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2017年9月13日 (水)

銀河戦記/第三章 模擬戦闘 III

第三章 模擬戦闘

                   III
「では、解散する」
 一同は、立ち上がり一人ずつ退室していく。
「なあ、アレックス」
 ゴードンが話しかけてきた。
「なんだい」
「敵に気付かれたら全滅だ、とか言っていたが。おまえのことだ、いかなる状況にお
かれても、勝つための算段くらいは考えているんだろう」
「まあな」
「それを聞いて安心した」
「背水の陣であることを全員に意識づけておけば、より真剣に作戦に集中できる。っ
てことですね」
 パトリシアが資料をまとめながら、間に入ってきた。
「で、君は聞いてるのかな」
「いいえ。わたしも、尋ねたことがありますが、臨機応変だよ、とかいって……」
「ま、いいか。その場その場でどうなるか、わからないことを、議論してみたところ
でせんないこと」
「そうですわね」
 アレックスの顔を覗きこむように見つめ会う二人。
「それじゃ、俺はこれから、出発の準備をしなきゃならんので、先に失礼する」
「そうか。くれぐれも、万端整えて出発してくれ」
「ああ……。先に行って待ってるぜ」
 くるりと背を向けて、二人の側を離れるゴードン。
「しかし、有能な奥さんのいる奴は、楽でいいねえ。必要な準備は全部黙っててもや
ってくれるんだから」
 廊下を歩きながら、聞こえよがしに呟くゴードンであった。
 クスッと、微笑みながら、
「それじゃ、行きましょうか。あ・な・た」
 パトリシアは、ゴードンの言葉を受けるように、アレックスを促した。
「……」
 返す言葉を失って、呆然とするアレックスは、パトリシアに背を押されるようにし
て、やっと歩きだすのであった。

 その翌日。
 サバンドールへ先着するゴードン達を乗せた輸送船が宇宙港より出発した。
 次々と輸送船が発着する宇宙港の片隅。見送りのデッキにたたずむパトリシアとジ
ェシカ。
「私達が乗る艦艇の手配は?」
「はい。すべて完了しました。すでに第十二番基地に停泊して、乗組員の搭乗を待つ
だけになってます」
「さすがね。で、アレックスは、今何してるの? 見送りにも来ないなんて」
「一人籠って最後の作戦確認をなされていると思われます」
 ゴードンを見送った足で、アレックスの元を訪れたパトリシアが報告する。
「ゴードン以下の第一陣が基地へ出発しました。明後日早朝には到着して、午後二時
より第一回目の戦闘訓練に入る予定です」
「すべて、順調に進んでいるようだな。君のおかげだ、感謝する」
「感謝だなんて、副官として当然のことをしたまでです」
 アレックスが出した作戦案に基づいて、綿密な行動・タイムスケジュールを作成
したのがパトリシアであった。

 翌日、アレックスとパトリシアは、サバンドール星域へ向かう輸送船団の中にいた。
「サバンドールまで三時間です」
「そうか……いよいよだな」
「それにしても、アレックスと一緒に参加できてよかったわ」
「ああ……。例の検査のことか」
「そうよ。妊娠検査」
 パトリシアは、無重力の宇宙に出る前に、念のために妊娠していないかとかいった、
健康診断を受けてきたのである。もし妊娠していた場合、無重力の環境や戦闘への緊
張によって、胎児に障害を与える危険があるからだ。ゆえに既婚女性は、必ず検査を
うけなければ艦船に乗艦できない決まりになっている。
 検査の精度は、授精後一週間というきわめて短い期間でも、ほぼ百パーセントの確
率で判定できるようになっている。

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