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2018年6月17日 (日)

銀河戦記/鳴動編 第十七章 リンダの憂鬱 VII

第十七章 リンダの憂鬱

                VII 「どうぞ、メニューです」  ウェイトレスよろしく、アレックスの目の前に、すっとメニューを持った手が差し 出された。  無意識にそれを受け取り、ページを開くと、料理メニューではなかった。 「何かね、これは?」  ふと視線をあげて、メニューを差し出した本人を見ると、 「提督の体力トレーニングメニューです。それとこちらがフランソワの分です」  艦長のリンダだった。その隣にはウェイトレスが控えている。 「な、なによこれ?」  メニューを見るなり悲鳴のような声を出すフランソワ。 「今までの二倍の基礎筋トレーニングに、肺活筋の強化トレーニング……」 「こっちは、脚力と腹筋トレーニングが増えているな」 「お二人とも、トレーニング不足とという健康診断が出ております。それに基づきト レーナーと相談して、運動メニューを決定いたしました。艦内に居住するすべての将 兵の健康管理を取り仕切るのも艦長の任務の一つです。どうかご理解くださいませ」 「判った……納得いかないが納得するしかないようだ」  艦長としての責務を果たそうとしてるリンダには従うしかないと判断するアレック ス。警報が出てから自分の持ち場へ、急ぎ馳せ参じる運動能力を維持しなければ、自 分の役目を果たすことができないのは必至である。それが全艦隊の運命を左右する指 揮官たる者なら当然の責務の一つである。命令を下すべき指揮官が遅れれば、指揮統 制も乱れ混乱する。  積極的な行動に出たリンダ。 「そうか……レイチェルが動いてくれたようだな。将兵達の心を掴み揺り動かせる才 能。さすがにレイチェルだな」  感心しきりのアレックスだった。 「ありがとうございます。それではこちらが今日の料理メニューです。鯛の香草風味 焼き、あさりと春野菜のクリームソースがお奨めです」 「そうか、それを頂くとしよう」 「あたしもそれでいいわ」  アレックスが承諾したので、おのずと自分も従わざるをえなくなったフランソワ。 つっけんどんに答えていた。 「お二人とも、鯛の香草風味焼き春野菜のクリームソースでよろしいですね?」  ウィトレスがメニューを確認する。 「ああ、よろしく頼む」  と言いながらIDカードを差し出すと、ウェイトレスが持っているカードリーダー に差し込んで、メニューを打ち込んでいる。これで厨房への調理指示と、給料天引き が自動的になされる。  ここの食堂のようなファミリーレストラン風なシステムを採っているのは、第十七 艦隊だけである。他の艦隊の食堂は、日替わりでメニューが決められていて、選択の 余地がなかった。自慢のシステムであるが、このシステムを考案し採り入れたのが、 主計科主任であるレイチェルであった。コンピュータ技師のレイティー及び厨烹科の ナターリャ・ドゥジンスカヤ料理長と共に、システムと携帯端末の設計開発を行った。  ランジェリーショップの経営、女性士官制服制定委員会などと、レイチェルは常日 頃から気を配って、メンタルヘルスケアを実践していた。  このような乗員にやさしいレイチェルに対し、女性士官達は憧れをもって接してお り、艦内における意見具申などはすべてレイチェルに届けられていた。  そのレイチェルが食堂に入ってきた。  士官達の敬礼を受け流しながら、アレックスの姿を見つけると、一直線に歩み寄っ てくる。 「提督。お食事中のところ申し訳ありません」  と辺りを気にしながら話しかける。一般の将兵達には聞かせたくない内容のようだ。 「ここで、構わん。報告してくれ」  気を遣っているレイチェルだったが、そう言われては仕方がない。 「はい、では。報告致します」  姿勢を正して報告をはじめるレイチェル。 「バーナード星系連邦のタルシエン要塞から敵艦隊が出撃を開始しました。二個艦隊 がクリーグ基地へ、三個艦隊がシャイニング基地に向かっています。その他、占領機 動部隊や後方支援部隊を含めて、総勢八個艦隊です」 「そうか……最初の情報どおりというわけだな」 「その通りです」 「判った、ご苦労だった。引き続き情報の更新を頼む」 「かしこまりました」  それから少し考えてから、 「レイチェル。今ここにいる全員に待機命令を出してくれ。外に出ないように」 「判りました」  足早に食堂前方に移動するレイチェル。 「フランソワは、食堂にある艦内放送をセットし、全艦放送の手配を取ってくれ」 「はい!」  同様に、食堂後方にある放送施設に掛けて行くフランソワ。  レイチェルが大声を張り上げて、食堂にいる全員に伝える。 「みなさん。お静かにお願いします。これから提督のお話があります。食堂から出な いようにしてください」  何事かと、レイチェルやアレックスに注目する一同。  その間に放送室にたどり着いたフランソワが、艦橋にいるパトリシアに連絡する。 『艦橋。ウィンザー少佐です』 「あ、先輩。食堂の艦内放送システムを全艦隊放送に流してください。提督からのお 話があります」  ディスプレイにパトリシアが現れると同時に話しかけるフランソワ。 「判りました。全艦放送の手配をします」  パトリシアにもレイチェルの報告が届いているのであろう。アレックスの意図をす ぐさま理解して、全艦放送の手配をはじめた。  つかつかと歩いて食堂の一番前に来るアレックス。  食堂の職員がマイクスタンドを運んできて、アレックスの前に立ててから小声で言 った。 「接続は完了しています。どうぞお話ください」 「判った」  アレックスはマイクを軽く叩いて、改めて接続が完了しているのを確認し、深呼吸 してから話し出す。

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