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銀河戦記/鳴動編

2019年8月24日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証

第四章 皇位継承の証
                 I  首都星アルデランのアルタミラ宮殿。  謁見の間に居並ぶ大臣・将軍達の表情は一様に重苦しい。  マーガレット皇女が、摂政であるエリザベス皇女の裁定を受けていた。 「マーガレットよ。我が帝国の治安を乱し、テロなどの破壊行為なども誘発したことは 悪しき重罪である。事の次第は皇室議会において処遇を決定することになる。追って裁 定が下るまで、自室にて謹慎を命じる」  うやうやしく頭を下げて処分を承諾するマーガレット皇女。  そしてくるりと翻り姿勢を正して自室へと向かい始め、その後を侍女が従った。警備 兵が二人その後ろから付いてくるが、連行するというようなことはしない。皇女として の誇りに委ねられた一幕であった。  マーガレットが退室し、続いてアレックスに対する労いの言葉が、エリザベスより発 せられた。 「今回の任務。よくぞ無事にマーガレットを連れてこられた。感謝の言葉もないくらい である。その功績を讃えて、中将待遇で銀河帝国特別客員提督の地位を与え、この謁見 の間における列席を許し、貴下の二千隻の艦船に対して、帝国内での自由行動を認め る」  ほうっ。  という感嘆の声が、将軍達の間から沸き起こった。  貴賓室。  謁見を終えたアレックスが、応接セットに腰掛けてパトリシアと会談している。  アレックスがマーガレット保護作戦に出撃している間、パトリシアはこの部屋に留め 置かれていた。  いわゆる人質というやつで、大臣達からの要望であったと言われる。それでも世話係 として侍女が二人付けられたのは皇女の計らいらしい。 「艦隊の帝国内自由行動が認められたので、スザンナ達には軍事ステーションから、最 寄の惑星タランでの半舷休息を与えることにした」 「休暇と言っても先立つものが必要でしょう?」 「ははは、それなら心配はいらない。帝国軍から一人ひとりに【おこづかい】が支給さ れたよ。内乱を鎮圧した感謝の気持ちらしいが……。本来なら彼らが成すべき事だった からな」 「至れり尽くせりですね」 「しかし、これからが正念場だ。帝国側との交渉の席がやっと設置されたというところ だな。まだまだ先は遠いよ」 「そうですね」  事態は好転したとはいえ、解放戦線との協定に結び付けるには、多くの障害を乗り越 えなければならない。特に問題なのは、あの頭の固い大臣達である。あれほど保守的に 凝り固まった役人達を説得するのは、並大抵の苦労では済まないだろう。 「ジュリエッタ皇女様がお見えになりました」  侍女が来訪者を告げた。 「お通ししてください」  アレックスが答えると、侍女は重厚な扉を大きく開いて、ジュリエッタ皇女を迎え入 れた。 「宮殿の住み心地は、いかがですか?」 「はい。侍女の方も付けて頂いて、至れり尽くせりで感謝致しております。十二分に満 足しております」 「それは結構です。何か必要なものがございましたら、何なりと侍女にお申し付けくだ さい」 「ありがとうございます」 「ところで明晩に戦勝祝賀のパーティーが開催されることが決まりました。つきまして は提督にもぜひ参加されますよう、お誘いに参りました」 「戦勝祝賀ですか……」 「内乱が鎮圧されたことを受けて、ウェセックス公が主催されます。その功労者である ランドール提督にもお誘いがかかったのです」 「しかし、私のような門外漢が参加してよろしいのでしょうか?」 「大丈夫です。パーティーには高級軍人も招待されておりまして、客員中将に召された のですから、参加の資格はあります」 「そうですか……。判りました、慎んでお受けいたします」  断る理由はなかった。
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2019年8月18日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XIV

