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2018年2月

2018年2月28日 (水)

銀河戦記/第十三章 ハンニバル艦隊 VI

第十三章 ハンニバル艦隊

                VI 「お待ちもうしておりました、ランドール司令。配下の部隊、全艦出撃準備完了して おります」 「ご苦労様です。こちらの部隊の燃料等の補給が済み次第出撃します。それまで待機 させておいてください」 「かしこまりました」 「大佐、私のオフィスに」  正式には第十七艦隊所属独立遊撃部隊司令という肩書きを有しているアレックスで あるから、当然このシャイニング基地にも部隊司令用のオフィスを構えていた。もっ ともカラカスを攻略してからというもの一度も帰舎できないでいたが。 「お帰りなさいませ」  オフィス事務官のシルビア・ランモン少尉が出迎えた。 「留守番ご苦労さま。何か変わったことは?」 「いえ、ありません」  その大佐と司令官室において面談したアレックスは、その威厳に満ちた風格に、と もすれば自分が上官であることも忘れてしまうほどであった。 「ところで、地球古代ローマ史にならって、ハンニバル艦隊と呼称されておりますが、 一体率いている武将は誰なのでしょうか」  先に口を開いたのはチェスターだった。自分が戦う艦隊の司令官を知りたくなるの は当然だ。 「レイモンド・スピルランス少将ですよ」  といいつつそばのレイチェルに視線を送るアレックス。その情報を集めたのはレイ チェル配下の情報部である。 「がしかし、実際に問題となるのは、作戦参謀として参加しているスティール・メイ スン准将のほうでしょうね。おそらくはこの作戦を考えだしたのも彼でしょう」 「私もそう思います」  そう。第五艦隊を壊滅させた張本人なのだから。 「第五艦隊の将兵達の士気はいかがですか?」 「気力は十分にあります。ランドール司令の艦隊に転属ということで、士気は上がっ ております。いつでも出撃可能です」 「それは良かった」  一時間後。  旧第五艦隊の将兵を前にして、アレックスは言い放った。 「君達はもはや敗残兵ではない。私の手足となって働く有能なる戦力として生まれ変 わったのだ。君達が持てる力のすべてを出して作戦遂行にあたれば、いかにハンニバ ル艦隊とて恐れるに値しない。敵を撃退し、共に凱旋して基地に戻ろうではないか」  この演説は、将兵達の士気を鼓舞するに十分な効果を与えた。  敗残兵は常に懐疑的になる。もはや戦力として期待されていないのではないか、前 線に投入されたとしても単なる捨て駒として利用されるのではないかと。  しかし、この司令官は将兵達の存在価値を認めたことで自信を取り戻させた上に、 あの強敵のハンニバル艦隊を撃退することを明言し、凱旋して基地に戻ろうと言うの だ。否が応にも士気はあがっていった。  ハンニバル艦隊旗艦艦橋 「司令。カラカスにいたランドールが五万隻の艦艇を率いて、我々を撃退すべき出撃 したそうです」  スティール・メイスンは、情報部よりの報告をスピルランスに伝えた。 「ほう、あの若造がか……しかし、五万隻とはどういうことだ。三万隻じゃなかった のか?」 「シャイニングに駐留していた第五艦隊の残存艦隊二万隻を組み入れたようです」 「おまえが撃破したあの艦隊か。とっくに解隊されていると思っていたぞ」 「ともかく、ランドールをカラカスから引き離すという当面の課題は成し遂げたので す。そろそろ引き際と考えて、敵が来る前に撤退いたしましょう。そしてカラカス攻 略部隊に合流して基地の奪還を計ります」 「撤退だと?」 「そうです」 「何をいうか。我々に立ち向かえる艦隊は、同盟のどこにもいやしない。たかだか五 万隻の艦隊など蹴散らしてくれるわ」 「しかし、司令!」 「ええい。うるさい、下がれ!」  司令官は聞く耳をまるで持ち合わせていなかった。  勝ち戦が続くと、誰しもが傲慢になる。この指揮官も例外ではなかった。  ハンニバル艦隊と呼ばれ、同盟を震撼させることになる作戦のことごとくを考えだ したのは、作戦参謀であるスティール・メイスンの功績によるところが多い。しかし、 連戦連勝を続けていくうちに、いつしか最強の艦隊と自負するようになり、その自負 が最強の艦隊を支える真の功労者を忘れ、ひいてはすべての功績が自分にあるとの錯 覚を覚えるようになる。  司令室を退室したスティールはため息をついた。 「愚かなことだ。いかに優勢に戦いを進めていても、引き際というものを知らなけれ ばすべてが無に帰してしまうことを」  これ以上ここにいては、自滅することは判りきっていた。  スピルランス艦隊が、連邦を震撼させる代名詞サラマンダー艦隊を率いるランドー ルにかなうわけがなかった。スティールは作戦当初から、今回の作戦をあくまでラン ドールをカラカスから引き離す陽動作戦としか考えていなかった。そのランドールが 出てきたならば、これ以上ここに滞在する理由はもはやないのだ。  すみやかに退去するに限る。  スティールは、自分の副官や参謀を引き連れて、この艦隊から立ち去ることにした。  自分の艦に戻ったスティールは、スピルランスに参謀降任の挨拶として最後の通信 を交わした。 「司令官殿。参謀としての役目は終わりました。私はもう必要ないと思われますので、 帰還させていただきます」 「帰還だと?」 「私などがいても、邪魔なだけでしょう。司令官のお気に召すままに存分にお戦いく ださい」 「ええい。わかった、失せろ!」 「では、そうさせて頂きます。ご武運を」  通信を終えると、傍に控えていた副官が苦笑いを浮かべて尋ねた。 「ご武運をですか……本気で言ってますか?」 「一応の外交辞令だよ」 「だと思いました」 「よし帰還するぞ。巻き添えを食わないうちにな」 「了解です。進路はお任せください」 「頼むよ」  スピルランス艦隊から一隻の戦艦が離脱を始めた。 「この戦い……またしてもランドールに軍配があがるな」  スクリーンに映る離れゆく旗艦の姿を、苦渋の表情で見つめるスティールだった。 「おそらくこれで、将軍へと昇進するのは確かだろう。となると奴の次の目標はタル シエン要塞攻略だ。そろそろこちらも手を打っておいた方がいいな」 「それでは例の件を発動させるのですか?」 「機は熟したと思うがな……」 「判りました。配下に準備に取り掛かるように指令を出します」

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ハーフパイプでそーれえ!

インターポット

そーれえ!空中三回転!

お姉ちゃん、すごい!!

見たか、これが姉の実力だわ。

ねえ、そのスノボーどうしたの?

そこのペンションで借りたのよ。

わかったあ、あたしも借りて滑ってみる(*'▽')

いいけど、できるの?

馬鹿にしないでよ。お姉ちゃんができるのに、
あたしができないわけないじゃない(^_-)-☆

気をつけなさいよ。

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2018年2月27日 (火)

梓の非日常/終章・生命科学研究所 尾行せよ

梓の非日常/終章・生命科学研究所

(六)尾行せよ  その日から週に一度、研究所通いをする梓。ほんとは毎日でも通いたいくらいなの だが、そうそう浩二に変化がみられるはずもないからである。  もちろん人格転換の事情を知らない麗香には内密にであるから、ファントムVIを 使うわけにはいかない。タクシーを呼んで若葉台の研究所へ、学校帰りに寄っていた。  麗香は時々タクシーで帰る梓を不審がったが、答えてくれない以上詮索するわけに はいかなかった。調査すればすぐにでも判ることなのだが、そうした事が梓に知られ れば、いかに信頼されている間柄としても、主従関係を失うだけだった。誰しも他人 には言えない秘密があるものだ。麗香とて理解ある人間だ。  不審に思っているのは麗香だけではなかった。  絵利香や慎二も、最近よそよそしくなって、時々タクシー呼んで一人で帰ってしま う梓の行動を疑問に思っていた。 「梓……、ちょっと聞いているの?」 「え? ……なに?」 「もう……、聞いてなかったでしょう。上の空だったわよ」 「ごめーん。考えごとしてた」  学校での一場面だった。  最近の梓は、しばしば考えごとをして、絵利香との会話中にも中断して、どこかへ 跳んでいる状態を頻繁に起こしていた。 「じゃあ、あたし。今日も一人で帰るから、絵利香ちゃんは一人で帰ってね」 「え? またあ?」  今日もまた一人で帰ろうとする梓だった。  これまではこんなことはなかった。  絵利香に疑心暗鬼の心が広がる。 「今日こそ尻尾を掴んであげるわ」  梓に悪いとは思いながらも、後をつけることにする絵利香。  梓がタクシーに乗るのを確認して、丁度通りかかったタクシーを止めようとするが、 うまい具合に次のタクシーが来なかった。 「あーん、見失っちゃうよ……」  あきらめかけた時、背後から重低音が響いてきた。 「乗れよ」  大型バイクに跨った慎二だった。 「慎二君!」 「梓ちゃんを追い掛けるんだろ。早くしないと見失うぜ」  と、ぽんとヘルメットを投げ渡される。 「ありがとう」  議論している暇はない。バイクに乗るのもはじめてであるが、贅沢も言っていられな い。ヘルメットをかぶる絵利香。 「両腕を俺の腹に回して捉まってくれ」 「わかったわ」  言われた通りにして、慎二の後ろに女の子座りする絵利香。 「少し離れ過ぎた。飛ばすぜ、しっかり捉まってろ」 「うん」  轟音とともに慎二のバイクは走りだした。  街中をかっとばす慎二。タクシーを見失わない程度の距離までは近づかなくてはなら ないからだ。 「よし、何とか追いついたぞ」  と少し速度を落としていく。あまり近づき過ぎても感ずかれてしまう。着かず離れず の距離で着いていく。  タクシーは川越市郊外の若葉台工業団地へと入っていく。  造成されたのはそう古くない。  広々とした造成地に各企業の研究所や工場などが立ち並んでいる。 「なに? こんな所に何があるの?」 「さあな……ここから右手に行けば、全国的に有名な埼玉医大総合医療センターだが」  しかしながらタクシーは工業団地を抜けて水田地帯へと入っていく。 「おい。あれじゃないか?」  慎二が指差す先に白亜のビルがそびえていた。 「あ……。あれは若葉台生命科学研究所だわ。梓ちゃんのとこの……」 「なんだ……。生命科学? それと梓ちゃんが、どういう関係があるんだよ」 「さあ……。確か、飛行機事故の後遺症がないかどうかを調べるために通院している とか……」 「それだったら、何もこっそりと行くことはないだろう」 「それもそうよね。じゃあ、なんのために行くのかしら」 「……」 「何を押し黙っているの?」 「ハワイの地を一歩も踏まずに強制送還されたこと思い出した」 「なんだ……。それは慎二君が悪いんじゃない。そもそもパスポートなしには入国で きないのは判りきったことじゃない」 「何にしても思い出して腹がたった。ぜがひでも真相を突き止めてやる」 「あ、研究所の前に止まったわ。タクシーを降りるようね」 「よし。俺達もここいらで降りよう」 「そこの病院の駐輪場に入れて」 「判った」  駐輪場にバイクを置いて、駆け足で隣の研究所へ向かう二人。 「急いで!」 「ああ……」  研究所の敷地内に入る二人。 「見つからないようにしてね。」 「判ってるよ。しかし梓ちゃんはどこだ?」 「あそこよ!」  丁度梓は、建物の中に入っていく所だった。 「よし、行こうぜ」 「そうね」  と、玄関前にやってきたが……。  関係者以外立入禁止という立て看板が、はっきり目立つように立っていた。 「うーん。こういうのを目にすると入りづらいな」 「そうね。ここは研究所だものね。企業秘密とかあるだろうから、簡単には入れては くれないでしょうね……。やはりここまでかな。あっちの別棟は病院と連なっている みたいだけど……」 「なあに、当たって砕けろだ。行こう」  と絵利香の手を引いて、中へ入っていく。 「ちょ、ちょっと、慎二君。だめだったら」 「いいから、いいから」 「もう……。強引なんだから……」  二人して緊張の面持ちで施設内へ入っていく。

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2018年2月26日 (月)

銀河戦記/第十三章 ハンニバル艦隊 V

第十三章 ハンニバル艦隊

                  V  カラカス基地と敵タルシエン要塞とに対し、ほぼ正三角形をなす地点にある恒星系 の第四惑星に、共和国同盟最大の軍事施設であり、連邦軍の侵略を食い止める最前線 基地となっているシャイニング基地がある。第十七艦隊の母港であり、最大収容艦艇 十二万隻を誇る当地には、一億二千万人にも及ぶ軍人・職人及びその家族が暮らして いる。  軍事目的として開発されたとはいえ、公転周期二百二十五日、自転周期二十五時間 という惑星には、全地表の三分の一を占める海が広がり、大気組成は地球型に近い酸 素含有率と温暖快適な気温が、地上に生活する人々の完全自給を賄っていた。資源も 豊富にあって、寄港する艦艇の燃料、修繕に必要な資材を供給する。  惑星地上に点在する無数の高い鉄塔は、敵攻撃から地上設備を守るシールドビーム 発生装置。それらを網目状に結ぶ地下送電線に電力を供給する核融合発電所は、敵の 攻撃目標となるのを避けて地下三千メートルの深さに建設され、僅かに燃料搬出入用 施設が露出しているだけである。それら施設を取り囲むようにして対空迎撃ミサイル 発射口が上空を睨んでいる。仮に敵艦隊に防衛艦隊が打ち破られたとしても、揚陸作 戦には五個艦隊以上の揚陸部隊を必要とするだけの防空能力を備えていた。ゆえに常 駐する第十七艦隊のみで十分防衛が可能だとされていた。惑星が籠城して死守してい る間に、周辺基地から援軍を差し向ければ十分ということだ。  艦艇を収容する軍港は、海岸線よりの開けた平野に建設されているが、十二ヶ所に 分けられているその中でも最大のものは、艦隊司令部のあるターラント軍港である。  その軍港ロビーの展望室から、まもなく到来する予定の艦隊を待って、空を仰ぐ二 人がいた。  二人の名前は、オーギュスト・チェスター大佐とリップル・ワイズマー大尉である。 バリンジャー星域で散った旧第五艦隊の残存兵力を従えてアレックス達の部隊に併合 されることになった部隊の指揮官とその副官であった。  シャイニング基地上空に、独立遊撃艦隊が姿を現した。 「ついに来ましたね」 「ああ……」  かつてのミッドウェイ宙域会戦において、撤退する連邦第七艦隊を追撃しようとし て、返り討ちにあって壊滅したのが第五艦隊である。その残留部隊を統括しているの が、オーギュスト・チェスター大佐であった。司令官を失いちりぢりになった敗残の 兵力をまとめあげ、規律正しく基地に帰還したことは、アレックスも賞賛の辞を惜し まない。  二人の階級は同じであるが、独立遊撃艦隊の指揮権はアレックスにある。チェス ターは副司令官として、アレックスの下に配置されることになった。年齢的に五十七 歳の老練が、二十歳代の新進気鋭に傅くことになるのだ。  チェスター大佐の人格面において特筆すべきことは、いかなる境遇に陥ろうとも決 して自分に課せられた任務の遂行を怠らないことであった。シャイニング基地におい てアレックス達の到着を待つあいだにも、出撃準備の体制を進めつつ配下の将兵に対 して何をすべきかを忘れることのないチェスターであった。敗北に討ちし枯れている 将兵達の間を回っては、捲土重来ここにありと新司令官となるアレックスの下で再起 をかけることを説いてまわり、士気を鼓舞し高めるために尽力したのである。  独立遊撃艦隊の旗艦サラマンダーは一目で見分けがつく。  ハイドライド型高速戦艦改造II式といえば、同盟中を探しまわってもたった五隻し かなく、そのすべてがアレックスの元にあり、旗艦名を表す伝説の火の精霊サラマン ダーがボディーに描かれた艦は一隻しかない。艦体に絵を描くなど、正規の艦隊であ れば有り得ないことであるが、独立遊撃艦隊として特殊任務に就くことの多いアレッ クス達は、例外として黙認されてきたのである。そもそもアレックス達は、常に最前 線にあって本星や艦隊司令部に戻ることがなく、監視の目も行き届かずに、気がつい た時には連邦を震撼させる代名詞となっていた。  そのサラマンダーから一隻の上級士官専用舟艇が飛び出した。  それを見届けた二人は、 「さて、お出迎えするとするか」  というチェスターの呟きとともに展望室を離れ、最上階に通ずるエレベーターに乗 った。  二人の向かった最上階は、床面積の五分の四を占めるヘリポートと、特殊強化透明 プラスティックで隔たれた上級士官専用送迎デッキとで構成されている。  エレベーターを最上階で降り、通路を警備する衛兵に身分証明書を提示して、二人 が送迎デッキにたどり着いた時には、先程の舟艇はすでに着陸体制に入っていた。  砂塵を巻き上げながらゆっくりと着陸する舟艇。  タラップが掛けられ降りて来た人物。  それが二人の新たなる上官となる、アレックス・ランドール上級大佐であった。  カラカス基地周辺の攻略成功を受けて上級大佐の称号を受けていた。上級大佐とは 正式な階級ではなく、職能級の一つである。将軍への功績点に達しながらも、定員に よる頭ハネの関係から、士気の低下を防ぐために設けられた大佐クラスに対する窮余 の対策である。例えば日本の警察の巡査長という階級が良い例である。

