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2018年3月 3日 (土)

梓の非日常/終章・生命科学研究所 浩二と慎二

梓の非日常/終章・生命科学研究所

(八)浩二と慎二 「なんだよ、これは!」  立ち並ぶカプセル培養基に驚愕の表情の絵利香と慎二。 「絵利香ちゃん、大丈夫? 気をしっかり持ってる?」 「だ、大丈夫よ」  とはいうものの、表情は硬かった。 (ほんとに大丈夫かなあ……でも着いてきている以上追い返せないし) 「一体何の研究しているんだ。こんなに動物を集めて」 「クローン研究……らしいわね。ここにあるのは生きた動物から取り出したES細胞 を、特殊加工して発生にまでこぎつけたものよ」 「梓ちゃんはこんなものを見にきているのか?」 「あほ! 目的は別のところにあるよ」  カプセルの間を抜けて、さらに奥へと案内する。 「これよ」  指差した先には怪しく輝く横形の冷凍睡眠カプセル。 「な……。これって人間か?」 「見て判らないの? 本物の人間だよ」 「生きてるの?」 「生きてはいないけど、完全に死んでもいないというところね」 「どういうこと?」 「研究者の話しによれば、生きた心臓を移植すれば生き返ることも、不可能じゃない ということらしいわ」 「ほんとなの?」 「ええ」 「……うーん……」  中の人物をじっと見つめて何かを思いだそうとしている慎二。 「慎二君、どうしたの? さっきからじっと見つめて」 「いやねえ。この顔……どっかで見たことがあるような気がするんだ」  なおも記憶の糸を手繰ろうと頭を抱えている。 「それでこの人と、梓ちゃんとはどういう関係なの?」 「聞いておどろけ! 以前絵利香ちゃんには話したことがあるけど、三年前の交通事 故であたしを助けてくれた人。長岡浩二君だよ」 「なんですってえ! ほんとなの?」 「ええ、間違いないわ。あの事故の後にあたしを蘇生治療した研究者が言ってるの よ」 「お、思い出したぞ。交通事故……そうだよ。三年前のあの日、交差点で女の子を助 けたあの人だ! 俺は事故の瞬間を見ていたんだ。突進してくるトラックの前に飛び 出して、女の子を庇って死んだあの人だ。俺の憧れ理想の人だった」 「そうね……。以前慎二もそんなこと言ってたわね」 「その女の子がどうなったか知らなかったし、どこの誰かも知らなかった。救急車で 運ばれてそれっきりだからな。そうか……その女の子が、梓ちゃんだったんだ」 「へえ……意外な巡り合わせね。もしかしたら、梓ちゃんと慎二君は赤い糸で結ばれ ているんじゃない?」 「よしてよ。慎二がその気になっちゃうじゃない」 「そうか……。やっぱり俺と梓ちゃんとは、赤い糸で結ばれているんだ」 「もう……」  梓を助けだした恩人が眠っていることは絵利香と慎二には伝わった。  しかし、その記憶の一部が移植されたことまでは、説明することをしない梓だった。  慎二には知られたくないと思ったからだ。  それから研究室を退却して、所内の応接室で話し合う三人。 「そうか、そういうわけで研究室通いしていたわけか。俺達にも内緒で」 「こんなこと簡単に話せる内容じゃないからね」 「わたしと梓ちゃんとの関係は、そんなものだったの? 何でも話し合える間柄だと 思っていたのに……。誰しも人には言えない秘密を持っているとはいえ、水臭いんじ ゃない?」 「悪かったわよ。でもね……場所も場所だったし」 「まあ確かに、あんなグロテスクなものが並んでいるところは、絵利香ちゃんには似 合わないな。よく気絶しなかったと不思議なくらいだ」 「あ、あれくらい何でもないわよ。実際平気だったでしょ」 「声が震えているわよ」 「気のせいじゃない?」 「しかし、浩二と言ったっけ、生き返る確率はどれくらい?」 「ははーん。慎二君は、生き返られると困ると思ってるでしょ。命の恩人となれば、 梓ちゃんの気持ちが移っちゃうんじゃないかと」 「ば、ばか言ってんじゃないよ」 「図星ね」 「二人ともいい加減にしてよ!」 「梓ちゃん、赤くなってるわよ」 「え? ほんと?」 「うそよ」 「もう……」  それから数時間後。  研究室を出て、病院前でタクシーを拾う梓と絵利香。  慎二は一足先に自動二輪で帰っていった。  タクシーの中。 「ところでファントムVIじゃなくてタクシーで通っているところをみると、麗香さ んにも内緒にしているのね」 「うん。お母さんにだって知られていないことだから。知っているのは絵利香ちゃん だけよ」 「そうか……」  運転手に聞かれても差しさわりのない程度に話し合う二人。

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