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2017年10月

2017年10月31日 (火)

銀河戦記/第六章 カラカス基地攻略戦 V

第六章 カラカス基地攻略戦

                  V 「司令。目標の惑星が見えてきました」  ジュリーの報告通り、目標の惑星が目の前にあった。  軌道上に整列した十二基の軌道衛星砲と、威圧感を与える粒子ビーム砲の射出口が 開いている。  戦艦搭載用の粒子ビーム砲とは桁違いの大出力を誇り、一基だけで二百隻の戦艦に 相当する火力といわれている。戦艦搭載のものは、高速移動の必要性と、塔乗員の生 命を守る安全性を考慮されて、軽量かつコンパクトに設計されその性能の限界七割程 度に押さえられている。その点、無人で移動の必要のない軌道衛星砲には、最大級で 最大性能を与えられて、性能限界ぎりぎりの大出力を引き出すことができる。 「どうやらまだ気付かれていないようだな」 「うまくいきそうですね」 「しかし、これからが正念場だ。今ならまだ引き返すことができるが、君ならどうす る」 「ここまで来たんです。やるしかないでしょう」 「そうだな」  アレックスは無線機を取った。 「全機へ。これより突撃を敢行する。夜の側から大気圏に突入せよ」 「ジミー、了解」 「ハリソン、了解」 「大気圏突入後五分間は交信が不可能になる。その間各自の判断で作戦を遂行せよ。 以上だ」  マイクを置くと同時にジュリーが、大気圏への突入体制に入る。 「司令、大気圏突入モードに入ります。熱シールド全開、後部放熱ファン展開。機内 冷却装置作動」  ブラック・パイソンの機器を次々と操作して大気圏突入の準備をするジュリー・ア ンダーソン。 「突入準備完了」 「よし、突入だ」 「突入します」  大気圏突入と同時に機体が激しく震動をはじめ、摩擦熱による温度上昇から、機内 は赤く揺らめいていた。  サラマンダー艦橋で、アレックス達を心配して食い入るようにパネルを見つめるパ トリシアがいた。 「アレックス達が突入を開始する時間だわ」  サラマンダーに移乗していたレイチェルが、パトリシアの肩をそっと叩いた。 「大丈夫よ。アレックスならきっとうまくやるわ。それとも自分達の立案した作戦に 自信がなくなった?」 「そんなことはありませんけど……」 「作戦が完璧にできあがったとしても、それに身内が参加するとわかった途端に、急 に心配になってくる。どこかに致命的なミスがあったらどうしよう、それがために命 を落とすようなことになったらと、心配でしようがない。そういうことよね」 「え、ええ……」  レイチェルがわざわざサラマンダーにやってきたのは、夫を敵地に送り出し心細く なっているはずのパトリシアをはげますためであった。 「わたしはね、思うのよ。なぜこの作戦に司令官たるアレックスが自ら参加したのか ってね」 「アレックスとて、この作戦が完璧だなんって思ってやしないはずよ。所詮人間が作 りあげたものだもの。どこかに見落としや勘違いがあって当然よね。作戦を実行する にあたっては、その時々の状況というものは常に変化するということを念頭に入れつ つ、微妙な修正を加えねばならないことも起こる。だからアレックスが同行したのだ とも言えるけど……でも、アレックスの真意は別のところにあるわ」 「真意?」 「もし現場の判断が必要ということならば、ゴードンを行かせればいいはずよ。彼の 方が最適任者であることは、あなたもご存じのはず。作戦の変更が必要になった時に は、司令官が残っていたほうが理にかなっているもの。なのに、アレックスというこ とは、なぜかわかる?」 「…………」 「アレックスはね、この作戦に絶対の自信を持っていると思っているわ。言い換える とパトリシア、あなた達の作戦能力を高く評価しているということよ。作戦が失敗し た場合、ゴードンに撤退の指揮を任せるなんて言ってたけど、その可能性があるくら いなら最初から作戦を取り上げたりはしない。彼の性格でいうと、勝つならばとこと んやるが、負けそうならば無理せずにひたすら逃げまくる、というのが信条なのよ ね」  それはパトリシアもよく知っていた。  たとえば士官学校時代の模擬戦闘でのことでいうと、逃げの作戦が基地に仕掛けし ておいて完全撤退したことであり、勝ちにいく作戦がレーダー管制を逆手に取って逆 襲したことである。まず逃げまくって相手を油断させておき、弱点を見せたその隙を 全軍をもって徹底的に攻撃を敢行する。 「作戦が成功するにしろ失敗するにしろ、犠牲者は少なからず出るわ。これだけ突飛 な作戦だもの、果たして作戦通りいくかどうかなんて、誰も信じられないはずよ。し かし、司令官自らが同行することで、作戦に参加する将兵達の士気を奮い立たせ、延 いては部隊全員に対して指揮系統の優秀さと信頼性を高めることができる。本作戦に 限らず今後も幾度かの困難で楽でない作戦命令をこなしていかなければならない。そ の作戦が困難であればあるほど、それを成功させて無事に戻ってきたとき、独立遊撃 部隊の将来は確固たるものになっているでしょう。これは、独立遊撃部隊司令官であ るアレックスと、副官であるあなたの最初の試練ということね」

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2017年10月30日 (月)

梓の非日常/第三章 旅行当日

梓の非日常/第三章 ピクニックへの誘い

  (五)旅行当日  ピクニック旅行当日となった。  校門前に大型観光バスが停車している。  すでに生徒達は全員席に着いて出発を待っている。男子は制服を着ているものが数 人いるが、女子は全員私服である。  最前列左側の窓際に座る梓。グリーン系の涼しそうな半袖花柄ワンピースに、ク リーム色の薄手のカーディガンを羽織っている。頭の上の荷物置きには、一泊二日の 旅行に必要な替えの下着や衣類が入っている少し大きめの鞄が乗っている。  その隣に沢渡慎二が座っている。 「梓ちゃんの隣だなんてついてるなあ」 「あのね。あんたがいるとみんな恐がるから、わざわざあたしの隣にしてもらった の」 「あんだとお、そうなのかあ!」  振り返り凄味を利かせてバス内を睨む慎二。その頭をぽかりと叩いて、 「あほ! それだからいかんのだ。少しはクラスメートと仲良くすることを考えろ。 今日はクラスの親睦をはかるための小旅行なんだぞ」 「ご、ごめんよお」 「ふん」  喧嘩するものほど実は仲が良いものだ。  日頃から喧嘩する日常の中で、梓と慎二は結構良い中になっていた。  退屈な学校生活の中で、息抜きというように梓にちょっかいを出している慎二。  梓も軽くあしらうように相手にしていた。  そんな二人を横目で見ながら、運転手に耳打ちしている絵利香。淡いピンクのブラ ウスにベスト、そしてミニのタータンチェックのスカートといういでたちである。 「わたしと梓ちゃんのことは内緒にしておいてね」 「かしこまりました。お嬢さま」  運転手のそばを離れて、梓とは通路を隔てた反対側の運転席後ろに座る絵利香。 「にしても、下条先生遅いね」 「学校側や現地警察との連絡事項の確認に時間がかかってるのだと思いますよ。引率 教師としての責任がありますからね」  鶴田が、お菓子だのジュースだのを配りながら、解説した。 「おい、慎二。おまえの目の前にあるのは何だ?」 「え? 冷蔵庫だと思うけど」 「だったらおまえもジュース配り手伝え、公平君に任せきりにするな」 「なんで俺がジュース配りなんか」 「少しはクラスの役に立つ事をやってみろよな」 「梓ちゃんは?」 「あたしは、やることはやったからいいの」 「なんだよそれ。まだ出発もしていないのに」 「やるの、やらないの? ジュース配り」 「しかし……」 「あたし、帰ろかな」 「や、やらせていただきます」  梓に奥の手を出されては慎二もかたなしとなる。そもそも慎二が旅行に参加するこ とを決めたのは、梓も一緒に行くからである。梓とのピクニックは楽しみにしていた のである。その梓に帰られてしまうと自分の居場所もなくなる。  しぶしぶジュース配りをはじめる慎二。  やがて学校内から小走りに下条教諭がやってくる。 「悪い悪い。ちょっと遅れたな。校長のところの電話が話中でなかなか繋がらなくて ね」 「みんな、揃っていますよ。先生」 「そうか。じゃあ、運転手さん、出発させてください」 「かしこまりました」  ゆっくりとバスが動きだす。  鶴田がマイクを片手に取り、 「えー。後ろの方、聞こえますか?」  確認を取っている 「聞こえてるよ」 「それでは簡単に今日の予定を説明します。国道254号線を北上しまして、最初の 予定地の神原牧場に立ち寄り牛達と戯れた後、宿泊地の蓼科高原研修保養センターに 向かいます」 「しかしよお、蓼科って清里とかに比べると観光名所やキャンプ場とか少ないんだよ ね」

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お菓子の城で遊ぶアバター

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さっそくお菓子の城に登城するアバターです(*´▽`*)

苦労して取った大地アイテム、遊んでくれて何よりです。


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2017年10月29日 (日)

銀河戦記/第六章 カラカス基地攻略戦 IV

第六章 カラカス基地攻略戦

                  IV  作戦X地点。  空母セイレーンのフライトデッキから次々と艦載機が発進している。  0番格納庫の中央に据えられた複座型揚陸戦闘機。  作戦会議の時にアレックスが指示したものである。  彼の頭脳には配下にある艦艇の種類は勿論のこと、搭載してある戦闘機のすべて、 そしてその装備や性能までがことごとく網羅されている。  あらゆる角度から考慮しつくして作戦遂行に必要なものを、明確にチョイスして用 意できる。  ヘルメットを小脇に抱えデッキをゆっくりと歩いて、指令機ブラック・パイソンに 乗り込もうとしているアレックス。足早に近づいてくる女性士官は、航空参謀のジェ シカであった。 「司令。ジミー・カーグ中尉の編隊、全機発進完了しました。ハリソン・クライス ラー中尉の編隊もほぼ九十パーセント」 「わかった」  指令機のそばにジュリー・アンダーソンが待機していた。 「いつでも、出られます」  敬礼して迎える。 「よし、行こう」 「はっ。では、後ろにお乗りください」 「よろしく頼む」 「司令」  乗り込むアレックスの背後からジェシカが声を掛ける。 「ん?」 「どうぞ、ご無事でお戻りください。万が一の時には、泣いて悲しむ女性がいること をお忘れなく」 「わかっているさ」  OKというように親指を立てて見せる。  後部座席に腰を下ろして、ヘルメットを着用する。 「よろしいですか?」 「いいぞ。発進してくれ」 「了解しました」  戦闘機の風防が降ろされる。  管制官とのやり取りが行われ、庫内の空気が抜かれてゆく。  雑然とした艦内の音が次第に薄れてゆく。  無音となり、庫内の扉が開く。  牽引トラクターが接続されて、フライトデッキへと運ばれる。  すかさず発艦要員が取り付いて、カタパルトに乗せてゆく。  それが完了すると、足早に待避所へと向かう。 「エンジン始動!」  前方出口に表示されている発進信号が青色(GO)に変わる。 「発進します!」  エンジンを吹かして滑るようにカタパルトから発射される複座式戦闘指令機ブラッ ク・パイソン。ふわりと宇宙空間に出たところで、ジミーとハリソンがすっと両袖を 固めるように寄ってくる。  アレックスの手元の無線機が鳴った。 「全機、発進完了しました」 「よし。行くとするか」 「行きましょう」  マイクを握り締め指令を出すアレックス。 「これよりバークレス隕石群に突入する。隕石を衝突回避しながら、ランダム飛行 コースを取りつつ、目標にたいして接近を試みる。全編隊、我に続け!」 「カーグ編隊、了解」 「クライスラー編隊、了解だ」 「ジュリー。進撃開始」 「了解」  ブラック・パイソンが隕石群に突入すると、追従して続々と戦闘機が突入していく。 アレックスの下に集まった戦闘機乗りは、酒豪のジュリーを筆頭として一癖も二癖も あるやさぐればかりだ。待機勤務中に酒は飲むし、喧嘩は日常茶飯事でどこの艦隊で も鼻つまみ者として放逐されていた。だが操縦の腕前はピカイチだった。そんなやつ らだが、同じく軍の異端児であるアレックスの事を聞きつけ、類は類を呼ぶというよ うに、いつしか自然に集まってきていたのだ。 「ハリソン。速すぎるぞ。隕石との相対速度を合わせろ。いくら隕石の中に姿をくら ましても、異常な動きを見せて敵に感知されては元も子もない」 「りょ、了解」 「司令が同行して正解でしたね」  ジュリーが機内無線で応答した。 「ああ、ジミーもハリソンも、ライバル意欲を燃やしてくれるのはいいんだが、功を あせり過ぎる。二階級特進も考えものだな。という俺は三階級特進か……」 「司令の進級は、作戦を考え実行した功績として当然です。その点、あのお二人はた だそれに従っただけという点で、二階級は時期尚早という評価もありますけどね」 「そういう声もあったのは確かだが、彼らがいなければあれだけの戦果を上げること はできなかったさ。だからこそ、彼らがやっきになる気持ちも解るがな」  一方旗艦サラマンダーの方でも、作戦がはじめられていた。 「そろそろ時間です。艦隊を進めてください」  司令代行のパトリシアが進軍を命じた。 「了解。全艦微速前進」  部隊二百隻の艦船がゆっくりと動きだした。  当面の作戦の目的は、自らの存在を敵に知らしめて、揚陸部隊の行動を察知されな いようにする陽動である。  敵守備艦隊旗艦の艦橋。 「敵部隊がこちらに向かっているのは本当か」 「間違いありません。情報部が敵部隊を確認しております。到着推定時刻はおよそ四 十分後」 「うむ。警戒をおこたるなよ」 「とは申しましても、情報ではたかだか二百隻の部隊だそうですけれどもね」 「たった二百隻だと?」 「はあ……。ただ問題なのは、部隊を率いているのがアレックス・ランドールという 人物らしいということです」 「アレックス・ランドール? 何者だ、そいつは」 「お忘れですか。ほら、ミッドウェイ宙域で第一機動空母艦隊と第七艦隊を敗走させ た例の奴ですよ」 「ああ、あいつか」  警報がなり響いた。 「哨戒機が敵艦隊を発見しました。距離122.4光秒」 「やっぱり来たか。敵艦の数は?」 「およそ二百隻」 「しかしあまりにも少なすぎるな……」 「いかがなされますか」 「戦闘配備のまま待機だ」 「しかしそれでは……」 「この基地をたかだか数百隻の部隊で攻略することなど有り得るものか。これは誘い の隙だ。我々が出撃した途端伏兵が現れてくるに違いないのだ。背後には少なくとも 一個艦隊はいるとみたほうがいいだろう」 「とは申しましてもこちら方面に出撃できる同盟の艦隊といえば、第八か第十七艦隊 しかおりません」 「その通り。二個艦隊程度なら、軌道衛星の粒子ビーム砲とあわせて我々守備艦隊だ けで十分防御できる」 「軌道ビーム砲の射程内で待機しているかぎり安全というわけですね」 「ああ。とにかく敵の誘いには乗らないことだ」 「わかりました」

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2017年10月28日 (土)

梓の非日常/第三章 旅行会社

梓の非日常/第三章 ピクニックへの誘い

(四)旅行会社  教室。  梓と絵利香が戻って来る。 「今、確認中だから、ちょっと待ってくれるかな」 「わたしの方は、大丈夫だって。運転手の日当と燃料代分貰えればいいって」 「宿の方が取れるかどうかは別として、とりあえず場所は蓼科高原でいいと思うんで すけど、いかがでしょう。ピクニックなんかいいですよね」 「いいね。どこかの河原でバーベキューというのもいいかも」 「こういうことは旅行会社に相談してみるのがいいわ。近くにあるから行ってみまし ょう」 「そうね。そこ絵利香ちゃんの親戚の旅行会社でしょ」 「こほん……」  よけいなことは言わないで、といった表情を梓に投げかける絵利香。  というわけで学校を出て、近くにあるという旅行会社へと向かう一行。  鞄にストラップで繋がれた梓の携帯電話が鳴る。 「はい、梓です。麗香さん、それで? うん、わかった。ありがとう。それで、お願 いします」  携帯を切り、二つ折りにして、鞄に戻す梓。 「研修保養センターの予約が取れたわ」 「本当ですか?」  目を輝かせて確認する鶴田委員長。 「うん。三十一人全員泊まれるよ」 「あの、それで。宿泊代なんだけど……」  宿代をクラスメートから集めるとしても限度がある。  普通の旅行のように一泊数万円というのではとても無理だ。 「あ、それなら、ただでいいんですって」 「ええ! ただ?」  信じられないという表情。 「ええと……」  言い訳を考えている梓だが、妙案を思い付く。 「そ、そうなの。実は、ホテルの従業員の研修があるんですって。その研修の一貫の 実務体験ということで、あたし達の接待をするそうなの。だから、お代は頂けないっ て」 「研修か……そういえば、研修・保養センターだっけ。それもありかな」 「そうそう。あはは」  苦笑する梓。絵利香も、くすっと笑っている。  旅行会社の玄関前。  国内旅行はもとより海外旅行も手掛ける大手である。 「ちょっと、会ってもらえるか聞いてくるから待っててね」  一人で中に入って行く絵利香。  受付嬢が絵利香の姿を見て、明るく声をかけてくる。 「お嬢さま、いらっしゃいませ。梓さまは、今日はご一緒じゃないのですか?」 「こんにちは、河内さん。梓ちゃんは、お友達と外で待ってもらっているわ」 「そうでしたか。それで、今日はどのようなご用で? 確か連休には蓼科に行かれる と伺っておりますが」  今日決まったばかりなのに、すでに全社的に連絡が届いているらしく、旅行のこと を切り出す受付嬢。 「実はそのことで相談にのってもらいたいの」  絵利香は実情を受付嬢に話した。 「わかりました。今は吉野が明いていますので、彼に担当してもらいましょう」 「お願いします」  玄関前。 「なあ、絵利香さんて、もしかしてこの旅行会社の人? ほらここに書いてあるよ」  鶴田が指し示したのは、旅行会社の看板であった。国際観光旅行社という会社名の 下に、篠崎グループと書かれている。  ……あ、見つかっちゃったか…… 「さ、さあ。あたしは、知らないわ。親戚と言っていたから、名前が同じでも不思議 じゃないでしょ」 「そりゃまあ、そうだろうけど。篠崎グループといえば造船・海運業では業界一を誇 る篠崎重工が親会社だよなあ。タンカーやジャンボジェット機の保有数は世界一だそ うだ」 「そ、そうみたいだね。あはは……」  冷や汗かき、しどろもどろの梓。

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ハロウィンの森の木Bで遊ぶアバター

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コイコイハロウィンの森の木Bの下側の戸口から姿を現す女の子。

この写真を撮るには、夜になるのを待って、
さらに邪魔なコノキを避けるために、
シートを180度回転させています。

森の木Bは、上側の扉、下側の扉から姿を現す。
そして、縄梯子を登って枝の上に立つ。
この三つの動作が見られます。

真ん中の窓から顔を覗かせるというのも
あるかも知れませんが、まだ確認取れてません。

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2017年10月27日 (金)

銀河戦記/第六章 カラカス基地攻略戦 III

第六章 カラカス基地攻略戦

                 III  優秀な参謀を持ちながらも聞く耳を持たずに一人よがりな作戦を実行する愚鈍な司 令官も多いのである。その点自分では何も考えることはしなくとも、適材適所に優秀 な人材を配置してまかせるということも、また司令官の采配の一つでもあった。  戦闘の現場における実戦力の手腕に長けたゴードン・オニール大尉。  艦載機などの航空兵力の運用に優れたジェシカ・フランドル中尉。  図上演習から作戦立案に至る作戦の要の参謀役パトリシア・ウィンザー少尉  作戦を立てるに必要な情報収拾を担当するレイチェル・ウィング少尉。 「今回の作戦には私自身も戦闘機で出る」 「司令自らお出になられるのですか?」 「そうだ。現場ではどうなるか皆目見当がつかんし、敵勢力圏内で通信回線を通して 作戦指令を出すこともできん。傍受されるからな。現場において戦況を逐一把握して、 状況の変化に応じて的確な指令を出す必要があるからだ」 「しかし、万が一作戦が失敗したら……」 「その時は、敵地に進入した部隊は全滅。運が悪かったと諦めて艦隊を撤退するしか ない。その時はゴードンに後をまかせる」 「いやですよ。そんな役目は」 「それはともかく、司令は戦闘機に乗れるのですか?」 「それが乗れないんだよ。士官学校の教練に戦闘機の操縦科目があるにはあったのだ が、さぼっていたからな」 「では、どうなさるつもりですか」 「複座式の揚陸戦闘機ブラック・パイソンがあるから、その後ろに乗っけてもらう さ」 「誰に操縦させるのですか」 「ジミーやハリソン以外がいいだろうな。奴等の性格からして、後ろに司令を乗っけ ていると、腕が鈍る」 「それでしたら、ジュリー・アンダーソン少尉が適任でしょう」  とパトリシアが進言した。 「ジュリーか……それもいいだろう」 「ジミー・カーグ中尉、ハリソン・クライスラー中尉が見えました」 「おお、来たか。通してくれ」 「はい」  両中尉が席につき、無事に大気圏突破を果たした後の詳細な作戦の打ち合わせに入 った。  正面のパネルスクリーンにカラカス基地の全貌が投影されていた。 「これがカラカス基地の詳細図だ。右から、基地周辺の地形図、管制塔周辺見取り図、 管制塔内の3D透視図面だ。基地攻略に必要なデータはすべて揃っている」 「司令、基地の詳細図など、どうやって手に入れたのですか?」 「軍事機密ですよ。ガードはとんでもなく固いはずです」 「ふむ……まあ、そこがレイチェルの情報参謀としての能力値の高さを示しているん だな。情報戦略においては一個艦隊に匹敵するだろう」 「司令、あまり買いかぶらないでくださいよ」  ジェシカが謙遜して訂正する。実際に敵基地の詳細情報を収集したのは、天才ハッ カーであるジュビロ・カービンという人物なのだろうが、そういった優秀な人脈を集 め維持することも、その人なりの能力でもあるのだ。 「ともかくだ……。ジェシカ、作戦の概要を説明してくれ」 「はい」  ジェシカがスクリーンの前に立ち、詳細図を指し示しながら作戦を伝達する。 「基地攻撃には、ジミー・カーグ中尉及びハリソン・クライスラー中尉を編隊長とす る二編隊を投入します。カーグ編隊は、基地滑走路への強行着陸を敢行し、白兵戦に より中央コントロール塔を占拠していただきます。クライスラー編隊は、基地コント ロール塔以外への継続攻撃とカーグ編隊の援護を担当していただきます」 「了解した。白兵戦ならお得意だ」 「私の編隊は、ジミーが占拠した管制塔へ敵守備隊を近づけさせなければいいのです ね」 「その通りです。中央コントロール塔への連絡通路などを破壊して敵守備隊を分断し てください」 「これって士官学校時代の模擬戦闘の作戦まんまじゃないですか。戦艦と戦闘機との 違いはありますが」 「まあな。レイチェル少尉とカインズ大尉を除けば、司令官も参謀もその時とまった く一緒だからな。なんたってこの部隊はスベリニアン校舎の士官ばかり集まっている」  ゴードンが肩をすくめるようにして言った。 「しかし、今回は実戦だ。一度成功した作戦が二度うまくいくとは限らない。失敗は 即死を意味するのだ。こころして掛かるように」