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2018年2月25日 (日)

梓の非日常/終章・生命科学研究所 真実は明白に

梓の非日常/終章・生命科学研究所

(五)真実は明白に 「説明してあげましょう。あの交通事故で、お嬢さまはほとんど無事でしたが一時的 な脳死状態に陥りました。放っておけば完全な脳死へと移行し、いずれ心臓なども止 まって死んでしまう。もう一人の方、浩二君は脳は生きていたものの、失血からすで に心臓死に陥って人工心肺装置で生きながらえていたが、これもいずれは死を迎える のは確実だった。どうにかしてどちらかでも助けられないかと思った私は、無傷で仮 死脳死状態であるお嬢さまの方を助けることにした。その方が可能性が高いからです。 だが、問題があった……」  とここまで説明して、一息つく研究者。 「お嬢さまは、パソコンには強いですか?」  尋ねられて首を横に振る梓。  梓には、麗香という何でもできる有能な人物がいて、すべてを任せているから、パ ソコンとは無縁だった。 「そうですか……パソコンの事を知っていれば、理解も早いのですが……。まあ、聞 いてください。  パソコンは、CPUという演算装置に入力されたプログラムによって動き、ハード ディスクという場所に、そのプログラムやデータを保存しています。これは人間の場 合にあっても同様で、大脳という場所の中に記憶装置となる領域と、演算装置に相当 する領域があります。だがそれだけでは、パソコンも人間も動かない。  BIOSプログラムという、パソコンを起動するものがあって、ROMという場所 に記憶されている。パソコンのスイッチをいれると、まずこのBIOSがROMから 読み込まれてはじめてパソコンは使えるようになる。BIOSには、ハードディスク からデータを読み取るプログラムや、画面表示を行ったり、キーボードからの情報を 入力するプログラムなどの、パソコンを使えるようにする基本プログラムが収められ ている。まあ、人間で言えば、朝目覚めて歯を磨いたり顔を洗ったり、着替えをする といった日常生活のはじまりの行動がインプットされているものです。パジャマのま まで外は出歩けないでしょう?」 「ええ、まあその通りですね」 「さてお嬢様には問題があると先程言いましたが、そのBIOSに相当する記憶領域 が完全に消去されてしまっていました。つまり脳全体としては生きて活動できる状態 にあるが、肝心の目覚めるための記憶というプログラムがないから、いつまで経って も目覚めることがない。つまり仮死状態というわけです。  これを目覚めさせるには、外部から新たに記憶を移植するしかない」 「そうか! それであたしの……浩二の記憶を移植したのね。だから目覚めるための プログラムである浩二の記憶というかイメージが残っていたんだ。しかしそれは目覚 めるためだけのもので、記憶全体としては梓の記憶がそっくり残っているから、あた しは梓として認知できている。そういうことなのね?」 「ほほう……。なかなか理解力がありますね。まさしくその通りですよ」 「じゃあ、その記憶を移植された浩二はもう目覚めないの?」 「いや、移植と言っても、データをコピーしただけです。浩二君にはそのまま残って いるから、身体的な機能を復活させることができさえすれば、生き返らせることも可 能です」 「生き返る? 本当ですか?」 「ああ、そうですよ。冷凍睡眠で心臓死時点の状態のまま保存してありますから。移 植できる心臓やその他の臓器が見つかればあるいは……ということなんです」 「そうでしたか……。あ、そうだ。この浩二の母を見掛けました。もしかしたら……」 「うん。お母さんも知っていますよ」 「やっぱり……見舞いというか、会いに来ていた訳ですね」 「その通りです。母親というのは、子供にたいして執念ともいうべき愛着を抱いてい るらしいですな。心臓死をもって死亡宣告を受けても、息子の身体がそこにある限り 死んだことを納得しない。それこそ焼かれて茶毘に臥されるまではね。で、真条寺梓 を生き返らせることに成功し、その後のために浩二君の身体を冷凍睡眠にかけて将来 の復活に掛けることにしました。当然お母さんは生き返る可能性があるならと承諾し てくれた。そういうわけです。ただし梓お嬢さまのことは伏せてありますけどね」  これまでに疑問視していたことのすべてが氷解した。  長岡浩二というイメージの存在と、真条寺梓としての記憶と生活感。  浩二のイメージを引きずってはいるが、正真正銘の梓であると言えたし、何不自由 なく梓として暮らし、母の渚とも違和感なく母娘の愛で結ばれている。  しかし生き返らせてくれたのは、この浩二のおかげだ。  とすれば何とかして生き返らせてあげたいものだ。

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2018年2月24日 (土)

銀河戦記/第十三章 ハンニバル艦隊 IV

第十三章 ハンニバル艦隊

                 IV  数日後。  満を持して、スピルランス艦隊が出撃を開始した。  一切の補給を受けない、特攻部隊として。  シャイニング基地やカラカス基地を目にともせずに、一路その背後の共和国同盟奥 深くにまで進撃したスピルランス艦隊を、誰もが見落とすことになった。  それがスティールの思惑だった。  共和国同盟に侵攻するには、必ず基地を攻略して補給路を確保してからでなければ、 実現不可能なものと考えられていた。誰もがそう考えるだろう。だから補給を無視し た作戦など思いもしない。  そこに落とし穴があったわけである。  スティールの作戦は術中に入り、何の抵抗もなく共和国同盟の奥深くに侵入できた のである。  こんなところまでに敵艦隊が進撃してくることなどあり得ないから、守備艦隊など いるはずもなかった。スピルランス艦隊は易々と、周辺惑星を攻略していった。  共和国への侵攻ではなく、あくまでもアレックスをカラカスから引き離す陽動であ るから真っ向から同盟艦隊と一戦交える必要もない。迎撃艦隊が弱いと見れば撃破し、 強いと見れば逃げ回れば良いのだ。そして手薄な惑星を攻略して物資を簒奪する。  共和国同盟の只中に出現した連邦軍に人々は震撼した。  急遽迎撃艦隊が差し向けられたが、生死を分けるような本物の戦闘に参加したこと もない、第五軍団の諸艦隊はまるで歯が立たなかった。 「なんだ、赤子を捻るように簡単だな」  スピルランスが、呆れた表情で言った。 「当然ですよ。ここいらにいるのは、実戦の経験のない艦隊ばかりなんですよ。戦闘 の仕方すらまともに知らない」    共和国同盟が差し向ける迎撃艦隊をいとも簡単に撃滅させながらも、周辺惑星に対 しては燃料や弾薬、そして水や食料といった物資を簒奪していった。  攻略作戦が、容易く事が進んでいくうちに、将兵達の間には怠惰な日常から、安寧 な態度へと変わっていく。  それは一つの部隊の将校が引き起こした。  食料の纂奪のうえに、占領した地域の婦女子に乱暴を働くという事態が発生したの である。  永年の過去の歴史が示すように、占領住民への暴行は起こるべくして起こったもの である。  その事件が明るみになった時、同じ境遇にある他の将兵の衝動を止めることはもは や不可能となったと言わざるを得ないであろう。食料の搾取に向かった部隊のすべて の男達が、食料を奪いとると同時に婦女子への暴行を働きはじめたのである。逃げ惑 う婦女子を追い回し、悲鳴を上げるその衣服を引き剥がして事に及んだ。  もはやそれは指揮統制された軍隊ではなく、欲望に餓えた野獣の軍団に成り果てて いた。  連邦の地を遠く離れて、敵地の奥深くに切り込んでの野戦状態、止める手立てはな かった。  共和国同盟統合作戦本部では、緊急対策会議が連日で開かれていた。  自国内に攻め込んできたスピルランス艦隊だが、地球ローマ史にちなんでハンニバ ル艦隊と呼称されていた。 「これ以上、ハンニバル艦隊の簒奪を許しておくわけにはいかない!」 「そうは言っても、第五軍団には奴らには太刀打ちできる者はいません。平穏無事に 訓練程度しか行ったことのない連中ばかりなんですから」 「何を考えておるのだ。こういう時にこそ役に立つ、格好の人物がいるじゃないか」 「格好の人物?」 「ランドールだよ」 「ランドール!」 「しかし彼は、カラカス基地にいます。担当区域が違います」 「そもそもハンニバルが侵入してきたのは、第二軍団が油断してその通過を許してし まったからに他ならない。その責任を取らせるためにも、第二軍団のランドールに出 てもらう」 「しかし、今ランドールをこちらに向かわせれば、カラカス基地ががら空きになりま す。敵がそこを狙って奪還に来るのは明白な事実です。ハンニバルは陽動作戦です」 「だからといって、第五軍団に迎撃できる者はいない。そうだろう」 「確かにそうではありますが」 「なあに、ランドールにはハンニバルを撃退したあとで、またカラカス基地を攻略さ せればいいんだよ」 「そ、そんなこと……」  また無理難題を押し付けてきたな……。  ニールセン派の参謀達も、さすがにそれが行き過ぎであることがわかった。  せっかく苦労して手に入れた基地を見放した上に、それをまた攻略させるなどとは ……。  最悪の結果としてカラカス基地からの侵攻作戦を許してしまうことになる。  ここは最新鋭戦艦の揃ったニールセン直属の第一艦隊を派遣するのが最善だろう。  しかし、面と向かって意見具申できるものもいなかった。  結局、ニールセンの提案通りに可決された。  サラマンダー艦橋。  パネルスクリーンに映るトライトン准将と通信を交わしているアレックス。  「迎撃に向かった艦隊はことごとく撃破されて、すでに五個艦隊を失っている。奴等 をこれ以上のさばらせることはできないのだ。そこで君に白羽の矢が立った。君の配 下の部隊全軍をもって、これを撃退してもらいたいのだ」 「守備範囲が違いますよ。ハンニバルが暴れているのは、第五軍団の担当区域です」 「判っている。だが、やつに対抗できるのは、これまでにも数多くの敵艦隊を撃退し た実績を持つ君しかいないのだ。最前線を受け持つ我々第二軍団と違って、第五軍団 は内地にあって戦闘の経験がないに等しいからな、ハンニバル艦隊にとっては赤子の 手を捻るようなものなのだ。食料を纂奪されるのはまだいい。しかし婦女子がこれ以 上暴行されるのを黙って手をこまねいて見ているわけにはいかんのだ。是が非でも食 い止めねばならない」 「ハンニバル撃退の任に付くのは構いませんが、カラカスを空にしてもよろしいので すか。我々が出撃した後を代わって守れる余剰戦力は第二軍団にはないはず。かとい って、第一軍団からは出してくれないのでしょう?」 「そういうことだな……」 「敵もそれを狙っているのは確実です。ハンニバルに関わっている間に奪取されるの は目にみえています。ハンニバルの真の目的がそこにあるのではないかと、私は考え ています。カラカスから我々を引き離すために」 「それは十分考えられることだ。しかし足元を切り崩されるのも防がねばならないの だ。早い話しがだ、君にハンニバルを撃退させて、その後でカラカスを再び攻略させ るということなのだよ。それが統帥本部の作戦というか……」 「チャールズ・ニールセン中将の考えですか」 「ま、そのな……とにかく統帥本部の決定は変えられない、君は四十八時間以内に部 隊を率いて出撃したまえ」 「わかりました」 「それと……。いかに君とて、ハンニバル艦隊が相手では、現有勢力では心細いだろ う。シャイニング基地に逗留している第五艦隊の残留兵力二万隻を君の部隊に併合さ せることにした。使ってやってくれ」 「第五艦隊をですか」 「そうだ。これをもって第五艦隊は正式に解体されることになった。敗残の兵となり 意気消沈している彼らも、英雄と湛えられる君の配下に入れば心機一転の好機となり うる。また、それを成さしめるのが、君に課せられた課題というわけだ。私がハンニ バル撃退を引き受けたのも、旧第五艦隊の将兵達の命運を君に託したかったのだ」  第五艦隊の司令官としてそのままアレックスが引き継がないかという疑問が残るだ ろうが、正規の艦隊を指揮するのは准将という厳守規定があり、大佐である限りそれ は許されないことであった。独立遊撃艦隊という正規ではない艦隊だからこそ可能で あったのだ。 「私にできるとお思いですか」 「できなければ、君もそれまでの武人でしかないといういうことだ。いくら英雄と湛 えられていようともな」

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2018年2月23日 (金)

梓の非日常/終章・生命科学研究所 再会の時

梓の非日常/終章・生命科学研究所

(四)再会の時  部屋を抜け出して元来た通路を通って研究所へ向かう。  そして例の頑丈な扉の前に戻ってきた。 「さて……使えるかな……」  早速IDカードを挿入口に入れ、指紋照合機に手をあててみると……。  開いた! 「あはは……。本当に開いちゃうなんて、このIDカードってすごいんじゃない?」  しかし反面、カードをなくすと大変なことになることにも気がついた。 「大切に扱わなくちゃね……さて、この先に何があるかな……」  そっと慎重に足音を忍ばせて、先の通路へと進みだす梓。  途中研究員に出会ったら、叱られて追い出されるかな……、それとも資源探査船の 時のように自由に見学させてくれるか……。  何はともあれ問題は、 「うーん。どこの研究室かな……」  通路にはいくつかの各研究室の扉があったが、研究名を示す掲示板などは一切なか った。何を研究しているかを知られないための、セキュリティーの一貫なのであろう。  さっきのようにIDカードを使えばどの部屋にも入れるだろうが、まるで関係のな い所に入ってもしようがないし、研究員がいれば一悶着は避けられない。 「あれ……?」  扉が半開きの部屋があった。  まるで梓を誘っているかのように感じた。 「行ってみよう。鬼が出るか、蛇が出るか……」  そっと静かに、その研究室の中へ入って行く梓。 「な、何これ!」  中に入って驚いたのは、よくSF漫画なんかに出てくるような、培養カプセルとも 言うべき装置の数々だった。ガラス製の円筒の中に液体が満たされ、その中に多種多 様の動物が浮かんでいた。下から出ている泡はたぶん酸素であろう。 「これって、もしかしてクローン細胞かなんかの研究しているの?」  だとすれば生命科学研究所として、らしいと言えなくないが……。  現実世界からSF未来にスリップしてきたみたいな異様な風景であった。  犬、猫、……そして猿と、おおよその主要な種を代表する動物が、培養(?)され ていた。さすがに人間の姿は見られなかった。もしあれば倫理上の問題となるところ だ。  カプセルの間を歩きながら奥へと進む梓。  意外に結構広い研究室だった。  それだけ重要視されている研究分野なのであろう。 「あれは!」  ずっと縦形のカプセルだったが、正面奥の方に横形のカプセルがあった。 「なんだろう……。中に何か入っているようだけど……」  近づいて行く梓。  近づくにつれてそれははっきりとしてくる。 「う、うそでしょ」  その中に収められた個体は、明らかに人間と思われた。 「これは!」  それはまさしく人間だった。  カプセルは冷たく、明らかに中は冷凍状態と思われる。 「まさか冷凍睡眠?」  麗香から聞かされた、この施設の研究項目に冷凍睡眠というものがあったはずだ。 「まって、この顔はどこかで……」  記憶の中に、それはあった。 「長岡浩二君だよ」  背後から声がした。  驚いて振り返る梓。  追っていたあの研究者だった。 「こんな所で会えるとは意外ですね。梓お嬢さま……いや、長岡浩二君と言うべきか な」 「え?」  どういうこと?  どうしてあたしを浩二と……。  この人は、何かを知っている。 「あなたは、長岡浩二君だ。いや、といっても心の中の一部分ですから、あなたはや っぱりお嬢さまですな」 「なぜ、それを……どうして知っているの?」 「あはは……。なぜなら、浩二君の記憶の一部を、お嬢さまの脳に移植したのがわた しだからですよ」 「移植した?」  信じられなかった。

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運転手はあたし、車掌はお姉ちゃん?

インターポット

わーい!機関車だあ~!!

はしゃいでるわね。

汽車汽車シュポシュポ、どこへ行きますか?

よそ見してないで、前を見ていなさい!

だあってえ……。

どうしたの?

