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2019年1月26日 (土)

妖奇退魔夜行/蘇我入鹿の怨霊 其の廿捌(最終回)

 陰陽退魔士・逢坂蘭子/蘇我入鹿の怨霊 其の廿捌(最終回)

(廿捌)大団円  戦いは終わった。  石上直弘と魔人は倒したものの、街中に広がった怨霊達が残っていた。  各所で燃え上がる火災、火の粉が風に乗ってここまで飛んできていた。  見つめる蘭子の頬をほのかに赤く照らす。 「課長。布都御魂を返していただけますか」 「ああ、わかった。ほれ」  預かっていた布都御魂を蘭子に返す井上課長。 「ありがとうございました。さてと……、これからが大変です」 「どうするつもりだ?」 「これを使います」  と、布都御魂を示した。 「布都御魂?」 「ただチャンバラをするためだけに、託宣されたと思いますか?」  頬笑みを浮かべながら、儀式の準備を始めた。  まずは地面に突き刺さっている七星剣を、布都御魂と刃を重ね合わせるようにして引 き抜く。  七星剣を単独で扱うと、祟られる可能性があるからである。布都御魂の神通力をもっ て、それを押さえつけるのだ。  二つの刀を捧げ持ち、板蓋宮跡の中心部にある「大井戸」と推定されている窪みに入 り屈み込んで、その縁に刀を安置した。  両手を合わせて祈るように、眼を閉じて静かに大祓詞の詠唱をはじめる。 大祓詞全文資料によっては、文言の異なる祝詞が多数存在します。  井上課長も手を合わせ、目を閉じて祈っていた。  災禍によって命を失った人々はもちろんのこと、石上直弘に対しても憐れみを持って。  やがて布都御魂剣と七星剣が輝きだし、光は四方八方に広がってゆく。  それとともに町中の怨霊達が、引き寄せられるように集まってくる。  そして布都御魂に吸い込まれるように消えてゆく。  声を掛けようとした井上課長であるが、一心不乱に祝詞を唱える蘭子に躊躇を余儀な くされた。実際にも、精神集中している蘭子には、声は届かないだろうが。  最後の祝詞が詠唱される。 「……今日の夕日の降の、大祓いに祓へ給ひ清め給ふ事を、諸々聞食せと宣る」  パンッ!  と手を叩いて手を合わせて、しばらく黙祷。  静かに目を開き、深呼吸する蘭子。  辺り一面の怨霊達は姿を消し、平穏無事な世界が広がっていた。  ゆっくりと立ち上がって、井上課長のもとに歩み寄る蘭子。 「終わりました」 「そうか……お疲れ様」  携帯を取り出して、奈良県警の綿貫警視に連絡をとる井上課長。  押っ取り刀で駆け付けた奈良県警の現場検証が始まる。  石上直弘の遺体の写真撮影、遺留品の回収など手っ取り早く進められてゆく。  事情聴取には、井上課長が詳細な報告を伝えていた。 「時間も遅いですから、詳しいことは明日にしましょう」  女子高生である蘭子に配慮して聴取は切り上げられた。  旅館に戻った二人。 「証拠物件として、これが取り上げられなくて良かったです」  と、竹刀鞘袋に納められた二振りの剣。  七星剣と布都御魂。 「綿貫警視が骨折ってくれたからな」  怨念が籠っているから、一般人が触ると呪われる。  蘇我入鹿の怨霊事件を再び繰り返し起こしたいのか?  そうやって脅しをかけて強引に、陰陽師である蘭子に、刀剣の所持を継続許可したの である。  布都御魂を元の地に返すために、石上神宮禁足地へと戻ってきた蘭子。  布都姫が現れた。 「ありがとうございました」  蘭子がお礼を述べると、軽く頷くような素振りを見せて、静かに消え去った。  足元の地面を掘り起こし、元の様に「布都御魂」を埋め戻してゆく。  手を合わせて静かに黙祷する。  禁足地の外では、井上課長が、蘭子の帰りを待っていた。  やがて戻ってきた蘭子に話しかける。 「本物の布都御魂かも知れないのに埋め戻すのかね」 「何百年間もの長い年月、人知れず眠っていたのです。元の場所でそっと静かに眠らせ てあげましょう」 「そういうものかねえ……」 「御神体がいくつもあったら、有難さも薄れるじゃないですか」 「それはそうですけどね……」  その後、拝殿に参拝して神に事件報告する蘭子。  神様のお告げで布都御魂を授けられたのであり、お礼参りするのは当然。 「明美も刀剣に興味を持たなければ、事件に巻き込まれなかったのに」  空を仰ぎながら、一粒の涙を流す蘭子だった。  社務所で談話する奈良県警の綿貫警視と宮司。 「布都御魂を埋め戻して良かったのでしょうか?あちらが本物かも知れないのに」 「あちらの方は、蘭子さんが神のお告げで授かったものです。同様に埋め戻せというお 告げがあったのでしょう。今でも禁足地を掘ってみれば、刀剣類がいくらでも出てくる でしょう」 「またぞろですか?」 「そうです。真偽のほどは神様にしか分かりません。悩んでみたところで仕方なし、伝 承にいう剣と思しきものが出土した。我々は、それを布都御魂と信じて奉るしかないの です」  傍らには、宮司らの手によって除霊されたばかりの「七星剣」が置かれている。  翌日の四天王寺宝物殿。  井上課長と土御門春代、そして四天王寺住職が秘密の地下施設扉前に揃っていた。  開錠の呪文で封印を解いて、開いた扉から入館する一同。  七星剣を元の刀掛台に戻して、改めて拝礼する住職。 「戻ってきて良かったです。それもこれも蘭子ちゃんのお陰です」  向き直ってお礼を言うと、 「取り戻したとはいえ、多くの人々の尊い命が失われました」  春代が悲しげに答えた。 「はい。重々心に刻んで、弔うことにしましょう」  宝物殿を退出して、再び呪法で密封する住職。  井上課長が告げる。 「今回の事件に際して、七星剣のことは闇に封じます。科学捜査が基本の現在の警察事 情では、怨霊や魔人による犯罪だった……なんて公表できませんからね。裏とはいえ、 これも立派な国宝の一つでもあるし。証拠物件として提出わけにもいかないし」 「ご配慮ありがとうございました」  四天王寺境内を歩きながら、 「蘭子ちゃんに会いたかったですな」 「高校生ですから、授業中です」 「そうでしたな」  阿倍野女子高等学校、1年3組の教室。  静かな教室内に、教師の教鞭の声とノートに書き写すペンの音。  窓際の机に座りながら、外を眺めている蘭子。  吹き渡るそよ風が、その長いしなやかな髪をかき乱してゆく。  一つの事件は解決したが、蘭子と井上課長の【人にあらざる者】との戦いはこれからも続く。 蘇我入鹿の怨霊 了
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