最近のトラックバック

2021年3月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

他のアカウント

« 2018年4月 | トップページ | 2018年6月 »

2018年5月

2018年5月31日 (木)

続 梓の非日常・第四章 峠バトルとセーターと 暴走族再び

続 梓の非日常・第四章・峠バトルとセーターと

(四)暴走族再び  放課後になった。  城東初雁高校校門前にたむろする多種な制服を纏った女子生徒たちがいる。  教室の窓辺から覗き見る梓と絵利香。 「ねえ。あれ、梓連合の人達じゃない?」 「その梓連合ってのやめて欲しいな」  梓連合とは、スケ番グループの青竜会と黒姫会が統合されてできた新しいスケ番グ ループであるのだが……。 「梓ちゃんがどう思うとも、お竜さんやお蘭さん達は、聖者のようにあがめているん だから」 「よけいなお世話なんだけどな」 「ほらほら。いつまでもああやって校門前を塞いでいたら迷惑になるでしょ。あなた が行かないとどうしようもないのよ」 「わかったわよ」  梓が校門前に出て行くと、早速お竜以下の幹部クラスのスケ番が駆け寄ってくる。 それぞれ各学校で番を張っている女子生徒達である。 「梓さま!」 「一体何なのよ」 「はい。お蘭が暴走族グループに連れ去られました」 「お蘭が? 暴走族グループに?」  何かいやな予感がした。  暴走族といえば、慎二と峠に出かけた時に出くわしたグループが思い起こされる。  それに暴走族グループからお蘭を助けたら、また新しい信奉者が増えそうである。 「最近、勢力を伸ばしつつある新興グループで、コンビニでたむろしてたところにお 蘭達が出くわして一悶着になったらしいです。その時は火花散らしただけで済んだん ですが、一人でいる時に襲われて連れ去られました。奴ら、梓様のことをどこかで聞 きつけたらしくて、助けたくば梓様を連れてこいと」 「まったくどいつもこいつも……」  結局、自分自身が出て行かなければ収拾がつかないだろうと考える梓。 「で、どこへ行けばいいの?」 「正丸峠のガーデンハウスです。正丸レディースとか称して、峠の走り屋を自負して いる奴らがたむろしている所です」  やっぱりあいつらかな……。  仕返しのために梓を探し回っていたのかも知れない。 「なんか……勝負を挑まれそうな雰囲気ね」 「となれば俺の出番だな」  と、どこからともなく現れる慎二。 「おまえは用心棒の沢渡!」  お竜が叫ぶ。 「誰が、用心棒じゃ!」 「おまえに決まっておろうが、でなきゃ腰巾着だ」 「よくもまあ……。それより、梓ちゃん。正丸峠の暴走族といえばあいつらじゃない のか?」 「慎二もそう思う?」 「他に心当たりはないだろう?」 「まあな。しかし、それがどうしてお蘭さんを拉致していったのかな。そもそも喧嘩 しかけたのは、慎二だろうが。慎二が付け狙われるのなら判るけど」 「あのなあ……。要するに、一緒にいた梓ちゃんが、この近辺でスケ番張ってること を知ったからじゃないか?」 「誰がスケ番じゃ! あたしは、そんなものになった覚えはないぞ」 「梓ちゃんがそのつもりはなくても、周囲がそう見ているということよ」  絵利香が入ってきた。  今まで訳が判らず聞き役に甘んじていたのである。 「もうしようがないわね。で、その正丸峠に、あたしが出向けばいいのね」 「はい」 「判ったわ」 「梓ちゃん! だめよ。どうして梓ちゃんが行かなきゃならないの?」 「そこに峠があるからよ」 「馬鹿なこと言ってないでよ」 「あは、ともかくあたしが来るのを待ってるらしいから行かなきゃ。お蘭さんを解放 してもらうためにもね。絵利香はおとなしく待っていてね」  「もう……結局、また取り巻きが増えることになりゃなきゃいいけど……」 「どうぞ、お乗りください」  青竜会幹部が用意した車に乗車を促すスケバン達。  促されるままに車に乗る梓。  青竜会そして黒姫会に続くスケ番グループに加えて、新たに正丸レディースが追加 されそうな予感がする絵利香だった。  慎二とデートした正丸峠に向かう梓達。  正丸峠の入り口に暴走族がたむろし、他車を侵入させないように封鎖していた。  停車させられる梓の乗った車。 「おまえの顔には見覚えがある。真条寺梓だな」 「そうよ」 「峠でリーダーがお待ちだ」 「リーダー?」 「行けば判るよ。それから他の奴らは侵入禁止だ」  と聞いて、メンバー達が興奮して一触即発状態になった。 「待って! 騒ぎを大きくしないで。あたし一人でも大丈夫よ。あなた達はここで待 っていて」 「で、ですが……梓さま」 「いいから」  メンバーを抑えて一人峠に向かう梓だった。  ここで乱闘してもしようがない。  すべては峠にいるリーダーとかいう人物が握っているのだ。  おとなしく従った方が良いに決まっていた。 「この俺はどうかな?」  慎二が前に出てきた。 「お、おまえはあ!」  瞬時にして自分を倒した相手を思い出した暴走族だった。  しかし、さすがに飛び掛ろうとする奴はいなかった。  あまりにも強すぎるのを身にしみて痛感しているからである。 「い、いいだろう。おまえも許す」  拒絶しても、それを止められる自信がなかったからに違いない。 「そういうわけだ。梓ちゃん、このバイクで行こうぜ」 「まったく……いつの間についてきていたのだ」 「神出鬼没なのだよ、俺は」 「言ってろ!」  と言いながらも車を降りて、コートを羽織り慎二の自動二輪に跨る梓。 「そいじゃ、いくぜ」  あの時と同じようにタンデムで峠を上り始める二人。  数台の自動二輪が追従する。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月30日 (水)

銀河戦記/鳴動編 第十六章 新艦長誕生 VI

第十六章 新艦長誕生

                 VI  カラカス基地司令部にある、ランドール提督のオフィスを訪れるリンダとジェシカ。  秘書官のサバンナ・ニクラウス中尉に出頭命令に応じて来訪したことを告げる。 「お待ちしておりました。少々お待ちください」  インターフォンを取って中に居るランドールに連絡を入れるサバンナ。  「リンダ・スカイラーク中尉がいらっしゃいました……。はい、判りました」  受話器を置いてから言った。 「どうぞ。お入りください」  正面のドアが開いた。 「リンダ・スカイラーク中尉。入ります」  ドアをくぐって中に入るリンダ。  正面の大きな机に威風堂々のランドール提督が腰掛けており、周りには見慣れた人 物達が立ち並んでいた。少佐の制服も凛々しいパトリシアを筆頭にガデラ・カインズ 中佐、ディープス・ロイド中佐、スザンナ・ベンソン艦長、そしてリーナ・ロングフ ェル大尉もいた。ゴードンはシャイニング基地方面で、哨戒作戦任務で出撃中である。 「リーナ!」  まさか、やっぱり報告したの?  と疑問が再び湧き上がる。  しかし提督の表情はにこやかで、とても注意されるような雰囲気ではなかった。周 囲の参謀達も和やかであった。 「リンダ。休息中のところ済まなかったね」 「い、いえ……」 「このやかましのジェシカの下で、セイレーンの艦長として日頃から激務をこなして くれて感謝している」 「提督! そんな言い方しないでください。まるでわたしが苛めているみたいじゃな いですか?」  ジェシカが横から口を出した。 「違うのか? このリーナから日頃の君の様子を聞いているがね。何かにつけて苛め て遊んでいるそうじゃないか」 「リーナ! あなた、そんな事まで報告しているの?」 「わたしは副指揮官として、見たこと感じたことを正直に報告しているだけです」  と淡々として答えるリーナ。 「違います。フランドル少佐は、艦長として甘えた態度があるわたしを、叱責し教育 してくださっているのです」 「そ、そうですよ」  冷や汗拭きながら弁解するジェシカ。 「まあいい。話を戻そう」  とにこやかに答える提督。 「さて、日頃からの君の働きぶりについては、このリーナから報告を聞いているが… …」  あ、やっぱり報告していたんだ。  いやだなあ……。  そう思いつつもランドールの言葉に耳を傾ける。 「君にはセイレーン艦長としてこれまで任務についてもらったわけだが、そろそろ他 の艦を指揮してみたいと思わないか?」 「他の艦に転属ですか?」 「そうだ。すでに大尉としての内定が下ったことは聞いているな」 「はい。伺っております。それに関しては、感謝しております」 「大尉となると、通常は主戦級の攻撃空母の艦長として指揮を任されることが多い。 がしかし、君も知っての通りに、我が部隊には主戦級の攻撃空母は一隻も配備されて いない」 「確かにその通りです」 「そこでだ。君には、第十七艦隊旗艦サラマンダーの艦長としての任務を与えたいと 思うのだがどうかね?」 「サラマンダー!」  衝撃だった。  サラマンダーと言えば、共和国同盟にあっては最速最強の高速戦艦。連邦を震撼さ せる代名詞として名だたる名鑑中の名鑑である。 「し、しかし……サラマンダーの艦長は、スザンナ・ベンソン大尉がいらっしゃいま す」 「スザンナには艦長の任を降りてもらうことにした。本人にとっては、いつまでも艦 長として腕を振るっていたかったろうが、後任にすべてを託しその成長を見守ること も大事だと説き伏せた」 「ではベンソン大尉は?」 「スザンナは先任上級大尉としてすでに少佐への昇進点に達している。いずれはデ ィープス・ロイド中佐の後任として旗艦艦隊の司令官の任務を与えるつもりだ。ただ 戦術士官ではないので現状では司令官にはなれない。そこでしばらくは中佐の下で副 司令官の任務をこなし、戦術士官としての艦隊勤務教育を施す事にしている」  司令官になる資格を有するには、高等士官学校において戦術専攻科の課程を卒業し て任官されるか、このスザンナのように少佐昇進点に達した一般士官が、戦術士官と しての艦隊勤務教育を一定期間受けた後に査問審査に合格した場合、そしてもう一つ は名誉勲章を受けるほどの素晴らしい功績を挙げた場合の三種類があった。  なお、戦術士官は胸に職能階級を示す徽章を付けているので、一般士官と判別がつ くようになっている。 「艦隊勤務教育ですか……」  提督が、スザンナに類稀なる指揮統率能力を見出して、何かにつけて指揮官として の教育をしていたのはよく知られていることだ。それが正式採用されたわけである。  しかも、旗艦艦隊司令に任命するのだという。これこそまさしく適材適所の好材料 である。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月29日 (火)

続 梓の非日常・第四章 峠バトルとセーターと 民家にて

続 梓の非日常・第四章・峠バトルとセーターと

(四)民家にて  峠頂上から名栗村へと、県道53・70号線を下って、一路川越へと帰路につく。 「せっかくのデートなのに、悪かったね」 「気にしていないわよ。結構楽しんでいたから」 「なら、良かった」 「それより、どこかコンビニに寄ってくれないかな」 「お腹でも減ったのか?」 「そうじゃないわよ。鈍感ね」 「え? あ、ああ……。ごめんごめん」  トイレに行きたくなっていたのである。慎二もすぐに気が付いた。  男なら適当な所に停車して用を足すことができるが、女の子はそうはいかない。  まったく人気がなければ、茂みに入って……。できるかも知れないが、慎二がそば にいる状態では恥ずかしくてできるわけがない。乙女としては絶対にしてはならない ことだった。  が、しかし……。  山の中である。  そうそうコンビニがあるわけもない。  どこまで走っても民家ばかりで、商店すらもなかった。  我慢も限界がある。 「どこでもいいから。家の前で止めて」 「判った」  緊急避難的に民家でトイレを借りようという算段のようであった。  開いた戸口の前で中に向かって声を掛ける。 「すみませーん。どなたかいらっしゃいますか?」  こういう民家では、日中は田んぼに出かけていて留守ということが結構あるが、 「はーい」  と、すぐに返事があって、家の者が出てきた。  お婆さんともう一人若い女性。 「何でしょうか?」 「申し訳ありません。トイレをお借りしたいのですが」  お婆さんに向かって頼み込む梓。 「ああ、どうぞどうぞ。構いませんよ。恭子さん、娘さんを案内して」  嫁なのであろうか、若い方の女性に向かって梓を案内させる。 「はい。こちらへどうぞ」 「ありがとうございます」  ずーと奥のほうへ入っていく二人。 「そこのあなた。上がってゆっくりしていきませんか?」  と、外にいる慎二にも声を掛ける。 「俺ですか?」 「まあ、お茶でも出しますので」 「そうですか。じゃあ、上がらせていただきます」  遠慮のない慎二だった。  ずけずけと家の中へと上がってゆく。  袖触り合うも多生の縁。  都会ではありえないであろうが、田舎では良くあることである。  客間に通されて、茶菓子とお茶を出されて歓待される慎二だった。  やがて物珍しそうにきょろきょろとあたりを見回しながら梓が戻ってくる。  旧家のこととて百年以上は経っているだろうか。  同じ旧家の絵利香の屋敷とはまるで趣が違っていた。  豪商邸宅と農耕民家では、まるで違うのは当然のことであろう。  慎二の隣に置かれた座布団に正座する梓。  正座など苦手な梓であるが、和風の民家ではそうするよりない。 「お二人は夫婦ですかの?」  お婆さんが突飛なことを言い出す。 「ち、違いますよ」  梓が慌てて否定するが、 「夫婦に見えますか?」  慎二は嬉しそうに答える。 「違うのかい?」 「私たちまだ高校生です。十六歳になったばかりですよ」 「十六かい? わしらが若い頃にはとっくに祝言を挙げて、子供を産んでいたよ」 「十六歳でですか?」 「ああ、最近では十六で嫁に行くなって、ほんとに珍しくなったけどねえ。三十過ぎ てもまだ独身や結婚なんてしないなんて娘はざらになってきよった」 「まあ、そうですよね」  十六歳で結婚という話を聞いて、真条寺家の事情を思い出さずにはおれなかった。  真条寺家の長女は、十六歳にして家督を継いで結婚し、世継ぎを産む。  母親の渚にしても、そして祖母も、十六歳で結婚して子供を産んでいる。  法律的にも結婚を許されている年齢である。 「俺は、十八歳にならなきゃ結婚できませんよ」 「そうじゃったな。でもまあ、二人を見ていると、お似合いの夫婦になれる感じがす るよ。一緒に旅行してるところみると、満更でもない関係なんだろ?」 「そうなんです!」  ずずーっ、と身を乗り出すようにして強い口調で肯定する慎二。 「ち、違います。ただの友達です」 「あははは!」  腹を抱えて笑い出すお婆さんだった。  きょとんとしている梓。 「いいね、その表情。二人の様子見てると仲が良いのが判るよ。きっと良い伴侶にな れるさ。わしが太鼓判を押すよ」 「ありがとうございます」  慎二が素直に喜ぶ。 「慎二ったら、もう……」  ちょっと膨れ面になる梓だった。  それから一時間後。  お土産まで貰って、その民家を出てくる二人だった。  キャリアにそれを縛り付けながら、 「田舎の人たちは人情があっていいねえ」  と感慨深げな慎二。  似合いの夫婦になれると言われて気分が良かった。  対して少し機嫌を悪くしている梓だった。  こんなことならもっと我慢してでもコンビニにすべきだったと後悔していた。 「じゃあ、帰ろうか」 「そうね。とっとと帰りましょう」  そもそも、なんで自分がデートに行くことを承諾してしまったのか?  すべての発端はそこにある。  まるでもう一人の自分がいるような気分になってきたのである。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月28日 (月)

銀河戦記/鳴動編 第十六章 新艦長誕生 V

第十六章 新艦長誕生

                 V  カラカス基地に戻った第十一攻撃空母部隊。  その旗艦「セイレーン」の艦長、リンダ・スカイラークは、各艦への弾薬・燃料等 の補給と、艦体の整備の指揮のために艦橋に残っていた。 「よお、リンダ。居残りか? 確か休息中だろう」  ハリソン・クライスラーが尋ねてきていた。 「ええ。艦長としての責務がありますから。休んではいられません」 「殊勝な心がけだね。その調子だよ」 「ところで何か御用ですか?」 「用は他でもない。例の賭け事のことだよ」 「ああ、あれですね。ちゃんと集計は取れてますよ。各人の配当の計算も終了してい ます」 「おお、さすが!」 「各人にメールを送って確認してもらって、それぞれの軍預金口座から入出金する予 定です」 「そこまでやってくれるのか? ありがたいね」 「戦闘中に賭け事などとリーナに叱責されました。どうせなら最後まで面倒みてあげ なさいと言われたものですから」 「ほう……リーナがねえ」 「ところでパトリシアさんがどうなったかご存知ですか?」 「ああ、それだったら、無事に試験に合格して少佐に昇進を果たしたそうだ」 「よかったですね。艦長としてご一緒した甲斐がありました」 「何を言っているか。君だって、大尉への昇進が内定したそうじゃないか」 「ああ、そうですねえ」 「気が抜けた声出すなよ」 「だって、そんな実感が湧かないんですよね。何もしなくても、いつの間にか昇進し ていたという感じですから」 「それはみんなも同じ思いだよ。ランドール提督の昇進に引きずられるように昇進し ていく。しかし提督はよく言っているじゃないか」 『何もしないのに、昇進したと思っている者もいるようだが、それは間違った考えだ と言っておこう。指令に忠実に従って任務を遂行していることこそ肝心なのだ。指令 を無視し自分勝手な行動をしたり、指令に対し疑問を抱き部下の士気を低下させるよ うな発言をしたりする。そんな足を引っ張るような行為をしない。私を信じ、私に従 うことが功績として認められる結果として現れるのだ』 「……とね」 「確かにそうおっしゃってましたね」 「何にせよだ。昇進おめでとう」 「ありがとう、ハリソン」  リンダは、タシミール星への出撃一時間前の事を思い起こしていた。  上官であるジェシカ・フランドル少佐に呼び止められた。 「セイレーンの艦長として、スザンナを臨時に任命してはどうかという意見もあった わ」 「オニール大佐ですか?」 「その通り」 「ウィンザー大尉とは提督共々、士官学校時代からの親友ですからね。心配するのは 当然でしょう。艦隊運用にも実績があって、信頼のおける者を艦長に推したかったの でしょう」 「当然の配慮でしょうね」 「でも提督自らが拒否されたわ」 「拒否した?」 「司令はこう言ったわ」 『セイレーンの艦長はリンダだ。第十一攻撃空母部隊の旗艦の艦長として、最もふさ わしい人物としてジェシカが推薦して、私が任命したものだ。どうして代える必要が あるか』 「とね。これがどういう意味か判る?」 「信頼されているということですか?」 「そうね。わたしの口から言うののも何だけど、司令はわたしを信頼してくれている し、わたしの部下であるあなたの事をも信頼しているわ。『部下を信ぜずして司令は 務まらない』というのが口癖。しかも自分の大切な人物をも任せるほどにね。これは パトリシアの任官試験であるけど、あなたの艦長としての技量をも試される機会でも あるのよ。今回の任務を無事に終了したら、あなたの大尉への昇進も内定しているの よ」 「そうでしたか……」  意外という表情を見せているリンダ。 「取りあえずは、わたしの昇進試験は合格したというわけね……」  一人呟くリンダだった。 「何だよ。独り言なんか、らしくないぞ」 「そうだね」 「さてと……俺も、自分の機体の整備に取り掛からなくちゃならん。賭けのことはサ ンキューな」 「どういたしまして」 「まあ、頑張りなよ」 「うん」  軽く手を振るようにしてハリソンが引き返していった。  入れ替わるようにしてジェシカがやってきた。 「あ、いたいた。探したわよ」 「探すも何も、艦長なんですから、ずっとここに居ましたよ。で、ジェシカ……。何 でしょうか?」 「提督がお呼びよ。至急、基地司令室に来て頂戴」 「提督が……?」  提督が何の用だろう?  と疑問に思いつつも、後のことを副長のロザンナに任せて、セイレーンから降りて 基地司令室に急ぐ。 「もしかしたら、タシミールの時、パトリシアを艦内案内した際に、出発前にジミー 達とおしゃべりして任務を怠慢していたことかしら? リーナが報告してて注意され るのかな……任務には厳しい提督だからなあ」  ううん。リーナがそんなこと報告するはずない。 「一体、わたしに何の用なんですか?」  ジェシカに尋ねてみるが、微笑んでいるだけで答えてくれない。 「行ってみれば判るわよ」

ポチッとよろしく!

