 「目標戦闘艦が射程に入りました」 「全砲門、攻撃開始!」  砲術長が下令すると、各砲門がそれぞれ火を噴き始めた。  ミネルバの兵装には、砲術長が担当する部門以外にもまだある。  魚雷長の担当する魚雷部門である。 「魚雷発射管室に魚雷戦を発令せよ」  フランソワは魚雷長に指示を与える。 「了解。魚雷戦を発令します」  ミネルバには艦首に8門、艦尾に4門の魚雷発射装置がある。  通常の魚雷はもちろんのこと、シースキミング巡航ミサイルの【トラスター】をも発 射できる兼用タイプである。  水上艦艇の魚雷発射装置は甲板上にあるものだが、ミネルバは潜水能力があるので、 喫水線下に発射管を装備している。 「ADCAP重魚雷を装填」  ポンプジェット推進にて最大速力50kt(最大射程8km)を誇り、全長約5.79m、重量 1,663kg、弾頭に292.5kg高性能炸薬(磁気信管)。1,000m以上もの深さからでも発射き るホーミング魚雷である。  誘導方式には、魚雷本体のソナー探索によるものと、母艦からの有線誘導の二通りが ある。有線誘導の場合には、敵艦がデコイ(囮魚雷)などで対抗しても、それを廃除し て命中させることができる。 「敵艦隊は密集しています。ソナー探索にしましょう」 「そうですね。発射すれば必ずいずれかの艦に命中するでしょう」  一隻が魚雷に気づいて退避運動を起こしても、後続の艦艇がいくらでもいる。これだ けの重魚雷、命中すれば一発撃沈である。  魚雷発射管室では、指示に従ってADCAPを発射管に装填していた。  もちろん人力では不可能であるから、自動装填装置によってである。 「装填完了」 「管内に注水」 「深度調停装置を調整、5m。雷速5kt」 「発射角度3度」 「圧搾空気弁正常。圧力正常」 「前扉を開放」  次々と魚雷発射への準備が進められていく。  そして魚雷長が艦橋へ報告する。 「魚雷発射準備よし!」 『魚雷、全門発射!』  すぐさま命令が下される。  魚雷発射!  圧搾空気によって魚雷が押し出され、起動スイッチが入って機関が動いて、魚雷は敵 艦目指して進んでいく。 「魚雷発射、確認。敵艦への到達予定時間は二分後です」 『続ける。次弾を装填せよ』  魚雷発射担当要員に休んでいる暇などなかった。 「左舷後方より高速推進音! 水中をこちらに向かってきます」  周囲に潜水艦が隠れていたのであろう。  こちらが撃てば、敵も撃ってくる。 「デコイ発射用意!」  おそらく誘導魚雷であろうから、囮魚雷で敵魚雷をかわそうというわけである。  もちろん同時に退避運動。 「取り舵一杯! 左舷エンジン停止、右舷エンジン全速!」  ゆっくりと旋回を始めるミネルバ。 「魚雷発見!」  正面スクリーンに敵魚雷が気泡を上げて迫ってくる映像がポップアップで投影される。  艦橋は緊迫感に溢れていた。 「舵を中央に戻せ! 両舷前進半速! デコイ発射!」  息詰まる瞬間であった。  魚雷は退避運動によって目標を一時に失い、デコイに反応して反れていった。 「敵潜水艦の位置を確認」 「反撃します! ソードテール対潜魚雷発射用意!」  艦上発射式の対潜ミサイルである。トライアス(改)巡航ミサイルの弾頭に誘導魚雷 を取り付けたもので、敵艦の大まかな位置に向かってランチャーから発射され、敵艦付 近に到達すると魚雷を投下する。着水後に赤外線シーカーと音響誘導によって敵艦の追 跡をはじめる。
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2019年6月29日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 VIII

第三章 第三皇女
