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2018年7月17日 (火)

銀河戦記/鳴動編 第十九章・シャイニング基地攻防戦 VI

第十九章 シャイニング基地攻防戦

                 VI  宇宙空間ではすでに戦闘は終了していた。  撃破された艦船の残骸や破片やらが軌道上を取り囲むように浮遊していた。  基地からの対軌道迎撃ミサイルと、自艦の索敵レーダーの圏外からの魚雷攻撃、そ して勇躍飛来してきたサラマンダー艦隊の猛攻に成す術もなかった。 「残存の敵艦隊、四散して逃げていきます」 「追う必要はない。それよりも救助の方を優先させろ。敵味方に関係なく一人でも多 くを救助するのだ」 「わかりました。救護班を出動させます」 「たのむ」 「上手くいきましたね」 「ああ……。これがフレージャーならこうも巧くいかなかっただろう。かつてのハン ニバル艦隊騒動でカラカス基地を潔く撤退したのは、カラカス基地の管制システムを チェックし完全掌握する以前に、我々が引き返してきたのを知ったからだ。フレージ ャーは慎重過ぎるほどの軍人のようだ。管制システムにウィルスが忍ばせてある可能 性を危惧してのことだと思う」 「確かに、これまで何度となく戦ってきましたが、大した戦果をあげられずに、双方 痛み分けで終わっていました」 「それにしても軌道上には二個艦隊が展開して、これと戦うのは骨かと思いましたが、 地上ミサイルのおかげてあっさり片付きました」 「シャイニング基地の防御システムの絶対防衛ゾーンの内側に展開していたからな。 目標ロックオンせずとも、撃てば必ずどれかに命中するさ」 「目隠ししてでも当たりますね」 「さて、はじめるとするか……。レイティ、基地の無線封鎖を解除だ」 「はい、無線封鎖を解除します」 「通信士。地上の基地の敵に降伏を勧告してくれ」 「了解」  基地管制塔。 「通信が回復しました。というよりも敵が通信回路を開いたのでしょうが……」 「敵より降伏勧告です」 「なめやがって。降伏するくらいなら、地上に降ろした艦隊で出撃して」 「お止めください。基地は敵の手の内にあるのです。発進と同時に、地上基地から対 空砲火を浴びせかけられて損害を広げるだけです。このシャイニング基地は五個艦隊 に匹敵するくらいの強力な防空設備があるんです。防衛艦隊が一個艦隊しか配備され ていないのはそのためなのです。先程の防空ミサイルだって、せいぜい十分の一くら いしか使用されていません。不可能ですよ」 「五個艦隊じゃないだろ、迎撃システムと言ったってせいぜい基地周辺だけが相手だ ろう」 「お忘れですか? 艦隊は垂直離陸ができません。成層圏を突破して宇宙に出るには、 大気圏を滑空加速しながら高度を上げていかなければなりません。最短距離でも惑星 を半周しなければ宇宙に出られないんです。つまり半周すれば、理論上惑星上のどの 地点からも攻撃が可能です。もちろん弾道ミサイルなら無制限ですしね」  その時、上空からまばゆいばかりの光が射したかと思うと、基地周辺の土地が一瞬 に蒸発した。 「あれは?」 「軌道上からの対地レーザー攻撃です。敵艦隊が艦砲射撃してきました」 「降伏しなければ一斉攻撃するぞという威嚇か」 「お考えください。我々は宇宙に出なければ攻撃できないのに対し、敵は軌道上から いつでも艦砲射撃や軌道爆雷攻撃などとあらゆる攻撃が可能です。その上こちらは、 給水設備などを止められてしまっては、持久戦に持ち込むことも出来ません」 「降伏しろというのか」 「ここは敵勢力下にあります。救援を頼むこともできません」 「ちきしょう。いっぱい食わされたというわけか……。ランドールめ! 姑息な手段 ばかりとりよってからに」 「長官、ご裁量を」 「わ、わかった。降伏しよう」  うなだれる司令長官。 「提督。敵将より降伏勧告を受諾するとの返信がありました」  艦橋内に沸き起こる歓声。旗艦艦橋は参謀以外全員女性士官のために、それが一斉 にかん高い歓声をあげた結果として、アレックスの聴覚神経は一時的な混乱状態に陥 った。 「静かに!」  たまらず制止した。 「通信士、本部に連絡。敵艦隊を撃破し、任務を完了する」 「かしこまりました」 「カインズ中佐!」 「はっ」 「メビウス隊に、占領作戦行動開始を発令。降下部隊の指揮を取れ。直ちにだ」 「了解しました」  カインズは自分の指揮パネルを操作しながら配下の部隊に命令を下していた。  パトリシアが寄ってきた。 「おめでとうございます」 「なんとかうまくいったな。相手が違うとはいえ、同じような作戦が二度通用すると は」 「フランソワも言っていましたように、敵もまさか士官学校時代の作戦記録まで調べ はしないでしょうから」 「そうだな……」

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