11

2018年5月27日 (日)

続 梓の非日常・第四章 峠バトルとセーターと 久しぶりの喧嘩

続 梓の非日常・第四章・峠バトルとセーターと

(三)久しぶりの喧嘩  川越から日高街道(県道15号)を通って、JR八高線の陸橋を越えて、入間市から 始まる一般国道299に合流する。  起点:長野県茅野市 ~ 終点:埼玉県入間市  と、続く189.7km、車での所要時間4:44ほどの飯能丘陵を走り抜ける景観豊かな国 道だ。ただし、工事がやたら多く、現在も十石峠(箱根ではない)で防災工事中であ る。平成30年4月6日~12月26日まで。  途中横瀬町芦ヶ久保と飯能市吾野の間に正丸トンネルがあるが、吾野側入り口の信 号を右へ入る道が正丸峠への入り口となる。正丸トンネルができたせいで、旧街道の 峠道は寂びる一方となっており、道路の補修などもあまり行われていない。ガーデン ハウスや峠茶屋などは休業中の所が多いので要注意である。  峠道をタンデムで走り抜ける慎二の自動二輪。  と、背後から爆音をあげて駆け上ってくる自動二輪の一団があった。  次々と慎二達を追い抜いていきながら、 「ヒューヒュー!」  からかう仕草を見せていた。 「なによ、あれ?」 「いわゆる暴走族ってところだろうな」  峠頂上にあるガーデンハウス付近に、先ほどの暴走族がたむろしていた。  峠道では判らなかったが、ヘルメットを脱いだ姿は、全員女性だった。  だからといっておとなしいはずはない。慎二達が先に進めないように道を塞いでお り、仕方なく停止すると同時に囲まれてしまった。 「見逃してくれそうにないね。どうする、梓ちゃん?」 「しようがないわよね」  自動二輪から降りて、ヘルメットを脱ぐ梓。  慎二もヘルメットを脱いで降りる。 「何か用?」  こういうことには慣れている梓だった。  怯える表情も見せずに問いただす。 「この先に行きたかったら通行料を貰おうか」 「通行料?」 「そうだよ。この辺りは、あたし達の縄張りなんだよ。痛い目に遭いたくなったら金 を出しな」 「で、いくら出せば通してくれるの?」 「五万円だ。なければあるだけ出せ!」  金額を聞いて驚く慎二だった。 「五万円! それだけあれば高速道路を日本の北から南まで行って、お釣りがくる ぞ」  一方の梓は、金額を言われてもまるでぴんとこない。 「それって高いの? 安いの?」 「ばーか。高いに決まっているだろ」 「そうなんだ……」  周りを囲んでいるにも関わらず平然としている二人に、暴走族達の方がいきり立っ てきていた。 「出すのか、出さないのか!」 「出すわけないだろう」  きっぱりと言い放つ慎二だった。 「貴様らあ! ほんとに痛い目に遇いたいようだな」 「痛い目って魚の目だよな」  と、相変わらずの梓。 「痛い目か……。遭わせてもらうじゃないか」  久しぶりに喧嘩ができると、はりきっている感じの慎二。  ジャンパーを脱いで自動二輪に掛ける慎二。 「もう……しようがないわね」  梓も楽しそうな表情を見せて、フェイクムートンジャケットを脱いで、慎二に倣う とすると、 「まあ、まてよ。梓ちゃんは見ていろよ。ここは、デートに誘ってこんな処に連れて 来た俺の責任だ。まかせておきな」  と余裕たっぷりに制する慎二だった。 「あらそうなの? でも、女の子には手出ししない主義じゃなかった?」 「手加減してやるさ。顔には傷つけないようにしてやるよ」  二人の会話を聞いて、腹を立てない者はいないだろう。馬鹿にされたように感じる のは当然だ。 「お、おまえら」  逆鱗に触れられたような表情になって襲い掛かってくる暴走族達だった。  鬼の沢渡と恐怖される慎二のこと、ただの暴走族が敵うわけがなかった。彼女らは 集団行為によって相手を怯えさせるだけで、まともな喧嘩などしたことない。  手加減しながらも次々とねじ伏せてゆく。 「ふう……」  大きく深呼吸する慎二。  その足元にはうずくまっている暴走族レディー達。 「早かったわね」  声を掛けられて、倒れている者達を跨いでいきながら、自動二輪の所の梓の元へ歩 いていく。 「この程度のやつらなら、ほんの朝飯前さ。とっととこんな所からオサラバしよう ぜ」 「放っておいて大丈夫なの?」 「軽い脳震盪や麻痺を起こしているだけだ。十分もしないうちに回復するさ」 「それならいいけど」  ヘルメットを被りなおして自動二輪に跨る慎二。  梓もそれに従う。 「そいじゃ、行きますか」  エンジンを始動させて、その場を走り去る二人だった。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月26日 (土)

妖精伝説(朗読音声版)


妖精伝説




劇団による朗読版(音声のみ)の妖精伝説です。
音声だけで我慢してください。
ちょっと内容が理解できない場面もあるかと思いますが、
あとはあなたの想像力を働かせてください。
なぜならファンタジーだからです。


yosei_01.mp3(256kb)

yosei_02.mp3(259kb)

yosei_03.mp3(191kb)

yosei_04.mp3(216kb)

yosei_05.mp3(46kb)

yosei_06.mp3(150kb)

yosei_07.mp3(121kb)

yosei_08.mp3(271kb)

yosei_09.mp3(181kb)

yosei_10.mp3(195kb)

yosei_11.mp3(217kb)

妖精伝説脚本の初稿版はこちら
朗読版に比べて脚色がかなり入って違う雰囲気になっています

ポチッとよろしく!

11

妖精伝説台本(初稿版)

<p><p><p><p><p><p><p>妖精伝説台本</p></p></p></p></p></p></p>

2003年に岐阜県大垣市が主体となって、静止画ハイビジョン手作りソフトフェスタ
というものが開催されまして、かつての「Nifty Serve」のとある会議室にて、
静止画ハイビジョンによるアニメを作ろうという話がまとまりまして、
その脚本を募集しようということで、自分も応募しました。

その「妖精伝説」台本の初稿です。
その後にかなり修正されてしまいましたが、
ストーリーはだいたい理解できると思います。

ナビゲーション(PCのみ)
台本を読みながら並行して朗読音声が聞けます。
ポップアップが開くので、POP禁止にしている方は解除してください。
但しナビの仕様により、9節までしか再生できません。
全話視聴の方は次ページへ('ω')


----------------------------------------------------------------------------

妖精伝説


序幕 妖精伝説

    地球の中世代のような世界。
    恐竜が地上をのし歩いている。
    空中には翼竜が飛び交い、海には海竜。

 ナレーション(&字幕のスクロール)
    それはまだ人類が誕生するはるか昔のおはなしです。
    世界はドラゴンと呼ばれる種族によって支配されておりました。
    地上はおろか、海の中から空中にいたるまでドラゴンはわがもの顔でのさば
    っておりました。その性格ときたらそれはそれはたいへんな凶暴もので、他
    の動物達は身を隠すように暮らしていました。
    世界のすべてをお作りになった創造主は、これを嘆きとうとう天空の女神ア
    ルテミスにたいしてドラゴン退治をお命じになりました。
    戦いの神でもあるアルテミスは圧倒的優勢にドラゴンを退治していきました。
    しかしドラゴン族もそうそう負けてはいられません。ドラゴン族の中でも最
    強といわれるブルードラゴンの、さらにその族長ザラムートをおしたててき
    ました。
    ブルードラゴンの長、ザラムートは口からあらゆるものを溶かす灼熱の炎を
    吐き出すだけでなく、不思議な魔法を使いこなし、すべての神がかかっても
    倒すことが出来ないという不死の生命力をもった、史上最強のドラゴンでし
    た。
    創造主はアルテミスに一振りの剣(ドラゴンバスター)をお与えになり、こ
    れに対抗させることにしました。
    ついにアルテミスとザラムートが対決するときがきました。
    激しい戦いは七日七晩繰り返されました。
    大気は渦巻き雷鳴がとどろき、大地は脈動し火山がいたるところで火を噴き
    上げ、海はとどまることなく荒れ狂っていました。
    しかし、双方の力が互角であったがために、ついに決着はつくことなく互い
    に精神力・体力ともに使い果たしてしまいました。
    力を失ったブルードラゴンは深い海の底に沈み、天空に昇る力すら失ったア
    ルテミスも荒野に下落して、やがてその姿を消しました。
    やがてザラムートの亡骸が沈んだあたりの海上に小さな火山島が突然出現し、
    満月の夜その島影から数え切れないフェアリーが飛び立ち四散していきまし
    た。
    一方アルテミスの下落した荒野からは、やがてどこからともなくエルフ族が
    出現しました。
    人間が現れたのは、さらに後のことでした。

    気の遠くなるような長い時が流れ、アルテミスもブルードラゴンのことも忘
    れ去られていきました。
    地上は人間の支配するところとなりました。
    エルフやフェアリーもそれぞれに生活していましたが、人間のおおせいな繁
    殖力と貪欲さには、ついていけずに森の中においやれてしまいました。
    そんな時です。どこからともなく魔の一族が現れたのは。
    魔の一族は人間を見ると襲いかかってきます。人間は必要にかられて武器を
    作りだしこれに対抗しましたが、魔の一族は強力な魔法を用いて反撃してき
    ます。
    魔の一族を統率するのは魔将軍と呼ばれる魔界の支配者でした。
    これに打ち勝つことのできる者は、アルテミスかブルードラゴンしかいませ
    ん。
    人間は窮地に陥りました。
    はたして人間はこのまま滅ぼされてしまうのでしょうか。


                             暗転。


タイトル


    フェードイン
    軽快な音楽。
    画面に大きく「妖精伝説」の横文字。
    フェードアウト


第一幕 迷いの森


    小鳥がさえずり、樹々がうっそうと繁るフェアリーの森。
    彼方から聴こえる雷鳴。少しづつ近付いてきます
    樹々の間を飛び回りながら薬草を集めているフェアリーのニーナ。
    後方で地面に落ちた小枝を踏み折る音。
    驚いて振り返るニーナ。
    地面に落ちている小枝を踏んでいる足元。上へ(たてPAN)
    あたりを見回しながら森を抜けて行く人間。
    鎧を身にまとい腰には剣を吊しています。
    ニーナ、樹の影に隠れて人間を監視しています。
ニーナ 「人間だわ」(そっとつぶやく)
    人間の頭上を、身を隠しながら飛んで後をつけはじめます。
    どうやら気づかれていないようです。
    雨がぽつりぽつりと降り始めてきました。
    ニーナの頭上を鳥が旋回しています。
    人間に夢中で周囲に気が付かないニーナ。
    鳥、ニーナに向かって急降下してきます。
ニーナ 「きゃあ!」
    突然の急襲にたじろぐニーナ。
    間一髪鳥のくちばしをかわしたものの、羽根の一部をむしり取られてしまい、
    樹から落下してしまいました。地上ではとぐろを巻いたへびが、傷ついてう
    ごけないニーナに迫ってきます。
ニーナ 「た、たすけて」
    その叫び声に気がつく人間。
    腰からナイフを取りだし、ニーナに襲いかからんとするへびに向かって投げ
    つけました。ナイフはへびの鼻先をかすめて地上に突き刺さります。
    おどろいて逃げ出すへび。
    呆然とするニーナ。
    人間がニーナに向かって近付いてきました。
    ニーナも逃げようとしますが、羽根が傷ついていて動けません。
騎士  「君、大丈夫かい?」
    人間、やさしく微笑んでいました。
ニーナ 「この人間は大丈夫みたいね……」
    身に危険がないと察知したニーナでしたが、羽根の痛みにそのまま気絶して
    しまいました。


第二幕 洞窟

    森の一角。時折閃光と雷鳴がとどろく中、樹々の繁みに隠れるようにして、
    洞窟の入口がぽっかりと開いている。
    暗い洞窟。ところどころの壁から、水がしみ出ており地面に落ちて渇いた洞
    窟内に響いている。その奥まったところより、明るい光が洩れている。
    暖炉。まきがくべられてぱちぱちと音をたてながら、洞内を照らしている。
    暖をとる騎士。暖炉の光に照らされて浮かぶその表情から苦悩の様子がうか
    がわれる。その傍らに毛布の切れ端にくるまわれるようにして横たわるフェ
    アリー。その大きさは丁度そばの人間の手の平くらい。
ニーナ 「うーん」(気がついて起きる)
    途端に人間の存在に気づいて身構える。
騎士  「おお、気がつきましたね」
    おびえているニーナ。
騎士  「恐がることはない。何もしないよ」
    ニーナ、毛布をはねのけて逃げようとするが傷ついた身体では飛び上がるこ
    とができない。背中に激痛を覚えて苦痛にあえぐ。羽根の付け根から背中に
    かけて傷の手当がされている。それに気づき騎士に向き直り、こわごわと声
    をかける。
ニーナ 「あなたが手当を?」
騎士  「そうだよ。どう手当していいかわからないから、とりあえず傷薬をぬって
    当て布しておいた」
    ニーナ、手当てされた傷口を眺めている。
ニーナ 「あ、ありがとう」(軽く会釈する)
騎士  「噂には聞いていたけど、本当に妖精がいたんだ」
ニーナ 「普通の人間にはあたし達は見えないのよ」
騎士  「でも僕には見えるよ」
ニーナ 「そうね。こころの美しい人間にしか見えないんだけど……」
騎士  「へえ、そうなんだ」
    ニーナ、じっと騎士を観察している。
ニーナ 「信用していいみたいね」(にっこりと微笑む)
騎士  「ありがとう。僕の名前はアルフレッド」
    アルフレッド、片手を差し出す。
ニーナ 「あたしはニーナよ」
    ニーナ、差し出されたその手の平にひょいと飛び乗る。
    アルフレッドが、手の平を肩に持ってくる。
    ニーナアルフレッドの肩へ飛び移って、ちょこんと座る。
ニーナ 「ねえ、どうしてこんな森に入ってきたの? ここが迷いの森だってことも
    知らないわけじゃないでしょう?」
アルフレッド 「実は君達妖精を探していたんだ」
ニーナ  「あたし達を?」
アルフレッド 「そうなんだ。エルフに伝わる妖精伝説によると、竜の島を知っているのは
    君達だそうだから」
ニーナ  「妖精伝説ですって!」
アルフレッド 「なんだ君達も知ってるんだ」
ニーナ 「ええ」
アルフレッド「そうか、アルテミスの子孫であるエルフと、ブルードラゴンの子孫である
    フェアリーの双方に、妖精伝説があってもおかしくないよな」
ニーナ 「それでどうして竜の島に渡りたいの?」
アルフレッド「ドラゴンバスターを手に入れたいからさ」
声   「それを手に入れてどうするつもりじゃ?」
    突然背後から、声がかかる。
    驚いて振り返る二人。
    そこにはフェアリー族の長老であるニザムが恐い顔で空中を浮遊していた。
ニーナ 「おじいちゃん」
アルフレッド「魔将軍を倒すために必要だからさ」
ニザム 「魔将軍とな?」
アルフレッド「そう、それは地上最強の剣、一振りするだけで灼熱の炎が走り大地は裂け
    るといわれている。魔将軍を倒せるのは、ブルードラゴンさえ倒したとい
    うこの剣しかない。そしてそれは今、ブルードラゴンの身体に突き刺さっ
    たままだという」
ニザム 「甘いな」
アルフレッド「甘いとは」
ニザム 「剣を手に入れても、肝心の魔将軍のところへどうやって行くつもりだ。相
    手は魔界にいるのだぞ。人間のおまえには不可能じゃろう」
ニーナ 「じゃあ、どうすればいいの」
ニザム 「ブルードラゴンのザラムートを復活させることじゃ。ザラムートなら魔界
    だろうと天界だろうと自由に行き来できる」
アルフレッド「どうすればブルードラゴンを復活することができるのか?」
ニザム 「龍水晶を手に入れることだ」
ニーナ 「龍水晶……ザラムートの魂が封じ込まれているという?」
ニザム 「そうだ。龍水晶に封じ込まれた魂を解放すれば、ザラムートは蘇る」
アルフレッド「それはどこにあるのですか」
ニザム 「龍峡谷にいるドラゴン族の長バハムートが持っているはずじゃ」
ニーナ 「バハムートは極端な人間嫌いよ。龍水晶を渡してくれるわけがないわ」
ニザム 「おまえも行けば良いのだ。フェアリー族になら説得しだいでは何とかなる
    かもしれない。ザラムートはドラゴン族の神でもあるからな、復活させると
    なれば協力してくれるだろう。なんとなれば龍水晶の中の魂を解放できるの
    は、他ならぬフェアリー族にしかできないのだ」
ニーナ 「あたしが説得するのね?」
ニザム 「そうだ、できるか?」
ニーナ 「やってみるわ」
ニザム 「いいか。魔将軍も黙ってザラムートを復活させるのを見過ごすわけがない。
    ありとあらゆる手段を使って妨害してくるはずだ。龍峡谷にも竜の島にもそ
    れ相応の罠や強者どもが待ちかまえているはずじゃ。こころしてかかれよ」
ニーナ 「うん」
ニザム 「アルフレッドよ。おまえ一人では竜峡谷にたどり着くことさえまず無理だ
    ろう。もっと心強いたのもしい仲間を集めて万全の体制で事にあたることじ
    ゃよ」
アルフレッド「わかりました。仲間を集めて、なんとかやってみます」
ニザム 「さあ、行け! 二人とも」
アルフレッド「はい」
ニーナ 「行ってきます」


第三幕 セシル王女

    こうして共に旅をつづけることになった二人が最初に訪れた村は、魔将軍の
    手下によって全滅させられていました。
兵士 「貴様! あやしいやつだ」
    なんといあわせた兵士に捕まって、牢屋にいれられてしまいます。
    そこには同じように捕まっている、エルフの娘エミリーと、修道僧のパッド
    がいました。
    突然王様の前に連れ出されます。
王様  「もうしわけなかったな。アルフレッド王子」
    なんとアルフレッドは隣国の王子だったのです。
    美しい王女がアルフレッドに駆け寄ります。
セシル 「アルフレッド様」
アルフレット 「セシル」
    アルフレッドと王女セシルは婚約者だったのです。
    夕暮れ、バルコニーで抱き合う二人の影がありました。

    ところがその深夜。セシル公女が魔物に連れ去られてしまいました。
    王は、早速救出のための兵隊を呼び集めて、セシルが連れ去られた山岳地帯
    へと向かわせました。
    その中にはアルフレッドとその仲間もいます。
    途中にも魔物達は襲ってきます。
    それをなんとか振り払いながら山の中腹にある、魔物の館にたどり着きまし
    た。
    セシルを人質にした犯人が現れました。
ルシル 「遅かったな、待っていたぞ」
    セシルを誘拐した犯人は、エミリーのお姉さんのルシルでした。
    ルシルは強力な魔法でアルフレッド達に襲いかかります。
    実は、ルシルは魔将軍の催眠術で操られていました。
エミリー「お姉さん。やめて!」
    エミリーの叫びも届きません。
ニーナ 「無駄よ、操られているのよ」
    ルシルはありったけの強力な魔法をアルフレッド達にあびせようとしました。
    その時です。後ろのほうで縛られていたセシルが、ルシルに体当りをして邪
    魔をします。
ルシル 「このお! 邪魔をしよって」
    邪魔されて怒ったルシルは、セシルに魔法攻撃を与えました。
    すさまじい電撃に壁に飛ばされるセシル。
アルフレット 「貴様! セシルを」
    ルシルが、セシルに気を取られたすきに、チャンスとばかりにアルフレッド
    は飛びかかります。
エミリー「お願い、お姉さんを殺さないで」
    その叫び声に、アルフレッドの振るった剣がそれて、ルシルの身に付けてい
    たペンダントの宝石を破壊します。
    すると今まであんなにも凶暴な顔をしていたルシルの表情がおだやかになっ
    てきました。かけられていた呪文が解けたのです。
ルシル 「ここは? あたしは何をしていたのかしら」
エミリー「お姉さん!」
ルシル 「エミリーじゃない」
    それはいつものやさしい表情をした姉の喜びの顔でした。
    エミリーは、ルシルの胸に飛び込みました。久しぶりに抱きあう姉妹でした。

