最近のトラックバック

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ

他のアカウント

« 2019年8月 | トップページ | 2019年10月 »

2019年9月

2019年9月30日 (月)

あっと!ヴィーナス!!第一章 part-2

あっと! ヴィーナス!!
第一章 part-2 「弘美、隠れてないで顔を見せなさい」 「……」  見せられるはずがなかった。しかし完全に逃げ場はなかった。  かといって出られない。  ううーん。どうしたらいいんだよ。 「俺が布団を引っぱがしてやる」  次兄の慎二兄さんの声だ。  だ、だめー!  剥がされないように裏側からしっかりと布団を抱き寄せる弘美。 「待って!」 「なんだよ」 「あなた達は、ちょっと外へ出ていなさい」 「ええ? 何でだよう」 「もし武司の言ってることが本当なら、弘美は恥じらい多き年頃の女の子ということ じゃない。兄弟とはいえ、異性の前に姿を見せられて?」  おお、さすが母親だけあるよ。女の子の心理を知り尽くしている。  って、そうじゃないだろう。 「おい。おまえら、母さんの言う通りだ。出るぞ」  言い出したのは長兄の信一郎兄さんだ。 「ちぇっ、しょうがねえな」  三兄の雄三兄さん。  と、ぞろぞろ部屋を出ていく足音。  やがて扉を閉める音。  そして静かになった。 「さあ弘美、顔をお見せなさい。お兄さん達はもういないわ」  やさしく諭す母。 「もし武司の言うとおり、弘美が女の子になったとして、お母さんにだけは、姿を見 せられるわね」  それでもじっと布団の中で固まっている弘美。強制的に掛け布団を剥がされる気配 はなかった。あくまで本人の意思で姿を見せるのを待つつもりのようだ。  いつまでも姿を出さないので、静かに語りはじめる母。 「ねえ、弘美。以前からお母さんが、女の子が欲しがっていたのは知っているわよね。 産まれてくる子はみな男の子。これが最後と割り切って産んだ五人目のあなたも結局 男の子だった。悔しくて、あなたに弘美って女の子みたいな名前をつけちゃった。覚 えていないだろうけど、ちっちゃい頃はあなたに女の子の服を着せて慰んでいたわ。 ほら、そんな写真があったのを覚えているでしょ」  そう確かに、弘美の記憶には家族のアルバムに、可愛いちっちゃな女の子の写真が あったのを思い出した。そのアルバムを見て自分自身の幼少の写真がなくて、知らな い女の子の写真があるのを不思議に思ったものだった。母は、その頃の弘美が写真嫌 いでカメラを向けても逃げ回っていて、その女の子は弘美の幼馴染みの一人たとか言 っていたけど、そうかあの女の子が……。今更にして納得する弘美だった。ちなみに 幼馴染みには双葉愛という女の子がいる。 「だから、ねえ弘美。もしあなたが本当に女の子になったというのなら、お母さんは こんなに嬉しいことはないわ。だってこれからは女同士の話しができるんですものね。 今流行のファッションの話しをしたり、ショッピングにも一緒に行けるのよね。今ま では自分以外は、みんな男性でしょ。お父さんと五人の息子達、合わせて六人の男性 の中でたった一人自分だけが女性。こんな寂しいことはないわよ。でも今日からは違 うわよね? 弘美が女の子だったらね」  弘美を産み育てた心境やアルバムの事を持ち出して、とくとくと説得を続ける母。  このまま隠れているわけにもいかなかった。  自分を産んでくれた母、弘美が女の子になったことを心底喜んでいることが、その 口調からはっきりと感じ取られていた。  もっそりと布団から顔を現わす弘美。 「あら、髪が伸びたのね。いいわよ、今の弘美には似合っているわよ。さあ、全身を 見せてくれるわよね」  あくまで弘美の自意識に委ねる母。  布団を捲くって、その全身をあらわにする弘美。  一糸纏わぬ女の子の裸体がそこにあった。 「まあ……素敵!」  瞳を爛々と輝かせて、歓喜しながら、 「弘美なのよね……?」  一応念押しの確認している母。 「そ、そうだよ。俺、弘美だよ」 「そう……ほんとに、女の子になったんだね」  言うが早いか、力強く抱きしめられた。 「うれしい……弘美、ありがとう」  うれしいと感謝感激されても困るんだけど……と、思っていても口に出せる心境で はなかった。  母は涙を流し、身体を震わせながら弘美を抱きしめ続けていた。 「お母さん、苦しいよ。そんなに強く……」 「我慢してらっしゃい。母娘のスキンシップは大切なの!」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月29日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第五章 ターラント基地攻略戦 II

 機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦
                 II  CCU(循環器系集中治療室)では、医師や看護師が二十四時間交代制で緊急事態に 備えていた。  当直の医師に尋ねるフランソワ。 「どんな具合ですか?」 「かなり心臓が弱っています。極度の脱水症状によって、血液量が減少し心臓に戻って くる血液が不足して、空打ち状態となって負担が増し、心室細動などの症状が出ており ます」 「助かりますか?」 「最善を尽くしますが、五分五分というところでしょうか」 「とにかくお願いします」 「はい」  ミネルバ発着場。  訓練生達が全員勢揃いしている。  その最前列に対面するように、サブリナ中尉とハイネ上級曹長、そしてナイジェル中 尉とオーガス曹長が並んでいる。 「我々四人は、君達の訓練教官を任じられた。そちらの二人は、パイロット養成教官の ナイジェル中尉とオーガス曹長。そして私はサブリナ中尉、こっちがハイネ上級曹長。 君達の基礎体力をつけさせるための体育教官である」  ワイワイガヤガヤと隣同士で囁き合っている訓練生達。さしずめハイネ上級曹長のこ とであろう。 「それでは、早速はじめるぞ! まずは場内五十周からだ」  ええ!  訓練生達から悲鳴があがる。  場内外周はおよそ五百メートルほどであるから、五十周となると二万五千メートルで ある。 「先頭をハイネ上級曹長がスローペースで先導する。諸君らは遅れないように、しっか り着いていくように。もし周回遅れとなって追い越されたら、居残り特訓を行うのでそ のつもりでいろ」 「ええ! うそお!」  またもや悲鳴。 「ようし。それじゃ、出発!」  ハイネが走り出す。  それに続いて仕方なく、ゾロゾロと走り出す訓練生達。 「しっかり走れ! 居残り特訓がやりたいのか!」  はっぱをかけられてスピードを上げる。  サブリナ中尉は一緒には走らないようで、号令係というところであろう。  女性であるがゆえに筋骨隆々とはいかないが、その引き締まった身体は相当な鍛錬を していることを物語っている。  パイロット養成官のナイジェル中尉とオーガス曹長は、取りあえずは用がないので、 自分に与えられた新型モビルスーツに乗り込み、システムの調整をはじめた。 「しかし……すごいな。ミネルバと同じ超伝導磁気浮上システムだ。これなら空中を自 由に飛びまわれるぞ」  機関担当のナイジェル中尉が感心していた。 「超伝導ということは、冷却用の液体ヘリウムの補充が欠かせないということですよ ね?」 「しかしシステムは非常にコンパクトにまとめられている。超伝導回路に電力を供給す る核融合炉も、並みの戦艦クラスのパワーゲージがある。つまり、これ一機で戦艦と互 角に戦える。いや、機動力を考えればそれ以上ということか」 「艦長や上層部がこの機体の回収にこだわったのもそのため?」 「そういうことだ。実に素晴らしい機体じゃないか」 「感心するのはともかく、機内に入り込んだ砂をまずどうにかしませんか? 砂漠に長 時間放置されていたので、砂だらけじゃないですか」 「ああ、そうだな」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月28日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証 VI

第四章 皇位継承の証
                 VI  アレックス・ランドール提督は、第一皇子として最上位にあるものとして、謁見 の間の壇上の玉座のそばの位置を与えられた。大臣や将軍達を上から見下ろす格好 となったわけである。  何かと反問していた大臣達の、ばつの悪そうな表情が印象的であった。  そして、マーガレット皇女が、眼下にかしずいて、アレックスの言葉を待ってい た。  アレックスは、マーガレット皇女、すなわち自分の双子の妹の助命嘆願を、摂政 であるエリザベス皇女に申し出た。 「そもそもマーガレット皇女は、私の身分を保全・確保しようとしたことが、反乱 の要因となったわけで、今こうして私がここにいることが、皇女の正当性を証明す るものです。情状酌量をもって対処していただければ幸いです」 「と、第一皇子が申しておる。大臣達はどう思うか?」  何せ第一皇子は、皇帝に次ぐ地位であるから、その嘆願となれば絶対的とならざ るを得ない。 「いえ……。第一皇子のご意見となれば、我々一同に反対する者はおりません」 「そうか……」  と頷いたエリザベス皇女は、マーガレット皇女に向き直って発言した。 「マーガレットよ。そなたの起こした罪は重大ではあるが、皇子の温情をもってこ れを許すことにする。今後とも第一皇子、並びに帝国に対して忠誠を誓うこと。よ いな」 「はい。誓って忠誠を守ります」 「よろしい。では、列に戻りなさい」  マーガレット皇女は深々とお辞儀をすると、ジュリエッタ皇女と対面する位置に 並び立った。  ほうっ。  というため息が誰ともなく沸き起こる。  その夜の宮殿での皇家の夕食の席。  アレックスとマーガレットと家族が全員揃ったはじめての食事となった。  政治においては摂政であるエリザベスが統制権を有しているが、身内だけの席で はアレックスが主人として最上の席を与えられた。それまではエリザベスが座って いた席である。 「ところで、アレックスが願い出ていた協定のことだけど……。まだまだ難解でさ らに時間が掛かりそうです」  エリザベスが申し訳なさそうに答える。ここは身内の席なので、皇子や皇女と言 う公称は使わない。 「ベス、どういうことなの?」  ジュリエッタが質問する。アレックスの第一皇子という地位をもってすれば、で きないことなどないと思っていたからである。 「解放戦線との協定ともなれば、援軍を送るとしても一個艦隊やそこらで済むはず がないでしょう。それに援助物資の運搬にしても多くの輸送船を割譲しなければな らないわ。しかも中立地帯を越えて共和国同盟に進駐することになる。総督軍や連 邦軍が黙っているはずがないじゃない。これは国家間の紛争となるに十分な意味合 いを持っている。つまり結局として全面戦争に向けて、銀河帝国艦隊全軍を動かす だけの権力が必要なの。それができるのは皇帝か、皇太子だけに許されていること なのよ」 「つまり、第一皇子の権限を越えているというわけね」  マーガレットがエリザベスの後を受けるようにして答えた。
ポチッとよろしく!
11

2019年9月27日 (金)

