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2017年6月26日 (月)

夢鏡の虚像 其の拾弐

 ひとまず、その部屋を退散して、応接間で相談することにする。
「ご覧になられた通りです。やはり悪魔かなんかに魅入られてしまったのですか?」
「いかにも、今夜中にも何とかしないと、娘さんは助からない」
「助からないって……。そんな、娘が……」
 相変わらず涙ぐんでいる母親。
 その肩をやさしく抱き寄せながら、
「大丈夫だよ、ママ。陰陽道の大家である土御門宮司がいらっしゃったということは、娘を助ける算段があるということだよ。ですよね?」
「いかにも」
「本当ですか、娘は助かるのですか?」
 母親の目が輝いた。
「土御門家の名誉にかけて」
 すると気が緩んだのか、顔を手で覆ってワッと泣き出した。

 その時、玄関のインターフォンが鳴った。
「私が出よう」
 いまだに泣き伏せっている母親に代わって父親が玄関に回った。
 玄関で何やら問答が聞こえていたが、戻ってきた父親に着いて、二人の男性が付いてきていた。
「井上課長さん!」
 蘭子が思わず声を出した。
 それもそのはずで、心臓抜き取り変死事件で、散々な待遇をしてくれた相手。大阪府警本部刑事課長の井上警視だったからである。
「これはどうも……。逢坂蘭子さんでしたね。その節はどうも……」
 と、蘭子を認識して頭を下げる井上課長だった。
「知り合いかね」
 晴代が蘭子に尋ねる。
「例の心臓抜き取り変死事件の担当捜査官よ」
「ああ、あれか……」
「大阪府警刑事課の井上です」
 言いながら、晴代に名刺を差し出す。
 受け取って、記されている正式な肩書きを読んで尋ねる晴代。
「捜査一課の刑事課長さんが、わざわざお見えとは、何事か起こりましたかな」
「この近くで殺人事件が起こりましてね。目撃者によりますと、こちらの娘さんが関わっているらしいとのことで、事情聴取に参った次第でして」
「ほう、殺人事件とな。どのような……」
「目撃者によりますと、こちらの娘さんに若い男が絡んでいたらしいのですが、突然男の腕が捻じ曲がり、頭が首からもぎ取られるように吹き飛んだというのです。実際の現状もその通りのままでして……。まるで怪力の持ち主かプロレスラーでもないと、ああにも……」
「とてもか弱い娘さんには不可能だとおっしゃるかな」
「その通りです。頭を抱えていたのですが、蘭子さんがこちらに見えているのをみて、少し納得できたような気がします」
「納得とは?」
「はたまた悪霊かなんかの仕業ではないかと……」
「科学捜査しか信じない警察の言葉じゃないね」
「まあ、組織的にはその通りなのですが、個人的には蘭子さんに教えられましてね。科学では解明できないものもあるということをね」
「ふん……」
 と、鼻声で答えて、両親の方に向き直る晴代だった。
「それでは、ご両親にお尋ねいたしますが、娘さんが帰宅された当時のことを、詳しく話していただけますかな」
「よろしいでしょう。お話いたしましょう」
 父親が意を決したように語り出した。

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