    部屋の隅にセシルが倒れています。
    アルフレッドが駆け寄ります。
アルフレット 「大丈夫か、セシル」
    セシルは重傷です。それでも最後の力を振り絞ってアルフレッドに語りかけ
    ます。
セシル 「アルフレッド様……大丈夫ですか」
アルフレット 「セシル! 僕はなんともない」
セシル 「よかった……でもわたしは、もう……」
アルフレット 「なにもしゃべるな、すぐ医者のところへ連れていってやる」
セシル 「あなた様と結婚して幸せな……したかった」
    セシルは最後の微笑みを浮かべると、静かに息を引き取りました。
アルフレット 「セシル!」
    アルフレッドは、セシルを強く抱きしめながら肩をふるわせて泣きました。
    ニーナやセシル達も、まわりに集まった兵士達も泣いています。

    墓地です。
    セシルに別れを告げています。
アルフレット 「いつまでも、悲しんでばかりもいられない」
エミリー「そうよ」
パッド 「魔将軍と戦うしかないのです。死んだセシル公女のためにも」
    一行は龍水晶を求めて龍峡谷へ向かうことにしました。


第四幕 龍の島


    龍峡谷。
    険しい道を乗り越え、魔物の攻撃をかわして突き進みます。
バハムート 「よくきたな」
ニーナ 「龍水晶を渡してください」
バハムート 「いいだろう。すべては龍水晶によって存じておる」
    バハムートが天井を仰ぐと、青白く輝く龍水晶がゆっくりと舞い降りてきま
    す。
    アルフレッドの手元に龍水晶がおさまりました。
バハムート 「龍水晶に封じられたブルードラゴンの精神力はけたはずれだ。解放するとき
    にはものすごい力を生じてフェアリーの命を奪うこともあるかも知れぬ。気を
    つけることだ」
ニーナ 「ありがとう」
バハムート 「我々の屈強な戦士を一人お前達に同行させよう。役に立つはずだ、連れて
    いきたまえ」
    こうしてドラゴン族の戦士リードが仲間に加わりました。


    再び迷いの森に戻ったニーナ達。
    森は魔将軍の手によって焼き払われ、見る影もありませんでした。
    呆然とするニーナ。
ニーナ 「おじいちゃんー。みんなどこにいるの」
    ニザムや仲間達を探して呼び回ります。
声   「ニーナよ」
    どこからともなく声が聞こえてきます。
ニーナ 「え、何?」
    きょろきょろと見回すニーナ。
声   「わしじゃよ」
ニーナ 「その声はおじいちゃん!」
ニザム 「そうじゃ」
ニーナ 「どこにいるの?」
ニザム 「ここにはいない。今わしはお前の心に話しかけているのだからな」
ニーナ 「あたしの心の中に? みんなはどうしたの」
ニザム 「安心しろ、フェアリー達はみんな無事じゃ」
ニーナ 「ほんとうなの?」
ニザム 「魔将軍の攻撃があるのは予知していた。だから前もって避難させておいた
    のじゃ」
ニーナ 「おじいちゃん、教えて。龍の島に渡る方法を」
ニザム 「それはおまえの心のなかにあるはずじゃ」
ニーナ 「あたしの心の中に?」
ニザム 「祈ることだ……湖にむかって」
    しだいにかすれていく声。
ニーナ 「あ、まって、おじいちゃん」
    声は聞こえなくなっていました。
    気がつくと心配そうな仲間達の姿がありました。

    ニーナはニザムに教えられたとおりに湖にむかって祈りました。
    すると龍水晶がまぶしく輝きだしてきました。
    一筋の光が湖を渡ったかとおもうと、サーッと湖の水が引いて道が現れ、その
    先に大きな島が出現しました。
アフルレット 「あれが龍の島なのか?」
エミリー「こんなところにあったなんて」
パッド 「いきましょう」
    一行は湖の道を渡って島へと渡ります。

    龍の島。
    洞窟の奥深く。
    巨大なブルードラゴンの亡骸が横たわっています。
    その首筋に一振りの剣が突き差さっています。
アルフレット 「あれが、ドラゴンバスターなのか」
ニーナ 「そうよ。あれを引き抜かないとブルードラゴンは生き返らないわ」
アルフレット 「よし」
    アルフレッドはブルードラゴンに飛び移ります。
    剣に手をかけようとしたその時、突然すさまじいエネルギー波が襲ってきま
    した。間一髪退避するアルフレッド。
    一行が振り返ったそこには、仰々しい姿の魔将軍が立っていました。
魔将軍 「そうはさせないぞ」
    ついに魔将軍の登場です。
魔将軍 「その剣は、ブルードラゴンの魂を身体から引き裂くもの。それを引き抜か
    れてはブルードラゴンを復活させてしまうからな」
リード 「こいつは俺達にまかせて、アルフレッドは剣を抜くんだ」
    リードが魔将軍に飛びかかっていきます。
    ルシルが魔法攻撃で応戦します。
    エミリーは精霊を呼んで、魔将軍の攻撃から仲間を守ります。
    パッドは傷ついた仲間を治療していきます。
    全員が一丸となって魔将軍に向かいます。
    その隙をついて、アルフレッドはドラゴンバスターを引き抜くことに成功し
    ました。
アルフレット 「ニーナ! 今度は君だ」
ニーナ 「わかったわ」
    龍水晶に全精神を集中するニーナ。
    輝きはじめる龍水晶。
リード 「地震だ!」
    大地が大きく揺れはじめます。洞窟の壁という壁が崩れ落ちようとしていま
    す。
パッド 「見てください。ブルードラゴンの身体が!」
    パッドが指さしています。
    ブルードラゴンの身体が輝きはじめました。
エミリー「龍水晶に封じられていた魂が、流れ込んでいるんだわ」
ルシル 「復活するのか」
魔将軍 「させるかー!」
    魔将軍がありったけの魔法攻撃をニーナに向かって放ちました。
    龍水晶から解放されるエネルギーと、魔将軍が放った魔法のエネルギーとが
    衝突して、ものすごい光と轟音をたてています。目を開けていられません。
ニーナ 「きゃあ!」
    ニーナの身体が輝きはじめました。
アルフレット 「ニーナ! そこを離れろ」
ニーナ 「まだだめよ」
アルフレット 「ニーナ」
ニーナ 「アルフレッド、好きよ……もし生まれかわったら」
    ニーナはアルフレッドに微笑みを投げかけました。
    そして、ニーナは蒸発するように消えてしまいました。
アルフレット 「ニーナ!」
    ブルードラゴンがゆっくりと起き上がりました。
魔将軍 「ちっ、遅かったか」
    すっと消える魔将軍。
ルシル 「あ、魔将軍が逃げる」


第五幕


    輝きを失った龍水晶が転がっている。
    それを拾いあげるアルフレッド。
アルフレット 「ニーナ……」
    龍水晶を胸に抱いて、悲しみにうちふるえるアルフレッド。
パッドー「セシルにつづいてニーナまで……」
ルシル 「いつまでめそめそしてんだよ」
エミリー「お姉さん! そんなこと言ったって」
ルシル 「死んだものは生き返らないんだ」
エミリー「でも……」
    アルフレッドが立上りました。
アルフレット 「わかっている」
エミリー「アルフレッド」
    アルフレッド、ブルードラゴンに歩み寄る。
アルフレット 「ブルードラゴン、僕達を魔将軍のいる魔界へ連れて行ってくれ」
    それに答えるようにブルードラゴンが輝いたかと思うと、一行は暗黒の世界
    に運ばれていました。
    目の前には魔将軍の居城「夢幻城」がそびえています。

    それはそれは地上とは比べものにならないくらいの魔物が一行に襲いかかっ
    てきます。
    しかしブルードラゴンの加護のもとドラゴンバスターという最強の魔剣によ
    って魔物は追い払われていきます。
    ついに魔将軍の咽元まで突き進みました。
    ブルードラゴンによってその魔法のすべてを封じられた魔将軍。
    アルフレッドはドラゴンバスターを構えて突撃します。
アルフレット 「魔将軍! 覚悟」
    断末魔の叫びとともに崩れ落ちる魔将軍。
エミリー「ついにやったのね」
パッド 「長い戦いでしたね」
ルシル 「なんて悠長なこといってられないよ」
リード 「夢幻城がくずれはじめている」
エミリー「魔将軍が死んだからね」
アルフレット 「ブルードラゴン!」
    答えるように、ブルードラゴンが輝く。


第六幕 再生


    あたり一体暗黒に閉ざされた世界。
    ニーナが宙に浮いて漂っている。
ニーナ 「ここはどこかしら」
    辺りが輝いてブルードラゴンが出現しました。
ニーナ 「ブルードラゴン!」
青龍  「なあ、ニーナよ。どうしてそんなにまで、人間の男に肩入れする」
ニーナ 「え? その声はおじいちゃん」
    青龍の身体からまばゆい光が放たれたと思うと、その身体からニザムが現れ
    た。
ニーナ 「おじいちゃんがブルードラゴンだったの?」
ニザム 「ふふ、そんなにおどろくな」
    どっこいしょとブルードラゴンの身体に腰を降ろす。
ニザム 「正確にいうとな。わしは、ブルードラゴンの意志体のごく一部なのじゃ」
ニーナ 「一部って?」
ニザム 「ほれおまえが解放した龍水晶に封じられていた精神体。あれがブルードラ
    ゴンの精神体なのじゃ。神龍戦争で肉体精神ともに力を使い果たし、傷つい
    た身体を癒すためには数万年もの時間が必要だった。そのために自らの身体
    から精神を抜取り紫水晶に封じ込めることにしたのだ。紫水晶はエネルギー
    を吸収する働きがあるからな。数万年もの長きもの間に吸収されたエネルギ
    ーは膨大なもので、充分元の精神力を取り戻すことができた。そして紫水晶
    は龍水晶となった。あとは解放する時を待つだけじゃった」
ニーナ 「あたしがその役割を果たしたのね」
ニザム 「そうじゃ。わしは、その時のためにと精神体から一部を抜き出され、大切
    な龍水晶を守り続ける役割をおっていたというわけじゃな。わしは神龍戦争
    以来死ぬことなくずっと生きておる」
ニーナ 「じゃあ、あたしのおじいちゃんというのは……」
ニザム 「それを言われると心が痛む。村人の意志を操作してそう思い込ませてきた
    のじゃ。おまえはわしの孫ではない」
ニーナ 「そんな……」
ニザム 「悲しむでない。お前達フェアリーは、ブルードラゴンの鱗から生まれたの
    じゃ。おまえとわしははるかな時をこえて同じ血筋であることには違いない
    のじゃからな。こうしてな……ニザムとしてお前達と永年暮らしているせい
    か、わしの身体にもうひとつ別の意識体が生まれたようじゃ」
ニーナ 「別の意識体?」
ニザム 「そうじゃ。ブルードラゴンの精神体とは違う別の意識がな。それはお前達
    を慈しむ心。そして数万年の時を経て、それはいつしか生命力となった。そ
    の生命をおまえに託すことにしよう」
ニーナ 「あたしに?」
ニザム 「ブルードラゴンが復活した今、ニザムはもう必要がなくなったからな。わ
    しは本来の姿に戻らねばならぬ。元々その一部なのじゃから。
    ブルードラゴンが首をもたげあげた。
ニザム 「時間がきたようじゃ」
ニーナ 「おじいちゃん」
ニザム 「おまえと過ごした日々は永遠に忘れないよ。さあ、行くのじゃ。新しい希
    望がおまえを待っているのじゃ」
ニーナ 「新しい希望?」
    ニザムそれには答えずに、にこりと微笑んでブルードラゴンに溶け込んでい
    く。
ニザム 「おじいちゃーん!」
    まばゆい光があたりをおおいつくす。

終幕 森は生きている


    小高い丘。目の前に大きな湖が広がり、湖底に夢幻城が沈んでいる。
    アルフレッド以下の戦士達がたちすくしている。
エミリー  「これで本当に終ったのかしら」
パッド 「信じましょう。そうでなきゃニーナが命を投げ出して救ってくれたかいが
    ないですよ」
    アルフレッド、ニーナの持っていた龍水晶のかけらを、右手に握りしめてい
    る。
エミリー  「あ、ブルードラゴンが!」
    エミリーが湖面のほうを指さして叫んだ。
    ブルードラゴンが突如湖面から現れて水しぶきを撒き散らしながら天空めざ
    して昇って行く。
パッド 「昇天していく。きっと天空城にいくんだな」
エミリー「きっとアルテミスに替って、天空からこの世界を見守ってくれるのね」
アルフレット 「呼んでいる……」
パッド 「どうした、アルフレッド」
アルフレット 「ニーナが僕を呼んでいる」
エミリー「なにいっているの、アルフレッド」
アルフレット 「行かなくては、迷いの森へ」
エミリー「迷いの森ですって!」
    アルフレッドゆっくりと歩き出す。
エミリー「アルフレッド!」
パッド 「行かせてやりなよ」
エミリー「でも……」
パッド 「最愛のひとを亡くしたんです。そっとしておいてあげましょう」
エミリー「そんな……あたしだって……」
    丘を降りてくるアルフレッド。後方に仲間達の姿。


    迷いの森。
    魔将軍の攻撃にすっかり朽ち果て、かつてのうっそうとした森の姿は見る影
    もない。
    森を歩いているアルフレッド。
    誰かを探すようにあたりをきょろきょろと見回している。
    ふと足元に何かを見つけて立ち止まる。
    倒れた大木のそばから新しい芽が出ている。
アルフレット 「芽が出ている」
    そっとなでるようにその葉にさわる。
    あたりを見回すアルフレッド。そこここから新芽が出ている。
アルフレット 「森が再生しようとしているんだ。この森はまだ死んではいなかったんだ!」
声   「そうよ、アルフレッド」
    気が付くとアルフレッドのまわりをたくさんのフェアリー達が群舞していた。
アルフレット 「君達は! 生きていたんだ」
フェアリー  「私達は大丈夫よ」
フェアリー  「そう、この森が生きている限り。私達も永遠に生きていけるの」
    そんなフェアリーの中にニーナの姿があった。
アルフレット 「ニーナ!」
    ニーナ、にっこりと微笑んで森の奥へと飛んで行く。
アルフレット 「まってくれ、どこへいくんだ」
    ニーナ、振り返り振り返りしながら、アルフレッドを誘導するようにずんず
    んと飛び続ける。

    洞窟のある丘。
    ニーナ、すーっとその洞窟の中に入ってゆく。
アルフレット 「ここは……」
    その洞窟は、アルフレッドとニーナがはじめて言葉をかわした場所であった。
    アルフレッド、中にゆっくりと入る。
    暗い洞窟内。
    アルフレッドの足音が壁に反響している。
    その奥まった、焚火のあったところ。
    ニーナが空中で静止している。
    ボーッとニーナのまわりが薄明るく輝いてくる。
    そこには、はじめて二人が出会った時の情景が、走馬燈のように浮かんでは
    消えていった。
    やがて幻影の中のニーナがゆっくりと振り返った。
    徐々に光が増してゆく。
    光が最高に達したとき、その中に裸の人間の女性の姿が現れていた。
    そして光は再び減光しはじめてゆく。
女性  「アルフレッド」
    女性はアルフレッドの名を呼んだ。
アルフレット 「き、君は……」
女性  「ニーナです」
アルフレット 「ニーナ! 君がニーナなのか」
ニーナ 「はい」
    その顔をよく見つめると、なるほどニーナに間違いはなかった。
    ただあまりの変貌ぶりに目を疑うばかりであった。
アルフレット 「でもどうして」
ニーナ 「おじいちゃんが、あたしの願いをかなえてくれたんです」
アルフレット 「願いを? ニザムじいさんがか」
ニーナ 「フェアリーの長老ニザムは仮の姿、実はブルードラゴンの化身だったので
    す」
アルフレット 「ニザムが、ブルードラゴン!」
ニーナ 「はい。それであたしを人間にしてくれたんです」
アルフレット 「そうか、ブルードラゴンがか」
ニーナ 「あたし……あなたのそばにずっといたかった。だから人間になりたかった」
アルフレット 「いや、何も言わなくてもわかっている」
ニーナ 「アルフレッド」
    アルフレッドそっとマントを脱いで、ニーナにかけてやった。
アルフレット 「行こう」
ニーナ 「はい」
    洞窟の入口に向かって歩き出す二人。
    外からの光が逆行となって輝き、フェードOUT


    森の結婚式

    輝く太陽。
    木漏れ日が差し込む森。
    小鳥が飛び交い、フェアリーが群舞する森の風景。
    二人のフェアリーが花束の環を抱えながら空中を飛翔している。
    ゆっくり降りていくフェアリー。そこに花嫁衣装を着たニーナの姿が現れる。
    フェアリー花束の環をニーナにそっとかぶせてやる。
    そばにはアルフレッドがやさしく立っている。
    ニーナ達仲間の姿もあった。
    ニーナ、幸せそうに微笑んでいる。
    フェアリー達のダンスがはじまっている。
    しずかに、フェードOUT

-------------------------------------------------------------------------

で、その後どうなったかというと、ポシャリました( ;∀;)


メニューに戻ります

11

ファンタジー「妖精伝説」

本日、ブログ開設1周年となります。

それを記念して、今夜の定期更新は特別寄稿作品をアップします。

劇団による朗読音声「妖精伝説」

そして、その台本初稿版

の、二本立てです。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月25日 (金)

銀河戦記/鳴動編 第十六章 新艦長誕生 IV

第十六章 新艦長誕生

                IV  場内がざわめく。  但しタシミール星捕虜救出作戦における出撃の際に、事前に知らされていたカイン ズだけは落ち着いていた。 「提督。艦隊参謀長は、大佐をもって任にあてるのが慣例ですが……」  副司令官のチェスター大佐が皆にかわって質問した。 「慣例では、そうかもしれない。しかしそれをいうなら、私が少佐として最初に与え られた部隊とて、独立遊撃部隊という慣例からはずれた状態から出発している」 「それはそうですが……」 「ゴードン、君はこの席に着きたいと思うかね」  と尋ねられて、言葉に出さず否定するように肩をすくめるゴードン。 「適材適所という言葉にあてはめるならば、ゴードンも首席中佐のカインズもそれぞ れウィンディーネ・ドリアードを駆って暴れまわるのが信条で、作戦を練り上げ企画 する艦隊参謀長にはふさわしくない。その点、パトリシアは士官学校時代から私の参 謀として参画していた。私が少佐となる原動力となったミッドウェイ宙域会戦での作 戦、今ではランドール戦法と別名もついているが、あれはパトリシアとの共同で戦術 理論レポートをシミュレーションしている時に、同盟と連邦の想定戦で考え出したも のだったのだ。実戦では私が実行して名を挙げはしたが、その功績の半分はパトリシ アにあるといってもいいわけだ」 「そこまでおっしゃるなら、私は反対はしません。慣例にとらわれて適切でない参謀 をおいたところで艦隊のためにはならないでしょう。実際、資格があるもので参謀長 にふさわしいと断言できる人物がいないのも確かですし」  統帥本部から与えられる階級と、アレックスが将兵に与える地位が同列でないこと は、誰でも知っている。例えば旗艦艦隊指揮官は、副司令官に次ぐ者が選ばれるもの だが、ゴードンやカインズではなく、ディープス・ロイドである。防御に徹すれば負 けることはないと評される沈着堅実な彼だからこそ旗艦艦隊にふさわしいと考えた末 であり、激烈なる戦闘の最中にあっても、旗艦艦隊を彼に委ね自身は安心して、全艦 隊の指揮運用に専念できるということである。アレックスが重視するのは階級ではな く、個人の能力なのである。個人の隠された能力を見出しては、作戦において適所に 投入するから、当然の如く見事な戦果を上げて相当の地位に駆け登って来る。  パトリシアの艦隊参謀長就任は誰一人反対意見を述べないまま円満に決定した。と いうよりも、アレックスがすでに決めていることに対しては、誰にも逆らえないとい ったほうがいいだろう。彼が選んだ艦隊参謀長ならば間違いがあるはずない、という のがアレックスに対して絶大なる信頼を抱いている部下達の評価であった。  こうして前代未聞ともいうべき、女性佐官であり少佐という階級でしかない艦隊参 謀長が誕生したのである。 「ジェシカ」 「はい」 「僕は、参謀長として君も候補に挙げていた。パトリシアに航空戦術をはじめとする 戦術理論を教えこんだのは、他でもない君だからだ」 「確かに基礎から教えたのは私ですが、応用から実戦にいたるまで、今でははるかに パトリシアの方が私の能力を越えています。提督がそれを見抜き参謀長に彼女を推挙 したのは正しい判断です。私は先輩として彼女を教えこみ、その期待に応えてきた彼 女を誇りとしていますし、それで十分です」 「そうか……君達は強い絆で結ばれているんだな」 「はい。ランドール提督とガードナー提督との関係とまったく同じですよ」 「そうだったな。ありがとう」 「どういたしまして」  そして、やおらランドールに耳打ちするようにして、 「それにパトリシアならベッドの上でも作戦会議ができますものね」  といってくすりと微笑んだ。  二人の関係を良く知っているジェシカのジョークだったとはいえ、実際にパトリシ アと寝物語で交わした会話の中から生まれた作戦もあったのである。その中には現在 進行形で秘密理に進められている遠大な計画も……。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月24日 (木)