妖奇退魔夜行/胞衣壺(えなつぼ)の怪 総集編・前編

陰陽退魔士・逢坂蘭子/胞衣壺(えなつぼ)の怪
其の壱 廃屋  阿倍野界隈にあって、廃屋となっていた旧民家の解体が行われることとなった。  油圧ショベルが容赦なく廃屋を潰してゆく。  悲鳴のような軋めき音をあげながら、崩れ行く廃屋。  長年積もり積もった家屋内の埃が舞い上がり、苔むした臭気が辺り一面に広がる。  ショベルでは掘れない細かい場所は、作業員がスコップ手作業で掘り起こしている。  水道管やガス管が通っている場所は、土木機械では掘れないからだ。  その手先にコツンと手ごたえがあった。 「何かあるぞ」  慎重に掘り起こしてみると、陶器製の壺のようであった。 「壺だな」 「まさか小判とか入ってないか?」 「だといいがな、せいぜい古銭だろう」 「いわゆる埋蔵金ってやつか?」 「入っていればな」 「やっぱ警察に届けなきゃならんか」(遺失物法4条) 「持ち逃げすりゃ、占有離脱物横領罪になるぞ」(刑法254条)  廃屋の解体作業工事屋だから、埋蔵物に遭遇することは、日常茶飯事。  それらに関する諸般法律はご存知のようであった。 「ともかく蓋を開けてみよう」  昔話のように、大判小判がザックザクということはまずありえない。 「開けるぞ!」  蓋に手を掛ける作業員。 「あれ?開かないぞ……」 「くっついちゃったか?」  内容物が溢れて、身と蓋の間で接着剤のように固まってしまったか。  金属ならば酸化反応で、生物ならば腐敗によって、内部の空気を消費して圧力が下が り、外から押さえられている場合もある。 「だめだ、開かないね」  壺を振ってみるが、音はなく内部にこびり付いているようだった。  その時、現場監督がやってきた。 「何をしているか、ちゃんと働かんと日給はやらんぞ」  怒鳴り散らす。  雨続きで解体期限が迫っていて、不機嫌だったのだ。 「いやね、こんな壺を地中で見つけたんですよ」  と、壺を掲げ上げて見せる。 「どこにあった?」 「土間の台所入り口にありました。地中に水道管が通っているので手掘りして見つけま した」  ちょっと首を傾げて考える風であったが、 「たぶん……胞衣壺(えなつぼ)だな」 「えなつぼ?」 「出産の時の後産の胎盤とかへその緒を収めた壺だよ。昔の風習で、生まれた子供の健 やかな成長や、立身出世を祈って土間や間口に埋めたんだ」 「た、胎盤ですかあ!?」  驚いて壺を地面に置く作業員。 「祟られるとやっかいだ。とりあえず隅にでも埋めておけ。整地した後の地鎮祭やる時 に、一緒に弔ってやろう」 「分かりました」  言われたとおりに、敷地の隅にもう一度埋め戻し、手を合わせる。 「祟りませんように……」 其の弐 地鎮祭  数日後。  地鎮祭が執り行われることになった。  神主には、最も近くの神社に依頼されることが多い。  取りも直さず、直近となれば阿倍野土御門神社ということになる。  宮司である土御門春代が高齢のため、名代として蘭子が地鎮祭を司ることとなった。  日曜日なので学校は休み、きりりと巫女衣装を着こんでいる。  敷地の中ほどに四隅を囲うようにして青竹を立て、その間を注連縄(しめなわ)で囲 って神域と現世を隔てる結界として祭場とする。  その中央に神籬(ひもろぎ、大榊に御幣・木綿を付けた物で、これに神を呼ぶ)を立 て、酒・水・米・塩・野菜・魚等、山の幸・海の幸などの供え物を供える。 「蘭子ちゃんの巫女姿も堂に入ってるね」  施工主で現場監督とは、蘭子が幼い頃からの顔馴染みであった。 「ありがとうございます」  つつがなく地鎮祭は進められてゆく。 地鎮祭の流れ  係員が静かに監督に近寄って耳打ちしている。 「監督、あの胞衣壺が見当たりません」 「見当たらない?」 「はい。ここに確かに埋めたんですけど……」  と、埋め戻した場所に案内する係員。 「誰かが掘り起こして、持ち去ったというのか?」 「胎盤とかへその緒ですよね。そんなもん何するつもりでしょう」 「中身が何かは知らないのだろうが、梅干し漬けるのに丁度良い大きさだからなあ」 「梅干しですか……でも、埋まっているのがどうして分かったのかと」 「通行人が立ちションしたくなって、角地だから陰になって都合がよいから」 「それで、掘れてしまって壺が顔を出し、持ち去ったと?」 「まあ、あり得ない話ではないが」  二人して首を傾げているのを見た蘭子、 「何かあったのですか?」 「実はですね……」  実情を打ち明ける二人。 「胞衣壺ですか?」  と言われても、実物を見ていないので、何とも言えない蘭子。 「解体される前の家屋を見てましたけど、旧家だし胞衣壺を埋めていたとしても納得で きますが」  陰陽師の蘭子のこと、胞衣壺については良くご存知のようだ。 「長い年月、その家を守り続けてきたというわけですが、何か悪いことが起きなければ 良いのですが」  空を仰ぐと、先行きを現すかのように、真っ黒な厚い雲が覆いはじめ雨が降りそうな 雲行きとなりつつあった。 其の参 切り裂きジャック  人通りの少なくなった深夜の雨降る街角。  一人の女性が帰宅を急ぐ姿があった。  追われているのか、時折後ろを振り向きながら急ぎ足で歩いている。  突然目の前に現れた人影にぶつかってよろけてしまう。 「すみません」  と謝って顔を上げたその顔が歪む。  その腹に突き刺さった短剣から血が滴り落ちる。  阿倍野警察署。 「連続通り魔殺人事件捜査本部」  という立て看板が立てられている。  会議室。 「切り裂きジャックだ!」  会議進行役を務める大阪府警本部捜査第一課長、井上警視が怒鳴るように声を張り上 げる。  夜な夜な繰り広げられる連続通り魔殺人事件。  その惨劇さは、殺した女性の腹を切り開いて内蔵を取り出し、子宮などの内性器を持 ち去ってしまうという事件。  1888年のロンドンを震撼させた切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)と手口 が全く同じという変質者の仕業であった。結局犯人は捕まらずに未解決事件となった。  ロンドンでは売春婦が襲われたが、こちらではごく普通の一般女性であるということ。  広報や回覧板及びパトカーの街宣などによって、夜間の一人歩きの自粛などが流布さ れて、一部の自治会では自警団が組織されていた。 「心臓抜き取り変死事件と同じだな……やはり彼女の力を借りるしかないようだ」 夢幻の心臓  土御門神社の社務所。  応接間にて、春代と蘭子そして井上課長が対面している。 「……というわけです」  事件の詳細を説明する井上課長だった。 「なるほど、切り裂きジャックですか……」  蘭子もニュースなどで連続通り魔殺人事件のことは耳にしていたが、直接課長の口か ら聞かされた内容は衝撃的であった。 「で、わざわざ伺われたのはいかに?」  春代が実直に質問する。  来訪目的は、うすうす感ずいているが、聞かずにはおけないだろう。 其の肆 胞衣壺 「被害者は女性ばかりです。いかに夜とはいえ、ズタズタに切り裂いて内蔵を取り出す には時間が掛かります。にも関わらず目撃者が一人もいない」 「察するに犯人は【人にあらざる者】ではないかと仰るのかな?」  春代が意図を読んで尋ねた。 「その通りです」 「して、わざわざご足労なさったのは……」 「もちろん、蘭子さんのお力を頂きたいと」 「だろうな」  春代と課長の会話を耳にしながらも、怪訝な表情をしている蘭子。 「どうした? 蘭子」 「実はですね。今回の事件と関連がありそうな出来事がありました」 「それはどのような?」  井上課長が身を乗り出すようにした。  蘭子が思い起こしたのは、先日の地鎮祭の出来事だった。  胞衣壺が掘り起こされて持ち去られた日の翌日に、最初の切り裂き事件が起きていた。 「えなつぼ……それは、どんなものですか?」 「【胞衣(えな)】とは胎盤のことじゃて、それを入れるつぼだから【胞衣壺】とい う」  昔の日本(平安・奈良時代)では、胎盤を子供の分身と考えて、大切に扱う風習があ った。  陶器製の壺に胎盤を入れ、筆・墨・銅銭そして刀子(とうす・小刀)を一緒に納めて 地中に埋めていた。  これらの品々は、当時の役人の必需品で、子供の立身出世を願うためである。  人にたくさん踏まれるほど、子供がすくすく成長すると考えられて、一通りの多い間 口や土間に埋められることが多かった。  大きさは、口径12cm・高さ16cmのものから、口径20cm・高さ30cmく らいのものが多く出土している。 「昔の風習じゃて、今では廃れてしまっておるなあ。せいぜい戦前までのことじゃて」  刀子という言葉を耳にして、糸口が一つ解明したような表情をする井上課長。 「その刀子の長さはどれくらいのものでしょうか?」 「そうさな……壺の大きさにもよるが、五寸から一尺くらいじゃのお」  春代は古い尺貫法に生きる世代である。  すかさずメートル法に言い直す井上課長。 「15cmから30cmですね」  井上課長の脳裏には、殺人の凶器として十分な長さがあるな、という推測が生まれて いることだろう。  銃刀法では、刃渡り6cm以上の刃物は携行してはならないと、取り締まっている。 「刀子は、そもそも魔除けの意味があります。葬式でのご遺体に守り刀を持たせるのと 同じです」  *参照=蘇我入鹿の怨霊 「さて、そろそろ本題に入ろうかのう。刑事さんよ」  井上課長の来訪目的を訪ねる春代。  これまで長々と、時候の挨拶よろしく話していたのだが……。 「はい。単刀直入に言います。連続通り魔殺人事件の捜査協力をお願いに参りました」 「なるほど、陰陽師としてのご依頼かな?」 「その通りです」 「ほほう。うら若き娘に殺人犯の捜査に加われと?」  春代は高齢のため、陰陽師の仕事はすべて蘭子が請け負っている。  もちろん井上課長とて承知である。  蘭子には、陰陽師としての仕事以外にも、女子高校生としての勉強も大切である。 其の伍 神田美咲  時を少し遡った、小雨降る夜。  解体作業現場を、折しも通りがかった女子高生。  整地された一角がぼんやりと輝いているのに気が付いた。  なんだろう?  と、歩み寄ってみると、土くれの付いた古い壺が顔を出していた。 「壺?」  壺が怪しく輝いて少女の顔を照らす。  やがて壺を取り上げると、何事もなかったように、現場を立ち去っていった。  とある一軒家  門柱に「神田」という文字が彫られた表札が掛かっている。  壺を抱えたまま、その家に入る少女。  少女の名前は、神田美咲。  阿倍野女子高等学校の生徒である。 「お帰りなさい、美咲」  という母親の声にも応答せずに、無言で二階へと上がり自分の部屋へ。  大事そうに抱えていた壺を、そっと机の上に置いた。  そして蓋に手を掛けるとすんなりと壺は開いた。  建設現場ではどうしても開かなかったのに。  中にはキラリと輝く刀子(小刀)が入っていた。  普通なら錆び付いていただろうが、密閉した容器の中で胎盤などの腐敗(好気性菌に よる)が先に進んで、中の酸素を消費してしまって、刀子の酸化が妨げられたのであろ う。  刀子は不気味に輝いており、じっと見つめる美咲の顔を照らす。  やおら刀子を取り出し、刃先を左手首に当てると、躊躇なく切り刻んだ。  ボトボトと流れ出る血を受け止めて、壺はさらに輝きを増してゆく。  やがて壺の中から正体を現わした怪しげな影は、しばらく美咲の周りを回っていたが、 スッと美咲の身体の中に消え行った。  最初の殺人事件が発生したのは、それから三時間後であった。  数日後の夜。  巫女衣装に身を包んだ蘭子が歩いている。  怪しげな気配を感じ取って出てきたというわけだ。  その胸元には御守懐剣「長曾祢虎徹」が収まっており、臨戦態勢万全というところだ。  時折警戒に当たっている刑事に出会うが、 「巫女衣装を着た人物の邪魔をするな」  という井上課長のお達しが出ているらしく、軽く敬礼すると黙って離れてゆく。 *参考 血の契約  突然、胸元の虎徹が微かに震えた。 「つまり魔のものということね」  魔人が封じ込められている虎徹は、魔物に対してのみ感応する。 『蘇我入鹿の怨霊事件』のように、魔人が怨霊を招き寄せる場合もあるし、人に 取りつく場合もある。  魔と霊と人、それぞれに対処できるように体制を整えておかなければならない。  魔には虎徹。  霊には呪符や呪文。  人には合気道などの武道で、自らが戦う。  虎徹を胸元から取り出して手前に捧げ持って、一種の魔物探知レーダーを働かせた。  よく画家が鉛筆を持って片目を瞑り、キャンバスと鉛筆を見比べる仕草を取るアレで ある。  その態勢で、ゆっくりと周囲を探索しながら、反応の強い方角へと歩いていく。 其の陸 遭遇 「きゃあ!!」  暗闇の彼方で悲鳴が起こった。 「あっちか!」  悲鳴のした方角へと走り出す蘭子。  やがて道端に蠢く人影に遭遇した。  女性を背後から羽交い絞めして、人通りのない路地裏に引き込もうとしていた。 「何をしているの!」  蘭子の声に、一瞬怯(ひるむ)んだようだが、無言のまま手に持った刀子で、女性の 首を掻き切った。  そして女性を蘭子に向けて突き放すと、脱兎のごとく暗闇へと逃げ去った。  追いかけようにも、血を流して倒れている女性を放っておくわけにはいかない。 「誰かいませんか!」  大声で助けを呼ぶ蘭子。  巫女衣装で出陣する時は、携帯電話などという無粋なものは持たないようにしている からである。  携帯電話の放つ微弱な電磁波が、霊感や精神感応の探知能力を邪魔するからである。 「どうしましたか?」  先ほどすれ違った警察官が、蘭子の声を聞きつけて駆け寄ってきた。 「切り裂きジャックにやられました」  地面に倒れている被害者を見るなり、 「これは酷いな。すぐに本部に連絡して救急車を手配しましょう」  腰に下げた携帯無線で連絡をはじめる警察官。 「本部の井上警視にも連絡して下さい」 「わかりました」  押っ取り刀で、井上課長が部下と救急車を引き連れてやって来る。  被害者は直ちに救急車に乗せられて搬送されるとともに、付近一帯に緊急配備がなさ れる。  現場検証が始められる。  その傍らで、蘭子に事情を聴く井上課長。 「犯人の顔は見たかね」 「暗くて見えませんでしたが、逃げ行く後ろ姿から若い女性でした。 「女性?」 「はい。確かにスカートが見えましたから」 「そうか……」  と、呟いて胸元から煙草を取り出し、火を点けて燻(くゆ)らす。  いつもの考え込むときの癖である。 「発見が遅れていれば……」  これまでの犯行通り、腹を切り開かれて子宮などの内蔵を抜き取られていただろう。 「心臓抜き取り変死事件では、動機ははっきりしていたが、今回の犯人の目的は一体何 なんだ?思い当たることはないかね、蘭子君」 「はっきりとは言えませんが、やはり胞衣壺(えなつぼ)が関係しているのではないで しょうか」 「建設現場から持ち去られたというアレかね」 「こんかいの事件は【人にあらざる者】の仕業と思います」 「スカートをはいた魔人だというのか」 「人に憑りついたのでしょう」 「まあ、あり得るだろうな」  一般の警察官は【人にあらざる者】の存在など考えもしないだろうが、幾度となく対 面した経験のある井上課長なら信じざるを得ないというところだ。  もっとも、表立って公表できないだけに配下の力は借りずに、大抵自分一人と蘭子と の共同捜査になっている。 「これ以上ここにいても仕様がないので帰ります」 「部下に遅らせるよ」 「一人で帰れますよ」 「いや、犯人に顔を見られているかも知れないだろう。後を付けられて襲われるかもし れない。そもそも女子高生を一人で帰らせるにはいかん」 「なるほど、ではお願いします」  ということで、覆面パトカーに乗って帰宅する蘭子だった。 其の漆 夢遊病  夜中夜が明けた。  神田美咲の自室。  パジャマ姿でベッドの縁に腰かけて、呆然としている美咲がいる。  べっとりと血に染められた手のひら。 「どうして……」  何がなんだか、自問自答してみても何も思い出さない。  昨夜、一体何があったのか?  洗面所で血を洗い流してみるが、自分自身には何の傷もなかった。  どこで血が付着したのか、まるで記憶になかった。  ベッドに戻り、その上に膝を抱えるように(体育座り)固まったように動かなかった。  その日の阿倍野女子高校の一年三組の教室。  授業中、一つの机が開いていた。  神田美咲の席で、これまで無遅刻無欠席の優良児だった。 「これで三日か……珍しいな、神田が休むなんて」  土御門弥生の声に、教室内がざわめく。 「逢坂さん」 「はい?」 「家が近くだろう、ちょっと様子を見に行ってくれないか」 「分かりました」  ということで、神田家を訪れた蘭子。  大人なら病気見舞い品片手にというところだろが、高校生なのでそこまで気を遣うこ とはないだろう。  そもそも病気を知ってすぐでは失礼にあたる場合があるから、とりあえず様子を聞く だけである。 「それがねえ、部屋に閉じこもったまま出てこないのよ。食事時間に呼びかけても返事 はないし……」  来訪を受けて、玄関先に顔を出した母親が、困り切ったように答える。 「病気とか怪我とかじゃないみたいだから……。誰かに虐められたとか?」  逆に問いかけられる。 「それはないと思いますよ。友達受けする性格みたいですから」 「そうですか……。年頃だし、そっとしておいて欲しいのです」 「分かりました。学校側には、そのように伝えておきます」 「よろしくお願いいたします」  深く腰を折って哀願する。  蘭子も挨拶を交わして神田家の門を出る。  ふと仰げば、日も落ちて暗がりが覆い始めた空の下、美咲の窓には明かりは灯らない。  逢魔が時。  読んで字のごとく、妖怪や幽霊など怪しいものに出会いそうな時間帯。  黄昏れ時、暮れ六つ、酉の刻とも言う。  日が暮れて周りの景色が見えづらくなるくらい薄暗くなってきた状態をいう。  季節にもよるが午後六時前後である。  行き交うパトカーの群れ。  新たな被害者。  現場検証の陣頭指揮を執るしかめっ面の井上課長。  その傍には携帯電話で呼び出された蘭子もいる。  毎度のことながら、民間人(それも女子高生)を現場に立ち会わせることに懐疑的な 同僚もいるが、現場責任者である課長の意向には逆らえない。  科学捜査が一般的な日本警察においては、陰陽師の手を借りるということはあり得な いことだった。 「内臓を持ち去る理由がさっぱり分からん」  事件が起こるたびに、つい口に溢(こぼす)してしまう井上課長だった。 其の捌 惨劇  その頃。 「美咲、いつまで閉じこもっているの?」  返事はない。  美咲の部屋の前で、ノックしつつ中の様子を探る母親。  勝手に入ったりすると、非常に不機嫌になる娘なので注意している。  しばらく待つが、一向に返答はなかった。 「入るわよ。いいわね」  ドアノブに手を掛け、少しずつドアを開ける。  照明の灯っていない薄暗い部屋の中。 「美咲?」  美咲はいなかった。 「出かけたのかしら……」  物音一つしない部屋には静寂が漂っていた。  まるですべての音を、机の上の壺が吸収しているみたいだった。 「何あれ?」  女子高生の部屋には場違いとも言うべき問題の壺に気が付く母親。  壺に近づいてゆく。  土くれが所々に付着して汚れが酷い。 「何これ、汚いわね……」  土の中から掘り出したままの状態のようであった。  壺の中身を確認しようと手を掛け蓋を開ける。  その瞬間に、強烈な腐臭が辺り一面に広がる。 「うう、何これ!」  あまりの匂いに、堪らず蓋を閉める。  壺の中は、蓋を開ける前には酸素を使い果たして腐敗が止まっていて匂いも治まって いたはずだが、蓋を開けたことによって空気と水蒸気が入って、再び腐敗が進んだとい うところだ。 「どこから持ってきたのかしら」  背後で音がする。 「お母さん、何しているのよ」  振り返ると美咲が帰ってきていた。 「勝手に入ってこないでって言っているでしょ」  その制服姿は乱れており、何より両手に付着した赤い汚れ。  明らかに血液かと思われる。  そして右手にはキラリと輝く刀子。 「おまえ、それ……」  と、言いかけたその表情が歪む。  胸元にはぐさりと突き刺さった刀子。  力尽きたように美咲に寄りかかる。  身動きしなくなった母親を、ヒョイと軽々と肩に抱え上げる。  やおら窓際に寄りガラリと開けると、外の闇へと飛び出した。 其の玖 現場百回  神田家の玄関先の両側に立てられた葬儀用花輪。  行き交う人々は黒衣に身を包み、厳かに家の中に入ってゆく。  近場には、井上課長も覆面パトカーの中で待機している。  訪問客に不審な者がいないかチェックしていたのである。  そこへ蘭子が訪れて、井上課長と何事か話し合った後に、葬儀場へと向かう。  今日は同級生としてではなく土御門春代の名代としての出席である。神田家は土御門 神社の氏子だったからである。  受付に一礼してお悔やみの言葉を述べる。 「この度はご愁傷様です」  懐から取り出した袱紗(ふくさ)から香典を出して渡す。  案内係の指示に従って着席する。  棺に近い場所には父親と美咲がおり、重苦しい表情をしている。  やがて住職が入場して、読経がはじまる。  ほぼ出席者が揃ったところで、読経が止まり故人と最も親しかった関係の深い人の弔 辞。  弔辞が終わると再び読経、僧侶が自ら焼香をしたら、喪主・遺族・親戚・そして席次 順に焼香がはじまる。  やがて蘭子の番となり、恭しく前に進んで喪主に軽く挨拶してから焼香をあげる。  美咲は終始俯いたままで、一度も顔を上げない。  焼香が一巡したところで僧侶が退場。  喪主が立ち上がって、最後の挨拶を行って閉会となる。  出席者は別室に移って、遺族たちの故人との最後のお別れが行われる。  それが済むと出棺となる。  一同が玄関先に集まって、棺が霊柩車に納められ、喪主の最後の挨拶。  全員の合掌・黙祷が行われる中、静かに霊柩車と遺族の車は静かに出発する。  見送る蘭子に井上課長が近づいてくる。 「何か変わったようなところはなかったかね」 「いえ、何もありませんでした」 「ふむ……もう一度、現場に行ってみるか」 「そうですね、現場百回と言いますから」  というわけで、神崎美咲の母親の遺体発見現場へとやってきた。  住宅街の一角にある児童公園の片隅、木々の生い茂った場所。  一部に「チョーク・ライン」がうっすらと残っていた。  遺体の周りをチョークで囲うアレである。  しかし実際の現場検証では、チョーク・ラインを引くことはない。  警察などの現場検証が終わった後に、新聞記者などが写真撮影で分かりやすくするた めに書いているのがほとんどである。  被害者の血液なども流れでていた跡がうっすらと残っている。 「ここが遺体発見場所ですか」 「その通りだ」 其の拾 公園  ゆっくりと周囲を見渡す蘭子。  公園の入り口付近には外灯があるが、夜間にはここまでは届かず薄暗いだろうと思わ れる。  外灯の届かない公園の片隅に、何の用で立ち寄ったのだろうか?  トイレは入り口付近にあるし、公園の奥まった場所で帰宅の近道にもならない。  疑問が沸き上がる。 「殺害現場はここで間違いないのですか?」 「いや、はっきりしていない」 「といいますと?」 「発見場所はここなのだが、それにしては流れ出ている血液の状態がおかしいのだよ」 「別の所で殺害されて、ここへ運び込まれた?」 「その通り。流血状態と血液凝固の状態から、殺人現場がここではないということを示 している。傷口の状態を見ると、ここで殺害されたならもっと広範囲に血液が飛び散る はずだし、流れ出た血液の地面への浸透具合もおかしい」 「実際の殺害現場を探さなければというところですか」 「その通りだ」 「遺体を動かさなければならなかったのは、その場所が犯人を特定する重要な証拠とな るからですね。例えば、犯人か被害者の自室だったなど」 「うむ、その線は濃厚かもしれないな」 「課長。この事件には、消えた胞衣壺が深く関わっていると思うんです」 「ふむ、またぞろ怨霊とか?」 「そうとしか考えられません」 「で、何か方策とあるのかね」 「解体された旧家ですが、その家族の消息とか、胞衣壺が埋められて以降に何か事件が 起きていなかったどうかとか」 「埋められて以降かね。そもそもここら辺一帯は、太平洋戦争時の大空襲で焼野原にな っているから、戦後復興以降だよな」 「空襲時に、掘り返して持ち出したということもあります」 「何故そう思う?」 「胞衣壺の風習は戦前までで、戦後はほとんど行われていません。胞衣壺に関わる人物 背景を知る必要があります」 「なるほど、調べてみるよ」 「お願いします」  以降のことを確認しあって、分かれる二人だった。  その夜、神田家の門前に佇む蘭子。  美咲に会って話してみたいと思ったのだが……。  その窓は暗いままで、中の様子は静かだった。  葬式の直後に訪問するのは、流石に躊躇われる。  哀しみにくれる親子の心情を思えば。  心苦しくも神田家を立ち去る蘭子。
ポチッとよろしく!
11