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2017年10月26日 (木)

梓の非日常/第三章 執務室にて

梓の非日常/第三章 ピクニックへの誘い

(三)執務室にて  真条寺家、執務室。  壁際の机に座り報告書に目を通している麗香。窓際にはさらに一回り大きな机があ り、その上には大きなパンダのぬいぐるみが、無造作にでんと置かれてある。執務室 には似つかわしくない情景ではあるが、そのことを笑う者がいれば、たとえ企業の社 長だろうとグループの大幹部であろうと、そばにいる麗香から容赦なく更迭を言い渡 されるであろう。  なぜならその机は、真条寺グループの現ナンバー2である梓のものだからである。  それは五歳の誕生日に絵利香から贈られたパンダであり、梓が非常に大切にしてい るものである。麗香以外の者が梓に断りなしに触ったりすると、いきなり不機嫌にな るから要注意である。  その机は、梓の執務机であると同時に勉強机でもある。机の上のブックスタンドに は、広辞苑・国語辞典だの、外国人向け英語解説版英和・和英辞典だの、漢字の読み 書きなど日本語のあまり得意でない梓の必携勉強グッズが置かれてある。麗香に判ら ないことを教えてもらうため、この執務室を勉強部屋にしているのだ。勉強に疲れ気 分がいらいらしてきた時、逆に非常に嬉しいことがあって気分が高揚している時、パ ンダを抱いていれば自然に心が落ち着いてくるという。要するに梓がパンダを抱いて いる時は、情緒が不安定な状態にあるので、込み入った用件を切り出す際には、その 表情をよく見極めてからにしなければならない。これは五歳の時からずっと続いてい る習慣なので、そんな女の子のデリカシーを理解できない者は、真条寺グループの大 幹部にはなれないだろう。その点十年以上もの間世話役をしてきた麗香には、梓の微 妙な表情の変化も見逃さず、その心変わりを完全に理解できる眼力が備わっている。  机の上の電話が鳴りだす。 「お嬢さまからね……」  その電話には、ブロンクス本宅執務室とのホットラインと、梓の持つ携帯電話から のコールを除けば、外線からは直接掛けられないようになっている。  一般の人が屋敷に電話を掛ける場合、一旦屋敷内にある電話交換センターに繋がる ことになっている。屋敷内には五十台以上の電話があるためだ。  液晶画面にも間違いなく梓の名前が表示されている。その電話を取る麗香。 「麗香です」 「麗香さん、お願いがあるんだけど、いいかな」 「どうかなさいましたか、お嬢さま」  電話口の向こうから、依頼内容を告げる梓の可愛い声が届く。 「蓼科の研修保養センターですね。お嬢さま方を含めて三十一名の予約。利用代金の 支払いはいかが致しましょう」 「全部、あたしにつけといてくれるかな」 「かしこまりました。確認を取りますので、しばらくお待ち願えますか? 折り返し 連絡致します」 「うん。待ってる。じゃあね」  梓が電話を切るのを待ってから、電話を切る麗香。引き続いて研修保養センターに 連絡を取る。 「支配人をお願いします。わたしは、真条寺梓さまの世話役の竜崎麗香です」 「真条寺……お嬢さまの?」 「そうです。至急です」 「少々お待ち下さいませ」  しばらく間があって、女性の声が却ってきた。 「お待たせ致しました。副支配人の神岡幸子です。梓お嬢さまに関しましては、私が 担当させて頂きます。ご用件をどうぞ、麗香さま」 「VIPルームは連休中は明いていますか」 「はい、明いております。お嬢さまがお使いになられるのですね」 「そうです。お嬢さまと絵利香さまがお泊まりになります。準備しておいてくださ い」 「かしこまりました。絵利香さまというと篠崎重工のご令嬢さまですね。他にはあり ますか?」 「続きの部屋を二十九人分確保してください。お嬢さまのクラスメートで、親睦旅行 をされるとのことです。お嬢さまがそれぞれのお部屋を行き来なされると思いますの で、他のお客さまに会わないように、できればワンフロア貸し切りにしてください。 できますか?」 「確認して、十五分以内に折り返し連絡いたします。お屋敷の執務室でよろしいです ね」 「はい。よろしくお願いします」

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2017年10月25日 (水)

銀河戦記/第六章 カラカス基地攻略戦 II

第六章 カラカス基地攻略戦

                  II  アレックスと女性参謀達との一回目の作戦会議から数日後。  改めてゴードン達を交えての作戦会議が執り行われた。  作戦室のパネルスクリーンに惑星周辺概図が映されている。  副官のパトリシアが議事進行を務めている。 「惑星を占拠するには空母からの艦載機によって制空権を確保したのち、軌道上から 戦艦のビーム砲で惑星地上の軍事施設を破壊します。そして揚陸部隊を地上に降ろし て占拠にいたる。というのが本筋ではありますが、そこで問題になるのが、惑星を守 る守備艦隊約七千隻と軌道上にある十二基の粒子ビーム砲です。粒子ビーム砲は無人 で、地上の管制塔からコントロールされます」 「うーむ。守備艦隊はともかく、粒子ビーム砲がやっかいだな。戦艦に搭載されてい るのとは桁違いの出力があるからな」 「仮に守備艦隊を撃滅しても、あの粒子ビーム砲を叩かない限り、味方の戦艦を接近 させることができない」 「そこで今回の作戦には、あえて守備艦隊を相手にしないで、粒子ビーム砲の制御装 置のある地上基地を直接攻撃します」 「まさか、どうやって!?」 「それには、あれを利用させてもらう」  とアレックスは、パネルスクリーンの一角を指差した。  そこには一条の軌跡を描いて移動するバークレス隕石群が映っていた。 「拡大投影しろ」  スクリーン一面に隕石群が拡大される。 「揚陸戦闘機による攻略部隊を組織して、この隕石群に隠れて惑星に近づいて潜入、 敵基地に接近攻撃を加える。どうだ、いい作戦だろ」 「戦艦の援護なしに揚陸戦闘機だけで地上攻撃を敢行するなど自殺行為です」 「まあ、くわしい説明をするから聞き給え。ウィンザー少尉、よろしくたのむ」 「はい」  パトリシアが進み出る。 「丁度、バークレス隕石群の軌道上をこの惑星が最接近する時間が、宇宙時間033 1から0346時にかけてです。  まず艦隊から、空母を主体とする遊撃部隊を組織し隕石群の到来する方向のX地点 に展開させます。そこで揚陸戦闘機を全機発進させたのち、母艦はY地点へ移動して 待機します。揚陸戦闘機は隕石群に隠れるようにしながら、目標に接近を試みます。 作戦の当日はバークレス隕石群を母体とするナビア流星群の極大日にあたり、夜側か ら流星群にまぎれて大気圏に突入すれば惑星の対空レーダーに探知されることなく、 無事に地上に降下できることと思います。一方本隊は、遊撃部隊の行動を悟られない ため、この方面よりわざと敵レーダーに捕捉されるような相対位置を取りながら接近 します。  揚陸戦闘機は、大気圏内に突入後、軌道粒子ビーム砲の制御装置のある中央コント ロール塔を制圧します。続いて軌道粒子ビーム砲を使って守備艦隊を叩きます」  アレックスが発案した作戦案に一同は驚くばかりで、ため息を付くしかなかった。  初めて聞かされたパトリアとレイチェル、そしてジェシカとて作戦が成功するかど うか疑問だった。  しかし、それを納得させるだけの信頼がアレックスにはあった。そうでなければ、 今ここにこうして独立遊撃艦隊の一員として作戦遂行に参加しているはずもなかった のである。 「成功すれば、奴等驚くだろうな。いきなり背後から襲われることになるのだから」 「私の希望としては、敵艦隊を撃滅させるよりは、降参させたいものだ。こっちの損 害も少なくて済むし」 「まあ、挟み撃ちになれば敵も動揺してあっさり降伏するのではないでしょうか」 「そうあってほしいね」 「私としては、机上の空論でないことに賭けるしかありませんね」 「空論? これは作戦だよ。情報参謀のレイチェルが集めたカラカス基地詳細図面を 元に、航空参謀のジェシカが原案を出してパトリシアがまとめたものだ」 「はん。どうして艦載機だけで行動するのかと思ったら、やはりジェシカの作戦立案 か。参謀が優秀だと司令官は楽でいいですねえ」 「まあね。俺は実行するかしないかを決断するだけだからな」 「ですが、作戦の骨子を考えられたのは司令自身ですよ。私達三人を呼び寄せるなり、 『あのバークレス隕石群を利用した、揚陸戦闘機による惑星攻略を考えてくれ』です もの。しかも揚陸戦闘機の手配まで完了してあったんですよ」

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2017年10月24日 (火)

梓の非日常/第三章 ピクニック

梓の非日常/第三章 ピクニックへの誘い

(二)ピクニック  城東初雁高校。  1-A組教室内、ホームルームの時間。鶴田委員長が壇上の教卓で弁を奮っている。  黒板には、蓼科高原ピクニック・一泊二日という文字が書かれており、下条教諭は 教室の隅で成り行きを見守っている。 「というわけで、クラスの親睦をはかるために、連休を利用して一泊二日のピクニッ クを計画したのだが、どうだろうみんな」 「賛成!」 「いいぞ、委員長」 「それで、会費はいくらなの? それ次第だと思うけど」 「聞いて驚け、一人当たり七千円と格安になっておるぞ」 「まさか、旅行会社のパック旅行に便乗するんじゃないでしょね。そんなのはいや よ」 「安心しろ、ちゃんと貸し切りのバスで行く。俺達だけだ」 「ならいいわ」 「泊まるところは?」 「さる会社の、研修保養センターが連休中明いているので利用させてもらう」 「研修……まさか、合宿所に全員押し込むってのはだめだぞ」 「ちゃんとしたホテル並みらしいぞ。二人一部屋ずつだ」 「らしい……ってどういうこと? 鶴田君が決めたんじゃないの?」 「いやあ、そうじゃないんだ。実はみんなに打診する前に、どれだけ参加者が集まる かアポイントとって確認してたんだけど、その中の人に観光バス会社やホテル業界に 親戚がいるということで、格安で使わせてくれることになったんだ」 「誰なの、その人?」 「すまん。内緒にしてくれと言われてるから」  数日前の事である。  梓と絵利香を前に、相談を持ち掛けている鶴田。 「え? ピクニックですか」  絵利香が聞き直した。 「クラスの親睦を計りたいと思いまして、梓さんと絵利香さんにはぜひとも参加して いただきたいと、一番に相談にきました。お二人に参加していただければ、他のクラ スメートも参加するだろうと思いまして」 「いいよ。参加しても」 「ほんとに?」 「ああ。でも慎二も当然誘うんだよね」  ぽそりと梓が確認する。 「え? 沢渡君は除外しようかなって、みんな恐がるから……」 「なら、行かないよ」 「しかし……」 「親睦を計りたいんだろ? 一人だけのけ者にしたら意味ないよ」 「わかりました。沢渡君も誘います」 「ん。じゃあ、行く」 「あ、そうだ! わたしの親戚に旅行会社やってる人がいるから、格安でバスを借り れるようにしてあげようか」  絵利香が梓に目配せしている。 「本当ですか、絵利香さん」 「うん。運転手の日当と燃料代くらいで借りられると思うよ」 「それが本当なら、助かります」 「絵利香ちゃんがバスなら、あたしは宿を提供してあげようかな?」 「え?」 「蓼科高原に研修保養センターというのがあるんだけど、今の時期なら借りられるか も知れない」 「大丈夫ですか? 引率の下条先生も含めて総勢三十一名になるんですよ」 「三十一名か……ちょっと待ってね。携帯で確認とるから」  そう言って廊下に出る梓。 「あ、わたしも確認取るわ。公平くん、ここで待っててね」

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2017年10月23日 (月)

銀河戦記/第六章 カラカス基地攻略戦 I

第六章 カラカス基地攻略戦

                  I  パラキニアに到着した独立遊撃艦隊は、早速宇宙港に入港して損傷箇所の修繕と燃 料補給を開始した。  司令室で報告書に目を通しているアレックス。 「司令。艦隊司令部より入電です」 「こちらへ回してくれ」 「司令室に回線を回します」  通信士に代わってトライトン准将の姿が映しだされた。 「よう。元気そうだな」 「はい。提督こそ」 「部隊の指揮統制はうまくいっているかね」 「今のところ順調にいっております」 「それは、良かった。早速だが、作戦指令が君の部隊に下された」 「初陣というわけですか」 「シャイニング基地より銀河中心方向、敵陣中にある補給拠点カラカス基地の攻略が、 与えられた任務である」 「しかし、いくらなんでも……。いきなりカラカス基地攻略とは、よほど我が部隊に 期待をかけていると見えますね」 「それは、皮肉かね。期待どころか、君の部隊を潰そうという魂胆だ。一切の部隊増 援はなし、現有勢力の二百隻のみで、事にあたること。だそうだ」 「真意はともかく。部下達の士気統制のためにも、前向きに考えていかないとね」 「君は楽天家になれるな」 「とにかく、命令では仕方ありません。従うまでです」 「勝算はあるのかね」 「それは、これから考えます」 「そうか。作戦遂行に必要なものがあったら遠慮なく言ってくれ。出来る範囲内で極 力用意しよう」 「頼もしいお言葉です。では、早速ですが揚陸戦闘機を五百隻ほど調達してください。 部隊増援は無理でも、戦闘機ぐらいなら大丈夫でしょう?」 「ほんとに早速だな。ということは作戦の骨格は掴んでいるということか」 「はい。カラカス基地の事は以前から脳裏にあったものですから」 「わかった。早速手配しよう」 「お願いします」  通信が切れた。  目の前の装置を操作して、カラカス基地の情報をディスプレイに表示するアレック ス。  今度の指令によって向かうこととなった、連邦の前線補給基地がある惑星カラカス が映しだされる。時折操作パネルをいじって惑星周辺の詳細な情報を取り出している。  カラカス基地。  連邦軍最前線機動要塞タルシエンから同盟へ侵攻する際における補給基地である。 常時一個艦隊が常駐している。軌道上には強力な粒子ビーム砲を搭載した衛星砲台が 十二基周回しており、全方位をカバーし必要に応じて地上から自由にコントロールが 可能である。衛星粒子ビーム砲は、通常戦艦搭載のものより約二倍の長射程を誇って、 総合火力は一個艦隊に匹敵するといわれ、近づくには相当の覚悟が必要である。  アレックスは投影ポイントを惑星からかなり離れた場所へ移動させた。そこには バークレス隕石群があった。その周回軌道は、惑星カラカスのそれとかなり接近した コースで交差するように通っている。六十年に一度の周期で、両者は近づき合うが、 今年はその最接近の年にあたっていた。 「うーん。やはりここはジェシカが適任だよな……」  通信機器を操作して艦橋にいるパトリシアに連絡をとる。 「ウィンザーです」 「済まないが、そこはスザンナに任せて、レイチェルとジェシカと共にこっちに来て くれないか? 作戦会議だ」 「かしこまりました。大尉殿達はよろしいのですか?」 「いや、君ら三人で十分だ。ゴードン達には作戦を煮詰めてからにする」 「わかりました」  それから数時間後。  カラカス基地攻略の指令が下ったことが、正式に部隊発表された。 「ちっ。どうせ、チャールズ・ニールセン中将の差し金だろうさ。躍進著しいトライ トン少将と、配下の精鋭部隊指揮官であるフランク・ガードナー大佐や、アレック ス・ランドール少佐に対する風当たりは、並み大抵なものではない」 「結局、派閥争いに巻き込まれたというところかな」  艦内のあちらこちらで討論する隊員達。 「我々の指揮官殿は、この難問をどうやって切り抜かれるおつもりなのだろうか」 「一つ返事で引き受けたといわれるから、それなりに考えておられるのではないか」 「いくらなんでも、不可能じゃないかな。相手は守備の一個艦隊と軌道衛星砲が堅固 に守っているんだ」 「例えば軌道衛星砲を無力化するとかさ」 「どうやってだよ。近づくだけも困難だというのに」 「そ、それは……」

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2017年10月22日 (日)

梓の非日常/第三章 フランス留学?

梓の非日常/第三章 ピクニックへの誘い

(一)フランス留学?  英語の授業で担任の下条教諭が出席を取っている。 「よし、全員出席と……」 「先生よお。梓ちゃんと絵利香ちゃんがいないじゃんか」 「あれ、君達にまだ話してなかったっけ。あの二人は、英語の授業は免除されてるん だ」 「免除ってどういうことですか?」 「実は二人は、生まれも育ちもニューヨークの帰国子女でな。完璧な英語を流暢に話 せるんだ。特に真条寺君は、母親ともどもアメリカ国籍で、帰国というより留学で日 本に来ているというのが正しい。逆に我々英語教師の方が彼女達に教えを請うくらい で、英語の授業を受ける意味がない」  二人の意外な真相を知って、教室がざわめきだした。 「二人が、ちゃきちゃきのニューヨーカーだったなんて……」 「どうりで、雰囲気違ったわけだよな」 「そういえば、昨日英語がびっしり書かれた本を読んでたよ。表紙の絵は風と共に去 りぬだったけど」  一同が、主のいない二人の席を注視し、ため息をもらす。 「まあ、そんなわけだ」 「へえ。そうだったんすか。んじゃ、俺、英語の授業はさぼろうかな。梓ちゃんいな いとつまんないもんね」 「こらこら、教師の前で堂々と言う奴があるか。第一そんなことしてみろ、彼女達と の距離がよけい遠退くんじゃないのか。少しでも近づきたいなら英語が話せなきゃ、 な!」 「うう。それ言われるとつらい」 「ちなみに英語と日本語どっちが難しいか尋ねたら、日本語の方が難しいと答えた。 真条寺くんなんか、男性言葉と女性言葉の区別がわからなくて、時々男言葉になっち ゃうとぼやいていた」 「あ、それ違うよ。梓ちゃんの場合は、元々男っぽいんだ。地の言葉っすよ。あれ は」  あはは。と、教室中の生徒達が納得して笑っている。 「そうなのか? ま、とにかくだ。彼女達は、英語のかわりに校長室でフランス語を 習っているよ。校長の都合もあるから、毎回というわけじゃないけどな」 「フランス語ですか?」 「ああ、しかもだ。フランス語だって日常会話程度ならちゃんと話せるんだぞ。高校 卒業後は、二人ともフランスの大学に進学するそうだ。日本留学の次ぎはフランス留 学か、国際人だなあ」 「フ、フランス留学?」  下条教諭の英語の授業が終わり、梓と絵利香が教室に戻ってきた。  愛子ら女子生徒達が、早速話し掛けて来る。 「ねえねえ。二人ともニューヨーク帰りなんだって?」 「あら、先生から聞いたのね」 「どうして話してくれなかったの?」 「別に隠してるわけじゃなかったんだけど。ね、絵利香ちゃん」 「そうね。話す必要がないと思ってたから」 「一応梓ちゃんは、アメリカ人ということになるのね。当然永住権もあるわけだ」 「ついでに、お母さんもアメリカ国籍だよ。お父さんは日本だけど」 「頼む。フランスに行かないでくれ」  突然慎二が割り込んできた。 「何、言ってんだ。おまえ」 「日本の大学ならまだ何とかなるかもしれないけど、フランスになんか行かれたら… …お、俺は」  いきなり梓に抱きつく慎二。 「捨てないでくれえ」 「どさくさに紛れて抱きつくなあ!」  床に転がっている慎二を足蹴にしながら、 「悪いけど、これは真条寺家のしきたりなんだよ。英語圏に六年、その他の語圏に三 年以上留学することが、家訓に定められているんだ」 「絵利香さんはどうなの。真条寺家とは何の関係もないんでしょ」 「そうなんだけど、三歳の時からずっと一緒だったから、ついて行くことにしたの」 「腐れ縁というやつね」 「そうじゃないでしょ。梓ちゃん」 「ははは……」

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壊れたはずのBDPが自己修復したよ

1年程前に壊れた?と思っていたブルーレイディスクプレーヤー。
ディスクは回らないし、映像信号も出ずに接続したTV画面は真っ黒。

「ああ、壊れたか……」

と、TV録画したBDを見られないのは残念だ。
今時、修理するよりは新しいのを買う方が安いので、
これをどう処分するか?
家電リサイクル法でゴミ出しできないし、廃品回収に出せば料金を取られる。

家電リサイクル店に持ち込めば、値段は付かなくても無料で引き取ってくれるかも。
それとも、ジャンク品としてオークションに出すか?
1円なりの価格設定すれば、誰かが入札してくれるかも。送料は相手持ちだ。

などと考えあぐねているうちに1年が経過していた。

ふと思い出して、ためしに電源プラグをコンセントに挿して電源ONしてみた。

「え!?」

なんとTVに映像信号が出ていたのである。
ディスクを入れてみると、ちゃんと回って録画映像が出た。

\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?