続 梓の非日常・第四章 峠バトルとセーターと 峠にて

続 梓の非日常・第四章 峠バトルとセーターと

(二)峠にて  日曜日の朝である。  いつものように、麗華に髪を梳かしてもらっている梓。 「バイクということですから、今日はポニーテールにしましょうね」  髪型についてアドバイスする麗華。 「ねえ、麗華さん。あたし、本当に慎二君とデートの約束したの?」 「はい、間違いありません。『たぶん忘れてたりするから、その時は教えてくださ い』と念押しなされました」 「うーん……絵利香ちゃんも言ってたけど、あたし記憶がないのよね」  言いながら着替えをはじめる梓。  バイクに跨るのを考慮して、黒地に白い動物の絵柄の入った厚手のタイツにミニス カート。そして上着はフェイクムートンジャケットで決まりだ。梓にパンツスタイル は似合わないとの麗華のチョイスである。 「お嬢さま、沢渡様がお見えになりました。玄関ロビーにお通ししてあります」  メイドが知らせに来た。 「もう来ちゃったの?」  しようがない。  といった表情で、部屋を出ようとすると、 「これを忘れないでください」 「なにこれ?」 「慎二さまへのプレゼントでしょう? 昨夜に編みあがったばかりの手編みのセー ターですよ」 「あたしが、セーター編んだ?」 「きっと喜ばれますよ」  とセーターの入った紙袋を手渡される梓だった。 「どうも納得できないな……」  何もかもが自分のあずかり知らないところで回っている?  階段を降りると、玄関ロビーの応接椅子に慎二が座って待っていた。 「よう!」  片手を挙げて迎える慎二。 「早かったな」 「初めてのデートだからな」 「ほれ、これやるよ」 「お! なんだ?」  紙袋を開けて確認する慎二。 「おお! セーターじゃないか。梓ちゃんが編んだのか?」 「一応、そういうことらしい」 「へえ、意外だな」 「いらないなら、返せよ」 「いや、貰っておくよ」  と言って、頭からセーターを被る慎二。 「温まるぜ」 「そりゃあ、……手作りだからな」 「よっしゃあ、そろそろ行くか?」 「そうだな……」  立ち上がる慎二。  玄関前。  すでにバイクに跨ってエンジンの調子をみている慎二と、見送りに出ている麗華や メイドたちに挨拶している梓。 「ほれ、ヘルメット。買ったばかりで使ってないから、変な匂いとかつかないから安 心しろ」 「あ、そ」  ヘルメットを被りバイクに跨る梓。 「それじゃあ、麗華さん。行ってきますね」 「お気をつけて」  重低音と共に、二人を乗せた自動二輪が走り出す。 「で、どこへ行くんだ?」 「え? なに?」  風切って走る自動二輪。しかもヘルメットを被っていては会話は難しい。 「どこへ行くのか、って聞いてるの!」  しかたなく大声で話しかける梓。 「ああ、正丸峠だよ」  慎二も大声で返してくる。 「しょうまる?」 「この辺で峠走りのできるのは、そこしかないしな」 「なんで、デートに峠走りなんだよ?」 「あはは、梓ちゃんに合わせたんだよ」 「何でだよ」 「だってよ。映画館とか遊園地って柄じゃないだろ?」 「そりゃまあ……そうだけど」  確かにその通りだった。  映画館は眠くなるだけだし、遊園地で遊ぶような女の子じゃないつもりだった。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月23日 (水)

銀河戦記/鳴動編 第十六章 新艦長誕生 III

第十六章 新艦長誕生

                III 「さあ、時間よ。行きましょう」  パトリシアは少佐に昇進したとはいえ、新たなる任務を与えられていない以上、こ れまで通りアレックスの副官としての職務を引き続き果たさねばならない。作戦室の 受け付けに座り次々と入室する幕僚達の名簿をとり案内役を務めた。  幕僚全員が集まった頃合を計ったようにアレックスがやってくる。 「全員揃っています」 「ごくろうさま」  いつものようにアレックスの後ろの副官席に腰を降ろすパトリシア。 「早速だが、新しい幕僚を紹介しよう。ウィンザー少佐」 「はい」  名前を呼ばれて立ち上がるパトリシア。 「知っての通り新任の幕僚となった。パトリシア・ウィンザー少佐だ。みんなよろし く頼む」 「よろしくお願いします」  といって深くお辞儀をするパトリシア。 「よろしく」 「頑張れよ」  という声がかかった。 「ウィンザー少佐には、私の席の隣に座ってもらうことにする」  それに対して一同が耳を疑った。  艦隊司令官の隣の席といえば、副司令官と艦隊参謀長というのが一般的常識であっ たからだ。  すでに右隣には副司令官のオーギュスト・チェスター大佐が着席していたが、現在 艦隊参謀長の席は空位であり、これまで着席する者はいなかった。資格のあるゴード ン大佐にしても首席中佐のカインズにしても、アレックスは参謀長として旗艦に残す よりもそれぞれ一万五千隻を有する部隊を直接指揮統制する分艦隊司令官に任命して いたからだ。もう一人の大佐であるルーミス・コールは艦政本部長職にすでについて いた。  では艦隊参謀長役をどうしていたかというと、定時的に開かれる作戦会議がそれを 代行していたのである。与えられた任務に対してアレックスが作戦会議を招集する場 合、例え一兵卒でも意見書・作戦立案書を提出して、会議に参加できるようオープン な環境を与えていた。  これまではそれがうまく機能して艦隊参謀長の必要性がなかった。正規の一個艦隊 として編成され、より多くの艦艇及び将兵で膨れあがった現在、もはやそれをまとめ る艦隊参謀長が必要になってきたのである。  いきなり隣の席を指示されて戸惑うパトリシア。 「どうしたウィンザー少佐。座り給え」 「は、はい」  おどおどしながらもアレックスの左隣に着席するパトリシア。 「さて、私がウィンザー少佐に隣の席を指示して、皆驚いているようだが……。察し のとおり、私は彼女を艦隊参謀長につけることにした」

ポチッとよろしく!

11

2018年5月22日 (火)

続 梓の非日常/第四章・峠バトルとセーターと

続 梓の非日常/第四章・峠バトルとセーターと

(一)セーター  自分の部屋で窓辺に椅子を寄せて編み物に熱中している梓がいる。  優しそうな表情をして無心に編み棒を動かして編み続けている。  そよ風がそのしなやかな髪をたなびかせている。 「はーい! 梓ちゃん、遊びに来たわよ」  開いていた扉から絵利香が入ってくる。 「あ、絵利香。いらっしゃい」 「絵利香?」  きょとんとしている絵利香だった。  なぜならいつもはちゃんづけして呼んでいたからだ。 「編み物してるなんて珍しいじゃない」 「ん……ちょっとね」 「信二君にあげるのね」 「わかる?」 「そんな大きなサイズを着れる身近な人といえば彼しかいないじゃない」 「そうね。うふふ」  と、否定もせず少し照れた表情を見せる梓だった。  なんか変ね……。  喧嘩が何より好きで、男勝りなあの梓が……編み物?  絵利香には、梓の心変わりが理解できなかった。 「お嬢さま、慎二さまからお電話です」  麗華が電話子機を持って入ってきた。 「ありがとう」  トレーに乗せられた電話子機を取り、話し出す梓。 「替わりました、梓です。慎二君、こんにちは。え? デート? ……ん、どうしよ うかしら。今度の日曜か……予定はないけど。そうね、いいわ。迎えに来るの? じ ゃあ、待ってる。うん、それじゃあ」  電話を返す梓。  いかにも嬉しそうだ。 「あ、梓ちゃん。慎二君とデートの約束したの?」 「ええ。バイクでかっ飛ばそうとか言ってた」 「バイクでデートねえ……慎二君らしい発想だけど。梓ちゃんが、うんと言うとは思 わなかったわ。今までは、慎二君が誘っても、一蹴の元に断っていたじゃない」 「たまにはいいんじゃない?」 「いいのかな……」  梓がいいというのなら、口を挟むべきことじゃないと思いつつも、どうしてもしっ くりこない絵利香だった。 「麗華さん、日曜日、慎二君とデートだから。予定に入れておいてください。たぶん 忘れてたりするから、その時は教えてください」 「お忘れになるって……?」  きょとんとしている麗華。  いくらなんでもデートを約束して、その日を忘れるなんてことがあるのだろうか?  麗華も絵利香も首を捻っていた。 「ん……。ちょっとね、最近物忘れが多くてね」 「それは、構いませんけど」 「うーん……デートまでに編みあがるといいんだけどなあ……」  そしてまた、編み物に専念する梓だった。  絵利香が、麗華にそっと耳打ちする。 「ねえ、麗華さん。最近の梓ちゃん、変わったと思いませんか?」 「確かに変わりましたよ。そうですね、あの研究所火災以来だと思います。ああやっ て、毎日編み物していますし、ピアノの練習も以前よりも増えています。慎二さまに 命を助けられて、心境も変わられたのではないでしょうか」 「それって、恋する乙女心ということ?」 「はい。ああして慎二さまのためにセーターを編んでらっしゃる姿は、まさしく恋心 に目覚めたとしか言えないと思います」 「麗華さんは、慎二君のこと肯定してる?」 「お嬢さまがなさることには口を挟むことはできません。それに渚さまも慎二さまの こと、お気に入りになられていますしね」 「そうなの?」 「はい」 「ふうん……。娘を命がけで助けてくれたのだから、それなりに感謝の意を表すのは 判るけど」  翌日となった。  教室へ向かって廊下を歩いている二人。 「ええ? あたしが、慎二とデートの約束したあ?」 「大きな声出さないでしょ。びっくりするじゃない」 「びっくりするのは、こっちだよ。なんであたしが、慎二となんかデートしなくちゃ いけないのよ」 「梓ちゃん、本気で言ってる?」 「本気もなにも、絵利香ちゃんこそ冗談言わないでよ」  絵利香ちゃん……?  今度はちゃんづけなのね。  呼び方も違うし、約束事を忘れるなんて……。  絶対に変だ。  もしかしたら……。  梓には、麗華はおろか母親にも知らされていない秘密がある。  それは梓と絵利香、そして慎二だけが知っていること。  まだ確証はないが、梓の変貌振りの原因を推測すれば、その秘密に起因する以外に 可能性が考えられない。  これは確かめてみるしかないわね。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月21日 (月)

銀河戦記/鳴動編 第十六章 新艦長誕生 II

第十六章 新艦長誕生

                II  司令室を退室して、すぐ近くの主計科主任室に集まった三人。 「はい。これが女性佐官の制服よ」  といって主計科主任であるレイチェルから制服を支給されるパトリシア。 「サイズは合っていると思うけど、一応着てみてくれる」 「はい」  着ている士官用の制服を脱いで、下着になるパトリシア。 「とにかく第十七艦隊に女性佐官はあたし達三人だけだし、もちろん既成服なんかあ るわけないから、特注品なのよ」  といってスリップ姿になったパトリシアに制服のスカートを渡すレイチェル。 「そうなんですか。じゃあ、この制服は……」  それを受け取って履きながら質問する。 「ふふふ。アレックスが准将になった時から、この時のために前もって準備しておい たの。あなたなら必ず昇進するだろうと信じていたから」 「ありがとうございます」 「うん。スカートはぴったり合っているわね」 「はい」 「次ぎは上着ね」  といって今度はジェシカがパトリシアに上着を着せてやった。 「最後はこれを付けるのよ」  といって持ち出したのは、少佐の階級肩章であった。  レイチェルが器用に針と糸でしっかりと肩に縫い付けていく。そして縫い終わって 糸の始末を施し歯で切った。  そして、戦術士官を示す胸に差している徽章(職能胸章)を、尉官の銀色から佐官 用の金色のものに取り替えた。 「いいわ。さあ、鏡の前に立ってみて」  制服を着終えて、言われた通りに鏡の前に立つパトリシア。  真新しい佐官の制服、肩に輝く少佐の階級章。どれもまばゆいばかりに輝いて見え た。 「素敵よ、パトリシア。良く似合っているわ」 「ほんと、どこから見ても立派な少佐殿よ」 「ありがとうございます……」 「さて、パトリシア。少佐になって最初のお仕事よ」 「そうよ。作戦室に全幕僚を招集する役目」 「はい」  早速、主計科主任室に備わっている端末を操作して、全幕僚に連絡を入れるパトリ シア。最初に呼び出したのは、アレックスの片腕であるゴードン・オニール大佐であ った。 「おう。パトリシア、似合っているじゃないか、その制服」  画面に現れると同時にパトリシアの制服姿を誉めるゴードン。 「あ、ありがとうございます。提督からの指令です、一五○○時に作戦室に集合で す」 「わかった。じゃあ、後でまた」  画面からゴードンが消えて、緊張したため息をもらすパトリシア。  さらに次々と連絡を取り続けるパトリシアであったが、親しい間柄にある幕僚のほ とんどが、その佐官の制服を誉めちぎった。  すべての幕僚に連絡を取り終えて、緊張した肩の荷を降ろして、ほっとため息をも らすパトリシア。 「ごくろうさま」  といってジェシカは、ねぎらいの言葉を忘れなかった。  それから集合の時間までの間、三人は第十七艦隊の今後について熱く語り合い意見 を交換するのであった。  情報参謀のレイチェル、航空参謀のジェシカ、そしておそらく作戦参謀に取り立て られるだろうパトリシア。アレックスを作戦面でバックアップする女性佐官トリオの 誕生であった。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月20日 (日)

続 梓の非日常/第三章 スパイ潜入 これから

続 梓の非日常/第三章・スパイ潜入

(七)これから  真条寺家のオフィス。  梓が、麗華から報告を受けていた。 「やはり、スパイが潜り込んでいたのね」  長年愛用のパンダのぬいぐるみを両腕で抱くようにしている梓。  情緒不安定な時に見せるいつもの癖だった。  自分の命を狙う組織が判明し、その首謀者が敵対する神条寺家の当主であり、それ を密告したのが同い年の葵だったということ。  十六歳の少女には耐えざる状況にあるということである。  重々承知の麗華は、慎重に言葉を選んで答える。 「はい。偽の情報を与えて誰がどう動くかを監視していたところ、上手く偽の情報に 釣られて正体を現しました」 「そのために自家用専用機をブロンクスから向かわせ、おまけに背格好の似ている美 鈴さんにまでファントムVIに乗ってもらって成田に行かせるとは。まかり間違えば ファントムVIが狙われていたら、美鈴さんに危害が加わっていたのですよ」 「いえ、美鈴さんは自ら志願してファントムVIに乗ったのです。人が乗ってる形跡 がなければ疑われる、フィルムシート越しなら他人でも気づかれないだろうからとい うことで」 「そうだったの……何にせよ。美鈴さんには危険任務従事手当てを差し上げないとい けないわね」 「かしこまりました。そのように致します」 「でも犯人も逃げ出す途中で、交通事故で亡くなるなんてついてないのね」  麗華は事実を伏せていた。  犯人を狙撃殺害したなどとは決して言えなかった。  真条寺財閥の若く美しいご令嬢にして、三百二十万人を擁する企業グループの総帥。  使用人に対してもその健康状態に常に気を配って、いたわりの心で接している。  そんなやさしい性格のお嬢さまには、血で血を洗う裏の世界を見せたくなかった。  嘘も方便という言葉もある。 「人を雇うには十分吟味しなければいけないようね。かつ買収されるような不満のお こる職場でもいけないし……。人の心は難しいわね」 「そのようでございます」  はあ……。  ため息をつく梓。 「今後の行動には十分気をつけてくださいませ」 「葵さんみたいに、四六時中ボディーガードを貼り付けますか?」 「いえ、そこまでは必要ないと思います」  神条寺葵のように黒服のボディーガードで身の回りを固めてしまえば、確かに鉄砲 玉のような特攻殺人はできないだろう。しかし沢渡敬のような狙撃犯に対してはまっ たくの無防備である。それに人並み以上の護身術は身に着けているので、わざわざそ こまでする必要はないだろう。  なによりもお嬢さまには、ボディーガードは似合わない。  そう思う麗華だった。 「ところでスペースコロニー建設のため、ラグランジュポイントL4及びL5へ、無 人宇宙実験室【スペースバード】の打ち上げに成功いたしました。今後一年に渡り重 力干渉計による重力の計測、及び太陽放射と宇宙線の測定を行います」 「まずは一安心ですね。ケープカナベラル宇宙港の着工状態は?」 「整地が終了し、ジェットコースターの建設に取り掛かりました」  地球重力を離脱するには、それを可能にするだけの加速力を得るために莫大な燃料 を消費する。それを宇宙船自体の推進力に頼っては、燃料だけで船体のその大半を奪 われ、肝心なペイロードが一割にも満たないことになる。これでは宇宙を頻繁に往復 するシャトル便には不向きだ。  そこで宇宙船そのものをカタパルトに乗せて、強力なカタパルトエンジンで上空へ 打ち上げるというものだった。その形状はまるで遊戯施設にあるジェットコースター を、天空に向かうコースの途中で切り取ったようにできていた。  ゆえに梓が名付けたその施設の名前が、「ジェットコースター」だ。  単純明快にして、誰にも理解できる名前だろう。  カタパルトエンジンは、米国のNASAが所有するスペースシャトルを、第二宇宙 速度の秒速11.2km(地球表面における脱出速度)までいっきに加速することが出来る 性能を持っていた。  施設の建設と保守点検は、篠崎重工が担当することになっており、後に発足する米 国現地法人の篠崎重工アメリカに引き継がれる。建設資金はAFCが全額出資してい た。  その運営には、AFCの新規事業体である「宇宙貨物輸送協会」が当面の間受け持 つこととなった。 「AFCの新規事業体のすべてが順調に進んでおります。お嬢さまには、ご安心なさ れてお勉強に勤しんでくださることをお願い致します。それが相談役として執権代行 なされている渚さまのご意思でもあります」 「そうね……。まだ高校生だものね」  確かにAFCの代表として最終決定権を持っている梓ではあったが、実際の運営は 執権代行している母親の渚である。軍事基地であるケープカナベラルに隣接する宇宙 港の建設許可を取り付けるには、大統領や統合軍などに意見具申できる渚の政治力あ ってのことである。  梓、十六歳。  まだまだほんの子供でしかない。 第三章 了

ポチッとよろしく!

