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2019年8月30日 (金)

妖奇退魔夜行/胞衣壺(えなつぼ)の怪 其の拾漆

陰陽退魔士・逢坂蘭子/胞衣壺(えなつぼ)の怪

其の拾漆 兵士の霊  やがて現場に到着する。  旧民家が跡形もなく姿を消し、整地された土地には地鎮祭に設置された縄張りが今も 取り残されていた。  その片隅に怪しげな黒い影が、微かにオーラを発しながら立っていた。  それは少しずつ形を現わしてゆく。  旧日本軍の軍服を着た兵士の姿だった。 「霊魂?」  怨念を残したまま成仏できずに彷徨っているのか?  白虎から降り立ち、その敷地に一歩踏み入れる。  そして丁寧に語り掛ける。  この世に彷徨っている霊ならば、成仏できないでいる根源を取り払ってやらなければ ならない。 「あなたは誰ですか?」  幽霊になった者に、名前など聞いても意味はないかも知れないが、とにかく取っ掛か りを得るためには会話することである。 「夜な夜な、罪もない人々を殺(あや)めたのはあなたですか?」  前問に答えないので、引き続き尋ねる。 「復讐……」  やっとこぼそりと呟くように答える。 「何のための復讐ですか」 「わたしの生活を残忍にも踏みにじった」 「踏みにじったとは?」 「お国のために出征したというのに、奴らはその隙をついて好き勝手にした」 「奴らとは?」 「朝鮮人だ!」 「在日朝鮮人ということですか?」 「だから朝鮮人に復讐するのだ」 「すると朝鮮人を殺めていたというのですか?」 「そうだ!」  初耳だった。  被害者はすべて在日朝鮮人だったというのか?  井上課長から聞いた事件簿と照らし合わせて、これですべての因果関係が繋がった。  ともかくこれ以上の惨劇はやめさせなければならない。 「浄化してあげます」  手を合わせて、この世に呪縛する幽霊の魂を解き放つための呪文を唱え始める。  と、突然。 「そうはさせない!」  怒声が響き渡った。  敷地の片隅に、胞衣壺を抱えた美咲が、姿を現した。 「美咲さん……じゃないわね。魔人?」 「そうです。この娘の身体を借りて話しています」 「血の契約を交わしたのね」 「その通りです」  すんなりと答える美咲魔人。 「それはともかく、せっかく情念を増長させてあげて、怨みを晴らさせて上げていたの に」  白虎がうなり声を上げて威嚇をはじめた。 「大丈夫よ」  今にも飛び掛かりそうになっているのを制止する。  相手が誰であろうとも、まずは対話であろう。  まあ、聞いてくれる相手ではないだろうが……。  戦って勝ったとしても、それは美咲の死をもたらすことになる。  リストカットの痕跡を見ても、血の契約を交わしたことは明らかであるから、相手を 倒すことは美咲を死に追いやることでもある。  手を引いてくれないかと、まずは交渉してみるのも一考である。 「いやだね」 「何を?」 「貴様の考えていることくらい読めるぞ。この身体から手を引けというのだろう」 「その通りです」 「馬鹿か! せっかく手に入れた依り代を手放すはずがなかろうが」 「では、戦うまでです」 「この娘がどうなっても良いというのか?」 「仕方ありません。血の契約を交わした人間を助ける術はありませんから」 「知っていたか。まあいい、ではいくぞ!」
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