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2017年9月28日 (木)

梓の非日常/第一章 今後のこと

梓の非日常/第一章 生まれ変わり

(五)今後のこと  数日後。  病院の屋上の手すりにもたれかけぼんやりとしているネグリジェ姿の梓。長い髪が そよ風になびいている。 『頭が痛いな……身体がふらふらする』  精神と身体が、完全に同調していないといった感じであった。  梓はずっと思い悩んでいた。それは、この梓になる以前の男だった自分自身のこと だった。母親も麗香も、梓に心配させないように配慮しているのか、その件に関して は口をつぐんだままだった。  生きているのか、死んでいるのか。  もし生きているのなら、その精神は一体どうなっているのか。心と身体が入れ代わ ったという設定の映画や漫画がいくつか存在する。だとしたら、本来の梓の精神が男 の身体の方に乗り移っているということもある。もしかしたら元の身体にそれぞれ戻 れる可能性があるということじゃないか。  反対に死んでしまっていたとしたら、永遠にこの梓の身体で生きていかなければな らないことを意味する。あの二人が口をつぐんでいる状況を考えれば、こちらの可能 性が高いのは確かだろう。交通事故当時、俺は死を覚悟していたような気がするし。 だとしたら……。  梓は深いため息をついて、しばし思考を中断させた。ふと天を仰げば、透き通るよ うな青い空に白い雲が流れていく。 『本当は他人なのに……こんなに尽くしてくれるなんて……このままでいいのだろう か……しかし一生、この梓という女の子の身体で、生きていくしかないとしたら……。 十二歳の少女が一人で生きていけるわけがないし、この先もあの人達に養ってもらう しかない。心は入れ替わっても身体は梓そのものなんだし、だからこそ母親も麗香さ んもいろいろと心配して尽くしてくれている。気が重いなあ、どうすりゃいいんだろ う……』  だいたいからして、意識しなくても口から出てくるこの英語の言葉も、この日本に おいては大問題である。病院内ですれ違う度に聞こえてくる、患者や訪問者達が語り 合っている日本語らしき言葉がまるで理解できない。英語の通じる日本人など皆無に 等しく、英語で道を聞かれた時あわてて逃げてしまう、外国語に拒絶反応を示すのも 日本人である。せいぜい、「This is a pen.」か「I am a boy.」くらいならともか くも。  階下に続く階段から麗香が小走りにやってくる。 『こちらにいらっしゃったんですか。探しましたよ』  といいながら自分の着ていたカーデガンを脱いで、梓に掛けてくれている。 『風邪をひきますよ。病室に戻りましょう』 『ねえ。あれは、何?』  梓が隣の建物を指差して質問した。 『見たところ。同じ敷地にあるけど、病院じゃないみたい』 『あれは、生命科学研究所ですよ。この病院もそこの付属施設なんです。お嬢さまが 仮死状態の時には、あちら側のICU・集中治療室で蘇生治療が行われていたんです。 意識が戻られてからは、こちら側に移動しましたけど』 『ふうん……』 『遺伝子研究、ES細胞の研究、クローン技術、大脳生理学の研究、そして不治の治 療を未来に託すための冷凍睡眠技術の確立など、生命科学に関するありとあらゆる研 究がなされています』 『そうなんだ』 『あ、そうそう。明日、あの研究所にあるPEDで、お嬢さまの頭部の診断をするそ うです』 『PED?』 『正式には陽電子放射断層撮影装置っていうんですけど、大脳の生理活動状態をリア ルタイムで見ることができる装置なんです。つまり大脳のどこが活動してて、どこが 休止もしくは壊死しているとかが、リアリティーにわかるそうです』 『ん……記憶障害の原因がどこにあるかが判るということか』 『そうですね。これがたぶん最後になるだろうということですが、診断次第で退院で きるかどうか判断するそうです』 『最後ってことは、意識を失っている間に何度かPEDに入ったということだね』 『はい、そうです。さあ、これくらいにして、病室に戻りましょうか』  麗香にそっと肩を押されて、階段に向かう梓だが、なおも名残惜しそうに振り返る。 『生命科学研究所か……』

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