11

2018年5月19日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第十六章 新艦長誕生 I

第十六章 新艦長誕生

                 I  パトリシアは、第十一攻撃空母部隊と共に基地に無事に戻り、その足でアレックス のところに出頭して報告した。 「パトリシア、報告を聞こうか」 「はい。すでにタシミールの捕虜収容所は閉鎖されており、収監されていた捕虜もい ずこかに移送されたものと思われます。おそらくは、最寄りのカラカス基地を奪取さ れて、防衛は困難とみて撤退したのでしょう。残念ながら捕虜救出作戦は、無駄に終 わりました」 「そうか……」 「くしくも別働隊と思われる敵部隊の接近を察知し、これと戦闘状態に突入しました。 幸いにも敵よりも早くその動静をキャッチできたために、先制攻撃に成功。味方の損 害を最小限に食い止めることができました」 「うむ。ご苦労さまでした。正式な報告書をまとめて提出したまえ。今日のところは 下がってよし」 「はい。失礼させていただきます」  敬礼して退室するパトリシア。  数日後アレックスは、配下の佐官クラスを集めてパトリシアの佐官昇進について協 議を諮った。  提出されたパトリシアの航海日誌とカインズの指導調査書とをもとに、佐官昇進の 是非が検討される。 「カインズ中佐はどう思いますか。一緒に同行して得た感じは」 「はい。当初の作戦目的である捕虜救出は空振りに終わりましたが、索敵や揚陸作戦 の指令には何らミスは見られず、敵艦隊との戦闘にも適時適確な指示を下して一応の 及第点というところでしょうか。くしくも奇襲される状態にあったにも関わらず、万 全の体制でこれを回避し、逆に先手を取って攻撃を開始した手腕は見事です」 「なるほど」 「索敵・揚陸・哨戒・敵艦隊との戦闘・地上捜索そして撤収と、それぞれの作戦及び 指揮統制を採点すれば、カインズ中佐の採点通りすべて及第点を取っていますね」  ゴードンが賞賛の言葉を述べた。 「捕虜救出作戦のことだけに留まらず、慎重に敵艦隊を捜索し続けた行為は見習うべ きものがあります」 「ニールセンが一枚噛んでいることで、情報が意図的に敵艦隊に漏洩された可能性を 十分に考慮した結果でしょうね。慎重すぎて悪いということはないでしょう。結果と して敵艦隊の奇襲を回避できた」  一通り各佐官達の意見討論が済んだところで、アレックスは決議を持ち出した。 「それでは、そろそろ結論を出すことにしよう。ウィンザー大尉の佐官昇進に反対の 者は?」  誰も意義申し立てするものはいなかった。 「反対者がいないようなので、パトリシア・ウィンザー大尉の佐官昇進を、艦隊推薦 として査問委員会に報告する」  さらに数日後、パトリシアはアレックスに呼ばれて司令室に赴いた。  主計科主任を兼務するレイチェルの他に、先輩であるジェシカも呼ばれていた。 「早速だが、佐官昇進審議委員会における決定事項を伝える」 「はい」  パトリシアは姿勢を正して緊張して待った。 「パトリシア・ウィンザー大尉。本日付けをもって貴官を少佐として任官する」  思わず手を合わせるような格好で口を押さえて息を飲み込むパトリシア。 「ありがとうございます」 「おめでとう。パトリシア」  ジェシカが手を差し伸べて握手を促した。その手を取って握手するパトリシアだっ たが、感極まった彼女はそのままジェシカに抱きついて泣き出したのであった。 「昇進できるとは思わなかった……」  戦術理論など教え込み期待に答えた頼もしい後輩の昇進に、目頭を熱くするジェシ カ。  やがて涙を拭きなおし、大きな深呼吸をして精神を整えはじめたパトリシア。 「少しは落ち着いたかい。さあ、任官状と階級章だ。受け取りなさい」  といってパトリシアの前に差し出した。 「はい」  うやうやしくそれを押し抱くようにしてうやうやしく受け取るパトリシア。 「ジェシカの記録を塗り替えて、史上最年少の女性佐官になった気分はどうだ」 「史上最年少というのはともかく。佐官になれて、感慨ひとしおです」 「情報参謀のレイチェル、航空参謀のジェシカに続いて、いずれ何らかの参謀につい てもらうことになる。が、ともかく……これで三人目の女性佐官が誕生したわけだが、 三人協力してこれからも艦隊のために尽力してくれ」 「はい」 「レイチェル、彼女に新しい制服を支給してくれ給え」 「かしこまりました」 「パトリシア。一五○○時に、作戦室に全幕僚を招集してくれ。改めて君を紹介す る」 「は、はい」 「話しは以上だ。下がってよし」 「はい」  三人はほとんど同時に答えた。

ポチッとよろしく!

11

祖父と祖母の時間……

インターポット

ギタンバッタン♪

ううむ……こうしていると子供の頃を思い出すなあ。

何言ってるんですか。懐古に浸るにはまだ早いですよ。

そうだな。孫たちはどうしている?

もうぐっすり眠ってますよ。

そうか、孫達の寝顔を見てから、儂らも寝るとしよう。

その前に、ばあばにも遊ばせてくださいな。

おお、悪い悪い。今変わるよ。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月18日 (金)

続 梓の非日常/第三章 スパイ潜入 スナイパー

続 梓の非日常/第三章・スパイ潜入

(六)スナイパー  主任が静かに端末を操作しながら言った。 「ちょっとこれを見て頂けるかしら」  自分の端末のスクリーンに映像が投影された。それは自分がいた女子トイレの中の 場面だった。手洗い場で隠していた端末を取り出し外部と連絡している様が一部始終 記録されていた。 「これはどういうことかしら? 通信機のようだけど外部の誰と連絡を取り合ってい たの?」  厳しい表情で追求する主任に対し、 「あははは。わたしが白状するとでも思ったの。ばれたら逃げ出せないことくらい判 ってるわ。だから……」  というと、歯を食いしばるような動作を見せた。 「しまった! 毒か?」  主任が察知したように、そのオペレーターは義歯に、即効性の猛毒のカプセルを隠 していたようであった。  たちまち苦しみもがき、そして息絶えた。 「なんてことを……」  まわりにいたオペレーターが嘆いていた。  警備員に即座に指令を出す主任。 「遺体を運び出せ!」 「はい!」  恐れおののきながらも指令通りに、遺体を外へ運び出す警備員たち。 「それにしても、通信端末をどうやって運び込んだのか」 「以前にトイレが詰まって配管修理工を呼んだことがあります。その時に、工作員が 紛れ込んだと思われます。修理工具とか必要ですから、通信用の部品を忍ばせること もできたのでしょう」 「ふむ、外部の者を立ち入らせる時は、もっと厳重にチェックしなきゃならんな」 「旧世代の通信機とは意外でした」 「うむ、今後はもっと原始的な通信方法への対策も考慮せねばな」 「原始的とは?」 「トンツートンツーのモールス信号だよ。そうだな、例えば上下水の配管はすべて外 部に通じている、配管を叩くなどしてモールス信号で情報を外部へ流せるわけだ。今 時、モールス信号を認識できるものはいない。ただの雑音としてしか聞こえないだろ う」 「モールス信号くらいなら誰でも知っていると思いますが……」 「だが、文面を読み取れないだろう。信号に雑音を混合させて流し、受け取った側は 雑音除去して文面を読み取れるという訳さ」  一同考え込む。  それはそうだけど……。  という表情である。 「セキュリティールームに連絡。外部にいるはずの連絡員は見つかったか? 電力線 を使って通信できるのは、変圧器までの間だ。つまりこの施設内のどこかに潜んで通 信を受け取っていたはずだ。まだ施設内にいる、至急に探し出せ」  セキュリティールームでは犯人と思しき男をカメラで追い、警備員を向かわせてい た。 「D36Aブロックに逃げたぞ。施設内警備員はただちにD36ブロックへ向かえ。 外回りの者は出入り口を閉鎖しろ!」  追い詰められる連絡員。  しかし自動拳銃を持っており、容易に近づけさせなかった。  そして窓を割って施設の外への脱出に成功する。  敷地内の雑木林を駆け抜ける連絡員。  その連絡員をスコープ内に捕らえている者がいた。  それは施設の屋上にいた。  狙撃銃のスコープを覗きながら、素早く照準を合わせてトリガーを引いた。  銃口から飛び出した弾丸は一直線に連絡員のこめかみを捕らえて命中した。  血飛沫を上げて倒れる連絡員。 「さすがですね」  背後から声を掛ける女性がいた。  麗華だった。 「なあにこれくらいの距離なら、動いてる標的でも確実に仕留められますよ」 「特殊傭兵部隊にいただけのことはありますね」 「殺しても良かったんですかね」 「どうせ口を割らないでしょう。お嬢さまの命を狙う組織に対して、こちら側も本気 だと知らしめる必要がありました」 「つまりお嬢さまの命を狙うなら、それ相応の覚悟をして掛かって来い! ですね」  と言いながら狙撃銃を分解してスーツケースにしまう狙撃員。 「それにしても、まさか、慎二君のお兄さんが狙撃のプロ集団の特殊傭兵部隊の一員 だとはね」 「こちらも信じられませんでしたよ。私が所属している、テロリストから要人を警護 し、人質となった場合の救出任務に従事する特殊傭兵部隊。その部隊を抱えている財 団法人・セキュリティーシステムズの親会社のAFC財団のオーナー、真条寺梓さま。 そのご親友というか……悪がきが弟の慎二とはね」  この狙撃員の名前は、沢渡敬と言った。  表の顔は、麻薬銃器対策課の警察官である。  麻薬銃器取締りの研修として、犯罪の渦巻くアメリカのニューヨークに渡っていた。  だが逆に組織(実はニューヨーク市警の特殊部隊)に狙われて逃げ回るはめに陥っ た。そんな折にニューヨーク市警も手を出せない、治外法権の真条寺家の屋敷内に、 たまたま迷い込んで命拾いしたのである。彼には同じくニューヨーク研修にきていた 同僚警察官でかつ婚約者という女性がいたが、組織からの逃亡の際に撃たれてしまっ た。復讐のために特殊傭兵部隊に志願したというわけであった。やがて傭兵の契約期 間が過ぎ、婚約者も実は生きていたということで、日本へ舞い戻り、元の警察官に納 まったのであるが、腕を買われて時々こうして犯人狙撃に駆り出されるようになった のである。  もっとも今回は警察からの要請ではなく、かつて所属したセキュリティーシステム ズからの依頼だった。 「で、遺体の方はどうなさるのですか? 臓器密売業者にでも引き渡しますか?」 「まあ、警察との繋がりもありますし、お嬢さまの命を狙う組織に警告を与えるため にも、交通事故での死亡という発表を行うのが一番でしょう」 「偽装工作ですか?」 「その道の専門家もいますからね」 「ほんとに世の中ぶっそうになってきましたね。下々の世界では覚醒剤やMDMAが 蔓延し、上流階級では派閥争いで命を凌ぎあう」

ポチッとよろしく!

11

体重のことは内緒にしよう!

インターポット

ギタンバッタン♪

お姉ちゃん、見てみて。あたしこんなに軽いよ(*^^)v

それ、わたしへの当てつけ?

へへん。あたし38kgだもんね。

あんた痩せすぎよ。

どうして?

あんたの年頃の平均体重は43kgだよ。

へえ、そうなんだ。

どうでもいいけど、早く交代してくれない?

やだ!

あのねえ……。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月17日 (木)

銀河戦記/鳴動編 第十五章 収容所星攻略 IX

第十五章 収容所星攻略

                 IX  敵艦隊を撃破して、タシミール星の捜索がはじめられることになった。もちろん哨 戒艇による索敵は続行されている。先の艦隊が舞い戻ったり、新たなる迎撃部隊が出 現しないとも限らないからである。 「揚陸空母部隊を衛星軌道に展開させて下さい。探査機による探査を開始」  敵艦隊はいなくなったものの、地上がどうなっているかは不明である。確認をしな いまま上陸するわけにはいかない。  報告はすぐに返ってきた。 「地上に敵艦隊の姿はありません」  パティーがカインズに尋ねる。。 「どういうことでしょうか……」 「カラカスが奪取されたので撤退したのだろう。たいした資源もないから死守する必 要もないからな」  差し障りのない答えをするカインズ。とっくの昔に撤退していたことを知らされて いたことは内密だ。 「やはり敵は撤退したようですね」  パトリシアが確認するように呟いた。 「揚陸艦を降ろして地上を探索してください。装備として生体感応装置を持っていっ てください」 「了解。生体感応装置を装備します」 「降下部隊用意せよ」 「管制塔などのシステム機器には触れないようにしてください。ブービー・トラップ がしかけてあるかも知れませんから」 「了解」  ブービートラップはランドールのお家芸だ。真似して管制システムなどに手が入れ られている可能性が高い。 「とにかく敵兵に注意しつつ捕虜を探し出してください」  揚陸艦が降下していく。  やがて降下部隊から、報告が返ってくる。 「惑星地上施設に人影なし。敵兵も味方捕虜も一人として見当たりません。生体感応 装置を作動させておりますが、一切の反応がありません」 「地下施設がないかも確認してください。念入りにかつ用心して捜索するように」 「了解!」  しかし、やはり地上には一切の人影を見出すことはできなかった。  その報告を聞いてため息をつくパトリシア。 「しかたありませんね。敵はここを完全に放棄して撤退したと判断するべきでしょ う」 「いかがいたしますか? この星を占領下におくことも可能です」  リーナが発言した。 「その必要はありません。我々の任務は捕虜を救出することでした。捕虜がいない以 上、速やかに撤収するだけです。全艦に撤収準備を」 「了解しました。撤収準備にかかります」 「準備が整い次第、哨戒艇を呼び戻して帰還の途につきましょう」  星を占領下におくためには、通信基地などの諸設備を設置しなければならず、何よ りも制宙権確保のための部隊も必要となってくる。アレックスの部隊にはそれだけの 戦力を割くだけの余力はない。  カインズに向き直って進言するパトリシア。 「作戦任務を完了。これより帰還します」 「うむ……いいだろう」 「了解。撤収準備を発令します」  やがて揚陸部隊が引き揚げてきて、帰途につく第十一攻撃空母部隊。  パネルスクリーンに遠ざかるタシミールが映しだされていた。  パティーがカインズに囁く。 「結局、今回の作戦の意味は何だったのでしょうね。当初目的の捕虜救出は徒労に終 わってしまったという感じですけど。それに、まるで申し合わせたように敵艦隊が現 れて、キャブリック星雲の再来じゃないですか。これってまたニールセンの差し金じ ゃないでしょうねえ」  勘の鋭いパティーだけあって、すでに気づいているようだ。 「そうかも知れないな」  例えそれが事実だとしても肯定はできなかった。ニールセン率いる軍部への不審感 を助長させることは禁物である。軍部の不審は士気の低下につながり、ひいては反乱 を起こす引き金とも成りかねない。バーナード星系連邦との戦争中においての内憂外 患は、それはランドール司令がもっとも危惧する事態である。たとえそれが策略だと 判っていても、勝つ算段がある限り命令に従うを是としていたのである。 「提督が内密にしたのはこれだったのだな」  そう思った。 「今回の佐官昇進試験は合格でしょうか? 当初の目的である捕虜救出は果たせませ んでしたけど、敵艦隊を撃退に追いやりました。それで十分だと思いますけどね」 「まあ、これだけは提督とて意にならないからな。査問委員会がどう決定するかだ」 「でも相手はニールセンですからね。どうなることやら」 第十五章 了

ポチッとよろしく!

11

2018年5月16日 (水)

続 梓の非日常/第三章 スパイ潜入 スパイ

続 梓の非日常/第三章・スパイ潜入

(五)スパイ  その夜。  就寝前のひととき、ベッドの中で起きて本を読んでいるネグリジェ姿の梓。  ぱたりと本を膝のあたりに置いて、 「それにしても……」  神条寺葵との会話を思い起こしていた。 「ライバルか……。それにあたしの命を狙っているのが、その母親ということらしい し。これって密告……だよね」  母親が密かに命を狙っていることを知らせてくれたのだ。  どういう心境からかは計り知れないが、これまで何度となく命を狙われたその首謀 者が判ったとはいえ、それが葵の母親だったとは……。  確かに神条寺家の財力を持ってすれば、一国の軍隊を買収して海賊行為を行わせる ことは簡単であろう。  麗華を呼ぼうと、つと電話を取り上げるが、しばし考えて何もせずに元に戻した。 「いや、今夜はやめておきましょう。昼間の仕事で疲れて寝ている麗華さんを起こし てまですることじゃない」  明日にしよう。  少なくとも今夜は命を狙われることはない。  セキュリティーシステムにがっちり守られたこの屋敷内にいる限りは……。  数日後のことである。  若葉台衛星事業部の地下施設。  二十四時間体制で稼動している、衛星追跡コントロールセンターである。  正面スクリーンにはAFCが運営し、協力関係にある組織の衛星の軌道がトレース されていた。スクリーンが良く見えるように階段状になったフロアーには所狭しと操 作端末が並び、それぞれにオペレーターが張り付いて、衛星のコントロールにあたっ ていた。  その部屋の最上段後方に全オペレーターを統括する主任監視官がいた。 「突然な話であるが、梓お嬢さまが急用でブロンクスにお戻りになられることになっ た。成田に自家用専用機がまもなく到着し、それに乗って真条寺空港へ向かわれる。 各監視員は自家用機のコーストレース追跡準備にかかれ!」  かつて梓とその一行がハワイへ向かった時もそうであったように、今また万が一に 備えての自家用機の追跡が開始されるというわけである。  広大な面積を有するコントロールセンターの正面スクリーンに成田近隣の俯瞰図が 大写しにされた。また別のスクリーンには成田へ向かう自家用専用機をトレースして いる状況がリアルタイムで表示されている。さらには梓を乗せているであろうファン トムVIを捕らえた「AZUSA 6号F機」からの実写映像を投影したスクリーンもあっ た。 「出発予定時間は午後五時二十分である」 「お嬢さまの成田到着予定時間はおよそ十二分後です」  てきぱきと端末を操作するオペレーター達だった。  その時、一人のオペレーターが席を立った。 「主任、ちょっとトイレへいいですか?」 「いいだろう。十分以内に戻ってこいよ」 「判りました」  コントロールセンターを出て行くオペレーター。  その後ろ姿をちらと見て再び正面を向いて指令を出す主任であった。 「予備機の4号B機を稼動させる。準備にかかれ!」 「了解!」  4号B機担当のオペレーターが動き出した。  各衛星には一基ごとに三人のオペレーターが付いていた。姿勢制御などの衛星本体 の運用担当、搭載された各種機材を操作する担当、機材に電力を供給するシステムを 監視する担当の三人である。特に電力供給を監視する担当は責任が重かった。電圧電 流の異常をいちはやく察知して対処しなければ、高価な機材を破壊してしまう可能性 があるからである。 「4号B機に電力供給開始しました。電圧・電流すべて正常値です」 「よろしい!」  その頃、トイレに立ったオペレーター。  その女子トイレにて用を足した後で、挙動不審な態度を示していた。  手洗い場の下を探っていたかと思うと、その一部が開いて洗い場の下に設けられた 空間が現れ、そこから何かしらの端末を取り出した。そしてイヤホンを耳に、壁の電 灯線のコンセントに端末から延びるコードを差し込んだ。 「こちらK2。聞こえますか? こちらK2応答どうぞ」  端末に向かって喋るオペレーター。  どうやら電力線を利用した通信機のようだった。  HD-PLC(Power Line Communication)方式、電力線ネットワークアダプターと呼ばれ るものに端末を接続して通信ができる。例えば一階と二階のそれぞれの電気コンセン トにこれを差し込んでLANネットを形成できる。また電信柱にある変圧器を共有し ている家屋同士なら、隣家とも通信ができるものだ。  Wi-Fi無線LANが発達した現代では、HD-PLCの需要は減っている。  研究室の壁は、内外からの電磁波を遮蔽する素材で出来ていた。もちろん外部から は地磁気や雷放電などの電磁波から計器の狂いを生ずるのを防ぐのと、内部からは電 磁波に乗って機密が漏洩するのを防ぐためである。  しかし、いかに電磁波をシールドしていても、計器を動かすには電力が必要である。 その電力線に乗せて、その電力線が通じている別の部屋へ情報を伝達することが可能 というわけである。 「突然ですが、真条寺梓が成田からブロンクスへ自家用飛行機で飛び立つことが判明 しました。出発は午後五時二十分です」  外部との連絡を終えて、端末を元通りにしまって、トイレを出て持ち場に戻り、何 事もなかったように振舞うオペレーター。  だが席に着くと同時に周りを警備員に取り囲まれたのである。

ポチッとよろしく!

11

お姉ちゃん、ずるいよ~

インターポット

ギタンバッタン♪

シーソー遊びです。

あ~お姉ちゃん、ずるいよ~次あたしだからね。

わかってるわよ。

ギタンバッタン♪

この場面の瞬間切り取りだと、
わたしが重すぎて動かないように見えるんだけど(-"-)

( ,,`・ω・´)ンンン?お姉ちゃん、何キロなの?

女の子に聞くものじゃないわよ。

わかった、内緒にしておくね。45kg……。

あのねえ……( `ー´)ノ

ポチッとよろしく!