頭が窓につかえて抜けないのよおお( ;∀;)

2018年2月22日 (木)

銀河戦記/第十三章 ハンニバル艦隊 III

第十三章 ハンニバル艦隊

                III  その時であった。  スティール・メイスンがすっと前に出たのである。  一同が注目する。 「おお! メイスンか。何か名案でもあるのか?」  表情を明るくして前のめりになるようにして尋ねる司令官。 「一つだけあります」 「そ、そうか。言ってくれ」  メイスンは、声の調子を落としながら、自分の作戦を公表した。 「やはり、奴をカラカス基地方面から引き離すしかないでしょう。ただでさえ、軌道 衛星砲によって堅固に守られていますから」 「そんなことが出来るのか」 「策はあります」 「策とは?」 「精鋭を選りすぐった一個艦隊を要塞より出撃させて、クリーグとシャイニングの中 間点を通過して、敵地の後背に回り込みます。カラカス基地側は、ランドールによっ て制宙権を完全に掌握されているので、こちらからは不可能でしょう」 「後背に回り込むだと? だが、補給をどうする」 「補給などいりません」 「補給がいらないだと? 馬鹿なことをぬかすな。補給なしでどうやって戦うという のだ。敵の只中にいくのだぞ」  参謀の一人が反問した。  しかしスティールは静かに答える。 「簡単ですよ。現地で調達すればいいんですから」 「現地調達?」 「そうです。一個艦隊程度なら十分食いぶちを賄うことができるでしょう。同盟内深 く潜り込み、星々を攻略し纂奪を繰り返しながら各地を転戦していきます。最前線を 防衛する第二軍団は精鋭揃いですが、後方を支援するその他の軍団はまともに戦った こともない連中ばかりです。数は揃えていても戦力には程遠いですから、これを撃滅 するのもたやすいというものです」 「それだったらいっそのこと、そのまま首都星トランターへ向かったらどうだ」 「それは無理でしょう。絶対防衛圏には、百八十万隻からなる艦艇が集結しています。 烏合の衆とはいえ多勢に無勢というものでしょう」 「その百八十万隻が動いたらどうなる」 「それはありません」 「どうしてだ」 「絶対防衛艦隊の司令官は、チャールズ・ニールセン中将。全艦隊に対する派遣命令 の全権を事実上握っている人物です。意にそぐわない武将や自分の地位を脅かす武将 を、最前線の渦中に送り込み平気で見殺しにする男。自分の守備範囲に敵が侵入して こない限り、自分の手駒を動かすことはしません。情報によればニールセンが、僅か な手勢でカラカスを攻略し、孤軍奮闘して防衛任務をまっとうしてきたランドールを、 煙たがり敵視していることもわかっています。当然として、彼を差し向けてくるだろ うと推測します。侵入者を撃退してくれればそれでよし、あわよくば全滅してくれれ ば願ったりでやっかい者払いができるというもの。早い話が、カラカス基地方面が、 がら空きになるということです。その間に別働隊でこれを奪回するのです」 「なるほど……」  そんな声がそこここから聞こえてきた。 「ランドールのことばかりに気をとられているから策に窮することになるんです。そ の上にいる上官、しかもランドールを煙たがっているニールセンに働きかけて、ラン ドールをカラカス基地から引き離すように仕向ければ、何の苦労もなく基地を奪還す ることができるのです」 「そのために一個艦隊を、補給なしで敵国の只中に送り込むのだな」 「その通りです」 「しかし、その艦隊が生きて無事に凱旋できる保障はどこにもないぞ。敵艦隊に包囲 されて全滅する可能性の方が高い。誰があえてそんな火中に飛び込む勇気のある者が いる」 「わたしが行きましょう。こういう時は言い出した者と相場が決まっていますから ね」  自信満面の口調で言い放つスティールだった。  その表情を見つめていた司令官だったが、 「いいだろう。スティール・メイスンの作戦を採用することにする」 「ありがとうございます」  その時、将兵達を掻き分け、 「わたしに行かせてください」  と、司令官の前に歩み出たものがいた。  かつてカラカス基地を奪われた当直の基地司令官のスピルランス少将であった。基 地陥落で捕虜となり、捕虜交換で舞い戻ってきたばかりだった。 「スピルランスか」 「ぜひ、お願いします」 「いいだろう。君にまかせよう。参謀としてメイスンを連れていきたまえ」

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2018年2月21日 (水)

梓の非日常/終章・生命科学研究所 研究員

梓の非日常/終章・生命科学研究所

(三)研究員  準備が整ったというので、病院から連絡通路を通って研究所へ向かう。  早速最初に行う核磁気共鳴断層撮影装置(MRI)、及び明日の予定として陽電子 放射断層撮影装置(PET)に掛かることになった。前者は物理的な傷害があるかど うかを調べるため、後者は精神的な大脳活動状態を調べるためのものだ。  MRIは強い静磁場の中にあるプロトン(水素原子核)に対して、一定の電波を照 射したり切ったりすることで、組織内でのプロトンの動静を観察診断する装置。  PETは、日本ではあのノーベル賞研究者のいる島津製作所が製造している。放射 性フッ素を添加したFDGという特殊なぶどう糖を投与して、通常の細胞より増殖力 が強くエネルギー代謝量の多い、数ミリ規模の極微小がん細胞を発見するのがその主 な診断目的だが、大脳活動状態を調査するためにも利用される。何せ大脳はがんでな くても、ぶどう糖を大量消費する臓器だ。活動している部位と休眠している部位の差 がくっきりと現われる。  それから小一時間後、MRIでの診断を終えて、装置室から出てくる梓。 「さすがに、緊張したわね。しかし、あのうるさい音はどうにかならないのかしら」 「仕方がありませんね。あれが診断装置の特徴ですから。強磁界を発生させるために、 60から80ホンの音がする装置の欠点ですね」 「あれ? いた!」  姿を見失ったあの長岡母が、研究者らしき人物と話している。そしてお辞儀をして 別れて行く。  よし、今度こそ。  研究者の後を追い掛ける梓。長岡母の方を追ってもしかたがない。何しに来たかは、 研究者を調べる必要がある。 「あ……? お嬢さま、どちらへ」 「ちょっと用があるから、先に行ってて」  麗香には構わず、研究者を見失わないように小走りで走って後を追う梓。  研究者は、長岡母を見失った所の階段を降りて行く。 「地下か……」  降りて行った先にはいくつかの研究室らしき部屋と、通路の一番奥にある仰々しい 造りの頑丈そうな扉があった。研究室の扉はすべて自動ロックで鍵が掛かっているは ず。出入りするにはIDカードが必要だ。  梓はそちらよりも正面の頑丈な扉の方が気になった。梓の勘が、さっきの研究者は こちらだと訴えている。 『これより研究者以外立ち入り禁止』  というメッセージプレートが掲げられている。どうやら特殊なセキュリティーロッ クで守られた機密区画のようだ。壁にはロック解錠用のIDカード挿入口の他に指紋 照合機とと思われるガラスプレートが設けられていた。 「だめかあ……」  諦めかけたが、 「そう言えば、あたしもIDカード持ってたわねえ……」  IDカードを、麗香から渡された時のことを思い出してみる。 『このIDカードに組み込まれた超LSIチップには、お嬢さまのデータが特殊暗号 コードで記憶されています。真条寺家が運営・所有するすべての施設に入場すること ができます」  と説明してくれた。確か指紋をスキャンされたこともある。  そして、この研究所は真条寺家が運営している。 「ということは……使えるかも知れないわ」  自分の持っているIDカードは麗香に預けてあるバックの中。しばし考えてそれを 使ってみようと一旦戻ることにする。 「どちらに行かれていたのですか?」  梓の姿を見るなり質問されるが、 「ちょっとね……。バックを返して」 「あ、はい。どうぞ」  早速中を開けてIDカードがあるのを確認する梓。 「病室に案内します」  今すぐ戻るのは無理のようだ。麗香に不審がられないようにこの場は諦めよう。麗 香は用事があって一旦屋敷に戻ることになっている。その時を待ってから行動に移る ことにしよう。  麗香に着いて行くと、見慣れた通路を通っている。かつて交通事故で入院していた、 あの時の部屋に向かう通路だ。  一般の患者の姿は一切見られない。総婦長室やら院長室が途中にあって、専用の看 護婦待機部屋のある個室の病室。 「こちらのお部屋でございます」  やっぱりそうだ。 「ここって、以前いた部屋だよね」 「はい。ここがVIP個室になっておりますから」  中に入ると、ホテルの一室と見違えるような設備のある個室となっている。TV・ 冷蔵庫はもちろんあるし、空調設備や専用のバス&トイレ付き。壁は完全遮音になっ ており一切の音が洩れることがなく、外から入ってくることもない。窓ガラスに至っ ては、あらゆる狙撃銃を持ってしても貫くことのできない防弾ガラス仕様。 「明日は午前九時よりPETによる診断となります」 「あの巨大な装置に入るのは、かなりしんどいんだよね」 「はい。ですからMRIと分けて、二日がかりで行っています。とくにPETは精神 状態でずいぶんと変わってしまいますからね」 「ま、いいけどね……」  といいながら応接ソファーに腰掛けてTVをリモコンでつける梓。  番組は相撲中継だった。 「着替えはこちらのクローゼットに置いておきますね」 「うん……」 「わたしは一旦屋敷に戻ります。何かありましたら備え付けの電話でご連絡ください」 「わかった……」 「それでは失礼します」  麗香は出ていった。  しばらくTVの画面を見るとはなしに見続ける梓だったが、 「……行ったみたいね」  と動きだした。  目指すは例の場所。  もちろんIDカードを持って。

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2018年2月20日 (火)

銀河戦記/第十三章 ハンニバル艦隊 II

第十三章 ハンニバル艦隊

                 II  この時点においてアレックスが手中に収めた勢力範囲はカラカス基地だけに止まら なかった。  カラカス基地を防衛するに止まらず、周辺地域への逆侵攻を開始して、手当たり次 第にその勢力下に収めていったのである。  アイスパーン機動要塞と駐留部隊の搾取二千隻。  スウィートウォン補給基地と駐留部隊搾取千五百隻。  タットル通信基地と駐留部隊七百隻。  ミルバート補給基地と駐留部隊三千隻。  そして第二次・第三次カラカス基地攻略艦隊撃破による五千隻の搾取。  アレックスは基地に駐留するということはしなかった。常にその居場所を悟られな いように、基地を転々として動き回り、ある基地を攻略に向かった艦隊があれば、い つの間にかその背後に現れて、これを壊滅させていったのである。  基地も艦隊も、電撃石火の急襲を受けて、反撃するまもなく壊滅させられていった。 基地を奪われるのにならず、貴重な艦艇を搾取されて、みすみすランドール艦隊を増 強され、その増強した部隊によってさらに快進撃を続けるという悪循環であった。  すでにタルシエン要塞は、周辺基地をことごとくアレックスの手中に落とされて、 丸裸状態といっても過言ではないほどになっていた。火中の栗を拾うがごとく、アレ ックスに手を出せば出すほど、大火傷を負う状態である。  もはやアレックスのいる宙域への進軍を具申するものは誰もいなかった。  侵攻作戦は、クリーグ基地方面へと転進することになった。  しかし問題があった。何せクリーグ宙域は、補給できるような星々がほとんどなく、 長期戦となれば補給に事欠くことになる。当然として多くの補給部隊を引き連れての 侵攻となるが、そのルートの確保に多大な護衛艦隊を割かなければならなり、戦力不 足を引き起こすことは否めなかった。  戦略的には無意味といえた。  かと言って、シャイニング基地はあまりにも防衛力が強大すぎる。  地表を埋め尽くす無数のミサイルサイトとレーザーパルス砲が宇宙を睨み、地下数 十キロに設置された核融合炉からのエネルギー供給を受けた星全体を覆うエネルギー シールド。これを攻略するには最低でも五個艦隊は必要だとされている防御力を誇っ ている。  誰が考えても、最善の侵攻ルートはカラカス基地からしかない。  という結論しか出ないのであるが……。 「誰か、奴を打ちのめすという自信のある者はいないのか?」  声を枯らして要塞司令官がうなり声を上げた。  しかし、誰も手を挙げなかった。  テルモピューレ会戦でのアレックスの作戦は奇想天外にして絶妙。  火中の栗を拾おうという者はいない。  ただでさえこの要塞司令官は冷酷非情ながらも無能である。  作戦が成功すれば全部自分の手柄、失敗すれば詰め腹を切らせる。  それが分かっているからこそ、自分から進んで名乗り出るものはいない。

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ブルーレイ書き出しソフトが???

ロジテックのブルーレイディスクプレーヤー(BD)に付属していたソフト。

DiXiM BD Burner 2013

DTCP-IPプロトコルに準拠したSONY製nasne対応TV録画機器などから、
ホームグループネットワークを通して、PCのBDに
録画番組を書き出しできるソフト。

ハードディスクに録りためた番組を、BDに落とせる便利者でしたが、
2017年12月で利用期限終了。
AACS鍵の更新が出来なくなって使用不能になりました( ;∀;)

このままではハードディスクが満杯になって今後録画できなくなる。

仕方なく、同様ソフトの【SONY PC TV PLUS】を、
ソニー公式通販サイトから無料体験版をダウンロードしてインストール。
さらに、アクセスキーを購入(¥3000)して製品版にアップグレード。

さっそく録画番組のBDへの書き出しを行ったのですが……。

TV録画機器から【SONY PC TV PLUS】への書き出し指令。

すると、すると、すると!!!

なんと、DiXiM BD Burner 2013が立ち上がって書き出しを始めたのである。

ええええええ!

DiXiM BD Burner 2013はアクセス鍵の更新が終了して使用不能だったのに、
DiXiMのアクセス鍵メニューを見ると確かに使用期限は切れている。
他の録画番組も、DiXiMから操作すると正常に書き出しできる。
書き出しだけなら、DiXiM の方が見やすいので良しとしよう。

うーーーーーん。

考えあぐねた結果として、DiXiMの表示画面を通して、
実際は【SONY PC TV PLUS】が書き出しを行っているのではないだろうか?
そもそもの、SONY製nasneという規格がSONYなので……。

疑問だらけではあるが……。
ともかくTV録画機器からBDへの書き出しができるようになったので、

めでたしめでたし。

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2018年2月19日 (月)

梓の非日常/終章・生命科学研究所 診察

梓の非日常/終章・生命科学研究所

(二)診察  そこへ麗香が迎えにきた。 「お嬢さま、こちらにいらしたのですか。診察がはじまりますよ」 「早かったのね。手続きを待っている患者さんはたくさんいるんでしょ?」 「既に予約は入っておりましたし、お嬢さまのことですから……最優先で処理された のでしょう」  麗香に代わって受付係りが答えてくれた。 「例によってVIP待遇というわけね」 「その通りでございます」  いつものことながら、どこへ行ってもVIP待遇なのよね。たまには庶民の暮らし を体験してみたいもの。本来なら十八年間長岡家で暮らしていたのだろうが、記憶が ない以上体験とは言えない。 「それじゃあ行きましょうか。まずは問診からですよ」  麗香に案内されて、問診室かと思ったが、別の診察室に入った。  そこには女医さんが控えていた。 「ありゃあ! やっぱり女医さんか……」  旅行の時の副支配人もそうだが、何かにつけても梓を応対するのはいつも女性だっ た。 「男性医師に診られるのは恥ずかしいでしょうから……」 「ま、どうでもいいけどね……」 「担当医の不破由香里でございます。よろしくお願いします。それではお嬢さま、ま ずは問診からはじめますね」 「うん……」 「事故の後、頭が痛いと感じたことはありますか?」 「ないわね」 「身体がだるいと感じたことは?」 「うーん……。ない」  という具合に、問診表にそって質問と解答が繰り返される。  およそ二十問の問答があってから、 「以上で問診は終わりです。続いて触診しますので、上着を脱いでいただけますか?」 「う、うん」  女医の指示通りに上着を脱いでブラジャー姿となったところで、 「ブラジャーはそのままで結構ですよ。それでは……」  健康診断で良く見られる打診や聴診器による診断がはじまった。さらに肝心ともい うべき首筋あたりの触診に入った。 「痛かった言ってくださいね」  押したり叩いたり、頭をぐりぐり回して首筋の動きとかに異常がないかを確認して いる。 「それにしてもこんな大きな事故を続けて二度も経験されるとは、お嬢さまもよほど ついていないですね」 「二度め?」  そうか……。飛行機墜落事故は、慎二のせいだと思っていたが、もしかしたら誰か によって巧妙に仕組まれていたのかも知れない。自動制御装置にコースを逸脱するよ うなプログラムをインストールされていたとしたら? 慎二はたまたま居合わせただ けかも知れない。いくら重量(ペイロード)問題があったとしても、たかだか八十キ ロ前後の重量オーバーくらいで、あれだけの巨体のDCー10ジェット機が燃料切れ をおこすはずがない。  やはりUSA太平洋艦隊司令長官のドレーメル大将の言う通りにスパイが紛れ込ん でいる可能性がある。  問診が終わって、診断装置の準備が整うまで特別の応接室に通される梓と麗香。  二人きりになったのを機に尋ねてみる。 「ところで麗香さん、例の件の調査は?」 「申し訳ありません。スパイがいるとして証拠隠滅されないように、極秘理に調査を 進めていますので、まだ時間がかかりそうです」 「そう……。なんにしても、あたしの身の回りに命を狙う組織がいるとぞっとするわ ね」 「ボディーガードを、おそばにお付けしましょうか?」 「いらないわよ。葵さんみたいにぞろぞろ黒服を連れているのを見ていて、あまり印 象が良くないのを知っているから」  梓の言う葵とは、真条寺家の本家である神条寺家当主の跡取り娘である。社交界な どで会った時などには、何かと本家ということを鼻にかける、梓にとってはいけすか ない同い歳。  まあ、そのうちにまた会うことになるだろう。