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                XIV  砂漠の上空を飛行しているミネルバ。  艦橋では、フランソワがカサンドラから収容した訓練生の名簿に目を通していた。 「男子二十八名、女子十四名、合わせて四十二名か……。数だけで言えば補充要員は確 保できたけど」 「心配いりませんよ。ミネルバ出航の時だって、士官学校の三回生・四回生が特別徴用 されて任務についていますけど、ちゃんとしっかりやっていますよ」  副官のイルミナ・カミニオン少尉が進言する。 「それは元々専門職だったからですよ。それぞれ機関科、砲術科、航海科という具合 ね」 「今回の補充は、全員パイロット候補生というわけですか。結構プライドの高いのが多 いですから、衛生班に回されて便所掃除なんかやらされたら、それこそ不満爆発です ね」 「トイレ掃除だって立派な仕事ですよ。ランドール提督は懲罰として、よくトイレ掃除 をやらせますけど、皆が嫌がるからではなく、本当は大切な仕事だからやらせているん だとおっしゃってました」 「へえ。そんな事もあるんですか。そういえば発令所ブロックの男子トイレは、部下に やらせないで、提督自らが掃除していると聞きました」  感心しきりのイルミナであった。最も発令所には男性はアレックスだけだからという 事情もあるが。  名簿に署名をしてイルミナに渡すフランソワ。 「新型モビルスーツの位置が特定しました」  通信が報告し、正面スクリーンにポップアップで、位置情報が表示された。 「ただちに急行してください」  砂漠上空の外気温は四十度を超えていた。  新型モビルスーツはともかく、乗り込んでいたという三人の訓練生が気がかりだった。 砂漠という過酷な環境で、水なしで放置されたら干からびてしまうだろう。  砂漠の真ん中。  モビルスーツによって日陰となっている地面に、力なく横たわっている三人の姿があ った。口は渇ききり唇はひび割れている。日陰の場所でも、砂漠を吹き渡る熱風が、三 人の体力を容赦なく奪っている。水分を求めてどこからともなく飛んでくる蝿が、目の 周りに集っているが、追い払う気力もないようだ。 「俺達、死ぬのかな」 「喋らないほうがいいぞ。それよりサリー、生きているか?」  アイクが心配して尋ねる。  しかし、サリーは喋る気力もないのか、微かに右手が動いただけだった。  三人の命は、風前の灯だった。  薄れる意識の中で、ある言葉が浮かんだ。 『いざという時に、一番発揮するのは、体力だということが判っただろう』  特殊工作部隊の隊長の言葉だった。 「まったくだぜ……」  小さく呟くように声を出したのを最期に、意識を失うアイクだった。
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2019年8月17日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 XV

第三章 第三皇女
                 XV  インヴィンシブルの艦載機発着場。  アークロイヤルの皇女専用艀が停船しており、その周囲を将兵が整然と取り囲んでい た。真紅のビロードの絨毯が敷かれて、ジュリエッタ皇女が出迎えていた。  やがてドアが開いて、中からマーガレット皇女が姿を現わす。その背後にはアレック スが控えている。  タラップが掛けられて、兵士達が一斉に銃を構えなおし、VIPを出迎える動作を行 った。内乱の首謀者といえども、皇女という身分を剥奪されてはいないからだ。 「お姉さま!」  ゆっくりと歩み寄るジュリエッタ皇女。 「ジュリエッタ……」  互いに手を取り合って再会を喜ぶ二人。政治の舞台では反目しあっていても、姉妹の 愛情は失われていなかった。  首都星へ向かうインヴィンシブルの貴賓室で、姉妹水入らずで歓談する二人。アレッ クスは席を外しており、別の部屋で待機をしていると思われる。 「そういうわけだったのね」  ジュリエッタは、共和国同盟の英雄との出会いを説明していた。 「噂には聞いておりましたが、あれほどの戦闘指揮を見せつけられますと……」 「何? 何が言いたいわけ?」  言い淀んでしまったジュリエッタの言葉の続きを聞きだそうとするマーガレット」 「マーガレットお姉さまも気づいていますよね?」 「エメラルド・アイでしょ……」 「その通りです。軍事的才能をもって帝国を築いたソートガイヤー大公様の面影がよぎ ってしかたがないのです」 「そうね……。