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2018年3月24日 (土)

銀河戦記/鳴動編 外伝 少年達の挽歌 前編

銀河戦記/鳴動編 外伝 少年達の挽歌


少年達の挽歌 前編  銀河宇宙には三つの強大な国家が、覇権を求めてその勢力を競い合っていた。  立憲君主制をとり、皇帝が絶大なる権力を誇る銀河帝国。  民主共和国が寄り集まって一つの連帯政治を執っているトリスタニア共和国同盟。  軍部独裁政治を敷くバーナード星系連邦。  さらには銀河帝国の後背に、自由惑星連合という中立の立場を表明する弱小国家の存在 もあった。  そして今、トリスタニア共和国同盟とバーナード星系連邦との間では、数百年に及ぶ戦 闘状態が続いていた。そんな中、銀河帝国は高見の見物とばかりに平和な日々をむさぼっ ていた。  銀河帝国首都星アルデラン。  帝国皇帝以下の皇族、皇帝より爵位を与えられた上級貴族が贅を極め、華やかなドレス や高価な宝石を身に着けて、日がな夜がな舞踏会や園遊会を開催しては、莫大なる散財を していた。  ここアルデランでは、貴族にあらずんば人にあらず。  そういう風潮がまかり通り、平民達は貴族達によって虐げられ、ほとんど奴隷的存在で しかなかった。  平民達は、電気・水道もない貧民街のみすぼらしい一角に押し込められ、その日のパン すら手にすることもできないような状況であった。農民達も事情は同じで収穫した作物の ほとんどを搾り取られて、ガリガリにやせ衰えていた。  しかし死なせてしまっては元も子もない。貧民街には一日に一度、救世軍と呼ばれる組 織によって食事の配給がなされていた。一日に必要な最低限の栄養が摂取できるようにす べての民に公平に与えられていた。  生かさず殺さず。  それが貴族の平民達への処遇である。  とある町の一角。  ぼろアパートの外の木箱の上にぼんやりと座っている少年がいた。  そこへ別の少年が声を掛けた。 「おい。スティール、こんなところで何をしているんだ?」 「何をって……」  小さな声でしどろもどろに答える少年の名前はスティール・メイスン。深緑の瞳【エメ ラルド・アイ】を持ちながらもその表情は暗い。  彼の一族は下級貴族の一員だった。母は、皇帝陛下の寵妃として、それなりの暮らしを していたが、皇帝の子を身ごもったのを境にして事情が一変した。妊娠は皇帝の寵愛を失 うきっかけとなり、宮廷を追い出されるようにして家族の元に戻された。やがてスティー ル・メイスンを産み落としたが、庶子は決して皇位を継ぐことができない。折りしも父親 が上級貴族の反感を買ったあげくに、爵位を取り上げられ貧民街へと追いやられてしまっ たのである。父親は酒に溺れるようになり、母が家族を養うために働きにでるようになっ た。しかし働く能力のない婦女子が生きていくには、下級貴族相手に身体を売るしかなか った。  今まさにぼろアパートの一室では情事の最中だったのである。  とはいえメイスン家にとって、客を取る事のできる屋根のあるアパートに暮らせるとい うだけでも果報者といえた。貧民街に住む平民の大半が路上生活者となっていたからであ る。 「そうか、君の母さん……」  事情を察した少年が話題を変えた。  彼の名は、ジュビロ・カービン。  貧しいながらも活発に駆け回る逞しい少年だ。 「一緒に来いよ。いいもの見せてやる」  スティールの手を引いて歩き出すジュビロ。  小脇に何やら端末のようなものを抱えていた。  案内されたのは貧民街の外れにある無人の通信中継所だった。  ジュビロは扉の鍵を手際よく外して中に入ると、携えていた端末を中継機に接続した。 「そこで見ていろよ」  端末を操作して回線の情報を取り出すジュビロ。  ジュビロが持ち込んだ端末は、画面に五行ほどの文字が流れるだけのお粗末な代物だっ たが、ジュビロにとってはこれが精一杯のものだし、これでも十分だったのである。とも かくネットに接続して情報さえ取り出せればいいのだから。 「こんなもの、どうやって手に入れたの?」 「なあに軍の施設に無造作に置いてある軍用トラックやジープから取り外した計器や、捨 てられていたラジオなどの部品を組み合わせて作り上げたんだ」  ジュビロは壊れたラジオやテレビなどの電子機器を修理するのを得意としており、寄せ 集めの電子部品の山から新たに通信機器を生み出す事など造作もないことだった。  その最高傑作と賞賛されるのが、電子レンジを元に作り上げたメーザー兵器だった。鍵 の掛かった扉をこれで簡単に壊して中に侵入することができた。  しかしジュビロにとっては工学的な代物を作るよりも、ソフト媒体であるネット犯罪の ほうに力を注いでいたようである。 「さすがジュビロ。機械のことならお手の物だね」 「おだててんじゃないよ」  ちょっと邪険気味に答えながら、端末を操作していたかと思うと開口一番に、 「すげえぜ! ビックニュースが飛び込んできたぜ」 「なに?」 「帝国後継者のアレクサンダー王太子が誘拐されたらしい」 「アレクサンダー王太子?」 「生まれ故郷のアルビエール候国で出産、静養していたマチルダ皇妃が、アルデランに戻 るところを船もろとも海賊船に襲われたらしい」 「へえ、ぶっそうだね」 「面白くなってきたじゃないか」 「面白い?」 「この帝国だって、いつまでも平和ではいられないということさ」 「そうだね」 「どうやら、緘口令が敷かれているようだ。王太子が誘拐されたなどと知られれば、大騒 ぎになるのは確実だからな」 「うん……」

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