                VIII 「内乱ですか……。宇宙港の物々しい警戒はそのためだったわけですか」 「双方にはそれぞれ穏健派と急進派がありまして、急進派の人々が至る所で騒動やテロ を引き起こしているのです。要人の暗殺も起きております」 「大変な事態ですね。これは早急に手を打たないと、漁夫の利を得てバーナード星系連 邦の思う壺にはまりますよ」  それは誰しもが考えていることであった。速やかに内乱を鎮圧して外来の敵に備えな ければいけない。そのためには首謀者であるマーガレット皇女を捕らえることである。  しかしマーガレット皇女率いる第二皇女艦隊は強者揃いである。そしてマーガレット 皇女が身を寄せているアルビエール候国にも、自治領艦隊百万隻に及ぶ大艦隊を有して いた。それはアルビエール候国が、バーナード星系連邦との国境に位置しており、領土 防衛の観点からより多くの艦艇の保有を許されてきたからである。しかも連邦の侵略を 食い止めるために、常日頃から戦闘訓練が施されて精鋭の艦隊へと成長していた。  第二皇女艦隊と自治領艦隊とを合わせて百六十万隻。  対する摂政派率いる統合軍は、第一・第三・第六皇女艦隊、そしてウェセックス公国 軍とを合わせて二百四十万隻になるが、ジュリエッタ皇女の艦隊以外は、戦闘経験がま ったくない素人の集団であった。まともな戦闘ができる状況ではなかった。  銀河帝国の汚点とも言うべき内容を、外来者であるアレックスに対し、淡々と説明す るエリザベス皇女。その心の内には、皇家の血統の証であるエメラルド・アイを持ち、 共和国同盟の英雄と称えられるランドール提督なら、解決の糸口を見出してくれるので はないかという意識が働いたのではないかと思われる。 「もし許して頂けるのなら、私がマーガレット皇女様を保護し、この宮殿にお連れして 差し上げましょう」  突然の意見具申を申し出るアレックスだった。まさしくエリザベス皇女の期待に応え る形となったのである。 「そんな馬鹿なことができるわけがない」 「冗談にもほどがあるぞ」  大臣達が口々に反論するが、一方の将軍達は黙ってアレックスを見つめていた。 「できるというのなら、やらせてみようじゃないか」  そういう表情をしていた。同じ軍人であり、以心伝心するものがあるのかも知れない。 共和国同盟の英雄、奇跡を起こす提督ならやるかも知れない。 「判りました。いずれにしてもこのままでは、のっぴきならぬ状況に陥るのは目に見え ています。前代未聞のことですが、ここは一つランドール提督にお任せしてみましょ う」  摂政が決断を下せば、それに従って行動を起こすだけである。  アレックスは声には出さず、深々と頭を下げた。 「ランドール提督には、希望なり必要なものはありますか? できる限りの便宜をはか りましょう」 「二つほどの要望があります」 「構いません。どうぞ、おっしゃってください」
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2019年6月23日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ VI

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                 VI  海上を進む戦艦ミネルバ。  艦橋の最先端にあるガラス張りの場所に立ち尽くして、バイモアール基地のある前方 を静かに見つめているフランソワ。  上級大尉の肩章の施された淡いベージュ色のタイトスカートスーツに身を包み、その 胸には戦術用兵士官であることを示す徽章(職能胸章)が、夕焼けの光を受けて赤く輝 いている。  半舷休息から戻ってきたばかりで、じっと正面を眺めたまま腕組みをして、何事か思 案の模様であった。  その様子を見つめている周囲のオペレーター達。 「艦長は何を考えていらっしゃるのだろか?」  フランソワには四歳下の弟がいた。  成績優秀で品行方正にして、クレール家の次期当主として両親の期待を受けていたフ ランソワ。  対して弟の方は、姉とはまるで正反対の粗忽者で乱暴者、毎日のように誰かと喧嘩し て生傷が絶えなかった。  そんな弟ではあったが、子供のいないとある軍閥の家系に養子として迎えられた。  養子と言えば聞こえが良いが、実情はクレール家から厄介払いしたに等しかった。  フランソワにとっては、できの悪い弟であったが、幼少の頃から世話をやいてきた可 愛い弟でもあった。  その後、クレール家と養子先の軍閥家との交流は断絶し、弟の消息も途絶えた。  