一瞬目が点になった。

自己修復していたのだった。

あれは、なんだったのだ……。


ちなみにそれまでは、録画専用としていたnasne(ナスネ)接続されたパソコン
に再生ソフトをインストールしてBDを鑑賞していた。

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3,2,1、発射!ドーンと飛ばされる女の子

インターポット

一昨日に取った「オレンジ色の旗の大砲」から打ち出される女の子。

発現頻度は結構高いです。
五分に一度くらいは飛ばされています。
前回の「樽大砲」が欲しかったのに取れなかった悔しさが晴らせました(⌒∇⌒)

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2017年10月21日 (土)

銀河戦記/第五章 独立遊撃艦隊 VI

第五章 独立遊撃艦隊

                  VI  自室に戻ったアレックスは窓から艦隊運行の様子を眺めていた。  ドアがノックされた。 「入りたまえ」  パトリシアが、紅茶カップを乗せたトレーとポットをワゴンに乗せて入ってきた。 「お疲れさま。紅茶はいかがですか」 「ありがとう」  パトリシアが入れた紅茶を堪能するアレックス。  彼女が副官として来る前は、レイチェルがやってくれていたものだった。 「どう思うかね、今回の訓練の成果は」 「正確な報告を聞くまでは何とも言えませんが、初陣としてはまあまあの出来じゃな いでしょうか」 「君が作ってくれた戦闘訓練のシュミレーションによる綿密な作戦マニュアルのおか げだよ。それに従えば艦隊リモコンコードなしでも十分指揮運営が可能だからな」 「いいえ、隊員が司令官の言葉を信じて、真剣に訓練に従事したからですわ。わたし はほんの少しのお手伝いをさせて頂いただけです」 「謙遜しなくてもいいよ。君の功績には感謝する。今後ともよろしく頼む」  アレックスは紅茶カップを机に置き、手を差し伸べて握手を求めた。 「はい。わたしでよければ」  その手を握りかえした。そして、そのまま寄り添って、唇を合わせて抱き合った。  長い抱擁のあとにアレックスはささやくようにいった。 「君が来てくれたおかげで、僕達の結婚も少しは早まるかもしれないな」 「そうなるように努力しますわ」 「うん」  アレックスは司令室に、技術部システム管理課プログラマー、レイティ・コズミッ ク中尉と、技術部開発設計課エンジン担当、フリード・ケイスン中尉を呼び寄せた。 「エンジンの具合はどうだい?」 「はっきりいって、最悪です」  ハイドライド型高速戦艦改造II式のエンジン制御コンピューターのシステムを解析 していたレイティが即座に答えた。 「そうか……」 「エンジン制御システムなんですが、開発者が数万回にわたるコンピューターシュミ レーションによって最も最良な状態をパターン化してROMにインプットしているよ うです。実際の艦隊運行においては、その時々の状況から最も近似値となるパターン をROMから選びだしてエンジンを制御しています。ところが搭載エンジンの反応速 度にROM読みだしから制御までの反応速度が追い付かないのです。つまり完全に合 ったパターンがあればいいのですが、ほとんどが近似値を選びだす必要がありその時 間が掛かり過ぎます。それが特に艦隊リモコンコードになると顕著に現れてくるので す。艦隊が要求するエンジン制御命令と自身の最良のエンジン制御命令に大きなギャ ップが生じますから」 「高性能エンジンゆえの憂鬱というところか。シュミレーションと実戦ではまるで違 うからな。実際の戦闘に参加したことのない技術者の作るものはそんな程度のものと いうこと。で、対策は?」  レイティに変わってフリードが答えた。 「メインシステムはとりあえずそのままにしておいて、サブシステムとして学習機能 を持った回路を並列に接続して同時処理させていきます。といいましても当分は、メ インシステムが実際の行動パターンを決定するのですが、メインシステムが決定した 行動の裏で、『俺だったらこうするのにな』と自分なりに判断し学習メモリに蓄積し ていくサブシステムがあるというわけです。つまりすでにあるパターンを利用するの ではなくて、艦がその時々にとった行動をパターンとして学習させていきます。最終 的にはその学習したパターンによってエンジン制御して行動できるようになります」 「サブシステムの構築にどれくらいの時間が必要だ」 「回路の設計に半年、実際の構築に三ヶ月、都合九ヶ月は必要かと思います」  フリードの後を受けてレイティが答える。 「システムプログラムの方は、メインプログラム作成に四ヶ月と各種モジュール作成 が三ヶ月、試験艦として五番艦の『ノーム』を使用してのデバッグに二ヶ月、そして フリードが構築した回路にインストールして再調整を行い、実際に稼動するまでに十 二ヶ月です」 「気の長い話しだな」 「サラマンダーのエンジンは、共和国同盟最高の性能を誇るハイスペックマシンなが ら、手のつけようのないじゃじゃ馬でもあります。手懐けるにはそれなりの覚悟と期 間がひつようということです」 「ま、ともかく。君達二人には協力してハイドライド型のエンジン制御の改良をやっ てくれたまえ」 「わかりました」  エンジン関連は二人に任せるしかない。 「原子レーザー砲の運用についてはどうか?」  と、もう一つの問題に入った。 「それは問題ないな」 「と、いうと……」 「俺が設計したからだ。製作者が設計通りに作ってさえいればな」 「なるほど……」 「とは言っても、実際に試射してみなければ解らないこともあるし、操作するものが 間違ったことをすることもある」 「そうだな。経験を積んで慣れていくしかないな」 「その通り。まあ、ともかく詳細なデータは後日にまとめて報告するよ」 「ああ、頼む」  こうしてアレックス率いる独立遊撃艦隊の初めての戦闘訓練は無事に終了した。  第五章 了

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め、目が回るう~(;´Д`)その2

インターポット

その1から……。

というわけで、今度は女の子。

しかしグルグル回っているから、正面に捉えるのが難しい。

後ろむきじゃ、可愛い女の子の表情が見えないし。

メインアバターが出かけてて、お友達が訪れて満員の時に、
アバターが帰ってきて定員オーバーになっても、
一応ちゃんとみんな表示されるのね。

め、目が回るう~(;´Д`)その1

インターポット

この大地設定の【魔女の帽子ライド】は、いつも誰かがグルグル回っているな……。

大地設定アイテムは、庭設定アイテムよりも、アバターが遊ぶ確率が高いように感じる。

その2に続く。

2017年10月20日 (金)

梓の非日常/第二章 新リーダー誕生

梓の非日常/第二章 スケ番グループ(青竜会)

(六)新リーダー誕生  梓の戦いぶりを観戦する慎二、そして絵利香。 「彼女が心配か?」 「あたりまえです」 「なあに、余裕だよ」 「余裕?」 「ああ、戦力分析をして、自分より相手の方がレベルが同じか上と判断した時は、強 い奴から先に片付けるのがセオリーなんだ。しかし今のあいつは、あえて下っ端から 片付けている。つまり楽勝できると判断しているわけだ。見ろよ、恐怖に引きつった スケ番の表情を」 「表情?」 「たった一人の相手に、手下が次々と倒されていくのを見れば、誰でも恐怖心を抱く ものだ」  最後の下っ端が梓の足元に崩れ落ちる。  梓は、姿勢を正し髪の乱れを直して、スケ番に向き直った。 「さあて、あなた一人になったわよ。どうするの」 「このお、ふざけやがって」  スケ番がカミソリを振りかざして突進してくるが、スウェイバックしてそれを軽く かわしてしまう。 「か、かわされた」  スケ番は何度となく仕掛けて来るが、ただ空を切るだけですべて簡単にかわされて いた。相手の攻撃を完全に見切っていた。 「そ、そんな。今まで一度もかわされたことがないのに」  梓は、平然とした顔を崩さず、スケ番が攻撃して来るのをじっと待っているだけで、 自分からは仕掛けることはしなかった。  疲れきり肩で息をはじめたスケ番。 「どうしたの? もうおしまいかしら」 「ふざけんな。カミソリお竜といわれたあたしが負けるわけないんだ」  梓、閃いて左の手の平を右手の拳でポンとたたくようにして、 「おお、分かったわよ!ときメモGS2の藤堂竜子ね。選択肢でバッドチョイスな呼 び方よね」  やおら右手人差し指を相手に向けて突き出す。 「何言ってんだ、こいつ。ふ、ふざけんなよ!」  闇雲に突進を開始するスケ番。  にやりとほくそえむ梓。 「お、決めにでるようだぞ」  慎二が身体を乗り出し、梓の次の行動に注目した。  梓の顔めがけて振り出してきたかみそりを持つ右腕を軽く払いのけて、急所の一つ 脾腹に正拳を一発、苦痛に腹を押さえた相手の左脇に手を差し込んで見事な払い腰を 決める。スケ番の身体はきれいな円を描くように宙を舞って、梓の足元に崩れ落ちた。 脳震盪を起こして完全に意識を失っているスケ番。 「お見事!」  勝負あったとみた慎二が、ぱちぱちと手を叩いて歩み寄ってきた。 「悪いけど、あなたとの勝負はまたにしておいてね」 「ああ、いいぜ。おめえとの勝負は、体調万全の時にしてやるぜ。負けた言い訳にさ れたくねえからな。つまり俺が勝つということだ。がはは」 「とにかく、絵利香ちゃんを守ってくれたことには礼を言っておく。ありがとう」 「礼には及ばないよ。俺の尊敬していた人が言っていたんだ。『女の子には優しく、 時には守ってやるくらいの気概がなくてはいけない』とね」 「誰なの? その人」 「それが名前を知らないんだ。その人は本当に女の子を命懸けで救って死んでしまっ たんだ」 「ふうん……で、あたしも女の子なんだけどなあ」 「おまえは、特別だ。この俺を投げ飛ばし、大勢の男達を撃ち負かす腕前だ。か弱い 女には程遠いからな。俺は、おまえをただの女の子とは思っちゃいない。ま、今日の 疲れを癒して、首を洗って待っているんだな。がはは」  高笑いしながら立ち去っていく慎二。 「もう……どうしても、あたしとやりたいみたい。あたしに投げ飛ばされたことを根 に持っているのね」  それから数日後。  梓の後をぞろぞろとついて来るスケ番達。 「いい加減、ついてこないでよ」 「お願いします。あたい達の新しいリーダーになってください」 「リーダーって、あなたなんでしょが。そう簡単に明け渡しては、面子がたたないん じゃない?」 「いいえ。あたい達全員を苦もなく倒した、その腕前と度胸っぷりに感服しました。 このあたいがまるで歯がたたなかったんだ。リーダーは一番強い者がなるべきです。 面子はあの時失ってしまいました」  ……こいつらのリーダーということは、スケ番ということじゃない。冗談じゃない わよ…… 「一応、あたいの配下にある青竜会は、富士見女子校、市立川越東三高、城下町女子 校、そして城東初雁高校を統一しております。およそ川越市の東半分を勢力下におい て、川越駅をその活動拠点としております。いずれそれぞれの学校のリーダーを挨拶 によこさせます」 「東三高って、普通高・工業高・総合校のことよね。しかしまあ、よくもそれだけ勢 力下にしちゃったわね。すごいよ」 「たいしたことないですよ。富士見・城下町・城東初雁は、ほぼ同時期に開校した新 設校ですので、何の抵抗もありませんでしたよ。ああ、それから以前姉御を襲った連 中にはナシをつけておきましたんで、二度と襲ってくることはないはずです」  梓とスケ番グループがぞろぞろ道を塞ぐように歩いているので、道行く人々は遠巻 きに奇異な眼差しを向けている。  ……もう、これじゃファントムVIを呼ぶこともできないじゃない……  そこへ慎二が歩み寄ってくる。 「おまえ、新しいスケ番になったんだってなあ」  眉間がぴくりと動いたかと思うと、いきなり蹴りを突き上げて慎二をぶっ倒す梓。 「ふん」  鼻息を荒げ、気絶して動かない慎二を放っておいて、そのまま立ち去る梓。 「さすが! あたい達の姉御だよ。この鬼の沢渡を一撃で倒すなんて。ますます惚れ 込みましたぜ」  梓の後を追ってスケ番達が続く。  ……ああ、もういや。誰か何とかして……  道場。  部員達の前に立ち並ぶスケ番達。 「今日から空手部に入部しました。よろしくお願いします」  梓が紹介する。 「押忍!」  一斉に頭を下げるスケ番達。  部員達は、唖然とした表情でスケ番達を見つめている。 「おいおい。こいつらスケ番グループじゃないか。いいのか?」  山中主将が梓にそっと耳打ちする。 「大丈夫ですよ」 「ほんとうか?」 「た、たぶん……」  実際に、彼女達がちゃんと真面目にクラブ活動に参加してくれるかは未知数だ。他 の部員達とも仲良くやってくれるかもわからない。

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2017年10月19日 (木)

銀河戦記/第五章 独立遊撃艦隊 V

第五章 独立遊撃艦隊

                  V 「司令。全艦、戦闘準備が整いました」  パトリシアが復唱してアレックスに伝える。 「よし、全艦、最大戦闘速度で、戦闘想定宙域に突入せよ。艦載機は母艦に追従」  ついに戦闘訓練が開始された。  艦橋オペレーターが復唱しながら指令を全艦に伝達する。 「了解。全艦、最大戦闘速度で、戦闘想定宙域に突入せよ」 「艦載機、母艦に追従せよ」 「全艦、粒子ビーム砲準備」  次々と矢継ぎ早に指令を出し続けるアレックス。 「これより原子レーザー砲の試射を行う。準旗艦の各艦は発射体制に入れ!」  旗艦サラマンダー以下の準旗艦、ウィンディーネ、ドリアード、シルフィー、ノー ムのハイドライド型高速戦艦改造II式の五隻のみ、原子レーザー砲が装備されている。  その火力性能は未知数であり、後々の実戦のために把握しておく必要がある。  現在、原子レーザー砲の調整担当として、フリード・ケースンが科学技術部主任と して乗艦している。  天才科学者であるフリードにとって、設計図を見ただけでおおよその性能を見極め てしまう。が、製作者が設計者の意図通りに工作するとは限らない。  例えば、砲の材質を粗末なものに落として、浮いた材料費を自分の懐にしまい込み、 挙句に砲を撃った途端に自壊してしまった、ということもよくある話だ。  軍部の腐敗体質というものは、どこの国・時代問わずに発生する。  現場においては常に、自分に与えられた武器の最大性能を引き出すための努力を惜 しんではいけない。  原子レーザー砲の全責任者であるフリードがてきぱきと、機関部員に指令を出して いる。 「原子レーザー砲への回路接続。レーザー発振制御超電導コイルに電力供給開始」 「BEC回路に燃料ペレット注入開始します」  着々と発射準備が進んでいく。  艦隊の目前に、戦闘想定宙域が現れた。  パラキニア星系の最外郭軌道上を浮遊するゲーリンガム小惑星群であった。それら の小惑星を敵艦隊に見立てて、戦闘訓練を実施する予定であった。  アレックスの元へ、 「原子レーザー砲、発射準備完了」  というフリードからの報告が入る。  すかさず砲撃開始の指令を出すアレックス。 「全艦、宙域に突入と同時に想定目標に対し粒子ビーム砲を百二十秒間一斉掃射。艦 載機は直後に突撃開始せよ」 「全艦、粒子ビーム砲、発射!」  全艦が一斉に粒子ビーム砲を発射する。  続いて原子レーザー砲の番である。 「サラマンダー。原子レーザー砲発射!」  小惑星がレーザービームを受けて粉々に砕け散って宇宙空間にその残骸が漂う。 「ほうっ」  という驚きの声が漏れる。  通常の光子ビームではありえないような破壊力をまざまざと見せつけていた。 「各艦の粒子ビーム砲、残存エネルギー有効率以下に降下。再充填開始します。次の 発射まで三分ないし七分を要します」 「艦載機、突撃開始」  小惑星群に突入、飛散した残骸に対して攻撃体制に入ったジミー・カーグ率いる艦 載機の編隊。 「全機へ、これより攻撃を開始する。アタックフォーメーション・TZに展開せよ」 「了解。TZに展開」  艦載機が突撃を開始する。艦載機は小惑星から飛び散った残骸を、敵戦闘機と見立 てて片っ端から攻撃撃破しつつ、小惑星に接近してミサイルを打ち込んでいく。 「ようし、全艦、想定目標にたいして突撃開始。往来撃戦用意。高射砲は射程に入り しだい攻撃開始」  およそ十分が経過した。 「よし、そろそろいいだろう。艦載機を収容しろ。五分後に戦線離脱する」 「了解」 「全機撤収準備。母艦に戻れ」  艦載機発進デッキに一機また一機と艦載機が着艦してくる。  最後にジミー・カーグの隊長機が着艦した。 「艦載機、全機帰還しました」 「よし。艦尾発射管より光子魚雷を連続発射、弾幕を張りつつ戦闘宙域を離脱する。 全艦全速前進!」 「全艦、戦闘宙域より離脱しました」 「戦闘体勢解除だ。巡航速度に戻してパラキニアに向かえ」 「はっ。戦闘体勢解除します」 「巡航速度でパラキニアに向かいます」 「パトリシア。一時間後に各編隊長を作戦分析室に集合させてくれ。今回の作戦報告 と今後の検討をする」 「了解しました」 「それまで、自室にいる。スザンナ、後をたのむ」 「はい」  アレックスは自室に引きこもり、スザンナが代わって指揮官席に座った。艦長は通 常自艦の運営しか任されていないが、旗艦の艦長に限っては戦闘以外の巡航時のみ艦 隊を動かすことができるのだ。その間の旗艦の操艦は副長に替わっている。 「旗艦艦長スザンナ・ベンソン中尉だ。司令官の指令により、これより私が運航の指 揮をとる」  スザンナは指揮官席から伝達した。 「巡航速度を維持。進路そのまま」

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2017年10月18日 (水)

梓の非日常/第二章 スケ番登場

梓の非日常/第二章 スケ番グループ(青竜会)

(六)スケ番登場  道場の窓から中を覗く女達がいた。この学校を取り仕切るいわゆるスケ番グループ という奴だ。 「あいつが、そうか」 「はい。間違いありません」 「よし。あいつが出てきたらやるよ。いいな」 「はい」  女子クラブ棟から制服に着替えて出てくる梓と絵利香。  シャワーを浴びてしっとりと湿った梓の髪が夕日に輝いている。 「信じられない! 男子クラブ棟にシャワー室がないなんて」  言いながら掻き上げる髪から、シャンプーの香りがほのかに漂う。 「シャワー室は、結構場所とるからよ。男子はシャワー室よりも、より多くの部室を 確保したかったみたい」 「それで汗臭い身体で電車やバスなんかに乗られたら、そばにいる乗客は迷惑じゃな い」 「そんなことないわよ。聞いたら、稽古の後は近くの銭湯に入るって言ってたよ」 「ふーん。銭湯か……大衆浴場のことよね。知ってる? 銭湯には、水着を着て入っ ちゃだめなんだぞ、すっぽんぽんで入るんだ」 「それくらい知ってるわよ。梓ちゃん。入った事ないでしょ」 「あるわけないでしょ」 「今度、一緒に入ってみようよ」 「そうだね。日本にいる間に、一度くらいは経験してたほうが後学のためになるか… …」 「そこまでかしこばらなくてもいいと思うけど」 「そうか……あはは」 「ふふふ」  梓が笑うと絵利香もつられて笑う。アメリカ育ちの財閥令嬢の二人には、特別な事 情がない限り銭湯に入る機会はないだろう。  お抱え運転手の石井に迎えに来るように伝えてあるので、ロールス・ロイス・ファ ントムVIを待つべく裏門へ向かう梓達。裏門に通ずる道は広く人通りも少ないので、 ファントムVIが入ってくるのに都合がいいからだ。 「それでね、先輩達の練習見学してたけどさあ、やっぱり稽古相手となると武藤先輩 しかいないみたい。彼、基本がしっかり出来ているのよね。多分小学校の頃からやっ てるんじゃないかな、それともどこかの道場に通っているか」  その時だった。  わらわらと梓達を取り囲むようにスケ番グループが現れたのだ。二人が逃げ出せな いように完全に包囲されている。 「なに?」 「さあ……」  首を傾げる二人だったが……、 「あ、分かった!キルラキルのコスプレでしょ?アニメなのに、ドカーンと書き文字 が入ってて面白かったよ」  と、突拍子に納得する梓。 「ちがう、ちがう!」  絵利香が慌てて訂正する。彼女らを怒らせるような発言は禁句のようだから。 「何言ってんだこいつ」  不良の一人が呆れて言った。 「と、とにかくだ。沢渡と一緒に、あたい達の仲間を病院送りにしたのは、あんただ ね」  リーダー格と思われる人物が強面の表情で言う。 「こいつら、あたしに用があるみたい。絵利香ちゃん、危ないから下がってて」  梓が自分の鞄を手渡しながら囁くように言うと、納得して静かに退く絵利香。  自分には何もできない。せめて邪魔にならないように離れているのが策なのだと、 十分承知しているからだ。  梓は、洗ったばかりでまだ結っていなかった自慢の長い髪を、ポケットにしまって いたリボンで簡単にまとめはじめた。 「さてと……釈明しても無駄のようだから」  といいながら臨戦体制をとり、 「いつでもいいわよ。掛かってくるなら掛かってらっしゃいな」  自分の方から戦いののろしを上げる梓だった。 「わかってるじゃないか。それじゃ、遠慮なくいくよ!」  合図とともにスケ番達が襲ってくる。  最初に飛び掛かって来た相手、その腕を極めて懐に潜り込み、そして見事な一本背 負い。相手はもんどりうって宙を舞って飛んでいく。 「あ! あれは、慎二くんにかけた技だわ。そうか……」  以前梓が絵利香に語ったことがある。 『大勢の人数相手に喧嘩する時はね、まず機先を制して戦う意欲を失わせることが大 事なのよ』  それを実行に移していたのである。 「あんな大技を見せられたら、好んで接近戦を挑もうとするものはいなくなるわ」  確かにスケ番達の攻撃が散発的になっていた。意を決して殴りかかって来ても、腰 が引けているのでまともな有効打がでない。梓は苦もなく近づいてくる相手を倒して いく。  勝負あったかと思われた時だった。 「きゃあ!」  悲鳴があがり、梓が振り向くと絵利香が、一人の女に羽交い締めされていた。 「へへ、こいつがどうなってもいいのかな」  カミソリを頬にあてられている絵利香は、恐怖のあまり声も出せず震えている。 「てめえが動けば、こいつの奇麗なお肌に傷を作ることになるぜ」  まともに戦っては相手にならないと悟ったスケ番達は、絵利香を人質にとる作戦に 出たのである。 「……絵利香ちゃん……」 「形勢逆転だな」 「今までの分、まとめて返させてもらうぜ」  一斉に梓に向かっていく女達。  絵利香を人質に取られ攻撃手段を失った梓は、身体を屈め両腕で顔から胸をブロッ クする態勢に入った。 「待ちな!」  大きな怒声がこだました。思わず立ち止まり、一斉に声のしたほうに振り向く女達。  そこには、絵利香を羽交い締めしていた女の腕を、ねじり上げている慎二がいた。 「いてえ、何すんだよ」 「おまえら、喧嘩するなら正々堂々と戦えよ」  慎二は、腕をねじ上げていた女の背を、どんと押して突き出した。  つんのめるようにして地面に倒れる女。 「沢渡! なんでおまえがここに」 「言っとくが、俺は女とは戦わんからな」  ……よく言うよ。あたしとは決着つけるつもりのくせに…… 「女は女同士、心ゆくまで戦いな。俺はここで見物させてもらうぜ」 「形勢、再びぎゃーくてん。ってところかしら」  態勢を立て直し、再び攻撃の姿勢を取る梓。 「ちぃっ。みんな、かかれ」  再び乱闘がはじまる。  絵利香はどうやら慎二が守ってくれるようだ。  そう判断した梓は、手加減しない。

