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2018年6月29日 (金)

銀河戦記/鳴動編 第十八章・監察官 IV

第十八章 監察官

                 IV  提督が軍法会議に掛けられるという情報は逸早く艦隊全員の知るところとなった。  言うことを聞かないアレックスに業を煮やし、どんな暴挙にでるかも知れないと、 交代で監察官の行動を監視しはじめた士官達もいる。  監察官もそんな動きを察知してか、用意された部屋からは一歩も出ることはなかっ た。  監察官の忠告を無視して、アレックスの基地からの一時撤退の準備が開始された。  とにもかくにも、一番の難問となるのは、一億二千万人にも及ぶ住民の避難方法で ある。敵はすでに進撃を開始しており、時間の切迫した中で、いかにすべての住民を 一人残らずもよりの惑星に移送するかという算段を、考えださねばならない。  それはかつてスティール・メイスンが、ミッドウェイ宙域会戦において、撤退する 連邦第七艦隊を追撃する共和国同盟軍第五艦隊を、バリンジャー星住民を全員避難さ せた上で惑星を自爆させ、第五艦隊を壊滅に追いやったあの時と状況が酷似している と言えた。 「シャイニングを完全放棄するなら、メイスンがやったように自爆させてしまうのも 一興なのだが。二番煎じでは面白くないからな」  独立遊撃艦隊所有の輸送艦は無論のこと、近在の基地に逗留する輸送艦が借用され て、シャイニングに集められて、住民の移送にあてられた。  そして住民の説得であるが、これはわりかしすんなりと解決した。元々シャイニン グは最前線を防衛する軍事基地として開発された惑星であり、住民のほとんどが軍部 関係の将兵と技術者及びその家族であったからである。軍属となれば、命令には逆ら うことはできない。  フランソワ・クレールの立てた撤退計画に従って、事は順調に捗っていた。各地の 軍港から、ひっきりなしに輸送艦が発着を繰り返しており、軍港への道には撤退命令 を受けた住民達の群れが続いている。 「パトリシア。一般住民の撤退は、捗っているか」 「はい。すでに八割がたほど、後方の近隣惑星に分散移送を完了しています。残る住 民も明後日までには、移送を終えるでしょう」 「ふむ。予定通りだな」 「しかし、貴重品以外は持ち出し禁止で、燃料・弾薬や物資までそっくりそのまま残 していくというのはどういうことですか? 物資を引き上げる時間は十分あるはずで す。基地を明け渡した上に、物資のおみやげまでつけて、基地の設備も破壊せずに敵 に差し出す必要はないと思いますが」 「作戦を完璧に演出するためだよ」 「と申しますと?」 「遠路はるばるやってきた艦隊が一番欲しがるものはなんだ?」 「燃料・弾薬です。そして将兵達には食糧が必要です」 「その通りだ。喉から手が出るほど欲しいものが基地にあるとわかればどうする?」 「当然、上陸して……あ! そうか、わかりましたよ」 「言ってみろ」 「はい。もし基地に何も残っていなければ、敵は通信機能だけ残して、ここを放って おいて艦隊を前進させるかも知れません。燃料・弾薬に物資、そして完全に機能する 基地の設備までもを与えることで、敵艦隊を完全に足留めする。そういうことです ね?」 「そうだ。すべてを残しておくことで、いかにもあわてふためいて脱出したのだと敵 に思わせられるだろう。油断もするし、敵は安心してこの地に留まってくれるという わけだ」 「素晴らしい作戦です」 「巧くいくといいんだがな」 「大丈夫ですよ」    技術将校でコンピュータプログラマーのレイティ・コズミック大尉から報告があっ た。 「提督。準備が完了しました」 「ご苦労さま」  アレックスはそう言うとパトリシアに向き直った。 「敵艦隊の位置は?」 「はい。37・8光秒の位置に達しました」 「そうか。そろそろ我が艦隊も撤退するとしようか」  アレックスはパトリシアに目配せすると、 「総員に退去命令を出してくれ」  静かに艦隊の撤退命令を下令した。 「はい」  それを聞いて、撤退開始の予定時間に合わせて艦橋に姿を現していた監察官が発言 した。 「提督、お考えは改まらないと考えてよろしいですね」  最後通牒ともいうべき警告のような響きのある口調だった。 「ああ、変わらないな」 「仕方ありませんね……」  というと、やおら腰からブラスターを引き抜いて、アレックスに向けて構える。 「きゃー!」 「提督!」  一斉に悲鳴があがる。 「騒ぐな!」  監察官が怒鳴り散らす。 「その通りだ。みんな動くんじゃない。軽はずみな行動はするな」  アレックスも静止する。  監察官が容赦なく発砲することは目に見えていたからである。  自分の職務を果たすためなら平気で人を殺すだろう事は容易に推測できる。 「提督のおっしゃるとおりですよ。死にたくなかったら動かないことです」  その時監察官の背後に控えていたレイチェルが艦内放送を担当しているオペレー ターに合図を送った。それに応えるように、監察官に気づかれないようにそっと艦内 放送のスイッチを入れる放送オペレーター。  食堂や居住区にある艦内TVに、艦橋の現況が流され始めた。

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