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2018年11月 7日 (水)

性転換倶楽部/ある日突然に II page-10

女性化短編小説集「ある日突然に」より II

page-10  喧騒な店内を、ピアノの音が静かに流れている。  何を隠そう、弾いているのは、このわたし。  ある日の事、とある客が店に置いてあったピアノを弾きはじめた。  猫ふんじゃった、という曲である。  最初の数小節なら、誰でも一度くらいは弾いたことがあるかも知れない。 「お上手ですよ」  弾き終えた後で、軽く手を叩きながら誉め言葉を言う。 「おせじは結構だ。お、そうだ。君、弾いてみろ」  ということで弾かされるはめになってしまった。  自慢じゃないが、これでも高校時代は音楽部ではピアノ担当だったのだ。腕前は、 かなりのものがある。  客のご所望とあれば弾くしかない。  深呼吸してから、ピアノを弾きはじめる。  ピアノソナタ「月光」の曲である。  店の中にいたものが、一斉に振り向く。  おお!  皆は一様に、こんな場所で、ピアノ鑑賞ができるなどとは、思いもしなかったとい う表情をしている。  演奏を終えると、店内に拍手喝采が湧きあがった。 「ピアノ、お上手だったわよ。ひろみさん。あなたにこんな特技があったなんて知ら なかったわ」 「せっかくの腕前が惜しいわね……。そうだわ、指名がない時は、ピアノを弾いても らいましょう。ピアノの生演奏ありのニューハーフ・バーというのも新しい宣伝文句 に使えそうよ。どうかしら」  ありがたい申し出であった。  ピアノを弾いていれば客接待しないで済む。酒を飲むこともなく肝臓を休めさせら れるというものである。 「はい。こんな腕前で良ければ、いいですよ」 「決まりね」  というわけで、その日からピアノの生演奏がはじまったのである。  数日後。  黒沢がピアノの縁に片肘ついて、グラスを傾けながら、ピアノの演奏に耳を傾けて いる。丁度弾いている時に来店してきて、わたしを指名した後に、そのままピアノの そばに寄ってきたのである。  弾き終わるののを待ってから、言葉をかけてくる。 「へえ。君がピアノを弾けるとは、ますますもって惚れ込んじゃいそうだよ」  といいつつ、グラスを差し出す。 「ありがとう」  とそれを受け取って一息に飲み干す。 「ああ! おいしい。丁度喉が乾いてたの」 「いい、飲みっぷりだよ」 「お席の方に移動しますか?」 「いや。もうしばらくここで君の演奏を聞きたいな」 「それでは……」  次の曲を弾きはじめる。  目を閉じ、うっとりとした表情で聞き入っている。 「クラシックがお好きなんですか?」  曲を弾きながら尋ねてみる。 「好きというほどでもないけど、それなりに聞いているよ。君こそ、ピアノを弾き慣 れているみたいだけど、何歳頃から弾いているの?」 「はじめたのは三歳頃からです。情操教育とかで、母に連れられて稽古事に通ってい たようです」 「しかしピアノのお稽古とは……もしかしたらお母さん、君の性格を見抜いていたの かもな」 「性格?」 「小さい頃からピアノを習わせるくらい、おとなしくてやさしい性格じゃなかったの かな。やんちゃ坊主だったら、とても無理なことだからね」 「またあ、黒沢さんたら、すぐそんな事言うんだから」 「そうやって頬を赤くするところが、また可愛いんだよな」 「もう……」  会う度に、可愛いとか女性らしいとか言われ続けている。しかし少しも嫌味なとこ ろがなく、紳士的に接してくれている。 (どうしてかな、黒沢さんといると、なぜか自然に女らしく振る舞っている。女らし いなんて言われると、嬉しくて涙が出ちゃいそう)
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