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2018年2月18日 (日)

銀河戦記/第十三章 ハンニバル艦隊 I

第十三章 ハンニバル艦隊

                  I  タルシエン要塞中央ドックステーション。  スティール・メイスンが副官を引き連れて降りてくる。 「お帰りなさいませ、メイスン准将。今回もまた見事な戦いでした」  ステーションの責任者が声をかけた。 「取るに足りない戦いのことを言っても仕方あるまい。敵は最初から逃げ腰だった。 どうしてもこうも無駄な戦いを仕掛けるのか理解に苦しむ」 「同盟のニールセン中将のことですからね。差し詰め、気に入らなくなった提督を処 分しようとしたのでしょう」 「処分か……。まったくあいつは将兵のことをただの駒にしか考えていない。そんな にしてまで自分の信奉者だけを身近に集めて何するつもりだ。戦争なんだぞ、貴重な 味方の将兵を見殺しにしてどうする」 「その最たるものがランドールでしょう。我々でさえ正気の沙汰ではないと判る無茶 苦茶な命令を受けてます。明らかに、潰しにかかっていますよ」 「しかし、ニールセンの期待に反して、見事な作戦で勝利を続けているがな」 「そのランドールが、カラカス基地第三次攻略隊を退けて、またもや多くの艦艇を搾 取したもようです」 「そうか……その前のサラミス会戦でも勝利したしな」  サラミス会戦とは、最初のカラカス攻略戦から六ヵ月後に出撃した第二次攻略隊を、 宇宙機雷による進撃阻止と、それを迂回しようとした宙域にヘリウム3原子散布によ る核融合爆発によって、一気に艦隊を全滅させた戦いである。 「ランドール艦隊は、三万隻にまで膨れ上がってしまいました。もはや尋常な手段で はカラカス基地を攻略することはできないでしょう」 「ああ、軍部はランドールの実績を過小に評価しすぎだ。ちょこまかと小部隊で攻略 しようとするから、そういう事態になるんだよ」 「そうですね」  要塞作戦本部。 「一体いつになったら、同盟に進撃し屈伏させることができるのだ」  居並ぶ参謀達の前で、要塞司令官が憤懣やるかたなしといった調子で怒鳴っている。 「とにもかくにもカラカスを守備しているランドール一人が問題なのだ。我々の行く 先々に待ち伏せして、想像だに出来ない作戦を用いて奇襲をかけてくる。すでに三個 艦隊が撃退され、バルゼー提督は捕虜になった。しかも、奴は我々から搾取した艦船 を組み入れて戦力を増強している。そうこうしているうちに、奴の艦隊は三万隻にま でになってしまったぞ」 「カラカス基地を放っておいては、シャイニング基地を攻略することもできん!」 「その通りです。背後を取られてしまいます」 「いったいどうしてこうなってしまったのだ?」  要塞司令官が頭を抱えていた。  このままでは自分の責任問題だと、今頃になって気づいたのである。  タルシエン要塞は、自国の防衛以上に共和国同盟への侵攻作戦の拠点として築かれ たものである。当然侵攻作戦が行き詰っているとなると、その責任を問われることに なる。 (無能な参謀達のせいだろうが……)  スティールは、バルゼー提督を捕虜にされた原因である無策な作戦しか立案できな い統合軍参謀連中を信用していなかった。  作戦を指示されて出撃することもあるが、いざ戦場に赴いた時には完全に無視して、 自分の思い通りに戦ってきた。ゆえに、参謀達のスティールに対する風当たりは強か った。 「誰か、奴の息の根を止めることのできる者はいないのか?」  場内を見渡して意見具申するのを待っている司令官。 (何を今更ながら言っているんだ。以前にバルゼー提督が、三個艦隊でこれを叩き、 余勢を駆ってシャイニングに侵攻するという戦略を意見具申した時に、それを取り入 れていれば、ここまでにはならなかったはずじゃないか。バルゼー提督だけが、貧乏 くじを引かされたことを、何とも思っていないのか。ただ失敗したという結果だけし か見ていないじゃないか。実際、カラカスを攻略されて以降にも、何度となくラン ドールを潰すチャンスはあったのだ。なのに彼を過小評価したあげくに、幾度も少数 のみの派遣艦隊で散々な目に合い、なおも考えを改めようとしなかった。そして気が ついたときには、手を出すこともできない勢力に膨れ上がってしまっていた……実に 愚かだ)

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2018年2月17日 (土)

梓の非日常/終章・生命科学研究所

梓の非日常/終章・生命科学研究所

(一)生命科学研究所  生命科学研究所付属芳野台病院というプレートが掲げられたゲートをくぐるファン トムVI。 「久しぶりね。ここに来るのは」 「そうでございますね」  今日は、ハワイでの航空機事故の後遺症がないかを、確認する為にやってきたのだ った。二三日入院して念入りに診察がされることになっている。  病院の敷地に併設されて生命科学研究所がそびえている。  病院の玄関前に停まるファントムVI。  研究所の方には重症患者のICU(集中治療室)しかないので、病院の方で入院手 続きすることになっている。 「受付けして参ります」 「研究所の方、ちょっと見てくるね」 「研究所員の邪魔にならないように気を付けてください」 「わかった」  と確認しあって、麗香は病院内へ、梓は研究所へと向かった。  生命科学研究所。  以前病院の屋上から垣間見たことがあるだけだった。  陽電子放射断層撮影装置(PET)や、核磁気共鳴断層撮影装置(MRI)などの 最新設備を誇る生命科学研究所には、近隣の病院からも診断のために患者が運びこま れてくる。ただし通常として、交通事故現場や各家庭などから救急患者が直接運ばれ ることはない。ここはあくまで研究施設であり、各救急医療センターが手の施しよう のない重症患者や、PETなどの診断を必要とした場合、研究対象としての治療を行 うことを了承した場合に限って引き受ける。  なお、日本で最初の倫理的な性転換手術が行われた埼玉医大総合医療センター病院 も、車で十分としない距離のところにある。  広大な敷地にそびえ立つ研究所だが、その地下には二万キロワットもの巨大な超伝 導蓄電実験施設があるという。ただしこのことは一切公表されてはおらず、梓だけに 極秘理に知らされているだけだった。 「あれ?」  梓の振り向いた先には、見知った女性がいた。  それはかつての自分、長岡浩二の母親だった。  すっかり忘れ掛けていたが、まだ記憶の端に残っていた。  交通事故の後、退院した際に母に連れられて長岡邸を見舞ったあの日。自分の記憶 にある長岡浩二はイメージだけだと悟ったあの時のこと。  もはや自分自身の母親という意識はなかった。今の梓の母親は渚一人、母娘の絆も しっかりと築かれていた。 「なんでここにいるのかしら……」  長岡母は(渚と紛らわしいからこう呼ぶことにする)玄関から施設に入っていく。  どうも気になるので後を追ってみることにする。 「ええと……どこに行ったかな……。あ、いた」  丁度玄関から駐車場添いの通路の先の角を曲がるところだった。  あわてて後を追い、角のところまで来たが、 「あれ、いない……?」  その先の通路にはいくつかの研究室の扉と階段があった。  研究室に入ったか、階段を使ったか?  研究室に入るわけにはいかないし、階段は上か下か判らない。広大な施設だから下 手に探しまわっていたら迷子になってしまう。 「うーん……。ここに来ているということは、家族に何かあって入院しているのかな あ……」  もはや縁は切れているとはいえ、やはり気になるところだ。  麗香に頼めば調べてくれるかも知れないが、どう説明する? 麗香は梓の人格が入 れ代わっていることを知らない。そのことに気づいたのは幼馴染みの絵利香だけだ。 「あの……。何かご用がおありでしょうか?」  後ろから声を掛けられた。  振り返るときれいなお姉さんが微笑みながら立っていた。受付係のネームプレート を胸に付けていた。そういえば受付けを通らずに入ってきたから、追い掛けてきたの というところ。 「あれ? あなた……もしかしたら、梓お嬢さま?」 「はい、そうです」  研究所の者なら誰しも梓の顔を知っている。いや、知っていなければ研究所員とは 言えないだろう。研究所概要書には写真入りで載っているし、ここの所長室や会議室 にも額入りで飾ってあるからだ。 「やっぱりでしたか。今日は検査でお見えでしたよね。ですが一応付属病院の方で手 続きを……」 「ああ、いいの。手続きは麗香さんがやってくれているから。それより、さっきここ を四十代くらいの女性が通ったでしょう?」 「長岡さまかしら……?」 「そうそう、その長岡さん。ここには何の用で来ているのかしら」 「申し訳ございません。その件に関しましては、守秘義務によって来院者さまのこと は申し上げる訳には参りません。例えお嬢さまであってもです」 「そうなの……残念ね」  確かにその通りなのだろう。医師や類する研究者が守秘義務を守らなければ、患者 は安心して身を任せられない。  長岡母のことは気になるが、今の段階ではどうしようもない。  忘れなくちゃとは思うのだが……。

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2018年2月16日 (金)

銀河戦記/第十二章 テルモピューレ会戦 VIII

第十二章 テルモピューレ会戦

                VIII  カラカス基地奪取、キャブリック星雲不時遭遇会戦、そしてテルモピューレ宙域会 戦と、奇抜な作戦で十倍以上の敵を撃ち負かしたことで、アレックスに対する将兵達 の信頼は揺るぎないものとなっていった。  やがて一ヶ月後に迎えることになる第二次カラカス防衛戦においても、十倍以上の 敵艦隊が押し寄せてくるという情報が伝えられた時も、誰一人として不安を抱く者は いなくなっていたのである。  そしてそれは次ぎなる期待へとつながる。  隊員達の最大の感心事が、ランドール司令の准将への昇進である。 「問題は、統帥本部の将軍達方々がどう出るか」 「というよりも、チャールズ・ニールセン中将一人をどうするかじゃないかな」 「奴がいる限り、ランドール大佐の将軍入りはないな」  下士官から准尉(将校)へ、大尉から少佐(佐官)へ、そして大佐から准将(将 軍)へというように、新たなクラスに昇進する場合は、必ず軍部内にある査問委員会 による適正試験・面接・実地戦闘試験などが行われることになっている。 「いや。国家治安維持法の特別追加条項の第十二条がある」  それは、栄誉ある聖十字勲章を授賞するような特別功績をあげた場合で、国家治安 委員会から推挙され、共和国同盟最高評議会において議員の三分の二以上の賛同を得 られれば、軍部の意向に関わらず無監査で昇進できるとした法律である。  時として軍部というものは、国政を無視して独断先行して侵略戦争を始めたり、武 力抗争を起こしたりするものである。そのために軍部を監視・監督する機関として国 家治安委員会が存在する。国家治安委員会が活動の根拠とするのが、国家治安維持法 であり特別追加条項である。  第二条 将軍が艦隊を動かす時には、必ず委員会より派遣された監察官が同行する。  第三条 艦隊の行動は逐一監察官を通して委員会に報告される  第四条 監察官は委員会の直轄にあり、軍部はその活動を妨げることはできない。  第九条 委員会は、将軍職の解任請求を最高評議会に提出することができる。  第十一条 必要が生じた場合、新たなる将軍を最高評議会に推挙することができる。  そして先に挙げた第十二条である。  軍部とて国家の治安維持のために存在する以上、国家の法律には逆らえない。  テルモピューレから凱旋し、兵士達が休息を与えられてしばしの息抜きをしている 頃、敵から搾取した艦艇の改造作業を不眠不休で続ける人々もいた。  敵艦艇を搾取したとはいえ、ハード面はともかく敵が使っていたソフトがインス トールされている艦制コンピューターを、そのままでは利用することはできない。R OMを取り替えてメモリーを完全に初期化した後に、改めて同盟仕様のソフトをイン ストールする。これはウィルス対策を完全にするためである。またある種の艦では制 御コンピューターごと総取り替えし、回線網の再施設という根気のいる作業も必要で あった。  これらの担当責任者として、エンジン設計技師のフリード・ケースン中尉と、シス テム開発・管理技師レイティ・コズミック中尉があたっていた。 「どうだい。作業の進行状況は?」  アレックスは時折二人のもとを尋ねていた。カラカスを脅かす敵艦隊の来訪にそな えるためにも一隻でも多くの艦船を必要とし、逐一の報告は受けて知っていたが、そ の目でじかに確かめておきたかったからである。 「最初の時は三百隻、次が六百隻、そして今度が千隻です。休む暇もありません」 「本国では予算が足りなくて、損失した艦船の補充を受けようにもままならぬ情勢な のに、いとも簡単に艦船を増強してしまう我が部隊のことを、やっかみも含めて盗賊 部隊と呼んでるそうです」 「部隊創設当初の二百隻に、ロイド少佐が持ってらした二百隻の他は、すべて搾取し て編成された部隊が、今では二千隻に膨らんでます。本国に要請して手配されたのは、 それらを動かすに必要な将兵の増員だけ」 「戦闘要員だけでなく、技術部員の増員もぜひともお願いしますよ。これじゃあ、眠 る暇もありませんから」 「判っているよ。大至急に技術部員の派遣を要請しているところだ」 「大至急じゃなくて、超特急でお願いします」  レイティが強い口調で詰め寄ってきたので、思わず後ずさりしてしながら答えてい た。 「わ、わかった」 「何にせよ、搾取した艦艇を使役するのは結構ですが、ブービートラップが仕掛けら れることも十分考慮にいれてくださいよね。作業中に爆発したとかは、遠慮願いたい です」 「もちろんだよ」 「それじゃあ、忙しいのでこれで失礼します」  とつっけんどんな態度で、艦内に戻っていくレイティだった。 「ああ、済まなかった」  その後姿を見送りながら、頭を下げるアレックス。  技術的なことに関しては、二人がいるからこそアレックスの艦隊も存在できる。じ ゃじゃ馬でしようがないと廃艦の憂き目にあったハイドライド型高速戦艦改造II式を、 これほどまでの高性能戦艦に生まれ変わらせたのも二人のおかげだった。  そして、極秘裏に進められている例の件にしても……。  第十二章 了

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2018年2月15日 (木)

梓の非日常/第八章・太平洋孤島遭難事件 帰国

梓の非日常/第八章・太平洋孤島事件

(十七)帰国  長官との面談を終えて、ワイキキビーチで水着姿でくつろぐ梓達。その一方で、パ スポートを持たない慎二は、不法入国者として強制送還の処置をとられ、一歩もハワ イの地を踏むことなく空路日本に送り返されることとなった。 「覚えてろよー」  という捨てぜりふとともに。 「ねえ、梓ちゃん。あの艦の艦長さんだけどさあ」 「なに?」 「肩章に星二つだったわ。つまり上級少将ということ。普通艦長というのは、佐官ク ラスの将校が任命されるものよ。それが提督クラスの艦長が乗艦しているってことは、 通常とは違う特別任務が与えられているはずよね」 「そ、それがなにかな……」 「多分、戦略核兵器が搭載されているんじゃないかな。梓ちゃん、何か聞いてない?」  さすがに感のいい絵利香だ。状況証拠を分析し判断する能力値は高い。 「き、聞いてないよ。だって、オーナーになってることだって、初耳だったんだか ら。みんなお母さんがやってることだもん」 「そうだよね……そもそもあの艦を島に逸早く回航させてくれたのも渚さま」 「そうそう……」  冷や冷やどきどきの梓。渚から極秘と言われているので、答えられないもどかしさ。 「ま、いいか……直接的には、わたしたちには関係なさそうだから」 「それからね、飛行機の回収がはじまったようよ」  話題を変える梓。 「早いわね。三日後って言ってたから、明日じゃなかったの?」 「たまたま早く着いちゃったみたいね」 「あんな大きなものどうやって回収するの?」 「分解して回収するみたい。一応日本の飛行機だから、日本に持って返って事故調査 委員会の調査を受けてから、篠崎に返されるようよ」 「そうか、だとすると、慎二君。また槍玉に上げられるってことね」 「当然のことなんじゃない」 「冷たいのね」 「いい勉強になるわよ。何事もよく考えてから行動することを学習できるでしょ」  横田航空基地。  戦闘機の護衛を受けながら基地滑走路へ進入をはかるジャンボ機。その尾翼には真 条寺家のシンボルマークが輝いている。  滑走路を滑りながらジャンボ機は、管制塔近くに着陸した。タラップが掛けられ、 その周囲に米軍士官達が立ち並んだ。  ジャンボ機のドアが開いて、梓達がタラップを降りて来る。一斉に士官達が敬礼し て歓迎の意を表す。その先に横田基地司令官、肩章に星二つのドワイト上級少将が待 ち受けている。司令官は軽く敬礼すると、右手を差し出して握手を求めて来る。握手 に応える梓だが、その手の大きさの違いにとまどっている。 『長官からは、大切にお出迎えするように言われております』 『申し訳ありませんねえ。話しが大袈裟になってしまって』 『海賊船に襲われたというじゃありませんか。念には念をいれるのは当然でしょう』  タラップのそばに並ぶ士官達が小声で囁きあっている。 『なんだよ。どんなやからが降りて来るかと思ったら、女と娘じゃないか』 『だがよ。そのやからは、あのジャンボ機を自家用機にしてるんだぜ。それだけでも ただ者じゃないことがわかるぜ。しかもお出迎えの車が、ロールス・ロイス・ファン トムVIときたもんだ』 『今司令官と話している娘が、どうやらプリンセスのようだな。後の二人は付き添い みたいだ』 『しかし……』 『なんだよ』 『可愛い娘だな』 『ああ……』  その後の飛行機墜落事故調査委員会からの報告がなされ、飛行機の自動運行プログ ラムと燃料計が、何者かによって改変されていたことが明らかになった。 「つまり、慎二君のせいだけではなかったということね」  絵利香がため息のような声を出した。 「あ、あたしは信じていたよ。ほ、ほんとだよ」  焦ったような表情をして弁解する梓。 「たった八十五キロ程度で、飛行機が落ちるわけないじゃん。慎二をちょっとからか っただけだよ」 「はいはい、そうでしょうとも」  絵利香も深くは詮索しなかった、  そして顔を見合わせてほほ笑むのだった。 第八章 了

