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2018年2月 3日 (土)

梓の非日常/第八章・太平洋孤島遭難事件 海賊

梓の非日常/第八章・太平洋孤島事件

(十一)海賊  その時、梓の携帯が鳴った。渚からである。 『なあに、お母さん……。え、不審船団が接近してる? 左舷後方からですって』  その通信を聞いた見張り要員が、あわてて左舷後方に双眼鏡を向け、やがて叫んだ。 『艦長。左舷八時の方角より、急速に接近する船があります。艦数三隻』  乗員の指し示す方角に双眼鏡を向ける艦長。 『うーむ。国や所属を示す旗を揚げていない。海賊船だな』 『まっすぐこちらに向かって来ます』 『警報鳴らせ』  けたたましく非常ベルが船内に響き渡る。船内を乗員達がそれぞれの持ち場に駆け 寄っている。 『お嬢さまを下へお連れしろ』  乗員の一人が敬礼して指示に従った。 『さあ、お嬢さま。下へ参りましょう』 『何が、はじまるのですか』 『戦闘ですよ』 『う、うそでしょ』 『さあ、はやく』  甲板ではさらに緊張感が迫っていた。 『敵艦。砲撃してきました』  射程の届かぬ砲弾で、艦の後方に巨大な水柱があちこちであがっている。最初の数 発は射程距離を確認するための試射弾である。次ぎは誤差を修正した直撃弾が飛んで くるはずである。 『駆逐艦だな。おそらく爆雷投下装置も装備しているだろう』 『甲板に水上ヘリが見えます。ダンキングソナーを搭載しているかも知れません』 『いや、あれは英国製の81型フリゲート艦です。対潜用のリンボー迫撃砲を搭載し ています。対潜ヘリコプター「ウェストランド・リンクス海軍型」が搭載されている ようです。短魚雷2基か爆雷2基装備』 『まずいな。本格的な対潜駆逐艦部隊のようだ。艦隊司令部に連絡だ。我攻撃さる、 速やかなる援助を請う。艦の位置と敵艦数も打電しろ』 『了解!』 『距離三十二マイルまで接近』 『急速潜航!』  と、艦長が発令すると同時に、司令塔にいた全員が階下へと急ぐ。最後に艦長が降 りながら、耐圧ハッチを閉める。 『ベント弁開放』 『メインバラストタンク注水及び前部釣り合いタンクへ移水』 『潜蛇、下げ舵一杯』  統合発令所では、急速潜航すべく各種の装置を操作している。  そして駆逐艦が迫る中、徐々に水中にその姿を沈めていく潜水調査船。  統合発令所。 『お嬢さま。これをご覧いただけますか』  艦長が機器を操作しながら言った。 『なに?』 『お嬢さまが当艦にお乗りになられた際に、戦闘状態になった時のために、渚さまが 記録されていたビデオです。潜航状態では外部との通信ができませんから、状況説明 をお嬢さまにお伝えするために事前に録画されていたもようです』  やがてディスプレイに渚の姿が映し出された。 『お母さん!』 『梓ちゃん。突然の戦闘になって驚いているでしょう。でもこれは予想されていたこ となのです。かしこい梓ちゃんのこと、当艦が原子力潜水艦であることはもう気づい ていると思います。  どの国家も羨望の的としている原子力潜水艦は、莫大な予算と超高度な技術力が必 要なため、そうたやすく建造できません。しかし非武装の潜水艦があれば、これを拿 捕するのはたやすいでしょう。そのうえで、戦闘艦として艤装を施せば強力な軍事力 を有することになります。共産国や政情不安定な国家に渡れば大変なことになります。 それがゆえにこの艦は、武装が施されることになったのです。おそらく襲ってきてい る艦隊は、AREC所有の深海資源探査船ということで、この艦が艤装されているこ とを知らずに行動していると思われます。  この艦の現在のオーナーは、梓ちゃんです。平時の運用はアメリカ国籍企業である、 資源探査会社ARECですが、有事には合衆国海軍太平洋艦隊の指揮下に入ることに なっています。それがこの艦の建造許可が承認される条件だったのです。現在、北太 平洋を担当する当艦を合わせ、南太平洋・大西洋とインド洋の各地域に計四隻の原子 力資源探査船が就航しています。深海底を長時間に渡って綿密に探査するには、動力 に空気を消費しない原子力船が最適なのは周知の事実です。  原子力潜水艦を建造できる技術力と、それを運営する乗組員の確保を考えれば、合 衆国海軍に頼るしかなかったのです。国防費の削減を余儀なくされ苦しい状況にあっ てもなお軍事力は維持したい海軍側も、ARECが拠出する一隻あたり百億ドルから の建造費は喉から手が出るほど欲しい。双方の思惑が一致して、このようなことにな ったのです。これは極秘事項ですが、この艦には戦略核弾頭も搭載されています。こ のことは梓ちゃんの胸の内にだけに留めて、絵利香ちゃんにも決して話さないでくだ さい。  ともかく世界最高水準の最新鋭戦闘艦としての能力を合わせ持っています。指揮権 を艦長に任せていれば安心です。きっと私の所に無事に戻ってくる事を信じています』  というところで映像が消えた。

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