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2017年10月17日 (火)

銀河戦記/第五章 独立遊撃艦隊 IV

第五章 独立遊撃艦隊

                 IV  サラマンダー艦橋の指揮官席に陣取るアレックスと、そのすぐ側に立つパトリシア。 「全艦。出航準備完了しました」 「よし、行くとするか」 「行きましょう」  目の前の指揮パネルに手を伸ばすアレックスだが、その動きを止めしばし考え込ん でいた。そして、意を決したように、背後に待機しているパトリシアを呼んだ。 「ウィンザー少尉」 「はい」 「君が、出航の指揮をとりたまえ」 「え……? は、はい。わかりました」  一瞬躊躇するパトリシアであるが、上官の命令は絶対である。  立ち上がったアレックスの代わりに指揮官席に腰を降ろし、深呼吸してから指揮パ ネルを操作した。するとスピーカーから戦術コンピューターからの音声が返って来た。 『戦術コンピューター。貴官の姓名・階級・所属・認識番号をどうぞ』 「パトリシア・ウィンザー少尉。独立遊撃艦隊副官。認識番号 A2B3-47201」 『パトリシア・ウィンザー少尉を確認。指揮官コードを入力してください』  アレックスから伝えられた副官に与えられる指揮官コードを入力するパトリシア。 『指揮官コードを確認。パトリシア・ウィンザー少尉を指揮官として認めます。ご命 令をどうぞ』  艦艇を動かすには、オペレーターに指示して発動する場合と、自動運転で各艦の制 御コンピューターにまかせる場合とがあるが、どちらにしても実際に艦を動かすのは、 制御コンピューターである。そして各艦の制御コンピューターを統制運用するのが、 旗艦にある戦術コンピューターなのである。指揮官コードを入力しなければ各艦の制 御コンピューターは作動しないようになっている。つまり指揮官不在では艦は動かな いということである。 「パトリシア・ウィンザー少尉である。少佐の命令により、部隊の指揮をとる。これ より全艦に対し、本作戦に使用する艦隊リモコン・コードを発信する。確認せよ」  発言と同時に指揮パネルを操作するパトリシア。  艦隊リモコン・コードは、艦隊を組んで整然と航行する際に艦と艦の異常接近を回 避したり、往来撃戦で敵味方入り乱れて戦う時に同士討ちを避けるためや、誘導ミサ イルの敵味方識別信号としても入力されるものだ。特に、全艦一斉にワープするには、 ワープタイミングを旗艦に同調させなければ、ワープアウト時に艦同士の衝突が避け られない。いくらドッグファイトを公言していても、まったく使用しないというわけ にはいかないのだ。  正面のパネルスクリーンには各艦の位置を示す赤い光点が点滅している。それが 次々と青い点灯に変わって、各艦が艦隊リモコン・コードを確認したことを現してい た。 「指揮官。全艦、艦隊リモコン・コードを確認。発進準備完了しました」 「よろしい……」  パトリシアは背後の副指揮官席に着席したアレックスに視線を送り、静かに頷いた のを確認して、改めて部隊に指令を発令した。 「では、これより、訓練航海に出発します。全艦、手動モードで微速前進」  すぐさまパトリシアの指令を全艦に伝達するオペレーター。 「全艦、手動モードにおいて微速前進せよ」  その指令は各艦において反復伝達されていた。 「手動モード!」 「微速前進」  一方ゴードンも、副司令官として自分に与えられた全部隊の三分の一相当の配下の 艦隊に対して、準旗艦「ウィンディーネ」上から指令を伝達していた。 「サラマンダー艦隊の初陣だな……君がまとめあげた艦隊のね」  と傍らのレイチェルに話し掛けるゴードン。 「さっきから緊張しっぱなしです」 「まあ、子供を送り出す。母親の気分というところかな」 「はい」 「よし。全艦手動モードにて微速前進」  くしくも彼が口にしたサラマンダー艦隊という呼称は、やがて連邦を恐れさす代名 詞として使われることになるとは、この時点で誰が予知できただろうか。  もう一人の副司令官ガデラ・カインズ大尉は、準旗艦「ドリアード」上にいた。  彼は、再編成前の旧第六部隊からの引き継ぎであった。本来自分が司令になるはず だった部隊に、新参者の十歳年下の司令官がやってきたことで、アレックスに対する 心象はあまりよくなかった。全艦ワープを実行する時以外、艦隊リモコンコードを使 わない作戦に一番最初に反対したのも彼である。しかし、軍規には逆らうことのでき ない根っからの軍人気質で、たとえ年下であれ上官であるアレックスがひとたび命令 を下せば素直に従っていた。  高速軽空母「セイレーン」に坐乗するジェシカ・フランドルは、アレックスの部隊 の航空参謀兼空母攻撃部隊長として艦載機運用の全責任を任されていた。  艦載機発進デッキの映像がモニターに映しだされる。モニターを背に戦闘員達に指 示を出しているジミーの姿があった。 「班長、航空参謀がお呼びです」  オペレーターの声に気付いて振り替えるジミー。 「ああ、これはこれは航空参謀殿。艦載機の発進準備は万端整っております」 「どうです、戦闘員の士気は」 「上々です。皆張り切っております」 「そうですか。戦闘員には新兵も多くいます。十分訓練を重ねて、安心して実戦に臨 めるようにお願いします」 「まかせておいてください」 「よろしくたのみますよ」 「はっ」  ジミーが敬礼したところで、モニターは切り替わり、パトリシアの映像に変わった。 「丁度よかった。こっちの準備は整ったわ。いつでも出られますと司令に伝えて」 「わかりました」 「ああ、パトリシア」 「はい」 「士官学校と違って実弾による戦闘訓練よ。あなたには初めての経験になるわね。頑 張りなさい」 「はい。先輩」  ジェシカは軽くウィンクを送ると通信を切った。  一方のパトリシアは、通信が終了しても、しばし映像の消えたパネルを見つめてい た。感慨深げといった表情だ。  そんなパトリシアを見つめるアレックスも、はじめての戦闘訓練に参加する心境を 察知して、やさしい表情をしていた。 「戦闘訓練座標に到着しました」  航海長のアイリーン・アッカーソンが進言する。 「ようし。いってみるか、パトリシア交代だ」 「はい」  モニターから目を離し、アレックスの方に向き直って明るい表情で答えた。  通常航行ならともかく、訓練とはいえ戦闘指令となると、パトリシアにはまだ無理 である。  席を外してアレックスに譲るパトリシア。 「ごくろうだった。上出来だったよ」  ねぎらいの言葉を交わして指揮官席に座るアレックス。 「アレックス・ランドールである。全艦に発令。これより戦闘訓練を開始する。第一 級戦闘配備だ。艦載機全機発進準備せよ!」  艦内の照明が一斉に警告灯に替わり、けたたましくベルが鳴り響いた。  艦内を右往左往しながら戦闘配備の指令にたいして行動を開始する隊員。居住区か らも待機要員の隊員が飛び出し受け持ちの戦闘装備に向かって駆け出している。  空母セイレーンでもジェシカからの指令直下、全戦闘員がそれぞれの戦闘機に搭乗 して発進準備に入っていた。 「艦載機全機発進」  艦載機発進デッキでは、戦闘機がつぎつぎと発進を開始し、艦隊の周辺に展開をは じめる。  旗艦サラマンダーの艦長スザンナ中尉の元には戦闘配備状況の報告が次々に伝えら れてくる。 「第一砲塔、戦闘準備完了しました」 「高射機関砲。戦闘準備よし」 「艦首ミサイル発射管準備よし」 「機関部、総員の配置を完了しました。戦闘速度三十七宇宙ノットまで可能。原子 レーザービーム砲の出力ゲインは八十五パーセントで、発射タイミングは零・七秒間 隔。連続掃射限界は三分、再充填所要時間は七分です」  スザンナ艦長が立ち上がって報告した。 「司令。旗艦サラマンダー、戦闘準備完了しました」 「よし! そのまま待機せよ」 「はっ」  なおも続々と各艦より戦闘準備完了の報告が続いている。 「さすがに、スザンナだな。戦闘準備完了までたった二分四十五秒だ。規律の行き届 いた良い艦だ。旗艦にふさわしい」 「こちら、ジェシカ・フランドル。艦載機の展開を完了しました。いつでも出撃可能 です」  すべての艦艇からの戦闘配備の報告を受けて、 「全艦、戦闘準備完了しました!」  スザンナ・ベンソンが声高らかに進言する。

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2017年10月16日 (月)

梓の非日常/第二章 黒帯?

梓の非日常/第二章 スケ番グループ(青竜会)

(五)黒帯?  スーパーリンペイの演技が終わった。  絵利香から手渡されたタオルで汗を拭っている梓。他の一年生が息を切らしている のに、呼吸は整っているし道着さえも少しも乱れていない。 「一年生は、ここで少し休憩します」  さすがに壱百零八手の後に、稽古を続ける体力は、一年生にはない。 「今回教えた型は、スーパーリンペイと言って、空手の型でも最高難度と言われてい ます。今日明日で覚えられるものではないし、高校在学中にも覚えられるとも限りま せん。ではどうして教えたのかというと、型とはどういうものかを、身を持って感じ てもらうためです。次回の稽古からは、やさしい基本の型から順次教えていくつもり です。ではしばらくは、端によって先輩方の練習を見学していてください」  梓のもとに下条が歩み寄ってきた。 「ちょっと、真条寺君」 「はい?」 「君は、空手の経験があるのかい?」 「いいえ」 「しかし、君の動きを見ていると鍛練の形跡がある。それも沖縄唐手の鍛練法とみた が」  ……ええ! ちょっと動きを見ただけで、唐手のことを見抜くなんて、この先生た だものじゃないわ…… 「はい。空手の経験はありませんが、合気道と沖縄古武術の稽古をしておりました」 「どうりで、動き方が手慣れていると思ったよ」 「先生こそ、一目で見抜くなんて、よほど研究なされているんですね」 「それなりにね……だてに空手部の顧問をしていないってところかな」  梓が研究といったのは、下条教諭がとても武術をやっているようには思えなかった からだ。武術家というよりも研究家として、顧問を引き受けていると思っていた。 「それと真条寺君」 「はい?」 「次の稽古からは、黒帯絞めてきていいからな」 「どうして、黒帯と?」 「体道、つまり君の身のこなしを見れば判るよ。だいたいからして、道着は着古して いるのに新品の白帯なんておかしいだろ」 「あはは、やっぱり判ります? 本当は道着も新調しようかと思ったんですけど、着 慣れているものでないと十分な動きができないから。新品のものってごわごわしてま すからね。白帯は持っていなかったので、仕方なく新規購入しました」 「頭かくして尻かくさずだな。正直に、合わせ段位でいくらの免状を持ってる?」 「三段です。合気道三段、古武術の方は民間伝承なので正式な段位というものはあり ません」 「そうか……とにかく許すから黒帯絞めてこい」 「どうして黒帯にこだわるんですか? 空手は始めたばかりです。白帯が自然だと思 いますけど」 「それはだなあ……」  と切り出そうとした時、横合いから藤沢が口を挟んだ。 「黒帯絞めた女の子がいれば、新入部員が増えるからですよ」  いつの間にか、梓を取り巻くように部員達が集まって来ていた。口々に質問をあび せかけている。 「へえ、梓ちゃん。黒帯だったんだ」 「どうして隠してたの?」 「え? だってえ……」 「しかし、有段者の女の子が空手部に入ってくれるなんて、願ったりかなったりだよ。 ね、せ・ん・せ・い」 「あのなあ、おまえら。稽古中だろが!」  一年生担当の藤沢はともかく、稽古していたはずの二・三年生までが集まってきて いた。 「この際、固いことは言いっこなしだよ。先生」 「あのですねえ……。空手については無段なんですから、白帯でいいじゃないですか。 まずは級位認定から一歩ずつやりましょうよ」 「そうは言ってもなあ……」  ひとえに黒帯を勧めるのはやはり新入部員勧誘のためだろう。  そもそも梓の空手は喧嘩空手で、正式に習って体得したものではないし、認定試験 も受けていないので、白帯黒帯以前の問題である。 ちなみに段位認定を取得するには、各都道府県空手道連盟公認段位審査会に合格する こと。 3段(少年段位2段)までは、以下のものを体得する必要がある。 基本:外受逆突、手刀受逆突、前蹴逆突 形 :2つの形   全空連指定形1つ/自由形(但し、ピンアン・平安・鉄騎・サンチン・ゲキサイ   を除く、JKF指定型かWKF得意型リストから受審者が選択)計2つの形 組手:自由組手又は約束組手(2回) 少年初段は基本形と全空連指定形1つ 全空連指定形は ●セーパイ(剛柔会) ●サイファ(剛柔会) ●ジオン(松濤館) ●カンクウ大(松濤館) ●セイエンチン(糸東会) ●バッサイダイ(糸東会) ●セイシャン(和道会) ●チントウ(和道会)

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2017年10月15日 (日)

銀河戦記/第五章 独立遊撃艦隊 III

第五章 独立遊撃艦隊

                  III 「しかしいくら最速のエンジンと最強の火器を有していても、艦隊決戦となった時に 困りますよ」  パトリシアが危惧する通り、艦隊リモコンコードは艦隊が一連の運行をするには非 常に大切なシステムである。各艦がリモコンコードを旗艦に同調させることによって、 旗艦に対してそれぞれが常に一定の間隔できれいに並んで進行することができる。進 路変更や退却といった命令もリモコンコードに載せて旗艦から発信すれば、全艦が一 度に整然と行動できるというわけである。リモコンコードによって運行する限り、艦 と艦が接触事故を起こしたり、艦が戦闘宙域の中で作戦行動を誤ったり迷子になった りすることはあり得ないのである。 「まさか……」  パトリシアは口に出しかけた言葉を飲み込んだ。 「そのまさかさ。我が部隊では艦隊リモコンコードは一切使用しない」 「やはり、艦隊ドックファイトをなさるおつもりなんですね。二百隻の部隊で」 「僕は正攻法は苦手でね。奇襲を主戦法としたゲリラ戦が信条だからな」 「連邦の聯合艦隊をやったときのように」 「ああ」 「それ以前に、士官学校の模擬戦でも使われましたわね」 「まあ、何とかやってみるさ。パトリシア、旗艦についたら各編隊長を呼び寄せてく れないか」 「はい」  旗艦サラマンダーに舟艇が到着する。  到着デッキには副長以下の者が待ち受け、アレックスの乗艦を歓迎した。 「お待ち申しておりました」 「うむ……」 「艦長他全員乗艦を完了し配置に就いております」 「よろしい」  一行は艦橋へと歩き始める。  随行のほとんどが、最新鋭戦闘艦サラマンダーの最新設備に目を輝かせることとな る。 「さすがですね。これが廃艦寸前だったとは信じられません」 「艤装などの設備はトリスタニアの技術の最高峰を寄せ集めたものだ。がしかし、そ れだけにそれらを統括運営するコンピューターまでは配慮が行き渡らなかった。【仏 作って魂入れず】というところだな」 「で、コンピューターを再設計しソフトを開発するよりも、まるごと作り直したほう が手間も時間も、そして開発費も掛からないだろうということですか」 「そういうことだな」 「ならばどうして、そんなでくの坊が今こうして我が部隊に?」 「開発設計課のフリード・ケイスンを召喚したのさ」 「あの天才科学者ですか?」 「そうだ。奴に不可能の文字はない」  アレックスが艦橋に入室すると、中にいたものが一斉に振り向いて敬礼し、自分達 の新司令官を出迎えた。新生の艦隊を指揮統合する中枢である旗艦艦橋にふさわしく、 全員が生き生きと活気にあふれた表情をしている。もちろん全員女性士官で士官学校 の同期生達である。 「司令官殿。艦橋勤務の方々は全員女性みたいですね」 「その通りだ。いってみればハーレム状態というところかな」 「ん、もう……」  と呟いたかと思うと、アレックスの腕を軽く抓るパトリシアだった。  アレックスは指揮官席に陣取ると、指揮パネルを操作して、全艦放送を行った。 「独立遊撃部隊司令官、アレックス・ランドール少佐である。部隊は六時間後に訓練 航海に出発する。それまでに全艦万全な体制を整えておくように。以上だ」  旗艦サラマンダーの作戦室。  パトリシアからの伝令によって集まった各編隊長達。 「冗談じゃない。艦隊リモコンコードを使用せずに戦闘をするなんて自殺行為です。 不可能な指令です」  開口一番反対意見を述べたのは、副司令官のガデラ・カインズ大尉であった。  一同はアレックスからの指令を受けて驚愕の色を隠せなかった。  ただアレックスの少尉時代からの配下のものだけは例外だった。すでに艦隊ドック ファイトの訓練と実戦を経験しており、その戦法によってそれぞれ昇進を果たしたか らだ。ゴードン・オニール大尉の他、中尉となった七人の編隊長がそうである。 「訓練もしないうちに不可能とは何事か。現に我々は、ランドール戦法で敵艦隊に大 打撃を与え、こうして生きてここにいるじゃないか」  参謀を務めるゴードンが答えた。 「参謀殿。十数隻での作戦と、二百隻からの大部隊での作戦とではおのずから限度と いうものがあります」 「そうです。あの作戦は、小編隊だったからこそ可能だったのです」 「何をいうか。やりもしないで」 「司令のとられた作戦は、ランドール戦法と命名され、来年度の士官学校では正規の 戦術として講義されることになっているのだ」 「ともかく指令は変えるつもりはない。ゴードン以下のミッドウェイ宙域会戦に参加 した編隊長を中心にして訓練航海に出発する」  実際にランドール戦法を戦い抜いて、戦局を大きく同盟側に有利に導いた英雄達を 前にしては、結局従わざるをえない状況にあった。 「作戦開始時間は、明日の十時。以上だ、解散する」 「はっ」  全員起立して敬礼をしてから退室をはじめた。 「パトリシア」  アレックスは、パトリシアを呼び止めた。 「なにか」 「君に作成してもらった戦闘訓練のマニュアルなんだが、いま少し手を加えたいこと がある。夕食までに仕上げておくからそれを各編隊長に配信しておいてくれないか」 「かしこまりました」 「君の作成したマニュアルはなかなか良いできだよ、感心した」 「おそれいります。しかし、手を加えたいというのは、どこがいけなかったのでしょ うか」 「うん。君の作戦では艦隊リモコンコードで行うぶんには申し分ないのだが、手動 モードで行う際の将兵達の動揺や緊張にたいする配慮が足りない。ミスを犯しても十 分修正ができるような余裕を持たせておかないと、取り返しのきかない事態に陥って しまう」 「申し訳ありません。以後気を付けます」 「艦隊を動かすのはコンピューターではなく人間であることを忘れてはいけないよ」 「ありがとうございました」 「うん。それではまた後で」 「はい」  パトリシアが敬礼して退出した後、手元の書類に目を通すアレックス。

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2017年10月14日 (土)

梓の非日常/第二章 稽古始め

梓の非日常/第二章 スケ番グループ(青竜会)

(四)稽古始め  道場に集まった空手部の面々。  二・三年部員に、真新しい道着を着込んだ一年生。そしてその中に梓の姿も。 「先生、いいですか?」  キャプテンの山中が、下条教諭に確認した。  新学期最初の稽古始めなので、普段は顔を見せることのない顧問教諭である下条も 来ていたのだ。スポーツに事故はつきものだ。空手初心者の一年生もいるので、指導 する先輩達が十分に慣れて、後を任せられると判断出来るまで、顧問教諭は監督指導 する義務を持っている。 「うん。はじめてくれたまえ」 「わかりました」  山中が向き直って、一年生と武藤に指示を出した。 「それじゃあ、一年生は型からはじめよう。武藤」 「はい」 「手本を見せてやれ」 「わかりました」  指名されて前に出る武藤。次期主将ということで、一年の練習の面倒をみることに なっていたようである。 「まずは見ていてください。型がどんなものか手本をお見せします。その後で、みな さんにやってもらいます」 「ではまず、スーパーリンペイ{壱百零八手}・鶏口拳です」 「おいおい。いきなりスーパーリンペイかよ」 「あはは。あいつ、あれしかまともに知らないからな」  ちなみに、リンペイという型があってその上位技がスーパー・リンペイというもの ではない。漢字表記が示すように一つの型であり、剛柔流最高の技でもある。似た型 には東恩流のペッチューリンがある。 「さあ、一年生は武藤にまかせて、二・三年生は一年生の邪魔をしないように自由組 手だ」  山中が両手を広げて、二・三年部員達を道場の反対側に押し遣るようにして、稽古 をはじめる。 「あいよ!」  一年生のグループから少し離れた場所で、組手をはじめる二・三年生達。  蹴りや手刀がぶつかりあう音、道着の擦れ合う音、掛け声、さまざまな音が道場内 にこだまする。  一方の一年生グループは、武藤の型の演技に見入っていた。  一通りの動作手本をゆっくりと確実に行う武藤。しだいに額に汗がにじみ始め、や がてそれは滝のように流れる。  ……へえ。空手の型のことは、あまり判らないけど、あの動きなかなかのもんじゃ ない。さすがクラブで一番だとかいうだけの実力はありそうね……  武藤の動きをじっと見つめていた梓が感心していた。  やがて型をおえた武藤が、深呼吸し呼吸を整えてから、一年生達に向き直って言っ た。 「それでは、一年生は横に一列に並んでください」  武藤の指示に従って並んでいく一年生達。 「僕が型の一挙一動をゆっくり示しますので、ラジオ体操のようにみなさん後から、 真似をしてついてきてください」 「はーい」  明るい返事が道場内にこだまする。無骨なクラブなら『押忍!』と答えるところな のであろうが、ここのクラブは親睦的な雰囲気が漂っている。  流儀最高の型である、壱百零八手。空手を始めたばかりの一年生がそう簡単に扱え る型であるはずがない。みんなぎくしゃくして動きにもなっていない。ただ一人を除 いては。  梓は、武藤の動きに合わせて一挙一動見事なまでについてきていた。とてもはじめ てのこととは思えない完璧な動きだった。  下条教諭は、そんな梓の動作を食い入るように見つめていた。自分の担任する女子 生徒が空手部に入ったというので一目置いていたのである。  ……ほう……真条寺君は、最初の手本を見ただけで、体道のおよそを理解したよう だな。動きがなめらかでまるで淀みがない。少しもバランスを崩さないのは、足腰の 鍛練が十分にできているからだ。さすがに女だてらに空手部に入るだけあるな……し かも、ただ鍛練したというだけではなさそうだ……

