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2017年8月18日 (金)

銀河戦記/第一章 索敵 I

第一章 索敵

                    I 「ミサイルです! 三時の方向」  突然、オペレーターの声が艦内にするどく響いた。  指揮官席そばに臨時に据えられたテーブルの上のサンドウィッチを頬張っていたト リスタニア共和国同盟軍フランク・ガードナー中佐は、突然の奇襲攻撃を受けたのに 動揺しつつも、全艦に迎撃体勢を取らせるべく命令を下した。 「全艦、戦闘体勢」  宙を舞いながら指揮官席に飛び移るフランク。その途端、艦が激しく揺れて、危う く席から外れてしまいそうになるが、背もたれにしがみついて難を逃れた。  パネルスクリーンには、漆黒の宇宙に浮かぶ艦隊が次々とミサイルの攻撃を受けて 炎上していく様が映し出されていた。 「三時の方向、上下角マイナス五度の方角に敵艦隊を確認」 「距離、三・二光秒」 「六時の方向より、敵戦闘機急速接近中」  次々と報告がなされて、艦橋の空気は緊張の度合を深めていく。 「艦首を敵艦隊に向けろ。往来撃戦準備だ。最大戦速で敵艦に向かえ」  指令を受けてオペレーターが復唱伝達する。 「面舵、九十度転換」 「全艦、往来撃戦用意」 「最大戦速」 「こちらも艦載機を発進させては?」  副官のピーター・コードウェル中尉が進言した。中肉中背でどこをとって特徴を述 べることも難しいほど平均的な士官というところ。 「無理だ。制空権を先手に取られた。艦載機を発進させるために着艦口を開けば、そ こを狙い撃ちされて、内部誘爆を招くだけだ。今は防御に徹するしかない。しかし発 進準備だけはしておいて、いつでも出られるようにしておけ。高射砲で戦闘機を打ち 落としつつ、敵が一時退却して体制を立て直す間隙をついて出撃させる」  ややあってドアが開き、顎鬚を貯えた恰幅の良い軍人が、のそりと入ってきた。 「先に見つけられてしまったか」  それは、共和国同盟軍第十七艦隊司令官、トライトン准将であった。  その冷静な態度は、幾度かの戦闘を乗り越えて来たものだけが持つ、重厚な落ち着 きを持っており、彼が現れたことによる将兵達の表情の変化は、誰にも観察がたやす かった。それほど、部下の間では信頼に厚かったといえよう。  これほどし烈極まるといわれる最前線の戦場は他にないという宙域の防衛の任にあ たっている。毎日が戦闘の連続であり、後方に戻らない限り休息する暇もないという 激戦につぐ激戦で、艦船の消耗は全艦隊中最大である。ゆえに戦死する士官達も続出 する一方でその分昇進のスピードも破格であった。今日の戦闘を生き延びれば、明日 には一階級昇進していた。フランク・ガードナー中佐も、他の艦隊に所属していれば、 同盟における平均的地位にすれば大尉くらいがせいぜいであっただろう。トライトン でさえ、准将中最年少であることも明白な事実である。とはいえ、激戦区を生き延び 准将に昇り詰めるのは、よほどの運とたぐいまれなる才能との両方がなければあり得 ないことなのである。 「申し訳ありません。索敵の網からこぼれたようです」  フランクは指揮官席を准将に譲りながら釈明した。 「しようがないだろう。三次元宇宙をくまなく探すのは不可能だからな。敵艦隊の勢 力分析図を出してくれ」  トライトンは引き締まったその身体を指揮官席に沈め、スクリーンに目をやった。  ほどなくスクリーンに敵艦隊の分析図が表示された。索敵レーダーの捕らえた艦影 から、コンピューターが即座にその艦型と戦力を計算表示してくれる。 「敵艦隊は戦艦、巡洋艦を主力とする約七千隻」 「空母はいないのか?」 「分析図から見る限りでは、見当たりませんが。後方に必ずいるのではないかと推測 します。敵は第七艦隊のようですから、たぶんヨークタウンやエンタープライズが控 えているでしょう」 「それにしたって、フレージャーとてこれだけの大編隊の艦載機は、持ち合わせてい ないはずだ。となると前面の艦隊だけから発進したとは考えられない。艦載機はどっ ちから飛来したか」 「六時の方角からです」 「だとすると、そちらの方に別動の空母艦隊が待機しているということか……」  トライトンの目は、スクリーンの艦隊六時の方角にあたる部位をしげしげと見つめ ている。まるでそこに空母艦隊の存在を確かめているかのように。 「まさか、ナグモ空母機動艦隊ですか」 「そうだ。そっちの方も気にかかるが、今は目前の敵艦隊に対処することが先決だ。 全艦最大戦速で向かえ」 「はっ。全艦最大戦速。進路そのまま」

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