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2017年8月20日 (日)

銀河戦記/第一章 索敵 II

第一章 索敵
                 II

 一方、同盟の前面に対峙する敵艦隊。バーナード星系連邦軍の第七艦隊所属で、旗
艦ヨークタウンの艦橋では、F・J・フレージャー少将が指揮をとっていた。
「敵右翼への攻撃が薄いな。通信士、ナグモあて電令『右翼への攻撃を増強された
し』だ」
「はっ。直ちに」
「ナグモ達はよくやっているな」
「はい、このままいけば制空権を確保している我が軍が勝てるでしょう」
 艦隊首席参謀のスティール・メイスン中佐が報告した。
 深緑の瞳と褐色の髪が畏敬をさそう。
 深緑の瞳を持つものは連邦でも数少ない人種であり、かつて全銀河を統一したアル
デラーン一族の末裔を意味していた。
 今から四百年もの昔において、全銀河に繁栄した人類の中でも、アルデラーン一族
は数ある小数民族の一つに過ぎなかった。彼らも元々は蒼い瞳を持つ部族であったが、
ある日深緑の瞳を持つ子供が誕生した。それは突然変異であったのだが、成長したそ
の子供はまたたくまに一族を統率し、さらには周辺の国々への侵略を開始して、つい
には銀河の三分の一を治めるに至り、専制君主国家アルデラーン公国を建立したので
ある。始祖ソートガイヤー大公の誕生であった。
 その孫のソートガイヤー四世によって全銀河統一されて以来三百余年の間に、深緑
の瞳を持つ人間もその親族である皇族を中心として増えていった。すなわち深緑の瞳
を持つものは、分裂し勢力が縮小したとはいえ現在も延々と続く銀河帝国の皇族達と
どこかで血がつながっていることを意味していた。
「このままいけば、勝てるか……」
 そもそも今回の作戦を立案したのは、深緑の瞳をしたこの参謀であった。ミニッツ
がそれに賛同し、自らヤマモトを説き伏せてナグモの艦隊を借り受けたのである。
「熟達したナグモの戦闘機乗り達にかかっては、トライトンも流石に手も足もでない
というところです」
「君の作戦にも見るところがあるが、それを実現してしまうミニッツ提督の采配にも、
毎度うならされるな。ナグモなしでは机上の空論で終わってしまうところだったのだ。
しかし、我が第七艦隊と第一空母機動部隊のナグモとを連携させるとはな」
 フレージャー提督が感心するのも、道理があった。同じ連邦軍とはいえ、多種多様
な民族の寄せ集めであるミニッツらの艦隊と、単一血縁のヤマト民族を誇るヤマモト
の艦隊とでは、相容れない溝の存在があったのである。ゆえに時として反目しあい、
互いに戦功を競い合いながら、微妙なバランスの上に連邦軍は成り立っていた。
「しかし、あのヤマモト提督がよくナグモを差し向けてくれましたね。ミニッツ提督
とヤマモト提督は犬猿の仲だというのに」
「同盟への全面侵攻作戦も間近だからな。ここで、貸しを作っておいて、侵攻作戦の
総指揮官の椅子が自分に回ってくることを狙っているのだろう」
「彼が構想を抱いているといわれる『聯合艦隊』の司令長官の椅子ですか」
「そうだ」

 そのころ、フランク中佐の配下にあった士官学校出たてのアレックス・ランドール
少尉は、索敵のために出撃中で、丁度敵艦載機群の飛来した方向の宙域でその配下の
一個小隊を展開させていた。
 アレックスの乗る指揮艦「ヘルハウンド」の艦橋では、各種オペレーターが忙しく
機器を操作し、それぞれの任務をてきぱきとこなしていた。それらの中には男性の姿
は一人も見受けられない。
 アレックスは、士官学校同期卒業生の中から、ヘルハウンド艦長のスザンナ・ベン
ソン准尉を筆頭に、特に優秀な女性士官のみを選出して自分の乗艦する艦橋オペレー
ターとして配属させたのである。
 艦内には、エンジンや艤装兵器などから伝わって来る重低音が、常時うなるように
響いており、その中では女性士官の甲高い黄色い声は、明瞭にはっきりと聞き取れる
という利点も考慮されているのである。
 艦内スピーカーから、索敵機よりの報告が随時流されている。
「こちら、ガーゴイル七号機。サラマンダー応答せよ」
 それに対して、女性管制オペレーターが応対する。
「こちら、サラマンダー。ガーゴイル七号機、どうぞ」
「索敵飛行コースの終端に到着。レーダーに敵艦隊の反応なし。これより帰投する」
「サラマンダー、了解」
 一人の女性士官がすくっと立ち上がって、アレックスの前に立った。索敵編隊の指
揮官であるアレックスの乗艦「ヘルハウンド」の艦長、スザンナ・ベンソン准尉であ
る。
「索敵機第一班、予定目標ポイントの索敵完了。全機帰投コースに入りました」
「うむ。ご苦労」
 なおサラマンダーとは、指揮艦「ヘルハウンド」の暗号名である。

