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2018年3月 7日 (水)

梓の非日常/終章・生命科学研究所 炎の中で

梓の非日常/終章・生命科学研究所

(八)炎の中で  火災報知の警報は、地上の人々を驚愕させていた。 「火事か!」 「火元はどこ?」  右往左往しながら、事態の収拾にあたる所員たち。 「地下研究施設のもよう」  事務室の一角に設けられた火災受信機を調べて報告する所員。 「火元へ急げ!」 「消火器を集めろ」  消火器や消火用バケツを携えた所員が地下への階段に集まる。  もうもうと立ち上ってくる煙に、降りていくことをためらわせていた。 「スプリンクラーは作動しているのか?」 「わかりません!」  一方、所内を揺るがす警報音は、外にいた慎二の耳にも届いていた。 「な、なんだ?」  やがて開いた窓から煙が出始めたのを確認して、 「火事か!」  地下の研究室には梓がいるはずだ。  そして次の行動に移していた。 「梓ちゃんは大丈夫なのか?」  跨っていた自動二輪から降りると、猛然と玄関に向かって走り出した。 「課長! 下には梓お嬢様がいらっしゃいます!」  受付嬢の一人が、甲高い悲鳴のような声を出して言った。 「なんだと、それは本当か?」 「はい。間違いありません」  地下からハンカチを口に当てながら登ってくる研究員達。  その研究員を呼び止めて質問する課長。 「おい! 梓お嬢様を見なかったか?」 「見ない。自分が逃げ出すのでやっとだよ。他人をかまってる暇なんかない」 「ど、どういたしましょう……?」  階下から舞い上がってくる煙に恐怖心を露にする受付嬢 「だめだ! 何の装備もなしに地下へ降りるのは、死に急ぐことになる。火はなくと も有害な煙を吸えば意識喪失して二次遭難になる。消防が到着するのを待つしかな い」    そこへ慎二がやってきた。 「おい。梓ちゃんは?」 「何だ、君は?」  部外者の慎二にたいし、明らかに不審の目で尋ねる課長。 「あ、この人。お嬢様のお友達でいらっしゃいます」  受付嬢が答えた。 「どうでもいいだろ。梓ちゃんはどこだ?」 「わからん。下にいるかも知れないが、確認は取れていない……」 「確認だと? ならどうして確認に行かないんだ」 「この状態が判らないのか? 今、降りて行ったら死ぬだけだぞ」 「しかし、下にいるかも知れないのだろう。確かに梓ちゃんは、中に入っていった。 それが出てきていない以上、下にいるはずだろう」 「だが二次遭難だけは避けなきゃならん! 責任者として行かせるわけにはいか ん!」 「そんなこと言ってるうちに火が回っちゃうじゃないか」 「しかし!」 「ええい。聞いちゃおれん!」  言うが早いか、消火用バケツを持っていた所員を見つけると、それを奪い取って頭 から水を被った。 「お、おい。君!」  その意図を察して、止めに入る課長。 「どけよ」  凄みを利かせて課長を睨む慎二。 「ど、どうなっても知らんぞ」  その形相に後ずさりしながらも念を入れる課長。  大きく息を吸い込んで、気を入れてから、 「よっしゃあ!」  怒涛のように階段を駆け下りていく慎二。  そこは目の前一寸すら見えない煙だらけの世界だった。  さすがに咳き込みながら唸るように言った。 「何も見えんぞ!」  しかし野生の勘に冴えた頭脳は、一度通った道を覚えていた。記憶の糸をたぐりな がら目的の研究室へと急ぐ慎二だった。

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