11

2018年5月15日 (火)

銀河戦記/鳴動編 第十五章 収容所星攻略 VIII

第十五章 収容所星攻略

                VIII 「帰還した機体数は?」 「各空母からの報告をまとめている最中ですが、推定3200機かと思われます。相当や られましたね」 「800機もやられたのか? これじゃあ、勝っても素直に喜べないな」 「ええ……そうですね」  例え今日の戦には生き残っても、明日は我が身。はっきり言って戦闘機乗りは消耗 品である。自ら志願して戦闘機乗りになった者達の宿命とはいえ、自分の能力と悪運 が頼りの厳しい世界である。 「ジミーの方はどうなんだ」 「あちらは、邪魔な艦載機はいないし木偶の坊の戦艦相手ですからね。上手く立ち回 ってかなりの戦艦を沈めたみたいです。とはいっても装甲の厚い戦艦を撃沈するのは 簡単じゃないですけど」 「ちっ。損な役回りを当ててしまったな」  舌打ちし、悔しそうな表情をしていた。  その理由は、艦載機一機撃ち落すのと、戦艦一隻撃沈するのとでは、功績点に大き な違いがあるからだ。 「でも、味方の被害を出さないためにも、敵艦載機を撃滅するのも重要ですから」 「判ってるさ」 「それに実質的な功績点以外に、指揮官が与える実戦評価点があるじゃないですか。 昇進には両方の点を加算するんですよね」 「あのなあ……何も判っちゃいないな。確かに昇進に際しては、功績点と評価点を加 算して考慮されるさ。しかし昇進速度や恩給の算出には功績点の方が分がいいんだ よ」 「そうなんですか?」 「功績点は、戦術コンピューターが、敵艦載機や戦艦を撃ち落すたびに自動的に累積 計算して、軍の中枢コンピューターにリアルタイムで入力されるんだ。功績点が規定 点に達したと同時に昇進候補対象となる。これが曲者でね。カインズ中佐が大佐にな り損ねてしまったのも、オニール中佐が一足先に規定点に達して昇進候補に入ったた めで、後は大佐枠がなくなって頭ハネを食らったのさ」 「へえ……知りませんでした」 「例え撃墜され戦死してもデータは残るから、遺族恩給なども最期の功績点を元に計 算されるというわけさ」 「少佐がやっきになっておられる気持ちが判りましたよ」 「そうか……なら、急いで補給の指示を出してくれ」 「了解」  と返答したもののすぐに言い返してきた。 「ああ……でも今回の指揮はパトリシアですよね」 「そうだよ。アレックスなら作戦の後で文句の一つも言ってやりたいところだが、パ トリシアじゃあそれもできん! 可愛い後輩だからな」 「ですよね。彼女も一所懸命に頑張っているんですから」 「とにかく急いでくれよ」 「へいへい」  第十一攻撃空母部隊は、巡航艦や駆逐艦に高速軽空母という艦艇で組織されていた。 足の遅い戦艦ではとても追いつけなかった。艦載機を全機発進させてより軽くなった 空母は、高速移動で敵艦隊の後背に回って、艦載機と一戦して弾薬の乏しくなったハ リソン編隊を回収して燃料と弾薬の補給、完了と同時にすぐさま再出撃させて、部隊 をさらに敵艦隊を取り巻くようにして高速移動させながら、常に敵艦隊の射程に入ら ないように行動していた。  艦載機は全弾を撃ちつくしては、空母に戻って補給、すぐさま再出撃というパター ンを繰り返していた。攻撃、回収・補給、再出撃という艦載機による執拗なサイクル 攻撃は、確実に敵勢力を削り取っていった。艦載機の援護のない艦隊ほど悲惨な状態 はなかった。いかに強大な火力を有していても、小さな目標である艦載機を撃ち落す ことは甚だ困難である。  やがて敵艦隊は勝ち目がないと判断したのか撤退をはじめた。 「敵艦隊が撤退をはじめました!」  オペレーター達の表情から緊張感が解きほぐされていく。 「追撃しますか?」  リーナが問いただす。 「いいえ。我々の任務は捕虜の救出です。敵艦隊は放っておきましょう」 「判りました。早速惑星上陸にかかりましょう」  パトリシア達の奮戦振りをカインズのそばで観察していたパティーが、囁くように 言った。 「やりましたね。これで大尉も少佐に昇進ですよ」 「まだ任務は終わっていないよ。収容所の捕虜を救出する任が残っている。もっとも 捕虜が残されていそうにないがね」 「そんな感じですね」

ポチッとよろしく!

11

2018年5月14日 (月)

続 梓の非日常/第三章 スパイ潜入 梓VS葵

続 梓の非日常/第三章・スパイ潜入

(四)梓VS葵 「絵利香さま。梓お嬢さまは? 葵さまのお車にお乗りになられたようですが」 「葵さんがお話しがあるって、連れていっちゃったわ。一人で帰ってねって」 「そうですか……お出かけは中止ということでよろしいですね」 「はい」 「それでは、絵利香さまのお屋敷にお送りしましょう」  後部座席のドアを開けて、絵利香に乗車をうながす白井。 「ちょっと待てよ」  突然慎二が後部座席から顔を出した。 「び、びっくりしたじゃない。なにしてるの」 「いやね。梓ちゃんを驚かそうと隠れていたのだ」 「ふふ。相変わらずね。慎二君」  ゆっくりと後部座席に腰を降ろす絵利香。白井は後部座席のドアを閉めて、運転席 に戻ると車を走らせた。 「追わなくていいのか」 「なんでよ」 「どっかに連れ込まれてなにかされたらどうするんだよ」 「馬鹿ねえ。そんなことあるわけないじゃない」 「だってよお。やくざな男達が大勢いたじゃないか」 「あれは、葵さんのボディーガードよ。闇に紛れて連れ去ったならともかく、大勢の 目撃者のいる前で誘っていったんだから。何もできないわよ」 「し、しかし」 「白井さん。先に慎二君の家に寄ってあげて」 「かしこまりました」 「あ、梓ちゃーん!」  ファントムVIのリアウィンドウにへばりつくように、梓達の走り去った後方を見 つめる慎二だった。  リンカーンの後部座席に乗車する葵と梓。 「ところで梓さん」  つと切り出す葵の言葉に、緊張の面持ちで訪ねる梓。 「な、なにかしら」 「あなた。分家の家督を継いだそうね。ひとまずおめでとうと言わせて頂くわ」 「あ、ありがとう。葵さん」 「でもね、言っとくけど。わたしだって、いずれは本家の家督を継ぐの。総資産二京 円の本家グループの代表にもなるわ。六千五百兆円のあなたんとこと格が違うんだか ら」 「そうなんだ」 「しかし、わたしは今の神条寺家の家督を継いだだけじゃ満足しないわ。あなたのと この真条寺家をも、いずれは神条寺家に併合してみせる。そもそも財産横取りした分 家なんか認めていませんからね。そして名実共に両家をまとめる真の神条寺財閥の当 主になるつもりよ。そうなれば、あなただって自分の資産を自由に扱うことすらでき なくなるの」 「だから、その財産横取りの話は……」  と言いかけたが、葵は聞こえないふりしているのか、 「いいこと、梓。中国が一つであるように、神条寺家も唯一無二の存在なのよ。あな たは全財産を我が神条寺家に返すべきだわ。その時には、それなりの地位くらいは与 えてあげてもよくてよ。そうね……。わたしのスリッパの温め役くらいにはしてあげ るわ」  と余裕綽綽とした口調で言い放った。 (あたしは、サルか?)  一方的な命令調の葵の言葉に、 (いい加減にしてよね)  と思いつつもおとなしく聞いている梓だった。  この娘には、いや正確に言うと母娘なのであるが……。 (何言っても無駄だものね)  とにもかくにも、何代にも渡って言い伝えられてきたらしい因縁的な誤解なのだ。 そう簡単には覆すことは不可能であろう。  怒らせては何をされるか判らないだろうし……。  何せ梓の乗るリンカーンの前後には、黒塗りベンツがぴったり付いており、強面の 黒服黒眼鏡のいかつい男達が乗り合わせているのだから。 「ところで宇宙開発に乗り出したそうね」 「ええ、まあ……」 「それは結構だけど、空にばかりに目を取られて、足元を掬われないようにね。十分 気をつけて、命を失わないようにすることよ。わたしは正々堂々とあなたと剣を交え たい。しかし横槍を突く卑怯者もいるということよ」 「どういうこと?」 「さあね。今日までのことを考え直してみれば判ることよ」  葵の意図することにすぐには理解できない梓だった。  命を失う?  横槍を突く卑怯者……。  おぼろげなりにもその意味が判ってくる梓。 「まさか、あなたが……?」 「誤解しないでよ。それをやっているのは、わたしのお母様よ。その毒牙にあなたを 巻き込みたくないから忠告するのよ。さっきも言ったように正々堂々と生きたいか ら」 「そ、そう……。ありがとう、というべきかしら」 「その必要はないわよ。あなたには生きていて欲しいからね。ライバルとして」 「ライバル……」 「そう、ライバルよ」

ポチッとよろしく!

11

2018年5月13日 (日)

銀河戦記/鳴動編 第十五章 収容所星攻略 VII

第十五章 収容所星攻略

                VII  紆余曲折はあるものの、艦載機同士の空中戦は、経験豊富なハリソン編隊側に有利 だった。勝敗は短時間で決した。もはや敵艦隊に航空兵力はなくなり、悠々と艦載機 による敵戦艦への攻撃を敢行することができるというわけだ。 「カーグ編隊に、敵戦艦に集中攻撃を指示。ハリソン編隊を帰還させて弾薬を補給す る」  艦載機を失って存在価値のなくなった攻撃空母を攻略するのは無意味。強力な火力 を有した戦艦から叩くのはセオリーである。  もちろん敵戦艦とて黙って見ているはずがなかった。 「敵戦艦がこちらに向かってきます」 「艦隊戦に持ち込むつもりね。圧倒的な火力差がある分、こちらの不利となります」 「でもこちらの方が足が速いですよ」 「そうね。艦隊を二編成に分けます。セラフィムのオスカー大尉に連絡して」  通信が交わされて、スクリーンに副指揮官のジャネット・オスカー大尉が出た。 「オスカーです」 「AからF中隊を指揮して、取り舵全速前進しつつ、巡航艦及び駆逐艦で側面攻撃、 敵艦隊をかわしてその後方に回ってください」 「了解しました。取り舵全速前進で左側面から攻撃、敵艦隊の後背に回ります」  通信が終わりオスカー大尉率いる編成部隊が取り舵で離れていく。 「こちらは残る部隊を率いて右側面から攻撃を行います。全艦面舵、全速前進」  両編隊が敵艦隊を取り囲むようにして、両側面からの攻撃を開始するために移動を はじめた。速力差があるゆえの包囲網である。 「本隊の全艦に伝達。艤装兵力を敵艦左舷に集中」  舷側に艤装された兵器は、艦首粒子ビームに比べれば威力は一桁も落ちる。敵艦を 撃沈するには心もとなく、ビームシールドを貫けない場合が多い。が、敵艦に捕捉さ れることなく高速移動しながら攻撃するにはこれしか方法がない。それでも砲数が多 いのを頼りに数撃ちゃ当たるだし、長距離誘導ミサイルを迎撃するくらいはできる。  本来大昔の地球古代史大航海時代の戦艦決戦では、艦砲射撃をより有効利用するた めに敵艦隊に対して、舷側を互いに向かい合わせて撃ち合ったものだった。  しかし最新の主力兵器は粒子ビーム砲であり、粒子加速器を直列に並べて威力を増 大させるために、より長大な空間が必要となって艦首にしか搭載できない。当然とし て戦い方も舷側併進から、正面に向き合ってのビーム攻撃戦になっている。  セイレーンの艦載機発着ドッグ。  ハリソンの機体がすべるように着艦してくる。 「弾薬を積み込んだらすぐに出るぞ。急いでやってくれ」  甲板作業員に指示を出しつつ、パイロットの控え室に入るハリソン。自動販売機に IDカードを挿し入れて、飲み物を購入している。 「少佐殿、そんなに急ぐ必要はないのではないですか? 戦況は圧倒的に有利です」  パイロット控え室に詰めている管制スタッフの一人が話しかけてきた。 「馬鹿野郎! 油断大敵火の用心というじゃないか」 「なんですか……それ?」 「何にせよ。ジミーには負けたくないからな」 「結局はそれなんですね」 「当たり前だ!」  ガラス張りの部屋の向こう側では、着艦した機体への再装填が大急ぎで行われてい た。

ポチッとよろしく!

11

クレープ大好き

インターポット

ふうっ、疲れた。

スケートの滑りすぎじゃない?

そうだね。おなか減ったよ、お母さん。

夕食にはまだ早いから、クレープでどう?

それでいいよ。

ああ!ずるいお兄ちゃん!ぼくもクレープ欲しい。

だったら船から降りてらっしゃい。

今行く!クレープ大好きなんだからあ~。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月12日 (土)

続 梓の非日常/第三章 スパイ潜入 ライバルとして

続 梓の非日常/第三章・スパイ潜入

(三)ライバルとして  数日後。梓の通う城東初雁高校の正門前に、黒塗りのベンツに前後を挟まれるよう に、リンカーン・コンチネンタルが横付けされていた。そのでかい図体のせいで、道 は塞がれて車のすれ違いすら不可能だった。ベンツの傍らにはいかにもというような 風体の黒服の男達がにらみをきかしている。その異様な雰囲気に通りがかった車は、 あわてるようにUターンしたり、バックで引き返し脇道へ逃げたりしていた。無理し てでもすり抜けようとしたり、苦情を言って車をどかしてもらおうとする勇気のある ものは一人もいなかった。 「なにあれ、やくざ屋さん?」  リンカーンの脇をすり抜けるように生徒達が、何事かといった表情で三々五々通り 過ぎていく。ちらりとリンカーンの中を覗こうとする者もいたが、車のウィンドウは 遮光スクリーンで遮られていた。 「まったく。真条寺財閥の娘が、こんな下々の学校に通学しているとは。何を考えて いるのかしら。門は小さくて車で入れないし、車寄せすらないとは、よほどの貧乏学 校なのね」  とぶつくさと呟く声を耳にして、黒服は声を出さずに反問していた。 (……これが一般的な学校の姿だろうが。だいたい裏門からなら入れるってのに、神 条寺家の者が、裏口入学するような真似などできません、などとぬかしやがって… …)  財閥令嬢なのを鼻に掛けて、高飛車な態度をとる葵。ボディーガードとして雇われ て長いが、毎度毎度腹が煮え返るような思いには閉口させられていた。しかし、転職 するには昨今の情勢ではままならず、妻子持ちの彼らにはじっと堪えて耐え忍ぶしか ない。 「ところで、後ろの車、梓のよね」 「二百メートル後方、黒塗りのロールス・ロイス・ファントムVIですね。確かに梓 さまのお車のようです。少し広めの道路の交通の邪魔にならない場所で、待機してい るというところですか」 「それじゃ、何。このわたしが交通妨害しているといいたいの?」 「い、いえ」 (……しているだろが……) 「ふん。下々の者は、よけて通るのがあたりまえでしょ」  双眼鏡を覗いていた男が口を開いた。 「あ、誰かがロールス・ロイスに近づきました。何かがらの悪い奴ですね。親しげに お抱え運転手と話しています。やあ、おっさん。梓ちゃんのお迎えかい。さ、沢渡君 もお帰りですか」 「おまえ、一人で何を言ってるの」 「じ、実は読唇術の心得がありまして、同時通訳しています。つ、続けますか」 「勝手になさい」 「では、続けます。なあ、おっさんが出迎えにきているということは、どこかに出か けるつもりか。そ、それは……あ、ちょっと車に乗らないでください。いいからいい から。やめてください、お嬢さまにしかられてしまいます。なあに俺と梓ちゃんの仲 じゃないか。どういう仲なんでしょうねえ。ああ、沢渡君、やめて。って、とうとう 乗り込んでしまいました。後は見えなくなりました」 「おまえは馬鹿か」  呆れ顔の葵。  一方、放課後となり校舎玄関から校庭に出てきた梓たちがいた。 「梓ちゃん。見て、あれ。葵さんじゃないかしら」  と絵利香が指差す先に、リンカーンを見届けた梓。 「そうみたいね。窮屈な学校から解放されて、自由な時間を迎えようとしている時に、 一番会いたくない人物の出迎えを受けるなんて、今日は仏滅?」 「梓ちゃんを、待ってるみたいね」 「あたしは、会いたくない。裏門からばっくれようか」 「それ、女の子の言葉じゃないわよ、やめなさい。とにかく、ああやって狭い道をい つまでも塞がせておくわけにはいかないでしょ」 「しかたないか」  二人がリンカーンに近づくと、梓の顔を知っているお抱え運転手がドアを開けて、 乗車をうながした。 「梓さま、どうぞお乗りくださいませ。葵お嬢さまがお話しがあるそうです」  言われるままに乗車する梓。 「絵利香さま。申し訳ございませんが、お嬢さまは梓さまとお二人だけでお会いなさ れるとのことで、本日はお引き取り願いますか。よろしければ後ろのベンツでお送り いたします」 「いえ、結構です。一人で帰れますから」  ドアのウィンドウが開いて、梓が顔を出して言った。 「ごめんね、絵利香ちゃん。今日は、あたしの車で一人で帰って」 「う、うん」 「出して頂戴」 「かしこまりました」  絵利香を残して三台の車は走り去っていく。それを見届けたかのように、ロール ス・ロイス・ファントムVIが近づいて来る。運転手の白井が降りて来る。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月11日 (金)

銀河戦記/鳴動編 第十五章 収容所星攻略 VI

第十五章 収容所星攻略

                 VI  そんな通信の模様は、セイレーン艦橋にも届いていた。 「リンダ! あなた何考えてるのよ」  目の前にいる艦長のリンダを叱責するリーナ。 「え? だってハリソンが……」 「だって、じゃないでしょ。今は戦闘中なのですよ」 「でもお……」 「まったく、しょうがないわね」  リーナが呆れ顔で呟く。 「ハリソンを出して」 「こちらシルバー・フォックス。ハリソン、どうぞ」 「こちらハリソン。シルバー・フォックス、どうぞ」 「ハリソン、賭けに参加した者全員、減俸三ヶ月よ。いいわね」  いきなり処分を言い渡すリーナ。 「それは、勘弁してくれ」 「だったら目の前のものを早く片付けて頂戴」 「片付けたら帳消しにするか?」 「考えておくわ」 「おうよ。考えておいてくれや」 「だったら、手際よくやりなさいよ」 「見ていろよ」  ハリソンがそう言うと、ぷつんと会話が途切れた。戦闘に専念しはじめたのだろう。  はあ……。  というため息をもらすリーナだった。 「いつもこうなのですか?」  パトリシアが尋ねた。 「似たり寄ったりですね」 「サラマンダーの艦橋にいては、各部隊ごとのこまごまとしたことは入ってきません。 艦載機同士の通信までは聞いてられませんから」 「それは当然です。司令官は全体の動きだけ指示していればいいんです。後は各部隊 指揮官が最善の処置を施します」 「何はとはあれ、戦闘中に賭け事は問題です。厳罰処遇にしなければ……」  とここまで言ってから、 「と、言いたいところですが……。提督ご自身も、賭け事には一癖も二癖もあるお方 でしたから」  そうなのだ。  士官学校の学園祭で、バニーガールを交えたカジノパーティーを主催したり、禁断 の密造酒を製造したりもした、破天荒かつ型破りな御仁だった。  ゆえにパトリシアにしても、こういったことには慣れていたと言ったほうがいいだ ろう。 「五十機目!」  ジャックの喚声が通信機に届いた。 「ハリソン達は優勢に戦いを進めているようです」 「敵味方の撃墜差は、現時点でおよそ四対一といったところ」 「残存機数で次第に差が開いてきますから、いずれ撃墜差にはさらに開きが出てきま す」

ポチッとよろしく!

11

申年と酉年

インターポット

これから縄梯子を使って木登りしまーす。

お姉ちゃん、木登り好きだね。

申年生まれだからね。

へえ、そうなんだ。

あんたは酉年だからね。

ああ、それで空飛んでるんだね。

さて、二人は何歳でしょうか?てか……

ポチッとよろしく!

