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2017年9月16日 (土)

梓の非日常/序章 その男、沢渡

梓の非日常/序章 新入部員は女の子

(四)その男、沢渡  昼休みになった。  午前最後の鐘が鳴り響いて、教室から一斉に生徒達が出て来る。弁当を持って来て いない者が食堂へ向かって移動しているようだ。  教科書を鞄に収めている梓。かわりに可愛い弁当箱を取り出している。 「あ、あの……お昼ご一緒しませんか」  意を決した一人の女子生徒が、弁当を手にしながらもじもじとしながら話し掛けて きた。 「わたし、相沢愛子です」 「ああ、あたし、真条寺梓」 「わたしは、篠崎絵利香よ」 「こいつは、幼馴染みなんだよ」 「梓ちゃん。人を指差してこいつなんて、そんな言葉を女の子は使っちゃだめよ」 「はは、絵利香ちゃんは、あたしの教育係りなんだ」 「お二人は、仲がいいんですね」 「うん。三歳からずっと一緒だったから」  机を移動して食卓のようにする。  二人の間に別の女子生徒が入り込み、親しげな会話がはじまったことで、他の女子 生徒達を行動に移させるきっかけを与えることとなった。 「あの、わたしもお仲間にいれていただけませんか」 「お友達になりましょうよ」  親しげに口々に話し掛けてくる女子生徒達。あっという間に二人を囲んだ語らいの 輪ができあがった。  男子生徒の中にも梓たちと話しかけたそうにしている者もいたが、そこは男と女の 垣根があるらしく、女子生徒達の輪の中にまで入ってくる勇気はなかった。  ドアの外が騒がしくなった。 「沢渡だ、沢渡が来やがった」 「なんで今頃」  廊下を肩をいからせて大股で歩く大柄の男、沢渡慎二。 「おら、どけよ。こらあ!」  言うが早いか、ドア付近にいて談笑していた男子生徒が、教室内に吹き飛ばれてい た。話しに夢中で、沢渡と呼ばれた男に気づかなかったのだ。沢渡のことを知る人物 なら、その名を聞いただけで震え上がり道を譲るものだが、彼は知らなかったようだ。 「ドアの前に突っ立ってんじゃねえ」  背の高い慎二は、屈むようにしてドアをくぐらねばならない。  慎二が教室内に入っていくと、それまで談笑していた生徒達は一斉に口籠り、彼が 目指す机までの道を開けた。それは梓の隣の席であり、食事を終えて話し合っていた 女子生徒は、あわててそばを離れた。  視線が合った梓と慎二は、ほとんど同時に昨日の乱闘騒ぎを思い出した。梓が投げ 飛ばしたあの男だったのだ。 「お、おまえは!」  先に口を開いたのは、慎二のほうだった。  絵利香が耳打ちする。 「あ、この人。昨日の……」 「ついてるぜ、こんなところでまた会えるとはな」  黙って弁当箱を鞄に戻す梓。 「表にでろよ。こら」  無表情ですっくと立ち上がる梓。 「ちょっと、梓ちゃん」  廊下を並んで歩いていく梓と慎二。その後を絵利香が追いかける。  二人は裏庭に出てきた。上着を脱いで木の枝に掛ける慎二。 「この辺でいいだろう」 「そうだね」  といいながら梓は、周囲をじっくりと見渡していた。これから一戦交えるのに、地 形効果を確認しておかなければならないからだ。大きな岩、生い茂った木々、膝のあ たりまで水が張られた池、校舎の壁、そういった裏庭に存在するすべてのものが、戦 闘に際し有利な条件となりうるかを判断していく。 「この俺が女に負けたままでは、寝覚めが悪くてよ」 「あら、そう」 「この俺を一瞬で投げ飛ばしたんだ。格闘技では相当な腕前と見た」 「まあね……それなりに稽古はしてるけど」  ふと空を仰ぐと、大きな桜の木の見事な枝振りが、空一面を覆い尽くすようにおい かぶさり、はらはらと花びらが風に舞っている。  ……きれいな景色ね。とてもこれから乱闘って雰囲気じゃないんだけどなあ…… 「女だからって、俺は手加減はしねえぜ。