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2018年6月 4日 (月)

続 梓の非日常・第四章 峠バトルとセーターと 命預けます

続 梓の非日常・第四章・峠バトルとセーターと

(六)命預けます  ゴールが近づいていた。  すでに視界から、前を行くリーダーの姿は見えない。  明らかに負けがはっきりしてきた。 「なあ、梓ちゃん」 「なに?」 「この俺に命を預けてくれないか?」 「え?」 「このままじゃ、奴らには勝てない。だから、空を翔ぶ!」 「空を翔ぶ?」 「ああ……。だから俺を信じて欲しい」  慎二の言わんとしている事をすぐに理解する梓だった。 「判ったよ。死ぬときは一緒だろ? 好きにしていいよ」 「サンキュー」  ハンドルを握る慎二の手に力が込められるのが判った。  切り立った崖、はるか眼下に下りのラインが見えている。  ガードレールの途切れた箇所で、慎二は思い切りハンドルを切った。 「いっけー!」  掛け声と共に、慎二と梓を乗せた自動二輪が、正丸の空に翔んだ。  それに驚いたのは後続の立会人達だった。 「空を翔んだ!」 「あいつは、『手芸のえっちゃん』だったのかあ!」 「インベタのさらにイン……どころじゃないな。あれが掟破りの地元走りか?」 「よおし、こっちも行く……」  パンダトレノを運転する梶原拓海がアクセルを踏み込む。  そして、崖っぷちから空へと飛翔する。  それをバックミラーで見ていたレビンの冬山渉が驚愕する。 「ば、馬鹿な二人とも自殺する気か!」  冷静さを取り戻して、先を行くリーダーのバイクの追従に専念する渉だった。 「付き合ってられないぜ」  空中に飛び出した慎二と梓。  急降下する加速度に、梓の意識が遠のいていく。  その時だった。  意識のどこかで声が聞こえてきたのだ。 「だめよ、意識をしっかり持って! 慎二君を信じるのよ。お願い、気を確かに持っ て!」  はっ! と意識を取り戻す梓。  目の前に着地点が迫っていた。  着地の衝撃で振り飛ばされないように、しっかりと慎二にしがみ付く梓。  道路に直接着地するのではなく、道路脇の斜面にラウンディングを試みる慎二だっ た。スキーのジャンプのように斜面に着地することで、落下のエネルギーを吸収・分 散させることができる。慎二の野生の感が、とっさの好判断を促した。  すさまじい土ぼこりを舞い上げながら、減速をしながら斜面を駆け下りる慎二。そ して再び峠道に舞い戻ったのである。  続いて梶原拓海も無事に付いてきた。 「見たか、梓ちゃん。さすが『秋名のハチロク』と呼ばれるだけあるな。あいつのド ラテクは神業だぜ」  やがて、後方からリーダーの乗る自動二輪が迫ってくる。 「追いついてきたわ」 「ゴールは目の前だ! よっしゃー。飛ばすぜ!」  スロットル全開、重低音を響かせて加速する。  迫り来るリーダー。  ゴールが近づく。  先にゴールを切るか、追い抜かれるか微妙な差であった。  両側の道沿いに立ち並ぶ観衆達、梓連合と暴走族がどうなることかと息を呑んでいる 姿が目に入る。  リーダーペアに脇に並ばれた。  そして、そのままゴール!  勝負はついた。  どっちが先か?  しかし誰も即座に答えられなかった。  ほとんど同時に並んでゴールしたとしか見えなかった。  続いて立会人の二者も到達する。  道路脇に停車させる慎二。  そのすぐ後ろにリーダーも停車させ、自動二輪を降りてヘルメットを脱いで近づい てきた。 「あたし達の負けだよ」 「同時じゃない?」  ヘルメットを脱ぎながら答える梓。 「いや、シロートのお前らに先行を許し、追い越せなかったんだ。はっきりこっちの 負けだよ」 「そうか……立会人はどう見る?」 「引き分けでいいんじゃないですか?」  パンダトレノの窓から顔を出して梶原拓海が答える。 「そうだな」  とは、レビンの冬山渉。  リーダーは、空を仰ぎながら感心したように言う。 「しかし、空を翔ぶとはな、ぶったまげたよ。あんな肝っ玉の据わった奴がいるとは 思わなかったよ。さすがに鬼の沢渡、噂通りの男だ」 「そりゃどおも」 「あなたもあなたね。命預けてたね、こいつに……」 「まあね」 「ここにいる奴らはみんな、国道299号線沿線にある各女子高で番を張っているん だ。それらを軽くあしらい、そして今そのリーダーであるあたしを負かしたんだ。東 上線沿線を支配している青竜会と、新宿線沿線の黒姫会共々、あなたの傘下に入るこ とにする」  え?  耳を疑う梓だった。 「おまえらもいいな!」  振り向いて部下達を一喝するリーダー。 「おお!」  賛同の声が返ってくる。 「ちょ、ちょっと待ってよ」 「あたしらは、あなたの度胸っぷりに感激したよ。新しいリーダーにふさわしい人物 だ。これからもよろしく頼む」  と頭を下げた。 「もう……」  先の二人のスケ番共々、いくら言っても無駄であろう。 「慎二、帰るわよ」 「判った」  こうして新たに梓の傘下に加わった正丸レディースに見送られて帰路につく梓だっ た。  それにしても……。  あの時に聞こえてきた声はなんだったのだろうか……。

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