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お友達の庭で「大桶ライド」に乗るアバター

インターポット

この「大桶ライド」欲しかったのです。

一所懸命に足をチョコマカ動かして転がしている姿が可愛い(*´▽`*)

次回登場の際には絶対にgetしてみせるぞ(''◇'')ゞ


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2017年10月13日 (金)

銀河戦記/第五章 独立遊撃艦隊 II - 宇宙(そら)へ

第五章 独立遊撃艦隊

                  II  その翌日。  宇宙空港より、独立遊撃部隊の将兵達を乗せた舟艇が一斉に発進し、大気圏上空へ 向かっていた。  大気圏を離脱した舟艇の前に、軌道上に待機する二百隻の艦艇が現れた。巡航艦と 駆逐艦を主力にして、軽ミサイル艦、高速軽空母などが従っている。 「あれが、我々の乗り込む旗艦サラマンダーだ」  アレックスは舟艇の窓に映る艦影を指差した。  そこには、艦船の中に伝説上の火の精霊であるサラマンダーの絵を配した艦が一隻、 部隊の中心ほどの位置に浮かんでいた。ハイドライド型高速戦艦改造II式、独立遊撃 艦隊旗艦「サラマンダー」である。それを取り囲むように「ウィンディーネ」「ドリ アード」「シルフィー」「ノーム」と、水木風土を象徴する精霊の名を与えられた同 型艦四隻が追従していた。それぞれにゴードン・オニール大尉、ガデラ・カインズ大 尉、レナード・エステル中尉、カール・マルセド中尉が指揮官として乗艦することに なっている。カインズ大尉を除いて、ミッドウェイ宙域会戦でアレックスの部下だっ た有能なる指揮官達である。  長期の宇宙航行には重力と宇宙線の問題が避けて通れない。共和国同盟軍は女性士 官が全体の三割に達するので、彼女達の健康を損なわないように居住ブロックを設置 して、宇宙線を通さない特殊隔壁と重力場の確保がなされている。女性士官はこの居 住ブロック内にある、第一艦橋・通信管制指令室・病院などの施設勤務が原則で、無 重力の機関部や戦闘ブロックへの立ち入り禁止。すべてにおいて子供を産み育てる女 性が優先となっており、男性には冷遇されている。無重力の影響でどんなに骨格から カルシウムが溶出し筋肉が削げ落ちても、おちんちんさえ立てば男としての本分はま っとうできるが、妊娠・出産という命がけの仕事がある女性はそうはいかないからで ある。  重力を発生させるには、船体の一部に回転モーメントを与えればよい。回転軸と進 行方向を一致させれば船体は安定はするのだが、見た目が悪いのと戦闘艦には不利益 となるので、亀の甲羅状の円盤型とし、高速性能を発揮できるようにする。(亀の甲 羅とはいったが、本来は空中を滑空する翼竜がデザインのもとである)  ただこの場合問題になるのは、円盤部分のトルクに引きずられて船体自体も回って しまうという障害がおきる。まさかヘリコプターのようなローターを取り付けるわけ にいかないので、どうするか。そこで、円盤部分の内周・外周を逆回転させることに よって、トルクを正逆打ち消し合わせるデザインにした。円盤部は二層構造になって おり、外層は宇宙線の遮断と隔壁の役目を果たし、超流体ヘリウムに浮かぶように内 層の居住ブロックがゆっくりと回転している。  なおこの円盤部は、本体から切り離して補助エンジンにより独力航行が可能。  そんなサラマンダーの雄姿を目にして、パトリシアが確認した。 「あれは、ハイドライド型高速戦艦改造II式ですね」  博識なパトリシアだけあって一目で艦種をあててみせた。 「そうだ」 「改造II式は五隻試作されましたが、エンジン制御コンピューターの設計ミスが判明 して、すべて廃艦になる予定ではなかったのですか?」 「あえてその五隻をこっちに回してもらったのだよ。改造II式のエンジンは、性能的 にはずば抜けている反面、その制御がかなりシビアで、コンピューターの設計をやり 直すよりも、新型艦を設計したほうが資金と時間の節約になるということで、廃艦に されることになったものだが」 「よく手当てできましたね」 「まあな、レイチェルのおかげさ。補給編成部局に友達がいるらしくて、手を回して もらった」 「ふーん。レイチェルさんがね……にしても大丈夫でしょうかねえ」 「制御コンピューターの設計ミスといっても、主に艦隊リモコンコードに関する部分 であって、艦を単体で動かす分には支障は起きない。何といってもエンジンの性能は ずば抜けて素晴らしいんだ。戦艦クラスでは連邦・同盟の中でも最高速だといわれる。 もったいないじゃないか。それより何よりも、搭載している原子レーザービーム砲 だ」  同盟の各艦に搭載される主力兵器は、光子ビーム砲・イオンプラズマ砲・プロトン 砲などがあるが、粒子をビーム状にして放出することから総称して粒子ビーム砲と呼 ばれている。それぞれに特徴があり、駆逐艦などの小型艦に搭載される低出力ながら も長射程の光子ビーム砲、戦艦搭載の高出力だが短射程の陽子砲、その中間に位置す るイオンプラズマ砲である。  原子レーザービーム砲は、ハイドライド型高速戦艦改造II式の五隻の同型艦のみに 搭載された最新型のビーム砲である。ある種の原子を絶対零度に近い極超低温状態に さらした時、原子の固有振動の波長と位相が均一にそろって、いわゆるレーザー状態 を呈してくる現象を利用している。レーザーとしての性質を持つに至った原子をビー ム状に増幅収束して射出する兵器である。  通常のレーザーがフォトン(光子)であるのにたいし、重粒子である原子を利用す るためにエネルギー効果値は桁違いに大きく、その破壊力はすさまじい。なおかつ レーザー特有のエネルギー減衰ロスが小さく拡散しないので、光子ビーム砲並みの長 射程を誇っている。通常の光子ビームを跳ね返すビームシールドを貫いて敵艦を破壊 するために開発されたものである。  原子レーザーを可能にする、極超低温状態にある原子がとる特異現象は、地球歴二 十世紀前半において、インドの物理学者ボーズの理論をもとにアインシュタインが予 言したもので、両者の名をとってBEC(ボーズ・アインシュタイン凝縮)と呼ばれ ており、1997年1月27日、MIT(マサチューセッツ工科大学)において最初 のレーザー発振実験に成功している。

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豆の木のベッドでお休み中!

インターポット

豆の木ベッドでお休み中(* ̄。 ̄*)。。。oO

遊具が沢山あるので、
なかなかベッドインしている場面に出会わないのだが……。

しかし、目を大きく開けながらお休みするのね(^^♪

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キャーあ!なんで私ばかりなのぉ~!!(その2)

インターポット

闘牛に追われるメインアバターと、
そのそばでニンジントラップに掛かっている女の子。

闘牛トラップですが、サブアバターはあまり掛からないのに、
メインアバターは頻繁に掛かります。

ほとんど他の方の庭に来訪しているのですが、
帰ってみれば牛に追われまくる。
休む暇がないですなあ……。

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きゃあ~!追いかけてくるよオ~( ;∀;)……その1

インターポット

ぜんまい闘牛に追いかけられて逃げ回る少女。

【アバターが遊ぶ庭】を目指している者としては、
追いかけられてチョコマカ逃げ回る姿は可愛らしい。
見ていて楽しく感じられる一場面ということです。

ただ惜しむらくは、闘牛トラップは発生頻度が低いです。
明らかに接触しているのに素通りとか……。
作物ニンジントラップだと、跨いだり直近を通ったりすると、
ほぼ100%トラップが発生するのにね。

やはり動き回るものと、固定されているものとの違いかな?

その2に続く

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2017年10月12日 (木)

梓の非日常/第二章 女子テニス部

梓の非日常/第二章 スケ番グループ(青竜会)

(三)女子テニス部  三日後の放課後。  女子運動部の更衣室兼部室が立ち並ぶ女子クラブ棟に現れた梓と絵利香。  女子テニス部というプレートが掲げられた部屋の前で立ち止まる二人。 「ここみたいね」  ノックして中に入る二人。  そこには着替え中の女子テニス部員達がたむろしていた。 「あなたは?」  見知らぬ来訪者に不審げをあらわにする部員達。 「空手部の新入部員の真条寺梓と申します。こちらで着替えをしてくれというので、 尋ねてきました。着替えさせていただきませんか?」 「ああ、聞いているわ。構わないわよ」  奥から三年生とおぼしき人物が出てくる。 「わたしは、キャプテンの木杉陽子。ロッカーはそこの左端のを使って頂戴、空手部 からロッカーと部室使用料をもらってるから遠慮しなくていいわ。一応ネームプレー ト入れといたからね」 「はい。ありがとうございます」  名前を確認して扉を開ける梓。 「あれ! あたしの名前が」  梓の隣のロッカーに篠崎というネームプレートが刺さっていた。 「ああ、それね。一人はマネージャーだから着替える必要ないけど、荷物とかあるか ら一応二人分用意しておいてくれってね」 「う……。いつのまにマネージャーにされちゃったのかしら」 「あはは、いいじゃない」 「まさかあなたが勝手にやったんじゃないでしょねえ」 「あのねえ……あたしが、絵利香ちゃんの嫌がることすると思う?」 「ん……とすると、あのキャプテンかしらね」 「だと思うよ。絵利香ちゃん、きれいだからね。一人でも多くの女の子を入れたかっ たんじゃないかな」 「そちらのあなたは確か入学式の時、新入生代表で答辞を読んだ子でしょ」 「はい。篠崎絵利香です」 「ということは首席入学ということね」 「はい。でも梓ちゃんも次席なんですよ」 「ほう……ふーん……」  二人をためつすがめつ見つめるキャプテン。  ……この二人が今注目の新入生か。どちらも甲乙つけがたい美貌と成績。しかもア メリカからの帰国子女ということ……空手部の山中君が、二人を天使のような美少女 と形容していたけど、ほんとに可愛い子だわ……うちにもぜひ欲しい…… 「ねえ。二人とも、テニス部に入らない?」 「テニス部に?」  ……そうよ。女子テニス部には華が必要なのよ。彼女達を慕って多くの部員が集ま るわ。試合になれば観客席の人々は、コートを駆け巡る美貌の少女を目で追い掛け、 そしてため息をつくのよ……  しばし夢想にふけるキャプテン。 「テニス部だったら、中学でやってた絵利香ちゃんね」 「そうか。篠崎さんはテニスやってたんだ。なら決まりね」 「勝手に決められても困りますけど……それより梓ちゃん。そろそろ集合時間よ」 「あ、そうか」  制服を脱ぎ、着替えをはじめる梓。 「ま、いいわ。まだ入学したばかりだからね。じっくり考えて、答えを出して頂戴」 「うーん……」 「一応鍵を渡しておくわ。空手部とは部活の日時が合わないから」  キャプテンは、予備鍵と記された札の付いた鍵を、梓に手渡した。 「それと着替える時はしっかりと戸や窓を閉めてカーテンを引いてからにしてね。覗 きをする男の子がいるから」 「この学校には、覗きをする不届き者がいるんだ」 「そうなのよ、注意してね。そういえば二人は女子中学から来たんだっけ。男の子に は免疫がないんだ……と、思ったけど、空手部に入るくらいだから、そうでもないか ……交際してる?」 「男の子とは、話しをしたこともありません。稽古で男性武道家と手合わせをお願い している程度です」 「そうか。なら安心ね」  ……そうよ。華となる女の子は、清廉潔白でなければいけないものね……  道着の帯をきりりと締め、 「よし、これでいい」  襟をぴしっと直しながら、姿勢を正す梓。 「うん、やっぱりこれを着ると身が引き締まるわ」 「わたしとしては、スコート姿の方が似合ってると思うけどね」  絵利香がつぶやくと、 「そうでしょ、そうでしょ。絶対スコートの方が似合っているよね」  と、即座にキャプテンが切り替えしてくる。  どうやら二人をテニス部に強引に入部させようという魂胆がありありだった。  長居しているとその強引さに負けそうになりそうだ。 「もう……。行きます」  ロッカーの扉をぱたんと閉めて、憤慨ぎみに歩きだす。 「あ、待ってよ」  置いてけぼりにされそうになって、あわてて追い掛ける絵利香。 「それじゃ、失礼します」

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2017年10月11日 (水)

銀河戦記/第五章 独立遊撃艦隊 I

第五章 独立遊撃艦隊

                  I  レイチェルの献身とも思える仕事ぶりによって、第十七艦隊所属独立遊撃部隊はと うとう再編成を完了して、部隊として正式に始動することとなった。  軌道上には二百隻からなる艦隊が集結し、続々と乗組員が搭乗してやがて出動する ことになるその日のために訓練が繰り返されていた。それぞれの艦内では整備が進み、 艤装は着々とはかどっていた。その陣頭指揮には第十七艦隊より派遣されてきた、ガ デラ・カインズ大尉が任についていた。大尉はフランク・ガードナー中佐の配下で、 信頼のおける優秀な将校ということで、アレックスも安心して任せられた。  正式に遊撃部隊の司令官となったアレックスは、部隊の参謀として同窓のゴード ン・オニール大尉を迎えた。彼も二階級特進で少尉から大尉になっていた。  艦隊司令部に一室を与えられたアレックスは、ゴードンを呼び寄せて部隊の今後に ついて協議することにした。レイチェルも一緒である。 「ところで司令官殿。我が部隊は独立部隊として、艦隊とは独立した作戦任務を与え られるそうですね。本当ですか?」  レイチェルが、アレックスに敬意を払いながら尋ねた。 「ああ、本当だ。何せ急造の司令官だからな、他の部隊と連携させる作戦では士気統 制がとれない、他の部隊司令官達から反対があったそうだ」 「簡単に昇進した人間にたいする嫉妬でしょうか」 「まあな。偶然の幸運に恵まれて昇進した司令官との共同作戦にはついていけないだ ろうさ」 「そうですね。何せ、司令官として艦隊を運用した実績がまるでないのですから。敬 遠されてもしかたがないでしょう。くやしいですが」 「まあ、これは艦隊の士気に大いに関わる問題だからな。独立部隊ということにして おけば、作戦に失敗しても一部隊を失うだけだ」 「まるで信用されていませんのね」 「はは、そんなところだな」  ドアがノックされた。  三人はドアの方に振り向いた。 「入りたまえ」  ドアが開き、見慣れた女性士官が入室してきた。  こつこつと軍靴を響かせ毅然とした姿勢で歩み寄ってくる。  やがてアレックスの手前に立ち止まり、踵を合わせ鳴らして敬礼し、自己申告した。 「パトリシア・ウィンザー少尉。本日付けをもって、ランドール司令の副官として着 任いたしました」 「パトリシア!」  アレックスとゴードンはほとんど同時に叫んでいた。  しばし茫然としていた二人にたいして、 「よろしくお願いします」  といってパトリシアはにこりと微笑んだ。 「何だ、君が副官に選ばれたのか。偶然だな」 「偶然もなにも、俺達と違って彼女は首席卒業で特待進級の少尉。独立遊撃部隊の旗 艦艦橋勤務を志望すれば、当然副官に選ばれるのは当然じゃないか」 「悪かったな、中の下で。そうか……席次順で配属希望先が優先的に決められるんだ ったな」 「こうやって三人でいると、士官学校の模擬戦のことを思い出しますね」 「そういえば、そうだな。おっと、紹介するのを忘れるところだった」  アレックスは、レイチェルをパトリシアに紹介した。 「こちらは情報参謀の、レイチェル・ウィング少尉。僕の副官を務めてもらってい る」 「レイチェルです。よろしく」 「そしてパトリシア・ウィンザー少尉。同じく副官だけど、こちらは軍令部から派遣 された正式な副官。そして僕の婚約者でもある」 「パトリシアです。よろしくお願いします」  二人は、握手した。 「なあ、物は相談なんだけど」  ゴードンが切り出した。 「なんだい」 「レイチェルを俺の副官にくれないか」 「レイチェルを?」 「パトリシアは、士官学校を首席卒業するほどの才媛だし、実績も模擬戦の時で知っ ての通りだよな。レイチェルもまた、独立遊撃部隊の再編成の仕事を見てもわかるよ うに、その優秀さは保証済みだよ。何も優秀な副官を二人も独り占めすることはない だろう」 「別に独り占めしているつもりはないが……」 「そこでだ、パトリシアは君の奥さんだし、君のそばにいたくて配属希望で副官とし てやってきたのを、無理に引き離すのは可哀想だ。だから、レイチェルのほうをね」 「私達、まだ正式には結婚していません」 「とはいっても、事実上の夫婦であるには違いなかろう」 「そうですが……」  とアレックスのほうを伺って、彼が首を縦にするのを確認してから、 「はい」  とパトリシアは答えた。 「とにかく、婚約者にとっては、素敵な女性が常時そばについていては、気が散って 仕事にならんだろう」 「こじつけじゃないのか? レイチェルの獲得のための」 「そうかも知れんが、俺は彼女が欲しい」  といってレイチェルを抱き寄せるようにした。 「わかったよ。レイチェル次第ということにしよう。どうだい、レイチェル」  アレックスはレイチェルに二者選択の回答を求めた。 「あたしなら構いませんけれども。パトリシアが副官になるなら、あたしは必要ない と思います。名残惜しい気はしますけれど……」 「決まりだ!」  ゴードンは小躍りして喜んだ。 「そういうわけで、レイチェル。今日までご苦労だった、感謝する。これからはゴー ドンの副官としてその才能を発揮してくれないか」 「はい。今までありがとうございました」 「ま、同じ部隊の参謀だから、いつでも会えるからさ」 「とにかく、二人ともよろしく頼む」  アレックスは手を差し伸べた。 「はい」  レイチェルとパトリシアは同時に答えてその手に自分の手を重ねた。 「さて、さっそくで悪いのだが、今回の作戦について協議したい」 「いきなりですか?」 「そうなんだな、これが」

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2017年10月10日 (火)

梓の非日常/第二章 自己紹介だよ

梓の非日常/第二章 スケ番グループ(青竜会)

(二)自己紹介だよ 「さあ、さあ。二人とも立ってないで、座って、座って」 「ここに座って。新しい制服が汚れないようにちゃんときれいに磨いてあるからね」  部員達がすすめる椅子に腰を降ろす梓と絵利香。 「ええと、とにかく。初会合ミーティングをはじめるぞ」  山中主将は、部員達を見回しながら、 「うん。二・三年は揃っているようだな。手始めに自己紹介からいこうか。新人は最 後にしよう。おまえからやれ」  といってそばにいた部員を指差す。  しようがねえなあという表情をみせてゆっくりと立ち上がる。 「三年、副主将の城之内啓二だ。得意技は後ろ回し蹴り」 「三年、熊谷健司、得意技は前蹴り」 「三年、田中宏。得意技は……」 「真空跳び膝蹴りだろ」  誰かがちゃちゃを入れる。 「ちがーう。と、とにかく近接戦闘ならなんでもありだ」 「二年、木田孝司。得意技は正拳上段突き」 「二年、武藤剛。得意技はとくにない」  と立ち上がったのは、入部の受け付けをしていて、今日の会合を確認にきた部員だ。 「こいつが、二年生ながらも部で一番強いんだ。得意技がないんじゃなくて、その時 点時点で最良の技がかけられるオールマイティーなやつだ。次期キャプテン候補だ な」  一番強いと聞いて梓の眉間がぴくりと動いた。おそらく機会があれば相手してもら おうと考えているに違いない。果たして自分の腕前が通じるか、武藤と名乗った相手 をじっと洞察している。  絵利香にも梓の心情が伝わっているみたいで、心配そうに梓と武藤を交互に見やっ ていた。  自己紹介は続いているが、すでに梓は全然聞いていずに武藤を見つめたままだ。 「先輩達の自己紹介は一通り終わったな。次ぎは新人いこうか。端から立って出身校 を含めて自己紹介しろ。得意技は言わなくていいぞ。一応名簿に記録するからな」  キャプテンからみて右端にいた新人が立ち上がった。 「白鳥順平です。城西中学からきました」 「橘敬太です。富士見中学です」 「甲斐野誠。初雁中学です」  そして梓の番になった。 「真条寺梓です。出身校は……言わなくちゃだめ?」 「できれば。大会に出場する時に聞かれることがありますので」 「ん……笑わないでよ」 「笑いません」 「東京にある聖マリアナ女学院中等部」 「じょ、女学院?」 「あー。やっぱり笑った!」  手を前に伸ばして部員達を指差して憤慨する梓。 「笑ってませんよ。意外だったから驚いているだけです」 「同じ事だと思うけど」 「と、とにかく自己紹介はこれでおしまいです」  全員の自己紹介が終わり、一同を見渡して山中が言った。 「それでは、次回は三日後に初練習をするので、ここで着替えて道場に集まってく れ」 「あの、梓ちゃんの着替えはどうするんですか?」  絵利香が部室を見回しながら質問した。男子ばかりのこの部室で着替えはできない と疑問に思ったからだ。  それに山中が答えた。 「はい。真条寺さんの着替えは、隣の女子クラブ棟にある女子テニス部の部室を使っ てください。テニス部に交渉して許可を得ていますので」 「そうなんだ。一人だけ部外者が着替えるというのも、恐縮しちゃうもんだけど…… まあ、仕方ないか」 「ところで、道着はみんな持っているだろうな」 「はい。持ってますよ」 「真条寺さんは?」 「もちろん持っています。大丈夫」 「なら、結構。ようし、今日はこれで解散しよう」  もし道着を持っていなければ、体育着で空手の型を中心に練習することになるだろ う。  すっと立ち上がる梓と絵利香。他の男子部員は動かない。レディーファーストなの か梓達を先に送り出す所存なのであろう。 「それでは、お先に失礼します」  ドアノブに手を掛け扉を開けようとした梓だったが、 「最後に一言、さっきのようなポルノ雑誌ですけど。読むなとは言いませんが、それ を部室に持ってくるのはやめて下さいね。なんか自分が見られているようで、いやな んです。お願いします」  と念押しに忠告した。 「わ、わかりました」  しばしうなだれる武藤であった。  山中主将が部員に向き直って言った。 「おい。おまえらもわかっただろうな」 「もちろんです」 「理解してくださって、ありがとうございます」 「いえいえ。当然のことですよ。それじゃ、三日後に初練習がありますので」 「結構です」  山中が確認する。 「はい。三日後ですね。その日に、また会いましょう」  軽く手を振って退室する梓と、 「さよなら、みなさん」  一礼して部室を出て扉を閉める絵利香。  二人が出ていって、ほっと胸をなで降ろす郷田。 「しかし、美少女二人と一緒にいると、心臓に悪いな」 「ポルノ雑誌なんか持ち込むからですよ。おかげでこちらまで疑惑の眼差しをむけら れたんですからね。たまらないっすよ」 「す、すまん。もう二度と持ち込まないよ」 「とうぜんです!」  部員全員から叱責されてしょげかえる郷田。自分が蒔いた種とはいえ、面目丸 潰れといったところである。

