最近のトラックバック

2021年3月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

他のアカウント

« 夢鏡の虚像 其の拾捌 | トップページ | 夢見の腕輪 其の壱 »

2017年7月 3日 (月)

夢鏡の虚像 其の拾玖

 道子の部屋。
 ベッドに寄りかかるようにしていた蘭子の意識が戻った。
「大丈夫か、蘭子?」
「はい。大丈夫です」
 答える蘭子の懐からは、御守懐剣の虎徹が覗いていた。
「そうか……。虎徹を呼び寄せたのか」
「苦しい戦いでした。呪法や式神だけではとても……」
「そうかも知れないな」
 二人ともが揃って道子の方に視線を向けた。
 夢鏡魔人は倒した。残る問題は道子の容体だけである。
「道子は?」
「大丈夫だ。かなり弱ってはいるが、護法をかけておけば、二三日ですっかり良くなるだろう」
「ありがとう。おばあちゃん」
「なあに、友達を助けようと一所懸命に勉強し、命を掛けて頑張ったんだ。そんな孫娘のためなら、いくらでも力を貸すさ。さてと……、後片付けをするとしようか」
「はい」
 手分けをして、部屋の周囲に置いた燭台や魔鏡などの道具を丁寧にしまい込み、ついでに道子(魔人)が散乱させた部屋もきれいに片付けてゆく。倒れたタンスは式神を使役して元に戻した。

 やがて、道子の両親と刑事二人の待つ居間へと降りてくる二人。
「宮司!」
 その姿を見て、両親が立ち上がる。
「大丈夫です。娘さんは助かりました。取り付いていた魔物は退治しましたから」
「本当ですか?」
「無論です。しばらく安静にしていれば、元気になりますよ」
「あ、ありがとうございます。様子を見に行ってもよろしいですか?」
「もちろんですとも」
 喜々として階段を上がって道子の部屋へと向かう母親。
 その姿を見送りながら、父親が晴代に礼を述べる。
「本当にありがとうございました」
「いやいや、礼なら孫娘に言ってやってやってください。魔物を退治したのはこの孫ですから」
「蘭子ちゃん、ありがとう。道子が聞いたらどんなにか喜ぶでしょう」
「とんでもない。当然のことをしたまでですよ」
 両手を横に振って礼を言うまでもないことを表現している蘭子。
 とにかく円満解決した喜びに溢れている一同であった。
「さてと……」
 晴代が井上課長に向き直る。
「刑事さん達は、これからどうなさるおつもりじゃ」
 夜道で道子に絡んで惨殺された事件が残っていた。
 証言を裏付けるための事情聴取が必要ということで、この家を訪問したのであるから、何もしないで帰るわけにもいかないのだが……。
「ともかく今夜は、このまま引き上げましょう」
 しばらく安静という判断なら、枕元での聴取もかなわないだろう。

 道子の家を出てくる刑事二人。
「どうしますか? 報告書」
「どうしますかと言われてもな……。男に絡まれていた、か弱い少女が、自分の力で図太い二の腕を捻じ曲げ、その首根っこから頭をもぎ取って、十数メートル先に放り投げた。と、証言通りに書くのかね?」
「上層部は信じないでしょうね」
「まあ、暗がりのことでもあるし、目撃者の見間違いということで落ちだな。犯人は通りすがりの怪力男ということにしておこう」
「それが無難ですかね……。なんか、今回も迷宮入りになりそうです」
「運がないと、あきらめようじゃないか。さて、もう一度、殺害現場に行ってみるか」
「はあ……」
 刑事達が立ち去った後に、蘭子と晴代も出てきた。
 大きな背伸びをする蘭子。
「あ~あ。気分がいいわ」
「眠くはないのか?」
「どうかな、ついさっきまでは、気が張り詰めていたから。横になって目を閉じたら、そのまま朝までバタン・キューかもね」
「丁度明日は日曜日だ。昼まで寝ていると良い。晴男には儂から言っておく」
「ありがとう。でも大丈夫よ。若いんだから」
「あてつけかね、それは」
「あはは……」
 仲良く並んで談笑しながら、夜の帳の中へと消えてゆく二人だった。

ポチッとよろしく!

« 夢鏡の虚像 其の拾捌 | トップページ | 夢見の腕輪 其の壱 »

妖奇退魔夜行」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 夢鏡の虚像 其の拾捌 | トップページ | 夢見の腕輪 其の壱 »