もしかしたら大公様の血統を色濃く受け継いでいるのかもしれません」 「だったら……」  身を乗り出すジュリエッタ皇女。 「待ちなさいよ。結論を急ぐのは良くないことよ。わたし達はランドール提督のことを、 まだ何も知らないのよ。例えば連邦にもエメラルド・アイを持つ名将がいるとの噂もあ ることですし」 「ええと……。確かスティール・メイスン提督」 「連邦においてはメイスン提督、同盟ではランドール提督。この二人とも常勝の将軍と して名を馳せており、奇抜な作戦を考え出して艦隊を勝利に導いているとのこと」 「そして異例のスピードで昇進して将軍にまで駆け上ってきた。もしかしたら……この どちらかが、アレクサンダー皇子と言うこともありえます」 「ええ。何につけても『皇位継承の証』が出てくれば、すべて氷解するでしょう」 「そうですね……。とにもかくにも、今は身近にいるランドール提督のことを調べてみ るつもりです」 「事が事だけに、慎重に行うことね。何せ、命の恩人なのですから」 「はい」 第三章 了
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2019年8月11日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XIII

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                XIII  座席を動かして下を探す二人。 「あったぞ!」 「こっちもだ」  取り出したサバイバルツールには、次のようなものが収められていた。  非常用携帯食糧、浄水器、拳銃と弾丸1ケース、コンパス、発炎筒、サバイバルナイ フ、断熱シートなどなど。 「食糧は当然として、こんな砂漠で浄水器が役に立つかよ。ミネラルウォーターくらい 入れとけよ」 「拳銃と弾丸は、獣を撃って食料にしろということだろうけど……。砂漠に獣がいるわ きゃないだろが」 「いるのは毒蛇か昆虫くらだぜ」 「まあ、自殺するのには役立つけどな」 「やめてよ、まだ死にたくないわよ」 「ほれ、断熱シートにくるまってろ。寒さよけになる」  熱を遮断する不織布製のシートで、くるまっていれば体温の放射を少なくして、温か く感じるというものである。 「うん」  素直に答えて、断熱シートにくるまるサリー。 「我慢できなくなったら、ジャンと替わってもらうさ。どうせ今夜一晩だけの我慢だ。 明日には救援がくるさ」 「この新型を奪取するために、機動戦艦ミネルバがやってきたり、特殊工作部隊を潜入 させたりして、並々ならぬ戦力を投入している。新型を重要な戦略の一環として考えて いる証拠だよ。だから必ず回収にくるさ」 「だといいんだけど……」  ミネルバ会議室。  カサンドラから収容された訓練生達が集合している。  前方の教壇に立って、訓示する教官役の二人。 「君達は、このミネルバに自ら進んで乗り込んできたわけだが、このミネルバにおいて も引き続き、実戦に即した訓練を行う予定だ。成績優秀な者は順次実戦徴用する。しか し知っての通りに訓練機は一機もないし、君達パイロット候補生に搭乗してもらう実戦 機は限られている。全員に対して十分な訓練を施すことができない。そこで適正試験を 行って優秀な十名のみを選抜して、パイロット候補生とする。残りの者は、他の部門へ の配置換えを行う」  ここで、訓練生達にプリント用紙が配られた。  タイトルには、配属希望表と書かれ、パイロット以下被服班、給食班、衛生班、工作 班、恒久処理(ダメコン)班、などの配属先名と、仕事の内容が書かれている。  担当が入れ替わって説明を続ける。 「適正試験に合格する自信のない者は、パイロット以外の希望職種を記入して、明日午 後三時までに総務部室へ提出するように。第一志望から第三志望まであるから、良く考 えて記入するように。私からは以上だ」  ここで女性士官に替わった。 「私は、皆さんの日常生活をお世話する担当です。何か相談事や心配事があったら、い つでも気軽に相談して下さい。配属された部署がどうしても合わないなどで、配置換え を希望する時も遠慮なく申してください。それでは、皆さんの宿坊を決めましょう。不 公平のないように、くじ引きで決めます。男女別々ですからね。前に出てくじを引いて ください。男子は青い箱、女子は赤い箱です」  ぞろぞろと前に出て男女別々のくじ箱に手を差し入れて、くじを引いている訓練生。 ワイワイガヤガヤとおしゃべりしながらなのは、まだまだ大人になりきれない子供だか らだろう。実戦を知らず世間も知らない訓練生だった。 「くじに書かれた部屋番号は、後の壁に貼ってある艦内見取り図を見て、部屋の位置を 確認して下さい」  ここで一旦解散となり、各自の宿坊へと向かうように指示が出た。もちろん宿坊以外 の場所への立ち入りは厳禁である。追って連絡があるまで宿坊から出ないようにとも。
