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2018年9月

2018年9月30日 (日)

銀河戦記/鳴動編 第二十三章 新提督誕生 IV

第二十三章 新提督誕生

                IV  自宅においてアレックスから呼び出しを受けたチェスター大佐は、長年連れ添って きた妻の前でふと言葉をもらした。 「これまで随分おまえに心配かけさせてきたが、それも今日で終わりだろう」 「やはり肩叩きですか?」 「わしより若くて優秀な人材がどんどん出てきているからな。一年で退役となる老骨 がいつまでもでしゃばっていては士気にも影響するし、後進に道をゆずれってところ だ。若くて勇壮な若者を推挙するのが本筋というものだ。誰が考えてもオニール大佐 が次期艦隊司令官となるのが妥当というものだ」 「退役までどこに配属されるのですか」 「慣例では艦隊司令本部の後方作戦本部長、もしくは艦隊士官教育局長というところ かな」 「それにしても後一年なのですね」 「よくぞここまで生き延びてこれたと感謝すべきなのだろうな。同期のものは、戦死 したり傷病で中途退役したりして、ほとんど数えるほどしか残っていないというの に」 「無事定年を迎えられるだけでも幸せといえるのでしょうか」 「ああ……しかし、将軍になれなかったのは、やはり心残りだ。そうすれば老後の生 活ももっと楽になるのだがな」 「あなた……」 「おっと、今更愚痴をいってもしかたないな。それじゃ、行ってくるよ」 「行ってらっしゃいませ」  シャイニング基地司令官室。 「チェスター大佐がお見えになりました」  アレックスが司令官のオフィスに戻ってすぐに、インターフォンが鳴り秘書官が来 訪を告げた。 「通してくれ」 「はい」  ドアが開いてチェスターが神妙な表情で入室してきた。 「オーギュスト・チェスター大佐、命により出頭いたしました」  チェスターは敬礼してアレックスの前に立った。 「椅子に腰掛けませんか」  アレックスは老体を気遣って椅子をすすめた。ここは地上である、重力の小さい艦 隊勤務の長い彼にはただ立っているだけでも重労働に値するからだ。 「いえ。ご懸念には及びません。老いたりとはいえまだ健在です」 「そうですか、結構ですね。では、早速本題に入りましょう」 「はっ」 「ご存じのように、私が第八師団総司令となり第十七艦隊司令が空席となりました。 現在貴官にお願いして代行を務めていただいておりますが、一刻も早く人事を決定し なければなりません。敵の動向もさることながら、艦隊内での士官達の統制をまとめ ることも、最重要項目です。艦内では次の艦隊司令官が誰かということで、指揮系統 に混乱が生じているふしも見られます。司令官代行として、あなたの耳にも入ってい るはずですね」 「はい、確かに」 「ウィンディーネ艦隊内では、ゴードン・オニール大佐に決定したという、まことし やかな流言もまかり通っているらしいですが、私は冗談としても一度だってそんなこ とを口に出した覚えはありません」 「申し訳ありません。私の指揮が至らないせいです」  チェスターは、代行として任にあたっているにも関わらず、流言を押さえることの できない自分の、艦隊司令としての能力を問われているのだと感じた。  やはり自分は更迭されるのだ。  誰が考えても、ゴードン・オニール大佐が艦隊司令の席に座るのが自然であり、こ れまでの実績が物語っている。仮に自分が就任することになれば、ウィンディーネ艦 隊の士官達が、こぞって反目するだろうことは目にみえている。  チェスターは覚悟した。  とはいえアレックスの表情は、これから更迭を言い渡そうとするには、笑みを浮か べて無気味に思えた。 「いや、誰が艦隊司令を務めても同じでしょう。ゴードンだったらば、ドリアード艦 隊の士官が不平を並べていたでしょうね」 「そうでしょうが……結局は、納得すると自分は思います」 「まあ、ともかく結論を出しましょう。軍令部の決定を通達します」 「はっ!」  チェスターは姿勢を正した。 「オーギュスト・チェスター大佐。本日付けをもって、貴官を第十七艦隊司令官に任 じます。階級は准将」 「え……!?」
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2018年9月29日 (土)

妖奇退魔夜行/蘇我入鹿の怨霊 其の拾壱

陰陽退魔士・逢坂蘭子/蘇我入鹿の怨霊 其の拾壱

(拾壱)七星剣 「物事には必ず表と裏、光(陽)と影(陰)があるように、実は二振りの七星剣があっ たのです。表の七星剣は東京、そして裏の七星剣は四天王寺の地下宝物庫に人知れず封 印されていたのです」 「封印されていた?」 「はい」 「実は、裏の七星剣には蘇我入鹿の怨念が封じ込まれていたのです」 「蘇我入鹿?ですか……蘇我入鹿首塚の怨霊伝説なら聞いたことがありますが」 「蘇我入鹿を斬首した剣が、この裏の七星剣だという説話が残っています」  蘇我氏の怨霊ということなら、この四天王寺に伝承されていても不思議ではないだろ う。  崩御した推古天皇の後継者争いで、四天王寺を建立した聖徳太子の子、山背大兄王を 暗殺したのが蘇我入鹿である。  欽明天皇の頃、崇仏派の蘇我氏一族と、排仏派の物部氏・中臣鎌足連合が争った。  用明天皇崩御の後、継承争いとなり、穴穂部皇子を皇位につけようとした物部守屋に 対し、炊屋姫(後の推古天皇)の詔を得て、穴穂部皇子を誅殺し、さらに物部守屋の館 に討ち入ってその首を捕った。  以降物部氏は没落することになる。 「蘇我入鹿首塚はご存知でしょう」 「はい。板蓋宮大極殿で中臣鎌足によって斬首された入鹿の首が620mほど南のかの地ま で飛び、住民が手厚く葬ったという伝説によるものですね」 「その通り。葬られたものの入鹿の怨念は凄まじく、夜ごと奈良に現れ民を苦しめたと いう。そこで陰陽師が招聘されて、入鹿の怨念を一つの剣に封じ込めたという。その剣 が、この裏の七星剣のもう一つの説話なのです。どちらにしても入鹿の怨念が籠ってい たのは確かなようです」 「七星剣に入鹿の怨念が封じ込まれていたとしたら、その怨念を解き放って悪しき呪法 とすることができるでしょう」 「何か心当たりがあるのですか?」 「まだ何とも言えませんが、呪法が使われたと思われる事件がありました」 「それは困りましたね。何かお手伝いできることがあればおっしゃってください。出来 るものなら何でもご協力します」 「ありがとうございます」  宝物庫から出てくる一行。  住職は再び呪法を掛け直して扉を密封している。  その作業を見ながら春代が尋ねる。 「これからどうする?」 「明日、明日香村に行ってみようと思います。何か手掛かりが見つかるかも知れません から」 「そうか、そうすると良い」 「七星剣を盗んだ犯人は、妖魔か陰陽師の疑いが強いですね。例の石上直弘一人では、 この所業は不可能でしょう。 「つまり石上の背後で操っている物がいると?」 「はい」  奈良行きを井上課長に伝えると、 「待て!私も着いて行こう。君一人を行かせる訳にはいかない」  と、同行を求めた。
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2018年9月28日 (金)

性転換倶楽部/静香の一日(九)そんでね……

 静香の一日

(九)そんでね……  アパートの外。  静香(自分の身体)としばらく佇んだまま、俊彦の部屋を見つめていた。 「お兄ちゃん、どうするの?」  静香が聞いた。 「そうだな……。俊彦となるようになるしかないさ」 「そうじゃなくて、あたし達のことよ。元に戻れると思う?」 「判らないよ。入れ替わったのは、ほんとに奇跡なんだから」 「元に戻るまでは、あたしはお兄ちゃんに、お兄ちゃんはあたしとして生活するの?」 「それしかないだろう? 入れ替わったなんて誰も信じてはくれないさ。人はその姿 でしか物を見ないものだ。身体が男なら内面の男、女なら内面も女だ。無理に押し通 そうとすると精神異常だと判断されるぞ」 「ということは……。あたしはお兄ちゃんの会社で働かないといけないの?」 「そういうことになるな。俺は今日から女子大生だ」 「もうおにいちゃんの馬鹿!」  楽天的な兄に対して憤りをみせる妹だった。  しかし、それ以外に生きる道はなかった。  元に戻るまでは、それぞれがそれぞれの身体に相応しい生活を続けるしかないのだ。  こうして数年の時が過ぎ去った。  あれから入れ替わりが解けて元に戻るかも知れないと思ったが……。  どうやら、静香は重雄として、重雄である自分は静香として生涯を生きていくこと になったようだ。  もはや元には戻ることのできないであろう不可逆的な事態が発生したからだ。  妊娠したからだ。  あれから結局、俊彦はすべてを許してくれ、結婚してくれたからである。  幼馴染みであり無二の親友との交友を絶つことはできなかったようだ。  俊彦にとって静香という女性は、その心は無二の親友であり、その身体は恋焦がれ た相手である。  見捨てるわけにはいかない。  そう考えたに違いない。  二人は結ばれ、そして静香の身体のままで妊娠した。  俊彦と静香の血の繋がった子供の存在は、まさしく「子はかすがい」であって、二 人の関係を解消することのできないことを決定的にした。  では、本当の静香である重雄はというと……。  最初は嫌がっていたが、会社で働くことにも慣れ、結構女性からももてることもあ って、意外にもその生活をエンジョイしているようであった。 「一番は、何と言っても、生理から解放されたことだな。毎月毎月やってきて、生理 痛や頭痛に悩まされるし、身体は重くて毎朝起きるのが辛かったよ。便秘にもなるし よ。今は、何もかもが快適だ。快食・快眠・快便だぜ。いつでもどこでも、立ちショ ンができるしな。あははは!」  と、男言葉で、事も無げに言ってのける。  はまってるじゃなかいか。  こっちも専業主婦として、それなりに楽しい生活をしているけどね。  まあ、ともかく。  静香と重雄、そして俊彦と、それぞれがそれぞれに楽しく生きているよ。  これもまた、人生の一つだと思うよ。  ほんとに……。  了
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2018年9月27日 (木)

銀河戦記/鳴動編 第二十三章 新提督誕生 III

第二十三章 新提督誕生

                III  オーギュスト・チェスター先任上級大佐(艦隊副司令)  ゴードン・オニール上級大佐(第一分艦隊司令)  ガデラ・カインズ大佐(第二分艦隊司令)  ルーミス・コール大佐(艦政本部長)  パトリシア・ウィンザー大佐(艦隊参謀長)  レイチェル・ウィング大佐(情報参謀長)  ディープス・ロイド中佐(旗艦艦隊司令)  以上が、第十七艦隊を支える大佐達である。  なお上級大佐及び先任上級大佐は階級ではなく職能級である。あくまで階級は大佐 であるが、職能給が追加支給されているし、艦隊内においては一般大佐級に対して事 実上の上官待遇にある。功績点において准将への昇進点に達し、かつ査問委員会にお いて次期将軍に推挙・承認されていることが任官の条件になっている。これは将軍ク ラスに定員制度があり、どんなに功績を挙げても定員による頭ハネ、昇進できないた めの士気の低下を防ぐために設けられた制度である。通称的に副将として呼び習わさ れている。  またディープスは、新生第十七艦隊の再編成と同時に大佐に昇進することが内定し ている。  アレックスはパトリシアに参考意見を求めてみた。 「後任の艦隊司令官だが、君なら誰を推薦する?」 「新任で作戦参謀の私やウィング大佐は論外として、艦隊再編成時に単身移籍してき たコール大佐も外れるでしょうね」 「ま、彼は長年政務担当を専門でやっているからな。艦隊を指揮させるには不適当 だ」 「やはり、実戦部隊を配下に持っているチェスター・オニール・カインズからですね。 順番からいきますとチェスター大佐ですが定年間近ということから勧奨退職が慣例と なっております。となるとオニール大佐が一番適当ということになります」 「慣例でいけばな」 「はい。一番妥当な線ではあります」 「カインズだって、私が特別推薦すれば准将になれる場合もあるしな……」 「オニール大佐を差し置いてですか?」 「ゴードンには、独立遊撃艦隊を与えることも考えている。以前の私みたいね。奴は 人の下に置かれるよりも、自由気ままに行動させた方が、その能力を存分に働かせら れるタイプだ。これまでは気のおける親友ということで、私の下でも存分に動いてく れたが、これからはそうもいかないだろう」 「それはいい考えですね」  パトリシアの意見通りにゴードンを推挙すれば、統帥本部もすんなり認めることで あろう。しかし……順番通りにチェスターでは、なぜいけないのか。と、アレックス はふんぎりがつけないでいた。  チェスター大佐は、現在五十九歳で定年まで僅か一年しかない。将軍となれば定年 は六十五歳まで延長されるとはいえ、それでも六年の在位でしかないことになる。艦 隊司令官が交代した時、将兵の末端まで新司令官の考えや人となりが理解され、意志 疎通ができるまでには数年はかかるだろうし、いざこれからというときにはもう定年 間近で次の後継者を考えねばならないというのでは……。  仮に年齢や現在の功績点などを一切考えずに、二人を天秤に掛けた時どちらが艦隊 司令官にふさわしいだろうか。いや、この結論はいうまでもない、絶対的にチェス ター大佐が選ばれるのが当然である。戦いを勝利に導く戦術能力はゴードンの方が勝 っていることは確かであるが、反面作戦を強引に推し進めて反感を買うことも多い。 その正反対をいくのがチェスターである。  有り体にいえば、ゴードンは戦艦を動かすことを考えて乗組員を従わせるが、チェ スターは乗組員を動員してから戦艦を動かすことを考える、という考え方の違いであ ろう。  作戦能力には猛るが作戦を強引に推し進めて退くことを省みないこともある若いゴ ードンと、老練で隙のない布陣を敷いて慎重に戦いつつ将兵達には温情をもって人望 熱いチェスター。  第十七艦隊を構成する部隊は、連邦軍より搾取した艦船と敗残兵や士官学校を繰り 上げ卒業した将兵など、はっきりいって寄せ集めの混成艦隊というのが、その実情で あった。そんな将兵達がなんとかこれまでついてきたのは、アレックス・ランドール 提督という英雄の存在と、数々の功績を上げて部下共々昇進してきたという餌が目の 前にぶら下がっていたからである。  将兵達が、これまでのように作戦指令に従って行動するかは、新司令官の裁量にか かっているといえる。ゴードンではどうか……少なくとも彼が育て上げたウィンデ ィーネ艦隊は問題ないだろうが、ライバル関係にあるカインズ配下のドリアード艦隊 やチェスターが連れてきた旧第五艦隊の面々が反目することは目にみえている。  ゴードンとカインズというライバル関係にある二人の競争心を煽ることによって、 結果として多大なる戦功を重ねてきたのであるが、二人が率いる分艦隊全体までが一 種の派閥と化して相容れない関係に近くなってきていることも事実であった。これま ではそれぞれに分艦隊を任せることで、人間関係の軋轢を回避できたのであるが、ど ちらかが艦隊司令官に選ばれるとなると、いっきに問題がこじれてくるであろう。  その点チェスターならば、移籍組みであり中立的位置にあったことと、温厚派で人 望もある。 「結局の問題は、年齢だけなんだよな」
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2018年9月26日 (水)