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2017年10月 9日 (月)

銀河戦記/第四章 情報参謀レイチェル VII

第四章 情報参謀レイチェル

                  VII  翌日、アレックスが起きて満員でごったがえすような食堂にいくと、レイチェルは 同室のジェシカや同僚の女性士官達とグループで集まって楽しそうに談笑していた。 「あ、司令。ここが空いてますよ」  と士官学校同窓のジェシカが、手を振ってアレックスを呼び寄せて、レイチェルの 隣を指し示した。 「今、パトリシアのこと話していたんですよ」 「パトリシア?」  といいながら席に腰を降ろした。レイチェルを横目でちらりと見ると、彼女は微笑 みながらこちらを見つめている。 「はい。彼女、士官学校を首席で卒業したそうです」  パトリシアはジェシカと寄宿舎を同一にした後輩である。だから直接パトリシアか ら連絡が届いても不思議ではない。 「ふーん。首席か……、やはりというところだね」  卒業のことは知っているが、首席ということは聞かされていなかった。遠慮しての ことだろうが、普段から首席を通していたので納得する。 「よかったですね」 「何が、よいんだ」 「だって、首席ということは、部隊配属希望が一番乗りで選ばれるわけですよね」 「そりゃ、そうだが」 「パトリシアは、もちろんここへの配属を希望したそうです。当然、首席だから希望 通りここへ来れるはずです。また一緒に生活できるじゃないですか」 「なにいってるんだ」 「だめ、だめ。あなたとパトリシアのことはばれているんですから。模擬戦の後、二 人で旅行に出たこともみんな知っていますよ。夫婦として一緒に生活してるくせに」 「ちぇっ。ジェシカにかかったら、形無しだな」  彼女達はアレックスを魚にするように笑った。レイチェルも屈託なく彼女達と一緒 に笑っている。  その時艦内放送が鳴った。 『遅番の食事交替まで後十分です』 「あら、もうそんな時間なの。じゃあ、レイチェル、また後でね」  といって彼女達は、遅番と食事交替するためにそれぞれの部署へと戻っていった。  レイチェルは、アレックスの副官なので早番・遅番の交替勤務というものはなく、 規定の時間内に済ませればよいので、そのまま残って食事を続けることができた。 「ところでいい情報を、つかみましたわ」  レイチェルが口を開いた。昨夜のことはまるで意識にないといった表情であった。 こういうことは意外と女性の方が、覚めているのかもしれないし、アレックスにして もそうであってくれたほうがありがたい。いつまでも糸を引くような関係では後々に 問題を残すだろう。アレックスにはパトリシアがいるし、レイチェルもそのことをよ く理解してくれているのであろう。 「いい情報?」  レイチェルは特務科情報処理課に勤務する情報将校である。 「ええ、試作のハイドライド型高速戦艦改造II式が廃艦になるそうです」 「例のあの高速戦艦が?」 「はい。ここに改造II式の仕様書をお持ちしました」 「どれ、拝見させてくれ……」 「どうぞ」  手渡された仕様書を読み終えて、アレックスは腕組みしながらしばらく考えていた が、やがて目を輝かせて言った。 「レイチェル、この高速戦艦を何とか僕の部隊に持ってくることは出来ないだろう か」 「出来ないことはないでしょうけど……難しいと思いますよ。廃艦が決定しているの ですから」 「何としてでも欲しい。申請書を出してくれないか」 「わかりました。なんとか、努力してみます」 「よろしく、たのむ」  技術部開発設計課を訪れたアレックスは、親友であるフリード・ケイスンに面接し た。 「よお、久しぶりだな。司令官になったそうだね、おめでとう」 「ありがとう」 「で、司令官殿が開発設計課に何用かな」 「君に特殊ミサイルの設計をやってもらいたくてね」 「特殊ミサイル?」 「ここに概要の資料を持ってきている」  といって、手書きの簡単な設計図と仕様説明書、そして特殊ミサイルを使用する作 戦企画書を手渡した。フリードは企画書に目を通して驚いたように尋ねた。 「おいおい。本気でこの作戦を実行するつもりか?」 「もちろん」 「だが、この作戦目標だが……その強大なる防衛力から、攻略には少なくとも三個艦 隊以上の兵力が必要だと言われている。今までにも、准将や少将クラスの提督が何度 か攻略を試みて、散々の体で逃げかえっているのだぞ。君は諸提督から煙たがれて独 立艦隊に追いやられている身じゃないか。この目標に対する任務を与えられるには、 君自信が提督のクラスに昇進しない限り無理だろう。少佐になったばかりの君が作戦 を立てるのは時期相応ではないのか」 「確かにそうかも知れない。しかし、今から作戦の準備をしておいてもいいんじゃな いかな。たとえそれを実行するのが十年先の話しであったとしてもね」 「まったく君は気が速すぎるな」 「用意周到と言ってほしいね」 「まあいい、要件は飲んだ。で、見返りは頂けるのかな」 「パトリシアをくれ、という要求以外なら考慮しよう」 「誰が人妻なんかいるもんか」 「あ、それから……君は、第十七艦隊独立遊撃部隊の技術要員として転属が決定した から……そこんとこ、よろしくな」 「なんだとお! ちょっと、待て」 「辞令は、たぶん明日あたり届くと思う」 「何てことしてくれたんだよ。俺が無重力アレルギーなのを知ってんだろが。だから 艦隊勤務にならない技術部開発設計課を選んだんだ」 「おまえのは、ただの宇宙船酔いだろ。大丈夫だ、旗艦サラマンダーには重力居住ブ ロックがあるから、船酔い程度なら軽減できるさ」 「しかし、なんで俺がおまえと同行しなければならないんだ。ミサイルの開発設計な ら地上でできるじゃないか」 「そうもいかない。特殊ミサイルを実際に使用する前に、数度の演習が必要だしその 度に改良を重ねて万全を期したい。つまり改良設計のために君が必要というわけさ」 「こうなりゃ、見返りをたっぷりもらわんといかんな」 「それにだ……君の持っている次元誘導ミサイルの開発援助をしてもいい」 「次元誘導ミサイル?」 「確か、ミサイル一発の開発生産に戦艦三十隻相当分の予算がかかるんだったよな」 「あ、ああ……極超短距離のワープ誘導システムがね……」 「そうだろうな。一飛び一光年飛べる戦艦で、目の前一メートル先にワープするに等 しいことをするんだからな」 「まあね。ミサイル一発作るより、実物戦艦三十隻のほうが実益があるとかで、どこ からも製作依頼がこない」 「そりゃそうだろう。戦艦なら撃沈されない限り何度でも戦闘に参加できる。たった 一発限りの消耗品に戦艦三十隻分の予算をつぎ込むことなど、具の骨頂というもの だ」 「だが、作戦次第では、絶対に三十隻以上の働きをできるはずなのだ」 「たとえば?」 「あの強大堅固なタルシエン要塞を内部から簡単に破壊できる。反物質転換炉ないし は貯蔵システムにぶち込んでやれば、一発で木っ端微塵にできる。でなくても動力炉、 メイン中枢コンピューター、中央管制センターなどの主要部分を攻撃すれば、数発の ミサイルで機能停止して簡単に落ちる」 「それは無理だな。同盟軍中枢部は要塞を破壊するのではなくて、攻略して手に入れ ることを考えているから、主要部分への攻撃は許されていない」  翌日。 「ベンソン課長……」 「おお、ケイスン。転属の挨拶か」 「はい。しかし……ベンソン課長。私の転属をよくお認めになられましたね。今開発 中の機動戦艦の設計中で一人でも多くの人手が欲しいはずなのに」 「ああ……その機動戦艦なんだが……。実は、ランドール少佐の部隊に配属が決まっ ているのだ」 「ちょっと待ってください。機動戦艦は宇宙戦艦じゃありませんよ。大気圏内防衛専 用の空中戦艦です。アレックス、いえランドール少佐には必要ないと思いますけど。 何せ彼は最前線ですから」 「わしにもわからんが、わしの機動戦艦の仕様を読んだランドールがぜひ自分の部隊 に配属させたいと上層部に申請して受理されたんだ。何せ、開発は始まってはいたが、 配属先が決まらず宙に浮いたままだったからな。すんなり決まってしまった」 「しかし、なんで空中戦艦なんか……」 「輸送艦に積んで占領地の掃討作戦にでも使用するつもりかもな」 「無理ですよ。こんな巨大な機動戦艦を積んで大気圏突破できる輸送艦なんてありま せん」 「そういわれればそうだな。ともかく。わしとしては、配属先が決定して喜んでいる。 だから君の転属依頼があった時でも、断り切れなくてね。ま、君の担当のメインエン ジン部門はほぼ完了しているから」  壁に貼られた機動戦艦の設計概要図を見つめているベンソン。 「それから君には、少佐が旗艦として乗艦するハイドライド型高速戦艦改造II式のエ ンジンの改良を手掛けてもらうそうだ」 「ハイドライド型高速戦艦改造II式……? それって廃艦に決定したんじゃ……」 「いや、こいつも少佐の部隊に配属されたそうだ」 「一体何を考えているんだ。アレックスは……」 「ああ、それから。旗艦サラマンダーに乗艦したら、娘のスザンナに渡してもらいた いものがあるのだが、頼んでもいいかな」 「サラマンダー?」 「知らなかったのか。ハイドライド型高速戦艦改造II式のうちの一隻がサラマンダー と命名されて、ランドール君の旗艦に決まったのだよ。その旗艦の艦長になったのが、 スザンナというわけさ」 「そうでしたか。しかし、旗艦の艦長とは素晴らしいじゃないですか」 「まあな。娘はミッドウェイ宙域会戦はもちろんのこと、士官学校での模擬戦闘大会 当時から、ずっとランドール君の乗艦の艦長やってるんじゃよ。絶大なる信頼関係と いうところかな」  第四章 了

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2017年10月 8日 (日)

梓の非日常/第二章 空手部へようこそ

梓の非日常/第二章 スケ番グループ(青竜会)

(一)空手部へようこそ  空手部部室。  空手部員達が、一所懸命に部室の掃除をしている。  ロッカーを開けて中を整理しているもの。窓拭きするもの、雑巾掛けするもの、そ れぞれ分担しながら掃除を続けている。 「おい、こら。こんなもん。剥がしとけ!」  壁に張られたグラビアヌード写真を指差しながら、主将の山中大志がどなっている。 「いいか。可愛い女の子が入部してくるんだ。部室が汚いのに驚いて逃げ出されない ように、隅々まできれいにしておくんだ。塵一つあっちゃならねえ」 「しかし、本当にその女の子来るんでしょうねえ」 「間違いありませんよ。今日最初の部会があること伝えるために、今朝彼女に会って、 念のため確認しときましたから」 「本当に可愛いのか? 武藤。空手なんかはじめようなんて女の子だ。実はぶすだっ たなんてのは、反則だぞ」 「大丈夫ですよ。飛び切りの美少女ですから」  武藤と呼ばれたのは、入部受け付けをやっていたあの部員だった。 「ならいいが……」  校舎から各クラブの部室があるクラブ棟への渡り廊下を歩いている梓と絵利香。 「来ました、来ましたよ。可愛い女の子が二人こちらへ歩いてきます」  外を監視していた部員が叫んだ。 「二人? どういうことだ。女子部員はひとりだろ」 「ああ。たぶんもう一人は付き添いですよ。男ばかりの場所に、女の子一人で行かせ るのは心配だからって、彼女の友達が一緒に来ることになってます」  武藤が答える。 「俺達、狼ってことかあ?」 「充分狼だと思いますけど」  新入一年生の白鳥順平が、床に落ちていた無修正のポルノ雑誌を拾い上げて、 「こんなんありましたけど。高校生がこんなもん学校に持ってきていいんでしょう か」 「そ、それは!」 「はい、郷田先輩。ちゃんと隠しておいてくださいね」  といって手渡す。 「う、うう。わかった」 「ごめんください」  部室の外から、可愛い声が聞こえてくる。 「きた!」  一斉にドアの方に視線を集中させる部員達。  こほん!  と咳払いしてドアのところへいく木田孝司。  そっと静かにドアを開けると、目の前に女子生徒が二人。梓と絵利香が微笑んで立 っている。 「入部希望の真条寺梓です。よろしくお願いします」 「付き添いの篠崎絵利香です」 「すみません。どうしてもついていくときかなくて」 「ははは、構いませんよ。女の子は多いほうが華やかでいい。そうだ、せっかくだか らマネージャーになりませんか」 「そうだよ、絵利香ちゃん。なりなよ」 「え? そんな急に言われても」 「よし、決定! 篠崎絵利香、マネージャーになります」 「勝手に決めないでよ! もう」 「いつでもいいですよ。気がむいたらということで」 「クラブがクラブですから、怪我したりするかもしれないですよね。梓は女の子です から、やっぱり同性のわたしが一緒にいたほうがいいと思うんです。だから今後も、 一応付き添いさせてください」 「まあ確かに一理ありますね。いいですよ」 「無理言って申し訳ありません」 「さあ、中にはいって。むさ苦しいところですけど」 「失礼します」  部室内を物珍しそうに物色する梓。 「へえ。結構、きれいになってるわね。きっと、あたし達が来る前に掃除してたの よ」 「ちょ、ちょっと。梓ちゃん。失礼よ」 「だって、ほら。よくある話しじゃん。男子の部室ってさあ。汚くて臭くて、たとえ ばロッカー開けたりすると、エッチな本なんか出てくるんだよ。たとえばこのロッ カー」  と、ロッカーに手を当てている。 「あ!」  部員達が息を飲んだ。そこは郷田剛のロッカーである。無修正のポルノ雑誌が入 っているはずである。  その時ロッカーが開いて、ポルノ雑誌がこぼれ落ちる。 「あ、梓ちゃん。ひとのロッカー勝手に開けちゃだめじゃない」 「開けないよ。ひとりでに開いちゃったんだよ。ちゃんと閉まっていなかったんだ ね」  といいながら、雑誌を拾い上げ、ぱらぱらとページをめくる梓だが、次第に頬を赤 らめていく。  冷や汗流している郷田剛。他の者もどうなるかと、固唾を飲んで見守っている。  絵利香にそっと耳打ちする梓。 「ほんとに入ってたよ」 「あ、梓ちゃん」 「はい。絵利香ちゃん」  といいながらポルノ雑誌を手渡す。 「そんなもんわたしに、渡さないでよ」  あわてて梓に突き返す絵利香。 「ねえ、絵利香ちゃん。男の子って、みんなこういうの持ってるのかな?」 「さ、さあ。わたしには、何ともいえないわ。男の子と付き合ったことないから」 「あたしだって、そうよ」  二人のひそひそ話しは続いている。その声が聞こえるのか、部員達は視線をずらし て梓達を見ないようにしている。 「でも、ほら。あなたは昔……」 「だめよ。昔の記憶はないの。あるのはイメージだけ」 「そうだったわね……」 「記憶はないけど、見舞いに行った時、その人の部屋にあったわよ。こういうの」 「やっぱりねえ……」  と言って部員達を見回す二人。  二人と視線が合うと首を横に振って否定する部員、心あたりのある者は天井を仰い でいる。  梓は、黙ってロッカーにポルノ雑誌を戻しながら、 「別に、こういうもの読むなとは言わないけど……学校に持ってくるものじゃないよ。 先生に見つかったら停学か退学になっちゃうわよ。郷田先輩」  貼られたネームプレートを読み上げ、ぱたんと扉を閉める。 「す、すまん……」  名指しされて頭を垂れて謝る郷田。

部室は常に清潔に保ち、グラビアヌードイラストなどは貼らないようにしましょう。

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2017年10月 7日 (土)

銀河戦記/第四章 情報参謀レイチェル VI

第四章 情報参謀レイチェル

VI  数日後。  アレックスは本格的に部隊の再編成に大車輪で取り組みはじめた。情報処理が専門 のレイチェルという優秀な副官を得て、仕事は順調かつスピーディーにはかどってい た。  そんな女性士官の軍服を着込んでアレックスの副官としてかいがいしく働くレイチ ェルの姿を横目でちらちらと眺めながらも、その美しい容姿に思わず変な気分になら ざるを得ない自分自身を異常かなと思ったりもした。タイトスカートの裾からのぞく 白くて細い足に思わずどきりとすることが、何度あることか。 「紅茶はいかがですか?」 「ああ、頼む」  レイチェルはアレックスから依頼される仕事をてきぱきとこなしながらも、個人的 なアレックスの身の回りのせわもしてくれていた。司令官として与えられたアレック スの個室の掃除や、衣類の洗濯といったこまごまなことも率先してやってくれていた。 女性特有のこまやかな心配りを忘れない、副官として有能な人物であった。  アレックスは彼女をその他の女性士官達と区別することなく扱った。女子更衣室や 浴室、トイレの使用まですべてに渡ってである。無論女性士官達は彼女が性転換者で あることも知らずに、仕事を共にしていることになるのだが。実際彼女と同室になっ たジェシカ・フランドル少尉などは、時々衣類などの取り替えっこをするくらいの大 の仲良しになるほどで、それほど完璧に女性になりきっていたのである。いや、なり きっていたという表現は彼女にたいして失礼であろう。アレックスとレイチェル本人 にとっては、女性そのものに相違なかったのである。第一、軍籍上は女性として登録 されている以上、そうするよりになかったのではあるが。  ある日、アレックスはレイチェルが副官としてよく尽くしてくれるので、その労を ねぎらう意味で、二人とも非番となる明日にデートへ誘うことにした。ジュビロとの 面談の後にデートらしきものはしたが、正式なデートはまだであった。 「え? あたしとですか」 「うん。どうかな」  実は誘いの言葉をかけたものの、冷や汗ものであったのだ。形成手術を施して身体 は女性として生まれ変わり、言葉使いや態度は完全に成りきっているものの、心の中 までは覗くことはできない。精神的にも男性を受け入れることのできる真の女性であ るかどうかがわからなかったからだ。一部の性転換者の中には、男でいるのがいやだ からとか、女性の素敵なドレスを自由に着てみたいからとか、そういった理由で手術 を受ける者もいると聞く。当然異性としての男性には全く興味を持たない、自分本意 だけの完全な女性になりきっていない者もいるわけだ。  しかし、レイチェルは、身も心も完璧な女性であった。それはアレックスも幼少の 頃から気付いていたことだ。レイチェルは昔から女っぽい性格をしていた通り、異性 のアレックスから誘いを受けて、その心情を包み隠さず表情にさらけ出すようにして 喜んだ。 「うれしいわ。あなたが誘ってくださるなんて」 「いつもよくやってくれるから、感謝をこめてね」 「じゃあ。ホテルのプールに泳ぎにいきません?」 「プール?」 「ええ。その後はホテルで一緒にディナーをいただくの」  アレックスは、いいのかな……と当惑した。プールに行くとなればもちろん水着に なることになる。わざわざ水着になることを希望したということは、自分の身体に自 身を持っているということになるわけだ。そんな彼女の水着姿を見たい気もする。  レイチェルが勤務を終えて、女子更衣室で着替えをしていると、ジェシカが話し掛 けてきた。 「ねえ、レイチェル。明日非番でしょ。一緒にどこか遊びにいかない?」 「ごめんね。先約があるの」 「え。誰なの、相手は」 「内緒」 「わかったあ。少佐とね、彼も非番だもの」 「想像におまかせするわ」  といってレイチェルは微笑んだ。 「やっぱり、そうなのね。いいなあ……『ただの幼馴染みよ』とか言っておきながら、 結局仲良くやってるのね」 「言っときますけど、あたし達は健全な関係ですから。第一少佐には、れっきとした 婚約者がいるんですからね」 「それくらいは、あたしも知っているわ。パトリシアよ。あたしの後輩なんだから」  翌日、レイチェルは下着姿で鏡台に座って簡単に化粧を済ませると、白い木綿のド レスを着込んだ。デートだというのに化粧を簡単にしたのはどうせプールにつけば化 粧を落とさねばならないし、念入りな化粧はディナーの前に施すつもりだった。その ディナーの時に着るためのドレスもすでに別に用意してある。  今回のデートの場所にあえてホテルのプールを選んだのにはわけがあった。奇麗な 身体になった自分自身をアレックスに見て欲しかったのである。ごく自然な場所でと なると、水着になれるプールしかない。  待ち合わせの場所にそろそろ行かなければならない時間になっていた。鏡に自分の 身体をもう一度映して、衣類の乱れなどの最後のチェックをしてから、レイチェルは 部屋を出た。  女子寮から歩いて五分ほどの所に、小さな公園があった。その入り口近くの噴水の そばのベンチが待ち合わせ場所であった。  約束の時刻丁度にアレックスは、エアカーで迎えに来た。 「さすがにアレックスね。時間厳守だわ」 「その荷物は?」  プールに行くにしては、大きな荷物に疑問を抱いたアレックスが尋ねた。 「水着と、ディナー用のドレスよ」  男性と違って女性は衣装には気を遣うものだ。ホテルで食事となれば、それなりの 衣装が必要だ。 「ああ、そうか……じゃあ、行こうか。女子寮の連中に見つからないうちに」 「そうね」  レイチェル自身にしてみれば、別に見つかっても構わないと思っていたが、アレッ クスには部隊運営にかかわる重大問題事であった。上官と副官との情事なんて取りだ たされれば、士気にかかわるし、世間の週刊誌が放っておかないだろう。なによりパ トリシアに言い訳がつかない。  アレックスはレイチェルの荷物を抱えると、エアカーの後部座席にしまった。 「じゃあ、行こうか」 「はい」  レイチェルが助手席に乗り込み、アレックスはエアカーを走らせた。  プールサイドに置かれたビーチベッドに横たわっているアレックス。女性の着替え は時間がかかるものであり、先にプールサイドに来てレイチェルのおでましを待つこ とにした。果たして彼女はどんな水着を来てくるかというのが、アレックスの感心事 であった。ワンピースかビキニか。目を閉じレイチェルの水着姿を想像していた。 「お待たせ」  そこへ黒い生地に縁に金ラインの入ったビキニの水着姿でレイチェルは現れた。  はじめて見るレイチェルの水着姿。身体のラインがくっきりと手に取るように見え ている。  まさしく完全な女性の肢体が目の前にあった。  何せ自分からプールに行こうと言い出した彼女である。身体のラインには相当の自 信があったのだろう。 「きれいだよ」  開口一番、誉め言葉を述べるアレックス。 「どっちが?」  レイチェルが尋ねたのは、きれいなのは水着か、自身の身体のことか、と確認した のである。 「もちろん両方さ」 「ありがとう」  といって隣のビーチベッドに横たわるレイチェル。  数時間後、ホテルのレストランに二人はいた。  ピンク系のドレスを身に纏い、しとやかに料理を口に運ぶ仕草は、まさしく女性の それであった。  身体的・精神的なものに加えて、立居振舞に関しても完璧な女性であった。

