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2017年6月 1日 (木)

夢魔の標的 其の陸

 家の外から、バイクの高らかな排気音が響いてきた。
 はっ! と我に返る智子。
 兄が帰ってきたようである。
「お兄ちゃんが帰ってきた」
 洋服ダンスを閉め、智子を促して兄の部屋を出る蘭子。
「鍵を掛け忘れないでね」
「う、うん」
 マスターキーで元通りに鍵をかけてその場を立ち去る二人。
 途中で兄と鉢合わせをした。
 二人の視線が交錯する。
「こんにちは、お邪魔しています」
「ああ。ごゆっくりどうぞ。兄の達也です」
 眼光鋭く只者ではない雰囲気を持っていた。
 その間中、立ち止まり、蘭子に鋭い視線を投げかける兄だった。
 軽く挨拶を交わして智子の部屋に戻る二人。
 部屋に入るなり、泣き崩れる智子。
「どうしてこんな事になったの?」
「女装趣味……あるの?」
「あるわけないでしょ!」
 いきり立つ智子。
「きっと何ものかに取り付かれているのよ」
「そうね……。でもここで、この話をするのは止めましょう」
「どうして?」
「壁に耳あり、障子に目ありよ」
 蘭子に言われて気がつく智子。
 兄が何者か……つまり{人間にあらざる者}に取り付かれているとしたら、どんな防音壁であっても、聞かれてしまうだろう。
 取りあえず、明日学校のどこかで相談するということで、蘭子は智子の家を後にした。

 その夜の智子の家。
 智子の兄がうなされている。
 突然もがき苦しみはじめ、のた打ち回り、冷や汗を垂れ流している。
 やがてピタリと動きを止めたかと思うと、目を大きく見開いて両方の手を見つめた。
「ふふふ……。ついに手に入れたぞ。この身体は、もう私のものだ」
 押し殺すような声で笑うその身体からはオーラが発せられていた。
 部屋を出て、智子の部屋に入る達也。
 智子が目を覚まさないのは、魔力で眠らされているのかも知れない。
 壁際に掛けてあった、智子の女子校制服を手にとって、静かに出て行く達也。

 その頃、蘭子は目を覚まして、巫女装束に着替えているところだった。
 机の上に置かれた御守懐剣が怪しく光り輝いている。
「とうとう動き出したようね」
 着替え終わり、御守懐剣を懐に納めると、窓から庭先へふわりと舞い降り、夜の闇の中へと消え入った。

 夜更けの公園。
 女子校制服を着た人物がさ迷うように歩いている。
 暗がりでその表情は判らなかったが、街灯の下を通った時にその姿がくっきりと浮かび上がった。
 智子の兄の達也だった。
「その女子校制服、よく似合っているじゃない」
 背後から声が掛かり、振り返る達也。
 ジャングルジムの頂上に、ちょこんと座るように蘭子がいた。
「おまえは妹の友達の……」
「逢坂蘭子です。お見知りおきを」
「ふうん。陰陽退魔士か……」
「まあね。おまえが女装しているのは、狙いをつけた女性に警戒されないためね。見知らぬ男が後から付けていると知れば、皆逃げ出そうとするし、大声を上げられて人を呼ばれたりする。しかし女性だったら油断をするでしょう。襲った後で衣服を脱がすのは、いつも同じ服を着ていたら警察の不審尋問にかかるかも痴れないからだ」
「ブラボー! その通りだよ」
 相手して蘭子の推理をたたえる達也。
 正体を見破られ真相を突きつけられても余裕を見せていた。
「その話し、本当なの? お兄ちゃん」

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