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2018年2月14日 (水)

銀河戦記/第十二章 テルモピューレ会戦 VII

第十二章 テルモピューレ会戦

                VII  誰しもが考えもしなかった作戦にうってでたアレックス達の完勝であった。敵の誤 算は、カラカス基地にある強力な軌道衛星兵器を盾にして防衛に徹し、一歩たりとも 出てはこないだろうと考えたことである。まさか防衛しなければならない基地を空っ ぽにして自分達の勢力圏内奥深くまで進撃してくるとは誰しも想像だにしなかったで あろう。それがゆえに何の警戒もせずにテルモピューレ宙域を渡ろうとしたのである。  アレックス達の電撃作戦によるバルゼー艦隊の壊滅、艦隊司令官バルゼーの捕虜と いう報が伝えられた時、タルシエン要塞司令官はあまりの動揺の激しさのために、要 塞に警戒体制を発令しただけで、後続の艦隊を派遣することすらなかった。  追撃の艦隊が出てこないのを知ったアレックス達は、悠々と宙域の掃討を行なうこ とができた。結果として、またしても千隻近い敵艦艇を拿捕して、基地に持ち帰るこ とに成功したのである。それもバルゼー提督という有力敵将を捕虜にして。 「前回と違って、今回は敵艦を鹵獲(ろかく)するのですね」 「頂けるものは頂いておくのが、私のポリシーだからな。今回は策謀の余地もないだ ろう」  こうしてカラカス基地の防衛に成功したアレックスは大佐に昇進した。ゴードン・ カインズ両名はそれぞれに中佐となり、配下の多くの士官達も多く昇進を果たしたの である。もう一人の少佐であるディープス・ロイドは、キャブリック星雲会戦に参加 していなかったせいで、功績点が僅かながらも昇進点に届かず昇進から外れた。 「残念でしたね、少佐殿。後もう少しでしたのに。キャブリック星雲に参加していな かったのが尾をひきました」  副官のバネッサ・コールドマン少尉が慰めた。 「しかたがないさ。運不運は誰にもある。搾取した艦艇に配属された乗組員を訓練し なければならないのは当然だし、だれも敵と遭遇するとは思いもしなかったのだか ら」 「でも、大丈夫ですよ。ランドール司令は公正な方ですから、すべての将兵に均等に チャンスを与えてくれます」  士官学校時代にアレックスから、戦術理論と戦闘における行動理念を、直々に叩き 込まれたバネッサの言葉である。まさしくアレックスの言葉を代弁していると言える だろう。  さらにもう一人特筆すべき昇進者がいる。  独立遊撃艦隊再編成当初からアレックスの副官として尽力を尽くし、たぐいまれな る情報収集・処理能力でアレックスの作戦を情報面からバックアップした、情報将校 レイチェル・ウィングである。  今回の作戦においても、バルゼーの到着を逸早くキャッチし、その艦隊がテルモピ ューレ宙域を突破するコースを通るという情報を掴んだのも彼女と彼女が指揮する情 報班であった。いかにアレックスとて、敵艦隊の正確な情報なしには、テルモピュー レ宙域会戦の綿密な作戦を立てられなかった。  彼女の提供した情報は、アレックスの立てた作戦に匹敵する功績とされ、無監査に よる少佐への昇進を認められ、宇宙艦隊史上初の現役女性佐官の誕生となったのであ る。  これは意外と思われるかもしれないが、宇宙艦隊勤務につく女性のほとんどが三十 歳を前に地上勤務に転属するため、現役で少佐に昇進した例は過去にはない。艦隊勤 務の激務による生理不順、無重力の影響による骨格からのカルシウム溶出や、宇宙線 による卵細胞の遺伝子破壊などなど、宇宙艦隊生活は女性の妊娠・出産を困難にする 障害が多すぎる。ゆえに結婚を考える女性士官としてはごく自然な淘汰であろう。  しかしながら、アレックスの率いる独立遊撃艦隊は、めざましい功績を立て続けに あげて、全員が急進歩的に昇進しており、ただでさえ士官学校出たばかりの新進気鋭 が勢揃いしているのだ。現在大尉の階級にあるジェシカ・フランドルもパトリシア・ ウィンザーも、確実に佐官に昇進するのは時間の問題である。

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2018年2月13日 (火)

梓の非日常/第八章・太平洋孤島遭難事件 寄港

梓の非日常/第八章・太平洋孤島事件

(十六)寄港  ハワイ諸島。  パールハーバーに入港する資源探査船。  沿岸に集まった野次馬が、その巨大な雄姿に見とれている。  合衆国が所有するすべての戦略・攻撃型原子力潜水艦より、装備を強化した戦闘艦 として、さらに深海資源探査船としての装備をも合わせ持った、水中総排水量四万八 千トンという世界最大の原子力潜水艦である。 『見ろよ。原子力潜水艦だぜ』 『それにしてもでかいが、海軍の潜水艦じゃないな。司令塔の脇に識別艦番号が記さ れていないし』 『潜水艦の場合は、その秘匿性から艦番号を表示しないことが多いんだよ。その代わ りに変な文字があるぞ』 『ありゃあ、中国の漢字とかいうやつじゃないか』 『じゃあ、中国の潜水艦か?』 『原爆保有国だから、原潜を所有してても不思議ではないが……そんな技術あるか? しかもこんな巨大艦』 『うーん。どうなんだろ。中国軍は公式発表しないからな』 『バーカ。中国軍がパールハーバーに入港できるわけないよ』  彼らの意志には、日本という言葉がないようだ。核廃絶を唱える国家だから眼中に ないといったところ。 『おまえらどこ見てんだよ。星条旗と第七艦隊の旗を掲げているんだぞ。中国軍のは ずないだろ。間違いなく合衆国の潜水艦だよ』 『そういえば、司令塔のポールに……』 『ああ! おい、見ろよ。あの旗を』 『え、どれ?』  司令塔のポールに掲げられた旗を指差す野次馬。 『真条寺家のシンボルマークだよ』 『じゃあ、真条寺家の潜水艦か?』 『そういえば真条寺グループ傘下の資源探査会社が深海資源を探査する船を開発した っていう記事を読んだことがある。たぶんそれじゃないか?』 『じゃあなんで第七艦隊の旗が? 星条旗だけなら納得できるが』 『わからん……』  野次馬が理解できるはずもなかった。真条寺家と合衆国海軍との間で極秘理に調印、 運用されている潜水艦なのであるから。  太平洋艦隊司令長官オフィス。  梓と司令長官のドレーメル大将が対面している。麗香もドアの所で待機している。 『いやあ、お嬢さまの乗られた航空機が不時着したと聞いた時は、心配しましたよ。 要請があればいつでも救助に迎えるように、近くを航行中の空母エイブラハム・リン カーンに準備をさせていたのですが。その上に潜水艦までが攻撃を受けたと聞いた時 には驚きましたよ』 『そのお気遣いだけで充分です』 『ところで、あなた方を襲った駆逐艦ですが、当方でも色々な方面から情報を集めま したが、依然として不明のままです』 『そうですか……』 『潜水艦を拿捕しようとしたのか、それとも真条寺家の後継者であるあなたを亡き者 にしようとしたのか……』 『え? それは、どういうことですか? あたしを亡き者って』 『考えてもみてください。潜水艦を拿捕するのが目的なら、FA戦闘機が逸早くスク ランブル発進で攻撃してきた時点で、太平洋艦隊の擁護下にあったことが判明し、諦 めて撤退するのが常識でしょう。にもかかわらず執拗に攻撃しようとしてきた。とな ると、潜水艦に乗艦している重要人物を狙ったものと考えるのが自然です。そしてそ こには真条寺家後継者のあなた様がいらっしゃった』 『まさか……』 『太平洋の孤島にお嬢さまの乗った飛行機が不時着したという情報、及び資源探査船 が救出に向かったという情報が漏洩しているようですね。それがあなたを亡き者にし ようとしている組織に流れ、駆逐艦部隊が派遣されたと考えるべきでしょう。あの駆 逐艦はどう考えても正規の軍隊です。おそらく一国の軍隊の一部を買収して海賊行為 を行わせるだけの資金と権力を持ったかなり大掛かりな組織のようですね』 『情報が洩れている……』  親指の爪を唇に当てて、少し顔を伏せ加減でじっと考え込んでいる梓。 『麗香さん!』 『はい!』 『あたしがあの島にいることを知っている部署は判りますね』 『はい』 『信じたくありませんが、真条寺グループの中にスパイが紛れ込んでいるのかも知れ ません。極秘理に調査をしてください』 『かしこまりました』 『一応こちら側でも調査を引き続き行います。軍の上層部にもお嬢さまの不時着の件 が伝わっています。こっちから流れた可能性もありますから』 『お願いします』 『そうそう。大統領からの言付けがありました。いずれ機会があればお食事でもしな がらお話ししましょうとのことです』 『はい。その時は喜んでお受けいたしますと、お答えしておいてください』 『かしこまりました』 『それと、大統領専用機が現在空いておりますので、それでお帰りくだされても結構 です、とのことですが』 『そこまでして頂かなくても結構ですわ。自家用機がありますので』 『そうですか。それでは、向こうに着いたら横田基地をお使いください。お屋敷に一 番近い空港ですから。基地司令官には、到着予定時間帯に滑走路を空けておくように 連絡を入れておきます。あんなことがあったばかりですからね。警備上はるかに安全 です。できればそうしてください』

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家族揃って表彰式

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やったあ!また一番だよ\(^o^)/

あんた、いつもそこに立ってるよね(*'▽')

お姉ちゃんは、いつも二位だよね。

うるさい"(-""-)"

お母さんは三位か……。

ママはいつも出掛けているからだよ。

そうだよ、練習時間が取れなくってね。

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2018年2月12日 (月)

銀河戦記/第十二章 テルモピューレ会戦 VI

第十二章 テルモピューレ会戦

                 VI  サラマンダー艦橋。  敵艦隊が出現してくるのを待機しながら、アレックスは物思いにふけっていた。 「テルモピューレか……」  つぶやくアランの脳裏には、地球古代史にあるレオニダス率いるスパルタの三百の 戦士が数万のペルシャ軍に対して死闘を繰り広げた有名なペルシャ戦役のことが思い 浮かんでは消えていった。 「異国の人々よ、ラケダイモンの人々に伝えよ。祖国への愛に殉じた我等はみな、こ の地に眠ることを」  後世の人々は、最後の一人になっても勇猛果敢に戦ったスパルタ戦士のために、記 念碑を建て詩を刻んでその栄誉をたたえた。  戦史でのその後のペルシャ軍は、スパルタ兵を打ち破ったものの、戦略家テミスト クレスの策略にかかって、サラミス沖海戦で大敗して撤退することになる。  玉砕しつつも後世に英雄とたたえられたスパルタの戦士達と違って、我々は煙たが られやっかい者扱いのうえに最前線送りとなっている、援軍すら認められない捨て石 の部隊である。たとえ全滅したとしても家族以外に涙する者もおらず、誰も気にもと められないであろう。 「しかし……」  とアレックスは反問する。  アレックスには、戦史通りの轍を踏んで、カラカス基地を死守して玉砕する考えな ど微塵もないし、かといって敵を撃滅させることも不可能であるが、将兵を無駄死に はさせたくない。  作戦がことごとく失敗に終わり、最悪カラカス基地を放棄して撤退を余儀なくされ ても、将兵を失うよりはいい。当然責任問題としてアレックスは糾弾されることにな るだろうが。基地はいずれ取り戻せるが、将兵の命は戻らない。常日頃からのアレッ クスの口癖である。  チャールズ・ニールセン中将の思惑にことごとく逆らうことになるが……。  ともかくも、ここは戦闘を引き延ばせるだけ引き延ばして、ゴードンの別働隊が背 後から襲うのを待つだけしかない。 「前方に重力反応探知!」 「敵艦隊が出てきました」  オペレーターが叫んだ。  その声に我にかえるアレックス。 「よし。全艦、砲撃開始」  アレックスの下令と同時に、準備万端整っていた全艦より一斉に砲撃が開始された。  出鼻をくじかれた格好となった連邦艦隊は、指揮系統が乱れて浮き足立ち、狭い宙 域を密集隊形で進んでいるため、被爆した艦の巻き添えを食らって誘爆する艦が続出 した。一刻も早く宙域を抜けだそうにも被弾して動けなくなった艦艇が行く先を塞い でいて前になかなか進めず、かといって後退しようにも後続部隊がつかえ棒していて いた。右往左往しているうちにも後続の艦艇と接触事故を起こしていた。結局ほとん ど押し出されるような格好で宙域を抜け出せても、宙域の外からのし烈な集中砲火が 浴びせられてあえなく沈没していく。  バルゼーは、前方で繰り広げられる戦況、一進一退すらもままならぬ苦境にいらだ ちの色を隠せなかった。 「一体何をしているのだ。やられっぱなしじゃないか。戦力では圧倒的にこちらが有 利なんだぞ」 「とは申しましても、航行不能宙域に囲まれた隧道のような場所で、出口を完全に塞 がれた状態にあっては、艦隊総数は問題ではありません」 「隧道は非常に狭く、戦闘に直接参加できるのは、艦隊の先頭領域にいるせいぜい数 百隻程度。対して敵はこれを全艦で包囲する形をとり、数千隻を相手とすることにな ります」 「実質上の戦力差は敵に有利というわけか……どうやら、敵は我々がここを通ること を事前に察知して待ち伏せしていたようだな」 「まったくです。これだから、統合軍の参謀の考えた作戦通りに行動することなど反 対したんですよ」 「仕方あるまい。上の奴らは最前線のことなど、知ったことじゃないんだからな」 「おまけに作戦に失敗したら、責任だけはこっちに回ってくると」 「その通りだ。こうなってはいたしかない。後方の部隊に連絡して、進路転進し宙域 を迂回して敵の背後に回りこんで攻撃させよ」  だが後方部隊が行動を起こすよりも早く、新たなる敵艦隊が背後から襲ってきたの である。  ウィンディーネ艦隊が到着したのである。 「何とか間に合ったようだな」  艦橋でほくそえむゴードン。  遠路を迂回してきたゴードン率いる第一分艦隊が、背後から襲ったのである。  こと艦艇の進撃スピードにおいては、巡航艦や駆逐艦といった高速艦艇だけで編成 されているゴードンの第一分艦隊にまさる部隊は同盟には存在しない。まさしくこの 作戦のために編成されたようなものである。アレックスの信用を一手に引き受けて、 単独敵の背後に回ることに成功したことが、それを運用するゴードンの指揮能力の優 秀さを証明してくれるだろう。  もちろんいざ開戦となった時の、戦闘指揮能力もずば抜けており、その破壊力はす さまじかった。ただでさえ狭い宙域である、敵艦隊の後方部隊は回頭もままならず、 反撃する機会を与えられることなく、ゴードンの容赦ない攻撃を受けて、次々と撃沈 されていく。  前面からと後方からとの挟み討ちにあっては、艦艇数の優劣に関わらず主導権を握 ったアレックス達のなすがままとなった。ものの二時間も経たないうちに、敵艦隊は 壊滅状態となって、敵艦隊司令官であるバルゼーは降伏した。

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表彰式だよ

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わーい!一等賞だよ(*^^)v

妹に一位を取られるとは(;´Д`)

えっへん(^_-)-☆

で、何の競技したんだっけ?