性転換倶楽部/静香の一日(八)その時

 静香の一日

(八)その時 「ちょっと! 待ったあ!!」  突然。  玄関の方で叫び声がした。  なんだ?  声のした方を見やると……。 「お兄ちゃん! なにやってるのよ」  そこには息を荒げた重雄が立っていたのである。  いや違った。  重雄の姿をした、たぶん……静香なのだろう。  鍵を掛けていなかったのか?  俊彦のどあほう!  これから、しようという時に……。  鍵ぐらい掛けておけよ。 「あたしが気絶しているのをいいことに、好き勝手なことされたらたまらないわ」 「お、おまえ。自分がどういう状況なのか判っているのか?」 「判りすぎるくらいに判っているわよ。お兄ちゃんとあたしが入れ替わってしまった ことをね」 「し、しかし。どうやって、ここが判ったのだ。知らないはずだろう」 「それくらい、判るわよ。元々その身体はあたしのもの。意識を集中すれば、どこで 何をしているか判るのよ。テレパシーね。それをたどってここを嗅ぎつけたわけよ」 「嘘を言うな。それだったら、俺にだっておまえのことが判ってもいいだろう。後を 付けている事など、少しも感じなかったぞ」 「それはお兄ちゃんが、こんな風なよこしまな気持ちを抱いていたからよ」  それもそうかも知れない。  静香は精神集中して自分の身体のことを念じていたのに、こっちは俊彦とやること ばかりしか考えていなかった。  その違いが現れたようである。 「とにかく、あたしの身体を返してよ」  と言われてもなあ……。  階段から転げ落ちてこうなってしまったのだ。  性転換機とかで精神を入れ替えたと言うのなら元に戻せるかも知れないが、奇跡と いうか偶然だったのだ。  返せと言われても手段が判るはずもない。  正直に訳を話して聞かせてやる。 「ほ、本当に知らないの? お兄ちゃんが何かして、入れ替わったんじゃないの?」 「知るわけないだろ」 「性転換薬とかを飲ませたのじゃないの?」 「そんな便利なものがあったら、製薬会社を起こして一儲けしているよ」 「ほんとに偶然なの?」 「何度も言わせるなよ」 「じゃあ、じゃあ。一生、このままということもある?」 「十分ありうるな」 「お兄ちゃんはなんとも思わないの?」 「なってしまったものはしようがないしなあ……。俊彦と結婚できるならそれもいい かも知れないと考えていたところだ」 「そ、そんなこと……」  おっと、俊彦の名前が出て、一人蚊帳の外にしていたことを忘れていた。  静香が来てしまった限りには、正直に話すしかないだろう。  その当の本人は……。  ぽかんと口を開けた状態で呆けていた。 「済まん、俊彦」  頭を下げて謝るしかなかった。 「わけを話してくれ。俺にはなにがなんだか、さっぱり訳が判らない」  そりゃそうだろうな。  いざこれならいいことをしようとしていた寸前に、兄である重雄こと本物の静香が やってきて、入れ替わりだの身体を返せなどと口論をはじめたのだから。  訳を話して聞かせてやる。 「そうか……。今までの静香は、重雄だったのか。どうりで……」  それだけ言うと、暗く押し黙ってしまった。  プロポーズを受け入れてくれて、その寸前までいったのが、実は親友である重雄の 策謀だった。 「す、済まない。本当に、悪かった。しかし、それもこれもおまえと静香の将来を思 ってのことだった」  すべては俊彦のためにやったこと。  それだけは信じてもらいたかった。  本当に悪気はなかったのだ。  しかし……。  俊彦を裏切り、その心を弄んでいたとも言えないだろう。 「悪いが、帰ってくれないか……」  重苦しい声で一言。  何をも拒絶する言葉だった。  これ以上、ここにいれば俊彦を苦しめるだけだ。  ともかく、しばらくは冷却期間を置くしかないだろう。  もしかしたら、これは永久の友との別れになるかも知れないが、すべては自分の責 任である。 「判った……」  床に散らばる下着やスーツを拾い集めて再び着込み、黙って俊彦の部屋を退出した。  言い訳はしない。
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2018年9月25日 (火)

銀河戦記/鳴動編 第二十三章 新提督誕生 II

第二十三章 新提督誕生

                 II  食堂に入ってくるアレックス達。 「何だ、これは?」  食堂内で起こっている騒動に目を丸くしている。 「喧嘩ですね」  中央部で幾人かの隊員がくんずほずれつの喧嘩を続け、周りの者がはやし立ててい た。 「みんな元気だな」 「何言ってんですか、提督! 喧嘩を止めないのですか?」 「いいじゃないか、やらせておけよ。途中で止めたほうが後々しこりが残るものさ。 さあ、こっちは食事をしようじゃないか」  と言いながら、喧嘩には見向きもせずに、背を向けて配膳台の方へと歩いていく。 「今日も料理長お勧め料理ですか?」 「ああ、時間がないのでね」  いつもはメニューを見ながらゆったりと食事をするのだが、タルシエン要塞のこと で目が回るほどの忙しさだったのである。造り置きされてあるお勧め料理なら、待た されることなくすぐに食べられる。  騒動の中にあってアレックスに気が付いた者がいた。  会議に遅刻して便所掃除を言いつけられた、あのアンドリュー・レイモンド曹長だ った。 「全員、気をつけ!」  食堂の隅々に届くような、大声を張り上げる曹長。  喧嘩していた者達も、思わず静止して声のした方に振り向いている。 「て、提督?」  全員がアレックスの姿に気が付いて動きを止め、一斉に敬礼を施した。 「何だ……。止めたのか」  しようがない……といった表情で、膳をテーブルに置き、席に着くアレックス。  レイモンド曹長が、アレックスの前にやってくる。 「提督」 「喧嘩していた者を、前に並ばせろ」 「はっ!」  敬礼して、喧嘩していた者達のそばに駆け寄る曹長。  その間に別の隊員が、アレックスの前にあるテーブルをどかせていた。 「おまえら、提督の前に整列しろ」  立ち上がってアレックスの前に整列する隊員。  怪我して立てない者には肩を貸して立たせている。 「悪いな、忙しい身でね。食事を取りながらにさせてもらうよ」 「お食事を取りながらでも結構です。どうぞ、ご質問を」  誰しもがアレックスの超常的な忙しさを理解していた。  じきに戦闘だという時に、「昼寝する」と言って部屋に戻ったこともある。食べら れる時に食べ、眠れるときに眠る。そんなアレックスを、誰も責めることも邪魔をす ることもしなかった。 「うん……おお、これ旨いな」 「提督!」  皆が緊張して、アレックスの言葉に耳を傾けている。この場を和ませる、冗談とも とれる発言は通じないようだった。 「外したか……。ジェシカ、頼む」 「なんで、わたしが?」 「君が一番の適任者だからな。こういうのは得意だろ」 「もう……」  ぶつぶつ言いながらも整列している隊員の前に歩み出るジェシカ。 「それで、喧嘩の原因は何ですか?」 「はっ! 第十七艦隊の次期司令官は誰かと言うことでした」 「なるほど……。つまり、チェスター大佐かオニール大佐かということですね」 「その通りです」 「で、殴り合いの喧嘩になったってわけですか」 「はい」 「次期司令官を決めるのは提督です。将兵達の全員に公平に昇進の機会を与え、士気 の低下とならないように心砕いています。それをないがしろにして勝手な判断をし、 士気の混乱を招く喧嘩をするというのは、提督に対する冒涜以外の何ものでもないと 思いますが、違いますか?」  言葉に詰まる将兵達。  一言一言がその胸をえぐった。 「喧嘩をするほど力が有り余っているのなら、その情熱をもっと前向きな力となるよ うに努力し、艦隊の糧となるようにしないのですか?」  そして周囲を見回しながら、 「喧嘩を眺めていた他の人たちも同罪です。なぜ止めなかったのですか? あまつさ え喧嘩をあおるような言動をするなどは、同じ艦隊に所属する者として情けない限り です。提督を慕い、提督の下に集った仲間じゃなかったのですか? 何度も死にそう になった局面を共に戦い、切り抜けてきた同じ第十七艦隊の同士じゃなかったのです か? 一人一人が提督の言葉を信じ、共に生きるために心を一つに結束しなければ、 素晴らしい明日はやってこないのです」  静まり返っていた。  誰しもが、その言葉に意味する熱い思いを理解していた。 「その辺でいいだろう。ありがとう、ジェシカ」  食事を終えて立ち上がるアレックス。 「レイモンド曹長」 「はいっ!」 「後のことは、君に任せる」 「私がですか?」 「そうだ。騒動を起こした者には罰を与えねばならない。君の思うとおりに処罰した まえ。便所掃除でも何でもいいぞ」  くすくすという笑い声が聞こえた。 「提督……」  赤くなるレイモンド。 「その前に、医務室で治療を受けさせたまえ。以上だ、全員解散しろ」  そう言うなり、膳を持ち上げて回収台の方へ歩いていく。 「総員、提督に対し敬礼!」  一斉の敬礼を受けながら、食堂を退室していくアレックス。 「おらおら、聞いたとおりだ。さっさと医務室へ行きやがれ」  喧嘩をしていた者の尻を引っ叩くようにして、移動を促すレイモンド。  食堂を出て通路を歩くアレックス達。 「君達、食事はいいのかね?」 「血を流していた者もいましたからね。食欲が湧きませんし、あの状態で食事はでき ませんよ」 「そうか……自分だけ食事して、済まなかったね」 「いえ」 「何にしても早急に、次期艦隊司令官を選定しないと、他の艦でも同様の事態が起き るのは、避けられないだろうな」 「そうかも知れませんね」 「難しい問題だよ。これは……」 「提督……」  アレックスが今なお、次期艦隊司令官の選出に苦慮していることを知っているパト リシアとジェシカだった。  アレックスが抱えている最大の問題。隊員同士が喧嘩をするほどの次期艦隊司令官 選出は、早急に解決しなければならなかった。
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2018年9月24日 (月)

性転換倶楽部/静香の一日(七)欲情のままに

 静香の一日

(七)欲情のままに  部屋に上がる。  意外ときれいにかたずけられていた。  そうそう、それでいいんだ。  静香とデートするようになってから、忠告してやったんだ。 「いつどこで自宅に誘うような事態になるかも知れないだろう。その時のために、部 屋は常にきれいにしておけ、家に帰ったら必ず窓を開けて換気しろ。部屋に入ったと たん、散らかりっぱなしで異臭を放っているなんて状態だったら、普通の女だったら、 一発で振られるぞ。それから布団も毎日上げ下ろしして日曜日には日に当てて乾燥さ せろ。そしてデートの日には、清潔な状態で敷いておくんだ。部屋に入ったら布団が 敷いてあるのが目に入るというシチュエーションが大切だ。やろうしてから布団を敷 くのは、いかにもという感じで興ざめしてしまうだろう? 間違っても布団を敷かず に畳の上でやるなよ。下になって男の重い体重でのしかかられて長時間していたら、 女は背中が痛くてしようがないだろう?」  とまあ……いろいろとレクチャーしたのだった。 「静香さん!」  いきなり覆いかぶさってきた。  おおっと、これは反則だよ。 「ちょ、ちょっと待って」 「ごめん。もう我慢できないんだ。結婚するんだから、いいよね」  好きな女性から誘われたら、男なら誰だってその気にならないはずはない。  喫茶店からここまでの間、ずっとはやる気持ちを押さえ続けていたに違いない。  そして部屋にたどり着いて、理性のタガが外れてしまったというところであろう。 「ああ、静香。好きだ!」  誘ったのはこちらである。  抵抗するにはおよばない。  俊彦に着ている服を次々と脱がされていく。  まあ、いいか……。  それにしても……。  女の快感って、どんなものかな……。  男なら射精すれば誰でも100%と言ってもいいくらいの快感がある。  それだからこそ、男は女を求める。  そして結果としての子孫繁栄に貢献? しているのである。  女はどうなのだろうか?  良く気絶して果てるなんてAVとかがあるが本当なのだろうか?  …………。  ああ、もうどうでもいいや。  考えたって判るものか。  これから  あ!  コンドームを忘れているぞ。  こいつがコンドームを持っているわけないしな。  危険日じゃないだろうな?  生理日がいつだったかも判るはずもないし……。  下手すりゃ妊娠するかも知れないな。  今更中止するわけにもいない。  もちろん買いに行くなんて馬鹿なことしてるわけにもいかんぞ。  男はやってしまえば後は野となれ山となれだ。  しかし女は……。  終わってからが問題なのだ。  女には常に妊娠という問題に直面する。  女になってそうそうの、はじめて直面する問題だった。  どうする、どうする?  ええい!  構うものか。  どうせ結婚するんだ。  子供ができてもいいじゃないか。  静香を俊彦と結ばせておくにはその方が好都合かもしれない。  できちゃったら、別れるに別れられないだろう?  しかし本当に元の身体に戻れるのか?  一生この静香のままでいることもありうるんだぞ。  しようがない。  その時はその時だ。  自分がまいた種は、自分で刈り取るしかない。  最後まで面倒みるしかないだろう。  こいつの妻として、そして母親として生きるのも運命かもしれないじゃないか。  静香との結婚の条件に、 「いいか。静香はやる。しかし共働きしなければならない生活状況はだめだぞ。専業 主婦として働かずに育児に専念できるような収入を確保しろ。それができないなら静 香はやれないぞ」  というものを出したが、きっぱりと答えたものな。 「絶対に静香さんを幸せにしてやります。共働きはさせません!」  俊彦の性格は知り尽くしているから、嘘をついているとは思えなかった。  なんて考えているうちに……。  とうとう全部脱がされていた。 「静香、いいんだよね」  考えてもしようがない。  この際だ。  とことん、女を味わってみようじゃないか。 「ええ……」  こっくりと頷いてみせる。  やがてゆっくりと俊彦が重なってくる。
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2018年9月23日 (日)