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2017年10月 6日 (金)

梓の非日常/第一章 母娘の絆

梓の非日常/第一章 生まれ変わり

(九)母娘の絆  帰国当時の回想シーンが終わって現在に戻る。  郊外を走るファントムVI。 「もう三年になるのね」  絵利香が感慨深げにつぶやく。 「あれ以来、本物の女になるため血を流すような特訓を」  拳を握り締める梓。 「してないじゃない。元々から女の子なんだから。最初から女の子らしい仕草とかち ゃんと身についていたもの」 「そうでした」 「まあ……最初の頃はとまどいもしたけど、もうすっかり違和感なくなっちゃったも のね。二人だけの思い出とかちゃんと覚えているから、会話が途切れることもなかっ たし。そんなことより、道場に通って柔道やら空手やら始めちゃうんだもの。わたし はついていけなかったんだから、寂しかったのよ」 「ごめんね。でも、武道をはじめたのはそれなりの理由もあるんだよね」 「理由?」 「白井さんから聞いたんだけど、あたしの車のブレーキが効かなくなるように細工さ れていたというし、あの暴走トラックも盗難車で、犯人は未だに捕らえられていな い」 「何者かが、梓ちゃんの命を狙っていたと?」 「さすがに勘がいいわね。そうなのよ、あたしがニューヨークからこっちに来たその 日に連続して事故が起きてる。これって、単に偶然が重なっただけだと思う?」 「思えないわね」 「暴走トラックの前で足がすくんで動けなくなるようじゃ、命がいくつあっても足り ないわ。今後もいつ暴漢に襲われるとも限らないし、鋭敏な反射神経と運動能力、窮 地に際しても動じない精神力を養うために、自分の身を守るために麗香さんに頼み込 んで、護身術をはじめたの。麗香さんは護身術のエキスパートだったから」 「ふうん……そうだったの。でも入学式の時も、その次の日の時も、わざわざ自分の 方から渦中に飛び込んでいったんじゃなくて? 確かに以前にも増して女の子らしく はなっているけど、護身術を覚えてからは好戦的になっちゃったのよね。これって男 の心がまだ色濃く残っているってことかしら」 「そ、そうなのかな……」 「ねえ、約束してくれない。男の子にからまれたりしたら、まず逃げることを先に考 えてね。女の子なんだから、恥じることなんかないのよ。戦う時はどうしても逃げら れなくなった時だけにして」 「努力します」 「もう……」  ファントムVIが真条寺邸に到着し、車寄せに入る。  いつものように麗香以下のメイド達がずらりと立ち並んで、屋敷の主人である梓の 帰宅を出迎えている。執事を除いて総勢三十名に及ぶ女性だけの出迎えである。 「そうねえ。確かに女だけの城って感じね……共学校に行きたくなるのも無理ない か」  絵利香が呟く。実際には調理師、庭師や営繕士など、縁の下の力持ちである男性も 大勢いるのであるが、梓の前には表立っては出てこない。 「お帰りなさいませ、お嬢さま」 「ただいま」 「あら、今日は絵利香さまもご一緒ですか」 「うん。泊まるから用意しておいて」 「かしこまりました」 「今晩も、おせわになります。麗香さん」 「いえ、お気がねなく。ごゆっくりしていってください」  とその時、梓の膝のガーゼに麗香が気がついた。 「あ! お嬢さま、その足はどうなされたのですか」 「ああ、学校で転んで擦りむいたの。たいしたことないわ。心配しないで」 「そうですか……?」  梓の喧嘩好きなことを知っている麗香は、なおも不審そうだったが、心配するなと 言われたからには仕方がない。  しかしながらも、 「お嬢さまが、お怪我なされた!?」  というニュースはたちどころに屋敷中の使用人達の耳に届くところとなった。  玄関から続く吹き抜けのホールには、大勢の使用人達が梓を囲むという状況をうん だ。メイドはもちろんのこと、お抱えの料理人、美容師、営繕士、庭師達などが一斉 に駆けつけてきたのである。 「お嬢さま、大丈夫ですか?」  口々に叫んで、梓の傷を心配している。 「み、みんな。心配してくれてありがとう。たいしたことないから、お仕事に戻って ね」 「ほんとに大丈夫ですか?」  と、なおも気遣いながらも使用人達はそれぞれの持ち場に戻っていく。 「ほんっと梓ちゃんて、使用人の誰からも愛され、大切にされているのよね」 「まあね……さて、お母さんに会わなくちゃ」 「首を長くして待ってるでしょうね」  二人と麗香が向かった先は執務室である。 「麗香さん、お願い」  言いながらソファーに腰掛ける梓と絵利香。 「かしこまりました」  麗香が、窓際にある大きな机の上にあるコンソールを操作すると、二人が腰掛けて いるソファーの前の壁にあるパネルスクリーンに映像が映しだされた。  そこに現れたのは、同じようにソファーに腰掛けている梓の母親の渚であった。そ の後ろには渚の世話役についている恵美子が待機している。 『ただいま、お母さん』 『お帰り、梓』  一同が対峙しているのは、この屋敷とニューヨークのブロンクス本宅とをホットラ インで結んでいるテレビ電話であった。  渚は特別な用事がない限り、ブロンクス本宅にいる。愛娘を日本に残しているのは 心苦しいが、真条寺財閥グループの執務を取り仕切るためには仕方のないことであっ た。  梓は、その日にあった出来事を逐一報告するのが、毎日欠かさず続けられている日 課となっていた。  渚は、梓が幼少の頃から保育園や小学校でその日にあったことや感じた事を話させ ていたし、梓自身も一言漏らさず聞いてくれ相談にのってくれる母親と対話すること が楽しかったのだ。ここで特筆すべきことは、それが梓だけでなくいつも一緒にいる 絵利香に対しても行われていたことである。渚は、しつけに関しては、梓と絵利香を 分け隔てたことがなかった。自分の監視下にあるかぎり、娘と他人の子供とを区別し ないのが、渚の教育方針だ。絵利香に軽い虫歯を見つけた時などは、本人がぐずった り泣き出したりしても、なだめたりすかしたりして、徹底的な虫歯治療と滅菌処理を 施したものだった。おかげで絵利香には現在虫歯一本ないどころか、梓と同じく完全 無欠の健康歯肉を保っている。  そんなスキンシップ的な日常が今日まで続いているわけで、離れ離れになっても母 娘そして渚と絵利香との深い絆は変わることなく存続していることをしめしていた。 『それで、入学式はどうだった?』 『入学式は退屈だったわ。あくびの連発よ』 『そうね。日本の儀典というのは堅苦しいから。でも絵利香ちゃんは、首席入学で新 入生代表として答辞を述べたんでしょ』 『答辞といっても、学校側が用意してくれたのを、読み上げただけです』 『ふん! 漢字を読むスピードがもう少し早ければ、もっといい点が取れてたのにね ……代わりに答辞を読んだのはあたしだったのよ』  絵利香が誉められているのに気分を害している風の梓。それに気づいて渚が言葉を つなげる。 『はいはい。梓ちゃんは次席だったわね。えらいわよ』 『ふふん』  鼻を鳴らして納得する梓。 『それはそうと、聞いてくださいよ。梓ちゃんたら、空手部に入っちゃったんですよ。 どう思います?』 『空手部?』 『そうなんですよ。無骨な男達ばかりいる格闘技のクラブですよ』 『梓ちゃんらしいわね』 『ねえ。いいでしょ、お母さん』 『そうねえ……。あなたがどうしてもというのなら反対はしない。ただし、条件はわ かっているわね』 『わかってるわよ。ピアノの稽古を絶やさないことでしょ。それと鍵盤を叩く手指を 壊さないように無茶はしないこと』 『そうよ。いかにピアノの才能があったとしても、毎日の稽古があってのこそ。あな たの音感的才能を失いたくないの』 『梓ちゃん。母親の愛情は無碍にするものじゃないわよ』 『もう……絵利香ちゃんは、お母さんの味方だもんね』 『あなたのこと、心配してるのよ』  ちょっとした口論になりそうなところを渚がやんわりとさとした。 『二人とも、喧嘩しないで仲良くね』 『喧嘩するわけありませんわ』 『そうそう』  渚のそばに立っていた恵美子が耳打ちする。 『ごめんなさい。二人とも時間がきたみたい』 『そっかあ、もうそんな時間か』  梓が残念そうに答えた。こちらは夕刻であるがあちらは朝方、仕事をはじめる時間 がきたというわけである。 『二人ともしっかりお勉強するのですよ』 『はーい』  二人が同時に元気よく返事をする。 『麗香さん。二人の事お願いします』 『かしこまりました』 『それじゃ、元気でね』 『うん。また明日ね』  スクリーンの映像が消えた。 第一章 了

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す、吸い込まれる~!トラップだ~!!(その2)

インターポット

で、アバターがこんなにちいさくなっちゃうんですね。

橋の上に見えるゴミみたいなのが小人のアバターです。

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す、吸い込まれる~!トラップだ~!!(その1)

インターポット

西遊記で金角銀角が持ってる瓢箪、紅葫蘆 ( べにひさご )
名前を呼ばれて返事をすると、
中に吸い込まれてしまうというもの。

さてさて、この瓢箪もアバターが近づくと、
まずはブルブルと震えます。

名前を呼ばれたか返事をしたかは分かりませんが……。
アバターが高く舞い上がって吸い込まれてしまいます。

ブービートラップですね。

(その2)に続く

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2017年10月 5日 (木)

銀河戦記/第四章 情報参謀レイチェル V

第四章 情報参謀レイチェル

                  V  数日後。  ダウンタウンの界隈を散策するアレックスとレイチェルの姿があった。  レイチェルはワンピースに身を包んでアレックスの腕に自分の腕をからませて、ま るで恋人風気分といった感じであった。 「彼はこの建物の地下にいるはずです」 「地下への入り口は?」 「裏手から入れるようになっています」  二人はビル脇の狭い通路から裏手に回った。 「しかし汚いなあ」  足元には空き缶などのごみが散乱し、壁には雑多なペイントの落書きで埋め尽くさ れていた。 「裏側はスラム街ですからね」 「君はこういうところに頻繁に出入りしているのか?」 「まさかあ……特別な時だけですよ」 「だろうね」  中へ入った途端、背後の扉が閉められて、逃げられないよう扉の前に塞がるように 男達が立ちはだかった。  見た目にも柄の悪い、危ない雰囲気の連中が、二人を取り囲んだ。  その群れをかき分けるようにして、見知った顔の男が現れた。軍のシステムにハッ カーしてきたあの男、ジュビロ・カービンである。 「よく来たな英雄さん。ところで俺からの贈り物は届いたかね」 「ああ。さすがだな、あのカウンタープログラムを看破してくるとはな」 「俺の腕前を試したようだが、あれくらいのカウンターで神出鬼没のこの俺を排除し ようと考えるのは甘いな」  ジュビロに案内されて奥まった場所にあるテーブルに着席する一同。 「君の腕前には感服した」 「だてにハッカーを何年もやってはいないさ。さて……要件を聞こうか」 「レイチェルから大まかな事情は聞いていると思うが、君のそのハッカーの技量を貸 してほしい」 「で、目標は?」 「これが企画書だ。目標はそこに記されている通りだ」  アレックスは企画書を差し出した。  ジュビロは企画書を受け取り、内容を確認して驚いて言った。 「こ、これは……!」  なおも企画書を熟読を続けるジュビロ。  やがてポトリと企画書をテーブルの上に放り出して尋ねた。 「内容は了解した。しかし、本気でやるつもりか」 「もちろんだ。どうだ。ハッカーとしてのその腕前を存分に発揮してみたいと思わな いか?」 「確かに。この目標にアクセスできるならば、やってみる価値はある」 「まだ誰一人として侵入した者がいないそうですわね」 「そりゃそうさ。完全に外部から遮断された独立コンピューター系が支配しているか らな」 「そうでしたの?」 「あたしにも読ませてよ」  仲間の女性の一人が企画書を読もうとしたが、 「だめだ!」  と叫んでジュビロが企画書を取り上げた。 「なにすんのよ」  いきまいて怒りだす女性。 「決まっているじゃないか。この計画は、極秘理に進行させなければ意味が無い。な にせ何十年かかるかわからない計画だ。直接の当事者以外知られてはいけないのさ。 どこから計画が洩れるか判らないからな。おまえもハッカーの一人ならわかるだろ う」 「そりゃそうだけど……」  しぶしぶながらも納得して同意する女性。 「彼が危険を冒してまで、直接この俺にアクセスしてきたのもそのせいだ。な、そう だろう、アレックス君」 「まあね……」  アレックスは、さすがに切れる男だと察知した。企画書に一度目を通しただけで、 遠大な計画の全容を把握している。 「だが、どうやって目標に接触するつもりだ。この計画を実行するには、目標に直接 アクセスする必要がある。いくらこの俺でもそれは不可能だ。現状ではどうにもなら んぞ」 「今はまだ、不可能だが、いずれそれを可能にしてみせる」 「どうやって? どう考えても今のおまえには実現できないだろう」 「今はまだ何とも言えない。今後の情勢によって臨機応変というか、多分に未知数が 多過ぎる。ともかく、この計画は同盟の将来を左右する重大な作戦となることは確か だ」 「ジュビロ、受けてたってやってやろうじゃない。何だかんだ言ってこの人はあたし 達に挑戦しているのよ」 「そうだ。俺達のハッカーの腕を試そうとしている」 「同盟の将来がどうなろうと、俺達の知ったこっちゃない。だが、不可能といわれる 巨大なシステムに対してチャレンジするのは、ハッカーの夢だ。いいだろう、依頼を 受けようじゃないか」  ジュビロは立ち上がって、承諾の意志を表すように握手を求めて来た。それに応じ て同じく立ち上がって手を差し出すアレックス。やさぐれに囲まれているこういった 状況の中で、手を塞がれる握手に応じることは、相手を完全に信用するという意志表 示でもある。 「ともかく目標の情報が極端に不足している。皆目といっていい。情報はそっちの方 で手当してくれるのだろうな」 「それは軍の情報部に働きかけてみよう。そういった方面は軍のほうが専門だからな。 軍が収集した情報を、君達に直接流せないが、好きなだけハックして取り出すがい い」 「ハックして取り出せだと? 言ってくれるぜ」 「君達なら、雑作ないことだろう」 「それはそうだが……。司令官殿がこんなことして、事態が表面化すればスパイ容疑 で軍法会議にかけられるのではないか」 「それは間違いないだろう。だが、同盟が存続してこその軍隊であり、司令官の地位 があるのだからな」 「まあいい。ともかく協力すると約束しよう」 「ジュビロ、ありがとうございます」 「とはいっても、目標のシステムのOSすら判明していない。その概要を把握しカウ ンタープログラムをかいくぐって侵入する手だてを確立するのには、それなりの周到 なる準備が必要だ。軍の情報部の活躍次第というところだが、解明には軍部の総力を あげても数年掛かるかもしれないがな」  数時間して、地下室から出てくる二人。 「さて、まだ時間があるな」 「せっかく二人で出てきたのですから。これからデートってのはいかがでしょう」  といって微笑みながらアレックスの腕に、そのか細い腕をからませた。 「そうか……、それもいいかもしれないな」 「うふふ……」  ダウンタウンのビル街の谷間を、寄り添って歩きだす二人であった。

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千両箱積み過ぎじゃないの?

インターポット

すぐそばの蔵から千両箱を運び出してどこへ持っていくのかな?

しかし、女の子の細腕でちょっと欲張り過ぎじゃないかな。

なんて、アバターとの語らいが楽しい。

だからね……。

浮世絵大桶ライド欲しかったのに……。

大八車は期間中で4個取れたのに、鶴も取れなかったよ。


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2017年10月 4日 (水)

梓の非日常/第一章 思い出

梓の非日常/第一章 生まれ変わり

(八)思い出  それは突然のことだった。 「あ! あ! ああ!」  と、絵利香を指差しながら叫びはじめたのだった。 「絵利香だ。そうだよ、絵利香ちゃんだ」  今まで英語しか話せなかった梓が、絵利香を思い出したのを境として、急に日本語 を喋りだしたのだ。 「な、なになに。急に」 「篠崎絵利香。篠崎重工社長令嬢の絵利香だあ」 「なんだ、ちゃんと日本語話せるじゃない。しかもわたしのことも、思い出してくれ たのね」  梓が日本語を話せるようになったのには、絵利香というキーワードが働いたことに よる。そもそも梓と絵利香は、共に生まれも育ちもニューヨークの為、二人とも日本 語は話せなかった。小学校に上がりスベリニアン寄宿舎での生活が始まり、共に寮生 活をする梓の世話役の麗香が日本語を二人に教えはじめた。才媛の麗香の事、教え方 も要領を得て、二人はめきめきと上達した。麗香の日本語の教え方は、梓と絵利香と を対話形式で質疑応答させるという手法だった。小学校を卒業する頃には、日常会話 では何不自由なく話せるようになっていたが、二人の日本語のレベルは同等であり、 常に相手の存在があったといえる。  梓が、絵利香のことを思い出すと同時に、日本語を話せるようになった背景には、 共に日本語を学んだことがあったようだ。  梓の部屋に入る二人。 「でも、梓が交通事故にあったと聞いた時は驚いたわ。病院に見舞いにいっても重体 だとかで、面会謝絶だったし」 「そ、そうだね」 「うーん。顔に傷がつかなったのは、不幸中の幸いかしら。 「うん」 「その男の人は、死んだと聞いたけど」 「うん。病院を退院するときにはじめて聞かされて、帰る途中でその人の遺影を拝ま せてもらった」 「その人に感謝しなくちゃいけないわよ」 「そ、そうだね……」  絵利香、何か考えている風に首を傾げている。  突然絵利香が、梓をじっと見つめた。思わず顔をそむける梓。 「あなた、梓じゃないわね」  いきなり核心をついてくる絵利香。梓を指差し、鋭い表情で睨んでいる。 「確かに身体は梓みたいだけど。雰囲気がまるで違うのよ。あなた、一体なにものな の」  じっとにらみ合いが続く。 「渚さまは、六年間ほとんど離れて暮らしていたから気づかないのよ。でもね、わた しは寝食を共にしたジュニアスクール時代も含めて、三歳の頃からずっと一緒だった んですからね。あなたの心変わりが手に取るようにわかるのよ」  梓は、記憶の糸を手繰り寄せ、絵利香の言うことが正しいことを確認した。 「そうだね。絵利香ちゃんには、隠しきれないね。正直に言うよ」  梓は、静かに語りはじめた。自分の過去である男のことと、交通事故によって自分 に起きた不可思議な事実を。 「ふうん……。交通事故のあと、あなたの過去であるその男の子の意識が、梓の身体 に乗り移ったというわけね」 「自分もしばらく信じられなかった。でも事実なんだ」 「じゃあ、本来の梓の意識はどうなったのかしら」 「わからないよ。でもさ、その梓の記憶もちゃんと残っているんだ。絵利香ちゃんの こともちゃんと覚えている」  じっと、梓の身体を見つめていた絵利香だったが、突然切り出した。 「ちょっと、あなたのこと試させてくれない」 「試すって?」 「あなたの梓としての記憶がどこまで正しいか確認したいの」 「わかった。何でも聞いてよ。すぐには思い出せないかもしれないけど」 「じゃあ、最初はね。私達が最初に紹介されたのはどこだったかしら」 「……うん。あたしの三歳の誕生パーティ会場に篠崎のおじさまに連れられてきたの が最初だったかな」 「そうね。その時以来の仲なのよね。じゃあ、次ね。保育園での運動会の競争でわた しとあなた、どっちが速かった?」 「ええと、絵利香の方。その頃は走るのが苦手だった」 「ピアノのお稽古は、どっちが先にはじめた?」 「絵利香」 「そう。でも上達の速かったのは梓の方だったわね」 「五歳のクリスマスにわたしがプレゼントしたものはなに?」 「五歳というと……パンダのぬいぐるみだったかな。今も大切に持ってるよ」 「ピンポン……うん、じゃあ。ここからは難しくなるわよ」 「う、うん。なんでも聞いて」 『あなたが生まれた街はどこかしら? 英語で答えてくれるかしら』  絵利香がいきなり英語を使って尋ねてきた。  しかし、英語は梓の本来の国語であるから、何の抵抗もなく受け答えできる。 『ニューヨーク・マンハッタンの総合病院で生まれた。だから、あたしの国籍はアメ リカになってるわ。もちろんお母さんもアメリカ。自宅はブロンクスにあるわ』 『ふふん。それでは、小学校はどこに通っていた?』 『ええと……セントマリー学園』 『担任の先生の名前は?』 『サリア・マクエロイ先生』 『どこに住んでいたかしら』 『五番街の女子留学生専門のスベリニアン寄宿舎。寮長はフランス語も堪能なキデ ィー・アーネストさん。あたしと絵利香にフランス語を教えてくれた』 『では、小学生のわたし達が親許を離れて寮生活をはじめた理由は?』 『真条寺家のしきたりで、六歳を境に親元を離れて生活することが決まっていたの。 といっても絵利香ちゃんが一緒に暮らすことになったけど。それは大目に見てくれ た』 『はは、わたしが梓ちゃんと離れたくないってぐずったのよね。それでは次の質問。 その寮にはもう一人大切な人が一緒に住んでいたわよね』 『竜崎麗香さん。コロンビア大学に通いながら、私達の世話をしてくださっていたわ。 真条寺家の跡取り娘には世話役が必ずつくことになってるから』 「ふふふ。生まれついての英語は忘れていないようね。日本語に戻していいわ。それ じゃあ、最後のテストをしましょう」 「最後のテスト」 「一緒にお風呂に入りましょう」 「お風呂?」 「どうしたの? 一緒に入れないかしら」 「大丈夫だよ」  浴室は広々とした空間に大理石が敷き詰められ、天窓からはさんさんと陽光が降り 注ぎ採光も充分である。 「確かに身体つきは梓そのものね。すべすべした肌も」  じっと梓の身体を見つめる絵利香。 「ねえ、わたしの身体を見て何か感じるかしら」 「きれいだなって思う」 「他には? 男として欲情を感じたりしない?」  ぷるぷると首を横にふる梓。 「男としての感情は、こっちには持ってきていないんだ。それに、いつも一緒に入っ ていたから」 「私の裸は見慣れているということね。感情は女の子のものしかないってわけか。そ れじゃあ……」  といって、いきなり梓の胸をつかむ絵利香。 「きゃん!」  可愛い叫び声を出して胸を隠す梓。 「ふふふ、その反応と表情。正真正銘の梓に間違いないわ」 「もう……」 「合格よ。梓……よかったわね」  抱きついてくる絵利香。微かに涙ぐんでいるようだった。  梓の部屋。ネグリジェになりベッドの上に横になる二人。  すっかり打ち解けて仲良しになっていた。 「判ったことは、あなたが梓の記憶や体験のすべてをそのまま引き継いでいるってこ とね」 「う、うん。そうみたい」 「梓の身体に、梓の記憶と体験、先程のピアノの演奏にしても、感受性は女性的なも のを持ってるし、つまり梓以外の何者でもないってことじゃない。ま、早い話し、ち ょっと男の子っぽくなった梓だと思えばいいわけよね」 「そ、そうなるのかな」 「まあ、いろいろとあったみたいだけど。これからもよろしくね。梓ちゃん」  といって絵利香が、にっこりと微笑んで手を握り締めてきた。 「こ、こちらこそ、よろしく」

