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2020年8月

2020年8月29日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第八章 トランター解放 Ⅶ

第八章 トランター解放

「全艦全速前進! 敵の中央に潜り込め!」
 艦艇の絶対数で劣っている連邦としては、乱撃戦に持ち込んで同士討ちに誘い込むしか
ない。

 連邦の作戦行動に驚愕の反応を見せる伯爵。
「馬鹿な、ありえない!」
「多勢に無勢、気がふれましたか?」
 戦闘訓練では、向かい合っての撃ち合いが基本の帝国軍には、往来激戦など理解できな
かった。
 懐に飛び込まれて右往左往する間に同士討ちを始めた。

「思った通りだ。これで少しは長生きできるな」
「いつまで持ちますかね」
「ま、神に祈るだけの時間は稼げるさ」
「祈るのですか?神を信じているなんて意外です」
「俺は信じてはいないが、部下の中には一人ぐらいはいるだろう」
「ですかね」
「さてと、そろそろ反撃が来る頃だな」
 冷静さを保っている艦及び冷静さを取り戻した艦を中心に反撃を開始した。
 十五対二百五十では、まぐれ当たりでも損害率には大きな開きが出る。
 次々と撃沈されていく連邦艦。
「味方艦全滅!この艦のみになりました」
「敵艦にどれくらいの損害を与えたか?」
「およそ八十隻かと」
「まあ、よくやったというべきだろうな」
 帰る道を閉ざされている以上、降伏か玉砕しか選択肢はない。
「ようし!全速で敵旗艦へ迎え。ぶち当ててやる!」
「特攻ですか?」
「今更、降伏もないだろうからな」
「了解!機関全速、取り舵十度!」

「真っすぐ向かってきます!」
 正面スクリーンに、猛スピードで迫りくる敵艦に、伯爵艦は慌てふためいている。
「回避しろ!」
「取り舵全速!」
「だめです。間に合いません!」
 パネルスクリーンに目前に迫る敵艦。
「衝突警報!総員、何かに掴まれ!」
 と同時に激しい震動が艦内を襲った。
 艦内の至る所で、衝撃を受けて転倒する者が続出した。
「みんな無事か?」
「は、はい」
「艦内の損傷をチェックしろ」
「今調べているところです」
「敵艦はどうしたか?」
「粉々に砕け散ったもようです」
「こちらの装甲がより厚かったというところだな」
「それに敵艦はかなり損傷を受けていましたしね」
 被弾した艦艇に残る将兵達の救助が始められた。
 ある程度作業が進んだ頃合いを見てから、
「救助艦を残して残った艦艇を再編成してトカレフに向かうぞ」
 侵略を開始した。


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2020年8月15日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第八章 トランター解放 V

第八章 トランター解放

 トリスタニア共和国同盟所領内にあるバルラント星域にある惑星トカレフ。
 首都星トランターから銀河帝国へ向かう輸送船などが、物資の補給でたまに立ち寄る程
度の寂れた星である。
 共和国同盟の敗北により、ここにも連邦軍の監視艇百十二隻が派遣されていた。
 かつての行政府には、監視艇団の司令官エッケハルト少佐が、連邦軍の命を受けて行政
官の任に就いていた。
 むろん政策は、連邦軍の法令にそって行われていたが、こんな辺ぴな星を訪れる中央政
府役人はおらず、少佐は好き勝手放題の行政を行っていた。
 中央に納めるべき税収の一部を着服して私腹を肥やし、さらに独自の税を創設して民衆
から搾り取っていた。
 行政府のすぐ近くに豪邸を建て、まるで貴族のような生活を過ごしていた。