2019年9月26日 (木)

あっと!ヴィーナス!!第一章 part-1

あっと! ヴィーナス!!
第一章 part-1 「うわー!」  ベットで飛び起きる弘美。汗びっしょりである。  回りを見回している。  自分の部屋にいるのを確認して安堵している。 「ゆ、夢か……。まったく変な夢を見ちまったよ。この俺を女に変えるなんてね」  まだ外は暗いので、そのまま再びベットにもぐり込む弘美。  夜が明けて窓辺から差し込む光。  まどろんでいる弘美。  と、突然。 「こらー! 起きろ。いつまで寝てるんだよ」  弘美を起こしているのは、一つ上の兄の武司だ。  弘美は五人兄弟の末っ子だった。 「もう少し……」 「起きろ!」  弘美の布団を引き剥す武司。  そして、弘美の寝姿に驚く。 「な、なんだー!」  そこには、半裸に近い姿の、しかも豊かな胸、ほっそりくびれた胴体、正しく若々 しい女の子の姿をした弘美が横たわっていたのである。 「お、お、お、おまえ……」  驚きのあまりに、言葉を失っている武司。 「う……ん。なんだよ」  目を擦りながらも、自分の身体の異変にまだ気づいていない弘美。 「か、母さん! 母さん!」  叫びながら部屋を飛び出す武司。  どたどたどたどたー!  大きな音が響いてくる。  どうやら階段から足を踏み外して転げ落ちたようだ。 「なんだよ……。何を驚いて……」  とベッドから縁に腰掛けるようにして起き上がるが、顔の前にふわりと長い髪が被 さってくる。 「ん……え?」  はじめて自分の異変に気がつく弘美。自分はこんな長い髪をしていない。  髪だけではない、その胸元には昨日まではなかった二つの膨らみがあったのだ。 「なんだよ! これは?」  そっと触ってみる。  しっかりとした弾力があって、感触がちゃんとあるところをみても、本物の乳房以 外の何物でもなかった。 「ま、まさか……?」  あわてて股間に手を当ててみる。 「な、ない……」  あるはずのものがなくなって、はいはずのものがある。  これってつまり……。  女の子になっちゃったー!  どこからどう見ても女の子だよ。  なんでこうなっちゃったの?  きのう何か変なもの食べ覚えもないし。  あーん。いくら考えても判らないよお。  部屋の外から、どたどたと昇ってくる多数の足音が聞こえてきた。 「や、やばいよ!」  この姿を見られた武司から事情を聞いて家族が確認にきたようだ。  この姿を見られるわけにはいかなかった。  弘美の部屋には鍵が付いていないし外開きだから、ドアから侵入してくる者を防ぐ 手だてがない。  あわてて布団に潜り込む弘美。 「弘美、入るわよ」  母の声がしたかと思うと、ぞろぞろと家族が入ってきた。 「ほんとに女の子がいたのか?」 「いたさ。それも弘美にそっくりな女の子。最初は、弘美が女の子を連れ込んだかと 思ったけど……。間違いなくなく弘美だよ」 「弘美が女の子になったというわけね」 「そうだよ。この目に間違いはない。視力は、1.5」  ベッドを囲むようにして家族が話し合っている。
ポチッとよろしく!
11

2019年9月25日 (水)

あっと!ヴィーナス!!プロローグ・後編


プロローグ・後編

 

ナレーション ここは運命管理局センター。地球人類の運命を司る天上界にある機関の一つである。
人類の誕生から死までの運命を管理しているうちの、誕生を管理する部門の最高責
任者がヴィーナスなのだ。
地球人類も50億を越えるようになり、その膨大なデータを処理するために、コン
ピュータシステムが導入されている。
え? 神がコンピューターを使うのかって?
そんなことどうでもいいじゃありませんか。

 

ヴィーナス どうです。見つかりましたか?

 

オペレーター
お待ちください。もう少しで判明します。

 

ディアナ ヴィーナス、どうした。どじでもふんだか?

 

ナレーション 突然現われたのは、時間管理局長官である天空の女神ディアナである。天上界では、
ヴィーナスの同僚であるが、その美貌にかけて、常日頃から張り合っている。

 

ヴィーナス ディアナ

 

ディアナ ふふん。図星のようだな。

 

ヴィーナス ファイル-Zが行方不明になったのよ。

 

ディアナ なんだとー!
ファイル-Zと言えば、おまえどうなるか判っておるのか。

 

ヴィーナス だからこうして、今全力をあげて捜索中ですよ。

 

ディアナ オペレーター。システムを時間管理局のラインに接続しろ。大至急だ。バックアッ
プさせる。

 

ヴィーナス ディアナ

 

ディアナ 酒ばかり飲んでるからこんなドジ踏むんだよ。
ふふん。
本来ならきさまの手助けなどしたくはないのだがな、ファイルーZとなればそうも
いかないだろう。

 

オペレーター
発見しました!

 

ナレーション 注目する二人。ヴィーナスの表情に少し安堵の様子がうかがえる。

 

暗転 ナレーション さて、ところかわって地上。
ここは講堂館の青畳の上。おりしも中学柔道選手権試合の決勝戦が行われていた。
応援する人々、その中に、双葉愛の姿も見える。組み合う二人、そして見事な背負
い投げが決る。
審判員A
一本! それまで!

 

ナレーション 大歓声に包まれる講堂館。一斉に駆け寄ってくる同校のクラブ員達。胴上げされる
少年。この少年こそこの物語のヒロインである相川弘美その人である。
え? 少年なのにヒロインなのかって?
それは物語を読み進めていけば判る。

 

ところ変わって、大通りに面した歩道を弘美が歩いている。
とその目前に現れる愛と美の女神ヴィーナス
弘美、ヴィーナスに気づいて立ち止まる。

 

ヴィーナス 探しましたわよ。

 

弘美
探しましたって、あなたは一体。

 

ヴィーナス 私は、愛と美の女神ヴィーナス。(突然あたりの景色が消え、真っ暗になる)

 

弘美
な、なんだ? いったいどうした! ここはどこだ?(きょろきょろと当りを見回
している)

 

ヴィーナス ここは、時間と空間を超越したところにある、天空の女神ディアナの支配する世界
です。

 

弘美
時間と空間? 天空の女神ディアナって、ローマ神話に登場する最高神で、たしか
男性形名をヤヌス、英語で1月を意味するJUNUARIUS はこの人に由来するという、
あの神か? ローマ神話のほとんどがギリシャ神話に置き換えられてしまったのに、
唯一ギリシャ神に対応するものがないことで何とか生き残ったという。

 

ヴィーナス よく御存知でしたね。でもそんなことはどうでもよろしい。私があなたのところへ
遣わされたのは、ファイル-Zのあなたを本来生まれるべき姿に戻すためです。

 

弘美
ファイル-Z? 本来生まれるべき姿に戻すってどういう意味だ?

 

ヴィーナス ファイル-Zに選ばれた以上、あなたは女性でなければならないのです。それが手
違いで男性に生まれてしまった以上、今ここで女性に戻す以外にないのです。

 

弘美
ちょっと待て! 俺を女に変えるというのか?

 

ヴィーナス その通りです。これからは女性としての人生を歩くことになります。

 

弘美
冗談じゃない! ことわる。

 

ヴィーナス これは運命なのです。

 

弘美
やめてくれ!

 

ヴィーナス ヴィーナスの名においてこの者を本来生まれるべき女性の姿に戻したまえ・・・

 

弘美
うわー!(突然、足元から下へと落ちはじめていく)

ポチッとよろしく!

11

 

2019年9月24日 (火)

あっと!ヴィーナス!!プロローグ・前編


プロローグ・前編

 

ナレーション 天上界に優雅にそびえ立つヴィーナスの神殿。豪華に飾られたその神殿内の執務室。
神子達が忙しく動き回る大広間の奥の高座の金銀財宝の散りばめられたソファーに
横たわりながら酒を飲んでいるこの人物こそ、この世のありとあらゆる美しさをた
たえた女神。そう、この人こそこの物語において重要な役処を務める……

 

ヴィーナス ヒロイン役のヴィーナスです。

 

ナレーション と本人は申しておりますが実は……

 

ヴィーナス だからヒロインのヴィーナスです。タイトルを見ていないのですか?

 

ナレーション えっと……ヒロインのヴィーナスだそうです。

 

ヴィーナス ちょっと投げやりなんじゃありませんこと?

 

神子 A
ヴィーナス様。この書類に目を通して頂けますか?

 

ナレーション 唐突にも、物語は始まる。

 

ヴィーナス こら! 逃げるな!

 

神子 A
ヴィーナス様。どなたとお話になっておられるのですか?