フィギュアスケートだよね。

さて、三位の私は誰でしょう?


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2018年2月11日 (日)

梓の非日常/第八章・太平洋孤島遭難事件 戦い済んで……

梓の非日常/第八章・太平洋孤島事件

(十五)戦い済んで……  やがて炎上する敵駆逐艦のそばに浮上する潜水艦。  司令塔甲板に姿を現わす艦長と見張り要員。 『まだしつこく浮かんでいるな。魚雷長、一発ぶち込んでやれ』 『了解』 『撃墜されたパイロットのものと思われる救難信号がいくつか出ています』 『うむ。救助艇を出して助けてやれ。海賊は放っておいていいぞ』 『了解。救助艇を出して、救助に向かいます』  数分後、艦首より二筋の軌跡が、敵艦に向かって走る。そして火柱が上がり大音響 とともに敵艦は海のもくずと消えた。 『敵艦を三隻とも撃沈させてよかったのですかね。敵艦に乗り込んで素性を調査する こともできたのでは?』 『敵は海賊なんだぞ、それを許すと思っているのか。近づいた途端に、自爆してこち らを道ずれにするのは目に見えている』 『しかし甲板や中にまだ取り残されている乗員もいたのではないでしょうか』 『国籍を隠蔽した海賊船に、法や情けは無用だ。アメリカ国家と国民に対する攻撃は、 いかなる理由に関わらず断じてこれを許さない。これは大統領の強い意志であり、ア メリカの権威なのだ』 『そうですね。お嬢さまもこの艦も、アメリカ国籍でした』 『艦長。護衛艦が到着しました。十一時の方向から』 『パイロットの収容は?』 『全員救助して帰還中です』 『よし。収容が完了次第、浮上したまま基地に帰還する。出航準備。星条旗と我々の 旗をあげろ』  ポールに星条旗と、米国海軍旗、第七艦隊旗そしてARECの社旗がするすると上 がる。  艦体に接舷する救助ボートからパイロットが上がってくる。  労をねぎらうために艦長みずからが出迎えに出ていた。 『CVWー11航空団所属、キニスキー大尉であります』  以下、次々と自己申告するパイロット達。 『当艦の艦長のウィルバートだ。諸君らのおかげで敵艦隊に攻撃のチャンスが生まれ、 これを撃沈することができた。ご苦労であった、礼を言う。ゆっくりと静養してくれ たまえ。以上だ』 『はっ!』  最敬礼をするパイロットを後にして艦内に戻る艦長と副長。 『お嬢さまに、戦闘が終了したことを知らせましょう』 『おおそうだな。よろしく頼む』  居住ブロックの梓達。  戦闘終了の報告を受けて、一斉に喜びの声を上げる。 「一時はどうなるかと思いましたよ」 「ねえ、梓ちゃん」 「なに?」 「もう少し艦内の自由を与えてくれないかな」 「そうなんです、おトイレに行くのも不自由してます」 「トイレ?」  部屋にいるのは女性ばかりなので、遠慮なく話している。 「おトイレに行くのに監視がつくんです。一応女性隊員ですから、まあよしとすべき なんでしょうけど」 「艦長に相談してみる。他に何かある?」 「それじゃあ、小銭の両替お願いします。そこの自販機、アメリカコインでないと使 えませんから。ドル紙幣は持ってますけど、小銭までは用意していませんでした」 「わかった」  統合発令所。 『判りました。お嬢さまがそうおっしゃるなら、居住ブロック内に限っての自由を与 えましょう。ただし乗員のプライベートルームがありますので勝手に入らないように お願いします』 『当然です。個室が判る目印はありますか?』 『扉に部屋番号がついているのがそうです』 『判りました』 『ところで、米海軍太平洋艦隊司令長官が、ぜひお嬢さまにお会いしたいと言ってき ておりますが、いかがなされますか』 『お会いしましょう。今回の件ではおせわになりましたからね。断るわけにはいかな いでしょう』 『では、手配いたします』

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準備は万端

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ママ、何してるの?

見てのとおりよ。

お姉ちゃんが言ってたよ。

なんて?

屋根越えると壊れて消えちゃうんだって。

大丈夫よ。

どうして?

緊急避難用の赤トンボや鯛気球、ちゃんと用意してるから。

準備万端だね。

オフコース!

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2018年2月10日 (土)

銀河戦記/第十二章 テルモピューレ会戦 V

第十二章 テルモピューレ会戦

                 V 「まもなくテルモピューレに到着します」  オペレーターの声がアレックスの耳に届いた。 「敵艦隊の想定位置は?」 「テルモピューレの中心部を航行中だと思われます」 「よし、全艦停止して待機せよ」 「了解。全艦停止して待機します」 「時間通りに現れますかね」  パトリシアが傍に寄ってきていた。 「現れるさ」 「レイチェルからの報告にある、敵艦隊の出撃時間の情報が正しければですが……」 「信じるしかないだろう。ここは敵勢力圏内にあるんだ。哨戒機などを飛ばして確認 するわけにもいくまい」 「そうですね。問題はゴードンの方でしょう。何せ無線封鎖で情報を確認することが できませんから。運を天にまかせるしかないとは……」 「しかし、バルゼー艦隊の作戦プランが手に入ったのはこちらに有利に働いている。 進撃コースや予定到達時間まで、明確に記されていたのだからな。どうやら今回のカ ラカス攻略作戦は、バルゼーの意思ではなく軍部からの作戦を押し付けられたものが 判明した」 「どうしてそう思われるのですか?」 「自分が考え実行するのなら、作戦内容をコンピューターに記録したりするものじゃ ない。戦闘とは状況に際して臨機応変に対処しなければならないからな。今回の作戦 が記録されているということは、参謀が考えたプランに沿って動いているという証拠 だよ」 「参謀の考えた作戦ですか?」 「間違いないね。おかげでゴードンも無駄足を踏むことも、逆襲されることもなく、 予定通りに敵艦隊の背後を突くことができるだろう」 「しかし、そんな重要な作戦情報を手に入れられたレイチェルさんもすごいですね。 いつもながら感心しているのですが、どうやったのでしょう」 「あはは、背後にすごい奴がいるんでね」 「背後? すごい奴?」 「それが誰かは言えないが、我々の強い味方だよ。それ以上のことは聞かないでくれ、 君にも明かすことのできない軍事機密だ。いずれ時がきたら説明する。理解してく れ」 「わかりました」  アレックスが艦隊の運命を左右する機密事項を持っていることには理解できないわ けではないし、それが幼馴染みのレイチェルと共有していることも納得しているパト リシアだった。アレックスとレイチェルの関係に、時として嫉妬の念に駆られたりも するが、自分との関係よりもはるかに長い時間を共有し、艦隊創設当初から副官とし て任務をこなし、今のアレックスの地盤を確固たるものにしたのも、彼女の類稀なる 才能のおかげであることも周知の事実である。レイチェルなかりせばアレックスもま たなかりせり、である。  何にしても、アレックスとレイチェルの関係は、恋仲というものではなくて、あく まで司令官と参謀という職務の上での関係であることは明確な事実だった。それが唯 一、妻としてのパトリシアの居場所を安堵させていた。  ゆえにパトリシアとレイチェルの関係も、何ら支障をきたすこともなかった。  食堂で談話する二人。 「なんだ、そういうことだったの……」  会話の内容は、巡回査察のことを話題にあげていた。 「アレックスとて、所詮ただの男性ですものね。女性だらけの場所に立ち入るのは、 やはり勇気がいるでしょう」 「ランジェリー・ショップでのこと、見せてあげたかったわ。純情少年みたく赤くな って、そわそわしちゃって、笑いを堪えるのが辛かった」 「ふーん、見たかったな」 「でしょ? 店員から恋人にプレゼントなんかいかがですか? とかランジェリーを 手渡された時の表情といったら」  と言ってけたけたと笑うレイチェル。 「もしかして、そうやってアレックスを弄んでらしたんじゃないですか? レイチェ ルさん」 「あはは、それは言えてるかも知れないわね。だって面白いから」 「もう……。ああ、それで『今、どんな下着着てる?』とか、あの時聞いてきたけど ……。それが原因ね。それでアレックスは買ったの? ランジェリー……」 「買うわけないでしょ。急に態度を変えて、次に行くとか言って逃げ出した」  そうだろうと思った。もし買っていたのなら、とっくに自分にプレゼントとして渡 されていたはずである。 「で、もし買っていてパトリシアにプレゼントされたら、そのランジェリー着てあげ る?」 「そ、それは……アレックスが買ったものなら……」 「悩殺下着でも?」 「たぶん……って、何言わせるんですかあ」  急に赤くなってどぎまぎするパトリシア。  いくらアレックスと自分が夫婦であることを知っていても、そこまで立ち入って尋 ねることではないからである。  自分の下着姿を見せられる男性は、夫であるアレックスだけである。そのアレック スが自分にとプレゼントしてくれるものなら、どんなものでも着てあげようとは思っ ているが……。妻にランジェリーをプレゼントするということは、それを着て見せて 欲しいという意思表示でもあるだろうから。  こんな風に、ごく普通の女性同士で交わされる話に打ち解けあって話し合える二人 だった。

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クジラが~!その2

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おねえちゃん!

何やってるのよ。

あはは、今度はあたしの番だよ。

今、助けるからね。

大丈夫!気持ちいいんだから。

2018年2月 9日 (金)

梓の非日常/第八章・太平洋孤島遭難事件 反撃開始

梓の非日常/第八章・太平洋孤島事件

(十四)反撃開始  海面に潜望鏡とアンテナが突き出ている。  艦橋から戦闘用潜望鏡(Attack periscope)を覗いている艦長。それは、スコープ 内の目標にロックオンすれば、自動的に魚雷の発射制御装置に対し、距離や雷速など のデータが入力されて、発射ボタンを押すだけになるという、最新の装備を付加した ものである。 『潜望鏡では、まだ視認できない。衛星からのデータは受信しているか』 『はい。AZUSA 5号B機からのデータによれば、後方七マイルの地点をこちらに向かっ て接近中です。二隻です』 『どうやら、二隻撃ちもらしたようだ』 『第一次攻撃隊は全滅したのでしょうか?』 『たぶんな。最近の駆逐艦は対空装備が充実しているからな」 『はい。例のデヴォンシャー型には、対空兵器としてシースラッグ三連装備とシーキ ャット連装が各一基ずつ搭載されています。さらに備砲として11.2cmと8cm砲がそれ ぞれ四門ずつあります。一筋縄では撃沈できませんよ』 『しかし、おそらく第二波攻撃がエイブラハム・リンカーンより出撃していると思い ます』 『だが、我が軍の攻撃より先に敵の魚雷攻撃の方が早い。これ以上、お嬢さまを脅え させるわけにはいかないんだ。こちらから先制攻撃をかけるぞ。ハープーンミサイル 発射準備』 『ハープーンミサイル発射準備』 『攻撃指揮装置に、AZUSA 5号B機からの敵艦の位置データを入力』 『発射管扉、開放します』  ディスプレイに敵艦の位置と、刻々と変化するミサイル制御数値が表示されてい る。 『ミサイル発射準備完了』 『発射!』 『発射します』  ガス・蒸気射出システムによって打ち上げられたミサイルは、海上に出たところで 自身のロケットエンジンに点火され、敵艦に向かっていく。発射時からエンジン点火 してもよさそうに感じるだろうが、それだと噴射ガスの高熱や圧力によって射出口が 損壊して次弾を撃てなくなる。それを防ぐために考案されたのが、ガス・蒸気射出シ ステムである。 『ミサイルの発射を確認。敵艦に向かっています。到着時間一分十二秒後』 『発射管扉閉鎖』 「爆雷攻撃があってからずいぶん経つね。逃げきれたのかしら」  絵利香が、天井を見つめながら言った。 「まだじゃないかな、戦闘が終了すれば連絡があるはずだし」  それに梓が応える。 「次の攻撃があるとしたら、魚雷戦になると思います」  そして麗香である。 「魚雷!」 「そうです。それもホーミング魚雷ですから、たやすくは逃げられませんよ」  麗香が解説する。 「そんなあ……」 「麗香さん。みんなを脅えさせるようなこと言わないでよ」 「ですが、事前に心の準備をしておくのも肝要ですから」 「あ、そう……」  敵駆逐艦が、迫り来るミサイルに対し迎撃発砲している。  誘導兵器を攪乱する、チャフやフレアがランチャーから一斉射出されてはいるが、 一向に効き目がない。それもそのはず、衛星軌道上のAZUSA 5号B機によって、誘導さ れているのであるから、攪乱兵器が通用するはずがない。  そして着弾。みるまに爆発炎上する駆逐艦。 『敵駆逐艦、完全に停止。沈黙しています』 『よし、接近して確認する。微速前進だ。艦首魚雷の発射準備もしておけ』 『微速前進』 『艦首魚雷発射準備』

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2018年2月 8日 (木)

銀河戦記/第十二章 テルモピューレ会戦 IV

第十二章 テルモピューレ会戦

                 IV  一方、タルシエン要塞からもバルゼー率いる艦隊が、カラカス攻略のために出撃を 開始していた。  出撃の見送りをする要塞副司令官のスティール・メイスン准将。 「ランドールは油断のならぬ相手です。くれぐれも用心なさるように」 「ふん! おまえも言えるようになったものだ。いつの間にか要塞副司令官とはな。 敵のことよりまず味方からかも知れぬわい。足元を掬われないように気をつけなきゃ ならん」 「ご冗談をおっしゃらないで下さい」 「どうだかな。銀河帝国からの流れ者でありながら、統合参謀本部長に拾われてとん とん拍子に出世。今じゃ、緑眼の貴公子などという二つ名までもらっていい気になっ ている。若手精鋭を集めて軍の転覆を目論んでいるとはもっぱらの噂じゃないか」 「提督が世間の噂話を信じるとは思いませんでした」 「当たらずとも遠からずじゃないのか?」  軍事国家には大きなトラウマとも言うべきものがあった。  軍人たるもの立身出世を願うのは人の常である。ゆえに何らかの昇進の機会が与え られなければ不満が募るようになる。それが戦闘だったり技術開発だったりするのだ が、そのはけ口ともいうべき共和国同盟との戦争は膠着状態で、軍上層部は今の地位 に甘んじて守勢の態度を示していた。  しかしそれは、階級の低い若手精鋭にとって、昇進の機会の少なさを意味し、憤懣 やるかたなしの心境であった。  そんな中にあって、共和国同盟への大々的な侵攻作戦を説くスティール・メイスン の元には、多くの若手精鋭が集まるきっかけを与えていたのである。  共和国同盟に彗星のごとくに現れたアレックス・ランドールという人物に注目し、 彼が出世街道を驀進し軍の最上部に駆け上がる前に、同盟に侵攻して占領しなければ、 いずれは彼が指導する大軍団によって逆侵攻されるだろう。そう説いて回って、若手 精鋭達の支持を集めていたのは自然の流れといえた。集まった精鋭たちの中には、活 気に逸り軍の転覆さえ考えている者もいた。  酒場などで酔って騒ぐたびに、軍のお偉方の綱紀粛正などをわめくものだから、そ の首謀者としてスティール・メイスンが矢面に立たされることもあったのである。 「何にしてもだ。貴様の気持ちも判るが、今は時期尚早だろう。若手の気持ちをしっ かり抑えておくことだな」  バルゼーはそう言い残し、艦内へと乗艦していった。 「今の提督の話、どう思いますか?」  スティールの傍に副官のマイケル・ジョンソン少佐が歩み寄ってきて尋ねた。 「軍の転覆か?」 「そうです」 「実際にそう考えている連中も仲間の中にいることは確かじゃないか」 「それを知っていて、提督は動きませんね。密告とか」 「提督は、そんな人間じゃないよ」 「それはそうですけどね」 「バルゼーは数いる提督の中でも、私と同意見の考えを持つお方だ。カラカス基地の 奪取作戦の命令を受けたときも、三個艦隊を持ってカラカスを一気に攻略し、その余 勢を駆ってシャイニングへの転進を説いておられた」 「しかし上層部がそれを許さなかったですね。一個艦隊だけを与えてカラカス基地の みの攻略を命じてしまいました」 「軍上層部は、ランドールの恐ろしさを知らな過ぎる。数百隻の艦艇でカラカスを攻 略したのを、運が良かっただけだと評価し、未だ士官学校出たての若輩としか見てい ない」 「ミッドウェイやキャブリック星雲のことも過小評価されてますね。たまたま偶然と いった感じですよね」 「いわば急進派の先鋒ともいうべきバルゼー提督も、頭の固い保身派で固められた軍 上層部から敬遠されている。今回の作戦も、あんな若輩な相手に三個艦隊も派遣する 必要などない一個艦隊で十分だと、作戦内容やコース設定まで、参謀の考えたプラン を押し付けられてしまったのだ」 「バルゼー提督も、我々と同じ被害者の一人というわけですね。軍上層部に対する… …」 「そういうことだ……」  呟くように言いながら出撃していくバルゼー艦隊を見送るスティールだった。

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クジラが~!