銀河戦記/鳴動編 第二十三章 新提督誕生 I

第二十三章 新提督誕生

                 I  シャイニング基地通信室。  暗がりの中、壁面に並ぶパネルスクリーンに一人一人の審議官が映し出されている。  部屋の中央に一人、直立不動でいるのはアレックスであった。 「……それでは、先の軍法会議にて裁定された通りに、貴官に少将の官位を与え、第 八師団タルシエン要塞司令官、並びにシャイニング基地、カラカス基地、クリーグ基 地を統括するアル・サフリエニ方面軍司令官に任ずる」 「はっ! ありがとうございます。謹んでお受けいたします」 「なお、タルシエン要塞においてはフランク・ガードナー少将率いる第五師団の司令 部を併設することとする」 「了解しました」 「また貴官の昇進に際し、第十七艦隊の後任として貴下の武将の准将への昇進と艦隊 司令官の任官を承認するものとする」 「ありがとうございます」 「なおいっそうの精進を期待したい。以上である。ご苦労であった」  パネルスクリーンが一斉に閉じて真っ暗になった。 「提督、おめでとうございます」  部屋の照明が灯されて、パトリシアとジェシカが歩み寄ってくる。 「ありがとう」  部屋を出る三人。  通路を歩きながらパトリシア。 「これでやっと自由の身ですね」 「ああ、そうだな」  これまでのアレックスは、軍法会議の審議預かりの身だった。  第十七艦隊司令官という地位はすでに解任されており、タルシエン要塞攻略のため に仮に与えられていたのである。 「タルシエン要塞はどうなっているか」 「ケースン中佐、コズミック少佐、そしてジュビロ・カービン……さんでしたっけ?  その三人でシステムのチェックを行っています。あれだけ巨大な要塞ですから、コ ンピューターシステムを総取替えするわけにもいかず、そのまま利用させてもらうし かありません。現在、コンピューターなどの使用マニュアル作成や、ウィルスが潜ん でいないかとか日夜不眠不休で取り組んでおります」 「またレイティーのぼやきを聞かされそうだな」 「でもちゃんとやってますよ。ぶつくさ言ってますけど」 「しかし、ジュビロさんのことですが……。民間人に軍のコンピューターをいじらせ ても大丈夫なのでしょうか?」 「最高軍事機密ということか?」 「はい……」 「確かにそうかも知れないがね。仮にジュビロを引き離したところで……いや、何で もない。協力してもらえるのならそれでいいじゃないか。責任は私が取る」  そう……。  闇の帝王とさえ言われる天才ハッカーに掛かれば、要塞のシステムに介入すること など容易いだろう。いずれ要塞のコンピューターは本星の軍事コンピューターネット に接続されることになる。つまりジュビロを隔離しても無駄なことだ。 「提督がそうおっしゃられるのなら構いませんが」 「何にしても、あれだけ巨大なシステムだ。一人でも多くのシステムエンジニアが必 要だ」 「それはそうですけどね」  基地の食堂。  昼休み時間、多くの将兵が食事を取っている。  話題は、もちろんタルシエン要塞陥落についてである。 「とうとう要塞を落として、連邦にも逆侵攻できるようになったというわけだな」 「そう簡単にいかないさ。タルシエンの橋の片側を押さえただけじゃないか。もう片 側の出口も押さえないと侵攻は無理だよ」 「それにしても、うちの提督はすごいよな。誰も成しえなかったあの要塞の攻略を、 ほんの数日で成し遂げちゃうんだもんな」 「だってよお、士官学校の時からずっと作戦を練っていたっていうじゃないか。当然 じゃないのか?」 「作戦立案者のレイチェル・ウィング少佐とパトリシア・ウィンザー少佐は、二階級 特進らしいぜ」 「つうことは大佐か?」 「一体、大佐は何人になるんだ? ディープス・ロイド中佐も大佐昇進が内定してる んだぜ」 「多すぎることはないだろう。何せタルシエン要塞というものがあるんだ。要塞司令 官とか、駐留艦隊司令官とか、いくらでもポストはあるだろう」 「なあ、第十七艦隊だけどさあ。次期司令官は誰だと思う?」 「ううん、どうなんだろうね」 「現在、司令官は空位なんだろ?」 「ああ、軍法会議でランドール提督は司令官の地位を剥奪されたらしいからな」 「やっぱり、艦隊司令官となれば俺達のオニール大佐だな」 「当然だな」  頷く隊員達。 「おい、おまえら!」  食事をしていた隊員たちを取り囲むようにして、別の一団が立っていた。  仁王立ちと言ったほうがいいだろう。 「今言ったことを、もう一度言ってみろ」 「はん? 何だおまえら」 「こいつら、チェスター大佐配下の連中だぜ」 「ああ、副司令官のか」 「聞こえなかったのか。先ほど言ったこともう一度言え!」 「何をすごんでるんだよ。ああ、言ってやるぜ。次ぎの艦隊司令官はゴードン・オ ニール大佐だよ」 「その、根拠はなんだ?」 「知らないのか、退役間近な大佐はいかに功績を上げて昇進点に達していても、将軍 にはなれないんだよ。勇退して後進に道を譲ることになってんだよ。慣例だよ」 「そうそう。たとえ司令官になっても、すぐまた退役じゃしようがないだろ」 「つまり、俺達のオニール大佐が司令官になるに決まってるってこと」 「ふざけるな!」 「まだ発表もされていないのに、勝手に決めるんじゃねえ」 「だから、決まってるも同然だと、言ってるんだよ。馬鹿か」 「なんだと!」  ついに口喧嘩から殴り合いにまで進展してしまう。 「やれやれ!」  野次馬達が囃し立て、喧嘩がやりやすいようにテーブルを片付けていく。 「どっちも負けるなよ」
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2018年9月22日 (土)

妖奇退魔夜行/蘇我入鹿の怨霊 其の拾

陰陽退魔士・逢坂蘭子/蘇我入鹿の怨霊 其の拾(土曜劇場)

(拾)四天王寺  土御門神社を訪れる意外な人物があった。  摂津陰陽師の総帥である土御門春代を頼ってのことだった。  蘭子とも顔なじみの四天王寺の住職であった。  四天王寺は、蘭子の幼少期の遊び場であり、悪戯したりして住職からちょくちょく叱 られていたものだった。 「蘭子ちゃん、大きくなったねえ」  と、頭をなでなでされそうになるが、丁重にお断りした。 「で、四天王寺の住職が何用かな」  春代が要件を切り出す。 「実は、四天王寺の七星剣が盗まれたのです」 「七星剣?」 「そうです」 「それって、東京国立博物館に寄託されているのでは?」 「表の七星剣は……です」 「表……?では、裏があったということですか?それが盗まれたと」 「その通りです。家や車の鍵は必ず二個作成されますよね。それと同じで、祭祀を執り 行うに不可欠な神器も、万が一の紛失や破損に備えて予備を作ったとしても不思議では ないでしょう」 「なるほど……」  ここでちょっと四天王寺についておさらいをしておこう。  仏教では、六道(地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人間界・天上界)という世界観 があり、地獄界から人間界を欲望渦巻く欲界という。  その上位である天上界にも(竹自在天・化楽天・兜率天・夜魔天・とう利天・四大王 衆天)という六欲天がある。織田信長が自称したといわれる「六欲天の魔王」、その六 欲天である。  とう利天、須弥山頂上に住む帝釈天に使え、八部鬼衆(天龍八部衆とは違う)を所属 支配し、その中腹で伴に仏法を守護するのが四天王(持国天・増長天・広目天・多聞 天)である。   *とう利天のとう(Unicode U+5FC9)は、りっしんべん+刀と書く。  『日本書紀』によれば仏教をめぐっておこされた蘇我馬子と物部守屋との戦いに参戦 した聖徳太子は、四天王に祈願して勝利を得たことに感謝して摂津国玉造(大阪市天王 寺区)に四天王寺(四天王大護国寺)を建立したとされる。(後、荒陵の現在地に移 転。)  四天王寺は度々の戦乱・災害で焼失しその度に再建されている。織田信長の石山本願 寺合戦、大阪冬の陣、直近では大阪大空襲。落雷や台風などの被害も多かった。  四天王寺の東側にある宝物館。  ここには一般公開されていない、住職だけが知っている秘密の地下宝物庫があった。  住職に案内されて、その扉の前に立つ土御門春代と蘭子。  その扉が呪法の結界によって封印されていることが、二人には一目で分かる。  一般人には、そこに扉があることなど分からないように、巧妙に隠されている。 「秘密の宝物庫です」 「なるほど」  住職が封印解除を行い、その重い扉を開く。 「この扉の封印が何者かによって解かれていることに気づきました」 「陰陽師か、それとも妖魔の仕業?」 「それは分かりませんが……その日境内の防犯設備の電源が切られてしまったのです」 「防犯設備がですか?」 「はい。電源を操作した者と、宝物庫に侵入した者は別人かと思われます」 「複数の人間による盗難事件というわけですか?」 「そうでなければ、こうも簡単に宝物が奪われるわけがありません」  永年もの間閉ざされていた宝物庫の空気は、重苦しく淀んでいた。  薄暗い照明の中を進んで行くとガラスで隔たれた飾り台があり、紫色のビロードが敷 かれた上に太刀掛け台が置かれていた。 「ここに七星剣が飾られていました」  太刀掛け台には剥がされたと思しき呪符の切れ端が残っていた。
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2018年9月21日 (金)

性転換倶楽部/静香の一日(六)俊彦の部屋へ

 静香の一日

(六)俊彦の部屋へ  ともかくも席を立って喫茶店を出る。  雪の降り方はさらに勢いを増していた。  本降りだ。 「今夜は積もるわね」  何気なく呟いてみせる。 「そ、そうだね」  それから駐車場へと向かう。  俊彦の愛車はごく普通の軽自動車だ。  以前の俊彦は車検の度に車を、それもガソリンを馬鹿食いする外車を次々と買い換 えていたが、静香と交際するようになってからは、燃費が良く車検なども安いこの軽 自動車に乗り換えて、その後はずっとこの車を乗り続けている。  もちろん指輪を買うためである。  結婚式のための貯金もはじめていた。  だから遊ぶための資金はほとんどゼロに近かった。車を買い換える余裕などない。  それだけ真剣に静香との結婚を考えているからだ。  車に乗って俊彦のアパートへと一路向かう。  途中でガソリンスタンドに立ち寄った。  タイヤチェーンを買うためである。  それに雪道はやたらと燃料を消費する。  明日は日曜日で車を使わなくても、翌月曜日には裏道はアイスバーン状態となって いるはずだ。  念のためにも満タンにしておこうというつもりだろう。 「失礼します。灰皿はよろしいですか?」  俊彦はヘビースモーカーである。  車に備え付けの灰皿は吸殻で一杯になっていた。  こりゃまあ……。煙草の本数を減らすように言っておいた方がいいな。 「お願いします」  灰皿を外してスタンドマンに渡す。  灰皿を外している最中にも、スタンドマンの視線が、ミニのタイトスカートから覗 く太ももに注がれているが判った。 「窓をお拭きします」  スタンドマンが窓ガラスを拭き始めたが、あいも変わらず時折ちらちらと足元を見 ている。 (まあ、気持ちは判るけどね)  叱り付けてやろうかとも思ったが、スタンドでアルバイトしたこともあって、その 大変さは身に沁みているので、許してやろうと思う。  やがて俊彦が運転席に戻ってくる。 「だめだったよ。タイヤチェーンを買おうとしたんだけど、売り切れた後だった」 「仕方がないわね」  当たり前だよ。雪が積もりそうなんだから、持っていない誰もがチェーンを買いに くるさ。 「温かいコーヒーを買ってきた」  と缶コーヒーを手渡してくれる。 「あったかい!」  暖房の効いた車内は乾燥して喉が渇く。  温かいことよりも水分が補給できるほうがありがたかった。  そうこうするうちに俊彦のアパートのそばの駐車場にたどり着く。  駐車場に車を停め、アパートへ向かう。  あいも変わらず雪は降り続けている。  空を仰いで、 「この様子じゃ、一晩中降り続けるみたい……」  と呟くように言う静香。 「そうだね……」  もちろんその意味が判らない俊彦ではないだろう。  階段を昇って俊彦の部屋へ。
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2018年9月20日 (木)

銀河戦記/鳴動編 第二十二章 要塞潜入! V

第二十二章 要塞潜入!

                 V  要塞内、中央コントロール。 「誰が、軍港を開放した!」 「判りません。勝手に開いてしまいました」 「そんな馬鹿なことがあってたまるか」 「敵艦隊が軍港に侵入してきます」 「駐留艦隊に迎撃させろ!」 「だめです。駐留艦隊は、休息待機でほとんどの兵士が降りています。動かせませ ん」  スクリーン上には、軍港に接舷した強襲艦から怒涛のように白兵の戦士達が飛び出 してくる映像が映し出されていた。 「要塞内の警備隊に侵入する奴らを撃退させろ」 「そ、それが外部との連絡が取れません!」 「なんだと?」 「軍港に通ずる遮蔽壁も作動しません」 「システムが……システムが乗っ取られています」 「乗っ取りだと?」 「おそらく中央制御コンピューターに何者かが侵入して操作しているものと思われま す」 「何てことだ! さてはあの時に侵入したのか!」  第二弾の次元誘導ミサイルが隔壁を破砕した時のことを思い出したのだ。 「あの不発弾の中に潜んでいたのか……」  地団太踏んでくやしがる司令官。 「こうなったら要塞を自爆させる」 「無駄ですよ。システムが乗っ取られているんですから」 「やってみなけりゃ、判らないだろう」  胸ポケットから鍵を取り出す司令官。  それを自爆用のシステム起動装置に差し込んで、自爆コードを入力する。 「どうだ?」  鍵をゆっくりと回すと、正面スクリーンにカウントダウンの数字が表記された。 「自爆コードが入力されました。これより60秒後に自爆します」  コンピュータの合成音が発声される。 「59・58・57……」 「み、見ろ。やってみなけりゃ判らんといっただろう」 「43・42……」  カウントダウンが続いている。  息を呑んでそれを見守るオペレーター達。  誰も動かなかった。  所詮60秒では逃げ出せないと判っているからである。 「10・9・8・7・6・5・4・3・2・1」  大半のオペレーターが目を瞑った。  しかし、何も起きなかった。  爆発どころか、コンピューターも静かになっている。 「どうしたというんだ……」  ほっと胸を撫で下ろすオペレーター。  遮蔽壁が開いて、白兵の戦士達がどっとなだれ込んできたのはその直後だった。 「全員、手を挙げろ!」 「席を離れて壁際に並ぶんだ」  銃を構えられ、仕方なく手を挙げ席を離れて、壁際に移動するオペレーター達。  やがてゆっくりとゴードンが入室してくる。 「要塞は、すでに我々の手に堕ちた。あきらめたまえ」  肩をがっくりと落とす司令官。  タルシエン要塞陥落の報が、全世界に流されたのは、それから二時間後だった。 第二十二章 了
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2018年9月19日 (水)

性転換倶楽部/静香の一日(五)プロポーズ

 静香の一日

(五)プロポーズ  再び喫茶店にもどる。  俊彦がポケットに手を差し入れながら、 「実は……。受け取ってもらいたいものがあるんだ」  と切り出した。  それがエンゲージリングだと言う事は知っているが、 「あら、何かしら」  とぼけた表情で尋ねてみる。 (やっと、決心したか)  小包を差し出し、その蓋を開けて中の指輪を示した。 「指輪?」 「け、結婚してくれないか?」  言った!  ついにプロポーズした!!  しかしすぐに答えては配慮が足りない。 「ん……」  じっくり考える素振りを見せて、やがて尋ねる。 「浮気しない?」  まあ、俊彦が浮気するような男ではないのは良く知っているが、静香として一応は 尋ねておくべきだと思った。 「し、しません!」 「絶対に?」 「絶対です」 「そう……」  さらに悩んでいる素振り。  そして切り出すのだ。 「いいわ。結婚してあげる」 「ほ、本当に?」 「ええ、本当よ。その指輪を」  と、そっと左手を差し出した。 「え? あ、ああ……」  俊彦は指輪を取り出して、その左手の薬指にはめる。  緊張して手が震えている。  ピッタリだった。  そりゃそうだろう。  前もってサイズを聞き出して教えてやったのだから。  薬指にはまった指輪を手をかざして見つめてみる。  細くて白い指先に、小さなダイヤが輝いていた。  婚約指輪としては決して高価なものではないが、これでも安月給の俊彦がこの日の ために、飲み会の誘いを断って貯金をし、半年の給料分を注ぎ込んだのである。精一 杯の真心といったところである。  思い起こしてみれば、ここまでに至るには結構苦労したのだ。  俊彦は結構奥手なところがある。  自ら進んで女性と交際しようとはしなかった。  それだからとピンクサロンとか誘って、女性との経験を与えてやったのだが。  それでもなかなか交際できるような女性には恵まれなかった。  しようがないということで……。  妹の静香を紹介してやったのだ。  デートとかもこちらでセッティングしてやったものだった。  それで、どうやら一目惚れしてしまったらしい。  ある日突然に、 「静香さんと結婚させてくれ」  と告白したのだった。  そして今日の日を迎えた。 「場所を変えない?」  計画の第一段は無事に済んだ。  次は第二段である。  本当ならここからホテルへ誘い込んで……。  と行きたいが、この雪だ。  俊彦の車のタイヤはノーマルだし、タイヤチェーンも積んでいなかったはずだ。  下手すりゃ、帰るに帰れなくなって、ホテルに缶詰状態になってしまう。 「あなたの家、見てみたいわ」  俊彦はアパートの一人住まいである。  家族とかの心配をする必要はない。 「この雪だし、帰れなくなるよ。タイヤチェーン持ってないんだ」 「明日は日曜日じゃない。休みなんでしょう?」 「そりゃそうだけど……」  静香の言葉の意味をしばらく考えているみたいだった。  明確にいえば、今夜は泊まっていくわ。  と言っているのである。  これが判らないほどの馬鹿ではないだろう。 「一人暮らしだろう? 恥ずかしいくらいに、散らかっているんだ」 「気にしないわ。男の人ならしようがないじゃない。結婚しようという男性の独身時 代の状況を知っておくのも、今後の参考になるでしょう?」 「そ、そうかな……」
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2018年9月18日 (火)

銀河戦記/鳴動編 第二十二章 要塞潜入! IV

第二十二章 要塞潜入!

