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2017年6月 6日 (火)

夢幻の心臓 其の弐

 夕闇に暮れた街角。
 誰かに追われているかのように、度々振り返りながら、道を急ぐ女性。
 その後方から、暗闇に隠れるようにひたひたと迫り寄る怪しい人影。
 女性の視界に灯火の点った交番が見えてくる。
 助かった!
 と思いつつ、交番に駆け込む女性。
「すみませーん! 誰かいませんか」
 大声を張り上げるが、交番内はひっそりとして人気がなかった。
 おそらく巡回に出ているのではないだろうか。
「どうかしましたか?」
 戸口の方から、男性の野太い声。
 振り返ると、制服を着た警察官が立っていた。
「じ、実は誰かに追われているんです」
「追われている? ストーカーですか、心当たりは?」
 言いながら外の方を見回す警察官。
「そんな人はいないはずです」
「そうですか……。ちょっとそこらを見回ってきますから、ここにいて下さい」
「ひ、一人にしないで下さい」
 女性はかなり怯えているようだった。
 すぐに戻りますからと、出てゆく警察官。
 一人になる女性。
 膝を揃え両手を添えるようにして椅子に腰掛けて、震えながら警察官の戻るのを待っている。
 突然、外の方で、
「な、なにをする!」
 大きな声が響いた。
 驚いて外に視線を移す女性。
 コロコロと何かが転がり込んできて、女性の足元で止まった。
 ふと見ると、それはあの警察官の頭だった。
「きゃー!」
 叫び声を上げる女性。
 続いてズルズルと、外の方から何か重いものを引きずるような音。
 やがて現れたのは、喪服を着た女だった。その手には、首のない遺体を襟元掴んでいる。
 なおも鮮血のしたたり落ちるその遺体を手放して女性に近づく喪服の女。
「あなたにお願いがあるの」
「ひっ!」
 足がすくんで身動きできない女性。
「あなたの心臓が欲しいの」
 一歩一歩近づいてくる女性。
「娘が生き返るのに必要なの。だから心臓を頂戴ね」
 だからと言って「はい、どうぞ」と渡せるものではない。
 女が目前に迫っていた。
 握手をするような仕草で、右手を差し出すと、それは女性の胸元でピタリと止まった。
「ごめんね……」
 そう言った途端だった。
 女の右手が、女性の胸元から、その身体の中にめり込んでいく。
 一瞬、女の右手が止まり、今度はゆっくりと引き抜かれていく。
 その右手には、血がしたたりドクドクと生々しく動く心臓が握られていたのである。
 白目を剥いて口から泡を吹く女性。
 やがてドサリと床に崩れ落ちる。
 無表情のまま心臓を手に、夜の闇の中へと消えてゆく女。

 交番に静けさが戻り、頭をもがれた警察官と、心臓のない女性の遺体が転がっていた。

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