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2019年8月10日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 XIV

第三章 第三皇女
                XIV  やがて一隻の艦が接舷してきた。 「乗り込んでくるもようです」 「排除しなさい」 「判りました」  答えて艦内放送で発令するグレイブス提督。 「艦内の者に告げる。接舷した敵艦より進入してくる敵兵を排除せよ。銃を持てる者は すべて迎撃に回れ」  次々と乗り込んでくるサラマンダー艦隊の白兵部隊。  だがいかんせん、戦闘のプロの集団に、白兵など未経験の素人が太刀打ちできる相手 ではなかった。  白兵部隊は艦橋のすぐそばまで迫っていた。  ロックして開かないはずの扉が開いてゆく。投げ込まれる煙幕弾が白煙を上げて視界 が閉ざされていく。そしてなだれ込んでくる白兵部隊。次々と倒されていく味方兵士達。  やがて煙幕が晴れたとき無事でいたのは、マーガレット皇女と侍女、そしてグレイブ ス提督他数名のオペレーターだけであった。  やがて敵兵士によって確保された扉を通って、警護の兵士に見守られながら一人の青 年が入ってきた。  どうやら敵白兵部隊の指揮官のようであった。 「ご心配なく。倒れているのは麻酔銃で眠っているだけです。十分もすれば目を覚まし ます」  言われて改めて周囲を見渡すマーガレット皇女。確かに死んでいない証拠に、微かに 動いているようだ。麻酔があまり効かなかったのか、目を覚まし始めている者もちらほ らといる。 「このようなことをして、何が目的ですか?」 「銀河帝国摂政エリザベス皇女様の命により、あなた様を保護し帝国首都星へお連れ致 します」 「わたしを逮捕し、連行すると?」 「言葉の表現の違いですね」  麻酔が切れて次々と目を覚まし始めるオペレーターや兵士達。  敵兵の姿を見て銃を構えようとするが、 「おやめなさい! 銃を収めるのです。わたしの目の前で血を流そうというのです か?」  皇女に一喝されて銃を収める兵士達。  マーガレット皇女の旗艦アークロイヤルは、敵艦隊の包囲の中にあり、接舷した艦が 発砲すれば確実に撃沈するのは、誰の目にも明らかであった。  いわゆる人質にされてしまった状況では、戦うのは無駄死にというものである。将兵 の命を大切にする皇女にできることは一つだけである。 「提督。全艦に戦闘中止命令を出して下さい」 「判りました。全艦に戦闘中止命令を出します」  提督の指令で、アークロイヤルから停戦の意思表示である白色弾三発が打ち上げられ た。  ここに銀河帝国を二分した内乱が終結したことになる。 「首都星へ行くのは、わたしだけでよろしいでしょう? バーナード星系連邦の脅威あ る限り、この地から艦隊を動かすことはできません。罪を問われるのはわたし一人だけ で十分です」 「皇女様の思いのままにどうぞ」  皇女の気高さと自尊心を傷つけるわけにもいくまい。 「ありがとう」  そう言って改めて、その若き指揮官を見つめるマーガレット皇女。  常に笑顔で対応するその指揮官の瞳は、透き通った深緑色に輝いていた。 「あ、あなたは……?」  言葉に詰まるマーガレット皇女。ジュリエッタ皇女が初対面の時に見せた表情とまっ たく同じであった。 「共和国同盟解放戦線最高司令官、アレックス・ランドール少将です」  指揮官が名乗ると、艦内に感嘆のため息が起こった。  ここでも、アレックス・ランドールの名を知らぬものはいないようであった。 「なるほど……。共和国同盟の英雄と称えられるあの名将でしたか」 「巡洋戦艦インヴィンシブルが近づいてきます」 「ジュリエッタが来ていたのね」 「インヴィンシブルで首都星アルデランにお連れ致します」 「参りましょう。提督、艀を用意してください」  グレーブス提督に指示を与える。 「かしこまりました」 「提督には残って艦隊の指揮を執って頂きます。引き続き連邦への警戒を怠らないよう にお願いします」 「はっ!誓って連邦は近づけさせません」 「ランドール殿、それでは参りましょうか」  こうしてアレックスに連れられて、インヴィンシブルへと移乗するマーガレット皇女 だった。