風の噂に、家に寄り付かず放蕩のあげく、勘当されてしまったという。 「今どこで何をしているのかしら……」  士官学校に入隊する少し前の話である。  どこに注視することもなく、ぼんやりと前方を見つめるフランソワであった。  突如、艦内に警報が鳴り響いた。  自分の端末に集中するオペレーター達。 「バイモアール基地の探査レーダーに補足されました。基地の絶対防衛圏内に侵入」  我に返り指揮官席に向かって駆け出しながら、 「戦闘配備。アーレス発射準備!」  フランソワは命令を下した。  まだ半舷休息の時間は終わっていなかったが、戦闘となれば最上位の士官が指揮を執 るものだ。  ゆっくりと休んでなどいられない。  戦闘配備と同時に、眺めていた展望用ガラスの外壁に防護シャッターが降ろされ、メ インパネルスクリーンなどのシステム機器が下降してくる。  それまで指揮官席に陣取っていた副長が席を譲りながら、 「これより艦長が指揮を執る。戦闘配備。アーレス発射準備」  と指揮権の交代を告げながら、命令を復唱した。 「戦闘配備!」 「アーレス発射準備」  各オペレーター達も命令を復唱して確認した。  兵装の内でも、原子レーザー砲のアーレスは、発射準備が整うまで時間が掛かるので、 使用の時にはいの一番に準備させておかなければならない。  原子をレーザー励起させるために極超低温にし保持する装置。莫大な電力を瞬間的に 発生させる超伝導コイル蓄電装置など。それぞれに冷却材である液体ヘリウムの注入が 必要だった。 「バイモアール基地の詳細図をスクリーンに投影。敵艦艇の位置データを重ね合わせて ください」  スクリーンに基地が映され、海上を埋め尽くすように水上艦艇がひしめいていた。 「水上艦艇の総数は、およそ七十二隻です」 「たいした設備もないのに、これだけの艦艇が集合しているのは珍しいわね」 「新型モビルスーツのせいではないですかね。このバイモアール基地には、カサンドラ 訓練所と共にモビルスーツ研究所も併設されてますから。新型をここへ運び込んだのも そのためで、警備のために派遣されてきたものと思われます。何せ、あのフリード・ ケースン中佐が設計したマシンです、ただものでないことは誰しも察しがつきますから ね」 「それは言えてますね」  うなづくフランソワ。  サラマンダー艦隊に配属されて日も浅かったために、フリードとはほとんど話しをし たことがないが、噂の限りではとんでもない天才科学者であることは、彼が開発したも のを見れば一目瞭然。極超短距離ワープミサイル、ステルス哨戒艇P-300VX、そ してなんといってもこの機動戦艦ミネルバである。 「さて……。まず最初に射程に入るのは湾内を固める水上艦艇ですが、これは純然たる 旧共和国同盟軍から転進した部隊です。同じ祖国同士ということになります」 「もちろんすべて撃沈破壊します。水上艦艇を残しておけば、いずれ我々の秘密基地の 探索に借り出されることになります」 「なるほど、それは問題ですね」  パネルスクリーン上の艦艇データの明滅がが、一斉にこちらに向かっていることを示 した。 「敵艦隊が動き始めました」 「目標戦闘艦、先頭を進む艦艇に設定」 「了解。目標戦闘艦として、ミサイル巡洋艦チャンセラーズに設定」  艤装、mk26ミサイルランチャー、mk41垂直発射トマホーク、mk46三連装 魚雷発射管、5インチ54口径軽量速射砲2門、20mmCIWS機関砲2門。機関出力、ガ スタービン4基2軸の80,000shp、速力30ノット。  スクリーンに目標戦闘艦に設定した艦艇データがテロップで流れていた。 「およそ平均的な部隊編成ですね。このミネルバの戦闘能力からすれば、それほどの脅 威ではないと思われます」 「油断は禁物ですよ。一頭の猛獣が蟻の大群に倒されることもあるのですから」  確かにフランソワの言うとおりである。  格段の火力を誇るミネルバとて、その対象は上空から迫る宇宙戦艦が本来の相手であ る。海上を航行する水上艦では、水平発射しかできないアーレスは使用不可だし、ヒペ リオンも上空迎撃が主任務である。結局のところ下向き攻撃できるのは、135mm速射砲 第三砲塔と爆雷による攻撃しかない。しかし相手はすべての兵器を使用することができ、 トマホークなどのミサイルを集中させられると、さすがのミネルバも苦戦を強いられる ことになる。 「海面に着水してください」  これしかない。  着水すれば、ほとんどの兵器が使用可能となるが、反面として破壊力の大きな魚雷攻 撃を受けることになる。  攻撃力をとるか、防御力をとるか、二者選択である。