                 IV  アレックス達が要塞潜入に成功し中央制御コンピューターに取り掛かっていた頃、 ゴードン率いる第六突撃強襲艦部隊は、要塞の索敵レーダー圏外で、出撃のチャンス を窺っていた。 「提督が潜入してどれくらい経つか?」  準旗艦ウィンディーネ艦橋から、P-300VX特務哨戒艇より送られてくる、要 塞の全景を見つめるゴードン。 「およそ三十分です」 「そうか……」  潜入成功を知らせる『赤い翼は舞い降りた』を受電し、配下の部隊に突撃準備をさ せて待機していた。  ゴードン配下の部隊の任務は、潜入部隊が北極及び南極のドッグベイを開くと同時 に、要塞内に突入して内郭軍港や反物質転換炉を押さえ、さらに中殻居住区にある中 央コントロールルームなどの主要施設を制圧することだった。  要塞攻略の主任務部隊となるわけであるが、北・南極が解放されなければ成す術も なかった。 「作戦待機時間は二時間だ。それまでに成功してもらわないとな」  潜入から二時間以上を経過した時には、第六突撃強襲艦部隊を含めて、第十七艦隊 は要塞攻略を断念し撤収する命令を受けていた。  いつまでも何もしないで要塞の外で待機しているわけにはいかないのだ。いずれ要 塞内に潜入したことが発覚し、手を打たれてしまう。  潜入部隊が密かに行動できるタイムリミットが二時間とされたわけである。 「しかし提督を残して撤収などできませんよ」 「だからといって、艦隊をみすみす全滅に追いやることもできないだろう」 「それはそうですが……」 「捕虜交換で戻ってこれる可能性もあるしな。こちらには先のシャイニング防衛の際 に捕虜にした、敵の大将のキンケルがいる。准将と大将との交換だ。相手も応じるか も知れないだろう」 「問題は、こちらがわの軍部の反応ですよ。果たして提督を助けますかね」 「また、軍法会議の時みたいにTVを利用するか?」 「そうそう何度も同じ手が使えるとは」 「何にせよ。参謀長殿がいい手を考えてくれるさ。或いは捕虜になった時の救出作戦 のことも、とっくに手を打ってるかも知れないしな」  旗艦サラマンダーにおいても、アレックスの無事と作戦成功を祈っていた。  時を刻む時計表示だけがむなしく進んでいく。  やがて一人のオペレーターが声を上げた。  「大佐! 北極が開いていきます!」  オペレーター達が一斉に声を出した方へ振り向いた。 「やったか!」  スクリーンを凝視するカインズ。 「続いて南極も開いていきます」  両極を閉じている分厚い装甲ハッチがゆっくりと開いていく。 「提督が両極を開け放したんですね」 「ああ、そうだとも」  パトリシアの方に見直るカインズ。  両手を合わせて唇に指先を当てて涙を流していた。  感激の余りに言葉に詰まり、指令を出せないでいる。  その気持ちが痛いほどに判るカインズだった。 「第六突撃強襲艦部隊が突撃を開始しました!」  勇躍、要塞に向けて進撃を開始する第六突撃強襲艦部隊がスクリーンに大写しにさ れる。 「よおし! 全艦、攻撃開始だ! 第六部隊を援護する」  パトリシアの指示を待つことなく、自らの判断で命令を下し始めた。  全艦一斉に砲撃を開始する第十七艦隊。  これまでの鬱憤を晴らすかのような猛攻撃である。 「フランドル少佐に連絡」  スクリーンにジェシカが出る。 「艦載機への補給状態は?」 『すでに完了して、全機発進させました。もうじきそっちに到着するはずです』 「さすが航空参謀ですな。手際が良いですね」 『一刻一秒を争いますからね。艦載機を遊ばせておくわけにはいかないでしょう』 「なるほどね。ああ、今到着したようだ」  スクリーンに敵守備艦隊への攻撃を開始した艦載機群が映し出されている。 『それでは、要塞の中で再会しましょう』 「判った」  通信が切れて、北南極へ突入していく第六部隊の映像に切り替わった。 「要塞の中で会いましょうか……」  ジェシカの言葉が確実性を帯びてきたことを認識するカインズだった。  パトリシアは後部座席に腰を降ろしたまま、フランソワに介抱されるようにただ黙 って俯いていた。 「所詮、愛する人に心砕くごく普通の女性と言うことだ……。これまでの緊張が一気 に解き放たれたというところだな」  神のような提督に比べれば、なんと人間性のあることか。返って親しみが湧いてく る。 「後のことは任せて、そこでゆっくり休んでいてくれたまえ」  提督やウィンザー少佐、そしてウィング少佐らによって、綿密に精緻に組み敷かれ た作戦というレールの上に置かれた機関車の発射ベルは鳴った。後は時刻表通りに突 き進むだけだ。  作戦立案者の手を離れ、実行部隊の指揮官に委ねられている。 「守備艦隊を足止めする。軍港に入港させるなよ。全艦突撃開始」  これまで囮役として敵の注意を引き付けていたが、勇躍敵艦隊に向けて進撃を開始 した。  守備艦隊を要塞内に入れるわけにはいかないからだ。
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2018年9月17日 (月)

性転換倶楽部/静香の一日(四)雪が降る中

 静香の一日

(四)雪が降る中 「ほほう、妹ながら結構いい身体している……。なかなかそそるな。これなら俊彦だ って陥落するだろうぜ」  いつまでも関心している場合ではなかった。 「下着がこれだから、上に着るものもそれに合わせなくちゃな」  身体は静香とはいえ、心は男の重雄だった。  コーディネートとかいった女性的な配慮など知る由もなかった。  当然、男の視点で衣装選びすることになる。 「やはり、ミニのタイトスカートだろうな」  スカートの裾から覗くまぶしい太もも!  男を誘惑し、その気にさせるにはミニのタイトスカートに限る。  丁度いい具合にピンク色の上下のスーツがあった。 「これでいいんじゃないかな」  さらにその下に着るシャツ、女物はブラウスと言うんだっけ? それを適当に選ん で着る。  よし! これでいい。 「おっと、女性はこれが必要だったな」  化粧品とか入れるバックだった。  女性は物をポケットに入れたりはしないものだ。  スーツとかには一応ポケットは付いてはいるがほとんど装飾品だ。 「しかし事前に化粧しておいてくれて助かったよ」  静香は出かける予定だったみたいだから、すでに化粧を終えていた。  もし自分で化粧するとなれば、とんでもない顔になっていただろう。  バックとコートを持って、出かける準備はできた。  ちらりと静香(自分の身体)を見る。 「そうか……。このままじゃ、風邪を引くか……」  動かせば目を覚ますかも知れないが、放っておくこともできない。  しかし、今の身体は静香だ。  この細腕で自分の身体を抱えることは不可能だろう。 「お、重いな」  両脇を抱えて引きずってこたつのある居間に運ぶことにする。  なんとかコタツに足を差し入れて、スイッチを弱にに入れておいた。 「まあ、これで大丈夫だろう」  玄関に出る。 「靴か……」  衣類もそうであるが、静香は結構な靴持ちである。  いろいろなデザインの靴が並んでいる。  ミニのタイトスカートに合うとなれば……。 「やはり、ハイヒールだよな」  靴箱の中で異彩を放つ赤いハイヒールに目が留まる。 「これにしよう」  今更靴選びで悩んだところでしようがない。  もうすでに約束の時間を三時間も過ぎている。  これ以上、俊彦を待たせるわけにはいかない。  玄関の扉を開けて外に出る。 「雪か……」  空から白い物が舞い降りていた。  気象予報では夜間にかけて降り続き、明日の朝にはかなりの積雪になるでしょう。  という注意報が出ていた。 「今更、行かないわけにはいくまい」  俊彦は静香が来るのを待っている。  一晩中でも待つと言っていた。  しかし……。  女の格好で外を出歩くことには、さすがに勇気がいった。  いや、今の身体は正真正銘の静香なのだ。  誰に恥ずかしがることもない。  堂々と歩いていけばいいのだ。  下手におどおどしていると、よけいに変に勘ぐられる。  姿勢を正して、まっすぐ前を向いて歩き出した。  ミニのタイトスカートにハイヒール。  女装初心者なら、歩きづらいところだろうが、静香という身体が覚えて慣れている ので、しっかりと足を運んでいくことができた。  マイカーのある駐車場に向かおうとして気が付いた。 「しまった! 静香は運転免許を持っていない」  ブラジャーの着付けやハイヒールでの歩き方、静香としての身のこなし方を自然に とっているということは、当然運転技術も身に付いていないことはすぐに判断できる。 「車はつかえないと言う事か……」  となれば駅まで、歩いていくしかない。  傘を持っていなかったが、今更取りに戻るのもおっくうだ。  どうせ俊彦と一緒になるんだ。  帰りは送ってくれる。  そのまま傘を持たずに歩いていくことにした。  雪は次第に本降りになっていく。
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2018年9月16日 (日)

銀河戦記/鳴動編 第二十二章 要塞潜入! III

第二十二章 要塞潜入!

                III 「よし! 各自レーザーガンを装備」  アレックスはミサイルの中から、レーザーガンを取り出して腰に装着しながら、ヘ ッドセットの携帯無線機を通して指令を出した。 「我々は中央制御コンピューター室に直行する。その間ジュビロはここにいて、敵の 動静を監視しつつ逐次無線で報告せよ」 「あいよ。一人寂しく待機してるさ」  ジュビロは、無線機に向かって答えた。 「無線機のチェックOKです」 「よし、行くぞ。ジュビロ、扉を開けてくれ」 「今開ける」  すーっと扉が開いて先の通路が現れた。 「気をつけろ。どこから敵が出て来るかわからない。ジュビロ、扉を閉めておいてく れ」 「へい、へい」  扉が閉まるのを確認してアレックス達は、一路中央制御コンピューター室への通路 を駆け出した。通路の交差点や角では注意深く敵影の存在を確認しながら突き進んで いく。  時折出くわす兵士達を有無をいわさず打ち倒しつつ目的地へと急ぐ。  大きな隔壁で閉ざされた箇所に差し掛かると、 「この先が中央制御コンピュータールームのようだな」 「動体生命反応が多数あります」 「この扉の先に敵兵がいるということか」 「どうします?」 「と、いわれても、行くしかないだろう」 「そうですけどね……」  アレックスは、隔壁の側に記された区画名を確認して、携帯無線機を通してジュビ ロに指令を出した。 「ジュビロ、Dー137ブロックの扉を開けてくれないか」 『わかった』 「レイティは後ろに下がっていろ」  レイティは技術将校で戦闘の訓練を受けておらず、かつ作戦の重要人物なのでアレ ックスは彼に危害がかからないように安全な場所への待避を命じた。レイティは命令 に従って通路の影に隠れるようにして顔だけ覗かせるようにしてアレックス達の動向 を伺っていた。 「気をつけろ。構え!」  隊員は床に伏せて銃を構えた。  重い扉がゆっくりと上がっていく。  そばの隔壁が開いて、アレックス達の姿を確認してたじろぐ敵兵。銃を構える暇を 与えることなくアレックスの下令が廊下にこだまする。 「撃て!」  一斉砲火を浴びせられてばたばたと倒れていく敵兵。  保安システムの端末に飛び付く者もいたが、すでに保安システムはジュビロが握っ ており、警報を鳴らすことも他部署へ連絡を取ることもできない。地団駄踏んでそこ を離れようとしたところを仕留められて床に倒れてしまう。  戦闘はものの数分でかたがついた。  気がつけば目前には、特殊硬質プラスティックの窓を通して、五階建てのビルに相 当するほどの部屋の中央に巨大な構築物がそびえたっていた。 「これが、中央制御コンピューターか」  システムから発生する熱を回収し、かつまた超電導回路を支える超流動状態の液体 ヘリウムが部屋全体を流れているらしく、冷えた壁面に暖かい制御室内の水蒸気が霜 状に付着している箇所が随所に見られる。 「レイティ。早速だが、はじめてくれ」 「わかりました」  自分の出番はここからだ、とばかりに端末に取り掛かるが。 「提督……。宇宙服を脱いでもいいですか? 息苦しくて精神を集中できません」  とすぐに切り返してくる。 「いいだろう。総員、宇宙服を脱いでいいぞ」  宇宙服を脱ぎ始める工作隊員。 「ふいぃー。見てくださいよ。汗びっしょりだ」 「すぐに汗が引くさ。目の前に巨大な冷蔵庫があるんだからな」 「ほんとだ。ひんやりとしてますね。風邪をひきそうだ。はやいとこかたずけましょ う」 「そうしてくれ……」  そして無線機で、ごみ処分区画のジュビロに連絡する。 「ジュビロ。そこはもういい。区画を封鎖してこっちへ合流してくれ」 「わかった。今からそっちへ行く」
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2018年9月15日 (土)

妖奇退魔夜行/蘇我入鹿の怨霊 其の玖

陰陽退魔士・逢坂蘭子/蘇我入鹿の怨霊 其の玖(土曜劇場)