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2019年8月 4日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XII

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                XII  バルモア基地の岸壁に強襲着陸したミネルバ。  四方八方からの攻撃を受けているが、何とか善戦している。  そこへモビルスーツ三機が走り込んでくる。発着デッキに飛び乗り、昇降機によって 艦内へと格納された。  カサンドラの訓練生達もキースの班に誘導されて次々と乗り込んでいる。 「モビルスーツ格納完了しました」 「訓練生の収容も完了しています」 「よろしい。ただちに浮上して下さい。すみやかに撤収します」  急速浮上して山越えしていくミネルバ。野砲大隊を軽く潰して砂漠へと進入した。 「シャーリー・サブリナをここへ呼んでください」  早速シャーリーが呼ばれる。  フランソワの前に出て敬礼するシャーリー。 「報告を」 「はっ。今回の作戦任務において、旧式モビルスーツ二機と新型一機とを奪取に成功し ました。しかしながらもう一機の新型は、奪取に成功したものの、パイロットが操作ミ スをしたのか、システムが暴走したのか、はるか彼方へと飛んで行ってしまいました。 この機体のパイロットは、実はカサンドラの訓練生です。本来乗り込む予定だったキャ ンベル伍長が撃たれ、起動ディスクを受け取った訓練生が代わりに乗り込んでしまった のです」 「なるほど、良く判りました。詳細報告書は後にして、下がって休みなさい」 「ありがとうございます。失礼します」  再び敬礼して、踵を返して引き下がるシャーリー。 「新型モビルスーツの飛び去った軌跡を追跡できたか?」 「はい。追跡できております」 「発信機の方も、微かではありますが受信しております」 「よし! 新型は是が非でも回収せねばならない」  その頃、アイク達の乗る新型モビルスーツは砂漠の真ん中に不時着し、岩にもたれか かるようにしていた。  コクピットの中で膨れっ面のサリー。計器類を調査しているジャン。そしてアイクは というと、シートに深々と腰を沈め腕枕をして、ぼんやりと映像の消えたスクリーンを 眺めている。  電力消費を倹約するために、必要最低限の機器だけを作動させていた。 「なんで墜落したのよ」 「しようがないだろう。ガス欠なんだから」 「動けないなら、歩いて近くの町へ避難しましょうよ」 「ここは砂漠のど真ん中だぜ。一番近くの町でも何百キロとあるんだ。途中で干からび ちゃうよ。それに至る所が流砂になっていて、踏み込んだら最期、あっという間に砂の 中に沈んで窒息死だよ」 「寒いわ……」 「そうだな。外の気温は五度。夜明けには氷点下にまで下がるが、昼間になると今度は 灼熱地獄変わるさ」 「ヒーター入れてよ」 「だめだよ。エンジンが動いていないんだ。すぐにバッテリーがなくなるよ。遭難信号 を出す発信機のために電力を残しておかなくちゃ」 「……。ところでジャン。さっきから何をやってるの」 「こういう場合に備えて、大概サバイバルツールが装備されているはずなんだ。それが どこにあるか調べているんだ」 「弾丸だって一発も積んでいないんだぜ。サバイバルツールだって積んでないんじゃな いか?」 「いや、サバイバルツールは常備品として、出荷時点で積むからあるはずだ」 「でも撃墜されて、脱出シュートで緊急脱出したら使えないんじゃない?」 「脱出?」  見合わせるアイクとジャン。 「そうか! 座席だ。座席の下だ」  座席を動かして下を探す二人。
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2019年8月 3日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 XIII

