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2018年6月28日 (木)

続 梓の非日常/第六章・沢渡家騒動? 成金主義

続 梓の非日常/第六章・沢渡家騒動?

(二)成金主義  医者の所に立ち寄った後、沢渡家に着いた。  梓と絵利香は、その威容さに驚いた。  ごく普通の家庭かと思っていたそれは、とんでもないくらいに広い屋敷だったのである。 「ほんとにここが慎二君の家?」 「ああ、そうだよ。建設会社社長が金に明かせて建てた成金主義まるだしの屋敷さ。とは いっても、梓ちゃんや絵利香ちゃんの屋敷に比べれば猫の額ほどもないけどね。まあ、そ れでも人並み以上なのは確かさ」 「でも、慎二君の日頃の生活からは、とても想像できないわね」 「家出して自活しているからね。一応、アパート暮らしの貧乏生活さ」 「どうして、家出なんかしているの?」 「言っただろう? 成金主義だって。ちょっと金があるからといって、鼻持ちならない態 度なんだよ。女中さんなんか雇って上流社会気取りでいる」 「それで家出を?」 「まあね。この家に暮らす限りには上流社会的な生活を強要されるからね。不良としての 俺にとっては住みにくい家だってことさ」 「でも、お小遣いとかたくさん貰っていたんじゃない? それが今は、アルバイトしても 生活費にことかく日々」  ここ最近のガソリン代の高騰で、自慢のバイクに乗らずにもっぱら自転車という状況が それを示していた。 「よけいなお世話だよ」  それから応接室に案内された二人。  お茶が出されて、手をかけようとした時、部屋の外で声がした。  ここの主が帰ってきたようである。  近藤が素早く動いて、出迎える。  開いたままのドアから、主の姿が見える。  こちらを振り向いた主。  梓達を認めて、突き放すように答える。 「よけいな客には、茶菓子は出さんでいいと言ったはずだぞ」  これ見よがし、わざと聞こえるように近藤を叱る父親だった。 「いえ、この方たちは、怪我したおぼちゃまを介抱してくださいましたのです」 「怪我?」 「はい」 「ふん! また喧嘩したのか。しようがない奴だ」 「そうは言われましても」 「構わん、適当にあしらって早く追い出せ」  まるで泥棒猫に入られたような口調であった。  憤慨する梓達。  これでは出されたお茶にも手を出すわけにもいくまい。 「ひどい言われようね」 「客扱いしていないよ」 「人扱いすらしていないよ」 「不良の俺が連れてきた友達だから、同様に不良だと思っているんだよ。たかりに来たぐ らいにしか思っていないよ」 「そうみたいね」 「お邪魔なようだから、帰りましょう」 「そうね」  携帯電話を取り出して、麗華に迎えに来るように伝える梓。  携帯の電波を逆探知すれば、場所は判るようになっている。  立ち上がる梓達。  歓迎されていない以上、いつまでも応接室にいるのは気分が悪い。  屋敷の外で待つことにする。  高級外車のベンツがやってくる。  中には中年女性が乗っており、梓達を訝しげに見つめながら、慎二の姿を見出して窓を 開けて尋ねる。 「慎二じゃないか。どうせ金の無心にきたのだろう? どうせ、そこの女達と遊びにいく 金だろ」  切り出した言葉がまた聞き捨てならぬものだった。  まったく夫婦揃って、金持ちを鼻に掛けて嫌味たっぷりである。  慎二が家出する理由も納得できる。  そこへファントムVIがすべるようにやって来て止まる。 「お待たせいたしました」  運転手の白井が出てきて、後部座席のドアを開けて招き入れる。 「どうぞ、お嬢さま。絵利香さまもご一緒に」 「ありがとう」  さんざん不良扱いされていた梓は、見せつけるようにお嬢さまぜんとした優雅な動きで 乗り込んでいく。  絵利香も同様にしずしずと乗り込む。  沢渡夫人は、ファントムVIの威容さに目を見張るばかりだった。  車のことはあまり知らなくても、その概容からとんでもない高級車であることは、いや でも判る。  今ではちょっと金を出せば誰でも買えるベンツなどとは比べ物にもならない。ちょっと やそっとでは手に入れられない代物だとも判る。  英国製、ロールス・ロイス・ファントムVI。BMWの傘下に入る以前の、モータリ ゼーション華やかりし全盛の頃、1960年代往年の名車である。  全長6045mm、全幅2010mm、車高1752mm、全重量2700kg、水冷V8エンジン6230cc。ロー ルス・ロイスの方針でエンジン性能は未公表のため不明だが、人の背の高さをも越えるそ の巨漢は、周囲を圧倒して、道行く人々の感心を引かずにはおかない。  その巨漢に圧倒されないものはいない。  唖然として、梓達を見つめている沢渡夫人。 「今夜は、近藤の顔を立ててここに泊まるが、明日にはアパートに戻るよ。ここは居づら いからな」 「学校で会いましょう」 「さよなら」 「ああ、さよならだ」  ファントムVIがゆっくりと動き出す。  五十年近く経っているというのに、非常に静かなエンジン音は、日常の整備が良くなさ れている証拠。  オークションに出品すれば、一億円という値が軽く提示される代物である。  やがてファントムVIは沢渡家を後にした。  居残った慎二と沢渡夫人。 「今の女の子達は誰なの?」 「なあにあんたが想像した通りのズベ公だよ」 「そんなことないでしょ。ロールス・ロイスでしょ、あの車」 「そうだよ」 「どこかの大金持ちなんでしょ?」 「大金持ち? そんなレベルじゃないよ。雲の上に住んでるからね」  きょとんとしている沢渡夫人だった。  口で説明しても、理解できるような内容ではない。

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