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2017年11月28日 (火)

銀河戦記/第八章 犯罪捜査官 コレット・サブリナ II

第八章・犯罪捜査官 コレット・サブリナ

                  II  共和国同盟軍情報部特務捜査科第一捜査課艦隊勤務捜査官。  それがコレット・サブリナ中尉に与えられた正式称号である。  事故であれ殺人であれ、人が死ねばまずは第一捜査課(殺人課とも呼ばれている) の彼女が呼ばれて現場検証にあたることになっている。配下の捜査員とと共に現場検 証にあたるコレット。  すでにアスレチックジムは関係者以外立入禁止の処置がとられている。  ミシェールが死んでいたマシンは、滑車からロープに繋がったウェイトを、持ち手 を引っ張って持ち上げていくというものである。  レオタード姿で死んでいる。  一見、手が滑って持ち手が器械に引っ掛かったところに、ロープが首に掛かりウェ イトの重みで首が締まって、窒息死したようにも見える。 「ウェイトの質量は片方ずつ五十キロか……。艦の重力は地上の六分の一程度しかな いから、実質十キロ弱分の筋力ゲージね……。これくらいの重量で首が絞まって窒息 死するだろうか」  重力六分の一で、ウェイトが軽くなるのと同じように、人の体重も六分の一になる から、五十キロのウェイトでも人の体重を支えて、首吊り状態を十分維持できるが… …。筋力十キロあれば、首に絡んだロープを外せるはずだ。 「ロープが絡んだときの勢いで、急に首を絞められて気絶したんじゃないですか。そ してそのまま……」  しかし、明らかに不自然だ。持ち手は前へ引っ張っていくものだが、たとえ手が滑 っても、反動で持ち手が首に掛かるようにカーブを描いて後方へ飛ぶとは考えにくい。 落下するウェイトに引っ張られてまっすぐ戻るはずだ。 「誰か、遺体に触らなかった?」 「いいえ」 「だとしたらおかしいな」 「何がおかしいのですか?」 「この膝の傷だよ」  タイツで隠れていて注意深く観察しないと気がつかないが、明らかな擦過傷を負っ ていた。 「ああ、これね。アスレチックジムですからねえ。擦り傷くらいは日常茶飯事じゃな いですか?」 「そう思うか?」 「ええ、まあ……」 「いや、違うな。この傷は、たぶん死後に負ったものだ」 「え? どうしてですか?」 「それは、解剖にかければはっきりするだろう」 「教えてくれないんですか?」 「憶測で物事を判断するものじゃない」  遅れて臨検医が到着して観察をはじめた。こうした場合の当然として、特に首筋を 重点的に調べている。 「頸椎損傷の形跡はありますか?」  気絶するほどのショックが首に掛かっていたかを判断するためである。 「外見からでは判断できませんねえ。解剖してみないことには」 「直接の死因は?」 「首筋に絡んだロープによって頸動脈が圧迫され、脳への血流停止による脳酸欠死と いうところです。死後およそ一時間というところですかね」 「何か不審な点は発見できませんでしたか」 「つまり、他の場所で殺された後に偽装工作として、マシンに括りつけられたような 跡が見られなかったどうかということですね」 「お察しの通り」 「こういった場合ではよくあることなので、その点は念入りに調べました。結論は解 剖の結果を踏まえて慎重に判断しなければなりませんので、私の管轄を外れます。私 は事故現場の証拠を集めたり保存したりするのが任務ですから。ただ、個人的見解で よろしければ……」 「どうぞ、それで結構です」 「まずは首筋を見ていただきましょう」  臨検医が指し示す首筋に注目するコレット。 「ごらんの通り、ロープの絡んだ箇所の下側に紫斑が見られると思います」 「そう言えばそうですね」 「この紫斑が直接の死因となったもので、頸動脈にかかっているのが判ります。これ はつまり、首が締って死んだか気絶した後でロープが緩んでずれたか、或は誰かに首 を絞められて殺された後で、改めてロープに吊るされたことを意味しています」  医師は手近なロープを取って、コレットの首に巻くようにして軽く絞めて見せた。 「人の首を絞めて殺そうとした場合の絞殺班は、被害者と犯人の身長差、或はどのよ うにして首を絞めたかによって変わってきます。例えば天井の張りに渡したロープで 吊るし首にするとかですね。もし背の低い犯人が背後から襲った場合、このように丁 度鎖骨の上辺りにかかります。この位置はミシェールの場合と同じですね」 「つまりミシェールは自分より背の低い相手に首を絞められた可能性があるというこ とですね」 「あくまで可能性ですがね……」 「ところで、ロープの位置と紫斑の位置がずれている点ですが、本当は事故で首が締 まってぐったりとなった後で、ずれたということはありませんか」 「否定はできません。解剖してみないことには結論は出せませんから。最初に申しま した通りに、これはあくまで私個人の見解なのです」 「わかりました。どうもありがとうございました。あ、そうだ。膝の擦り傷の鑑定を お願いしておきます」 「擦り傷? ああ、これですね……。判りました。調べておきます」  自分なりの調査を一通り終えたので、被害者のそばを一旦離れて、発見者達の証言 を取ることにした。 「発見者達とミシェールと同室の者は集めたのか?」  配下の捜査員に確認する。 「はい。隣の部屋に」 「よし。早速尋問しよう」 「司令官に報告は?」 「後だ。記憶が鮮明なうちに証言をとっておくのがセオリーだよ」

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