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2017年5月29日 (月)

夢魔の標的 其の参

 昼休みとなった。
 女子生徒達は教室のあちらこちらにグループを作って、それぞれに弁当箱を広げて談笑している。
 鴨川智子、芝桜静香、風祭洋子、そして蘭子を加えた中学校からの仲良し四人組もまたその中の一つであった。
「ところでさあ……。この間の変死事件だけど、結局迷宮入りになりそうよ」
 グループの中でも、いち早く噂話や事件の裏話などを仕入れてくる、情報屋と呼ばれる静香が話題を提供した。
「ああ、四天王寺公園で全身の血を抜かれて死んでいた、うちの学校の生徒のことでしょう?」
 ぴくりと眉を吊り上げる蘭子。
 ある夜のことを思い出していた。

 夜の公園に悲鳴があがる。
 一人の女子高生が怪物に襲われている。
 恐怖に引きつった顔、あまりの恐ろしさに身動きできない。
 つつと怪物から触手が伸びていく。
「まるで、蛭のようだな」
 どこからともなく声が響く。
 振り返った怪物の視線の先の木陰から現れる巫女装束の少女。
 陰陽退魔士、逢坂蘭子だった。
 次の瞬間。
 その手元から呪文の書かれた呪符が飛び、怪物の身体に張り付いた。
 ぐぉー!
 うめき声を上げる怪物。
「どうだ。身体を動かせないだろう。おまえのような低級妖魔には呪符だけで十分だ。どうやら昨夜の件もおまえの仕業のようだ」
 蘭子が呪文を唱えながら、右手をゆっくりと水平に上げると、その指先に青い炎が点った。
「清浄の炎よ。邪悪なるものを永遠の闇に返せ」
 蘭子が右手を前方に振り出すと、青い炎が宙を舞って怪物の身体に取り付き、一瞬にして燃え上がった。
 ぐあああ~!
 苦しみもがく怪物。
 やがて跡形もなく消え去ってしまう。

 地面にへたり込んで呆然としている少女。
 歩み寄り、その額に指先を当てながら、
「眠るが良い。そして今宵のことはすべて忘れることだ」
 呪文を唱える蘭子。
 やがて目を閉じて眠るように横たわる少女だった。

 すっくと立ち上がり、闇夜の中へと消え去る蘭子。

「蘭子! 聞いているの、蘭子?」
 すぐ目の前に智子の顔があった。
「ああ……済まない」
 過去に思いを馳せていた自分を現実に引き戻す蘭子。
「何を考えていたの?」
「いえ、何でもないわ」
「そう……」
「それで、何か用かしら」
「食事が済んだら、他のみんなを集めてボール遊びでもしようという話よ」
 風祭洋子がバレーボールを片手で宙にぽんぽんと弾ませていた。
「ああ、その話ね。わかったわ」
 新入学したばかりで、各中学校から集まったクラスメート達とは馴染みのない者も多かった。そこで昼休みにバレーボールに興じながら親睦を図ろうというものだった。
 すでに食べ終わっていた弁当箱を鞄に収めて立ち上がる蘭子。
「さて、行きましょうか」

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