 だが、夢のような生活も終わりを告げようとしていた。

 豪邸の一室。
 ただ広い部屋の中、大きな窓際に大きな机が置かれてあり、一人の男が書類に目を通し
ている。
 バーナード星系連邦軍、バルラント星域監視艇団司令官、ムスタファ・エッケハルト少
佐である。
 机を挟んで向かい合うように立って報告書を読み上げているのは、副官のフリーデグン
ト・ビッケンバーグ中尉である。
 二人とも旧地球ドイツ系連邦人である。
「信じられんな……」
 報告を受けて唸るように呟くエッケハルト少佐。
 銀河帝国遠征艦隊がランドール艦隊によって全滅させられ、トランター駐留艦隊までも
が敗れて、首都星トランターが奪還・解放された報がもたらされたのである。
「事実であります」
 淡々と答えるビッケンバーグ。
「どうしたもんかのう」
「と、仰られますと?」
「我々の身の振り方だ」
「そうですね。いずれ掃討作戦が始まるでしょう。この地のように、連邦軍に占領された
惑星を奪還しにきます。しかし我々には、この地を放棄しても、連邦に帰る術がありませ
ん」
「だろうなあ……」
 頭を抱えるエッケハルト。
「答えは一つ。投降するしかないでしょう」
「しかし何もしないで明け渡すのも癪だ。迎え撃とうではないか」
 と言いつつ立ち上がる。
「どうせなら、綺麗に終わりたいですね」
「立つ鳥跡を濁さずと言うしな。まかせる」
「了解致しました」

 ランドール配下の掃討作戦部隊が刻々と近づいているだろうから時間は切迫している。
 ビッケンバーグは、大車輪でその作業に取り掛かった。
 惑星トカレフ住民に対して、占領政策の終了の告知。
 拘留していた旧政権の首脳陣達の釈放。
 授産施設に拘束していた女性達の解放。
 バーナード星系連邦においては、非戦闘員たる人民に対しては、丁重に扱うべき国風が
あった。
 それはかつて、スティール・メイスンがバリンジャー星域で見せた、惑星住民完全撤退
作戦にみることができる。

 数日後、接近する艦隊の報が入ってくる。
「いらっしゃいましたね」
「おうよ、丁重にお出迎えしようじゃないか」
「戦艦を主力とした総勢二百五十隻」
「ランドール配下の同盟軍か?」
「いえ、どうやら帝国軍のようです」
「帝国軍?」
「帝国皇太子となったランドールに迎合する新派の貴族というところでしょう」
「混乱に乗じて領土を広げようという魂胆だな。ついでに戦果を上げてランドールに取り
入ろうというとこだ」
「こちらの勢力は約十二隻。数の上では不利ですが」
「なあに、戦争したことのないお飾り艦隊だろう。恐れるに足りずだ。出撃するぞ」


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2020年8月 1日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第八章 トランター解放 Ⅲ