第三章 第三皇女
                XIII 「敵艦隊旗艦、アークロイヤル発見!」  ついに待ちに待った情報が届いた。 「ようし、遊びは終わりだ。全艦ワープ準備! 敵旗艦空母の周辺に座標設定」 「了解! ワープ準備に入ります。座標設定、敵空母周辺」  操舵手が復唱する。まさに楽しそうな表情で、ピクニックにでも行くようだ。それも そのはずで、あのミッドウェイにおいても操舵手を務めていたのである。空母攻略のた めの小ワープは、その時と状況がほとんど似通っており経験済みの余裕であった。 「白兵戦の要員は、ただちに発着場に集合せよ」  ミッドウェイでは総攻撃を敢行したが、今回はアークロイヤルに接舷し、白兵戦で艦 内に侵入する。そしてマーガレット皇女を保護する作戦である。 「艦長、後は任せる。作戦通りに動いてくれ」  立ち上がって指揮官席を譲るアレックス。 「おまかせ下さい」  作戦を参謀達に伝えた時、提督自らが敵艦に乗り込むことに、反対の声も少なくなか った。しかし、作戦が困難であればあるほど、部下にだけに苦労させたくないというア レックスの心情と性格は、誰しもが知っていることである。カラカス基地攻略戦、タル シエン要塞攻略戦など、生還帰しがたい作戦だからこそ自ら率先してきたのでる。 「内乱を引き起こしたとはいえ、相手は皇女様だ。私が行かなければ失礼にあたるだろ う」  そう言われてしまうと誰も反論することができなかった。  その頃。旗艦空母アークロイヤル艦橋では、マーガレット皇女が、戦闘機編隊の不甲 斐なさに憤慨していた。 「たかが駆逐艦に戦闘機が手をこまねいているとは……」 「いいえ、よくご覧下さい。そのたかが駆逐艦の動きです。さながら戦闘機のようでは ありませんか。まるで曲芸飛行をのようです」  そう答えるのは、艦隊司令のトーマス・グレイブス少将である。 「こちらは三万機もの戦闘機で迎え撃っているのですよ。相手はたった二百隻ではあり ませんか」  戦闘機がたかが駆逐艦に負けるわけがない。  そうでなければ、自軍の艦隊編成を見直さなければならない。戦闘機の攻撃力と機動 性を信じたからこそ、アークロイヤルはじめ数多くの航空母艦を主体とした空母艦隊を 組織したのである。戦闘機がこうもあっさりと惨敗し、しかも敵艦はほとんど無傷とな れば、まさしく空母無用論を唱えたくなる。 「とにかく、このままでは……。一旦退却して体勢を整えさせましょう」  その時だった。  敵艦隊が突如として消えてしまったのである。 「消えた?」 「どういうことですか?」 「わかりません」  次の瞬間、目前に敵艦隊が再出現したのである。  突然の出来事に目を丸くして驚愕する一同。  空母は、戦闘機の発着を円滑に行うために、艦同士の距離をとってスペースを開けて おかなければならない。そのスペースを埋め尽くすように敵艦隊が、アークロイヤルの 周囲を取り囲んでしまったのである。これでは味方艦隊は攻撃をできない。まかり間違 えば、アークロイヤルに被害を及ぼしてしまうからである。 「完全に包囲されています」 「何とかしなさい」 「無駄です。我々は人質にされてしまいました。味方は攻撃することができません」
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2019年7月28日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XI

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                 XI  見合わせる三人。  突然、大声を出して笑い転げる。 「何がおかしい」 「何がおかしいって……。ハイネだぜ、ハイネ」 「その筋骨隆々の身体で、ハイネはないだろう」 「俺は、シュワルチェネッガーかと思ったぜ」 「そうそう、女の子みたいな名前は似合わないわよ」  怒り出すハイネ。 「俺のオヤジが付けた名前だ。しようがないだろ」 「しかしよお……」  とまた笑い出すジャン。  再び計器が鳴り出した。 「ほら、呼び出しよ」 「わかっている」  無線機を操作すると、別のポップアップが画面が開いて、あの隊長が映し出された。 背後に複雑な計器類が並んでいるところから、モビルスーツのコクピットにいるらしい。 「おまえら、何をしている!」 