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おねいちゃん、何してるの?

見てわからんか~!

わかった!新型の波乗りね(*^^)v

ちがーう!!!

それじゃあ……。

どうでもいいから助けてよ~( ;∀;)

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2018年2月 7日 (水)

梓の非日常/第八章・太平洋孤島遭難事件 戦闘開始

梓の非日常/第八章・太平洋孤島事件

(十三)戦闘開始!  居住区。  敵駆逐艦が出しているソナー音が響いている。 「この音は、もしかしてソナーじゃない。戦争映画でよく聞く音だわ」  絵利香が誰に聞くともなく言った。 「そのようですね」  平然と答える麗香。 「梓ちゃん。この船は調査船じゃなかったの」 「調査船だよ。でも、戦闘艦でもあるの」 「どういうことなの?」 「わたしからご説明します」  麗香が代わって説明をはじめた。ほとんどが梓がビデオで聞いたことと同じである が、さすがに原子力船と核弾頭搭載の件は伏せていた。実際の潜水艦を数多く見た軍 事オタクなら、その大きさから原子力ということも判断出来るだろうが、全員ずぶの 素人のために判るはずもない。 「音が次第に大きくなるわ」 「もう真上に来たんじゃない」  言うが早いか、激しい振動と爆音が鳴り響いた。 「きゃあ」 「爆雷だわ!」  全員耳を塞ぎわめいている。 「心配いりません。この艦は一万メートル級の深海にも潜れる耐圧船殻を持っていま す。通常の爆雷程度ではびくともしません。もっとも内部配管などが、振動で破損す ることはあるでしょうが」 「それじゃ、同じ事じゃない。バラストタンクに空気を送る配管などが破損したら、 浮上できなくなるんだよ」  梓が確認するように尋ねる。 「内部配管なら修理は可能です」 「どうかなあ……」  いくら信頼する麗香の言葉とて、爆雷の衝撃を経験すれば懐疑的になるのは当然で あろう。 『三百フィートまで潜航』  慌ただしく機器を操作するオペレーター。 『潜蛇、二十度』  爆雷の衝撃がしばらく続いた後に、ソナー音が小さくなりやがて静けさが戻った。 『敵艦、離れていきます』 『やり過ごせますかね』 『無理だな。相手は対潜駆逐艦だ。速力は向こうが上回っている。すぐに引き返して 追い付いてくるさ。しかもフォーメーションを組んでくるから、息つくひまも与えて くれないし、今度は魚雷攻撃もしかけてくるぞ』 『高々深度航行で逃げましょう。爆雷も届きません』 『いや。ここで奴等を見逃したら、またどこで攻撃を受けるかも知れん。逃げるわけ にはいかん』 『艦長。水中聴音器に爆音らしき音が入ってきてます』 『どれ、聞かせてみろ』  オペレーターからヘッドホンを受け取って、聞き耳を立てている。 『援軍の戦闘機が攻撃を開始したようだ。沈んでいる。一隻撃沈だ』  やった!  という声が飛び交う。 『静かに!』  その一声で再び静寂が戻る。 『敵艦は戦闘機の攻撃で、回避行動を取っている。奴等が我々を見失っている今のう ちに、ハープーンミサイルを撃てる距離まで離れるんだ。副長、潜望鏡深度まで浮上。 最大戦速、進路そのまま』  艦長の命令を副長が復唱しながら乗員に下令する。 『潜望鏡深度まで浮上。機関全速。進路そのまま』 『潜望鏡深度へ。メインタンク、ブロー』 『機関全速』 『進路そのまま』

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2018年2月 6日 (火)

銀河戦記/第十二章 テルモピューレ会戦 III

第十二章 テルモピューレ会戦

                 III  それから数時間後。  全艦隊に作戦の概要が伝えられ、出撃が開始された。  今回の作戦は敵の勢力圏内にまで進軍し、かなりの移動距離があるために、時間的 に余裕がなかったからである。敵艦隊の出撃を待ってからではテルモピューレに間に 合わない。レイチェルの情報を信じて、テルモピューレに先着して出口で待ち受けな ければならない。  別働隊のウィンディーネ艦隊はさらに長距離を隠密裏に進撃しなければならないた めに、今すぐにでも出撃する必要があった。 「途中で敵の哨戒機に発見されないことを祈っておいてくれ」  本隊に先行するウィンディーネ艦隊のゴードンが、パトリシアにこぼした言葉だっ た。 「ご無事を祈ります」  誰しもが成功を祈っていた。  ニールセン中将から迫害されるように、トランター本星からの援軍もなく、少数精 鋭でカラカス基地を防衛しなければならない境遇にあって、誰しもがただ作戦の成功 を祈るだけしかなかった。そしてアレックスの指揮の下、テルモピューレへと向かう のであった。  カラカスを後にして、全軍が出撃したという報は、トライトン准将の元へと届けら れていた。  第十七艦隊の居留地であるシャイニング基地の司令官オフィスで、フランク・ガー ドナー大佐から報告を受けているトライトン。 「そうか……敵艦隊を迎撃するために出撃したか……」 「アレックスは軌道衛星砲に頼る防衛戦を選ばなかったようです」 「その方が賢明だよ。いくら火力が大きくても動かない砲台など、所詮取るに足りな いものさ。アレックスが基地を攻略したようにな」 「彼の本領は、錯乱と奇襲攻撃です。数に勝る敵を叩くにはそれしかありません。さ て今回はどんな奇抜な作戦を見せてくれるでしょうかね」 「そうだな……私の力が及ばないだけに、彼にはいつも苦労をかけさせるしかない。 成功を信じるしかないだろう」  窓辺に寄り添って、空の彼方を見つめるトライトンであった。  その横顔を見つめながら、 「アレックス、無事に戻ってこれたら、酒を酌み交わす約束を果たそうぜ」  とトライトンのそばで、ガードナーも同じことを考えていた。  その時、机の上の電話が鳴り響いた。  ガードナーが送受機を取り上げ、トライトンに伝えた。 「統合本部からです」 「わかった」  送受機を受け取って替わるトライトン。 「トライトンだ……そうか、決まったか。判った、ありがとう」  そっと送受機を置いてガードナーの方に向き直ると、 「フランク、君の第八艦隊司令の就任が正式に決まったぞ」  と、手を差し伸べてきた。 「そうですか……」  トライトンの握手に応じるガードナー。  その表情は、やっときたかという安堵の色が見えた。  ガードナーの第八艦隊就任の話は三ヶ月前のことであった。  第八艦隊の司令が定年で引退となり、後任としてガードナーが内定していたのであ るが、第十七艦隊からの移籍ということで、決定が先延ばしになっていたのである。 第八艦隊には准将への昇進点に達している大佐がいなかったので、他艦隊よりの選抜 となりガードナーに白羽の矢が立ったのである。  それを渋ったのが、例によってニールセン中将であった。しかし圧倒的な功績点を 集めていたガードナーを拒絶するには無理があった。結局順当に選ばれたということ である。 「まあ、ニールセンとて軍の規定には逆らえないからな。クリーグ基地に駐留する第 八艦隊の司令官を、いつまでも空位のままにはできないだろう。シャイニング基地同 様に敵艦隊の重要攻略地点の一つだからな」 「しかし提督の少将への昇進も先述べになっています。素直には喜べません。それが 順当に進んでいれば、私はこの第十七艦隊をそのまま引き継ぐことができたのです」 「私のことはどうでもいいさ。第八艦隊は、私と同様にニールセンに疎まれて最前線 送りされているところだ。同じ境遇にあるものとして、暖かく君を迎えてくれるだろ う」 「だといいんですけどね」 「後は君の采配しだいさ。その点はまったく心配していないがね」 「わかりました……。それで他には何か伝達事項はなかったですか?」 「ああ、そうだったな。司令官の交代式があるので、クリーグ基地へ三日後の九時に、 出頭するようにとのことだ」 「了解しました」    テルモピューレに進撃しているランドール艦隊。  サラマンダー艦橋。  正面パネルスクリーンにゴードンが映っている。 「それではここでお別れだ。武運を祈る」 「期待に添えるように努力するよ」  と言いながら敬礼するゴードン。  やがて本隊から離れてゆくウィンディーネ艦隊。  その雄姿を見つめるアレックスにパトリシアが寄り添ってくる。 「うまくいくといくといいですね」 「そうでなくては困るがな……」

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シャボン玉飛んだ♪

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おねえちゃん!見てみて!飛んでるよ(^^)/

何してるのよ!!

わーい(*^_^*)プカプカだよ。

気をつけなさいね。

なんで?

屋根の高さ越えると、消えちゃうからね。

ええ!うそー!?


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2018年2月 5日 (月)

梓の非日常/第八章・太平洋孤島遭難事件 戦闘配備につけ!

梓の非日常/第八章・太平洋孤島事件

(十二)戦闘配備につけ!  ふうっ。  と深呼吸をする梓。 『お嬢さま、これより当艦は、戦闘艦として太平洋艦隊の指揮下に組み入れます。よ ろしいですね』 『仕方ありませんね。指揮権を委ねます。が、念のためにお聞きしますが、核弾頭を 搭載してるというのは、本当のことなのですね』 『間違いありません。二十四基のミサイル発射管のうち半数の十二基にトライデント D5型核弾頭ミサイルが搭載されています。ちなみに残りの十二基の内、八基がトマ ホーク巡航ミサイルと四基がハープーン対艦ミサイル用に換装されています』 『謝って発射するようなことはありませんか?』 『それは、ありません。核弾頭ミサイルを発射するには、【NORAD】北米大陸防 空総司令部から発令されるランチコードを入力した上で、艦長と副長が持つ発射キー を同時にスイッチオンしなければならないのです』 『つまり一人だけの操作ミスでは、発射は不可能といわけですね』 『その通りです』 『一体どこの軍隊が襲ってきているのですか?』 『国籍・所属一切不明です。海賊としかいえません』 『やっぱりこの艦を拿捕しようとしているのでしょうか?』 『それも不明です』 『わかりました。それでは、後をお願いします』 『ありがとうございます。それでは、お嬢さまは居住区のみなさまの所へお戻りくだ さい。部下に案内させます』  梓が統合発令所から立ち去ると同時に、 『ようし、いっちょやってやるか。久しぶりの戦闘だ』  と艦長は指を鳴らした。 『やはり軍人なら戦場に身を置く事こそ本分というものですね。提督になって地上勤 務となるのも考えものでしょう』 『そうだな。空母のような水上艦なら、提督となってもそのまま機動部隊司令官とし て、旗艦勤務で艦隊を直接運用指揮することもできるのだが、潜水艦にはそれがない』 『艦内放送の用意が整いました」 『全乗組員に告げる。現在、所属不明の駆逐艦三隻から攻撃を受けている。只今より 当艦は、探査船の任務から戦闘艦として、ARECの手を離れて合衆国海軍太平洋艦 隊の指揮下に入った。戦闘員は所定の位置へ、研究員は待避所へ移動、五分以内に完 了せよ。なお、居住区のお客様方には、なるべく静かにして、音をあまり立てないよ うにお願いします』  放送を終えて、呼吸を整える艦長。 『艦の状態は?』 『良好です』 『SINS(慣性航法装置)は正常に作動中です』 『NTDS(海軍用戦術情報処理システム)も正常作動中』  潜航状態では、太陽や星による天測航法やGPSなどの衛星航法など、海上で行え る艦位測定ができない。そこで精密なジャイロスコープや加速度計にコンピューター を接続して真方位を決定するのがSINSである。宇宙ロケットにも使われているも のとほとんど同じと考えていいだろう。また、すべてのセンサー(感受装置)からの データを処理し、状勢判断と各種兵器への攻撃指揮を統制するのがNTDSである。 兵器自体の攻撃性能はもちろんの事だが、現代戦では一撃必中を可能にする電子装備 の能力のほうがはるかに重要になってきている。 『お嬢さまは?』 『居住区に戻られました』 『よし。全区間の防水扉を閉じろ』 『防水扉、閉鎖します』  全艦を、防水区画ごとに隔てている防水扉が、次々と閉鎖されていく。 『防水扉、閉鎖完了』 『艦長。艦隊司令部より入電。現在、CVN-72空母エイブラハム・リンカーンより、 F/A-18E 戦闘機が緊急発進、当海域に向かっています』  潜航状態では通常の通信は行えないが、超長波の電波なら海面下数メートルは届く ので、適当なアンテナがあれば受信だけはいつでも可能だ。 『援軍来るだな。しかし、第七艦隊のリンカーンが何でこっちにいるんだ? 日付変 更線から東の太平洋領域は第三艦隊の担当だぞ』 『補修かなんかで、たまたまハワイに寄港する途中じゃないですか。それに、当艦も 一応第七艦隊所属ですし、リンカーンが援護に回るのは自然でしょう』 『そっか、まあいい。ともかく、こっちから攻撃するぞ。アクティブソナーによる探 知開始、ミサイル発射管一号から四号、ハープーンミサイル装填』 『アクティブソーナー探知開始します』 『ミサイル発射管、一号から四号までハープーンミサイル装填』 『敵艦。まもなく爆雷投下ポイントに到達』 『深度を変えますか』 『まだ早いな。今深度の計測中だろう。取り舵三十度』 『取り舵、三十度』

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2018年2月 4日 (日)

銀河戦記/第十二章 テルモピューレ会戦 II

第十二章 テルモピューレ会戦

                II  最後に質問に立ったのは、ゴードンの副官のシェリー・バウマン少尉だった。 「しかし、テルモピューレは敵の勢力圏内にあって、カラカスからはるかに遠く、こ れと対峙するにはカラカス基地を空にすることになります。もし別働隊が迂回して基 地の攻略に向かえば、容易く基地を奪われ逆に背後から襲われる挟み撃ちになりま す」  次々と副官三人娘が質問を浴びせた。  ランドール艦隊の懐刀ともいうべき部隊司令官の副官として自ら志願し、議論にも 旺盛な活発さを見せている。艦隊に対する誇りと、上官への忠誠心厚き精神から、少 しでも役に立とうする積極性からくるものである。もちろんそんな彼女達を副官に据 えるアレックスの期待に応えているわけである。 「それはないだろう。情報によれば攻略に向かってくるのは一個艦隊のみだ。しかも まさか基地を空にして、自分の勢力圏内に進軍して迎撃してくるとは、敵もまさかと 思って考えもしないだろう。それを逆手に取るのだ」 「バルゼー提督はそういう人間と言うんじゃないでしょうね」 「そういう人間だよ。回り道はしない。正面から堂々と向かってくる気質から考えれ ば、至極当然のことだろう」 「やはりですか……」  一同は、敵将の性格を熟知した上での、アレックスのいつもながらの作戦の立て方 に感心していた。士官学校の模擬戦闘での、敵司令官のミリオン・アーティスの詳細 を調べ上げて、あの劇的な勝利をもたらしたことは記憶に鮮明に残っている。 「では、全軍をテルモピューレ出口付近に展開させるのですね」 「いや、今回の作戦には伏兵としてゴードンに別働隊として動いてもらう」 「別働隊ですか?」 「そうだ。テルモピューレを形作っている三日月宙域の外縁を迂回して、敵の背後か らの急襲の任を与える」 「三日月宙域を迂回ですか? かなりの遠回りになります。そもそも敵艦隊がテルモ ピューレを通過するルートを通るのもそのためなんですよ」 「その通りだ。ウィンディーネ艦隊の高速性を活かすことのできる作戦だとは思うが な」  アレックスの問いかけに、ゴードンの副官のシェリー・バウマン少尉が答えた。 「確かにそうですが……、我が艦隊の中では最高速を誇るウィンディーネ艦隊です。 しかし、その作戦を遂行するには、敵のテルモピューレ進入時刻を的確に把握する必 要があります。到着時刻が早すぎれば進入前の敵艦隊の総攻撃を受けますし、遅すぎ れば本隊の援護に間に合わず、数の少ない分だけ本隊が危険に晒されることになりま すよ」  さすがに士官学校では、特務科情報処理を選考しているだけに、頭の切れは鋭い。 「シェリーの言うことはもっともだよ。それがこの作戦の重要な岐路となるだろう。 敵艦隊のテルモピューレ侵入時刻を事前に正確に知ることが問題だ」  皆の視線が、情報参謀のレイチェルに向けられた。それをできるのは彼女以外には いなかったからである。 「テルモピューレの正確な進入時刻は、敵艦隊が出港するまでは確実なことは言えま せんが、出港の予定時刻は把握しておりますので、艦隊の進行速度からおおよその時 刻を推定はできます。その推定時刻を元に行動し、敵艦隊出撃の情報を得て修正でき るコースを設定します」 「その出港推定時刻は信頼に足るものなんですか?」 「敵艦隊のタルシエン入港時刻は情報通りでしたし、これまでの経緯からしても信頼 性は高いものと確信しています」 「確信ですか……」  レイチェルは毅然として発言していた。「たぶん」とか「おそらく」といった曖昧 な表現は決して使わない。情報には自信を持っているからに他ならない。 「情報の信憑性を議論しても仕方がないだろう。ここはレイチェルの情報通りに作戦 を立てて行動することにする」  アレックスが決断した。  そうとなれば、事は急展開で進行する。  敵艦隊の出撃予定時刻を元に、ランドール艦隊の出撃時間やコース設定。別働隊と して動くゴードンの行動開始時間が決定されていく。

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釣れますか?