 

ヴィーナス え? ああ、なんでもありません。(書類に目を通して、渡す)

 

従者A、一礼して退く。

 

ヴィーナス うん? (床に落ちているDVDディスクを拾い上げて、神子を呼 び止める) デ
ィスクが落ちていたわ。運命管理局に渡しておいて。

 

神子 B
かしこまりました。(ディスクを受け取って運命管理局へ)

 

ナレーション 再び酒を飲みはじめるヴィーナス。この世のすべての美を持っている天上界の神の
一人なのだが、酒が大好きで暇さえあれば飲んだくれているというどうしようもな
い女神だ。

 

ヴィーナス 聞いていれば、好き勝手いいやがって。

 

ナレーション わたしはナレーションだ。ここでは神より偉い!

 

ヴィーナス あのなあ……

 

ナレーション ほれほれ、物語は進んでいるよ。

 

神子 C
ヴィーナス様。ファイルーZを受け取りに参りました。

 

ヴィーナス ファイルーZ? なんだそれ……。

 

神子 C
とぼけないでくださいよ。ゼウス様からお預かりになられたDVDディスクに収め
られたファイルですよ。

 

ヴィーナス ああ……、忘れていた。それならここに……。(と酒の瓶が並べられたガラステー
ブルの上を見る)
な、ない!(急に、青ざめる)

 

神子 C
ないって……。どういうことですか?

 

ヴィーナス 確か、テーブルの上に置いていたんだ。(思い出す)
ああ! そうだ。さっきの神子に渡した。

 

神子 C
神子に渡したってどういうことですか? ファイルーZは特別扱いで、担当である
私だけが処理できるものなんですよ。

 

ヴィーナス そんなことより、ファイルーZだ。(ちょうど通りかかった神子Bを呼び止めて)

 

神子 B
え? それでしたらとっくに運命管理局のほうに回しましたが?

 

ヴィーナス そ、それで、どっちの方に回したの? 男? 女?

 

神子 B
(きょとんとしている)どっちって……? 私は男性担当ですからそちらに……。

 

ヴィーナス 遅かったか!

ポチッとよろしく!

11

 

2019年9月23日 (月)

冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 64(最終回)

冗談ドラゴンクエスト

冒険の書 64(最終回) ナタリー「成功したのでしょうか?」 コンラッド「すぐに分かりますよ」 最高導師「終わりましたよ。そこの二人は診てやってくれたまえ」 リリア「分かりました(心配そうに傍に寄る)」 コンラッド「生きていますが、魂は無事でしょうか?」 ナレ1「やがて勇者だった女性の方が先に眼を覚ます」 リリア「わたしは……(身体を確認する)」 ナタリー「どう?あなたは誰?」 リリア「リリアです」 ナタリー「リリアなのね?」 リリア「はい、リリアです。わたしは女の子ですか?」 ナタリー「そうよ、成功したのよ。おめでとう!(抱きつく)」 コンラッド「となるとあっちの方は?(男性の方を見つめる)」 ナレ1「むっくりと起き上がる元リリアだった男性」 勇者「ここはどこ?わたしはだーれ?」 ナタリー「ぼけかますな、こら!」 勇者「おお、愛しのナタリーじゃないか」 ナタリー「どうやら元に戻ったようね」 コンラッド「最高導師様、よろしいですか?」 最高導師「何かね?」 コンラッド「最高導師様は、どうして我々の望みを叶えて下さったのですか?」 最高導師「まあ、気まぐれじゃよ」 コンラッド「気まぐれですか?」 最高導師「私が出した試練を乗り越えてやってきたのだ、それ相応の報酬というと ころだな」 リリア「ありがとうございます、最高導師様(深々と膝を折って感謝する)」 最高導師「皆の者ご苦労であった。フェリス王国へ戻して上げよう」 ナレ1「両手を高々と上げ、祈りの言葉を唱えると、一行の身体が輝きだした」 ナレ2「と、次の瞬間。一行はフェリス王城へと舞い戻っていたのであった」 コンラッド「ここは、フェリス王城です」 リリア「ほんとうに、戻ってきたのですね」 ナタリー「さすがは最高導師様です」 勇者「あんだけ苦労して、ここからムース滝までの道のりは一体なんだったのだ」 ナタリー「終わり良ければ総て良し、じゃない?」 コンラッド「リリアさんの願いも叶ったことだし、皆さんこれからどうされます か?」 ナタリー「そうねえ……あたしは元の町に戻るわ」 勇者「売春婦に戻るのか?」 ナタリー「うるさいわね。かねてから誘いがあった魔導学校の指導教官になるわ」 リリア「あたしは、花売りに戻ります。魔獣には気を付けます」 勇者「俺は遊び人だ。とりあえずこの城下町で女を漁ることする」 コンラッド「そうですか……名残惜しいですけど。パーティーを解散しましょう」 リリア「コンラッドさんは、どうされるのですか?」 コンラッド「王国騎士団に戻ります」 ナタリー「そういえば、騎士団長でしたね」 リリア「みなさん、あたしのためにありがとうございました」 ナタリー「人生山あり谷ありよ。気にしないでいいわ」 コンラッド「それではみなさん、帰りの道中も気を付けて」 ナレ1「というわけで、解散してそれぞれの帰路に着いたのであった」 了 冗談ドラゴンクエストIIへ続く……かも知れない
ポチッとよろしく!
11

2019年9月22日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第五章 ターラント基地攻略戦 I


 機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦

                 I

 

 ムサラハン鉱山跡地に時間通りに到着したミネルバ。
 補給艦とも無事に接触して補給の真っ最中だった。
 相手の艦長は、前回と同じベルモンド・ロックウェル中尉だった。
 ロックウェル中尉は、補給の任の他に、次の作戦指令を伝達する任務も負っていた。
「次なる作戦は、モビルスーツ生産工場であるリスキー開発区の攻略です。工場を破壊
するのが目的ですが、出来うる限りのモビルスーツをも奪取することも、作戦内容に含
まれております」
「工場の破壊とモビルスーツの奪取ですか……」
「その通りです。モビルスーツ戦となることは必定でしょう」
 ここに至って、バイモアール基地攻略の作戦理由が見えてきた。
 新型モビルスーツを手に入れ、このリスキー開発区の攻略に当たらせることだったの
だ。
 カサンドラ訓練所の訓練生を収容したのも、モビルスーツ奪取の後のことを考えての
ことだったようだ。
「今回は、ミネルバ以外にも計五隻の艦艇が作戦に参加することになっています。ミネ
ルバは、その旗艦として働いています」
「合同作戦ですか?」
「戦術士官としての腕の見せ所ですね」
 たった六隻の小隊とはいえ、複数の艦艇を指揮運用できるのは戦術用兵士官だけであ
る。
 一般士官の艦長の権限では、自艦のみしか指揮できない。
 フランソワの出番だった。
 合同作戦の旗艦として、ミネルバが位置づけられたことで、フランソワの責任も重大
なものとなりつつあった。
「モビルスーツ同士の格闘戦ですか。壮絶なる戦いとなることが避けられないでしょう
ね」
 副長のベンソン中尉が、感慨深げそうに言葉を漏らす。
「新型は、経験豊富なナイジェル中尉とオーガス曹長、そしてサブリナ中尉とハイネ上
級曹長に任せましょう」
「無難でしょうね。ついでにパイロット候補生達の訓練教官になってもらいましょう」
「それは結構ですね」
「パイロット候補生というと、例の三人組の男子が意識を取り戻したそうです。女子の
方はまだのようですが」
「そう……。お見舞いにいってみましょう。しばらくここをお願いします」
 立ち上がって、指揮官席を交代するフランソワ。
「了解。指揮を交代します」

 

 フランソワが医務室に入ると、すでに先客がいた。
 特殊工作部隊の隊長のシャーリー・サブリナ中尉だった。
 バイモアール基地において、訓練生の行動を阻止できずに、結果としてこのような事
態になった責任を感じているのである。
「あ、艦長殿もお見舞いですか?」
「具合はどうですか?」
「元気なものですよ」
 とはいうものの、訓練生はガラスで隔たれた集中治療室に入れられていた。
 ベッドに横たわり、点滴の針を刺されている。
 突然一人が起き上がって、ガラス窓にへばりついて叫びだした。
「なあ、いい加減ここから出してくれよ!」
 ジャンである。
「だめだ! おまえは死にかけていたんだぞ。見た目は元気でも内臓は弱っているぞ。
その点滴も内臓を回復させるためだ。感染を防ぐためにもまだそこから出すわけにはい
かん」
「いつまで入ってりゃいいんだ?」
「回復するまでだ」
 アイクの方は、背を向けたまま動かない。
「もう一人はどうしたんですか?」
「いやいや、向こう向きで見えませんが、携帯ゲームで遊んでいるんですよ。心配はい
りません」
「そう……。重体の女の子は?」
「CCUの方です」

ポチッとよろしく!

11

 

2019年9月21日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証 V

第四章 皇位継承の証
                 V  【皇位継承の証】が出てきたという報は、皇家・貴族達の間はもちろんの事、全 国津々浦々にまで広がった。これほどまでの重大事に対して、他人の口に戸は立て られぬのごとく、血液検査を担当した研究者によって外部に漏れてしまったのであ る。しかもそれを携えていたのが、内乱を鎮圧したランドール提督であり、共和国 同盟の英雄と讃えられる若き指導者であることも知られることとなった。  気の早いニュース誌などは、「行方不明の皇太子現る」のスクープを報じていた。  エリザベス皇女もまた謁見の間において、侍従長の報告を聞いて絶句した。 「間違いないのですか?」 「間違いはございません。【皇位継承の証】は正真正銘の物であり、血液鑑定の結 果も行方不明であられたアレクサンダー皇子の血液と一致いたしました。提督のエ メラルド・アイが、それを証明してくださるでしょう。拾われた時に御身に付けら れていたと言う、よだれ掛けのイニシャルの刺繍もアレックス、皇子の幼名であら せられます」 「そうですか、アレックスが……」 「もう一度申し上げます。アレックス・ランドール提督は、銀河帝国における皇位 継承第一順位であらせられる、アレクサンダー皇子に相違ありません」  事実を突きつけられ、アレックスが行方不明となっていたアレクサンダー皇子で あることは明白なこととなった。本来なら大歓迎を受けるはずであったが、行方不 明を受けてロベール王子が皇太子として擁立され、皇室議会で承認されている。  二人の皇太子候補が並び立ったのである。  新たなる騒動の予感が沸き起こった。  緊急の皇室議会が召集されることとなった。  議題はもちろん皇太子の件であるが、開会と同時に議場は紛糾した。  ウェセックス公国ロベスピエール公爵の息のかかった、いわゆる摂政派と呼ばれ る議員が頑なに主張を続けた。  ロベール王子の皇太子擁立はすでに決定されたことであり、それをいとも簡単に 覆して新たに皇太子を論ずるなど皇室議会の沽券に関わる。  というものであった。  一方、  【皇位継承の証】を拠り所として、帝国至宝の絶対的権威をないがしろにするの か?  という、正統派の意見も半数近くまで占めていた。  議会は完全に真っ二つに分かれ、険悪ムードとなっていた。  このままでは、再び内乱の火種となりそうな勢いとなりつつあった。  しかし、内乱となることだけは、絶対に避けなければならない。  そこで中立派ともいうべき議員達から折衷案が提出された。  次期皇太子、皇帝は議会決定通りにロベール王子が継ぐこととし、さらなる次世 代にはアレクサンダー皇子もしくはその子孫が皇帝を継承する。ロベール王子は一 代限りの皇帝として、アレクサンダー皇子が世襲する。  というものであった。  議会の決定を尊重し、かつ【皇位継承の証】の権威を守る唯一の解決策であった。  とにもかくにも、アレクサンダー皇子の皇室への復籍と、皇位継承権第一位を意 味する第一皇子という称号授与が確認された。  これを中間報告として、皇太子問題は継続審議とされることが決定された。  謹慎処分を受け、軟禁状態に置かれていたマーガレット皇女は、アレクサンダー 第一皇子復籍の報告を受けてもさほど驚きもせず、改めて謁見の許可を求めたとい う。  それは認められて、アレクサンダー第一皇子とマーガレット皇女との対面が実現 した。  行方不明だった皇子が現れ、【皇位継承の証】も戻ってきた。  マーガレットが反乱の拠り所としたものが、目の前に立っていた。その主張が正 しかったことを証明する結果となった。
ポチッとよろしく!
11

2019年9月20日 (金)

妖奇退魔夜行/胞衣壺(えなつぼ)の怪 其の廿壱

陰陽退魔士・逢坂蘭子/胞衣壺(えなつぼ)の怪(最終回)

其の廿壱 顛末  土御門神社の自分用の部屋。  布団を敷いて美咲を寝かしつける。  傍には白虎も寄り添っている。 「ありがとう。もういいわ」  白虎を優しく撫でると、軽く鳴いて静かに消えた。  何事も知らずに軽い寝息を立てている美咲の顔を見つめる蘭子。  つと立ち上がり、胞衣壺を抱えて向かった先は、土御門神社内にある書物庫。  書物庫はもちろん敷地全体に、魔物や怨霊の侵入を防ぐ結界が厳重に張られている。  結界陣を開封して中に入り、開いた棚に静かに安置する。 「これでもう、世を惑わせることもないでしょう」  再び結界陣を元に戻して、書物庫を後にする蘭子。  翌日の土御門神社の応接間。  井上課長、土御門春代、美咲と父親、そして蘭子が一堂に会していた。  事件の詳細を説明する蘭子。  その内容に驚愕する父親と、まるで記憶にないので首を傾げるしかない美咲。  重苦しい雰囲気が漂う中で、最初に口を開いたのは春代だった。 「さて刑事殿。この事件の顛末をどうつけるつもりだい?」  問われて言葉に詰まる井上課長だった。  警察の役目は事件についての捜査を行い、被疑者の身柄や証拠などを検察へ送ること。  一般的思考でいうなら、今回の事件の犯人は、神田美咲であることに違いはない。  【人にあらざる者】が介在していることなど、理解の範疇には存在しないので、呪術 や魔法といった非科学的な犯罪は取扱しない。  有名なところでは、藁人形に釘を打って対象を呪い殺す丑の刻参りがあるが、非科学 的で刑法も民放もこれを認めていない。  現代の警察は科学捜査を基本としているからだ。  美咲の部屋を捜査すれば、殺人現場の証拠は出るだろうが、犯人は誰か?となれば当 然として美咲の名が挙がる。  殺人を立証するには、  殺人方法  殺害時刻  凶器  動機  アリバイ  遺体の移送方法  などを検証しなければならない。  遺体移送方法はもちろんの事、凶器は壺の中に封印済み、とにかく魔人のしでかした ことの解明は不可能だろう。  人事考課に汚点を残すことになるが、迷宮入りにするほかにないと考えていた。  翌日。  美咲の部屋に入った蘭子。  魔人の術法によって人の目に見えなくなっていた血痕が、その消滅によって再び露わ になっていた。  式神を使役して床にこびり付いた血痕を、綺麗に拭い去った。  ルミノール反応にも出ないほどに。 「証拠隠滅だけど……仕方ないわよね」  井上課長の同意も得ていた。  そもそも凶器の刀子も壺の中だし……。  数日後の阿倍野高校一年三組の教室。  一時限目開始のチャイムが鳴ると同時に、美咲が入室してくる。 「おはよー!」  それに答えるように、クラスメートも応答する。 「おはよう」 「ひしぶり~」 「もういいの?」 「ありがとう、大丈夫よ」  口々に挨拶が交わされる。  そういったクラスメートから離れて、窓辺の自分の席に座り、ぼんやりと庭を見つめ ていた。  一つの事件は終わった。  しかし、これで終わりではない。  一つの事件は解決したが、蘭子の【人にあらざる者】との戦いはこれからも続く。 胞衣壺(えなつぼ)の怪 了
ポチッとよろしく!
11

