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2017年6月17日 (土)

夢鏡の虚像 其の参

「実は、この鏡のことなんですが……」
 鏡を覆っているカバーを外して単刀直入に切り出す蘭子。
 すると校長の表情が見る間に変わっていく。
「そ、それをどこから持ってきた?」
 口調も怯えた様子で、いつもの張りのある声とはほど遠い。
「講堂の舞台袖です。清掃中に生徒が見つけました。呪われていると思いますので、持ち帰って除霊なり封印したいと思います」
「呪われているのが判るのか?」
「はい。間違いありません。この鏡には呪われて亡くなられた人たちの霊が閉じ込められて苦しんでいます。放っておいては、さらなる犠牲者が出るかもしれません」
「そこまで判るのか? さすが陰陽道の安部清明の末裔だな。古くは遣唐使となった阿部仲麻呂の子孫らしいな」
「いいえ、清明の先祖説にはいくつかあって、【竹取物語】にも登場する右大臣阿部御主人{あべのみうし}が直系ということになっています。やがて安部氏となり、摂津国に入った一族が摂津土御門家を名乗ることととなりました」
「まあ、どっちにしても阿部氏の一族というわけだ。ともかく、その鏡のことは君の思うとおりにしなさい」
「ありがとうございます。ご存知であれば、これまでの犠牲者の方々のことなどをお話して頂ければありがたいのですが……」
「いいだろう。知っている限りのことを話してやろう」
「お願いします」
 口調を改めて話し出す校長だった。
「まず、その鏡がどうしてここにあること自体が不明なのだ。何せ学校創立が戦前の大正十一年だからな。私の知っている最初の犠牲者と思われる事件は、創立五十周年記念として行われた文化祭において講堂での演劇部の芝居の時に起きた。当時、源氏物語を現代風にアレンジして上演していたのだが、待ち人来たらずで鏡を見てため息をつくシーンでヒロインが急に倒れたのだ。急ぎ代役を立てて上演は続行され、その生徒を救急車で病院へ運んだ。しかし、治療の甲斐なく原因不明の病気で死亡した」
「原因不明の病死ですか?」
「その通りだ。その次の犠牲者も演劇部員で、幼稚園の交流公演として白雪姫を演じていた時だった。継母役の生徒が鏡に向かって問いかける場面になったが、その時は何事もおこらなかった。終幕間際の鏡に向かう場面で、「白雪姫が一番美しい」と鏡が答える場面の直後に、突然倒れたのだ。そして「鏡がしゃべった」と言い残して亡くなった」
「鏡自身がしゃべったのですか?」
「ああ、鏡役のナレーションではなく、鏡が直接しゃべったというのだ」
「やはり鏡には、魔物かなんかが住み着いているようですね」
「私もそう思うよ。その後も鏡にまつわる事件が起こった。鏡を手放すなり処分しようかという話もあったが、不幸となる物を他人に押し付けるのは如何なものかと、校庭の片隅に埋めたのだが、とある地震の時に土地が陥没して鏡が出てきてしまった。再度埋め戻しても大雨でまたしても……。その後もいろんな所に隠したりもしたのだが、結局今日のように見つけ出されてしまう。やはり魔物が住み着いていて、この学校の生徒を死に至らしめるために、現れているとしか思えない」

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