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2018年11月16日 (金)

性転換倶楽部/ある日突然に II page-14

女性化短編小説集「ある日突然に」より II

page-14  その製薬会社は、病院から商店街を抜けた駅前のビル街にそびえ立っていた。  受付けに紹介状を渡して面接を受けに来た事を伝える。  ネームプレートに、『倉本里美』と記された美しい女性が対応した。 「渡部由香里様ですね。お待ちもうしておりました。早速面接会場へご案内いたしま す」  先に立って案内する受付嬢の後に続く。 (きれいな女性ね。さすが、受付嬢だわ) 「由香里!」  背後から、聞き覚えのある声が聞こえた。 「英二さん!」  振り返ると、驚いたような表情で英二がたっていた。  どうして、英二さんがここに?  そう言えば、製薬会社に務めているって言っていたけど……。じゃあ、ここが英二 さんの会社? 「やっぱり、由香里だ」 「専務。お知り合いだったのですか?」  受付嬢が尋ねる。  専務!  うそ、英二さんが専務?  信じられなかった。 「まあね……で、この子が会社に何の用事かな」 「はい。面接です」 「面接……? こんな時期にか」 「はい、そうです」 「おい、ちょっと紹介状を見せてみろ」  受付嬢から紹介状を受け取って、食い入るように見つめている。 「これは親父の紹介状じゃないか! ということは……。由香里さん、そういうこと だったのか」  英二は一人で合点したように言うと、わたしの顔をじっと見つめている。 「専務。面接の時間に遅れます」 「そうだな。里美さん。社長の面接が終わったら、俺のところにも連れてきてくれ。 一緒にな」 「かしこまりました」 「由香里。後でな」 「は、はい」  そして面接も終わり、専務室に案内された。受付嬢の里美も一緒である。  にっこりと微笑んだ英二が、豪華な椅子に腰掛けたまま語りかけてくる。 「僕は、君のすべての事情を知っているから、安心して聞いてくれないか。ともかく、 就職おめでとう」 「あ、ありがとうございます」 「親父に会ってびっくりしただろう?」 「はい。わたしを手術してくださった先生が、まさかこんな大企業の社長だったなん て。そしてあなたが専務ということも」 「あはは、親父の副業が産婦人科医、そして僕はルポライター。似た者親子ってとこ ろかな」  確かにそうかも知れない。この親にしてこの子ありって感じ。 「それにしても、君が連絡を絶った理由は判ったが、こんな大切な事、僕にも相談な り連絡して欲しかったな」 「ごめんなさい。先生が、手術を急いでいたもので、相談する時間が取れなかったん です」  素直に謝る。 「まあ、いいさ。要は、僕のために決断したんだろうからな」  およそ半年が過ぎ去った。  自分と同じように性別再判定手術を受けた、磯部響子や倉本里美と同じ受付に配属 されて、会社案内の任務をそつなくこなす日々が続く。  受付嬢三人娘の一人として社の内外で有名になっていた。  会社の方針で昼休みは、二十四時間体制の海外通商部や警備部を除いて、全社一斉 に休憩時間となり照明も落とされる。  だから受付嬢としても、三人揃って屋上で弁当を広げられるというわけだ。受付係 りは秘書課に属していて、同年代の女性はいないから、三人が集まるのは自然だった。 「どう、身体の方は馴染んできた? 生理は順調にきてる?」  三人の中では一番の古株で、里美に女性らしさのいろはを教えた響子が尋ねてきた。 「ええ。もうすっかり、自分の身体って感じよ。生理も毎月あるわ」 「良かったわね。社長の腕は完璧だから」  三人の中で一番の美人な里美が言った。 「やあ、三人揃って昼食かね」 「専務!」  背後にいつの間にか英二が立っていた。  わたしも他の二人も驚いた。  屋上は、いわば穴場みたいなもので、わたし達三人しか食事場所としていなかった。 ビル内には安価なメニューの社員食堂があるし、外に出ればすぐ繁華街が広がってい る。食事時に上がってくる者はほとんどいない。  あ、そう言えば。英二さんにお昼は屋上で食べてると話したことがあったわ。 「ああ、由香里。これ、弁当箱返しておくよ。おいしかったよ」 「おそまつさまです」  弁当箱を両手で受け取って手提げ袋にしまう。 「へえ……由香里ってば、専務の弁当作ってあげてるんだ」 「いつも外食だっていうから、栄養が偏っちゃいけないと思ったから。それにお弁当 一つ作るのも二つ作るのも、たいして手間は変わらないもの」 「愛妻弁当か……。わたしも誰かに作ってあげたいな」  お弁当箱なら食後に、いつもこちらから取りに行ってるのに、今日に限ってどうし たんだろ……?  何かわけがありそうだった。 「ところで、君達三人共。今夜開いているかい?」 「え? あ、開いてますけど」  わたしが答えると、他の二人も首を縦に振った。 「じゃあ、仕事が引けたら玄関先に出ていてくれないか。車で迎えに来るから」 「わかりました」 「じゃあ、後で」 「ええ」  階段口から階下へ消える英二。 「三人揃ってとは、どういうことかな」 「由香里だけなら、デートなんだろうけど……。由香里、何か心当たりはない?」 「わからないわ」
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