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ブービートラップなニンジン

インターポット

アバターが遊びに興じるアイテムの中で、
作物ニンジンだけがちょっと趣が異なる。

説明によると、『時々アバターがお世話をすることがあります』
であるが、正確にはアバターがニンジンのすぐそばを通った時である。


他の遊具は、画面切り替えと同時にアバターの配置が変わるが、
作物ニンジンだけは、アバターが丁度通りかかった時に、
まるでトラップが発動したかのよに、
一心不乱に足踏みを続けるのだ。

アバターが庭をひょこひょこ歩いている時に、
ニンジンに近づいたりすると、息を潜めて見つめる。

((((o゚▽゚)o))) ドキドキ♪

そして、ニンジントラップに引っかかったりすると

(((o(*゚▽゚*)o)))

なんてはしゃいだりします。


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2017年10月 3日 (火)

銀河戦記/第四章 情報参謀レイチェル IV

第四章 情報参謀レイチェル

                  IV  翌日。  アレックスはオフィスの椅子に腰掛け、相も変わらず苦手な書類を懸命にこなして いた。  インターフォンが鳴った。 「レイチェル・ウィングです。ご命令により出頭いたしました」 「入りたまえ」  扉が開いてレイチェルが入室してきた。  その服装を見るなり、 「やはりか……」  という風に目を伏せるアレックス。  レイチェル・ウィング少尉は、軍服のタイトスカートからのぞく足並みもまぶしい くらいに、その身のこなしかたも女性士官としてすっかり様になっていた。 「ご命令により、出頭いたしました」 「辞令で伝えてあるとおり、君を副官としておくことにした」 「はい。存じております」 「ご苦労。早速で悪いのだが、部隊の再編成について打ち合わせしたい」 「はい。わかりました」  二人は再会のあいさつもそこそこに、いきなり仕事に入ることになった。それは、 アレックスが私情にかかる懸念を避けるために、わざとそうしていたのである。 「とにかく我が部隊は、高速運航できることを主眼におきたい。艦載機を搭載できて より高速移動できる軽空母や巡航艦を主体とした部隊編成が必要だ」 「つまり足の遅い主戦級の攻撃空母や重戦艦はいらないとおっしゃるのですね」 「その通り。艦載機を多数搭載できる攻撃空母は魅力ではあるが、防御力が小さいた め護衛艦を配置しなければならん。直接戦闘できない艦をおくのは無駄だ」 「ただでさえ造船費や維持費のかかる空母よりも、安くて速い巡航艦を多数配置した ほうが良いというわけですか」 「本格的な艦隊戦ならともかく、遊撃部隊として行動することが主体の我が部隊には 必要ないし、足手まといになるだけだからな。いかに早く戦闘宙域に到達しかつ迅速 に撤退できるかといった高速性能が必要なのだ」 「司令官がミッドウェイ宙域会戦でとられたような作戦を今後もとられるおつもりで すか」 「まあな。時と状況によるさ」 「わかりました。現部隊所属の攻撃空母を放出して巡航艦と等価交換すればよろしい のですね」 「君には手数をかけるがよろしく頼むよ」 「攻撃空母はどこの艦隊でも欲しがっているので、そう苦労することはないと思いま すよ」  それからこまごまとした内容を打ち合わせて、ほぼ今日の分が終わりかけたときに レイチェルが言った。 「話しは変わりますけど、例のハッカーとの連絡が取れました」 「本当か」 「はい。お会いになられますか」 「もちろんだ」 「まもなく相手からアクセスがあると思います」 「なに。軍のネットにわざわざ侵入してくるというのか」 「はい。挨拶代りに出向いてくるそうです」  その時丁度、端末が受信を知らせた。 「来たようですわ。出ますか?」 「頼む」  レイチェルは端末を操作して受信体制を整えた。  ディスプレイに相手の顔が映しだされた。 「よお、レイチェル。来てやったぜ」 「待っていましたわ。さすがですわね」 「司令官を出してくれないか。俺も忙しい身でね」 「わかったわ。替わります」  レイチェルに代わってアレックスがディスプレイの前に立った。 「あんたが、噂の英雄さんか」 「アレックス・ランドールだ。君が、レイチェルの言っていたハッカーだな」 「それは、ご覧の通りだ。厳重な軍のネットにこうして侵入してきているのだからな。 ジュビロ・カービンだ。よろしくな」 「要件は直接会って話したい。どうすれば会えるか?」 「俺は、あんたを信用しているわけではないからな。ここで居場所を教えるわけには いかない。会見方法は後日レイチェルを通してあんたに伝える。今日はともかくあん たの顔を確認したいのと、俺の腕前を証明するためにアクセスしたのだ」 「いいだろう。連絡を待っている」 「じゃな」  といって通信は一方的に途切れた。逆探知を恐れてのことだろうか、名前と顔を確 認するだけの極端に短い通話であった。 「印象は、いかがでしたか?」 「なかなか好男子だったじゃないか」 「それってどういう意味ですか?」 「いやなにね」 「もう……そんな関係ではありません。変にかんぐらないでください」 「ははは。悪い、悪い。ところで、技術部システム管理課のレイティ・コズミック少 尉をここへ呼んでくれないか」 「コズミック少尉をですか?」 「そうだ」  それから数時間後。  端末を操作しているレイティ。 「ふう……これでいいですよ」 「完了か?」 「はい。こんど彼がアクセスしてきたらきっと驚くことになります」 「何をなさったのですか?」 「いやなにね。レイティに特別なカウンタープログラムを組んでもらったのさ」 「カウンタープログラム?」 「通常の手段によらないでアクセスしたものの端末を逆探知してそのシステムを破壊 するプログラムです」 「逆探知して破壊ですって。そんなことが出来るのですか?」 「可能ですよ」  レイティはきっぱりと答えた。 「システムをハッカーから守るには、二種類の方法があります。システムを厳重に ガードして侵入を防ぐ方法と、それでも侵入された場合のためにカウンタープログラ ムで退治する方法とです」 「カウンタープログラムを作るためには、システムのハードとソフトのすべてを熟知 していなければできないんだ。通常の方法でアクセスしてくる一般のシステム運営者 との区別を厳密にしなければならないからな。システム管理部にいるレイティだから こそできる技ということさ」 「でも、そんなことをして相手を怒らせることになりませんか。相手にハッカーの依 頼をなさるおつもりなのでしょう?」 「確かに自分のシステムを破壊されて怒らない奴はいない。しかし、それだけこちら が真剣だと悟るだろう。そのうえでレイティの作り上げたカウンタープログラムを看 破してくるような腕前がなければ、この計画を実行し成功させることはできない」  アレックスは、ジュビロ・カービンとの共同計画となる作戦概要を示した企画書を、 レイチェルとともに作成した。もちろんこのような機密書類をレイチェルに作成させ たのは、彼女を信頼している証でもある。 「それにしても遠大な計画ですね。これを実行する機会は到来するのでしょうか」 「さあな。何年かかるか、僕にも検討もつかないさ。十年掛かるか二十年かそれ以上 か……。少なくとも僕が提督と呼ばれる地位に就くまでは実現しない計画なのかもし れない。しかし前もって準備万端整えておいて、即実行できるようにしておかなけれ ば、いつやってくるかわからない千載一隅の機会を失ってしまうかもしれない」 「わかりました」  それから数時間後、司令官室から出て来るレイチェル。  戸口で敬礼をしてかる、ゆっくりとそのばを立ち去る。 「しかし遠大な計画だわ……果たしてそれを実行できる機会は本当にやってくるのか しらね。その日の為に用意周到に今から着手しておくことは必要だけど……ま、さす がアレックス、あたしが惚れるだけの人物ね」  といいつつ、つい顔を赤らめるレイチェルだった。  とある部屋。  端末を操作しているジュビロ。ふとその手を止めて、 「レイチェルに連絡とってみるか……」  いつものように軍のホストコンピューターにアクセスを試みる。以前レイチェルの 軍籍を改竄したことがあるので、さほどの苦労もなく容易に侵入に成功した。 「ええと、レイチェルのIDはと……」  端末を叩いてレイチェルのメールボックスにたどりつく。  だが、その途端だった。  ディスプレイが一瞬輝いたかとおもうと真っ白になってしまったのである。 「な、なんだあ……」  慌てて端末を操作しようとしてもキーを一切受け付けなくなっていた。  やがてディスプレイに文字が浮かび上がってきた。 『ごめんなさいね。あなたのシステムは破壊させていただきました。このカウンター プログラムを看破して再度挑戦してみてください』 「ちきしょう、カウンタープログラムか。いつのまに……それにしてもなんちゅうカ ウンターだ」  システムは、完全に死んでいた。 「だがな、この俺をそんじょそこらのただのハッカーと思ったら大間違いだ。こっち にはカウンタープログラムを看破する支援システムがあるのだ」  それはジュビロが開発した支援システムで、メインシステムの状態を常時監視追跡 しながら独立に作動する。カウンタープログラムによってメインシステムが破壊され ても、自動的にそれを修復すると同時に、そのカウンタープログラムを解析までして しまうというジュビロ自慢のシステムプログラムであった。つまり一度はカウンター を食らっても二度目のアクセスでは、それを回避する手段をとることができるのであ る。つまりプログラムを解析してそれを無効にしてしまうワクチンを処方してしまえ ばいいのだ。 「さてカウンタープログラムを拝見させていただくとするか」

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2017年10月 2日 (月)

梓の非日常/第一章 絵利香そして

梓の日常/第一章 生まれ変わり

(七)絵利香そして  ファントムVIは、旧市街を抜けて街外れにある大きな屋敷に入っていく。  正面門から玄関までの五百メートルほどの間には、透水性アスファルトが敷かれそ の両側には点々と花壇が並んでいる。右手の方には大きなプールがあり、左手にはヘ リポートがあって、いつでも発進できるように待機している。玄関の前は、大きな噴 水が水飛沫をあげるロータリーとなっている。  玄関前車寄せの両側に、メイド達がずらりと並んで、屋敷の主人を出迎えている。 「お帰りなさいませ。梓お嬢さま」 「お帰りなさいませ。渚さま」  いっせいにメイド達が頭を深く下げて挨拶する。その言葉は日本語である。  女性の中に混じって、ただ一人男性がいるが、どうやらこの屋敷の執事らしい。 「とっても可愛いお嬢さまね」  メイド達がささやきあっている。自分達の新しい主人となる、十二歳の梓の美しさ に、一同ため息をついていた。その中で一番前列に並んでいるメイドに前に出るよう に指示して、 『紹介するわ。こちらの三人は梓専属のメイドです』  その三人の着ているメイド服は、他のメイド達とは色・格好とも違っており、より 上質の素材で出来ているようであった。 『神田美智子です』 『花咲美鈴です』 『井上明美です』 『交代で面倒みてくれることになっています。日本語はもちろんのこと、英語の方も スペシャリストですから。それから、竜崎麗香さん』  麗香が一歩前に進み出た。 『ニューヨークから一緒に来日した麗香さんは、引き続き梓の世話役になっていただ きます。一応メイド主任を兼務するということで、あなたたち三人は麗香さんの指示 に従ってください』 『かしこまりました』  リビングに置かれたグランドピアノ。側のキャビネットには、たくさんの譜面が収 められている。 『ピアノか……』  その上に何気なく置かれた譜面を開いてみる。五線符に記された音符の列が、確か なリズムとなって梓の脳裏に浮かび上がってきた。  ……この俺に、弾けるかな……  ピアノの蓋を開けて、椅子に腰掛けてみる。鍵盤の位置が丁度いい具合になるよう に椅子の高さを調節する。  譜面を譜面台に置き、手を鍵盤に降ろして、しばし呼吸を整えてみる。  静かに曲を弾きはじめる。  鍵盤を叩く滑らかな手の動き、屋敷中に響き渡る妙なる調べ。  譜面を見なくとも次々と旋律が浮かび上がって来る。静かに目を閉じて、指先に全 神経を集中する。曲は途切れることなく泉のように湧きだして来るのだった。おそら く毎日のように鍵盤を叩いていたのであろう、身体全体がその動きを、その旋律を覚 えているのだ。 「お嬢さまが、ピアノを弾いてらっしゃる」  演奏を聞きつけたメイド達のほとんどがリビングに集まり、その演奏を邪魔しない ように静かに聞き耳を立てている。その中には渚も麗香もいて、目を閉じうっとりと 聞き入っている。 『良かった……。梓の音感性は失われていなかった』  演奏を終えて、そっと蓋を降ろす梓。  ぱちぱちぱち  突然拍手をしながら梓に近づいてくる少女がいた。 「相変わらず、お上手ね。梓」  梓は親しげに話し掛けて来るこの少女を思い出せないでいた。自分が見知っている 人物に違いないとという確信はあるのだが、どうしても名前が思い浮かばない。 『あら。いつのまにいらっしゃったの』 「玄関にだれも迎えてくれなくて、ピアノの音が聞こえていたから。勝手にあがらせ ていただきました」  仕事を放り出してピアノに聞き入っていたメイド達があわててそれぞれの持ち場に 戻っていく。  まあ、しようがないわね。というような表情で渚が謝った。 『ごめんなさいね、絵利香ちゃん』 「いえ、いいんです」  ……絵利香?……  じっと絵利香の顔を見つめる梓。  この絵利香という人物、英語で話し掛ける母親に、日本語で答えている。つまり両 言語を理解しているということだ。 「どうしたの? そんなに見つめて」 『ごめんなさい、絵利香ちゃん。梓は記憶障害を起こしているの。相手のことすぐに は思い出せないの。それと、日本語も忘れちゃっているのよ。だから私達も英語を使 っているわけ』 「ええ。そんなあ……こっちに来たら、英語は一切使わないで日本語だけで会話しま しょうって約束してたのに。しかもこのわたしのことも、忘れているなんて」

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2017年10月 1日 (日)

銀河戦記銀河戦記/第四章 情報参謀レイチェル III

第四章 情報参謀レイチェル

                  III  基地に戻ったアレックスは早速軍籍コンピューターにアクセスして、レイチェルの 素性を確認した。もちろん真っ先に確認したのは、その性別である。 「FEMALEか……本当だ」  ハッカー存在は確かなようであった。  誕生日や出身地といった性別以外の項目には、幼少時代のアレックスにも周知な事 実が記されている。間違いなくあの「泣き虫レイチェル」本人であった。  アレックスは、少佐のIDカードを差し込んで、さらに詳細なデータとこれまでの 勤務評定を読んでみた。 「ふうん。結構優秀じゃないか」  一通り読みおわって、しばらく考えたあと、アレックスは彼女の配属項目に自分の 名前を入力した。すなわち自分の副官として採用することにしたのである。とにかく 独立遊撃部隊の再編成に忙しい自分が、現在もっとも欲しいのが自分の仕事を補佐し てくれる人物であったからだ。  もちろん副官採用は命令であり、軍人としてレイチェルにはそれを拒否することは できない。  独立遊撃部隊が駐屯する基地からほど遠くないところに女性士官専用の寮がある。  基地に艦隊が駐留している間、女性士官達が寝泊まりする施設である。  女性士官の軍服を着たレイチェルがその門をくぐりぬけた。  施設に入るには受け付けで登録をしなければならない。 「レイチェル・ウィング少尉です。認識番号は……」  受け付けの係官は、そばの軍籍コンピューターに接続された端末に認識番号を打ち 込み、ディスプレイに現れた顔写真と本人とを照合した。もちろんその顔写真や性別 などの登録情報は、レイチェルがハッカーに依頼して後から書き直したものであるが、 受け付けが気付くわけもなく照合はすんなりとパスした。 「確認しました。レイチェル・ウィング少尉、あなたのお部屋は二階の二百五号室で す」 「ありがとうございます」 「それから、ランドール少佐からの辞令が届いています」 「辞令?」 「はい。これです」  レイチェルは辞令を受け取ると、二階へあがり自分にあてがわれた部屋を見つけて 入った。  荷物を床に置いて、早速辞令を開けて読んでみると、自分をランドール少佐の副官 に任命するとあり、明朝午前九時にオフィスに出頭せよとあった。 「あたしが、アレックスの副官か……なんか楽しくなりそうね」  レイチェルは思わず含み笑いを浮かべ、荷物をロッカーにしまい軍服から私服に着 替えをはじめた。  スカートを脱いで下着姿になったところで、ドアがノックされた。 「どうぞ」  振り返って返事をすると、片手に荷物を持って女性士官が入ってきた。ここでは全 員相部屋になっているので、どうやら同室となる相手なのだろう。 「あなたが同室なの?」  彼女はレイチェルの姿を見て確認した。 「そうみたいですわね。あたしは、レイチェル・ウィングです。今日からよろしくお 願いします」 「あたしは、ジェシカ・フランドル。こちらこそ、よろしくね」  彼女も荷物をおいて、レイチェルの目前で着替えをはじめた。もちろんレイチェル の素性など知るはずもなく、女同士とすっかり信じこんでいるからである。レイチェ ルもまた女性の心を持っているためにジェシカの下着姿には興味を抱くこともなかっ た。 「ねえ、レイチェル。あなたはどうしてアレックスの部隊に転属を申し出たの?」 「アレックス?」 「ああ、あたしは彼と士官学校が同じでね。恋人同士だった時もあったけど……とに かく、アレックスから直接来てくれないかと連絡があったのよ」 「そうですか……。あたしのほうは、広報をみて応募しましたのよ。英雄なんて呼ば れるお方がどのような人物なのか、何となく興味あるじゃないですか、やっぱりね」 「ふうん……そんなものかな」  その日の夕刻、寮の食堂において自己紹介及びミーティングが行われた。夕食をと りながら一人ずつ氏名と出身校などの自己紹介が進められていく。その後、門限や入 浴時間そして服装や化粧などといったこまごまとした寮生活の規律・注意事項の確認 が伝達される。  若い女性ばかりが集まっているのだ、寮母の話しなどに真面目に耳を傾けている者 は少ない。それぞれてんで勝手に近くの者とわいわいと内輪話しに夢中になっている。 レイチェルも、ジェシカらの仲良しグループに混じって、仲良くやっていた。アレッ クスと同校であるジェシカをはじめとするスベリニアン校出身の女性士官全員が、独 立遊撃部隊転属を希望してやってきていたのである。顔見知りの彼女達がすぐに仲良 しグループを作るのは当然といえた。 「レイチェル、ちょっとこちらにいらっしゃい」  突然寮母がレイチェルを前に呼び寄せた。 「は、はい」  何事かと皆の視線が集中するなか、レイチェルはゆっくりと前に進み出た。 「改めて紹介しておきます。このレイチェルは、ランドール少佐の副官として任命さ れました」 「ええ!」 「うそお……?」  という黄色い声が飛び交った。 「というわけで、みなさんの部隊内での配置転換などの希望や、諸々の要望書などの 受け付けはこのレイチェルが窓口になります」 「実はあたしも、副官に任命されたなんて今日知らされたばかりなのです。どうして かしらと、みなさんに変なかんぐりされるのもいやなので白状しますと、少佐とあた しは幼馴染みなのです。きっとその縁であたしを副官に選ばれたのと思います。なに せ一緒にお風呂なんかにも入った中で、少女時代から良く知り合っていましたから。 そういうわけで、みなさんお手柔らかにお願いしますね」  そう言って軽くお辞儀をすると微笑んでみせるレイチェルであった。  ジェシカ達のグループに戻ったレイチェルは、早速吊し上げにあうはめに陥った。 「ずるいわよ。少佐とのこと隠しておくなんて」 「別に隠していたわけじゃありませんもの。話す必要がないと思っていましただけ よ」 「ね、ねね。少佐とはどこまで進んでいるの?」 「それって男と女の関係で、という意味でしょうか?」 「もちろんに決まっているでしょ」  仲が良いということになると、その親睦度までかんぐりたくなるのが、世の女性達 の常であった。AだのCまでいっただのと、きゃーきゃー言いながら憶測で判断し、 おひれがついてその噂話しが広まっていく。 「あのですねえ、幼馴染みだからって特別な関係に発展するとは限りませんわよ」  その夜。  部屋に戻って就寝着に着替えたレイチェルとジェシカは、アレックスを肴にして昔 話を花咲かせていた。レイチェルはアレックスの幼少の頃を、ジェシカは士官学校の 頃のそれぞれの話題を交換していた。 「……というわけでアレックスとパトリシアは夫婦なのよ。まだ子供はいないけど」 「そうでしたの……もういい人がいらっしゃったのですね」 「がっかりした?」 「少しばかりね……。でも、ジェシカさんもお好きだったのでしょう?」 「まあね。しかし親愛なる後輩のためと思って、いさぎよくあきらめたわよ」 「パトリシアさんか……」 「いずれ会うことになるわよ。どうせ士官学校を首席で卒業するでしょうから、間違 いなくアレックスの部隊に配属されてくるわ」 「早くお会いしてみたいですわね」 「ところでさあ……」 「なんでしょう」 「あなたが副官になるということは、配属に関してもある程度融通を利かせることが できるのよね」 「それってつまり……」 「お願いしちゃおうかなと思ってさ」

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