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2017年8月 6日 (日)

思いはるかな甲子園/ソフトボール部の勧誘

 思いはるかな甲子園

■ ソフトボール部の勧誘 ■  絵利香達と昼食をとっている梓。  教室に三年生らしき女子が入ってきてきょろきょろしている。  手近にいた一年生に何やら聞いている。  その一年生、梓の方を指さしている。  梓の顔を見つけると歩み寄ってくる。 「ちょっと、あなたが梓ちゃんね」 「え? そうですけど」 「あなた、野球部でピッチャーやっているそうね」 「まあ、そうですけど」 「ねえ、うちのソフトボール部に入部しない?」 「ソフトボール?」 「そうよ。山中君から聞いたんだけど、高校野球でも十分通用するんだって? だか らぜひともソフトボール部に入ってほしいのよ。もちろんレギュラーでピッチャーや ってもらうわ。どう?」 「ソフトボールねえ……やめとくよ」 「どうしてよ」 「だって、あんな子供の遊びなんかやる気ないもん」 「子供の遊びですって!」 「その通りだよ」 「言ったわねえ。だったら私達と勝負しなさい」 「勝負?」 「そうよ。勝負して私達が負けたらあきらめるわ」 「いいよ。勝負しても」 「ありがとう。じゃあ早速、放課後にグラウンドにきてね」  絵利香が質問した。 「ねえねえ、どうして勝負するなんていったの」 「だってそうでもしないと、いつまでもしつこく言いよってくるよ、きっと」 「だからって、もし負けたら……」 「負けないよ、ボク」  放課後。  ピッチャーズマウンドで、腕をぐるぐる廻して肩慣らしをしている梓。制服からジ ャージに着替えて勝負に挑んでいる。  近くのベンチに腰掛けて観戦している絵利香。 「さあ、いつでもいいわ。投げて」  バッターボックスに立って、催促する高木。 「いきますよ」 「いらっしゃい」 (野球のアンダースローしか投げた事ないはず。ソフトボール独特の投げ方はどうか しら?)  腕をぐるぐる廻し投げするソフトボール独特のアンダースローから放たれたボール は、あっという間に捕手のミットに収まった。 「は、はやい!」 「驚いてるわね。ソフトボール式の投げ方も練習していたんだよ」 「ス、ストライク!」  審判役の部員も目を丸くしている。 「まさか、こんな球が投げられるなんて……」  そして、二球目。  高木の打球はピッチャーゴロとなって梓のグラブへ、それを一塁に投げてアウト!  絵利香が微笑んで軽く拍手している。 「そ、それじゃあ、攻守を交代しましょう」 「わかりました」  マウンドを降り、絵利香にグラブを預けて打席にはいる梓。  代わってマウンドに上がる高木。地面をならしながら投球体勢に入る。 「わたしの球が打てるかしら、三年生でもたやすく打たせたことないのよ」  一球目ストライク。  にやりとほくそ笑む梓。一球目を見送ったのは球速とコースを読んだからである。  次ぎなる球を、こともなげに真芯で捉えて、軽々と外野へ飛ばした。あわやホーム ランというセンターを越えるヒットであった。  球速が速いといっても、硬式野球の速さに比べれば段違いである。マウンドとベー スの間の距離は短いし、大きな球が飛んでくるので、速いと錯覚してしまうだけであ る。  球が大きいのでジャストヒットポイントが狭いし、使用するバットも細いので、慣 れないとぼてぼてのゴロにしかならないが、じっくり見据えて、真芯を捉えてジャス トミートすれば必ず飛ぶ。  エースピッチャーが打たれたのを見て呆然としている部員達。  打球が飛んだ方向を見つめている高木。 「さすがだわ、豪語するだけのことはある。わたしの負けだわ」 「はい。お返しします」  とバットを捕手に預けて、 「じゃあ、帰りましょう」  と絵利香を誘い、すたすたと立ち去っていく梓。 「山中君いる?」  野球部の主将である山中のところにソフトボール部主将の高木愛子がやってきた。 「何だ、愛子か」  実は二人は幼馴染みであった。 「あんたのところの梓ちゃんのことだけどさあ」 「梓ちゃん?」 「そう」 「だめだ、貸さない」 「何も言ってないじゃない」 「言わなくてもわかるさ。県大会があるから、大会の間だけでもメンバーに入れたい から貸してくれ、っていうんだろ」 「さすが、山中くんね」 「18年もつき合ってりゃ、おまえの考えていることなど、お見通しさ。おまえ、梓 ちゃんと勝負して負けたそうじゃないか」 「わ、悪かったわね」 「とにかくだめだ」 「そう……お願いきいてくれたら、あたしのすべてを、あ・げ・る」 「うん。やめとくよ」 「そっかあ、他にはアイドル歌手〇〇〇のサイン入り色紙あげようかと、思ったのに なあ」  と、手にした色紙を見せびらかす高木。 「なに! 〇〇〇のサイン入り色紙」 「あんたの好きな歌手……だったわよね」 「し、しかし。これは梓ちゃんの意向にかかわることだし……」  色紙をちらちらとかざされて、つばを飲み込む山中主将だった。 「ええ? なんでボクがソフトボールの助っ人に入らなきゃならないのですか」 「だいたい。野球にしろソフトにしろ、チームプレーが大切なんですよ。ただうまい というだけで、ぽっと入った新人がすぐにチームに馴染むわけないです」 「しかしだね。あれだけの技量を持っているんだ……」 「キャプテン! ボクはソフトには全然興味がないんです。やめてください」  うだうだと言うので、ついには口調を荒げる梓。 「わ、わかった。ソフトボールの連中には、そう言っておくよ」  梓の断固たる態度を見せ付けられては、さすがに撤退するよりなかった。 「……というわけだよ。すまん」  高木愛子に報告する山中主将。 「まあ、仕方がないわね……。あの子の態度をみてると、断られるだろうとは思って いたわ。でも、まだ一年生だからいくらでも誘い出す機会はあると思うから」 「それで、例のものだけど……」 「ああ、サイン入り色紙ね」 「そ、そう……」 「いいわ。あげるわよ。一応、あの子に口利きしてくれたわけだし、わたし冷たい女 じゃないから」 「す、すまないね」

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