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2017年9月 1日 (金)

銀河戦記/第二章 士官学校 III

 第二章 士官学校

                  III  パトリシアが学生自治会室に戻ると、窓際に腰を降ろして空を仰ぎ見ている人物が いた。  その瞳は、エメラルドのように澄んだ深い緑色をしており、褐色の髪がそよ風にな びいていた。一目見て、パトリシアは彼が、アレックス・ランドールであることにす ぐに気がついた。 「やあ。君が、パトリシアかい?」  とパトリシアの入室に気がついて振り向いた彼が尋ねた。 「そうですけど。ランドールさんですね」 「その通り……といっても、僕がランドールであることは、一目瞭然だろうけど。と もかく僕の副官に選ばれたという人物を拝見したくてね」  パトリシアは、スベリニアン校舎に来て三年になるが、この緑色の瞳をした人物と 面と向かって対話したのは、はじめてであった。これまでに戦術シュミレーションや、 通路ですれ違い様にこの緑色の瞳の人物と出会いはしたが、遠めに眺めることはあっ ても対面して会話したことはなかった。彼の噂に関しては、彼の同僚でパトリシアの 先輩であるジェシカ・フランドルから聞いて、ある程度は知らされていたが。 「しかし、副官が君のような美人だなんて光栄だな。アレックスと呼んでくれ」  彼は右手を差し伸べてきた。 「あら、おせじがお上手ね。パトリシアです」  パトリシアはその手を握りかえして微笑んだ。  数日後、パトリシアは街に出てウィンドウショッピングを楽しんでいた。玉虫色に 輝く神秘的なブルーのシフォンシャンブレークレープ素材ワンピースドレス。プリー ツスカートの細かなひだが風にそよいで揺れている。クリーム色の靴を履き、黒皮に ゴールドチェーンのハンドバックを小脇に抱えて、ウィンドウの中の商品を品定めし ていた。  肩を叩いて声を掛けるものがいた。振り返ると微笑みながら背後に立っているアレ ックスがいた。 「あら、アレックス」 「君一人?」 「ええ」 「恋人はいないの? せっかくの休日なんだろ?」 「いませんわ。誘ってくれる人がいなくて」 「君のような美しい人に、恋人がまだなんて、信じられないな。もしかしたら、とっ くに決まった人がいると思って、誰も声を掛けないのかもしれないね」 「そうでしょうか」 「そうだよ。きっと。よし、今日は、僕と付き合ってくれないか」  といってパトリシアの手を引いて歩きだすアレックスであった。  数時間後、レストランで食事をとる二人がいた。  テーブルに対座して、談笑している。 「君っておしゃれなんだね」 「そ、そうですか」 「しかし、本当に恋人はいないの?」 「いません」 「そうか……じゃあ、恋人に立候補してもいいかな」  といってアレックスはパトリシアをじっと見つめなおした。 「そんな……」  パトリシアは赤くなって恥じらんだ。  彼女は成績こそ優秀で常に首席を維持しているが、男性との交際では何も知らない 初な女性であった。  数日後、パトリシアは、アレックスから第一作戦資料室に呼び出された。  正式に模擬戦の作戦会議がはじめられたのである。  当日の参加者はパトリシアの他は、ゴードン・オニール、ジェシカ・フランドル、 スザンナ・ベンソンといった、アレックスが親友と認め、その才能を高く評価して信 頼している人物達である。 「事務局から、今回の模擬戦の作戦宙域が発表になった」  アレックスがパトリシアに機器を操作させて、正面のスクリーンに作戦宙域を映し だした。 「ここが、今回我々が作戦を行う、サバンドール星系、クアジャリン宙域だ」  全員からため息のような声が発せられた。 「付近一帯の詳細な資料を、パトリシアに調べてもらった。先程配布したファイルが それだ。ご苦労だったね、パトリシア」 「どういたしまして」 「なんだ、やっぱりパトリシアに手助けしてもらったんだ」 「僕は、資料作りといった、細やかな作業は苦手でね」 「でしょうねえ」 「とにかく、資料を充分検討して今後の作戦立案に役立ててほしい」 「わかった」 「それでは、本題にはいるとするか」  五人は、それぞれの役割分担からはじめて、今後の作戦遂行に必要な各種参謀役の 人選、おおまかなる作戦要綱をまとめていった。  アレックス・ランドール=作戦指揮官  ゴードン・オニール  =作戦副指揮官  ジェシカ・フランドル =航空参謀  スザンナ・ベンソン  =旗艦艦長  パトリシア・ウィンザー=作戦参謀  これらの役割が、第一回目の作戦会議で決定された。  中でも、三回生であるパトリシアが作戦参謀という重要な幕僚に着任することにな ったのは、彼女の先輩であるジェシカの強い推薦があったからである。  数時間後。 「よし、今日のところはこんなところでいいだろう」  アレックスの発言で、作戦会議は終了した。  席を立った五人は、資料を片手に作戦会議室を退室し、次の予定の目的地へと四散 していく。 「あ、ちょっとパトリシア」  ジェシカと一緒に帰ろうとしていた彼女を、アレックスが呼び止めた。 「はい。何でしょうか」 「ついでといっちゃ、なんだが、パトリシア。ジャストール校のミリオンについて詳 細な資料を集めてくれないか」 「ミリオンといいますと、ミリオン・アーティスですか?」 「そうだ。知っているのか?」 「ええ、まあ。ジャストール校では、百年に一人出るか出ないといわれる神童とまで 称される逸材で、戦術シュミレーションでは常に圧倒的成績で勝利を続けているそう ですから」 「って、それくらいなら誰でも知っているわよ。アレックス。わざわざ、知っている かと確認することはないわよ」 「そうかなあ……僕は、ジャストール校のことを調べなきゃならないってんで、つい 昨日その名前を知ったばかりなんだ」 「呆れた! そんなことで、よくもまあ指揮官に選ばれたものね。先行き不安だわ」 」 「しかし、ミリオンを調べて実際の戦闘に役に立つのですか?」 「敵の指揮官の素性を知る事は作戦の第一歩じゃないか」 「指揮官? ジャストール校側の指揮官はまだ発表されていないじゃない。第一、ミ リオンは三回生よ。指揮官には、速すぎるのではないかしら?」 「そうとも限らないよ。例えば、うちだって副官にパトリシアが選ばれているくらい だから。あのミリオンなら充分有り得るさ」 「まあ、あなたが、そうまで言うのなら。パトリシア、調べてあげなさい」 「はい。わかりました」  パトリシアにとって、ジェシカは一年先輩であり、士官寮では昨年までの二年間同 室となっていた。戦術理論などの実践について、手取り足取り教えてもらった経緯も あって、ジェシカに対しては従順であった。 「その中でも特に、性格的な特徴が知りたい」 「性格ですか」 「短気だとか、好みの色とかなんでもいい」 「わかりました。でもそんなことが役に立つのですか?」 「もちろんさ。それから……ジェシカには、このメモにあるものを手配しておいてく れないかな」  とアレックスが、ジェシカに手渡したメモには次のようなものが記されていた。  迫撃砲、催涙弾、煙幕弾、麻酔銃…… 「何よこれ……」 「もちろん白兵戦用の道具さ」 「白兵戦?」  二人は驚いた。模擬戦は艦隊戦なのである。  それなのに……。 「何も聞かずに集めてくれないかな」 「かまわないけど、時間がかかるわよ。士官学校では、手に入れにくいものばかりだ から」 「わかっている。だから、早めに依頼しておくのさ」

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