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2019年6月22日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 VII

第三章 第三皇女
                VII 「さて……」  と、前置きしておいてから、アレックスに向かって語りだすエリザベス皇女。 「妹であるジュリエッタを救い出して頂いたこと、個人としても大いに感謝しています。 あなたの組織する解放軍が援助を願っていることも伺いました。しかしながら、我が銀 河帝国には内憂外患とも言うべき頭の痛い問題を抱えているのです。もちろん一方は、 バーナード星系連邦の侵略です。そしてこれが一番の難しい問題なのですが……。はっ きり申し上げましょう」  エリザベス皇女が語り出した問題は、内乱の勃発というものだった。  しかもそれを引き起こしているのが身内であり、マーガレット第二皇女がその首謀者 ということである。  かつて銀河帝国を震撼する大事件があった。  次期皇太子・皇帝となるべき皇位継承権第一のアレクサンダー第一王子が誘拐され行 方不明となったのである。  そして皇帝が崩御されて、次期皇帝問題が起こったが、皇帝には第一王子以外に男子 はなく、行方不明である以上捜索を続けるべしとの結論が出されて、皇帝不在のままエ リザベス第一皇女が摂政となることで取りあえずの一件落着が諮られた。  しかし二十余年もの時が過ぎ去り、第一王子が行方不明のまま、いつまでも皇帝不在 なのは問題である。そこで新たなる皇太子候補を皇族の中から選びなおそうではないか。  そして人選に上がってきたのが、エリザベス第一皇女と夫君のウェセックス公国領主 のロベスピエール公爵との間に生まれた、ロベール王子である。  皇位継承の順位では、ロベスピエール公がアレクサンダー王子に次ぐ第二位になるの であるが、公爵はその権利を第五位の息子に譲って、皇太子候補として強く擁立した。  ロベスピエール公ロベール王子が次期皇太子。  皇族の間では妥当であるとされ、皇室議会でも承認された。  これに毅然として反対したのが、マーガレット第三皇女である。ロベール王子は皇家 の証であるエメラルド・アイではなく、アレクサンダー王子の消息が確認されるまでは 待つべきだと主張した。  そして何より最大の根拠は、【皇位継承の証】の存在であった。  【皇位継承の証】は、代々の皇太子に受け継がれてきた皇家の至宝である。その実体 はエメラルドの首飾りで、深く澄み通った鮮やかに輝く深緑色の大粒のエメラルドを中 心にして、その周囲をダイヤモンドが配されているというものだった。  そしてそれは、アレクサンダー王子の首に掛けられたまま、共に行方不明となってい る。  アレクサンダー王子が生きていれば当然所持しているだろうし、仮に王子が亡くなら れていたとしても、価値ある宝石であるために、いずれ宝石商やオークション、骨董品 市場などに流通するはずであろう。  エメラルド・アイと皇位継承の証の二点を根拠に、反論を続けるマーガレット皇女で あったが、結局ロベール王子擁立は覆されなかった。  そしてついに、マーガレット皇女は、ロベール王子擁立を掲げるロベスピエール公爵 率いる摂政派に対して、皇太子派としての反旗を掲げたのである。そしてそれを支援し たのが、自治領アルビエール候国領主のハロルド侯爵である。  こうして銀河帝国を二分する姉妹同士が骨肉相食む内戦へと発展していった。 参照*外伝/王太子誘拐
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