(玖)突入  容疑者Aの部屋の前で一旦止まる突入班。 「相手は殺人犯かもしれないから、銃を用意しておけ。場合によっては発砲も許可す る」 「はい」  胸元のホルスターから銃を取り出して構える刑事達。 「行くぞ」  一応礼儀として玄関チャイムを鳴らす。  が、しかし反応はない。  三度鳴らしたが相も変わらず。  ドアに耳を当てて中の様子を探るが物音一つしない。 「管理人を呼んで来い」  下に待機させておいた管理人が呼ばれる。  合鍵を使って開けようというわけだ。  鍵が解錠される。 「あなたは下がっていて下さい」  鍵が開けば取りあえずは、管理人には退避してもらう。 「行くぞ!」  慎重に扉を開けて、中に突入する一行。  警戒しながら各部屋を捜索開始。 「誰もいません」 「そうだな……」  誰もいないことを確認して、警戒体制から通常捜査体制に移行させた。 「鑑識を呼んで来い。ああ、それから蘭子さんもだ」  ここからは刑事ドラマで見慣れた場面となる。  入室してきた蘭子は、その様子を見てふむふむと納得している。 「どこにも触らないで下さい」  鑑識が注意する。 「わかりました」  やおら携帯を取り出して、とある番号に掛ける井上課長。  ややあって反応が返ってくる。  ベッドの下でコール音が鳴り出したのである。 「やはり、あったか」  鑑識がベッドの下に潜ってスマートフォンを取り出した。 「このスマホ、聡子さんのものに間違いありませんか?」  と言われても、スマホなんてみな似たり寄ったりだし……  コール音で反応したのだから、電話番号は間違いなく聡子のもの。  だが、携帯ストラップには見覚えがあった。  ハローキティ こうのとりキティ 根付けストラップ。  コウノトリがキティーちゃんを運んでいるもので、くちばしが折れると妊娠すると噂 されている。 「聡子のものだと思います」  所持者の鑑定など警察ならお手の物、一応の確認だろう。 「ところで……妖気とか感じないか?」  井上課長が蘭子を同行させた理由がソコにあったわけだ。  この事件は「人にあらざる者」が関わっている可能性が大だからである。  実は入室した時からずっと精神感応で妖気を探っていたのだが、 「感じません……」  と一言だけ。 「そうか」  と井上課長も短く答えた。 「ま、そうそう事がうまく運ぶものでもないからな」 「そうですね」 「さて、今日はここまで、自宅に送るよ」  数日後、井上課長から警察本部に呼び出された蘭子。  捜査用のパソコンの前に座る二人。 「京都府警に応援を頼んで、京都文化博物館と周辺の防犯カメラの映像を調べて貰った のだよ」 「聡子の足取りを?」 「そうだ。で、興味深い記録が残っていた」  マウスカーソルで画面をクリックしながら、記録映像を閲覧する。  国宝や重要文化財などが展示されている館内防犯カメラだけに、映像は鮮明で来館者 の表情までくっきりと映っている。 「まずはこれだ」  ガラスケースの前で、チラシ片手に刀剣を眺めている人物の動画が再生される。 「聡子!」  というところでポーズが掛けられ、クローズアップされる。  間違いなく聡子であった。 「続けるよ」  ボーズが解除されて再生は続く。  やがて聡子に近づく人影。  肩をポンと叩かれて振り返る聡子。  その相手は?  再度ポーズからクローズアップされる。 「容疑者Aだよ」  その顔は蘭子の見知らぬ人物であった。 「協力して貰っている以上、実名を知らせても良いだろう」 「実名ですか?」 「石上直弘、氏は石の上と書いて(いそのかみ)と読む」 「石上(いそのかみ)!それって物部氏の後裔じゃないですか」
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2018年9月14日 (金)

性転換倶楽部/静香の一日(三)着替え

 静香の一日

(三)着替え  その時、廊下にある柱時計が時を告げた。 「ありゃあ、もうこんな時間か!」  俊彦との待ち合わせの時間だった。 「完璧に遅刻じゃないか」  俊彦はプロポーズするために待ち合わせいるんだった。  来るまで一日中でも待つつもりだ。  と、言っていたはずだ。  床に横たわる静香(自分)に目をやる。  俊彦と静香を結ばせてやりたい。  ずっと思っていた。  もしかしたらいい機会ではないだろうか。  今、自分は静香になっている。  この身体で俊彦と会い、縁談を成就してやろう。  そうと決まれば、出かける用意である。 「まずは着替えだな……」  静香の部屋に入って、タンスをあさってみる。 「一体何を着ていけばいいんだろう」  こんな時、静香というか若い女性というものは、どんな服を身に着けるものだろう か。  しかし……。こんなに下着を持っているなんてな。女はみんなそうなのだろうか。 「と、眺めている場合じゃないな」  どうせならセクシーなやつがいいだろう。  俊彦とは無二の親友で、性格も良く知っている。  あいつなら静香を裏切ることはないし……、この際だ。  最後の一線を越えちゃうのもいいだろう。  その気にさせるにも魅惑的な下着にしよう。 「やっぱり悩殺下着となれば、ガーターベルト! に決まりだろうな」  引き出しの中からガーターベルトとそれに見合う下着を探す。 「あった。なんだ、お揃いの下着があるじゃないか」  さっそくそれを着ることにする。 「何というか、ブラジャーだけど、着るには後ろ手で見えないし、女は背中によく手 が届くものだ……」  しかし、はじめて着けるはずなのに、意外にも簡単に着けることができた。  この身体は静香のものだし、毎日着けているので慣れというか、身体が動きを覚え ているようだ。  ブラジャーを着けてショーツを履いて、ガーターベルトにストッキング……。 「よし。下着はこれで完璧だな」  改めて姿見に映してみる。
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2018年9月13日 (木)

銀河戦記/鳴動編 第二十二章 要塞潜入! II

第二十二章 要塞潜入!

                 II  ジュビロから声が挙がった。 「よし! 侵入した。成功だ」  ものの数分でコンピューターの侵入に成功するジュビロ。 「さすがだな」 「俺を誰だと思っている」  憤慨気味のジュビロ。 「まあな……。レイティ、端末を操作して見てくれ。そうだな……要塞のブロック図 を出してみてくれないか」 「OK。要塞のブロック図ですね……ちょっと待ってください」  レイティは操作パネルをいじりはじめた。 「間違っても警報システムは作動させるなよ」 「いやだなあ、提督。僕達を誰だと思ってるんですか、コンピューターのシステム管 理者と天才ハッカーですよ。システムなんてのは日常茶飯事で取り組んでいるんです。 操作パネルのデザインを見ただけでもおよそのことはわかります」 「そ、そうか」 「よし、こいつだな……」  と確信した表情でスイッチを押した。 「お、出たでた」 「レイティ、ごみ処理場周辺を出してくれ」 「はい」 「どうやら二区画先まで閉鎖されているようだな」 「大型ミサイルの不発弾があるから用心のためですね。これなら、ここへ踏み込まれ ることはないでしょう」 「しかし、その内に爆弾処理班がおっつけやってくるはずだ。早いところやってしま わなければならない」 「そうですね」 「中央制御コンピューターの位置は?」 「ここから二十七ブロック先の所にあります」 「そこへたどり着く最短コースは」  レイティはパネルを操作してルートを表示してみせた。 「そうですね、このルートを通れば」 「途中の保安システムは?」 「残念ながら、この端末からでは保安システムを止めることはできません。ローカル コード専用の端末ですからね。保安システムへのアクセス権が設定されていません」 「このままでは、中央制御コンピューターへは行くことができないか……後は、ジュ ビロ次第だな」 「保安システムへのアクセスルートを探っているところだ。もう少し時間をくれ」  たとえアクセス権が設定されていなくても、中央制御コンピューターに接続されて さえあれば、ジュビロの腕前なら何とかしてくれるだろう。 「それにしても……」  レイティーが小さく呟くのを聞いて、アレックスが尋ねる。 「どうした?」 「いえね。ここのシステムは一世代前のものなんですよ」 「一世代前?」  ジュビロが代わって答える。 「さっきからいろいろ探っているが、カウンタープログラムはおろか、ハッカーの侵 入を防ぐ対策らしきものが一切ない」 「どういうことだ」 「つまりですね。この要塞は完全独立コンピューターによって制御されていますから、 外からアクセスする道が遮断されています。ハッカーの侵入を考慮する必要はないと 判断しているのではないでしょうか」 「がっかりだぜ。この程度なら、レイティでも攻略できるかもしれないね。時間さえ あれば」 「その時間が惜しい。一秒でも早く落とさなければならないんだ。外の艦隊だけでは、 この要塞を直接攻略することは不可能だ。いつまでも要塞に手を出さずにいれば、い ずれ勘繰られて、侵入した我々のことを悟られることになる。時間が掛かれば掛かる ほどな」 「しかし旧式のシステムとはいえ、やけに広大過ぎる。どうやらシステムのすべてを 中央制御コンピューターが管理しているようだ」 「それは、僕もさっきから感じていました。普通いくつかにモジュール化して分散さ せておいて、メインがシステムダウンしても他からバックアップできるようにしてお くものですが、ここのは違う。ほらこれを見てください」 「これは?」  表示パネルには、中央制御コンピューター室から一本の通路が外へ向かっているの が、映しだされていた。 「排気口ですよ」 「排気口?」 「そうです。システムのすべてを中央制御コンピューターが担っているから、過負荷 となって膨大な熱が発生します。熱源が一ヶ所に集中していて冷却が間に合わないか ら、その熱を外へ排気するための通路ですよ。巧妙に隠されて外からは気付きません でしたけど」 「排気口か……いずれ使えるかもしれないな……」 「使える……?」 「いや、何でもない。ということは、中央制御コンピューターに侵入できれば要塞の すべてをコントロールできるわけだな」 「その通りです。ところで、同じように熱源として動力炉もありますが、こちらは熱 循環させて要塞内の暖房に使われています。同じ熱量があったとしても、コンピュー ターは超電導素子の関係からシビアに冷却する必要があるので、絶対零度に近い宇宙 空間に放出するほうが効率がいいわけです」  戦闘に関しては神がかりの才能を発揮するアレックスであるが、ことシステムエン ジニアに関しては無知といってもいいだろう。レイティーやジュビロが解説すること を、百パーセント理解しているとは言いがたい。  が、それでいいのである。自分にできないことは他人にやらせればいいこと。そう いう人材を集め利用する。それが指揮官たる才能なのである。 「やったぞ、中央制御コンピューターに侵入した」  指を鳴らして叫ぶジュビロ。 「どうします? 保安システムを解除しますか」 「いや、ただ単純に解除したのでは、察知されて保安システムが作動していない原因 を調査にくるだろう。正常に作動しているようにみえて、実は解除されているという 具合でないとな」 「そういうことなら簡単さ」  再び、端末をいじるジュビロだが、一分も経たないうちにシステムを改竄してしま う。 「保安システムを解除した。お望みの通りにね」
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2018年9月12日 (水)

性転換倶楽部/静香の一日(二)入れ替わり

 静香の一日

(二)入れ替わり  話しは五時間前に遡る。  階段の踊り場で兄妹が口論している。  兄の重雄と、妹の静香であった。 「なんであたしが行かなきゃならないのよ」 「俊彦は真剣なんだぞ。今日は、おまえにプロポーズするつもりで、指輪を用意して 待っているんだ」  そうなのだ。  重雄は親友の俊彦に、その指輪を買うのにつき合わされたのだった。  そして今度のデートの時にプロポーズするんだと告白された。  もちろん反対するわけがなかった。  俊彦とは幼馴染みでもあり、その性格は知り尽くしている。  静香と結婚させても何ら心配することはない。 「そんなこと関係ないじゃない。誰と結婚しようと、あたしの勝手じゃない」  と突き放すように言うと階段を降りようとする。 「おい。どこに行く」 「どこでもいいでしょ。少なくとも俊彦の所じゃないわね」 「待てよ!」 「手を離してよ!」  静香が重雄の手を振り払った時だった、バランスを崩してしまった。 「危ない!」  とっさに静香に手を伸ばして助けようとするが、共に階段を転げ落ちてしまったの だ。  どたどたどた……。  どれくらいの時間が経ったのだろうか。  静香がゆっくりと身体を起こした。 「いててて……」  何が起こったのかしばらく判らないようだった。  そして思い起こして、 「そうか……。階段から落ちたんだ」  あちこちに痛みがあったが、それほど大事には至っていないことが感じられた。 「そうだ……。静香」  そばに倒れている人影に目をやる静香だった。 「おい、静香。大丈夫か……」  声を掛けてみるが……。  打ち所が悪かったのだろうか、倒れている重雄は答えない。 「ちょっと待て! なんでここに俺が倒れているんだ?」  呆然とする静香。 「俺はここにいるんだ。なのに……」  そっと重雄の身体を触ろうとした手。  白く細い女性的な手が目に入ったようだ。 「この手は……。女の手? まさか……」  あわてて自分の姿を確認しようとする静香だった。 「女性の服を着ている……。しかも静香の着ていた服じゃないか……」  立ち上がってそばのバスルームに駆け込む静香。  そこには全身を映せる鏡があるからだ。 「っこ、これは?」  鏡に映る自分の姿に驚愕している静香。 「これは静香じゃないか? まさか……。入れ替わった?」  間違いなかった。  静香の身体に重雄の心が乗り移ってしまったのだ。  念のために服を脱いで見る。  目に飛び込んできたのは……。  豊かな乳房。  きゅっとくびれた細いウエスト。  張りのある大きな腰。  間違いなく女性である静香の身体だった。 「やはり間違いない。静香の身体だ」  信じられなかったが、状況がそう信じるしかないことを物語っていた。  床に倒れている自分の身体。  そして今自分が見ている、自分自身だと思われる静香の身体。  静香の身体に自分の意識が存在しているのは明白な事実のようであった。 「なんでこうなったんだ」  兄の眼にもまぶしいくらいだった豊かな乳房が胸にある。  自分の身体……というか、静香の身体になるのだが……触ってみる。  ぽよよーん。  ほどよい感触があって、心地よいくらいの刺激が返ってくる。 「やっぱりこの身体……。俺だよな……。こんなことって……。そうだ静香は?」  自分が静香の身体に乗り移っているとしたら、静香は重雄の身体に乗り移っている という可能性が高い。  重雄の元に戻ってみる。 「おい。静香、起きろ。目を覚ませ!」  声を掛け、頬を軽く叩いてみるが一向に気が付く様子は見られなかった。 「まさか、打ち所が悪くて……」  静香は、倒れている重雄の身体を調べ始めた。 「脈は正常。呼吸も規則正しい。瞳孔反応は……玄関に非常用の懐中電灯があったな ……。よし、正常だ」  重雄は医学生だった。  だから今の静香にも、ある程度の診断を下すことができる。 「よし、大丈夫だ。どこにも異常は見られない。たぶん精神が入れ替わったものの、 静香の方は心身の融合がうまくいっていないのだろう」  まずは一安心する静香だった。
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9/20で強制退会再通告キタ━(゚∀゚)━!

9/20で強制退会再通告キタ━(゚∀゚)━!