第八章 トランター解放

 サラマンダー艦橋。
「総督軍艦隊、リモコンコードを受信完了しました」
「各艦の指揮管制系統へのコードのセット完了を確認しました」
「よし。そのままで待機」
 というと、アレックスは指揮パネルの通信機を取った。
 通信相手は、サジタリウムの司令官である。
「私だ」
 受信機からアレックスの声が届いている。
「ああ、君か。準備は完了したぞ。この後はどうする。判った、任せる」
 通信を切ると同時に、
「全艦各砲台、コンピューターに指示された攻撃目標にセット・オン」
 すると砲撃管制官が声を上げる。
「しかし、この目標は?」
「復唱はどうした。言われたとおりにしろ!」
 怒鳴り散らすレイン少将。
「りょ、了解しました」
 通信士が報告する。
「サラマンダーより映像回線で通信が入っております」
「全艦隊に流せ」
「全艦隊にですか?」
「そうだ」
「了解」
 映像回線で通信が行われ全艦隊に放送された。
 そして、各艦の映像スクリーンに投影されたのは、まぎれもなくアレックスだった。
 スクリーンのアレックスが静かに語りだす。
『共和国同盟解放戦線最高司令官、アレックス・ランドールである』
 その姿に総督軍将兵のほとんどが叫喚した。
 なぜランドール提督が?
 全員がそう感じたはずである。
「どうしたんだ。なぜ敵将が出ているんだ?」
 監察官が叫んだ。
 平然とレイン少将が応える。
「軍事ネットをハッカーされたのでしょう。向こうにはハッカーの天才がいますからね」
 トランターの軍事ネットがハッカーされ偽情報に惑わされて、首都星の防衛艦隊が留守
にしている間に、ワープゲートを奪取されて敵艦隊の侵入を許したのは、つい数時間前の
ことである。
 そして解放戦線・帝国連合軍が目の前に迫っていることも事実だった。
 納得する以外にはなかった。
 アレックスの声は続く。
『共和国同盟軍の将兵たちよ。今こそ立ち上がって連邦軍を蹴散らして、虐げられた国民
達を解放し、この手に平和を取り戻すのだ』
 総督軍ではなく共和国同盟軍と呼称したアレックスの言葉に将兵たちは奮い立つことと
なった。
『全艦隊、連邦艦隊に対して攻撃を開始せよ!』
 アレックスの攻撃開始命令にレイン少将も即座に対応する。
「全艦、攻撃開始!」
 一斉に連邦艦隊に対して砲撃を開始する共和国同盟艦隊。
 連邦軍艦隊は、ほとんど不意打ちを食らった状態で、指揮系統も乱れてやられ放題とな
っていた。
 まさかの寝返りになす術もなかった。
 その戦況はサジタリウム艦橋のスクリーンに投影されている。
「どういうことだ!」
 なおも事態を把握しかねている監察官。
「見ての通りですよ」
 平然と答えるレイン少将。
「共和国同盟艦隊の指揮系統はランドール提督に移ってしまったんです」
 ここではたと気づく監察官。
「さっきの通信か?」
「その通りです。艦隊リモコンコードというものをご存知ですか?」
「聞いたことはある」
「行軍や戦闘行動を整然と行うために、艦隊コントロールを旗艦に同調させるシステムで
す」
「それを作動させたということか」
「そうです。総督軍として再編成したとしても、艦の運用システムは旧共和国同盟軍のも
のをそのまま使用していた。それが裏目に出たわけです。システムの総入れ替えを行うべ
きでした」
 戦術コンピューターのクリーン再インストール。
 それはアレックスが一番気を使っていることであった。
 艦艇はコンピューターで動く。
 搾取した艦のコンピューターには、何がインストールされているか判らない。
 バグがあったり、ウイルスが仕込まれているかも知れない。
 アレックスが戦闘に勝利して搾取した艦は数知れず、しかしそのまま自軍に編入するこ
とはしなかった。必ずシステムをクリーンインストールしてきた。
 では総督軍の編成が行われた時に、なぜ連邦軍はそれを実施しなかったのか?
「それはできなかった。トランターに残っていたランドール配下の艦隊が、パルチザンと
して反乱行動を起こして、その対処に翻弄されていたからだ」
「先見の明ということですね。ランドール提督は、この日のためにメビウス部隊を残した
のです」
「そんなことはどうでもいい! 指揮系統を元に戻せ!」
「だめですよ。一度指揮権を移動すると、相手側が解除しない限り元に戻すことはできま
せん」
「なんとかしろ。死にたいのか」
「私を殺しても無駄ですよ。すでにすべての艦隊の戦闘命令系統はランドール提督の指揮
下にあります」
「馬鹿なことを言うな」
「共和国同盟艦隊の戦術コンピューターはランドール提督の旗艦サラマンダーに同調され
ているのです。戦術システムがそういう具合になっているのです」
「解除しろ!」
「お断りします」
「死にたいのか?」
「お好きなように」
「ならば死ね」
 銃の引き金に掛けた指に力を入れる監察官。
 突然、監察官に覆いかぶさった者がいた。
 副官である。
 監察官に気づかれないように、こっそりと近づき飛び掛ったのである。
「何をする!」
 暴漢に拳銃を撃とうとするが、直前に叩き落されてしまった。
 拳銃は床を転がってレイン少将の足元に転がった。
 その拳銃を拾い上げながら、
「形勢逆転ですね」
 監察官は副官によって床に押さえつけられて身動きが取れなくなっていた。
「拘禁しろ!」
 連絡を受けてやってきたSPに連れ出される監察官。
「やっと、厄介者がいなくなりましたね」
 副官が歩み寄ってきて語り掛けた。
「君のおかげだ」
「当然のことをしたまでですよ」
 スクリーンに投影される戦闘状況に見入る二人。


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