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2018年1月12日 (金)

梓の非日常/第八章・太平洋孤島遭難事件 密航者

梓の非日常/第八章・太平洋孤島事件

(二)密航者  梓達のもとに戻ってくるなり、一同に寸部違わず報告をする麗香。 「何ですって?」  一番驚いたのが絵利香だった。  この自家用機の機長以下乗務員は全員、篠崎グループ傘下の篠崎航空から派遣され てきている。当然何か起きれば全責任は、篠崎が負うことになる。 「機長に会うわ」 「お待ち下さい。機長達は、全精力を注いで着陸できそうな島を探索中です。邪魔を してはいけません」 「そんなこと言っても、こんなことになったのは、わたしの……」 「絵利香さま、落ち着いてください。責任を感じていらっしゃるのは、良く判ります が、私達には機体を救う手だてはありません。とにかく落ち着いて行動することです」  というように絵利香を諭す麗香は沈着冷静であった。護身術などで培った精神修養 のおかげであろう。 「麗香さま、わたし達どうなるんですか?」  メイド達が青ざめた表情で尋ねた。 「今、機長達が着陸できそうな島を探しています。おそらく胴体着陸となると思いま す。救命胴衣を着用しなさい」 「は、はい」  震える手で出発前に教えてもらった通りに胴衣を着込むメイド達。 「さあ、お嬢さまがたもご着用ください」  麗香が手渡す胴衣を受け取りながら、 「それでコースがずれた原因はなんなの?」  なぜか落ち着いている梓が尋ねた。一度は死んで生き返った経験ゆえなのだろうか。 「はい。出発前に計量した荷物の重量と現在の重量に食い違いが生じているからです」 「どれくらい食い違っているの?」 「およそ八十五キロほど、重量オーバーしています」  八十五キロという数字を聞いて、ぴくりと眉間にしわをよせる梓。以前に慎二との会 話の中に、体重の話しが出た時のことを思い出した。 「へえ。梓ちゃんてば、四十五キロなんだ。軽いなあ。俺、四十キロ重い八十五キロ ね」  席を立ち、つかつかと後部貨物室へと歩いていく梓。 「梓ちゃん、どこいくの」 「梓さま、危険です。席にお戻りください」  貨物室のドアを、ばーんと勢いよく開けて暗闇に向かって叫んだ。 「慎二! 隠れてないで出てきなさい」 「え? 慎二ですって」  貨物室からがさごそと音がして、のそりと慎二が姿を現わす。 「や、やあ……」 「やあ、じゃないだろ。おまえのせいで、飛行機がコースを外れて燃料切れになった んだぞ」  慎二に詰め寄る梓。 「ほんとうか?」  事情がまだつかめない慎二。  その胸倉を掴んで詰問する梓。 「おまえなあ、飛行機がどこ飛んでるか判ってるのか? 海の上なんだぞ。燃料が切 れたら海の上に墜落して最悪海の底へ沈むんだ。自動車みたいに道路脇に止めてレス キューを待つこともできないんだ。飛行機というものはな、ペイロードつまり積載重 量によって航続距離が大きく変わるんだよ。たった一キロ増えただけでも大量の燃料 を消費するんだぞ。だからと言って燃料を必要以上にたくさん積んだら、それもまた ペイロード加算となって重量が増えて燃料浪費するだけだから、到着空港及び悪天候 代替空港まで(stage length)の燃料分しか積まないんだ。そんなシビアな運航して いるのに、密航して重量を増やせばどうなるか、そんなことも知らなかったのか」 「や、やけに詳しいじゃないか」 「お母さんに会いに、ブロンクスへ時々飛んでいるから。その飛行中の合間に、麗香 さんが教えてくれたんだよ」 「そうなんだ……」 「ふん! これ以上おまえに言ってもしようがない。ほれおまえも救命胴衣を着ろ」  といいながら自分の持っていた胴衣を放り投げる梓。 「麗香さん」 「はい、どうぞ」  と胴衣を再び手渡してくれる麗香。 「ところで、麗香さん。この非常事態のこと、お母さんの方には連絡が伝わっている のかしら」 「はい。一番に連絡してあります。おそらく救援体制を整えていると思います」 「そう……」  コクピットから放送が入った。 「お嬢さまがた、着陸できそうな島が見つかりました。これより着陸を試みます。乗 務員の指示に従って非常事態着陸態勢を取ってください」

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