@niftyの有料サービス利用料金の未払い分の請求書と共に、

「支払い未納の場合、9/20に強制退会します」

という最後通告書が送致されてきました。

@niftyのホームページサービス【LaCoocan】の支払いを、
楽天銀行VISAデビットに設定したのだけど、
規約改正があって以降に、@niftyでは使用不能・無効になってしまったのよね。
ホームページは解約しました。
常時安全セキュリティー24も自動解約

会員情報画面で
「利用有効なカードに変更してください」
という警告が出ていたけど、他にカード持っていないし、
新たにカード作る気もないから……。
理恵子の会員IDは、カード利用する前提で作成されたので、
カード情報を削除したくても出来ないし。

強制退会されるということで、
「理恵子2世」という新IDを、カード利用設定なしで作った。


取り合えず、請求書持ってコンビニ支払い済ませました('ω')

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2018年9月11日 (火)

銀河戦記/鳴動編 第二十二章 要塞潜入! I

第二十二章 要塞潜入!

                 I  要塞ゴミ処分区画。  穴の明いた隔壁からさらに一区画内部に入った所に、大型ミサイルが突入してめち ゃくちゃになっている。  隔壁の応急処置に集まってきた工兵隊達。 「えらくひどくやられたものだな」  空気が抜けているために、船外服を着込み、ヘルメット内に仕込んである無線機で 会話をしている。もちろん空気がなければ音が伝わらないのは当然だ。 「なんだこれは!」  区画内に横たわる黒光りする物体に釘付けになる隊員。 「不発ミサイルだ」 「例の次元誘導ミサイルとか言う奴か?」 「おかしいじゃないか、この穴を開ける爆発を起こしたんだろ?」 「偶然、二発同時に突入したのかもな。先に突入した奴の爆発で、信管が動作不良を 起こして不発になったのかも知れない」 「兄弟殺し(fratricide)と呼ばれる現象だよ。多弾頭では良く起きる」 「ともかく、爆弾処理班を呼ぼう」  艦内電話をとって連絡する兵士。 「そっちは放って置いて、こっちの穴を早く塞ぐんだ。ここを狙い撃ちされたらもた ないぞ」 「了解!」  作業機械が明いた穴に取り付き、修復が開始された。予備のブロック片が運び込ま れて、穴を塞いでいく。 「ここの区画は爆弾処理が終わるまで封鎖だ。誘爆して他の区画に被害が出ないよう にしなくては」  中央コントロール。 「隔壁の修復はどうなっている?」 「まもなく完了します」 「そうか……。それで不発弾の方の処理は?」 「レクレーション施設の方で手一杯です。多弾頭ミサイルだったらしく、不発の信管 を抱えた子弾の処理に追われています」 「急がせろ! 守備艦隊はどうなってる?」 「クンケイド少将が指揮を引き継いでおります。別働隊を警戒して現状空域で全艦停 止、敵本隊と睨み合いが続いています」 「別働隊の動きは?」 「全艦、撤退しました」 「引き続き警戒を怠るなよ」 「はっ!」  ごみ処分区画。  すでにブロック片によって穴は塞がれ、接合処理が行われていた。 「よし、応急修理は完了した」 「不発弾が爆発しなくて良かったですね」 「そうだな。その性能からして、たぶん時限信管を使用しているはずだ」 「だとすれば、いつでも爆発する可能性がありますね」 「そうだ。後は処理班にまかせよう。処理が済むまでは、本格修理はお預けだ。一旦 ここを退去しよう。遮蔽壁を降ろせ!」  作業機械が撤収し、ごみ処分区画を閉鎖するために、遮蔽壁が降りはじめている。 「しかしゴミ処分区画に突入するとはな」 「ああ、ここの隔壁は他より薄いんだ」 「ともかく不発弾でよかったな」 「まったくだ」  遮蔽シャッターが降りされていく。  それを掻い潜るようにして工兵隊が区画の外へ避難していく。 「爆弾処理班は、いつ到着する?」 「レクレーションの方の処理がまだだそうです。まだ当分かかりそうです」 「そうか……」  工兵隊の避難が完了し、遮蔽シャッターが降り切って、完全に封鎖された区画とな った。  その区画の中に取り残されたミサイル。  やがてミサイルが軽い爆発と同時に割れて中からノーマルスーツに身を包んだアレ ックス達が出てきた。ジュビロ、レイティー、その他の工作隊の面々である。 「端末は?」 「提督、あそこにあります」  レイティが隅の端末を目ざとく見つけて指差した。  素早く駆け寄って端末を操作してみるレイティ。 「どうやら、中央制御コンピューターに接続されているようです」 「予想通りだ。ジュビロ、君の出番だな」 「まかせな」  ジュビロは端末機器と接続コネクターの間に、持ち込んだ自慢の支援システムコン ピューターを接続した。 「システムに侵入するのに、どれくらい掛かりそうだ」 「今、接続したばかりだぜ。まあ、あせるな。十分もあれば侵入できるはずさ」 「よろしく頼む」  ジュビロが端末を操作しているのを横目で見ながら、ごみ処分区画を監察するアレ ックス達。 「隣の区画はどうか?」  遮蔽壁を開閉する操作盤を調べている工作隊員に尋ねるアレックス。 「隣の区画も空気が抜かれています。どうやら避難して人はいないみたいですね」 「ここが爆発し、この遮蔽壁が破砕した場合に備えてのことでしょう」 「そうか……」 「さすがに堅固な要塞ですね。かなりの爆発があったでしょうに、この区画だけしか 破壊できないとは」  レイティーが感心したように言った。 「隔壁を破壊するために、外側へのみ爆発圧力を加える指向性爆弾を使用した」 「指向性? そんな爆弾があるんですか?」 「フリードに頼めば、何だって作ってくれるよ」 「さすが、フリード先輩。でも、そんな爆弾の考案をする提督もすごいです」 「おだてても何も出ないぞ」 「分かりましたよ。二発目の次元誘導ミサイルって、隔壁を破壊するためのものだっ たんですね」  工作隊の一人が声を挙げた。 「何を今さら気が付いたのか?」 「作戦の詳細は聞かされていませんでしたから」 「それにしても、壁の向こうには防御艦隊が集結してるんでしょうね」 「そりゃそうだ。穴を塞いだとはいえ脆弱だからな」
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2018年9月10日 (月)

性転換倶楽部/静香の一日(一)雪の日に

 静香の一日

(一)雪の日に  雪の降る中を、ドレスコートを着た女性が傘もささずに歩いている。  只今華の女子大生している静香だ。  デートで待ち合わせの喫茶店に向かっていた。  足元の赤いハイヒールが白い雪に映えて印象的だ。 「参ったなあ……。こんなに遅れるとは思わなかったよ。あいつ、まだいるかな… …」  雪に足を取られて歩きにくそうにしながらも先を急いでいるようだった。 「あった! ここだな」  とある喫茶店の前で立ち止まり、店の名前を確認している。 「やっぱりどきどきするな……。ええい! ままよ。どうにかなるさ」  独り言を呟きながらも、ドアの前に立つ。  自動ドアが開いて、店内から静かな曲な聞こえてくる。 「いらっしゃいませ」  ウエイトレスの明るい声が出迎える。  静香はドレスコートの肩についた雪を払ってから店内を見渡す。  雪が降っているせいだろうか、店内はひっそりとして客は見当たらない。 「いた!」  窓際の席に腰掛け、ぼんやりと窓の外を眺めている青年がいる。  窓ガラスは結露で曇っており、青年の顔の辺りだけが拭われて外を眺められるよう になっていた。  どことなくうつろで、あきらめの表情をしていた。 「だいぶ待たせちゃったようだな……。しかし、しようがなかったんだ。許せ、友 よ」  一息深呼吸すると、その青年のところへと歩み寄っていく。  静香が近づくと相手の青年は顔を上げる。  青年の名前は俊彦という。  ここで待ち合わせの約束をしていた相手であった。 「お待ちになった?」  できるだけ柔らかな口調で、すまなそうな表情を作って声を掛ける。  それまではぼんやりとしていて精気を失っていた俊彦だが、見るからに活気を取り 戻していた。 「いや……、そうでもないよ」  腕時計を見ながら答える俊彦。 「そう……」  と呟くように答えて、ドレスコートを折りたたんで膝の上に置いて腰掛ける静香。 (ここは言い訳をしない方がいいだろうな。雪が降っているんだし……) 「それで、あたしを呼び出した用件は何かしら」 「ああ……。静香、実は……」  俊彦は、切り出しにくそうだった。    しかし、静香はその理由を知っていた。  俊彦のポケットにはエンゲージリングの入ったケースが入っているはずだ。  今日この場所で、プロポーズするために……。 (じれったいな。男ならさっさと取り出してプロポーズしろよ)  プロポーズされたら迷わず承諾するつもりだった。 (静香のためにも、この俊彦と一緒にさせるのが一番なんだ。悪いが静香、プロポー ズを受けて、その後には俊彦と一晩を共にするぞ)  ここにはいない本物の静香に対してテレパシーを贈る静香だった。  そうなのだ。  ここにいる静香は、本物の静香ではない。  それは突然の出来事だった。
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2018年9月 9日 (日)

銀河戦記/鳴動編 第二十一章 タルシエン要塞攻防戦 VIII

第二十一章 タルシエン要塞攻防戦

                VIII  その様子は要塞中央コントロールでも見つめていた。 「フレージャーが撃沈しました」 「結局。ランドールには適わなかったというわけか」 「次元誘導ミサイル接近中!」 「かまわん。かたっぱしから撃ち落とせ」 「ミサイルがワープしました」 「だめか!」  再び大きな衝撃が襲った。 「どこをやられたか?」 「ごみ処理区画です」 「射程が短か過ぎたようだな。助かったよ、九死に一生だ」 「しかし、隔壁に穴が明いてしまいました。今そこを攻撃されたら、いくらこの要塞 でも持ち堪えられません」 「スクリーン。要塞外部から被弾箇所を投影」  数秒あって、要塞周縁にあるごみ処分場の一角から爆発の火の手があがるのが見え た。  外部からの攻撃に対して完全防御を満たしていても、内部からの誘爆の圧力を受け てはさすがに持たなかった。  要塞とて小さなブロック片を組み立てて造られている。内部圧力として人間の生き る一気圧に保たれているため、真空との圧力差で外へ向かう定常的な抗力が働くが、 それよりも外部からの攻撃の爆発的圧力に耐えることの方が大切である。ゆえに内部 圧力に関してはあまり考慮に入れられていなかった。  そこへ次元誘導ミサイルの攻撃による爆発的圧力が掛かり、接合部がその衝撃に耐 え切れずに破断し、一部のブロック片が剥がれ飛んでしまったのである。 「工兵隊に穴を封鎖させよ」 「応急処置だけでも最低十二時間はかかります」 「急がせろ、敵は目の前なんだぞ! 守備艦隊を呼び戻すんだ!」 「それでは、敵に易々と次元誘導ミサイルを発射させることになりますが?」 「構わん! どうせ奴らの目的はこの要塞の奪取なのだ。重要施設を破壊するような 攻撃を仕掛けてくるはずがない。次元誘導ミサイルにも限りがあるはずだ。これまで の攻撃の仕方からすれば、せいぜい数発しか残っていないはずだ。敵艦隊の攻撃さえ しっかり守っていれば、要塞が落ちることはない」 「判りました。守備艦隊を呼び戻します」 「要塞内に駐留する艦隊を出撃させますか?」 「別働隊が張り付いている今はだめだ。発着口を開けばそこを狙い撃ちされる、内部 誘爆を招いて身動きが取れなくなる」  その頃、要塞の隔壁の破壊を確認したカーグ編隊。 「よし! 穴が開いたぞ。ただちに突入する」 「了解!」  カーグ編隊全機が合図と同時に投入を開始した。  すでに先行のハリソン編隊の集中攻撃によって、目標地点付近の砲塔はほとんど撃 破されていた。 「ジュリー。ミサイルの安全装置を解除しろ」 「了解。解除します」 「目標接近!」 「照準セットオン。艦の噴射コントロールを同調させてください」 「わかった。噴射タイミングをそちらに回した。後は頼むぞ」 「行きます!」  さらに加速を上げて目標に突撃する重爆撃機。人を載せているがゆえに自走能力が ないミサイルのために、それを重爆撃機に搭載し、急降下爆撃で突撃射出させるとい う前代未聞の作戦。 「最大加速に達した。最終セーフティ解除」 「ミサイル射出!」  懸吊されていたアレックス達を乗せたミサイルが、重爆撃機より投下されてゆっく りと要塞に近づいていく。 「急速反転、離脱する」  ミサイルを放ったカーグの乗った重爆撃が反転離脱していく。   要塞ゴミ処分口に突刺さるように見事命中するミサイル。 「巧くいったわ」 「お見事」 「わたし達の役目は終了した。脱出しましょう」 「まかせとけ」  加速して要塞宙域から脱出する二人を乗せた重爆撃機。 「本隊へ。『赤い翼は舞い降りた』繰り返す。『赤い翼は舞い降りた』以上」  ジミーは音声信号による打電を送信した。  打電はパトリシアにすぐさま報告されることとなった。 「カーグ少佐より入電。『赤い翼は舞い降りた』です」 「成功だわ」 「成功? どういうことですか、先輩」 「第十七艦隊のシンボルとなっている、旗艦サラマンダーのボディーに描かれた動物 は何だったかしら」 「火の精霊サラマンダーです」 「その絵柄は?」 「ええと、赤い翼を持った……え? じゃあ、提督が……」 「その通り。提督が目標地点に無事到達したということ」 「じゃあ、じゃあ。提督が、あの要塞の潜入に成功したのですか?」 「あたりよ」 「信じられません」 「真実よ。でもね、本当の戦いはこれからよ。潜入に成功したとしても、脱出は不可 能。無事作戦を果たすまではね」 「そうですね……」 第二十一章 了
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2018年9月 8日 (土)

妖奇退魔夜行/蘇我入鹿の怨霊 其の捌

陰陽退魔士・逢坂蘭子/蘇我入鹿の怨霊 其の捌(土曜劇場)

