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2018年1月16日 (火)

梓の非日常/第八章・太平洋孤島遭難事件 機長

梓の非日常/第八章・太平洋孤島遭難事件

(四)機長  コクピット。  客室乗務員が機長達の介抱をしている。コクピットには、操縦桿や各種のレバー類 など突起物が多いので、胸を強打したりして怪我は免れなかったようである。  副操縦士は軽傷だったらしく、無線連絡と機器の確認を続けている。 「機長。肋骨が折れているようです。救援が来るまで絶対に席を動かないでください」  着陸の衝撃で身体が前方に投げ出され、胸部が操縦桿のハンドルを基部の根元から 折り、その基部が胸部を貫いたのである。 「息はできますか?」 「ああ、何とかな。幸いにも肺は突き破っていないようだ」  あえぎながら答える機長。骨折では息をする度に肋骨に痛みを生じて、かなり辛い ようだ。声もかすれて聞き取りづらい。 「とにかく絶対安静です。折れた肋骨が肺や心臓を突き破らないようにしなくてはい けませんから」  機内の設備では、せいぜい当て木と消毒しかできない。傷口が大きく開いているの で縫合も不可能である。傷口を消毒しガーゼを当てて、細菌感染を防ぐという応急処 置しかできない。 「お嬢さま、お怪我はありませんでしたか」  コクピットに現れた絵利香を気遣う機長。自分の方が肋骨を折る大怪我をしている というのに、ご令嬢の絵利香のことを気遣っている。 「わたしは大丈夫です。機長こそ、傷の具合は?」 「肋骨が折れています。絶対安静です」  乗務員が機長に替わって答えた。  絵利香はコクピットを一時退室して、乗務員に機長の容体を確認した。 「機長はどうなんでしょうか?」 「問題は、細菌感染です。傷口が皮膚を突き破って、内臓部にまでに達していますか ら、細菌が内臓を汚染しはじめたら助かりません。しかもこの暑さ、細菌繁殖も活発 です。一刻も早い救助が必要です」 「そう……冷房は?」 「バッテリー駆動でコクピットだけに冷房を入れています。エンジンが停止していて 機内全体を冷房することができません。電気の続く限りコクピットだけに冷房を利か せたいと思います。よろしいですね?」 「もちろん、そうしてください。梓ちゃん達には、暑さは我慢してもらいましょう。 そしてコクピットへの出入りは必要最小限に」 「問題はもう一つあるんです」 「もう一つ?」 「呼吸をどこまで続けていられるかです。息をして肋骨が動く度に激痛があるんです。 息をし、激痛に耐える気力・体力がどれだけあるか。腹式呼吸してもやはり肋骨は動 きますから」 「麻酔は?」 「医者がいないので処置ができません。麻酔薬はあることはあるんですが、適量も判 らずに素人処置すれば、死に至る可能性があります。今の状況では自発呼吸は無理で しょう。意識を確かに維持しつつ、痛みに耐えながらも自力で呼吸するしかないんで す。つまり下手に麻酔を処置して眠ってしまったら呼吸が止まってしまうんです。取 り合えずの鎮痛剤を飲んでもらってるだけです」 「ここは梓ちゃんに何とかしてもらえないかな……」  完全に覚醒している梓。悪運強く無傷状態の慎二もそばに来ている。 「お嬢さま、携帯電話をお貸し願えませんか」 「いいわよ。はい」  ハンドバックから携帯を取り出して麗香に渡す梓。 「おい。こんな太平洋のど真ん中で携帯が使えるのか?」 「さあ……、日本以外では、ブロンクスの屋敷前で一度使ったことあるけど」 「これは、国際衛星通信を使用している携帯電話なんです。世界中どこからでも使用 できます」  と説明しながら、早速電話を掛け始める麗香。 『麗香です。そう……お嬢さま方はご無事よ。航路は追跡してたわよね。位置は…… そんなにずれたの? 最も近くを航行している船舶を大至急こちらに回して……それ で構わないわ。三時間後ね、わかった。後、島に不時着したDCー10型機を回収で きる、工作船かタンカーも手配して頂戴……。三日かかるのね、わかったわ』  引き続き次の場所に連絡を取る麗香。英語の会話になっているのは、国際衛星通信 だからだろう。 『麗香です。はい、お嬢さまはご無事です。代わります』  携帯を受け取って話す梓。 『お母さん……うん、どこも怪我してないよ。ぴんぴんしてる。うん……やっぱりお 母さん、動いてたんだ。たった三時間で船を廻せるなんて、そんなに都合いいことな いもん……。予定コースをずれた時点から? ん……ちょっと待って』  そばに深刻な表情の絵利香が立っていた。 『なに?』  母親との話しの続きからか英語で尋ねる梓。絵利香も英語で答える。 『お母さんとお話ししてるの?』 『うん、そうだよ』 『頼みたいことがあるんだけど、いいかな』 『どういうこと?』  絵利香は事情を説明した。そしてその内容をもらさず渚に伝える梓。 『え? でも……わかった』  携帯を閉じる梓。 『どうなの?』  心配顔で尋ねる絵利香。 『ごめん、絵利香ちゃん。三時間以内にここまで来られる救助ヘリはないって。今こ っちに向かってる船には、ちゃんとした手術室とドクターがいるから、それまで待っ ていなさいって』 『そう……しかたないわね。ここ島だからジェット機は着陸できないものね』 『ああ、でもね。十分以内にジェット機で軍医を連れて来てくれるそうよ。この島ま でジェット機で飛んで来て、落下傘で降りてくる手筈になってるそうよ。せめて医者 がいれば、応急手術ができて最悪の事態は避けられるだろうからって』 『軍医が来てくれるの?』 『うん。お母さん、太平洋艦隊司令長官と懇意だから。多少のことなら無理も通るの』 『そう……』 『さ、軍医さんを迎える準備しましょう。救命ボートを出さなきゃね。島には降下で きる場所ないから海への着水になるものね』

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