11

2018年5月10日 (木)

続 梓の非日常/第三章 スパイ潜入 旧体制VS新体制

続 梓の非日常/第三章・スパイ潜入

(三)旧体制VS新体制 「それで、他になにか情報はあるの?」 「もうこれは既知の情報では有りますが、梓さまが立ち上げられた宇宙開発事業が正 式に動き始めました。米国フロリダ州ケープカナベラル基地に隣接する広大な土地に、 真条寺家の手による宇宙空港の建設が始まりました」 「その話は聞いているわ。宇宙ステーションの建設資材を、宇宙へ打ち上げるための 専用宇宙空港よね。スペースシャトルの連続打ち上げと常時回収の両方が同時にでき るマルチセッション多様型宇宙空港だと聞いたわ」 「宇宙ステーションの開発設計は、篠崎重工側に新たに設立された宇宙開発推進事業 部が担当しています。なお当事業部は、篠崎重工アメリカが発足次第、そちらへ移管 されることが決まっております」 「篠崎重工か……こいつも目の上のタンコブだわよね。本家と分家が利権争いをして いる間隙をついて、漁夫の利を得て発展してきたくせに、いけしゃあしゃあと真条寺 家と結託しくさりおってからに」 (というよりも、どちら側についたら自分に有利かを判断したのかと思う)  黒服は口には出さなかったが、現状においては明らかに真条寺家に軍配が上がるの は目に見えていた。  資源探査では一歩も二歩も先んじられて将来の資源開発を掌握され、今また宇宙開 発においても制宙権を確保されようとしている。こもまま行けばジリ貧となって消え 行く運命にあると言えた。  古今東西、マケドニアのアレクサンダー大王、ローマのカエサル、フランスのナポ レオン、トルコのチンギス&フビライ・ハーン、世界征服を目指したいずれの超大国 とてやがて歴史の彼方に消え去っていった。日の沈まぬ国として世界の海を制覇した かつてのスペイン帝国も大英帝国も今ではすっかり影を潜めている。  投げ上げられた石はやがて地面に落ちる。地球という重力に縛られたような、古い 慣習に固執する葵の母親のような権力者では、この石のように、重力に引きずられて 発展から停滞に減速され、さらには急降下で落ちていくだろう。ただ財産を蓄えるこ としか頭になく、抵抗勢力を抹殺しようという考えでは進歩がない。それは安寧から 停滞へ、そして衰退へと坂道を転がるように堕ちていくだけである。  梓のように、全財産の三分の一の資産をも投じて未知の世界へ飛び出すような、急 進的な思考を持ってこそ発展の道も開かれるのである。 「まあ、こっちの方は梓を陥落させてからでも十分だわ。真条寺家がなくなれば主要 取引先を失って倒産に追い込まれるはずよ」 「そう上手くいきますかね」 「やらなきゃならないでしょ。もちろん姑息な手段を使わず正々堂々と勝負よ。とこ ろで、梓の持つ財産て現時点でどれくらいあるの?」 「総資産はおよそ六千五百兆円となっております。ちなみに先程の原子力潜水調査船 一隻だけで六千億円になります。宇宙開発にその三分の一を投入する予定のようです が、十年・二十年先には月資源や火星などの資源を独占したり、無重力における特殊 な環境が及ぼす新素材開発とかが軌道に乗れば、投資を上回る資産形成をなすことが 期待できると考えられております」 「でしょうね。そういった未来志向ができる梓やその母親がいるからこそ、今日の真 条寺財閥が存続しているのよ。それに引き換え、わたしの母親や神条寺財閥は旧態依 然の「鉄」にこだわりつづけて、梓達の「新素材」への転換に踏み切れないでいる。 確かに「鉄」は溶鉱炉を建設し稼動させれば資産を生み出してくれはする。しかし将 来に渡っての保証はない。実際にも、資源探査においてはARECに今後の資源を押 さえられては身動きが取れなくなる。それに引き換えて、「新素材」は莫大な研究費 用を投入しても、最終的な研究成果が資産を生み出してくれるとは限らない。結果、 資産を食い潰してしまわないとも限らない。総資産二京円におよぶ神条寺家と、同じ く六千五百兆円の真条寺家の違いがそこにある。研究開発に莫大な資産を投入してき たから、総資産では真条寺家は神条寺家の三分の一にまでに差が開いた。しかし将来 に話を移せば、決して楽観はできないのよ」  とここまでいっきに喋りとおし、 「どうしてそのことを、お母様は理解してくれないのよ!」  突然大声でいきりたつ葵だった。  黒服は思った。  確かに、この神条寺葵の考えるとおりである。  旧態依然の体制に固執し、敵対する者を闇に葬ろうとする当主の神条寺靜。  一方の真条寺家は将来を見据えて行動し、世代交代も素早いから常に新鮮な雰囲気 に満ち満ちている。そして現当主の梓は資産の三分の一を投げ打って新事業に乗り出 し、かつまた配下の参画企業の社員全員が誠心誠意バックアップする好環境が作り上 げられていた。 「このままでは、神条寺家は滅びるわ。そうならないように当主の交代を願い出たけ ど聞き入れてはくれない。おそらく死ぬまでは当主の座に収まろうとするでしょうね。 でもわたしは手をこまねいているつもりはないわよ」  母親に対して謀反を起こすつもりか……。  まあ、それはそれでいいかも知れない。  どっちにしろ葵が言うように、地を這い蹲るしか能のない靜が当主のままでは神条 寺家の未来はないのは確かである。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月 9日 (水)

銀河戦記/鳴動編 第十五章 収容所星攻略 V

第十五章 収容所星攻略

                 V 「敵空母より艦載機の発進を確認しました」  さすがに敵艦隊も、艦載機群の到来に気づいて迎撃機を発進させたようだ。タシ ミールにのこのこやってきたパトリシア達を奇襲するつもりだった予定が、逆に奇襲 を受けて慌てふためいている様子が想像できた。 「ハリソン・クライサーの編隊に迎撃を指示、ジミー・カーグ編隊及びジュリー・ア ンダーソンの編隊には敵艦隊への攻撃を敢行させよ」 「クライサー編隊、敵艦載機と接触、交戦に入りました。カーグ編隊はこれをかわし て敵艦隊に進撃中です」  前方で敵編隊4000機とハリソン編隊4000機との空中戦が始まった。  艦載機の数では互角、後は機体の性能とパイロットの腕前が、勝敗を分ける。 「編隊長の通信を音声に流してください」 「了解。指揮官席のスピーカーに流します」  すぐさま編隊長の通信機に接続されて、その交信内容が聞こえてきた。  「いいか。ここで食い止めて、一機たりとも味方艦に近づけさせるんじゃないぞ」  ハリソンの声だった。配下の編隊に対しての指令や返信が次々と届く。 「了解!」  華々しい空中戦が繰り広げられている。  そんな中にあっても、余裕綽々の二人がいた。 「おい、パーソン」 「なんだ、ジャック」 「どっちが数多く撃ち落すか。賭けをしないか?」 「いいだろう。で、何を賭けるんだ」 「シャトー・マルゴーのワインなんかどうだ?」 「ああ、あれか。一本二万からするんだっけな」 「おうよ。ルイ15世の寵姫マダム・デュ・バリや文豪ヘミングウェイも愛飲したと いう名品だよ」 「いいだろう。それでいこう」  話がまとまる二人。 「おい、ジャック。おまえの後ろに何かくっついているぞ」  あわてて後方確認するジャック。敵機が背後に迫っていた。 「ちぇ、後ろに付かれたか。おまえが話しかけるから気が散ったんだぞ」 「油断したな、ジャック。ワイン一本で手を打つか?」 「何を言うか。これくらい簡単に振り解いてやるさ」  しかし敵も巧者だった。急旋回や急上昇で交わそうとするが、執拗に食い下がって ぴたりと背後に付いて離れなかった。 「ちきしょう! ロックされた。振り解けねえ」 「まかせろ!」  敵機の真下から急上昇しつつ機銃で敵機を撃破するパーソン。敵機は火達磨となっ て爆発炎上した後に粉々に散っていく。 「一点貸しだな」 「ちっ! 余計なおせわだってのによ。倍にして返してやるよ」 「負け惜しみだな」 「言ってろ!」  そんな通信に割って入った者がいた。  ハリソンだった。 「おい! おまえら、何やってるんだ。会話が筒抜けだぞ」 「え? いけねえ、シークレット通話にしてなかったぜ」 「どじな奴だな」 「どっちがだ」 「で、今どっちが勝っているんだ?」 「まだ、はじまったばかりですよ」 「そうか……じゃあ、俺にも一口乗らせろよ」 「はあ?」  同時にきょとんとした声を発する二人。  すると通信回線ががなり立てはじめた。 「二コルです。パーソンに500賭けます」 「デイビッドです。俺は、ジャックに500」 「ジュリーです。500をパーソンに」  あの酒豪も聞いていたらしい。酒の話となると必ず顔を出す。  パーソン小隊、ジャック小隊の賭け好きな連中が次々と、名乗りを挙げている。  そして、 「わたしもいいですか? リンダです。ジャックに500賭けます。ああ、それから この通信は記録してます」  セイレーン艦長のリンダまでが参入してきた。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月 8日 (火)

続 梓の非日常/第三章 スパイ潜入 黒服の報告

続 梓の非日常/第三章・スパイ潜入

(二)黒服の報告 「つまりは将来的なエネルギー源を、梓に押さえられる可能性があるということじゃ ない」 「その可能性は十二分にあるでしょうが、実際の採掘には、鉱床のある排他的経済水 域を包括する国家の主権が絡みますので、なかなか難しいでしょうが」 「ところで米国海軍の保護下にあると言ったけど、まさか実際は海軍所属の潜水艦と いうことじゃないでしょうね?」 「そ、それは……」 「その顔は何か知っているわね?」 「い、いや。これはお嬢さまといえども打ち明けるわけには参りません」 「そう……。なら、いいわ。ただし、明日から別の職を探すことね。わたしに逆らっ た者がどうなったか知らないはずないわよね」  高飛車な態度で言い渡す葵だった。気に入らないことがあれば、実力をもって行使 する。いかにも自分本位で他人の迷惑を一切考えない。  実際には使用人の採用権などを握っているのは母親の靜であるが、葵の機嫌をそこ ねたら最期、村八分にされるか下駄番にされるかして、居ずらくなってしまう。かと いって転職しようとしてもことごとく就職を断られるだろう。神条寺家の影響力は全 国津々浦々の企業に浸透しており、当家を退職した者を雇ったことが知られれば敵対 勢力とみなされて、取引企業からの一切の断絶、企業生命を絶たれてしまう。結局神 条寺家を出た者に待っているのは、世渡りの厳しい現実であり、せいぜいパートかア ルバイトしかないか、神条寺家の範疇にない小さな個人経営の企業に就職するよりな い。妻子ある者なら給与の激減で食べていくことすらできない状態に陥ってしまうで あろう。  ゆえに何があろうと、何を言われようとぐっと堪えて腹の中にしまって、媚びへつ らい頭を下げていいなりになるしかないのである。 「判りました。ですが、絶対他言無用にお願いします」 「早く聞かせなさい!」  びくつきながらも、自分の知り得た真条寺家の内情を話す黒服だった。  原子力潜水艦が、真条寺財閥資産運用会社「AREC」の所有ながらも太平洋艦隊 にも所属していること、戦略核兵器を搭載しているとかの噂も流れていること。 「核兵器?」 「未確認ですが、国家最高機密である原子力潜水艦を民間が建造所有できるはずもな く、当然海軍の協力の下に建造が行われたものと推定されております。また対艦誘導 ミサイルの発射が確認されて艤装が施されているのが事実となっております。当然と して、その艦の大きさから核弾頭すらも搭載されているだろうとの判断です」 「戦争でもするつもりなの? 真条寺家は」 「兵器は使うために存在するものです。その時……その時がくればですが、当然使う でしょう」 「その時は、第三次世界大戦になっているわね」 「その通りです」 「まったく……現在世界に冠たる経済大国の地位と、世界一の軍隊を誇るアメリカ国 家を味方につけている真条寺家。かたや敗戦国で核兵器はおろか空母一隻も持たずに 戦争放棄を唱えている平和統治政府日本国の下の神条寺家。戦争となって敵対すれば、 あっという間に滅ぼされるわね」 「その通りです」 「どうりでお母様が梓を陥れようとやっきになっている理由が判ったわ」 「どういう意味ですか?」 「あなた、本当は知っているのでしょう? 梓がハワイに遊びに行くのを知って、整 備員を買収して航空機に細工をしたのをね。あまつさえ、南米の某国軍隊を買収して 駆逐艦部隊をさしむけたことも。さらには生命研究所の地下施設火災事件、すべてお 母様の仕業。みんなひた隠しにしているけれど、わたしはちゃんと知っているのよ」 「どうしてそれを?」 「窮すれば通ずるよ。ひた隠しにしようとすればするほど、杓子から水がこぼれるよ うに、情報は漏れるものよ」 「はあ……」  ものの例え方がいまいち納得できないがだまって頷くような素振りをする黒服だっ た。 「わたしは影に回って陰謀を巡らすようなお母様には反対です。正々堂々と戦って組 み敷かせなければ意味がないのよ。陰謀によって相手を倒して手に入れたものは、再 び陰謀によって奪われるものよ」  ほう……。  珍しくまともなことを言っているな。  そう思う黒服だった。  思い起こしてみると、幼少の頃から勝気で、言うことを聞かないと癇癪を起こして しまうお嬢さまだったが、曲がったことは大嫌いだった。まっすぐ前を見て物を言い、 間違っていることは間違っているとはっきりと言う。善悪の区別のできる娘だった。 「お母様には、何を言っても無駄だわ。わたしは、わたしのやり方で梓をこの前に跪 かせてあげるわ。あなたもお母様のいいなりになってないで、わたしについてきなさ い」  意外な言葉だった。  母親に敵対するような言葉を吐き、一人でも多くの味方をつけるためのことなのか も知れない。  葵に対しての意識を考え改めさせることばだった。 「判りました。お嬢さまのおっしゃるとおりに」  と頭を下げる黒服だった。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月 7日 (月)

銀河戦記/鳴動編 第十五章 収容所星攻略 IV

第十五章 収容所星攻略

                IV 「敵の奇襲を受けることはないだろうな」  回想を終えて、パトリシアの采配振りに感心しているカインズだった。  三隻のP-300VXを連れて行くことを許可申請した時点で、任務の重大さを認 識していたようだ。  キャブリック星雲会戦では、情報が敵艦隊に漏洩して待ち伏せを受けていた。ラン ドール司令を煙たがるニールセンが意図的に流したのだろう、との噂が艦隊士官達の 間で囁かれていた。今回の任務もニールセンが絡んでいる、当然同様のことが起きる 可能性は高いだろう。  おそらくパトリシアもそう考えていたのであろう。完璧な哨戒布陣を敷いて、万難 を排して事にあたるという慎重な態度は、ランドール司令が艦隊参謀長に推すだけの ことはあると、カインズは実感していた。  ともかくもレイチェルが掴んでいた情報と、パトリシアが推論した結果と、今回の 作戦任務が仕組まれた罠という点では一致しており、どちらが正しくて間違っている とに関わらず、対処すべき行動指針では同じ結果をもたらすことになった。  何も知らないで無防備でいると、連邦軍の奇襲を受けて痛い目に遭わされる可能性 が高いということである。  艦内に警報が鳴り響いた。  オペレーターが一斉に正面スクリーンに視線を向けた。 「敵部隊発見! P-300VX三番艦アポロンより通報。五時の方角12.5光秒に敵 部隊を確認しました!」  そのスクリーンに、哨戒艇から送られてきた敵部隊の艦影が投影された。なおアポ ロンとは哨戒艇三番艦の哨戒作戦用の暗号名である。他の哨戒艇にも同様にギリシャ 神話の神々の名前がつけられている。 「敵部隊の艦艇数、およそ千五百隻!」  すかさず指令を出すパトリシア。 「全艦戦闘配備! 艦載機、全機発進準備!哨戒艇三番艦に敵部隊との接触を維持、 データを逐次報告させよ」  オペレーター達が、すぐさま復唱しながら命令を伝達する。 「アポロンへ伝達、敵艦隊との接触を維持しつつ、データを逐次報告せよ」  索敵レンジの違いとその特殊性能から、哨戒艇が敵部隊に発見、攻撃される懸念は なかった。戦艦百二十隻分もの最新鋭のテクノロジーを満載した艦艇ゆえの配慮だっ た。 「全艦、戦闘配備完了しました」 「よろしい。艦載機、全機発進! 母艦に追従して待機」 「やはりいたか……どうやら奇襲だけは避けられたようだが。さてこれからどう戦う かだな」  パトリシアは実戦の指揮を執ったことがない。  果たして適時適切な指令を下すことができるか。  オペレーター達は、カインズを見つめていた。パトリシアに代わって指揮を執るの ではないかと判断したからだ。  しかしカインズは動かなかった。  パトリシアが降参して指揮権の委譲を願い出るまでは、口を出すつもりはなかった。 ランドール司令が情報漏洩の可能性を示唆しながらも送り出した相手である。敵部隊 との交戦にも十分堪えうる能力を有しているはずだ。 「敵艦隊の戦力分析図を出して」 「戦力分析図を出します」  スクリーンに敵部隊の艦隊構成が表示された。 「戦艦550隻、巡航艦600隻、駆逐艦400隻、フォレスタル級攻撃空母50隻です。搭載 艦載機の推定は、およそ4000」  一般的な一個部隊編成であった。  対してこちらの第十一攻撃空母部隊の勢力は、巡航艦300隻、駆逐艦150隻、セイ レーン級及びセラフィム級軽空母900隻であった。  こちら側は戦艦を所有していない分火力には劣るが、空母搭載の航空機の数では、 敵艦隊の4000機に対して、12000機と圧倒的な航空兵力の差があった。しかも足の速 い艦艇ばかり揃っている。  当然戦いの中心は、艦隊戦を避けて艦載機による空中戦となる。 「艦載機、全機突撃開始」  一斉に敵部隊に向かって突撃開始する12000機にも及ぶ艦載機の群れ飛ぶ姿は壮観 であった。穀倉地帯などで時おり見られるバッタの大群にも似て、その群れ自体が巨 大な怪物のようにも思えるほどであった。 「敵戦艦の諸元表を出してください」  スクリーン敵戦艦のデータがスクロールしながら流れる。  パトリシアが特に注目しているのは、敵味方の艦艇の速力である。連邦軍の速力は 平均して35スペースノット、対してこちらの速力は約40スペースノットであった。 「速力ではこちらに分がありそうですね。敵主砲の射程外に距離を保って艦載機で攻 撃するに限りますね」

ポチッとよろしく!

11

2018年5月 6日 (日)

続 梓の非日常/第三章 スパイ潜入 神条寺葵

続 梓の非日常/第三章・スパイ潜入

(一)神条寺葵  ここは神条寺家。  今から百余年前のこと、梓の属する真条寺家が、財産分与を受けて分家したその本 家に当たる。  しかしながら、時代を隔てて今日の神条寺家では、真条寺家が財産を横取りして、 それを元手にアメリカ大陸で繁栄したという誤った言い伝えを信じていた。双子の一 人に財産の半分を持って行かれたのであるから、本来なら全額相続できたかも知れな いもう片方の子孫達が怒りを覚えるのは当然だろう。  以来、両家は太平洋を挟んで、犬猿の仲のまま双方とも発展を続けていた。  リビングで本家の当主たる神条寺靜とその娘の葵が言い争っている。 「家督を譲れですって。何を馬鹿なこと言っているのよ、この子は」 「だって、分家のほうじゃ、十六歳の梓に家督を譲ったというじゃない」 「それで自分にも、家督を譲れと言うのね」 「そうよ」 「だめです」 「どうして?」 「分家には分家の、本家には本家のやりかたがあるのです。だいたい、あちらはアメ リカ人です。制度も風習も違います」 「そんなのないよ。同じ神条寺家よ」  執拗に食い下がろうとする葵だったが、 「いい加減になさい。母に逆らうつもりですか。あなたを廃嫡にして、妹に相続させ ることもできるのですよ」  と言われては、身をすくめてすごすごと引き下がるしかなかった。 「わかったわよ!」  吐き捨てるように言って、リビングを後にした。  廊下に、黒服の男が立っていた。  葵はその前を通り過ぎるが、黒服は葵の後に付いてきていた。 「調べはついたの?」  立ち止まることなく黒服に尋ねる葵。 「はい。梓グループはそれを統括運営する財団法人AFCのもと、直営の生命科学研 究所・衛星事業研究所などの九つの各種研究機関と、約四十八の企業から構成されて おります。世界各地に点在する七十五箇所の生産基地と販売拠点、それらを結ぶ動脈 ともいうべき所有船舶数は四十九隻、うち原子力船が四隻。総排水量にしておよそ二 百万トン」 「ちょっと待って、原子力船ですって。なによそれ。一民間企業が簡単に所有できる 代物じゃないわよ」  急に立ち止まり振り返って確認する。 「はあ、それが、アメリカ国籍企業となっております資源探査会社AREC(アレ ク)「AZUSA Resouce Examination Corporation」が運営、財団法人AFCが所有す る深海調査船でして、母港はパールハーバーです。米国海軍の強力な保護下にあるも ようで、北太平洋・南太平洋及び大西洋海域において、現在メタンハイドレードと海 底熱水鉱床及び海底天然ガスの分布と埋蔵量の調査を行っています。ちなみにARE Cは、予備機を含めて五基の資源探査気象衛星も稼動中させています。海と空からの ほぼ完璧な布陣を敷いている感じですね。資源調査では、他企業を圧倒してほとんど 独占状態です」

ポチッとよろしく!

