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2017年6月 7日 (水)

夢幻の心臓 其の参

 逢坂家のいつものような朝食風景。
 TVを見ながら一家団欒の最中であった。
 つと、ニュースに釘付けとなる家族。
『○○町××交差点にある交番にて、首を切断された警察官と、心臓のない女性の遺体が発見されました』
 心臓のない女性という言葉に注目する家族だった。
「聞いたか?」
「はい」
「昨夜は何も感じなかったのか?」
「いいえ。何も……」
「だとすると、妖魔の仕業ではなさそうだな」
「悪霊の類ではないかと思うのですが」
「うん。あるいはな」
 そもそも生霊や悪霊、あるいは人の魂というものは、元々同じものであって、区別できるものではなかった。殺人者と一般人とを、見た目で見極めることが不可能なのと同じである。
 ゆえに、昨夜の事件が悪霊の仕業であるならば、蘭子にさえ気づかせなかったのも道理である。それでも直接に対面すれば、悪霊かどうかくらいは判別できる。
「しかし、神出鬼没の妖魔と違って、悪霊は限られた地域にしか出没しないから、二度三度と繰り返されるうちに、おのずと特定できるだろう」
「それだけの犠牲者を出すことになりますけど……」
「仕方あるまい。これだけは、さしもの蘭子とてどうしようもあるまい」
「そうではありますが……」

 大阪府警阿倍野警察署。
 入り口には「阿倍野区変死事件捜査本部」という立て看板が立てられている。
 その捜査会議室の壇上から、府警本部から派遣されてきた井上馨刑事課長が怒鳴っている。
「最初の事件からもう十日だぞ! 犠牲者もすでに五人に上っていると言うのに、未だに何の手掛かりも見出していないとはどういうことだ!」
 周囲にある刑事達をギロリとにらめ付けながら、
「被害者の検視報告を言ってみろ」
 一人の刑事がすっと立ち上がって、報告書を読み上げる。
「はい。被害者はすべて女性。年齢としては十四歳から十七歳の間。被害者は心臓を抉り取られるようにして亡くなっています。しかも、身体の皮膚には全く傷一つ付けずにです」
 室内にざわめきが沸き起こる。
「それが判らんのだ。皮膚に傷一つ付けずに、どうやって心臓だけを抜き取ることができるというのだ」
 現在の常識、科学的に不可能な事件であった。
 仮に殺人犯を捕らえたとしても、起訴に持ち込むのは困難であろう。
 殺人にいたる動機と証拠・アリバイなどを突き止めても、殺人の方法が科学的に証明不可能だからである。
 いわゆる不能犯というやつである。

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