(捌)スマートフォン  金沢家を退出する二人。  表に駐車させておいた覆面パトカーに乗り込みながら、 「ほんの少し光明が見えてきたというところですね」 「殺害は刀のようなもので行われ、被害者は刀剣に興味を持っていた」 「こうは考えられませんか。聡子は日頃から刀剣に関わる展覧会巡りをしていて、犯人 に出会い交際をはじめたのではないでしょうか。そして何かがあって犯人は聡子を殺害 した」 「十分考えられるな。美術館なり博物館を捜査対象に入れよう。近くだと四天王寺宝物 館があるな」 「七星剣と丙子椒林剣ですね」 「しかし、どちらも東京国立博物館に寄託されているからなあ」  四天王寺宝物館では、名宝展を春夏秋冬年に四回程度行っており、まれにではあるが 複製の国宝剣二点を展示することがある。  刀剣などの展示会を行う所として、大阪市歴史博物館、大阪城天守閣、高槻市しろあ と歴史館。 「ところで聡子はスマートフォンを持っていたはずです。部屋には見当たらなかったの ですが、遺留品の中にありませんでしたか?」 「うむ、なかったはずだ」 「電話会社に問い合わせて、位置情報から場所を特定できませんか?」 「できるはずだ。ただ、スマホの電池が切れてなくて、電源も入っていればだが」 「重要な情報が入っているかも知れません」 「よし分かった。問い合わせてみよう」  それから数日後、井上課長から連絡が入った。 「スマホの場所が分かったぞ。これから現場に向かうところだ。君も来てくれないか」 「分かりました。行きます」 「よし、覆面を向かわせるから、現場で落ち合おう」 「はい」  数分後に覆面パトカーがやってきた。  運転手は、例の課長の腰巾着ともいうべき若い刑事だった。 「早速、現場に向かいます」  ものの十五分で、とあるアパートの前に到着した。  井上課長は、覆面パトカーに乗車したまま、蘭子の到着を待っていたようだ。  蘭子の到着を見て、井上課長が降車すると、ぞろぞろと他の車からも私服刑事らしき 人物も降りる。 「おい、例のものは持ってきたか」 「はい、捜索差押許可状ですね」  と、鞄から一枚の書状を取り出して渡した。 「これだ。これなしでは家宅捜索はできないからね」 「早かったですね」 「ああ、被害者がスマホを持っていたとなれば、裁判所の令状取って、電話番号から 通信記録を調べて、容疑者Aが浮かんだ」 「容疑者Aですか……」 「うむ。殺人犯とまだ特定されていないからな」  警察関係者ではない、一般人の蘭子には実名を打ち明けられないということだ。 「通信記録とスマホの位置情報が特定されて裁判所の許可が下りた」  殺人被害者のスマートフォンが、見知らぬ人物の手にある。  それだけで十分許可状申請の裁判手続きは可能である。 「よし、踏み込むぞ。手筈通りに動け」  部下に命じてから、突入班の数名を連れて、アパートの階段を上る井上課長。  呼び出された管理人と蘭子は階段の下で待機させられた。
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2018年9月 7日 (金)

性転換倶楽部/ドラキュラ X (十)そして……

(十)そして……

「わあ! 眩しいわ」
 外へ出た彼女の第一声だった。
「でも、気持ちいいわ」
 女性としてはじめて外へ出たのだ。
 両手を大きく広げて深呼吸をしている。
 たんたんたん。
 と、足取り軽く階段を降りていく彼女。
 ハイヒールを履いているというのに、ぎごちなさはまるでなく、実に様になってい
る。
 歩き方も身のこなし方も完璧な女性の動きだった。

 近くの公園を二人でそぞろ歩く。
「ねえ……聞いていい?」
 少し声を低め耳元で囁くように尋ねる。
「男だったあたしに抱かれた時の気持ちってどんな感じだった?」
 な、何を言い出すかと思ったら……。
「ねえ、はじめてだったんでしょ?」
 当たり前じゃない。
 後にも先にもあれが最初だよ。
 あ、つまり男性の時と女性の時との両方を意味してる。男性としての経験はなかっ
た。
「そんなの覚えていないわ。無我夢中だったから」
「なんだ……。でも、誘ってきたのはあなたの方よ。覚えていないの?」
 そう言われても……。
 あの時の精神状態は正常ではなかった。
 何かに憑りつかれたような気分だった。
「まあ、いいわ。どうせ、あたしもいずれは経験することだしね」
 え?
 それは、ちょっと待ってくれない。
 自分やあたしに起こったことを思い出してよ。
 そんなことをすれば……。
「あ! ソフトクリーム売ってる」
 売店に立ち寄る。
「おじさん。ソフトクリーム二つ、頂戴!」
「あいよ! バニラしかないけど構わないよね」
「いいわよ。それ二つ」
 後ろを振り向いてソフトクリームマシンから、三角状のウェハーコーンに取り出し
てくる。
「へい、おまち! 280円だよ」
「ありがとう。はい、280円ね」
 可愛らしい財布から280円を取り出して店員に渡している。
 あんな財布、どこで買ったの?
 たぶん以前から持っていたのであろうが……。

 ベンチに腰掛けて、ソフトクリームを頬張る二人。
 その時、若い男性が二人、わたし達に近づいてきた。
「君たち、二人だけ?」
 つまり誰かと待ち合わせしていないかと間接的に聞いているのだ。
「二人きりよ」
 彼女が愛想うよく答える。
「だったら、これから僕達とどこかに遊びに行かない?」
「そうそう、車も持ってるからさ」
 いわゆる軟派である。
「いいわよ」
 即答で彼女が答えた。
 ちょ、ちょっと!
「よっしゃあ! 決まり、ダブルデートしよう」
「わたしも?」
「何、恥ずかしがっているのよ。相手は二人、こちらも二人。心配いらないわよ」
 そんなことを言っているんじゃない。
 それにどうせ気がついたら相手の男性と二人きりという状況になってるはずだ。
「さあさあ、行きましょう」
 積極的にわたしをも誘い込む彼女だった。
「もう……。どうなっても知らないからね」
 立ち上がって、ダブルデートに参加することにするわたしだった。

 そう……。
 どうなっても知らないよ。

ドラキュラ X 了
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2018年9月 6日 (木)

銀河戦記/鳴動編 第二十一章 タルシエン要塞攻防戦 VII

第二十一章 タルシエン要塞攻防戦

                VII  要塞周囲に出現を果たしたジェシカ配下の艦載機群は、猛烈なる攻撃を加えつつ各 砲塔を破壊していった。 「さすがに堅固な要塞だな。砲塔を破壊するのが精一杯だ」  空母セイレーンより発進したエドワード中尉は、一足先にワープアウトした空母セ ラフィムから出撃したハリソン率いる第一波攻撃隊の様子を遠巻きに眺めていた。 「中隊長。カーグ少佐の重爆撃機が右上方にワープアウトです」 「よし、援護射撃に入る」  ジミーの操艦する重爆撃機を取り囲むようにして編隊が集まって来る。 「よう。みんな、待たせたな」  ジミーからの通信が入ってくる。 「隊長、いつでもいけますよ」 「よし。そのまま待機だ。第六突撃強襲艦部隊は?」 「我々の後方にて、第三次攻撃待機中です」 「うむ、提督らが要塞潜入に成功し、システムを乗っ取った後の活躍部隊だからな」  空母艦隊の出現にも要塞の方は落ち着いていた。 「新たなる敵が出現しました」 「やはり別働隊がいたか!」 「艦数およそ二千隻。空母部隊です。艦載機急速展開中!」 「迎撃しろ。その程度の艦船でこの要塞を落とすことはできまい。それより次元誘導 ミサイルの方が脅威だ。守備艦隊には迎撃を続行させよ」 「各砲塔、迎撃体制に入れ」 「守備艦隊は追撃を続行せよ」 「しかし、航空母艦が直接乗り込んでくるとは、死ぬ気ですか? 攻撃力も防御力も 弱いですから、戦闘機を発進させて後方で待機するのが通常ですよ」 「判らんよ。何か目的があるはずだが」 「ジミー・カーグ編隊が配置に付きました」 「判りました。通信士、降伏勧告にたいする返答はまだですか」 「ありません」 「やはり突入しかありませんね。大佐、もう一つの次元誘導ミサイルを要塞内に向け て発射してください。目標、敵要塞ごみ処理区画」 「了解した」  向き直り配下の部隊に指令を下すカインズ。 「サザンクロスへ、次元誘導ミサイル発射準備だ。なお弾幕として通常弾も同時に発 射する。全艦、艦首ミサイル全門発射準備」  命令が復唱伝達されて戻って来る。 「全艦ミサイル発射準備完了しました」 「よし。発射せよ」 「発射します」  全艦から一斉にミサイルが放たれて要塞を目指した。  そして次元誘導ミサイル二号機。  もちろん途中には守備艦隊が待ち受けていて迎撃体制に入っていた。 「迎撃せよ!」 「だめです! 歪曲場シールで遮られて、粒子ビーム砲が当たりません」 「迎撃ミサイルも、追従するミサイルによって落とされてしまいます」 「だめか……。こうなったら最後の手段だ。当艦は体当たりして、次元誘導ミサイル の行く手を阻む」 「提督! それは……」 「他に手があると思うか?」 「いえ……」 「前にも言ったはずだ。もはや私にはこの戦いの後はないんだ。捲土重来なくは、当 たって砕けろだ」 「判りました」 「よし! 全速前進だ。目標、次元誘導ミサイル」  セイレーン艦橋。 「いつまでもここに留まっていられません。ありったけの攻撃を敢行しつつ急いで駆 け抜けます」  防御力の小さな空母が長時間戦闘空域に留まっているわけにはいかなかった。  提督の乗る特殊ミサイルを搭載した重爆撃機を目標地点に運んで発進させるのが任 務だった。重爆撃機を発進させたら、すぐさま戦線離脱することになっていた。 「敵旗艦が次元誘導ミサイルに向っていきます」 「特攻です!」 「カスパード編隊に攻撃させて下さい。次元誘導ミサイルを落とさせるわけには参り ません」 「了解。カスパード編隊に迎撃させます」  守備艦隊旗艦。  次元誘導ミサイルに向って進撃していた。  弾幕のミサイル群の標的になっていた。 「右舷損傷」 「構うな、そのまま直進」 「左舷より、艦載機急速接近中!」 「迎撃しろ!」 「左舷、レーザーキャノン掃射!」  ミサイルと艦載機との集中攻撃を受け、ぼろぼろになっている。 「目標との距離は?」 「0.2宇宙キロ。三十秒後に接触!」 「急げよ。持たないぞ」 「目標まで二十五秒」  艦内で誘爆が続いている。  消火班が必死で消火作業にあたっている。  次ぎの瞬間、大きな爆発とともに吹き飛んでいく。  その衝撃は艦橋をも揺り動かしていた。 「弾薬庫に被弾! 爆発炎上中」 「むう……これまでか……」  再び大きな振動が起こり火の手が上がった。  床に投げ出されるフレージャー。全身傷だらけで額から血を流していた。  ゆっくりと立ち上がって周囲を見回すが、その惨状は目を覆いたくなる状況だった。  多くのオペレーター達が機器に突っ伏すように倒れている。  スクリーンに映るサラマンダーに視線を移すフレージャー。 「ランドール……貴様との決着もここまでだ」  サラマンダーに向って敬礼をするフレージャー。  フレージャーを炎が包む。  ミッドウェイ宙域会戦からの長き宿命的な戦いの終止符だった。  やがて大きな爆発に巻き込まれて吹き飛んでいく。  次元誘導ミサイルの目前で爆発炎上する旗艦。
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2018年9月 5日 (水)

性転換倶楽部/ドラキュラ X (九)二人仲良く

(九)二人仲良く

 やがて意識を取り戻した。
「あ、どうしたんだろう。僕は……」
「あの……。気を落ち着けてこれを見てください」
 わたしは彼がわたしのために買ってくれた姿見を取り出して、彼のその姿を確認さ
せた。
「こ、これは!」
 驚愕の表情で青くなっている。
「これが、今のあなたの姿です」
 事実を伝えるわたし。
「お、女になったのか?」
「その通りです。正真正銘の女性に生まれ変わりました」
「信じられない」
「でしょうが、真実です。もはや元の男性には戻れません。その証拠がこのわたしで
す。あなたの同僚の警察官でした」

 じっとわたしを見つめる彼。
 これまでのことを思い起こしているようだった。
 そして気がついたように、
「まさか、おまえ……。もしかして、おまえは!」
 あの駐在所でのことだ。
 失踪した警察官と、脱ぎ捨てられた警察の制服と裸の女性。
 そして自分に起こった摩訶不思議なる現象。
 導かれる結論は一つしかない。
「教えてくれ。一体何が起こっているのだ」
 混乱しきっていた。
 当然のことだろう。
 突然、女性になってしまって冷静でいられる人間はいない。
 わたしは、自分の身に起こったすべてのことを話すことにした。
 あの女性のことからはじまり、昨夜に至るすべてのことを。

「そうか……。そうだったのか……」
 小さく押し殺したような声で呟く彼だった。
「ごめんなさい……」
 わたしもこうなることとは思いもしなかったことである。
 女性になってしまい、匿われて生活をしていく中で、彼に好意を抱き始めていたの
は真実だ。
 これまでに幾度となく彼に抱かれたいと思いつつも、万が一元に戻ったらと我慢し
ていた。
 だが、昨夜だけは異常なまでの性欲の高まり、まるで血に飢えたドラキュラのよう
に彼を求めてしまった。自分の意識にないところで、彼を誘惑しことに及んでしまっ
た。
 そして結果がこれである。
「いや、君には罪はないよ。仕方がなかったんだよ。その女性もたぶんね」
「許してくれるの」
 わたしは念のために確認した。
「許すも何も……」
 彼はここで言葉を一瞬止めてから、
「あははは……」
 と笑い始めたのである。
 こちらがびっくりしてしまう。
「ど、どうしたの。気が違った?」
「いや、逆に感謝しているくらいさ」
 どういうこと?
 彼は立ち上がって箪笥から何やら取り出してきた。
「これを見てくれ」
 と、差し出したのは写真だった。
「写真?」
「よーく。それを見てくれ」
 そこには綺麗なドレスを着た女性が映っていた。
 あれ?
 これは……。
 その女性は、まさしく彼だったのだ。
 化粧をしドレスを着てはいるが、まぎれもなく彼だ。
 女装?
「判るだろう。それは俺だよ」
「こんな趣味があったの?」
 女装趣味とはね。
 彼のこれまでの日常からはとても信じられないことだった。
 いや、だからこそなのかも知れない。
 警察官という職務上、公務に追われて緊張の連続の日々だったり、違反切符などを
切る時には運転手から怨まれ暴言を吐かれることもある。常に警察官らしい規律正し
い生活を強要されて息つく暇も与えられず、はめを外すこともできない。
 そんな日々から脱却する手段として、女装して身も心もリラックスできる時間を持
つ。
 十分考えられることである。
 まさかあの人が……。
 というのは良くあることである。
「実はね。女に生まれ変われたらどんなに楽しいだろうかとずっと思っていたんだ。
だって綺麗なドレスは着れるしね。それにいい所の男性と結婚すれば三食昼寝つき、
あくせく働く必要もないしさ」
 あはは。
 警察官として虐げられた逆境から解放されたいって感じだね。
「とにかく感謝こそすれ、恨む気持ちは一切ないから安心して」
「そ、そう……」
 そう言ってくれるのは有り難いが、何かしっくりこないものがある。
「さてとこの姿になったんだから……」
 と、鼻歌交じりで、
「悪いけど、あなたの衣装を借りるね」
 と、箪笥を開いてわたしの衣装を取り出していた。
「ねえ。これ、あたしに似合うかしら」
 って、すでに女言葉使ってる……。
 そして慣れた手つきで着替えを始めた。
 化粧も完璧だった。
 相当の女装癖があると見える。
 どうりで女性になっても少しも動揺していない理由がわかった。
 これなら女性としての今後の生活にも何の支障も起きないだろう。
「さあてと……」
 すっかり身も心も、そして衣装も完全に女性になった彼……いや、彼女だった。
「ねえ、一緒に出かけましょうよ」
 女性になったのを喜び、早速外を出歩いてみたいという。
 なんか……。
 こちらが当てられっ放しだった。
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2018年9月 4日 (火)