11

2018年5月 5日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第十五章 収容所星攻略 III

第十五章 収容所星攻略

                III 「P-300VXを三隻か……」  カインズは思い起こしていた。  パトリシアに査問委員会の決定が伝達され、全員が退室した司令官室に、レイチェ ルと共に残されていた。 「話は他でもありません。パトリシアに与えられた指令ですが、収容所の捕虜はすで に他に移送されていることが、レイチェルの情報部がすでに掴んでいます。しかも今 回の作戦の情報が敵情報部に漏洩していて、迎撃部隊がタシミールへ差し向けられた ようです」 「なんですって!」  驚いてレイチェルを見つめるカインズ。それに応えるように発言するレイチェルだ った。 「どうやら今回もニールセンの差し金のようですね。タシミールにある収容所の捕虜 救出を目的とした、今回の査問委員会による作戦行動の情報を敵側に流して、これを 迎撃させて司令の懐刀であるウィンザー大尉を抹殺するつもりなのかも知れません」 「大尉は知っているのですか?」 「いや、知らせてはいない」 「どうしてまた?」 「パトリシアにはいい経験になると考えたからだよ。何も知らされなければ、第十一 攻撃空母部隊は間違いなく敵部隊の奇襲を受けるだろう。それをどう察知し回避でき るか、今回の作戦はパトリシアに対する試練と考えている。ニールセンがお膳立てし てくれた作戦だ。せっかくだから役に立たせてもらうよ」 「どうやら司令は、大尉が与えられた試練を克服して、無事に帰還できると確信して おられるようだ」 「いくら昇進が掛かっているとはいえ、全滅しかない作戦には派遣させるわけにはい かない。パトリシアには、危険を回避し逆襲する作戦を考えうるだけの能力を有して いる。作戦指令にはなかった、敵艦隊との遭遇会戦となってどう対処するか。その能 力を十二分に引き出せる機会だと思う。だからこそ行かせるのだ。万が一にも敵部隊 との交戦が手に余り、パトリシアが指揮権の委譲を願い出るまでは、君には一切口出 ししないでもらいたのだ」 「それは構いませんが……」 「これはゴードンにも知らせていないので他言無用でお願いしたいのだが、無事に作 戦を終了して帰還し、少佐への昇進を果たした際には、艦隊参謀長に就いてもらおう と思っている」 「現在空位となっている、艦隊参謀長ですか? そんなオニール大佐にも知らせてい ない重要なことをどうして私に?」 「パトリシアを任せるのだからね。すべてを知っておいてもらいたいと思っているか らだよ」 「なるほど、艦隊参謀長という大役に就けるだけの能力があるかどうかを確認するた めにも、今回の任務を与えられたというわけですか」 「まあ、そういうことになるかな」 「判りました。すべてを納得した上で指導教官の任務につきましょう」 「よろしく頼むよ」  カインズは理解した。  今回の作戦は、パトリシア大尉の昇進試験ではあるが、その指導教官に自分を指名 したのは何故か? ということである。  懐刀であるパトリシアであるだけに、最も近しいゴードンの方が適任であるはずだ。  カインズ自身も大佐への昇進に漏れてしまった身分である。  自分自身の昇進試験でもあるのではないかと。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月 4日 (金)

続 梓の非日常/第二章・宇宙へのいざない 未来に向かって

続 梓の非日常/第二章・宇宙へのいざない

(十)未来に向かって 「なるほど、そこまでお考えでしたか」  代わって麗華が説明を続ける。 「高出力原子レーザー発振器の開発は、AFC直属の機関として高エネルギー研究所 を新たに設立して、すでに基礎研究に取り組んでおります。篠崎さんに担当していた だきたいのは、恒久的な月面基地と原子レーザー発電機の開発ですが、もう一つ中間 基地としての宇宙ステーションの建造があります」 「宇宙ステーションですか?」 「そうです。原子レーザーといっても、大気中では減衰が激しく実用には向かないで しょう。宇宙ステーションに搭載すれば、大気の減衰もなければ、BEC回路や超電 導素子を作動させる極超低温も、宇宙空間という天然の冷却材が利用できます。原子 レーザーの本格的な運用は、宇宙ステーションが完成してからになるでしょう」 「理にかなっておりますな。が、問題は人材の確保と資金面です」  再び梓が答える。 「その点に関しましては、アメリカの大幅な予算削減であぶれたNASAなどの研究 者を一部登用しますし、研究資金は当方で用意いたします。といいますのは、これら の計画実行にあたっては、篠崎重工とAFCの資金提携による合弁事業としたいので す」 「合弁事業?」 「はい。新たにアメリカ国籍企業としての篠崎重工アメリカを設立し、そこで開発し ていただきたいのです。これはアメリカ政府と軍の干渉を少しでも和らげる苦肉の策 でもあります」 「つまりアメリカ国籍企業なら、アメリカの国益にもつながると判断すると?」 「そうあってくれるといいんですけど。それに莫大な金額になる研究開発費税額控除 が、アメリカにおいては日本より格段に優遇されていますからね。例えばエレクトロ ニクス分野などは、法人税が五分の一ですみます」 「なるほど……。それで合弁事業のことですが」 「資本金は両者の折半でいかがでしょう。全額こちらで出資してもよろしいのですが、 その場合はAFCグループの傘下に入ることになります。どちらにしても、実際の会 社の運営は篠崎重工側におまかせします」 「AFCは金は出すが口は出さないというのが基本政策でしたな」 「もちろん計画の提案者がこちら側ですので、多少の諮問はするでしょうけど」 「わかりました。我々二人だけで結論は出せないので、重役会議にはかってみること にします。しばらく時間をいただますか?」 「結構です」  莫大なる資産を有するAFC代表となった梓の最初にして壮大なる開発計画が始動 しはじめた。  今後二十年間の間に、宇宙に人類を住まわせるというコンセプトではじめられた、 今回の新規事業組織の内訳は、主だったものだけでも以下のごとくである。  高エネルギー研究所、原子力発電協会、極超低温冷媒製造保管基地。  宇宙貨物輸送協会、スペースシャトルバス開発機構、月面調査開発協会。  ロケット推進技術研究所、宇宙航行体構造物研究所、宇宙船内生命維持装置研究所。  火星探査協会、スペースコロニー研究開発機構、宇宙移民局設置準備室、宇宙環境 問題委員会、宇宙資源開発国際協力会議。宇宙飛行士養成協会。  原子力兵器諮問委員会。  そして篠崎重工アメリカ側の事業としては、  宇宙ステーション開発事業部、月面基地開発事業部、原子レーザー発電事業部の三 部門が設立された。  などなど、今後二十年間で資本投下される金額は、真条寺財閥の総資産の三分の一 に相当する二十兆ドルにおよぶ。  そしてこれらの頂点に立つのが、一介の女子高生、AFC代表の真条寺梓十六歳で ある。  ブロンクス屋敷バルコニー。  午後のティータイムをくつろく渚が、美恵子からの報告を聞いている。  話題は、梓の宇宙開発計画についてである。 『新たなるフロンティアスピリッツだと絶賛の声が上がっています。新企業に採用さ れる従業員は総勢七十万人におよび、完全失業者がいっきに減少して産業界からは拍 手喝采で歓迎されています』 『議会の方はどうなっていますか?』 『はい。例の「宇宙産業分野における研究開発費税額控除特別法案」をハンフリー上 院議員を通して上申していましたが、まもなく法案は可決成立する見込みとなってお ります』 『政府に干渉することは、梓が嫌うところだけど、これだけは目をつぶってもらわな くてはね』 『そうですね。宇宙開発には莫大な研究開発費が必要です。今後最低十年間は研究開 発のみが続くでしょうし、本格的な宇宙ステーション等の建設がはじまるのはその後 十年間といいますしね』 『AFCの総資産の三分の一を投入するのですから、出来うる限りの策を施しておい ておかなければ』 『しかしお嬢さまも、思い切ったことを決定されましたね』 『これからは梓の時代です。宇宙開発はその根幹となる事業となるでしょう』 第二章 了
 こうして、次なる物語「ルナリアン戦記」それに続く「銀河戦記/波動編」の序曲 は始まるのであった……なんてね(*^^)v

ポチッとよろしく!

11

2018年5月 3日 (木)

銀河戦記/鳴動編 第十五章 収容所星攻略 II

第十五章 収容所星攻略

                 II 「タシミール到達まで、二十四時間」 「パネルスクリーンにタシミールの周辺地図を出してください」  すぐに地図は現れた。 「P-300VXを出しましょう」 「索敵ポイントは?」 「惑星軌道周辺と、敵部隊が展開しそうな後方域、このあたりです」  といって惑星周辺地図の索敵ポイントを指し示した。 「哨戒艇はもう一艇ありますが?」 「我が艦隊の後方哨戒に出します。背後から襲われてはたまりませんからね」 「そうですね」  パトリシアの命を受けて、セイレーンから三艇の哨戒艇が出撃した。  攻撃能力がない超高価な哨戒艇ならば護衛戦闘機が付くところであるが、ステルス という性能から護衛は付かない。戦闘機が索敵されたら意味がないからである。  その艦影を見つめながらリーナが呟いた。 「確か一艇あたり戦艦百二十隻分もの開発予算が掛かっていると聞きましたが……」 「その通りです」 「それだけの効果はあるのでしょうか? 私なら戦艦百二十隻の方に触手が動きます けどね。索敵なら一番安くて早い駆逐艦を派遣すればいいんじゃないかと思いますけ ど」 「そう考えるのが妥当でしょうね。しかし、それでは敵を発見しても、同様に敵に発 見される可能性が高いのです。歪曲場透過シールドは敵に発見されることなく、敵だ けを発見しつつその場に留まって引き続き敵の情勢を逐一監視することができます。 敵艦隊に察知されて会戦となれば、戦艦百二十隻以上の損害を被ることもありえます。 そう考えると戦艦百二十隻分の開発費も無駄にはならないでしょう」 「肝心な探査波が透過シールドで透過されて検知できないということは起こらないの ですか?」 「それは大丈夫です。探査波はちゃんとシールドを透過してくるわけですから、検知 は可能でしょう」  やがて哨戒艇からの報告が返ってくる。 「タシミール星周辺に敵艦隊の存在は見当たりません」  というものだった。 「どういうことでしょう……」  リーナがパトリシアと見合わせ首を傾げた。 「とにかく引き続き索敵を続行してください」 「了解。索敵を続行します」  それから一時間ほど索敵が行なわれたが敵艦隊は発見できなかった。 「敵艦隊はとっくに撤退したのではないでしょうか? さっさと惑星に降下して捕虜 がいないかどうかを確認なさってはいかがですか?」 「いえ。敵艦隊がいないからこそ用心しなければいけないのです」 「どういうことですか?」 「今回の作戦の根拠となった当初の情報に問題があるからです」 「情報に問題ですか?」 「その出所はどこだと思いますか?」 「統合軍の情報部と伺っておりますが……」 「なぜ統合軍の情報部なのでしょう。ここから一番近いのは我が第十七艦隊なのです。 出撃前にレイチェル少佐に確認したところ、その配下の情報部では掴んでいなかった そうです。あのレイチェルさんでさえ突き止めていなかった情報を、どうして統合軍 の方で掴んだのでしょう。おかしいと思いませんか?」 「そういえば……変ですね」 「ハンニバル艦隊のことを思い出してください。提督をカラカスから引き離す陽動作 戦として、連邦軍はハンニバル艦隊を差し向け、ニールセン中将を動かして、提督の 艦隊に迎撃を命じました。そうですよね」 「その通りです」 「今回も同様だと思います。ニールセンの元に捕虜収容所の情報を流せば、当然ラン ドール提督に救出作戦の命令が下されるでしょう。たまたまそれがわたしの佐官昇進 の査問試験となったわけです。そもそもカラカス基地とその周辺星域が奪取された時 点で、捕虜収容所として不適切になっています。言わば最前線に位置する場所にある のですからね。通信施設のみ残して捕虜を移送するのが尋常でしょう」 「確かに疑問点があり過ぎますね」  やっとリーナも納得したようだった。 「我々がタシミール収容所星にむかったという情報は、進撃コースも到着予定時刻も 査問委員会に事前報告を義務付けられていますから、我々の行動はおそらく敵艦隊に 筒抜けです。タシミールに上陸した頃合を計って急襲すれば、迎撃の余裕さえ与えず に壊滅できるはずです」 「なるほど」 「提督が貴重な哨戒艇を三隻も許可してくださったのも、その事を理解しておられる からです」  パトリシアとリーナの会話は、同乗している監察官にも聞こえている。おそらくニ ールセン中将の息が掛かっているだろうが……。  あえて名指しで謀略だと言い張るパトリシアであった。

ポチッとよろしく!

11

2018年5月 2日 (水)

続 梓の非日常/第二章・宇宙へのいざない 宇宙開発始動

続 梓の非日常/第二章・宇宙へのいざない

(九)宇宙開発始動  さらに数日後の衛星事業部の所長室。研究所員が飛び込んで来る。 「所長! 例の案件、通りましたよ。AFCから融資決定の書類が届きました」 「ほんとうか! 五千億ドルの予算だぞ」 「間違いありません。そして、梓お嬢さまのお言葉も添えられてありました」  梓の礼状を開いて読み始める研究所所長だったが、 「英語だな……」  ぼそりと呟く。 「そりゃそうですよ。英語圏で育った生粋のアメリカ人ですからね。ちゃんとした文 章を考え記述するのには、日本語だと自信がなかったのかも知れません」 「まあ、そうだな」 『所員のみなさん。先日はわたくしのために、忙しい中いろいろと案内やご説明を頂 き本当にありがとうございます。研究成果というものは、一朝一夕で出来上がるもの ではないかとおもいます。些細な研究でも、毎日こつこつと積み重ねていけば、やが て大きな成果となって現れることもあるのでしょう。ただ、わたくしが危惧すること は、利益だけを追求したり、特許申請の数を競うだけの研究であってはならないとい うことです。もっと大らかに、社会に貢献したと誇れるような、素晴らしい研究をし ていただきたいと思います。日々精進努力する姿は美しいと思います。わたしは、そ んな所員の皆様方を心の底から応援したいと思います。ありがとう』 「よし、研究開発の大号令を発する。二十年計画の予定だったが、十五年いや十年で 開発を完了してみせようじゃないか。社内報にお嬢さまのお言葉を添えて号外で載せ ろ」 「わかりました!」 「わたしは、所員の皆様方すべてを心のそこから応援します、か。さすが、梓お嬢様 だ」  それから数日後。  篠崎重工の社長室のそばにある特別応接室。  梓と麗香、篠崎良三と花岡専務が一同に会していた。麗香だけが梓のそばで立って、 商談の成り行きを見守る立場にあった。執行代理人としてグループ内でもナンバー3 として強大な権限を持つ麗香でも、梓本人が同席している場では秘書的な地位しかな く、直接商談には加われないのだ。総資産六十五兆ドルを自由に動かせる梓と、二十 億ドル程度の自由決済予算しかない麗香、主従の関係にある二人にはおのずと踏み越 えられぬ垣根が存在するのだ。梓にしてみればたった二十億ドル程度かも知れないが、 それを自由に動かせる麗香には、目の前の篠崎・花岡ですら頭が上がらないのである。  梓がいかに雲の上の人物かがよくわかるだろう。 「しかし梓さま自らお出でになられるとはいかなご用でございますかな」 「麗香さん、あれをお見せして」 「かしこまりました」  麗香が書類ケースから取り出して、二人の前に差し出した。  それは衛星事業部が梓に提出した、 『高出力原子レーザー発振器による、月面移動基地への高エネルギー伝送実験の企画 議案書』  であった。 「目を通していただけますか?」 「拝見いたします」  書類に目を通してしばらくすると、二人の表情がこわばるのが手に取るように見え た。 「高出力原子レーザー発振器ですか……」 「ぶっそうな代物ですな」  二人は、それが何物であるかをすでに理解しているようで、その危険性を指摘して きた。 「確かにこれが開発できれば宇宙開発における画期的な進歩が訪れるでしょう、反面 として、将来における宇宙戦争の強力な武器をも手に入れることにもなります。戦争 と平和両面における慎重な検討が必要かと存じますが」 「原子力兵器への転用は、私どもも苦慮しております。しかし、核爆弾と原子力発電、 戦闘機とジャンボ旅客機、大陸間弾道弾と宇宙ロケットなどにみられますように、新 技術には必ずと言っていいほど、戦争と平和の両面性を兼ね備えております。今のコ ンピューター時代も、有名な『エニアック』という弾道計算に使われた電子計算機が 最初です。戦争のために開発された技術が平和利用されて、わたし達の暮らしを支え ているものも数多く存在します。この高出力原子レーザー発振器も、善と悪が紙一重 でありますが、だからといって開発を躊躇していては、未来はいつまでたっても訪れ てはきません。人類の歴史がそうであったように、たとえ宇宙戦争を引き起こす要因 となったとしても、その後に来たるべく明るい平和と進歩が約束されるならば、わた しは開発に着手すべきものだと信じています」

ポチッとよろしく!

11

2018年5月 1日 (火)

銀河戦記/鳴動編 第十五章 収容所星攻略 I

第十五章 収容所星攻略

                 I  パトリシアは副指揮官リーナ以下の参謀達を作戦室に招集して、タシミール収容所 の状況と作戦の概要を説明した。 「これが今回の作戦の目的地のタシミール収容所です」  スクリーンに情報部よりのタシミール概要を表示させた。 「ここに同盟の捕虜数千人が収容されているという情報があります。我々はここに進 軍して事実確認をすると共に、情報通りなら捕虜を救出します」 「その情報というのは、どこから出たのですか? 情報参謀のウィング少佐です か?」  リーナが尋ねた。 「いえ。ウィング少佐の情報部ではありません。統合軍直属の情報部よりのもので す」 「となると信憑性はかなり低いですね」 「信頼性ないですからね、統合軍は。何たってランドール提督を落としいれようとし ている連中ばかり集まっているんですから」  ジャネットがさもありなんといった表情で答える。  うんうんと皆が頷いている。 「とにもかくにも任務です。情報通りと考えて行動するよりありません。そして捕虜 という人質がいますので、電撃的速攻であたらねばなりません」 「電撃的速攻と申されても、それには敵に悟られることなく接近、戦闘を開始するし かありません。どうなさるおつもりですか?」 「我々の接近を直前まで知られないために、P-300VX特務哨戒艇を使って敵艦 隊の動静を探り、一気に行動を起こします」 「特務哨戒艇?」 「P-300VX?」  一同が首を傾げた。  P-300VXは、戦艦搭載の索敵レーダー能力の十倍以上の索敵レンジを誇る、 超高性能の索敵レーダーを搭載した哨戒艇である。戦闘用の艤装は一切なく、エンジ ンを除けば、挺身のほとんどが最新最高性能の索敵レーダーと電子装備で占められて いた。秘密兵器は索敵レンジの広さだけではない。敵の索敵レーダーなどの探査波が 到来してきても、川面に頭を出した岩に当たった水の流れのように、特殊な歪曲場シ ールドがそれをすべて後方に透過させて、哨戒艇自身が発見されることを防いでいた。 とりもなおさず可視光線さえも透過させるので、その艦影を視認することさえも不可 能であった。  これを開発したのは、技術部開発設計課にいたフリード・ケイスンであった。 「ほんとに何でもできるんだな」  とアレックスを感心させる天才科学者である。  しかし哨戒艇の発案者はパトリシアであった。  キャプリック星雲遭遇会戦の教訓をもとに、いかに索敵が重要かを身に沁みて実感 していたパトリシアが、哨戒艇の原案をフリードに説明して開発研究を依頼し、アレ ックスに具申して五隻ものP-300VXの導入を実現させたものだった。基本的に サラマンダー以下の旗艦・準旗艦にそれぞれ一隻ずつ配属させていた。  最新鋭高性能な哨戒艇ではあるが、反面その製造コストも莫大で、戦艦百二十隻分 にも相当すると言われている。共和国同盟の新造艦艇リストに加えられ、詳細性能が 公表されても。それを進んで導入する艦隊は少なく、せいぜい一艦隊に一隻か二隻ほ どしか配属されていなかった。哨戒など数隻の駆逐艦を索敵に出させば済むことだと、 高価な哨戒艇よりも戦艦百二十隻の方を選択するのが当然であった。  パトリシアは今回の任務に、その貴重な哨戒艇を三隻も借りて連れてきていた。

ポチッとよろしく!

11

« 2018年4月 | トップページ | 2018年6月 »