「実は、例の二人組みのガキがモビルスーツに……」  ハイネが弁解する。 「あらら、隊長さん、モビルスーツを運転できるの?」 「当然だ。残しておくのももったいないので、拝借することにした」 「いつの間に……」  つい先ほどまで、ジープから機関銃を掃射していたはずである。臨機応変に行動する 実行力のある人物のようである。 「とにかく議論をしている暇はない。港まで突っ走れ! ミネルバが回収してくれる」 「了解」  新型が二台と旧式が二台。  機銃を装備している旧式が一斉掃射しながら突破口を開いていく。その後を新型が追 従する。  しかしながら、アイクとジャンの機体は、「よっこらせ」という状態で、思うように 動かせないでいた。 「もう、何やっているのよ。どんどん引き離されていくじゃない」 「しようがねえだろ。新型だから、駆動系がまるで違うんだから」 「加速装置とかないの?」 「もう、じれったいわね」  というと、手を伸ばして機器を手当たり次第に、押しまくった。 「ば、馬鹿。何をする!」  突然、椅子に押しかけられるような加速を感じる一行。 「なんだ? どうしたんだ」 「知るかよ」  サリーがスクリーンを指差しながら、 「見て、見て。これ、空を飛んでるんじゃない?」  と叫んでいる。 「う、嘘だろ?」  事実のようであった。 「こいつ、飛行タイプだったのか……」 「どこまで行くのよ」 「知るかよ。こいつに聞いてくれ」  どんどん加速して上昇していく機体。  操縦方法などまるで知らないのでなすがままだった。  地上に残された隊長たち。  呆然と見送っている。  やがて雲の彼方へと消え去ってしまう。
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2019年7月27日 (土)

銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 XII

第三章 第三皇女
                 XII  それはアレックスが昇進し大艦隊を指揮統制できるようになっても独立遊撃艦隊とし て、二百隻をそのまま自分の直属として配下に置き続けたきたからである。  幾度となく死線を乗り越えてきた勇者の余裕ともいうべき雰囲気に満ちていた。 「P-300VXより入電! 敵空母より艦載機が発進しました。その数およそ三万 機」  オペレーターの声によって、艦橋は一気に緊迫ムードに包まれた。 「おいでなすったぞ。全艦、対艦ミサイル迎撃準備。CIWS(近接防御武器システ ム)を自動追尾セット。各砲台は射手の判断において各個撃破に専念せよ」  戦闘機は接近戦に入る前に、遠距離からのミサイル攻撃を仕掛けるのが常套である。 そこでまず最初に、そのミサイルに対する防御処置を取ったのである。とはいえ、各機 がミサイルを一発ずつ放ったとしても、総数三万発のものが襲い掛かってくることにな る。まともに相手などしていられない。 「ミサイル接近中!」 「全艦急速ターン用意」  ここはミサイルの欠点を突くしかない。宇宙空間では、ミサイルは急速ターンができ ず、ホーミングによって追尾しようとしても旋回半径が非常に大きい。そこでタイミン グよく急速移動すれば、何とか交わすことが可能である。 「よし、今だ! 急速ターン!」  ミサイルと違って、ヘルハウンド以下の艦艇には、舷側や甲板・艦底などに噴射ジェ ットが備えられており、急速ターンや平行移動ができる。ミサイルを目前にまで近づけ ておいて、一気に移動を掛けるのである。  目標を失ったミサイルは頭上を素通りしていった。そこをCIWSが一斉に掃射され て破壊してゆくのである。  こうしてミサイル群を見事に交わしきってしまったサラマンダー艦隊は、さらに前進 を続ける。 「敵艦載機、急速接近!」  ミサイルよりはるかに手ごわい相手の登場である。 「提督。ちょっと遊んでもいいですか?」  操舵手が許可を求めてきた。  余裕綽々の表情である。  三万隻を相手にして遊んでやろうという自信のほどが窺える。 「ほどほどにしてくれよ」 「判ってますよ」  わざとらしく腕まくりをして、操作盤に向き直った。 「全艦に伝達。戦闘機のコクピットは狙わずに、後部エンジンに限定して攻撃せよ。パ イロットが緊急脱出できるようにしておけ」  今回の作戦は、敵艦隊を殲滅させることではなく、空母アークロイヤルに座乗してい るマーガレット皇女を保護し、反乱を終結させ和平に結びつけることにある。