銀河戦記/鳴動編 第二十一章 タルシエン要塞攻防戦 VI

第二十一章 タルシエン要塞攻防戦

                VI  サラマンダー艦橋。 「敵守備艦隊が迫ってきます」  オペレーターの報告を受けてすぐさま指令を出すパトリシア。 「艦隊を後退させてください。これ以上の接近を許してはなりません」 「後退だ。後退しつつ砲火を正面の戦艦に集中させろ。ミサイル巡洋艦を一端後方へ 下げるのだ」  カインズもすぐに応えて、的確な命令を下していた。 「次元誘導ミサイルを撃たせないつもりですね」  パティーが感想を述べている。 「当然だろ。いくら次元誘導ミサイルとて、加速距離が必要だ。間合いを詰めて発射 できないようにするさ」 「敵艦隊、後退します」 「ぬうう……。間合いをとって是が非でもワープミサイルを撃つつもりだな」  フレージャー提督の元にも次元誘導ミサイルの情報が伝えられていた。 「いかがいたしますか。ワープミサイルを発射しないでも、原子レーザービーム砲と いう長射程・高出力兵器のある分、敵の方が幾分有利です。指揮官の搭乗している艦 を狙い撃ちされたら指揮系統が混乱します」 「サラマンダー型戦艦か……ん? 一隻足りない。確かサラマンダー型は五隻のはず だったな」 「はい、五隻です。サラマンダー型はすべて旗艦ないし準旗艦ですので、別働隊とし て動いている可能性があります」 「どうしますか。このまま前進を続ければ、要塞は丸裸同然になってしまいますが」 「かまわん。別働隊がいたとしても数が知れている。要塞自体の防御力で十分防げ る」 「もし別働隊にもワープミサイルが配備されていたら?」 「いや。敵のこれまでの動きからしてそれはないだろう」 「だといいんですが。それにしてもこのまま、一進一退を続けていてはこちらに不利 です」 「わかっている。間合いを詰めるぞ、全艦全速前進」  その状況はすぐさまサラマンダー艦橋に伝わる。 「敵艦隊、さらに前進。近づいてきます」 「間合いを詰めさせるな。加速後進!」  その間にも時刻を測りながら、次ぎの行動を見極めているパトリシア。 「敵要塞からの降伏勧告受諾はありませんか?」 「ありません。完全に無視されています」 「致し方ありませんね。次元誘導ミサイル二号機の準備を」 「了解した」  その時だった。  要塞と守備艦隊との中間点に、第十一攻撃空母部隊が出現したのだ。 「フランドル少佐より入電しました」 「繋いでください」  正面のスクリーンにジェシカが現れた。 『待たせたわね。手はずのほうは?』 「作戦は予定通りに進行中です。次元誘導ミサイル一号機発射完了。敵要塞内で爆発 したもようです」 『降伏勧告は?』 「応答なしです」 『でしょうね。おっと、時間だわ。また後でね』  通信が途絶えた。  空母艦隊から艦載機が一斉に発進を開始していた。  あの中にアレックスがいるのね……。  カラカス基地の時もそうだった。  司令官自らが進んで戦いの渦中に飛び込んで行く。  決して他人任せにせず、部下と生死を共にして戦う。  部下の命を最優先に考える思いが、部下をして命懸けの戦いにも逃げ出さずに、司 令官に付き従うという信頼関係を築き上げてきたのである。  八個艦隊の襲来にもあわてず騒がず沈着冷静に行動し、部下の動揺を鎮めることを 忘れなかった。  逃げるときは徹底的に逃げ、戦うときは徹底的に戦ってこれを壊滅に追い込む。  他の司令官には真似のできないことだろう。ゴードンやカインズとて同じだ。 「ハリソン編隊、攻撃を開始しました」  ついに別働隊による総攻撃が開始された。 「赤い翼の舞い降りらん事を祈ります」  パトリシアは、心の中で祈った。
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2018年9月 3日 (月)

性転換倶楽部/ドラキュラ X (八)目の前で

(八)目の前で

 次の瞬間だった。
 全身が急激に痙攣を起こし始めた。
 それは子宮から膣へ、そして彼の中へと逆流していく。
「な、なんだ!」
 彼が驚きの声をあげる。
「うわあ! これは!」
 慌てて身体を引き抜こうとするが、ぴったりと接着したように離れなかった。
 何かが彼の中へと流入していく。
 そしてついに気絶してしまった。
「あ、あなた!」
 わたしは何が起こったかしばらくは判らなかった。

 こ、これは……。
 あの時と同じだ。
 それに気づいたのは、彼の身体が輝き始めて変貌していくのを目の当たりにした時
だった。

 彼の身体が小さくなっていく。
 立派だった胸板が細くなり、その胸が膨らみ始めた。
 そして股間にあるものも小さくなってやがて消えてしまい、そこには別のものが形
成されつつあった。
 数分後には女性器がそこに現れたのである。

 一時間としないうちに、彼は完全な女性に生まれ変わってしまったのである。

 そうか……。
 わたしもこんな風に変身してしまったんだ。
 それ以前にあの女性もそうだったのだろう。
 はじめて駐在所に現れたときに、男に見える女に見えるかを尋ねた。
「や、やっぱり……そうなんですね。女になってしまったんですね」
 とか言っていてものな。
 なんとなく判ってきた。
 そうなのだ。
 これはいわば、一種のドラキュラなのではないだろうか?
 誰がその最初の女性(それとも男性か)だかは判らないが、交わった男性を女性に
変身させてしまう能力を身に着けてしまうらしい。
 ドラキュラが血を求めるように、その女性はやがて男性を追い求めて彷徨い、次な
る犠牲者となる男性と交わってこれを女性化する。
 エイズのような一種のウィルスが原因だろうか。
 性的接触によって感染し、相手を女性化させてしまう。
 だがあまりにも変身が急激過ぎる。
 ウィルスならもっとゆるやかに変身するだろう。
 魔法か呪いかだろうか。
 科学万能の世の中では笑われそうであるが、ではこの状態を説明してくれと言いた
い。
 なんにしてもドラキュラだ。

 さて問題は、女性に変身してしまった彼のことだ。
 その責任はすべてわたしにある。
 あの女性のようにとんずらするわけにはいかない。
 警察学校では席を並べ、共に町の平安のために働こうと誓い合った同僚なのだ。
 それに女性になってしまったわたしを、手厚く世話してくれた恩人でもあるし、真
剣に結婚を考えた相手でもある。放っておくわけにはいかない。
 自分の変わり果てた姿に困惑し自殺でもされたら生涯怨まれるだろう。
 そうなった状況を自らの経験をもって説明し納得させる責任があるというものであ
ろう。
 ともかく目が覚めるのを待とう。
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2018年9月 2日 (日)

銀河戦記/鳴動編 第二十一章 タルシエン要塞攻防戦 V

第二十一章 タルシエン要塞攻防戦

                V  一方のサラマンダーの方でも驚いていた。 「歪曲場シールド?」  その技術は、戦艦百二十隻分のテクノロジーだった。  あのP-300VX特殊哨戒艇にも搭載されている究極のシステムだ。  アレックスが性能追加させたものだろうが、パトリシアは聞かされていなかった。  その時、スクリーンに映像音声が流れた。 『やあ! 驚いたかな?』  フリード・ケースンだった。 「記録映像です! 次元誘導ミサイルが発射されると、自動的に再生されるようにな っていたようです」  スクリーンのフリードが語る。 『虎の子の貴重な次元誘導ミサイルだからね。撃ち落されないように、歪曲場シール ドを追加搭載してある。提督の指示だ』  やっぱりね……。  パトリシアが頷く。  フリードは歪曲場シールドの開発設計者である。ミサイルに追加搭載することなど 造作もないことであろう。 『ただし、シールド領域を粒子ビームのエネルギー帯域のみに合わせてあるために、 レーザーキャノン砲やプラズマ砲には効果がないし、魚雷などの物理的破壊兵器には 対応していない。まあ、その分安上がりで、戦艦五十隻分で済んでいる』  フリードの解説が続いている。  おそらく性能諸元を秘密にしていたために、それを知らしめるために記録映像を残 していたのであろう。 『ゆえに、そこのところを良く理解して、二発目も間違いなく発射成功させてくれ』 『そうですよ。あ・れ・に乗っていく僕の身になってちゃんとやってくださいね。二 発目が大事なんですからね』  突然、横からレイティーが顔を出した。 『こら、邪魔だぞ』 『先輩、いいじゃないですか。僕にも言わせてくださいよ』 『俺がちゃんと説明するよ』 『自分はあそこに行かないからって、こっちの身にもなってください』 『あ、こら!』  突然、映像が消えて音声だけになった。  何やらどたばた騒ぎが聞こえてくる。  どうやらマイクの奪い合いをしているようだった。  苦笑するパトリシア。その成り行きを聞いているオペレーター達も笑っている。 『パトリシアさん。お願いですよ。ちゃんと成功させてくださいね』  というところで、音声も消えてしまった。 「記録映像終了しました」  唖然とした雰囲気が艦橋内に漂っていた。 「とにかく……。予定通りに、タルシエン要塞に降伏勧告を打診しましょう」  要塞内。  大型ミサイルによって破壊、炎上するレクレーション施設の消火が行われていた。 「早く、火を消すんだ!」  突然飛び込んできた大型ミサイルによる内部爆発と言う前代未聞の出来事に、要塞 内は混乱をきたしていた。  中央コントロールは騒然となっていた。 「第一宇宙国際通信波帯に受電!」  第一宇宙国際通信波帯は、降伏勧告や受諾をする時の、国際的に取り決められた通 信波帯である。 「敵隊より投降を呼び掛けてきております。さもなくば次元誘導ミサイルを持って要 塞内部から破壊するとのことです」 「次元誘導ミサイルだと? なんだそれは」 「只今、同盟軍兵器データを検索中です」 「敵は、次ぎなる目標として動力炉、メインコンピューター、通信統制室などを予告 しています」 「馬鹿な!」 「兵器データ出ました」 「スクリーンに出せ」 「スクリーンに出します」  スクリーンに次元誘導ミサイルの概要説明図が映しだされた。  同盟軍の兵器データを閲覧できること自体が不思議ではあるが、おそらくアレック スが敢えて敵軍に漏洩させたと考えるのが妥当であろう。 「ワープ射程は、最少一・二宇宙キロから最大三十六光秒の間」 「やはり先ほどのミサイルが、次元誘導ミサイルのようです。情報部よりの報告によ れば、次元誘導ミサイルの開発には膨大な予算がかかるため、試作機が数基製作され ただけで、棚上げになったままということになっています」 「うーん、どうかな……。相手はやり手のランドールのこと。誰もが欲しがる攻撃空 母を手放して、駆逐艦や巡洋艦主体の高速遊撃部隊を編成したり、戦艦百二十隻分の 予算がかかる高性能哨戒艇を多数配備したりしているからな。この日のために、戦艦 を削ってでも製作させていたとも考えられる」 「開発責任者の技術将校フリード・ケイスン少佐がランドールの第十七艦隊に技術主 任として配属されていることを考えますと有り得ない話しではありませんね」 「次元誘導ミサイルの性能からすれば、十基もあれば十分要塞の機能を破壊できま す」 「ワープして内部から破壊されては守備艦隊も堅固な要塞もまったく無意味というわ けか」 「反物質転換炉や貯蔵システムに一発食らったらひとたまりもありませんね。解き放 たれた反物質による対消滅エネルギーで木っ端微塵です。もっとも敵の目的が要塞の 奪取である以上、攻撃目標から外すのは当然でしょうが」  要塞には防衛の要として、陽子・反陽子対消滅エネルギー砲(通称・ダイバリオン 粒子砲)という究極の主力兵器が搭載されており、反物質転換炉と貯蔵システムはそ の一部構成施設である。反物質が反応しないようにレーザーによる光子圧力によって 宙に浮かした状態で密封保存されている。また緊急時には、レーザー出力を切ること によって、解放された反物質による要塞の自爆も可能である。 「敵が再度、投降を呼び掛けています」 「馬鹿が。投降などできるわけがないじゃないか。『タルシエンの橋』の出口を守る この要塞を奪われれば、同盟への足掛かりを失うばかりか、同盟に逆侵攻の機会を与 えることになる」 「投降するよりも要塞を破壊してしまったほうがいいということですね」 「そうだ」 「どうなされますか?」 「無論、投降などできるわけがない。守備艦隊を前進させろ! 敵艦隊と要塞の間に 壁を作って次元誘導ミサイルとやらを発射できないようにしつつ、撃滅するのだ」
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2018年9月 1日 (土)

妖奇退魔夜行/蘇我入鹿の怨霊 其の漆

陰陽退魔士・逢坂蘭子/蘇我入鹿の怨霊 其の漆(土曜劇場)

(漆)糸口  通夜の終わった金沢家。  これまで葬儀のため遠慮していた井上課長が蘭子を連れて、聞き込みのために来訪し ていた。 「午前二時半頃という真夜中に、聡子さんが出歩いていた理由をご存知ですか?」  単刀直入に切り出す井上。 「いえ、何も。自分のことをあまり話したがらないものですから」 「そうですか……」  親子断絶の機運ありありというところか。 「聡子さんのお部屋を見させて貰ってもいいですか?」  蘭子が切り出す。 「え、ええ。どうぞ」  許可を得て、二階の聡子の部屋に入る蘭子。  聡子は被疑者ではないので、井上課長は遠慮して居間で母親からの事情聴取を続けて いる。  あたりをぐるりと見まわして、 「別に変わったところはないみたいね……」  数々のヌイグルミが置かれたベッドサイド、アニメアイドルポスターの貼られた壁。  ふと、机の上に置かれたチラシに目が留まる。  京都文化博物館「刀剣乱舞DAY」開催!  同館の戦国時代展は、刀剣女子を集客しようと4月16日まで開催されたもので、来場 者500名限定で、アニメイラスト「五虎退」のクリアファイルが配布されている。  刀剣女子とは、2015年にオンラインゲームとして発表された「刀剣乱舞」というゲー ムソフト及びアニメの流行によって、登場するキャラクターや刀剣について、多くの女 性ファンが集まり活発なSNSでの情報交換が行われているものである。  上野・東京国立博物館では大盛況の「鳥獣戯画展」と同様に、本館1階の日本刀の展 示スペースが来場者の静かな興奮と熱気に満ちていた。  栃木県足利市では、“刀剣女子”の間で評判になっている、連日にぎわいを見せた同 市立美術館(同市通)の特別展「今、超克のとき。山姥切国広、いざ、足利」(4月2 日終了)。連日1千人以上が訪れ、入館者記録を更新したという。  ちなみに刀剣乱舞の打刀の部類に蘭子の持つ「長曾祢虎徹」も登場する。 「今、はやりの刀剣女子というとこかな……そして辻斬り事件」  事件の解決に繋がる糸口が、微かながらも見えてきたというべきか。  聡子の部屋から階下に降りてくる蘭子。 「何か見つかったかね?」  井上課長が尋ねる。 「ええ、こんなものがありました」  と、例のチラシを差し出す。 「刀剣乱舞か……」  それを母親に見せながら、 「聡子さんは刀剣に興味を持たれていたようですが、何か心当たりありませんか?」 「いえ、これといって……」 「そうですか……このチラシは頂いてもよろしいですか?」 「どうぞ」  チラシを折りたたんで胸ポケットにしまいながら、 「では、何か思い当たることが分かりましたら警察にご連絡下さい。今日はこれで失礼 します」  これ以上訊ねることもないだろうと切り上げる井上課長。
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