2019年9月19日 (木)

冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 63

冗談ドラゴンクエスト

冒険の書 63 ナレ1「主祭壇の傍に地下に通ずる階段が現れた」 ナタリー「大聖堂祭壇にある地下って納骨堂とかがあるのよね(リリアに耳打ちす る)」 リリア「ええ、普通はそうなっていますね」 ナレ1「リリアも怖いという意識はあるものの、元の身体に戻れるという一念が勇 気を出させていた」 ナレ2「燭台を持つ最高導師の後について、コツコツと足音の響く階段を下りる一 行」 ナレ1「一行が降り立った地下室は薄暗く、その狭い通路を進んだ先に開けた空間 があった」 ナレ2「おそらく祭礼用の部屋なのだろう。二つの四角い台が置かれていた」 リリア「棺が二つ?」 ナタリー「違うみたいね。あたしも一瞬棺に見えましたけど、供物とかを捧げるた めの台のようです」 ナレ1「一段高くなっている祭壇から一向に向かって話す最高導師」 最高導師「さて、魂の入れ替えを望むものは前へ」 リリア「はい!(と前に進み出る)」 最高導師「もう一人は誰か?」 ナタリー「ほれ、あんただろ。前に出なさい」 勇者「俺は別にこのままでもいいんだが」 ナタリー「何言ってるのよ、元に戻りたくないの?」 勇者「俺は遊び人だぜ。男だろうが女だろうが、どっちもどっち。変わり映えもし ねえしよ」 リリア「勇者さんはそうでしょうけど、あたしは戻りたいんです!」 ナタリー「そうよ。あんたはともかく、リリアさんの身にもなってよ」 勇者「俺の身は?」 ナタリー「あんたの身はどうでもいいのよ」 勇者「さて、帰るとしよう」 ナタリー「こら!スリープ!!(睡眠の魔法をかける)」 ナレ1「その場に崩れる勇者」 ナタリー「勇者には悪いけど、リリアの願いの方が切実だもんね」 最高導師「さて、お二方は台の上に横になってください」 リリア「わかりました。(と台の上に乗る)」 コンラッド「勇者さんは、わたしが乗せましょう(と倒れている勇者を抱きかかえ て台に乗せた)」 ナレ1「二つの台の上に横たわる二人を見つめる最高導師」 最高導師「それでは始めるとしよう。他の者は少し下がっていてくれたまえ」 ナレ1「部屋の入口付近まで下がる残りの二人」 最高導師「…………(意味不明な祈りを捧げる)」 ナレ1「やがて、台の上の二人の身体が輝きだし、ふわふわと白い物が抜け出して きた」 ナタリー「あれが魂……ですかね?」 コンラッド「そのようです」 ナレ1「浮かび上がった二人の魂は、部屋の中を乱舞しはじめた」 ナレ2「最高導師の祈りは続いている。やがて魂の動きが静かになり、台上の二人 の真上で止まった」 最高導師「褐っ!(目を見開き魂に向かって気を入れる)」 ナレ1「すると静かに魂はそれぞれの肉体へと戻っていった」 ナレ2「地下室の空間に静寂が包み込む」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月18日 (水)

冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 62

冗談ドラゴンクエスト

冒険の書 62 ナレ1「やがて祠の前に到着する一行」 勇者「ごめんくださーい!最高導師様はいますかあ!!」 ナタリー「何言ってんの?」 勇者「決まってるじゃないか。他家を訪問したら挨拶するのが礼儀だろ」 ナタリー「そんな場面じゃないでしょ」 ナレ1「その時、扉が軋めき音を立てて自然に開いた」 勇者「おお、自動ドアか進んでいるな。見ろよ、ちゃんと挨拶したからだ」 リリア「一応、歓迎していると考えてよろしいのでしょうか?」 ナタリー「拒絶はしていないということね」 コンラッド「ともかく入ってみましょう」 ナレ1「一行が中に入ると、ひとりでにドアが閉まり、真っ暗闇に包まれた」 リリア「閉じ込められた?」 ナタリー「やはり罠だったのかしら」 勇者「このまま進んだら、ただ広い原野に戻されるんじゃないか。堂々巡りでさ」 リリア「今回は正解のような気がします」 ナタリー「そうね。クアール様もそうそう酷いことしないでしょう」 勇者「おまえ、その言葉前にも言っただろうが。冒険の書60でよ」 ナタリー「何の事かしら(とぼける)」 ナレ1「前方に光が見えた」 勇者「そらきた光の先は原野だぜ」 ナタリー「行ってみなけりゃ分からないでしょ」 リリア「そうですよ。行ってみましょう」 ナレ1「慎重に歩み進むと、突然眩いばかりの光に包まれた」 ナタリー「まぶしい!」 ナレ1「やがて光に慣れてくると、目の前に大広間が現れた」 勇者「ここはどこだ?」 コンラッド「まるで大聖堂のようですね」 リリア「あ、誰かいるわ!」 ナレ1「バシリカ型3廊式と思われる大聖堂の身廊を突き進んだ先の主祭壇(Alta re)に誰かが立っていた」 コンラッド「クアール最高導師様!!」 リリア「ええ!あの方がクアール最高導師様なんですか?」 ナレ1「一行の中で最高導師の素顔を見知っているのはコンラッドだけだった」 勇者「へえ、あいつが最高導師とやらか」 リリア「失礼ですよ」 ナレ1「さらに歩み寄って、最高導師の御前にひれ伏す一行だった(勇者は除 く)」 ナタリー「こら!頭が高い!!(と強引にひれ伏せさせる)」 勇者「痛い、痛い、痛いぞ」 最高導師「よくぞ参った。待っておったぞ」 コンラッド「私どもが参るのをご存知だったのですね?」 最高導師「君達のこれまでの道のりを考えれば分かるだろう」 コンラッド「やはり試練を与えてられてたのですね」 最高導師「いかにも、そなたらの願いも重々承知しておる」 リリア「では、わたし……いえ私たちの願いもご存知なのですね」 最高導師「皆の者、着いてまいれ(と燭台を手にする)」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月17日 (火)

冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 61

冗談ドラゴンクエスト

冒険の書 61 勇者「ここはどこだ?」 ナレ1「先行した勇者の目の前には漆黒の闇が広がっていた」 ナレ1「勇者の目の前には漆黒の闇が広がっていた」 勇者「真っ暗だな」 ナレ1「一歩踏み出すと同時に、ふわっと出現したパーティー一行が覆いかぶさる」 リリア「きゃっ!」 ナタリー「どうやら無事に着いたようね」 コンラッド「みなさん大丈夫ですか?」 リリア「あたしは大丈夫です」 ナタリー「平気よ」 勇者「大丈夫じゃねえ!いい加減にどけよ」 ナレ1「下敷きになってしまった勇者が怒りの声を出す」 ナタリー「あら、クッションかと思ったわ」 勇者「どけえ!(と上に乗っかる一行をはねのける」 コンラッド「これは失礼なことをした」 勇者「ったく、しようがねえなあ」 リリア「勇者さんの見識が正しかったようですね」 勇者「あたぼうよ。だてにゲームキングを名乗ってねえや。ドラクエは11まで全コンプリートだぜえ(と指でVサインを示した)」 ナタリー「さすが自他ともに遊び人を自覚しているだけあるわね」 勇者「あたぼうよ」 ナレ1「おべっかを使っていることに気づかない勇者」 コンラッド「先に進みましょう」 勇者「そうは言っても辺り一面の闇だぜ。どっちへ行きゃいいんだよ」 コンラッド「大丈夫です。羅針盤が反応しています。指し示す方向へ行きましょう」 勇者「本当に大丈夫なんだろうなあ」 リリア「信じるしかありません。他に行く道がないのですから」 ナレ1「闇に包まれた世界を、羅針盤を頼りに手探りで進む一行。やがて行く先に光明が見えてきた」 リリア「光が見えます!」 ナタリー「ほんとだ。急ぎましょう」 コンラッド「足元に注意してください」 ナレ1「一行が暗闇を抜け出た先に待っていたのは……広々とした平原に断崖絶壁に囲まれた空間であった」 勇者「なんだよ、あの洞窟を抜け出た光景とまったく同じじゃないか」 ナタリー「元に戻ってしまったの?」 リリア「まさか、また幻惑視なんでしょうか?」 ナタリー「いえ、幻惑視じゃないわ。でも前とは雰囲気が違うような……」 コンラッド「見てください!あそこです(指さす)祠のようなものが見えます」 リリア「あ!ほんとうだ、行ってみましょう」 ナタリー「トラップとかに気をつけながらね」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月16日 (月)

冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 60

冗談ドラゴンクエスト

冒険の書 60 コンラッド「さあ、気を引き締めて行きましょう」 ナタリー「クアール様がどんな試練を与えるかが問題ですね」 コンラッド「モンスターをぶつけてくる物理攻撃か、幻惑視などの精神攻撃なのか、 しっかりと見極めなければなりませんね」 リリア「昨日は幻惑視だったということですよね。すると今日はモンスター?」 コンラッド「ともかく羅針盤の示す通りに進みましょう」 勇者「ちぇっ!面倒くさいな」 ナレ1「と、突然モンスターが現れた」 コンラッド「おいでなすった!」 ナレ1「スライムが現れた!」 勇者「こいつなら楽勝だぜ、それ!」 ナレ1「スライムは仲間を呼んだ。スライムが十匹になった」 ナレ2「なんとスライムたちがどんどん合体していく」 ナレ1「なんとキングスライムになってしまった」 ナタリー「仲間を呼ぶモンスターか、厄介だわ」 コンラッド「素早く倒さないとキング化しますからね。言いながらキングスライム を倒す」 ナレ1「ドロルメイジが現れた!」 ナタリー「ああ、こいつはマホトーンかけてくるわね」 コンラッド「まかせてください」 ナレ1「腰の剣を抜くと、えいやっと斬りかかる」 ナレ2「次から次へと現れるモンスターを倒してゆく一行。最初はかなりの頻度で 現れたが、やがて少なくなってゆく」 勇者「もしかして種切れか?」 ナレ1「大神官ハーゴンが現れた!」 勇者「ハーゴンだと!?ドラクエⅡのラスボスじゃないか。フェリス王国の大神官 の回し者か?」 コンラッド「まさか……とにかく、気を引き締めていきますよ。ナタリーさん攻撃 魔法できますか?」 ナタリー「攻撃魔法ね。分かったわ」 勇者「こいつとの対戦にはスクルトが有効だぜ、甘い息掛けられても多少耐えられ る。ベホマ使われないようにマホトーンを掛けるのも良作だ」 ナタリー「全部あたしの役目じゃない。あんたのやることないの?」 勇者「俺は遊び人だぜ。せいぜい応援するだけだ。それ!フレーフレー(と応援団 長よろしく踊り始めた)」 ナタリー「使えねえ奴だな」 リリア「あたしは、回復薬で支援しますね」 コンラッド「お願いします」 ナレ1「ナタリーとリリアの支援を受けて勇猛果敢にハーゴンに飛び掛かるコンラ ッド。悪戦苦闘しながらも何とか倒すことに成功する」 リリア「やったあ!倒しました」 ナタリー「さすが正義の騎士。惚れちゃうわね」 勇者「さあ、エンディングだあ!テーマソング高らかに……あれ?」 ナレ1「ハーゴンは倒され消え去ったが何事も起こらない。いや、地面をよく見る と何やら紋章が出現していた」 コンラッド「これは、クアール最高導師様の紋章です」 勇者「なぬ?するとこの紋章の上に乗ると、クアールさんとやらの所に行けるって ことか?」 ナタリー「何のこと?」 勇者「そうじゃないか。2Dマップの上に描かれた城や町の図柄の上に乗ると、そ の内部に入れるじゃないか。ワープゾーンだよ」 リリア「相変わらず、ドラクエなんですね」 勇者「あったりめえよ。冗談ドラゴンクエストだろうが」 ナタリー「これが罠ということも考えないの?」 勇者「これ以上、当てもなく歩き回る方が馬鹿だよ。俺は行くぜ!(と紋章の上に 乗る)」 リリア「消えました!?」 ナタリー「どこへ飛んだ?奈落の落とし穴かな?」 コンラッド「とにかく、彼を放っておくわけにはいきません。我々も続きましょ う」 ナタリー「そうね。クアール様もそうそう酷いことしないでしょう」 リリア「行きましょう」 ナレ1「意を決して、勇者の後を追って紋章の上に乗る一行だった。途端にどこか へと消え去った」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月15日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XVⅢ

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                XVⅢ 「高速推進音接近! 魚雷です」  聴音機(パッシブソナー)に耳を傾けていたソナー手が報告する。 「急速浮上! デコイ発射」  魚雷が急速接近してくる。SWSは急速浮上してこれを交わしながら、デコイ (囮魚雷)で魚雷の目標を反らしてしまおうというのだ。 「アクティブ・ソナー音が強くなってきます。敵艦接近中」  超音波を出して、その反響音から敵艦の位置を探るのがアクティブソナーである。 敵艦を補足して、頭上から爆雷を投下するのが、攻撃の手順である。  敵艦を探知するには確実であるが、逆に言えば音源を発していることから逆探知 されることを意味して、隠密を前提とする潜水艦側から使用することはまれである。 「爆雷です!」  イヤフォンを急いで外しながら、再び叫ぶソナー手。 「取り舵十度! 深度百メートル」  逃げ回るしかなかった。  水上艦対潜水艦の一対一の戦闘の場合、圧倒的に水上艦の方が優位だとされてい る。艦の速度差、探知装置の充実性、攻撃力の相違など、水中にある潜水艦は劣勢 に立たされる。よって水上艦と接触したら逃げ回るしかないのが現状である。  最上の方策が、敵の攻撃や探知の届かない深深度潜航で逃げるのが一番である。  しかしこの艦長は、反撃を企んでいるのか、浅い水域を逃げ回っていた。  一回目の爆雷攻撃を終えた水上艦は一旦離れていった。が、やがて引き返してき て攻撃を再開するだろう。 「もう一度魚雷がくるはずだ。それを交わして次の爆雷攻撃の直後に、潜望鏡深度 に急速浮上して、魚雷攻撃を敢行する。狙いはつけられないが、必ず当てられるは ずだ」  予想通りに魚雷が襲い掛かってくる。 「アンチ魚雷発射! 五十まで浮上」  迫り来る魚雷を直接破壊する迎撃魚雷である。  難なく魚雷を交わして、次の攻撃を待つ。 「さて、次にくる爆雷攻撃の後が肝心だ。艦尾魚雷発射管に魚雷を装填。発射角度 を三度で調整」  逃げ回ってはいるが、余裕綽々の艦長であった。そもそも潜砂艦として建造され た構造上、通常の潜水艦に比べて外壁に格段の相違があったのだ。その厚さだけで も二倍以上あるし、砂の中を進行する為に非常に滑りやすくできていた。仮に爆雷 が炸裂してもビクともしないし、魚雷もつるりと滑って反れてしまう確率が高い。  ソナー音が近づいてきた。 「おいでなすったぞ」  やがて水上艦からの爆雷攻撃が再開された。 「よおし。潜望鏡深度まで浮上! 魚雷発射準備」  爆雷の雨の中を上昇するSWS。  すでに水上艦はすれ違いを終えている。 「今だ! 魚雷発射!」  艦尾魚雷が発射される。  扇状に開きながら、敵艦に向かう魚雷。  そして見事に敵艦に命中した。  火柱を上げながら沈んでいく水上艦。  SWSの艦内にも、きしみ音を上げて水没していく様子が、水中を渡って響いて くる。 「撃沈です」 「よし。皆、よく耐えて頑張ってくれた。これより基地に帰還する」  乗員達の表示に明るさが戻ってくる。  久しぶりの基地帰還である。  艦内ではできなかったシャワーを浴びたり、豪勢な肉料理にかぶりついたり、そ して何より、しばしの休暇が与えられるの一番の喜びだった。  第四章 了
ポチッとよろしく!
11