その他の 将兵達には極力手出ししないようにしたかったのである。  仮に目的のためには手段を選ばずで、手当たり次第に殺戮を行えば、後々まで遺恨を 残して、和平にはほど遠くなってしまうだろう。  とにもかくにも、サラマンダー艦隊と戦闘機との壮絶な戦いが繰り広げられていた。  ランドール戦法、すなわち究極の艦隊ドッグファイトを見せつけられて、目を丸くし ている戦闘機パイロット達がいた。  何せ機動力では、はるかに戦闘機の動きを凌駕していたのである。  舷側などにある噴射ジェットを駆使して、まるで曲芸飛行を見せつけてられているよ うだった。その場旋回やドリフト旋回など、戦闘機には不可能な動きで、簡単に背後に 回ってロックオン・攻撃。もちろんCIWSなどの対空砲火も半端なものではなかった。 次々と撃墜されてゆく戦闘機編隊。戦闘開始十分後には一万機が撃ち落されていた。  パイロット達は、すっかり戦闘意欲を喪失しまっていたのである。
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2019年7月21日 (日)

銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ X

 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
                 X  カメラが作動して、目の前の様子が映し出された。  ジープの荷台に設置された機銃を一斉掃射している隊長が映っている。 「やるなあ。あの隊長」 「感心している場合かよ。まだ動かせないのかよ。モビルスーツがすぐそこまで迫って いるんだぞ」 「うるせえよ。まだだよ。そっちの武器の方こそ使えねえのかよ」 「今、確認してるさ。何だこりゃ?」 「どうした?」 「残弾数が0だよ。試運転中だったから、弾薬を積んでいないんだよ」 「使えねえなあ……」  目前までモビルスーツが迫っていた。  観念した時、もう一台の新型が体当たりして、モビルスーツを吹き飛ばした。 「すげえ馬力だ」 「これが新型の威力か」 「おっと、やっと動かせるぞ」 「気をつけろよ。こいつパワーがありすぎるからな」 「まかせろって」  しかし足を前に振り上げた時、バランスを崩して倒れてしまう。 「何をやってる。言ったそばからこれだ。早く体勢を立て直せ」 「判ってるよ」  その時、座席の後の方からあくびのような声がした。 「なんだ? 今の声は」 「知るかよ。おまえの後ろから聞こえたようだぞ」  アイクが振り向いて見ると、女の子が眠たそうに目をこすっていた。 「あれ? ここはどこ?」  とぼけた表情で、キョロキョロと見回していたが、 「ありゃりゃ、アイクとジャンじゃない。こんなところで何してるの?」  自分の置かれている状況に、まだ気がついていない。 「サリー。おめえこそ、何してたんだよ」 「何してたと言われても……」  サリーと呼ばれた女の子は、左手人差し指をこめかみに当て、首を傾げながら、 「グラウンド十週し終えて、モビルスーツ内に忘れ物したこと思い出して、コクピット に入ったはいいけど、そのまま寝ちゃったみたい。  と言って、ぺろりと舌を出した。 「コクピットに戻ってだと? おまえの乗っているの新型だぞ。どこをどう間違えれば、 自分の練習機と新型を間違えるんだよ」 「へえ? これ新型なの?」 「聞いてねえし……」  呆れた表情のアイクとジャン。  機器が鳴り出した。 「無線よ。出てみて」 「うるさいなあ……」  無線機のスイッチを入れると、スクリーンに現れたのは、特殊部隊のテントで首根っ こ掴まえられた、あの屈強な兵士だった。 「あー! おまえは、あん時の!」 「おまえら、そこで何をしている。ギルバートはどうした?」 「こいつに乗る予定だった奴は死んじまったぜ」 「おまえらがやったのか?」 「冗談じゃねえ。警備兵に撃たれたんだよ。そいつの代わりに乗ってやってるんだ」 「ちょっと待てよ……」  ジャンが何事かを考えていたが、思い出したように、 「死んだ奴がギルバートってことは、おっさん……ハイネか?」 「そうだ!」  憮然として答えるハイネ。
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