と思ったが、美人がだいなしになるからな、 顔への攻撃は避けてやるよ」  情緒を理解できない慎二の頭の中は、梓と戦うことしかないみたいである。 「そりゃ、どうも」  その時、周囲に異常を感じる梓。  ……囲まれている! 五・六・十二人くらいはいるな……  見渡すと、木や草むらの影や、建物の裏に、男達の気配。 「いつでもいいぜ。どっからでもかかってきな」 「ふん! この直情馬鹿が、周囲の状況も把握できないのか」 「なんだとお!」  言われて改めて周囲を見渡す慎二。  隠れているのを悟られたと知って、ぞろぞろと男達が現れる。 「へへ。面白そうだからしばらく見学してようと思ったんだがな」 「てめえらは、昨日の」 「昨日のお礼はたっぷりさせてもらうぜ」 「はん。昨日より数が多いじゃないか。ま、返り討ちにしてやるぜ」 「ふざけんじゃねえ」  拳を振り出した男の言葉を合図として、乱闘がはじまる。  多勢に無勢とはいっても、並みの力ではない慎二にとっては、朝飯前といった表情 をしていた。たとえ相手の一撃を食らってもまるでびくともせず、倍返しの一撃を与 えていた。 「余裕だなあ、あいつ……ああ、しかし。あたしもあれくらいの腕力があれば、いい なあ。うらやましい」  相手を一撃で動けなくしてしまうような強力なパンチ、どんな攻撃を受けてもひる まない頑丈なボディー。そんな慎二に対して、一種憧れのような感情を抱く梓だった。 どんなに頑張っても、女の梓にはかなわない夢だったのだ。 「つかまーえた」  突然男の一人が、梓を背後から羽交い締めにした。 「おめえ、あいつの何なんだ。女か」 「はなせよ」  梓は冷静に受け答える。 「はは、この状態でなにができる。女の力じゃ無理さ」 「そうかな……」  梓は、足を振り上げ思いっきり男の足の爪先を、踵の先端で踏みつけた。男の顔が 苦痛に歪み一瞬腕の力がゆるんだところを、両腕を突っ張り身体を沈みこませて、羽 交い締めから脱出。すかさず肘鉄をみぞおちに食らわす。男はたまらず地面に臥した。 「女と思って馬鹿にするな」 「こ、こいつ」  梓を構っていた男が倒れたことで、攻撃の矛先が梓の方にも向けられることになっ た。 「かまわん。女もやっちまえ」  一斉に男どもが梓に飛び掛かってきた。 「あーあ。いわんこっちゃない」  後をつけてきていた絵利香は安全な場所から、梓のことを心配していたのだった。  しかしフリーになった梓の前では、赤子同然だった。柔道、合気道、そして空手と、 多種多様の戦術を組み合わせた日本拳法。  離れて戦えば回し蹴りなどの蹴り技が飛んで来るし、中距離では裏拳・縦拳・そし て極め技。懐に飛び込めれば得意の一本背負いが決まり、相手はもんどりうって宙を 舞う。  喧嘩馬鹿を相手にするくらい、梓は朝飯前といったところか。  大きな岩を足場として飛び上がり、前面の相手に跳び膝蹴りを食らわす梓。 「あっ。膝蹴りが顔面に入っちゃた。痛そう……あ、梓ちゃん。膝を切っちゃみたい だわ。大丈夫かしら」  心配でしようがない絵利香だったが、自分ではどうしようもなかった。ただ梓が無 事であるようにと祈るだけだった。  もう一方の慎二のほうも確実に相手を倒していた。その視界の中に、梓の戦いぶり が目に飛び込んで来る。 「あいつ……女のくせに、男と互角以上に戦ってやがる。相手の攻撃を紙一重でかわ し、隙ができたところを急所に一撃だ。必要最低限の動きで最大の効果を発揮させて いる」  梓に目を奪われている慎二の顔面にパンチが飛んできた。 「よそ見してんじゃねえよ。こらあ」  思わずのけぞる慎二。 「ふ、確かにな」  すかさず殴りかかってきた相手をぶっとばした。

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