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2018年4月 1日 (日)

銀河戦記/鳴動編 外伝 王太子誘拐 前編

銀河戦記/鳴動編 外伝

エピソード集 王太子誘拐 前編  銀河帝国首都星アルデランの中心部に燦然と輝いてその豪華さを誇るアルタミラ宮殿。  そ の宮殿の内の謁見の間では、御前会議が行われていた。  絶対君主制を敷く銀河帝国では、皇帝の権限は絶大であった。  政治においては自ら選んだ貴族や大臣達に命令を下していた。  銀河帝国内には直轄領と自治領とがあり、直轄領は大臣達に、自治領は皇家御三家と呼 ばれる皇族に政治を委ねていた。  ロベスピエール公爵家のウェスト公国、エルバート侯爵家のサセックス候国、そしてハ ロルド侯爵家のアルビエール候国、これが皇家御三家と呼ばれる自治領である。それぞれ に自由惑星連合、トリスタニア共和国同盟、バーナード星系連邦との国境を守っていた。  さらに直轄領や自治領内には、伯爵以下の高級貴族が治める委任統治領と呼ばれる制度 もあった。  御前会議とはいうが、大臣達や貴族達によって議論がなされるのではなかった。皇帝が 前回の会議で命令を下した内容の報告・確認が主となっていた。  一人の大臣が中央に進み出て報告する。 「アレクサンダー王太子とマチルダ皇妃がお召しになられた皇族専用お召し船【ビントウ ィンド】は、当初予定のコースを通って、アルビエール候国から本国に入る頃かと思われ ます」  父親であるハロルド侯爵家の元に里帰りして、出産と静養を続けていたマチルダ皇妃が、 皇帝の男子であるアレクサンダー王太子を連れて、帰還の途についていたのである。  当初予定のコースとは言ったが、もちろん大臣と護衛を担当する将軍だけが知っている 最重要機密事項であった。  ……はずであったのだが……。 「一大事です!」  と、謁見の間に青ざめた表情で飛び込んできた臣下がいた。 「何事であるか!」  大臣の一人が問い返した。 「アレクサンダー王太子がお召しになられているビントウィンドが海賊艦隊に襲われてい ます!」 「海賊艦隊だと?」  真っ青になって、思わず勢いよく立ち上がる皇帝。 「くわしく報告しろ!」  数日前のことである。  アルビエール候国首都星サンジェルマンの宇宙港の皇家専用発着場に、ビントウィンド が停泊している。  宮廷の方から侍女達に囲まれて、アルビエール侯爵家の候女であるマチルダ皇妃が出て くる。両腕で大切そうに抱えているのが、銀河帝国皇位継承権第一位となっている生後三 ヶ月のアレクサンダー王太子である。  もう一人、女官長に抱かれた皇帝の次女にあたるマーガレット王女の姿もあった。  銀河帝国皇家においては、皇位継承権として男子に優先権が与えられていた。直系尊属 男子、三親等内傍系男子、直系尊属女子という順位で継承が行われていた。それがゆえに、 アレクサンダー王太子とマーガレット王女は、双子であるにも関わらずその処遇に圧倒的 な相違があったのである。マチルダ皇妃がアレクサンダー王太子の方を抱きかかえている のも至極当然のことだったのである。何せ次世代の皇帝陛下となられる身分のお方なので あるから。  ビントウィンドのタラップの前で、ハロルド侯爵がしばしの別れの挨拶を述べている。 「くれぐれも身体に気をつけて、王太子を一人前の良き皇太子としてお育てするのだ。よ いなマチルダよ」 「はい。父上さま」 「儂も、今まで以上にアルデランを訪れることにしよう」 「ありがとうございます。首を長くしてお待ちいたしております」  自治領を治めなければならないハロルド侯爵にとっては、そうそう国を離れるわけには いかないし、絶大なる権力を持つ皇帝のお膝元アルデランを訪問することは、なかなか叶 わなかったのである。  侯爵に見送られてタラップを上ってビントウィンドに乗船するマチルダ皇妃。船に入る 前に、つと振り返って侯爵に手を振った。  侯爵もそれに応えて手を振っている。  やがてゆっくりとビントウィンドは発進した。  ビントウィンドは皇族専用の送迎用お召し船である。無骨な戦闘兵器などは一切艤装さ れていない。  あくまでも優雅に美しいフォルムを持っており、船体には皇家の紋章が描かれている。 その内装も豪華で広々としており、まるで宮廷に暮らしているような錯覚を感じるほどだ。  侍女を従え窓の外を時おり眺めながら、ゆったりとソファーに腰を沈めて王太子をあや したり授乳させていた。  その頃、護送艦隊の方では、一騒動が起きていた。  どこからともなく出現した所属不明の艦隊に襲われていたのである。 「海賊艦隊か?」  相手は容赦無用にして、戦闘の専門集団である。平和な国家において、戦いの経験のな い護衛艦隊が敵うものではなかった。  たちまちに撃破され、あっという間にビントウィンドは海賊艦隊に取り囲まれてしまっ たのである。  アレクサンダー王太子の誘拐!  それが彼らの目的のようで、ビントウィンドには一切攻撃を加えずに、進行方向を塞い で強制的に停船させてしまった。  勇躍ビントウィンドに接舷して乗り込んでくる海賊達。  視界に入った乗員達を片っ端から殺し回って、目指す相手である王太子を探している。 「王太子を探し出せ! 他の奴らは皆殺しだ」  リーダーと思われる人物が、大声で怒鳴り散らしている。  彼らの捜索対象である王太子を抱えたマチルダ皇妃は、とある場所に身を隠していた。  しかし見つかるのは時間の問題で、このままでは王太子が誘拐されてしまうのは必定で ある。  皇妃は決断した。  誘拐されるくらいなら、危険を冒しても王太子を脱出させようと考えたのである。  皇妃は、緊急脱出ポットに王太子を乗せ、銀河帝国皇太子のみに受け継がれる大粒のエ メラルドの首飾り【皇位継承の証】を、その小さな身体の首に掛けた。  王太子を乗せたポットが、脱出投入機に入れられた。 「幸運の女神ミネルバのご加護のありますように」  胸の前で手を合わせて祈る皇妃と、それに倣う侍女たち。  そして神妙な手つきで、脱出スイッチを押した。  宇宙空間へと投入される緊急脱出ポット。  とても小さなそれは、戦いを繰り広げている海賊達の目には届かずに、無事に戦闘区域 からの脱出に成功した。  脱出には成功したものの、航行能力のないポットは漂流するしかない。  やがて、トリスタニア共和国同盟の方向へと、静かに流れていくのだった。  ポットの中ですやすやと眠る銀河帝国後継者、アレクサンダー王太子を乗せて……。

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