2019年9月14日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証 IV

第四章 皇位継承の証
                 IV  パトリシアの前に立ち、神妙な表情で話しかける。 「ちょっとよろしいですかな?」 「何か?」 「その首飾りを見せて頂けませんか?」 「え? ……ええ、どうぞ」  パトリシアの首に掛けたまま、首飾りを手にとって念入りに調べていたが、警備 兵を呼び寄せて、 「あなた様は、この首飾りをどこで手にお入れなさりましたか?」  と、不審そうな目つきで尋ねる。 「ランドール提督から、婚約指輪の代わりに頂きました」 「婚約指輪ですか?」  今度はきびしい目つきとなり、アレックスを睨むようにしている。 「申し訳ございませんが、お二人には別室においで頂けませんか?」  警備兵が銃を構えて、抵抗できない状況であった。 「判りました。行きましょう」  承諾せざるを得ないアレックスだった。  ほとんど連行されるようにして別室へと向かう。  首飾りも詳しい調査をするとして取り上げられてしまった。  案内されたのは、元の貴賓室であった。犯罪性を疑われているようだが、帝国の 恩人で摂政から客員提督として叙された者を、無碍にもできないというところであ った。それでも警備兵の監視の下軟禁状態にあった。  しばらくして、首飾りを持って侍従長が戻ってきた。 「さてと……。改めて質問しますが、提督にはこの首飾りをどちらでお手に入れら れましたか?」  という侍従長の目つきは、連行する時の厳しいものから、穏やかな目つきに変わ っていた。 「どちらで……と言われましても、私は孤児でして、拾われた時に首に掛けられて いたそうです。親の形見として今日まで大事に持っていたものです」 「親の形見ですか……。提督のお名前はどなたが付けられたのですか」 「それも拾われた時にしていた、よだれ掛けに刺繍されていたイニシャルから取っ たものだそうです」 「よだれ掛けの刺繍ですね」 「はい、その通りです」 「なるほど、良く判りました。それでは念のために提督の血液を採取させて頂いて もよろしいですか?」 「血液検査ですね」 「はい、その通りです」 「判りました。結構ですよ」  早速、看護婦が呼ばれてきて、アレックスの血液を採取して出て行った。 「結果が判るまでの二三日、この部屋でお待ち下さいませ。それからこの首飾りは 提督の物のようですから、一応お返ししておきます。大切にしまっておいて下さ い」 「イミテーションではないのですか?」 「とんでもございません! 正真正銘の価値ある宝石です」 「これが本物?」  言葉にならないショックを覚えるアレックスだった。  これまで偽造品だと信じきっていて、親の形見だと思って大切にはしてきたが… …。まさかという気持ちであった。 「そう……。銀河帝国皇家の至宝【皇位継承の証】です」  重大な言葉を残して、侍従長は微笑みながら部屋を出て行った。
ポチッとよろしく!
11

2019年9月13日 (金)

妖奇退魔夜行/胞衣壺(えなつぼ)の怪 其の廿

陰陽退魔士・逢坂蘭子/胞衣壺(えなつぼ)の怪

其の廿 魔法陣  蘭子が、トンと地面を踏むと、地鎮祭に使用された縄張りを中心として、敷地全体に 魔法陣が出現した。 「ほう、奇門遁甲八陣図ですか」 「その通りよ。もう逃げられないわよ」  今日のこの日を予想して、縄張りを片付けずに、魔の者には見えない魔法陣を描いて いたのである。 「なるほど、そういう手できましたか。弱りましたね」  と言いながらも、不死身ゆえに余裕の表情を見せていた。  しかしながら、自由を奪われて身動きできないようだった。 「白虎!」  言うが早いか、霊魂から離れて美咲に飛び掛かった。  白虎が爪を立てて狙ったのは?  胞衣壺だった。  その鋭い爪で、魔人が抱えていた胞衣壺を弾き飛ばした。  胞衣壺は宙を舞って、蘭子の方へ飛ぶ。  それをしっかりと受け取る蘭子。  白虎は再び霊魂の押さえに戻っている。 「さて、それをどうする? 壊すか?」  意味ありげに尋ねる美咲魔人。  胞衣壺は、単なる依り代でしかない。  壊したところで、別の依り代を求めるだけである。  さあどうする、蘭子よ。 「そうね……こうします」  というと呪文を唱え始めた。 「こ、これは、呪縛封印の呪文かあ!」  さすがに驚きの声を上げる美咲魔人。  蘭子の陰陽師としての能力を過少評価していたようだ。  不死身という身体に油断していた。  不死身ならば封印してしまえば良いということに気が回らなかった。  一心不乱に呪文を唱えながら、胞衣壺の蓋を開ける蘭子。  美咲の身体が輝き、白い靄のようなものが抜け出てくる。  やがて白い靄は、胞衣壺の中へと吸い込まれるように消えた。  すかさず蓋を閉め、呪符を張り付けて封印の呪文を唱える。  無事に胞衣壺の中に魔人を閉じ込めることに成功した。 「ふうっ……」  と深い息を吐く。  後に残された霊魂も、魔人の呪縛から解かれている。 「白虎、もういいわ」  静かに後ずさりするように、霊魂から離れる白虎。  怨念の情は持ってはいても、蘭子の手に掛かれば浄化は容易い。  浄化の呪文を唱えると静かに霊魂は消え去り、輪廻転生への旅へと出発した。 「さてと……」  改めて、魔人が抜け出して放心して、地面にへたり込んでいる美咲を見つめる。  白虎がクンクンと匂いを嗅ぐような仕草をしている。 「大丈夫よ。気を失っているだけだから」  血の契約を交わしたとはいえ、精神を乗っ取られた状態であり、本人の承諾を得たと は言えないので契約は無効である。  美咲に近寄り抱え上げると、白虎の背中に乗せた。 「運んで頂戴ね」  白虎としては信頼する蘭子以外の者を背に乗せることは嫌だろうが、優しい声でお願 いされると拒否できないのだ。 「土御門神社へ」  霊や魔人との接触で、霊的精神障害を追っているかも知れないので、  蘭子と美咲を背に乗せながら、夜の帳の中を駆け抜ける白虎。
ポチッとよろしく!
11

2019年9月12日 (木)

冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 59

冗談ドラゴンクエスト

冒険の書 59 勇者「で、洞窟の先には何があるんだ?」 コンラッド「進みます。行けば分かります」 勇者「同じこと言うんだな。訳ありか?」 ナタリー「いいじゃな、行けば分かるというんだから」 ナレ1「というわけで、ともかく洞窟内を前へと進みだす一行だった」 ナレ2「ピトピトと地下水が染み出る洞窟をに突き進んでいくと、前方に光が見え てきた」 リリア「出口だわ!」 ナレ1「出口が見えたということで、自然足早になるのだった」 ナタリー「出たわ!」 リリア「何よ、これは!」 ナレ1「目の前には、見渡す限りの原野が広がっており、周りは崖が取り囲んで中 心には大きな湖が青い水をたたえていた。いわゆる外輪山に囲まれたカルデラ地形 の中だろうか」 リリア「凄いですね」 勇者「滝の中のトンネルを抜けると、そこは別世界だった」 ナタリー「なんか聞いたような言葉ね」 リリア「このどこかにクアール最高導師様がいらっしゃるのでしょうか?」 コンラッド「大神官様から頂いた、導きの羅針盤が反応しています」 リリア「それは何ですか?」 コンラッド「どうやら魔力に反応するようでして、最高導師様の居場所を指し示す そうです」 リリア「魔力ならナタリーも持ってますよね」 ナタリー「あたしなんかクアール様の足元にも及びませんよ」 勇者「だよな、羅針盤も全然反応しねえし、そもそも売春婦だろ」 コンラッド「売春婦にこだわるんですね」 勇者「日本軍性奴隷制被害者と言わないだけましだろ」 コンラッド「とにかく、羅針盤が指し示している方角に向かいましょう」 リリア「クアール様は本当にいらっしゃるのでしょうか?」 ナタリー「ここまで来たんだもの。信じて進むしかないでしょ」 ナレ1「羅針盤の示す方向へと歩むこと5時間、日が暮れ始めた来た」 コンラッド「今日はここで野宿しましょう」 勇者「ちょっとおかしくないか?」 リリア「なにがですか?」 勇者「足が棒になるほど歩いたというのに、反対側にたどり着かないってのはよお。 そんなに広い窪地じゃないだろ?」 コンラッド「気づいてましたか」 勇者「気づくさ。見た目、1時間もあれば端まではおろか、周囲をぐるりと回れる はずだぜ」 ナタリー「だって結界の中を進んでいるんだものね」 勇者「結界だって?」 ナタリー「隠遁していらっしゃるクアール様が、そうそう簡単に人里の者と会うは ずがないでしょ。この結界は、私達の本気度を試してらっしゃるのよ」 リリア「本気度ですか?」 ナタリー「そうよ。今日は歩かされるだけだったけど、明日からは強力なモンス ターをぶつけてくるかもね」 勇者「分かった!引き返そうぜ」 コンラッド「さあ、今日はもう休んで明日に備えましょう」 勇者「おい、聞いてんのかよ」 ナタリー「さあ、寝よう寝よう」 ナレ1「勇者を無視して、野宿の支度をはじめる一行だった。やがて夜が更け、朝 が来る」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月11日 (水)

冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 58

冗談ドラゴンクエスト

冒険の書 58 ナレ2「コンラッドが放った矢は、見事滝のそばの木に絡まった」 ナタリー「やったね!」 コンラッド「さてと、ここからが大変ですよ(ロープを軽く引いて、しっかりと木 に掛かっているのを確認する)」 リリア「どうするんですか?」 コンラッド「このロープを伝って向こうの崖に渡ります(言いながら、ロープのも う片端を近くの木に結び付けた)」 ナタリー「大丈夫ですか?」 コンラッド「見ていてください(とロープを伝って渡り始める)」 ナレ1「弛んだロープは川面に浮かび、コンラッドはそれを伝って慎重に川の中を 渡ってゆく」 ナレ2「やがて滝の真下脇にたどり着くと、真上の木に向かって登り始めた」 ナレ1「木にたどり着くと、掛かっているロープをピンと張るようにしっかりと結 びなおした」 ナタリー「大丈夫ですか?(大声で)」 コンラッド「大丈夫です(大声で返す)ちょっと中を見てきます」 ナレ1「コンラッドのいる木から洞窟の穴までは、少し距離があったが、ロープの 残りを身体に縛り付けて安全を確保して、慎重に壁伝いに洞窟へ渡った」 ナレ2「危なげにも無事に洞窟にたどり着いたコンラッドは、身体に縛り付けてい たロープを外して、洞窟内にまで根を張っていた木に結び付けた」 コンラッド「さてと、洞窟は……だいぶ先まで続いているようだな」 ナレ1「残した者達のことも気になるが、まずは洞窟内を調べることが肝心だ。行 き止まりだったら全員で来ても意味がない」 ナレ2「30分ほどして、コンラッドが洞窟入り口に出てきた」 リリア「コンラッドさん!どうでしたか?」 コンラッド「今から戻りますよ」 ナレ1「レスキュー隊よろしく、するするとロープを伝って一行のいる対岸へ戻る コンラッド」 勇者「すごいな、まるで猿だな」 リリア「勇者さん、失礼ですよ」 コンラッド「いいんですよ。気にしません」 ナタリー「それで洞窟の中はどうでしたか?」 コンラッド「行けば分かりますが、ビックリしますよ」 勇者「なんだ、意味深だな」 リリア「このロープを渡るんですか?(怖気づいている)」 コンラッド「大丈夫ですよ。ここにもう一つのロープを用意します。張ったロープ を通すように輪っかを作ってもう一方を勇者さんの身体に巻き付けます。そしてグ イと押し出すと」 勇者「な、何をするんだ。あ、ああ!」 ナレ1「スーっと勇者は、ロープを伝って前へ進んでいく」 ナタリー「これが本当のロープウェイね」 勇者「馬鹿野郎!なんてことすんだよお(大声で叫んでいる)」 コンラッド「そこから洞窟へ入って下さい。入ったらロープを外して(大声で)」 勇者「分かったよ。こんなところにいつまでもぶら下がってられっかあ!」 ナレ1「言われた通りに洞窟へ飛び移り、身体のロープを外す勇者。それを見届け て、ロープに括り付けていた補助紐を引くと、移動用ロープは戻ってくる」 コンラッド「リリアさん。今のように渡って下さい」 リリア「ええ!あたしもですか?」 ナタリー「行くしかないでしょ。元の身体に戻りたければね」 リリア「(じっと考え込んでいたが)分かりました。行きます」 ナレ1「おっかなびっくりだが、意を決してロープを巻き付け飛び出した」 ナレ2「見事無事に洞窟へ渡り、続いてナタリー、そしてコンラッドと全員が洞窟 へ渡るのに成功した」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月10日 (火)

冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 57

冗談ドラゴンクエスト

冒険の書 57 コンラッド「ここで議論していても仕方がないですが……どうしたものか」 ナタリー「見て!(指さして)滝のそばに結構丈夫そうな木が生えてます」 リリア「ええ、確かに見えますね」 ナタリー「あれにロープを引っ掛けることができないでしょうか?」 コンラッド「そうか、その手がありましたか」 勇者「どういうことだよ」 コンラッド「あの木にロープを引っ掛けられれば、ロープを伝い川の中を渡ってい けますよ」 リリア「どうやってロープを?」 コンラッド「弓と矢を使います」 リリア「でもパーティーに弓使いはいませんが」 コンラッド「任せてください。皆さんはそこで待っていて下さい(というと森の中 に分け入った」 ナレ1「森の中から木を切るような音が響く」 ナレ2「やがて戻ってきたコンッドの手には、丈夫そうな竹と蔓そして木の棒が握 りしめられていた」 リリア「それは何ですか?」 コンラッド「弓矢を作るんですよ」 リリア「作れるんですか?」 コンラッド「まあ、見ていて下さい。それから火を起こしてくれませんか?」 リリア「分かりました。木々を拾ってきます」 ナレ1「竹をナイフで適当な長さに切り、3センチ幅に縦割りするコンラッド」 ナレ2「切り揃えた割竹の節を丁寧に削って滑らかにする」 リリア「木々を拾ってきました」 コンラッド「ありがとうございます。火を起こして熱湯を作って下さい」 リリア「わかりました」 ナレ1「言われた通りに火を起こして、飯盒でお湯を沸かすリリア」 ナレ2「その間にも着々と弓矢作りに専念するコンラッド」 リリア「お湯が沸きましたよ、コンラッドさん」 コンラッド「ありがとう」 ナレ1「と言うと、金属製の手付きコップに水を入れて、荷物袋から取り出した乾 燥ニカワを湯煎する」 ナレ2「飯盒の熱湯によって、コップの中のニカワが溶け始めて粘着性を帯び始め る」 ナレ1「ちなみに、ニカワはバイオリンなどの楽器の組み立てにも使われ、経年劣 化の少ない良質の接着剤として利用されてきた。また止血にも使われる他、主成分 がゼラチンなので食用としても用いられる。旅の必需品である」 コンラッド「よし、いいだろう」 ナレ1「溶けたニカワを使って、数本の割竹を張り合わせ始める。」 ナレ2「用の済んだ飯盒を片付けて、竹を火で炙りながら少しづつ曲げてゆき、適 当な具合で両端に蔓を取り付けて弦を張る」 ナレ1「続いて矢の製作に取り掛かる」 ナレ2「こちらは簡単だ。先を尖らせて、後ろにロープを結ぶだけだ。そして弓矢 が完成した」 リリア「出来たのですか?」 コンラッド「出来ましたが、たぶん一発限りで壊れるでしょう」 勇者「なんだよ、それって……」 コンラッド「あの木に届きさえすれば、一発あれば十分です」 勇者「で、誰が弓を引くんだ?」 コンラッド「君が引きますか?」 勇者「俺は遊び人だぜ。弓を使えるわけないだろ」 コンラッド「でしょうね。私がやりますよ」 ナレ1「と言うなり、弓矢を構えるコンラッド」 ナレ2「きりりと表情を引き締めて、弓矢の投射態勢に入るコンラッド」 リリア「コンラッドさん……(成功しますようにと祈る」 コンラッド「えい!(とばかりに、弓を射る)」 ナレ1「ロープの繋がれた矢は一直線に例の木へと突き進む」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月 9日 (月)

冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 56


冗談ドラゴンクエスト

冒険の書 56

 

 

ナレ2「さらに野山をかき分けること数日」
リリア「水が流れる音が聞こえます」
ナタリー「ほんとだ。どっちから?」
勇者「俺には聞こえねえが」
ナタリー「あんたは邪心しかないから聞こえないのよ」
勇者「女の囁き声なら1キロ先でも聞こえるぞ」
ナタリー「だろうね」
コンラッド「あっちの方から聞こえます(指さす)行ってみましょう」
ナレ1「水音のする方へと急ぐ一行」
ナレ2「水音は次第に大きくなり、やがて雄大な瀑布が現われた」
リリア「これがムース滝ですか?」
コンラッド「そうです」
ナレ1「激しく下り落ちる水流のなんたる荘厳なものだうか。遠く離れていても水
飛沫がかかり衣服を濡らしていく」
ナレ2「足元を流れる水は、清く澄んでいた」
リリア「この水は飲めるでしょうか?」
コンラッド「飲めると思います」
リリア「飲んでみます」
ナレ1「川辺にひざまずいて、両手で水を掬って飲むリリア」
リリア「おいしい!!」
ナレ1「道なき道を長時間歩いてきたので、渇きを覚えていた喉越しの水は美味し
いと感じるには十分だった」
ナレ2「他の者も一緒に飲み始める。ついでに水筒にも補給する」
勇者「しかし、コンラッドさんよお。ここを知ってたんだろ?なんで道が分からな
かった」
コンラッド「何せほとんど人が通らず獣道しかないので、月日が経てば草木が伸び
て道も消え失せてしまいますから」
ナタリー「なるほどね、迷いの森と同じというわけね」
勇者「GPSナビとかないのかよ。今時のスマホには大概付いてるだろ?」
ナタリー「どこの世界の話よ。ここにそんなもんあるわけないでしょ」
ナレ1「その時、コンラッドの荷物袋に入っていた『導きの羅針盤』が反応した」
コンラッド「これはどうしたことか?」
ナレ1「羅針盤の針がムース滝を刺したまま動かない」
リリア「それは何ですか?(不思議そうに覗き込む)」
コンラッド「大神官様が最高導師様から頂いたもので、それを自分に下さったので
す。何でも導師様が近くにいると反応するということらしいです」
ナタリー「じゃあ、あの滝の中にいるということ?」
コンラッド「滝の中というより、その裏側じゃないですか?」
ナタリー「ああ、よくある話しね。滝の裏側に洞窟があるということね。ちょっと
待って透視してみるから」
ナレ1「目を瞑り、呪文を唱えるナタリー」
ナタリー「見えたわ。確かに滝の中腹に洞窟があるわ」
リリア「「だとしても、どうやって洞窟へ行きますかく?足場がありませんよ」
勇者「瞬間移動の魔法とかないのか?」
ナタリー「あたし一人だけなら移動できるけどね。全員は無理よ」
勇者「なら、おまえ一人で行って見てこい!」
ナタリー「あのねえ、あんた一人をあそこまで吹っ飛ばすことだってできるのよ」
勇者「あ、肩に枯れ草が付いてる(機嫌取りする)」
リリア「回り道して滝の上側に行って、そこからロープを垂らして洞窟に降りると
いうのは?」
コンラッド「そこまで行くのにさらに日数がかかると思いますし、より凶暴なモン
スターに出くわす可能性もあります」
勇者「滝の上部は見えてるのに、何日もかかるのかよ」
ナタリー「馬鹿ねえ。冬山登山家なんかは、目の前数十メートル先に頂上が見えて
いても、気象や体調を考慮して、登頂を断念することもあるんだから」
勇者「だとしたら滝の側壁断崖を伝ってロッククライミングで渡るしかないじゃな
いか」
リリア「ロッククライミング……って何?」
勇者「ハーケンとかカラビナを使って岩盤に杭を打って、それにザイルを伝わせて
崖を登ったり横断したりするんだよ」
リリア「……??(首を傾げ理解できない表情)」
勇者「はあ……花売り娘には分からないか」
ナタリー「花売り娘はあんたでしょうが」
ポチッとよろしく!
11

 

2019年9月 8日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XVII

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                XVII  水中深く沈んでいくSWS。  やがて大きな横穴が姿を現わした。  それは地下水脈であった。  オアシスは地下水脈を通して、大海へと繋がっていたのである。 「内陸部の湖には、地下水脈で大海に通じているものがあることを知っているのは 俺達だけだ。そして実際に航行できるのもこの艦のおかげだ」 「開発設計者は、士官学校在学中だったフリード・ケースンという人物らしいです けど……。一体どんな顔してるんでしょうね。機密情報扱いで顔写真が公開されて いませんので」 「そりゃそうさ。顔写真が公開されたら、拉致・誘拐される危険性が高くなるじゃ ないか。これだけ優秀な技術者を失えば大きな損失になる」  地下水脈を流れに任せて航行するSWS。 「まもなく海中に出ます」 「海に出たら、浮力調整を塩水モードに変更」 「海中に出ました。現在、カラコルム海を航行中」 「潜望鏡深度まで浮上」 「潜望鏡深度、深度十八メートルまで浮上」 「メインバラストタンク排水」  ゆっくりと浮上をはじめるSWS。  震度計の針が回って、十八メートルを指して止まった。 「十八メートルです」  潜望鏡を上げて、海上を探査をはじめる艦長。  海上はおだやかで波一つ見えず、艦影も水平線の彼方まで見られなかった。 「浮上!」 「見張り第一班配置につけ」  海上に姿を現わすSWS。  指揮塔のハッチを開けて出てくる艦長と副長、そして見張り要員。甲板からもハ ッチを開けて乗員が出てくる。全員が大きく深呼吸して新鮮な空気を身体一杯に取 り込もうとしていた。  換気装置が働いている音が微かにしている。原子力で動いており、空気清浄器を 使って、基本的には一ヶ月は換気の必要はないのだが、やはり外界の空気は新鮮こ の上ないのである。 「やはり海は良いな。これぞ船乗りという気分がする」 「砂の海とは大違いですね」 「そうだな……。さてと任務を遂行するか」 「はい」 「トライアス発射準備。一番だ」 「トライアス一号、発射準備」 「目標。バイモアール基地。ただし併設のカサンドラ訓練所は外す」 「了解。目標、バイモアール基地、カサンドラ訓練所は外します」 「目標セットオン。一号発射管、上扉開放」 「一号発射準備完了」 「一号発射!」  ガス・蒸気射出システムによって打ち出されたミサイルは、ある程度の高度に達 したところで、自身のエンジンに点火されて目標へと向かっていく。 「発射確認。目標に向かっています。到達時間二分十五秒」  のんびりと船乗り気分に酔いしれている艦長。 「いい風だな。戦争をしていることを、つい忘れてしまいそうだ」 「ミサイル、目標に着弾しました」 「基地を完全に破壊」  その時、見張り要員が声を上げた。 「艦影発見! 十七時の方向です」  すかさず副長が、双眼鏡を覗いて答える。 「ミサイル発射を探知されたのでしょう。こちらに高速で向かってきます」 「警報!」  艦の内外に警報が鳴り響く。  外に出ていた乗員が、一斉に艦内へと戻ってゆく。 「潜航!」 「メインバラストタンクに注水」 「潜蛇下げ舵、十五度」  艦首を下に向けて、潜航を続けるSWS。 「水平!」  ゆっくりと水平に体勢を直す。 「全隔壁閉鎖! 無音潜航」  各ブロックが閉鎖され、息を潜めて身動きしない乗員達。  その表情からは、 「艦長はやる気だ」  という雰囲気がうかがえる。
ポチッとよろしく!
11

2019年9月 7日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証 III

第四章 皇位継承の証(あかし)/土曜劇場
                III  宮廷楽団の奏でる音楽の旋律が変わって、パーティーのはじまりを告げていた。  正面壇上にパーティー主催者であるウェセックス公国ロベスピエール公爵が立っ た。そばには小さな子供、嫡男であり皇太子候補のロベール王子。 「パーティーにご列席の皆様、ようこそおいで下さいました。ご存知の通りに、帝 国に対して謀反を引き起こしていましたマーガレット皇女様が逮捕され、内乱は鎮 圧されました。このパーティーは、それを祝いまして開催いたしました。と同時に、 我が息子のロベール王子が正式に皇太子として認められたことになる記念日でもあ ります」  場内に拍手が沸き起こった。  皇室議会においてロベール王子が皇太子に推されたことは事実ではあるが、皇女 の一人が意義を唱えて内乱を引き起こしたことによって、一時棚上げとされたので ある。しかし首謀者のマーガレット皇女が捕らえられたことによって、ロベール王 子擁立に反対する者がいなくなって、皇太子として正式に認知されたということで ある。  会場に、アレックスとパトリシアが遅れて入場した。 「おお! 今宵の主賓の登場でありますぞ」  と、アレックスの方に向かって、大きなジェスチャーで紹介するロベスピエール 公爵だった。 「この度の電撃作戦によって、見事マーガレット皇女様を逮捕された功労者であり ます。銀河帝国客員中将となられたアレックス・ランドール提督です」  ざわめきが起こった。 「何とお若い……」 「あの若さで中将とは」 「それにほら、あの瞳。エメラルド・アイではございませんこと」 「すると皇室ゆかりの方でいらっしゃられる?」 「でも、お見受けしたこともございませんわ」  会場に参列した貴族達に、アレックスの第一印象はおおむね良好のようであった。 「さあさあ、飲み物も食べ物もふんだんにご用意しております。どうぞ、心ゆくま でご堪能下さいませ」  アレックスのことは簡単に紹介を済ましてしまったロベスピエール公爵。  その本当の身分が共和国同盟解放戦線最高司令官であることは伏せておくつもり のようだ。パーティー主催の真の目的がロベール王子の紹介であることは明白の事 実であった。貴族達の間を回って、自慢の嫡男を紹介していた。  参列者達の間でも、それぞれに挨拶を交し合い、自分の子供の自慢話で盛り上が る。  やがてそれらが一段落となり、見知らぬ女性の存在を気にかけるようになる。 「何でしょうねえ……。提督のご同伴の女性」  パトリシアである。  中将提督と共に入場してきた場違いの雰囲気を持つ女性に注目が集まっていた。 「何か、みすぼらしいと思いませんか?」 「ドレスだって、借り物じゃございませんこと?」  蔑むような視線を投げかけ、卑屈な笑いを扇子で隠している。 「それにほら、あの首飾りです。エメラルドじゃありません?」 「あらまあ、ご存じないのかしら。エメラルドは皇家の者しか身につけてはならな いこと」 「でもどうせイミテーションでしょ」 「噂をすれば、ほら侍従長が気が付かれたようですわ」 「あらら、どうなることやら……。ほほほ」  侍従長がパトリシアに近づいていく。
ポチッとよろしく!
11

2019年9月 6日 (金)

