最近のトラックバック

2021年3月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

他のアカウント

« 梓の非日常/終章・生命科学研究所 真相を語る | トップページ | 梓の非日常/終章・生命科学研究所 脱出の時 »

2018年3月14日 (水)

銀河戦記/鳴動編 外伝 ミッドウェイ撤退(4)

銀河戦記/鳴動編 外伝

エピソード集 ミッドウェイ撤退(4)  それから一時間後のことだった。  オペレーターが敵艦隊を発見した。 「敵艦隊。捕捉しました。方位角十二秒。上下角五・三秒。距離、三十七光秒」 「ついに来たか……」 「ぎりぎり間に合いそうですね」 「しかし、これからが正念場だ」 「そうですね」 「戦闘配備!」 「戦闘配備します」  艦橋内を指令が飛び交い始めた。  戦闘配備命令によって一挙に緊迫が最高潮に達した。  その頃、共和国同盟軍第五艦隊は、バリンジャー星から程遠くないところまでに迫って いた。  その旗艦である攻撃空母アン・ジュングンの艦橋。 「バリンジャー星到着まで、後三時間後です」  オペレーターの声に腕組を外して指令を下す司令官イ・スンマン准将。 「全艦戦闘態勢だ。索敵を出せ」 「全艦戦闘態勢!」 「索敵を出します」  戦闘態勢となり緊張の度合いを高めていった。  とはいえ、撤退する艦隊を追撃しているという安堵感があった。  司令官に歩み寄る士官が一人。 「閣下。バリンジャー星には多くの女がいるというのは本当でしょうか」  首席参謀のムン・ジェイン中佐が尋ねる。 「おおうよ。よりどりみどりで全員に行き渡るほどな」 「楽しみですね」 「よだれが出てるぞ」 「いやだ。からかわないでくださいよ」 「あはは」  大声を上げて笑う司令官。  周りのオペレーター達もくすくすと笑っている。    情報部より、バリンジャー星には、軍人達の性欲を満たすために、挺身隊の女性達が召 集されているという情報が寄せられていた。  最前線にあって激しいストレスに苛まれ、性欲に駆り立てられる軍人達を放っておいて は士気の低下を招くのは必至である。そこでそのはけ口を与えるために女性達による挺身 隊が組織されて、最前線に送り込まれている。  というもののである。  トリスタニア共和国同盟では、バーナード星系連邦の特別授産育英制度のことなど知る 由もない。  一度間違って伝えられた情報は尾ひれがついて広がっていった。  そんな中、冷静に意見具申する参謀がいた。 「閣下。占領した惑星の女性に暴行を加えるなど許されてよいわけがありません」  第五艦隊きっての良識派と言われるオーギュスト・チェスター大佐だった。  彼ほど運のない軍人はいないだろう。自身が招いているとはいえ……。  良識派ゆえに、間違っていると思われる指令に対しては、はっきりと意見具申を申し述 べていた。だが、それが上官の心象を悪くして嫌われる結果を招いた。有体に言ってしま えば、世渡りが上手ではないということである。上官に対して、ゴマすり媚びへつらうこ とも、気に入られて昇進の条件となるということである。しかし彼にはそれができなかっ た。  大佐から将軍へ昇進するためには、昇進査問委員会に諮られることが軍規に定められて いる。当該艦隊の司令官の推挙状の他、同僚の大佐の意見も参考にされる。当然としてチ ェスターの評価は低く、将軍候補として一度も挙げられたことがなかった。  第五艦隊の大佐にまでは何とか昇進を果たしたもののそこがどんづまりだった。後から 昇進してきた大佐達に追い越されて、将軍の座に就けないでいたのだ。そして定年間近の 五十九歳になった。この年になっては、もはや彼に将軍への昇進はあり得なかった。大佐 までの定年は六十歳であり、将軍となれば六十五歳まで延長されるとはいえ、仮に将軍と なってもすぐ定年で退役では士気に影響が出る。艦隊司令官となり、その人となりが将兵 達のすべてに浸透するには数年はかかるものである。やっとこれからという時にはもう退 役では意味がない。そこで定年間近な将兵には、勧奨退役や後方作戦部隊への転属辞令、 つまり肩叩きが行われるのだ。  その追い越された司令官であるイ・スンマン准将が冷ややかに答えた。 「暴行? なに言っているのだ。やつらだって戦場に女を連れてきて欲求を満たしていた んだ。そのために集められた娼婦じゃないか。なんなら女子挺身隊と言い換えてもいいが。 相手が連邦だろうが同盟だろうが、金さえ積めば喜んで身体を開くさ」 「果たしてそうでありましょうか? 女子挺身隊などという情報が正しいとは言い切れま せん。我々は連邦の組織など知らないのですから」 「馬鹿が。多くの女性が集められているのは間違いのないことなのだ。最前線に召集され る女性など慰問婦以外にあり得ん」 「そうは言っても……。それに守備艦隊がいるでしょう」 「その心配はありません。敵の主力艦隊は撤退をはじめバリンジャー星を放棄したもよう です」  首席参謀のムン・ジェインが口を挟んで答える。  彼は准将のお気に入りとなっていた。典型的なゴマすり人間。  そのイ・スンマンですらゴマすりでニールセン中将から特別待遇で准将に昇進したのである。 「惑星に残る住民を回収していては時間が掛かり過ぎて撤退が間に合わなくなる。どうせ 女ばかりだ、残していくのは当然だろうし、命までは取られないだろうと考えるのが自然 だ」 「女達は自分達がかわりに守ってやりますよ。へへ」  副官のノ・ムヒョンが、にやにやしながら言った。 「おいおい。股間を膨らませていうんじゃない」 「あ、これは……。なにせ、半年近く女を抱いていないもので」  そんな状況は艦橋だけではなかった。  艦内のあちらこちらでは、これから向かうバリンジャー星に滞在する女性のことでもち きりであった。 「聞いたか、バリンジャー星には女がうようよいるそうだぜ」 「なんでも公設の売春宿があって、連邦のやつらは自由に欲求を満たしていたらしい」 「一刻も早くこの腕に抱いてみたいものだ」 「あわてるな、女は逃げないさ」 「しかしいうことをききますかね」 「なあに。びんたの一つ二つ食らわせればおとなしくなるさ」

ポチッとよろしく!

11

« 梓の非日常/終章・生命科学研究所 真相を語る | トップページ | 梓の非日常/終章・生命科学研究所 脱出の時 »

銀河戦記/鳴動編」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 梓の非日常/終章・生命科学研究所 真相を語る | トップページ | 梓の非日常/終章・生命科学研究所 脱出の時 »