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ねえ、何が釣れるの?

シー!静かに……。

何が釣れるの(小声で)?

釣れてみなきゃわからないよ。

ピラニアだったりして……。

まさか!?

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2018年2月 3日 (土)

梓の非日常/第八章・太平洋孤島遭難事件 海賊

梓の非日常/第八章・太平洋孤島事件

(十一)海賊  その時、梓の携帯が鳴った。渚からである。 『なあに、お母さん……。え、不審船団が接近してる? 左舷後方からですって』  その通信を聞いた見張り要員が、あわてて左舷後方に双眼鏡を向け、やがて叫んだ。 『艦長。左舷八時の方角より、急速に接近する船があります。艦数三隻』  乗員の指し示す方角に双眼鏡を向ける艦長。 『うーむ。国や所属を示す旗を揚げていない。海賊船だな』 『まっすぐこちらに向かって来ます』 『警報鳴らせ』  けたたましく非常ベルが船内に響き渡る。船内を乗員達がそれぞれの持ち場に駆け 寄っている。 『お嬢さまを下へお連れしろ』  乗員の一人が敬礼して指示に従った。 『さあ、お嬢さま。下へ参りましょう』 『何が、はじまるのですか』 『戦闘ですよ』 『う、うそでしょ』 『さあ、はやく』  甲板ではさらに緊張感が迫っていた。 『敵艦。砲撃してきました』  射程の届かぬ砲弾で、艦の後方に巨大な水柱があちこちであがっている。最初の数 発は射程距離を確認するための試射弾である。次ぎは誤差を修正した直撃弾が飛んで くるはずである。 『駆逐艦だな。おそらく爆雷投下装置も装備しているだろう』 『甲板に水上ヘリが見えます。ダンキングソナーを搭載しているかも知れません』 『いや、あれは英国製の81型フリゲート艦です。対潜用のリンボー迫撃砲を搭載し ています。対潜ヘリコプター「ウェストランド・リンクス海軍型」が搭載されている ようです。短魚雷2基か爆雷2基装備』 『まずいな。本格的な対潜駆逐艦部隊のようだ。艦隊司令部に連絡だ。我攻撃さる、 速やかなる援助を請う。艦の位置と敵艦数も打電しろ』 『了解!』 『距離三十二マイルまで接近』 『急速潜航!』  と、艦長が発令すると同時に、司令塔にいた全員が階下へと急ぐ。最後に艦長が降 りながら、耐圧ハッチを閉める。 『ベント弁開放』 『メインバラストタンク注水及び前部釣り合いタンクへ移水』 『潜蛇、下げ舵一杯』  統合発令所では、急速潜航すべく各種の装置を操作している。  そして駆逐艦が迫る中、徐々に水中にその姿を沈めていく潜水調査船。  統合発令所。 『お嬢さま。これをご覧いただけますか』  艦長が機器を操作しながら言った。 『なに?』 『お嬢さまが当艦にお乗りになられた際に、戦闘状態になった時のために、渚さまが 記録されていたビデオです。潜航状態では外部との通信ができませんから、状況説明 をお嬢さまにお伝えするために事前に録画されていたもようです』  やがてディスプレイに渚の姿が映し出された。 『お母さん!』 『梓ちゃん。突然の戦闘になって驚いているでしょう。でもこれは予想されていたこ となのです。かしこい梓ちゃんのこと、当艦が原子力潜水艦であることはもう気づい ていると思います。  どの国家も羨望の的としている原子力潜水艦は、莫大な予算と超高度な技術力が必 要なため、そうたやすく建造できません。しかし非武装の潜水艦があれば、これを拿 捕するのはたやすいでしょう。そのうえで、戦闘艦として艤装を施せば強力な軍事力 を有することになります。共産国や政情不安定な国家に渡れば大変なことになります。 それがゆえにこの艦は、武装が施されることになったのです。おそらく襲ってきてい る艦隊は、AREC所有の深海資源探査船ということで、この艦が艤装されているこ とを知らずに行動していると思われます。  この艦の現在のオーナーは、梓ちゃんです。平時の運用はアメリカ国籍企業である、 資源探査会社ARECですが、有事には合衆国海軍太平洋艦隊の指揮下に入ることに なっています。それがこの艦の建造許可が承認される条件だったのです。現在、北太 平洋を担当する当艦を合わせ、南太平洋・大西洋とインド洋の各地域に計四隻の原子 力資源探査船が就航しています。深海底を長時間に渡って綿密に探査するには、動力 に空気を消費しない原子力船が最適なのは周知の事実です。  原子力潜水艦を建造できる技術力と、それを運営する乗組員の確保を考えれば、合 衆国海軍に頼るしかなかったのです。国防費の削減を余儀なくされ苦しい状況にあっ てもなお軍事力は維持したい海軍側も、ARECが拠出する一隻あたり百億ドルから の建造費は喉から手が出るほど欲しい。双方の思惑が一致して、このようなことにな ったのです。これは極秘事項ですが、この艦には戦略核弾頭も搭載されています。こ のことは梓ちゃんの胸の内にだけに留めて、絵利香ちゃんにも決して話さないでくだ さい。  ともかく世界最高水準の最新鋭戦闘艦としての能力を合わせ持っています。指揮権 を艦長に任せていれば安心です。きっと私の所に無事に戻ってくる事を信じています』  というところで映像が消えた。

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2018年2月 2日 (金)

銀河戦記/第十二章 テルモピューレ会戦 I

第十二章 テルモピューレ会戦

                  I  惑星カラカス衛星軌道上に旗艦艦隊が展開している。  ウィンディーネ艦隊は補給と休息待機で惑星に降下しており、ドリアード艦隊は哨 戒作戦で惑星周辺に散開していた。  サラマンダー艦内司令用の個室。  ベッドの上でまどろんでいるアレックス。  照明の落とされた部屋の扉が開いて、レイチェルが入ってくる。  アレックスは、この部屋の解錠コードを、部隊創設の副官時代のレイチェルに与え ており、パトリシアに副官が交代してもそのまま与え続けていた。情報参謀として最 重要な人物だからである。  ベッドの側に立ってアレックスを起こすレイチェル。 「ランドール司令」 「ん? レイチェル……。何かあったか?」  眠たそうな目を擦りながら起き上がり、ベッドの縁に腰掛けるアレックス。自分を 名前ではなく称号で呼んだことと、この部屋を直接訪れたことから、極秘重要報告を 持ってきたのだと察知していた。 「タルシエン要塞に、カラカス基地を奪還するべく新たな艦隊が入港するという情報 が入りました」 「そうか……とうとうやってきたか……」 「敵は一個艦隊、司令官はバルゼー提督です」 「バルゼーか……詳細を聞く前に、シャワーを浴びて頭をすっきりさせんといかんな。 ちょっと待っててくれ。その間、パトリシアに連絡して、参謀達を第一作戦室に呼び 寄せてもらってくれ」 「わかりました」  アレックスがシャワー室に入るのを見届けて、艦橋にいるパトリシアに連絡を入れ るレイチェル。  サラマンダー艦橋。  指揮官席に座るスザンナのところのヴィジホーンが鳴る。 「艦橋、ベンソン中尉です」  機器を操作して答えるスザンナ。  パネルにレイチェルが映し出される。 「作戦会議の招集です。参謀全員を呼び寄せるようにパトリシアに伝えてください」  自分の名前が呼ばれたのを聞いて、脇から顔を出して質問するパトリシア。 「ウィング大尉、何があったのですか?」  参謀を呼ぶのはいいが、大概その集合目的を聞かれるので念のためだ。 「敵艦隊の動静をキャッチしました。このカラカス基地奪還の動きがあります」 「わかりました。参謀全員を集合させます」 「よろしく」  映像と音声が途切れた。  早速ゴードンとカインズに連絡をとるパトリシア。  まずはゴードンだ。 「……というわけで、ご休憩中のところ申し訳ございません。サラマンダーまでご足 労お願いします」 「やっとおいでなすったか、なあに遠慮はいらんよ。腕が鳴ってしようがなかったん だ。今からそっちへ行く。艀をこっちへ回してくれ」 「只今、向かっています。十分後には到着するはずです」 「わかった」  親しげにパトリシアに心境まで伝えて答える。  そしてカインズはというと、 「了解した。今すぐ行く」  と簡潔明瞭に答えて無駄話はしない。  二人の性格の違いが良くわかる。  司令室。  バスローブを羽織って頭をタオルで拭きながら、バスルームから出てくるアレック ス。  カウンターではレイチェルがコーヒーを煎れている。  タオルを首に掛けて、端末の前に座って操作をはじめるアレックス。 「どうぞ」  そばのサイドテーブルにコーヒーカップを置くレイチェル。 「ああ、すまないね」 「どういたしまして」  カップを受け取り、コーヒーを一口すすってから尋ねる。 「それで、進撃ルートは?」 「まだはっきりした情報ではないのですが、おそらく最短距離でテルモピューレを通 ってきます」 「テルモピューレか……わざわざ、銀河の難所を通ってくるわけだ」 「しかし一応連邦側の勢力圏にありますからね。時間の節約を考えれば自然な選択か と思います」 「うーん……」  と呟いたまま、パネルに映し出されたテルモピューレ周辺図を見つめていた。  第一作戦室。  パトリシア、ゴードン以下の参謀達が揃っている。  そこへアレックスがレイチェルと共に入ってくる。  一斉に席を立って敬礼する参謀達。 「全員、揃っています」 「うん……」  明いた中央の席に腰を降ろしてから、厳かに言い放つアレックス。 「最新情報だ。連邦軍がこのカラカス基地奪還のために艦隊を派遣、現在タルシエン 要塞に入港して乗員の休息と燃料補給中だ」  その言葉に会場がざわめいた。  アレックスがレイチェルに目配せして合図すると、 「派遣された艦隊は、第二十九艦隊。一個艦隊をバルゼー提督が指揮しています。推 定進撃コースはテルモピューレを通過する最短コースの可能性大。なおも情報の信頼 性を確認中です」  淡々と説明をはじめレイチェルだった。  ほうっ。というため息がそこここから聞こえる。  またもやレイチェルのお手柄か……という表情をしている。 「それで今回の対応はいかになされるおつもりですか?」  レイチェルの情報を得て、アレックスがすでに作戦の概要をまとめているだろうこ とは、全員が推測しており、事実その通りだった。 「敵艦隊が最短距離のテルモピューレを通過してくることは間違いないだろう。そこ で、このテルモピューレという宙域の特殊性を利用させてもらう」 「特殊性?」  ここで再びレイチェルが解説する。 「タルシエン要塞より出撃した艦隊がカラカスへ最短距離で向かうとすると、このテ ルモピューレ宙域を強行突破しようとするでしょう。周囲は銀河乱流の分流にさまた げられて航行可能域は非常に狭く、艦隊は密集隊形で進軍するよりありません」  テルモピューレは、判りやすく例えるならば、蛇行する川が氾濫して流路を変えた 跡に残された三日月湖のような空間に挟まれた宙域だ。 「なるほど……」  カインズが納得して頷いたのを見て、その副官のパティ・クレイダー少尉が言葉を 継いだ。 「判りました。宙域の出口に包囲陣を敷いて、先頭集団を各個撃破していけば、たと え相手が数十倍の艦隊とて対等に渡り合えます。そういうことですね?」  さらにロイド少佐の副官のバネッサ・コールドマン少尉が確認する。 「確かにテルモピューレは狭いから、縦列で細長く進軍するしかない。結局どんなに 艦隊の数が多くても直接戦闘に参加できるのは前面の部隊だけ」

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クレープはいかか?

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クレープいかがですか?

そこで何してるの?

アルバイト中なの。

つまみ食いしないでね。

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2018年2月 1日 (木)

梓の非日常/第八章・太平洋孤島遭難事件 オーナー

梓の非日常/第八章・太平洋孤島事件

(十)オーナー  一行が集まっている一室に梓が入ってくる。 「梓ちゃん!」  その姿を確認して絵利香が飛びついてくる。 「もう、心配したんだから。怪我してない?」  涙声で梓の身体を確認している。 「ごめんね。ご覧の通り、ぴんぴんしてる。大丈夫よ」 「よかった……あれ、慎二君は?」 「あは、彼は営倉入りよ。墜落の責任を取ってもらわなくちゃね」 「可哀想ね」 「当然の処置よ。それで、機長の手術は終わったの?」 「うん。骨折も大したことなくて、後は回復を待つだけよ」 「よかったね」 「しかし、相変わらず、派手好きなお母さんだこと。で、この船は一体何なの、麗香 さん。海底資源探査船ということは艦長から聞いたけど、もっと詳しくお願い」 「はい。深海底の資源を探査するために開発・建造された、深海資源探査船です。最 近注目されているメタンハイドレードの分布状況や、熱水鉱床から産出される希少金 属などの調査をしています」 「梓ちゃんの名前が記されてるけど、どういう関係があるの?」  絵利香の質問に麗香が答える。 「はい。この船は、お嬢さまが実質上のオーナーとなっております、資源探査会社 AREC『AZUSA Resouce Examination Corporation』が所有・運営しています」 「へえ、あたしがオーナーになってるんだ」 「現在は、渚さまが代執行されておりますが、お嬢さまが十六歳におなりになり次第、 権限が移譲されるものと思われます」 「そうか、真条寺家の成人は十六歳だものね。でも梓ちゃん学生だよ。大学卒業まで は経営に参画できないんじゃない?」 「たぶん代執行権を麗香さんが引き継ぐことになるんじゃないかな。あたしの全権代 理執行人だもの。ね、麗香さん」 「はい。お嬢さまが、代執行をお認めになられればですが」 「もちろんだよ。麗香さんのこと信じてるから」 「ありがとうございます」 「ちょっと外の空気を吸ってこようっと」 「この部屋から出ちゃだめって言ってたよ」 「この船のオーナーは、あたしらしいから、大丈夫じゃないかな。麗香さん?」 「はい。お嬢さまだけなら」 「んじゃ、そういうことで」  居住区を出た梓は、統合発令所へ行く。途中で出会う乗務員は、梓を認めても誰も 咎めることなく、梓の船内での自由は確保されているようだ。しかし、要所に配置さ れた耐圧ハッチを潜らねばならず、その狭さに閉口していた。  やっとのことで統合発令所へたどり着くと、発令所要員が梓を認めて尋ねてくる。 『これは、お嬢さま。何かご用ですか?』 『艦長はいらっしゃいますか?』 『司令塔甲板にいますよ』  と天井を指差す発令所要員。  梓は、階上の艦橋そして司令塔甲板へと上がっていく。 『艦長! 上がっていいですか?』  一応念のために艦橋のところで、梯子を登る前に声を掛ける。任務遂行の邪魔をし てはいけないからだ。  その声に下を覗き、梓を確認して答える艦長。 『お嬢さま! どうぞ、お上がりください』  狭い耐圧ハッチを通って甲板に上がる梓。 『どうなさいましたか?』 『あのね。潜水艦に乗るのはじめてだから、物珍しくて』 『あはは。よろしかったら、後で部下に案内させましょう。これはあなたの船ですか らね』 『ほんとに? お願いします』 『しかしオーナーがこんな可愛いお嬢さまだなんてね。乗務員の多くがお嬢さまの写 真を隠し持っているとかの噂があります。いわば当艦のアイドル的存在になっている ようです』 『そ、そうなんだ。どうりでみんな初対面のあたしの顔知ってて、艦内をぶらついて ても咎められなかったんだ』 『まあ、許してやって下さいよ。みんな狭い潜水艦の中で、一所懸命に働いている仲 間なんですから』 『うーん。その気持ち判らないでもないけど……まあ、仕方ないわね』 『恐れ入ります』

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ペンションに早速来訪してくれました(*^^)v

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コイコイ海の見えるペンションget!

女の子が早速来訪してくれました(*^^)v

前方の海に何もなくて寂しいですね。

海に浮かべるアイテムとかが出てくれると期待しましょう。

「潮吹きクジラ」があるけど、こいつは何故か山の向こう側に現れるからX

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進路相談中!

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お母さん、相談があるんだけど。

なあに?

あたし、クレープ屋になろうと思うの。

大学進学はやめたの?

うん。

そう……あなたがやりたいなら反対しないよ。

ありがとう、おかあさん。


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