妖奇退魔夜行/胞衣壺(えなつぼ)の怪 其の拾玖

陰陽退魔士・逢坂蘭子/胞衣壺(えなつぼ)の怪

其の拾玖 美咲魔人  軍人の幽霊が、腰に下げた軍刀を抜いて斬りかかってきた。  美咲魔人に操られているようだ。  切っ先を鼻先でかわすと同時に、懐から取り出した呪符を、その額に張り付ける。  身動きを封じた幽霊に対して、 「白虎、押さえておいて」  命じると、白虎は幽霊に覆いかぶさるように押し倒して馬乗りになった。  零体を押さえるなど人間には無理だが、聖獣の白虎なら可能である。  白虎の神通力を持ってすれば、咆哮一発消し去ることもできるのだが、この彷徨える 霊魂を成仏させて輪廻転生させたいと願っていたのである。  無に帰してしまえば生まれ変わりはできないからだ。 「ほう、そう来たか。わたしと一対一で戦おうというわけですね。でもね、こう見えて も実はわたしは不死身なんですよ」  不死身と聞いても蘭子は動揺しなかった。  これまでにも幾度となく不死身の魔人とも戦ってきた経歴を持っていた。 「ところで聞いてもいいかしら?」 「構いませんよ」 「ここで殺人が行われた時に、すでにあなたは覚醒したと思います。それが戦後70年以 上経ってから、活動を始めたのは何故ですか?」 「目覚めても、依り代となっていた壺が土の中だったからですよ。動けなかった。誰か が掘り起こしてくれるのを待っていた。で、地上に出られたは良いが、これがむさ苦し い男だったから躊躇していた」 「そんな他愛のないことで?」 「誰かに憑りつくなら綺麗な女性に限りますからね。それにこの娘とは波長が合いまし てね」 「波長が合う?」 「何故なら、この壺の主であるそこの霊体と、この娘とは血縁同士ですからね」 「血縁ですって?」 「彼には子供がいませんでしたから、叔父叔母とかの血筋ですかねえ」  意外な展開に考え込む蘭子だった。  抗争中にそんな余裕あるのかと言えば、魔人は不死身を自認しているだけに、余裕 綽々な態度を見せて蘭子を見守っているというところだ。 「あの夜、この娘がここを通りかかった時に、壺が震えました。共鳴現象という奴です ね」 「なるほど、良く理解できました」  緊張した空気の中で続けられる会話。  事の次第が明らかになったことで終わりを迎える。 「そろそろ決着を付けましょうか」 「そうですね。これ以上の話し合いは無駄のようです」  懐から虎徹を取り出し鞘から引き抜くと、それは短刀から本来の姿の長剣に変わった。  中段・臍眼に構えながら念を込める。  やがて虎徹はオーラを発しながら輝き始める。  魔人を倒すことのできる魔剣へと変貌してゆく。  美咲を傷つけることなく、魔人を倒すことができるのか?  じりじりと間合いを詰め寄りながら、 「えいやっ!」  とばかりに斬りかかる。  すると美咲魔人は、ヒョイと軽々とステップを踏むように回避した。  どうやら動きを読まれている。 「当たりませんねえ」  不敵な笑みを浮かべる。  しかし蘭子も言葉を返す。 「どうでしょう、こういう手もあるのよ」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月 5日 (木)

冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 55

冗談ドラゴンクエスト

冒険の書 55 ナレ2「山あり谷ありの道というよりも、ほとんど獣道といった所を龍峡谷へと進 む一行」 ナレ1「進めば進むほど、出現するモンスターの数も増え、レベルも上がってゆ く」 ナレ2「モンスターを倒しながら突き進むうちに、どこからともなく水の音が聞こ えてくる」 リリア「水が流れる音が聞こえます」 ナタリー「ムースの滝でしょうか?」 コンラッド「何とも言えませんが、近づいてみましょう」 ナレ1「と一歩踏み出すと、目の前に巨大な影が遮った」 勇者「こいつあ、ヤマタノオロチか?」 ナタリー「違うみたいね、1・2・3……頭が9個あるわ。九頭竜ね」 勇者「ほんとだ。頭、8本じゃないな」 ナレ1「解説しよう。日本書紀などにあるヤマタノオロチは、須佐之男命が八首龍 を倒して『草薙の剣』を手にした、とあるが。別の伝承ではまた違う記述がある。 例えば千葉の鹿野山九頭竜伝説では、日本武尊が草薙の剣を持って九頭竜を倒した とある。龍が村人を襲ったとか、酒で酔い潰したところを倒したのは同じ。伝承と いうものは地方によって、それぞれ都合よく改変されるものである」 勇者「ステージクリアを阻むボスキャラ登場というところか!」 ナタリー「言いえて妙ね」 勇者「シューティングゲームなら倒すっきゃないが、RPGなら説得するとかアイ テムさえあれば何とかなるんだが。例えば『メルキドのまち』を守るゴーレム『よ うせいのふえ』があれば戦闘なしで消し去ることができる」 ナタリー「また、ドラクエIの話?」 勇者「おうともよ」 リリア「回り道しますか?」 勇者「王城の武器屋で売っていたドラゴンバスター1000000Gがあれば簡単に倒せ るんだろうけどな。あれはゲームクリア直前の金貨持ちきれないほど状態でないと 買えないぜ」 ナタリー「ん……。ちょっと待って(なにやら呪文を唱えている)」 ナレ1「すると九頭竜の姿が薄れてゆき、やがて残ったのは朽ちた大木であった」 コンラッド「九頭竜が消えた?」 ナタリー「幻惑視の魔法が掛けられていたのよ」 リリア「クアール最高導師様が?」 ナタリー「そのようね」 コンラッド「さすが魔術師のナタリーさんですね。幻惑視を見破るなんて」 勇者「うそだい、こいつは売春婦だぜ」 ナタリー「さあ、先を急ぎましょう(相手にしない)」 勇者「おいこら!無視するなあ!!」 ナレ1「勇者を無視して先へ急ぐ一行だった」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月 4日 (水)

冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 54

冗談ドラゴンクエスト

冒険の書 54 ナレ1「食堂で食事をしている一行。そこへ勇者が青い顔をして現れる」 勇者「気持ち悪いぜ……」 ナタリー「飲めないのに、がぶ飲みするからよ」 勇者「そうなのか?」 リリア「今のあなたの身体は、酒の飲めないあたしなんですから」 勇者「なるほど、すっかり忘れていたよ」 ナタリー「まあ、おかげで昨夜は、夜這いされることなくぐっすり眠れたわ」 リリア「はい、お水をどうぞ(コップを刺しだす)」 勇者「おお、サンキュー(ゴクゴクと飲み干す)」 コンラッド「みなさん、お静かに。今日の予定を発表します」 リリア「予定ですか?」 コンラッド「司祭様からの情報です、龍峡谷の東斜面のムース滝で、最高導師様らしき 人を見かけたという村人がいたとのことです」 リリア「ほんとうですか?(目を爛々と輝かせて)」 コンラッド「あくまで不確定要素ですが……」 ナタリー「でも手探り状態の現状を考えれば、どんな些細な情報でも確認する必要があ るでしょう。ね、リリア」 リリア「はい、わたしもそう思います」 勇者「反対!!(と手を挙げる)」 ナタリー「それでは、ムース滝に行くべしという方は挙手して(勇者を無視)」 リリア「はい、賛成!」 ナレ1「勇者を除く三人が手を挙げた」 ナタリー「決まりね。ムース滝行き決定!」 勇者「少数意見無視だ!多数決横暴!!絶対反対だぞ、行くならおまえらだけで行け」 ナタリー「どっかの国の政党みたいね。政権取ったら少数意見を無視して多数決原理で 政治を強行して、いざまた野党に戻ったら、多数決横暴とか議会運営を邪魔する」 コンラッド「行く行かないは個人の自由ではありますが、あなただけの問題ではないの ですからね」 ナタリー「そうよ。リリアは元に戻りたいのよ。そのためは、その場にあなたの同席が いるの!」 リリア「元に戻りたくないのですか?わたしは戻りたいです(必死の表情で懇願す る)」 ナレ1「うるうると瞳をうるませて、じっと勇者を見つめるリリア」 ナタリー「あんたの性格なら、女でいる方が世のためかも知れないけどね」 リリア「そんなあ、ひどいです!」 ナタリー「あ、うそよ。うそ」 勇者「わかったよ……行けばいいんだろうが!」 コンラッド「よし!決まりですね」 ナレ1「というわけで、龍峡谷東側斜面にあるというムース滝に向けて、チャッキリ村 を出発する一行だった」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月 3日 (火)

冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 53

冗談ドラゴンクエスト

冒険の書 53 コンラッド「はい。存じております」 司祭「その激しい瀑布に打たれている修行僧らしき人物がいた、ということだ」 コンラッド「あの瀑布に打たれれば、普通の人間なら死にますよ。どころか、激流に押 し流されてしまいます」 司祭「まあそうだろうな。常人じゃない雰囲気を持っていたそうだ」 コンラッド「つまり、ムース滝近辺に最高導師様がいらっしゃる可能性ありですね」 司祭「行ってみるか?」 コンラッド「もちろんです!」 ナレ1「こうして、新たなる情報を得たコンラッドは、司祭にお礼を言って仲間の待つ 宿屋に戻った」 リリア「止めてください!お願いですから!!」 ナレ1「宿屋の食堂から、リリアの悲鳴が聞こえてくる」 コンラッド「何事ですか?(と食堂に入ると)」 勇者「おお、コンラッド帰ったか!」 ナレ1「と見ると、勇者が上半身裸で、食卓の上に登って踊っていた」 コンラッド「こ、これは何ですか?」 リリア「あたし酒は飲めないんですよ。それなのに……」 ナタリー「こいつ酒乱だったんだ」 リリア「あ、あたしじゃありませんからね」 コンラッド「は、はあ……(ため息)」 リリア「と、とにかく服を着てください!(悲鳴)」 勇者「え、なに?じゃあ、下も脱ぎまーす」 リリア「きゃあああああ!」 ナタリー「しょうがないわねえ。スリープ!(眠りの魔法をかける)」 勇者「ほえ……(魔法により食卓の上にうずくまって眠りこける)」 コンラッド「しようがないですねえ……(勇者を抱きかかえる)」 ナレ1「魂は勇者でも、身体は元々リリアなので、優しく扱うコンラッドだった」 コンラッド「寝かせますから、部屋はどちらですか?」 リリア「あたしが案内します」 ナレ1「勇者の部屋に入り、ベッドに寝かせ付ける」 ナレ2「そして夜が明ける」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月 2日 (月)

冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 52

冗談ドラゴンクエスト

冒険の書 52 ナレ1「目的地への道は、龍峡谷というだけあって山あり谷あり、おまけにモンスター もテンコ盛りだった」 ナレ2「チャリラリラン♪ 勇者のレベルが上がった、体力が1上がった……。リリア のレベルが上がった、体力が1上がった……」 ナタリー「ふうっ……キリがないわね。まあ、レベルの低いリリアの経験値稼ぎには丁 度いいけど」 リリア「勇者さんも同じですね」 勇者「おりゃあ!(とモンスターを一匹倒す)わらわらと出てきやがるな」 リリア「見て!(と指さす)山里が見えますよ」 コンラッド「チャッキリ村ですよ」 ナタリー「急ぎましょう」 ナレ1「というわけで、チャッキリ村に駆け込む一行」 リリア「宿屋を探しましょう」 勇者「それがいいね。飯をたらふく食いたいぜ」 リリア「それは止めてください。太りますから」 勇者「なんだよ、飯ぐらい好きに食わせろよ」 ナタリー「喧嘩は止めなさいよね。ほら、あそこに宿屋があるわ」 コンラッド「先に宿屋に行ってください。私は、教会に行きます」 リリア「司祭様に、クアール最高導師様についてお聞きするのね」 ナタリー「どこかで見かけたという情報でもいいから、聞きだせるとよいわね」 ナレ1「一行から離れて教会へ向かったコンラッド」 ナレ2「そそり立つ尖塔を構えた教会が、村の中心に立っていた」 ナレ1「村の中にモンスターが入れないのも、この教会が発する強力な結界が村を守っ ているのである」 司祭「よくぞ参った、コンラッド殿」 コンラッド「お久しぶりです、司祭様」 司祭「噂に流れ聞いているぞ。クアール最高導師様を探しているそうだな」 コンラッド「左様にございます。司祭様はご存知ないですか?」 司祭「そう聞くだろうと思って、実は礼拝の時に村人達にそれらしき人物を見かけなか ったか尋ねてみた」 コンラッド「で、どうでしたか?」 司祭「うむ……そもそも最高導師様がどんなお姿かも知っている者はおらんからな。並 みの人間ではなさそうな、あくまでそれらしき人物」 ナレ1「じらすような口調で言葉を続ける司祭」 司祭「龍峡谷の東斜面にムース滝があるのは知っておるな」
ポチッとよろしく!
11

2019年9月 1日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XVI

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                XVI  潜砂艦の指揮塔から、砂の上に降り立つ、艦長以下の参謀達。  砂塵を巻き上げながら降下するミネルバを見上げている。  ミネルバの砲塔が旋回して潜砂艦に照準が合わせられたようだ。抵抗する気配を見せ たら、容赦なく攻撃を開始するという牽制である。  やがて降下したミネルバの昇降口が開いて、フランソワやベンソン副長が降り立ち、 歩み寄ってくる。 「どうやら向こうの艦長は女みたいですね」 「それだけじゃない。胸の徽章を見てみろ。戦術用兵士官だ」 「なるほど、旗艦という理由が納得できたみたいです」  フランソワが目の前に立った。  一斉に敬礼する潜砂艦の乗員達。  それに応えてフランソワも敬礼を返しながら、 「これはどういうことですか? ハルブライト・オーウェン中尉」  名前を言い当てられて、少し驚きの表情を見せる艦長のオーウェン中尉。  艦艇データから、艦長名などを調べ上げたようだ。 「申し訳ありませんね。こちらに記録されております艦艇データが古くて、そちらの データが載っていなかったのですよ。そちらさんは、どうやら新造戦艦のようですから ね。確認が取れない以上、連邦軍の未確認艦として、攻撃を行ったというわけです」  嘘も方便である。確かに艦艇データに記録はないのだから、言い逃れはできそうであ る。  副長は笑いを押し殺している。 「そういうわけで、そちらの艦長さんのお名前も知らないわけでして……」  言われて頷くフランソワ。まだ自分の身分を名乗っていなかった。味方に攻撃されて 興奮していたせいであろう。 「ミネルバ艦長、フランソワ・クレール上級大尉です」 「ミネルバというと、メビウス隊の旗艦となる艦でしたよね。なるほど、それで我々の 攻撃をいとも簡単に凌いでしまわれたわけだ。感心しましたよ」  その時、通信が急ぎ足でオーウェンのもとに駆け寄ってきた。フランソワに一礼して から通信文を艦長に手渡す。  その通信文を読み終えて、 「新しい任務が届けられました。取り急ぎの用なので、これで失礼します。今回の件に つきましては、そちらの方で本部に伝えておいてください」  と言い残して、踵を返して潜砂艦に戻っていった。  潜砂艦艦橋。 「潜航開始!」  ゆっくりと砂の中に潜っていく潜砂艦。 「作戦の前にオアシスによって水を補給する。微速前進」 「取り急ぎの用ではなかったのですか?」 「自分の娘ほどの若い上級士官から小言を聞かされるのは耐えられんからな。任務にか こつけてオサラバしたのさ」 「あの上級大尉さん。呆然としていましたよ」 「まあ、俺の方が世渡り上手なだけだ」 「そんなものですかね」  それから小一時間後。  オアシスの湖に浮かんでいる潜砂艦。 「水の補給完了しました」 「それでは、行くとしますか。潜航!」  湖に沈んでいく潜砂艦。というよりも潜水艦と言った方が良いだろう。  この艦は流砂の中はもちろんのこと水中へも潜れる、SWS(サンド・ウォーター・ サブマリン)と呼ばれる兼用潜航艦である。
ポチッとよろしく!
11

« 2019年8月 | トップページ | 2019年10月 »