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2017年11月23日 (木)

梓の非日常/第四章 奥技、炸裂!

梓の非日常/第四章・スケ番再び(黒姫会) 

(四)奥技、炸裂!  その時、天井からぽろぽろとコンクリートの破片が落ちてきた。 「なんだ?」  天井を見上げる一同。あちらこちらにひびが入り、次第に広がっていくと同時に、 落下する破片が増えていく。ほとんどの蛍光燈が外れて宙ぶらりんとなり、窓ガラス が次々と割れていく。 「壁を破壊したから、バランスが崩れてビルが傾いているのよ。元々倒壊の危険が予 知されていて、解体される予定の廃ビルよ。崩れるわ、みんな逃げて! 通路で気絶 している人も助け起こすのよ」  わらわらと逃げ出すスケ番達。 「さあ、あなたも脱出するのよ。蘭子さん」 「ふん。勝負を逃げ出すの?」 「何言ってるのよ。ビルが崩れるのよ」 「ビルが壊れるまでには、まだ十分時間があるわ」 「このままじゃ、共倒れよ」 「それもいいかも知れないね。黒姫会はもう終わりだ。生きて恥じをかくよりも、青 竜会のおまえと刺し違える方が名誉だけは残るってもんだ」  チェーンを取り出して、戦闘体制に入る蘭子。 「いくよ!」  言うが早いか、梓に向かってチェーンを繰り出す蘭子。  間一髪でそれをかわす梓。  目標を外れたチェーンが、床に穴を開け粉塵を舞い上げる。 「どうしてもやるつもりね」 「そうさ」  すでにチェーンを引き戻して次の攻撃体制に入っている蘭子。  飛び道具を使う蘭子が相手では、接近戦オンリーの空手の梓に分が悪い。 「懐に飛び込まなくちゃ」  次の攻撃が飛んでくると同時に、それをかわして懐へ入り込む。  が、次の瞬間、梓の身体は後方へ投げ出されていた。  蘭子が弐の矢として用意していた寸打が炸裂したのだった。 「寸打……チェーンを握る反対の手で寸打を出したのか。これじゃあ、うかつに近づ けないじゃない」 「驚いた? 私は両利きでね。右手も左手も同じ力があるんだ」 「そうか、油断したよ」 「それじゃあ、次ぎいくよ」  蘭子の攻撃が再開される。  部屋の隅でそんな二人の攻防戦を見つめる人影。  慎二の他、竜子と郁が居残っているのだ。 「リーダーを残して逃げ出すわけにいかないからね」 「はい。でも梓さん、大丈夫でしょうか?」 「どうかしら……蘭子の二つ名は『チェーンのお蘭』よ。チェーンをまるで自分の腕 が伸びたように自在に操り、その長さ二メートルに腕の長さを合わせて優に三メート ルのリーチを誇る攻撃が可能よ。チェーンの攻撃をかわせても、三メートルの間合い を詰めて相手の懐に飛び込む間に、防御と攻撃の態勢を取られてしまう。実際にもチ ェーンを放った後に空いた手足で、寸打と膝蹴りを用意している。隙を見せない完璧 な布陣よ」  竜子が解説する通り、戦況は明らかに蘭子に有利だった。梓は飛んでくるチェーン をかわすだけで精一杯であった。時折懐に入り込もうとするが、寸打と膝蹴りで跳ね 返されていた。  それでも何度となくチェーンをかわすうちに、その攻撃パターンをつかんできて、 軽くかわせるようになっていた。 「チェーンが飛んできたのをかわしてから懐に飛び込んでも、相手に十分な防御体制 をとられてしまう。チェーンを放つ気配を見せたその途端に飛び込まなきゃ……起こ りの瞬間に一挙動で勝負するしかない」  【起こり】とは、武術用語で技の出る瞬間のことである。拳の動きだけでなく、身 体の捌きや視線の動きなどから察知するのだ。例えば野球では、右投げ投手が一塁へ 牽制球を投げる時、必ずプレートから足を外さなければならないが、一塁手はその動 きを素早く察知して一塁へ戻って牽制死を避けるのだ。  そして【一挙動】は、受けと攻撃を同時に発動する技。普通は、相手の攻撃を受け てから自分の攻撃を開始するのだが、それを一動作で完了させるのだ。  天井からの落下物は増えている。  ……速くしないと、ビルが崩れる。仕方ない、あれを使うしかないわ。よし……  梓は、少し前屈姿勢をとり、両手を右脇腹に構えたかと思うと、静かに目を閉じた のだった。 「目を閉じた?」 「いや、気を集中させているんだ。何かやるつもりだ」 「でも目を閉じていたら攻撃をかわせないんじゃ」 「大丈夫だ。チェーンの攻撃はすでに見切っている。気配だけで十分かわせる」  蘭子の足がかすかに動いた。その気配を感じ取った瞬間、梓が行動に移る。  目を、かっ! と見開いて懐に飛び込んでいく。 「無駄な事を」  蘭子のチェーンが飛んでくる。  梓の頬をかすってチェーンはそれていった。頬から出血する梓だが、かまわず突進 を続ける。  寸打を繰り出す蘭子。だが梓は平気な顔をしている。 「な、寸打が効いていない? 馬鹿な」  梓の踏み込む速度が、寸打の有効打力点に到達するより速く、効果を十分発揮する 事ができないうちに、懐に入り込まれてしまったのだ。 「なら、膝蹴りで……」  蘭子が次の攻撃を繰りだそうとした瞬間だった。 「透撤拳!」  梓が右脇腹に構えていた両手を勢いよく前方に突き出したかと思うと、蘭子の身体 が宙に浮かび後方へと吹き飛んでいったのだ。丁度そこはブルドーザーが開けた穴の 場所で、蘭子の身体はうまい具合にビルの外へ。 「あれは? 沖縄古流拳法の一撃必殺の奥技、聖龍掌!」  慎二が驚きの声を上げる。  捨て身の技を決めて、ひと呼吸おいてから梓が叫ぶ。一刻もはやくここを立ち去ら ねばならない。 「よし、みんな脱出よ」 「はい!」 「おうよ!」  一斉に外へと駆け出す一同。  穴のそばに倒れていた蘭子を、慎二が肩に担いでさらに安全な場所へと移動する。

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