「索敵ポイントを変えますか」
 スザンナが次の指示を確認する。
「そうだな。艦長、第十四区域へ移動する」
「了解。第十四区域に移動します。面舵三十度、機関出力三十パーセント、微速前
進」
「索敵機第二班に出撃準備させておけ」
「はっ。かしこまりました」
 その時、オペレーターの一人が金切り声をあげた。
「隊長! 本隊が敵の奇襲を受けております!」
「なに……敵の勢力分析図は出るか」
 その声は、自分の所属する本隊が奇襲をうけているというのにもかかわらず、非常
に落ち着いていた。
 身長百八十センチ足らず、体重八十キロという平均的容姿はともかく、その深緑に
澄んだ瞳と褐色を帯びた髪は、同盟軍の中では異彩を放っていた。それは彼が孤児で
あり、銀河帝国からの流浪者の子供であろうとのもっぱらの噂であった。
「ただいま受信中です。まもなくスクリーンに出ます」
 数秒して前方パネルスクリーンに本隊と敵勢力の分布図が映しだされた。刻々と移
り変わる光点が示す本隊のデータは、宇宙空間を隔てて瞬時に伝わってくる。そこに
は敵の圧倒的優勢状態を現すデータが表示されていた。
 スクリーンを凝視するアレックス。
「戦艦、巡洋艦と艦載機の大編隊か……これだけの編隊が数隻やそこらの空母から飛
来したとは思えない。おそらく連邦の第一機動艦隊が近くに潜んでいるのだろう」
「第一機動艦隊というとナグモ中将率いるあの無敵艦隊ですか」
 小隊の副隊長を務めている同僚のゴードン・オニール少尉が発言した。
 くしくも准将と中佐と同じ会話となったことは偶然でもないだろう。それだけナグ
モ艦隊の存在とその動勢は、第十七艦隊の日常としての関心事であるからだ。
 ゴードンはアレックスとは士官学校からの親友であった。蒼瞳で金髪という平均的
な同盟軍カラーを所持していた。身長百九十センチ、体重九十二キロという体躯から
は想像できないほどのずば抜けた反射神経を持っていた。アレックスと同様に戦術用
兵士官とはいえ、戦艦を操艦できる腕前を持っていた。
「そうだ……ゴードン、君ならどこから攻撃をしかける?」
「そうですね。敵の出現点と航続距離から推測すれば、このあたりですかね」
 と操作盤を操作してパネル上に予想地点を表示してみせた。
「丁度我々の捜査範囲内ですね」
「ふむ……早速索敵機を飛ばしてみてくれ。指揮はまかせる」
「了解。索敵の指揮をとります」
 ゴードンは、艦橋を出てフライトデッキの方へ走っていった。
「少尉殿、よろしいでしょうか」
 艦長のスザンナ・ベンソン准尉が質問した。
「うむ」
「このまま索敵を続けていてよろしいのでしょうか?」
「どういうことかな」
「本隊は攻撃を受けているのですよ。一刻もはやく帰還して援護にまわるべきではな
いでしょうか」
「帰還命令は出ておるか?」
「いえ、出ておりません」
「ならばこのまま索敵を続行するまでだ」
「ですがたとえ敵を発見したところで、本隊が全滅していたら」
「だからといって、今更戻ったところでどうなるというのだ。たかが十数隻の小隊が
戻ったところで、体勢に影響はあるまい」
「それはそうですが……」
「いいかい。我々がなさねばならないことは、敵の情報をより正確に収集し把握して、
味方に伝えることなのだ。仮に本隊が全滅しても、索敵で得た情報と本隊の戦闘記録
を持って無事帰還することなのだよ。それによって、後に続くものの糧となりうる。
わかるかい、スザンナ」
「わかりました」
 スザンナ・ベンソン准尉。この女性艦長は、士官学校スベリニアン校舎時代の同窓
生である。アレックスとゴードンが特待進級卒業の栄冠を得たために、通常卒業の彼
女とは一階級の差が出来ていた。

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