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2022年7月11日 (月)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第十章 反乱 Ⅷ

第十章 反乱

 ヘルハウンド艦橋。
「集中して機関部を狙え! 動きを止めるのだ! 撃沈してはならない」
 アレックスが、次々と指令を出している。
「隊長機以外は相手にするな!」
 同じ共和国同盟軍であり、元はアレックスの子飼いともいうべき部下だった者た
ちだ。
 極力被害の少なくなるように、撃沈させずに行動力だけを削ぎ落す戦法を繰り広
げていた。
 たとえ戦艦が何万隻あろうとも、指揮統制が乱れていては、その戦力を十分に発
揮できない。
 隊長機だけを狙い撃ちにして、艦隊の混乱を誘い出す戦法である。
 ちょこまかと動き回る小隊を、撃ち落とすのは困難だった。
 下手に迎撃しようとすると、同士討ちになってしまう。
 元祖伝家の宝刀ランドール戦法の真骨頂であった。
 なすがままのウィンディーネ艦隊であった。

 ウィンディーネ艦内では、あちらこちらで火災が発生していた。
 その原因は、各ブロック隔壁扉の閉め忘れだった。戦闘中の基本の基本が守られ
ていなかった。
 戦えば連戦連勝で気が緩んでいたとしか言えない。
 日頃の防火訓練などが疎かになっていたのだ。
 一カ所で火の手が上がったのが、次々と別の区画へと飛び火し、連鎖的に火災が
広がったのである。
「だめです! 消火が間に合いません!」
 そしてついに、火薬庫に燃え移った。
 激しく爆発を繰り返すウィンディーネ。
 苦々しく発令するゴードン。
「総員退艦せよ!」
 もはや、ウィンディーネを救う手立てはなかった。
 次々と退艦する乗員達。
 その姿を艦橋から見つめるゴードン。
「乗員の退艦はほぼ終了しました。閣下も退艦してください」
 シェリー・バウマン大尉が進言するが、
「いや、俺はここにいるよ」
 と退艦拒否の姿勢を見せる。
「何をおっしゃいますか! 閣下がいなければ、これまで従ってきた将兵達はどう
なると思いますか?」
 反乱を起こした将兵には、当然審問委員会に掛けられることとなる。
「責任を放棄なさるとおっしゃるのですか? 閣下には生き残って、その責任をと
る義務があります」
「責任と義務か……」
「ランドール提督は聡明なお方です。どんな理由であれ、部下を見放したりはしな
いでしょう。ここは退艦して、捲土重来(けんどちょうらい)をおはかりください」
「捲土重来か……」
「どうしても残られるとおっしゃるなら、私もご一緒します」
「何を言うのか。君が責任を取る必要はない」
「いいえ!」
 キッと睨め付けるようにゴードンを凝視するシェリーだった。
 このまま梃子でも動かぬだろうと、困ったゴードンの方が折れた。
「分かったよ。退艦しよう」
「では、こちらに。艀を用意してあります」
 シェリーの説得により、ゴードンも退艦して、無人となったウィンディーネ。
 ついにその最期を迎えることとなった。
 悲鳴を上げるように爆発炎上する。




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